(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017844
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/69 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
G01F1/69 A
G01F1/69 C
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-128800(P2012-128800)
(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公開番号】特開2013-253828(P2013-253828A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】清田 久夫
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−279395(JP,A)
【文献】
特開平02−077619(JP,A)
【文献】
特開平02−161318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/68 − 1/699
G01K 1/08 − 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れるキャピラリと、
前記キャピラリの表面を周回するように配置された第1の熱伝導膜と、
前記第1の熱伝導膜上に配置された第1の感熱抵抗素子と、
前記第1の熱伝導膜と間隔をおいて、前記キャピラリの表面を周回するように配置された第2の熱伝導膜と、
前記第2の熱伝導膜上に配置された第2の感熱抵抗素子と、
を備え、
前記第1の感熱抵抗素子が、前記第1の熱伝導膜上に配置された電気絶縁体からなる第1の固定部材と、前記第1の固定部材の内部に挿入された第1の白金抵抗体と、を備え、
前記第1の固定部材に穴が設けられており、
前記第1の固定部材に設けられた穴の直径が、前記キャピラリの直径よりも小さく、
前記第1の白金抵抗体が、前記第1の固定部材に設けられた穴の中で巻線されており、
前記第2の感熱抵抗素子が、前記第2の熱伝導膜上に配置された電気絶縁体からなる第2の固定部材と、前記第2の固定部材の内部に挿入された第2の白金抵抗体と、を備え、
前記第2の固定部材に穴が設けられており、
前記第2の固定部材に設けられた穴の直径が、前記キャピラリの直径よりも小さく、
前記第2の白金抵抗体が、前記第2の固定部材に設けられた穴の中で巻線されている、
流量計。
【請求項2】
前記第1の熱伝導膜と、前記第1の感熱抵抗素子と、が、ろう付けにより接合されており、
前記第2の熱伝導膜と、前記第2の感熱抵抗素子と、が、ろう付けにより接合されている、
請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
前記第1の白金抵抗体及び前記第2の白金抵抗体のそれぞれが純白金からなる、請求項1又は2に記載の流量計。
【請求項4】
前記第1の熱伝導膜及び前記第2の熱伝導膜のそれぞれが銅、金、銀、又はアルミニウムからなる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の流量計。
【請求項5】
前記キャピラリが金属からなる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の流量計。
【請求項6】
前記金属がステンレス鋼である、請求項5に記載の流量計。
【請求項7】
前記第1及び第2の固定部材が、セラミックからなる、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計測技術に関し、特に流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程、工業炉、ボイラ、及び空調熱源機器等においては、適切な流量の流体が供給されることが求められている。そのため、流量を正確に計測するための流量計が種々開発されている。特に半導体装置の製造工程においては、熱式質量流量キャピラリセンサが多く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
熱式質量流量キャピラリセンサにおいては、流体が流れる管にバイパス管路としてキャピラリが設けられ、キャピラリの少なくとも2カ所において、絶縁被膜された感熱抵抗体の細線が巻き付けられる。キャピラリ内部に流体が流れていない場合は、2カ所における感熱抵抗体の抵抗値は同じである。しかし、キャピラリに流体が流れると、キャピラリの上流側に巻き付けられた感熱抵抗体から下流側に巻き付けられた感熱抵抗体に、流体が熱を運搬する。そのため、キャピラリの下流側に巻き付けられた感熱抵抗体のほうが、上流側に巻き付けられた感熱抵抗体よりも抵抗値が高くなる。二つの感熱抵抗体の間に生じた抵抗値の差は、キャピラリ内部を流れる流体の流量に依存するため、二つの感熱抵抗体の間に生じた抵抗値の差から、キャピラリ内部を流れる流体の流量を求めることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−63805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の熱式質量流量キャピラリセンサにおいては、感熱抵抗体及び絶縁被膜の均一性に個体差があり、キャピラリに流体が流れていない場合における、上流側に巻き付けられた感熱抵抗体の抵抗値と、下流側に巻き付けられた感熱抵抗体の抵抗値と、の差が、流量計の個体毎に異なる場合があった。そこで、本発明は、個体差の少ない流量計を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によれば、(a)流体が流れるキャピラリと、(b)キャピラリの表面に配置された第1の熱伝導膜と、(c)第1の熱伝導膜上に配置された第1の感熱抵抗素子と、(d)キャピラリの表面に、第1の熱伝導膜と間隔をおいて配置された第2の熱伝導膜と、(e)第2の熱伝導膜上に配置された第2の感熱抵抗素子と、を備え、(f)第1の感熱抵抗素子が、電気絶縁体からなる第1の固定部材と、第1の固定部材の内部に挿入された第1の白金抵抗体と、を備え、(g)第2の感熱抵抗素子が、電気絶縁体からなる第2の固定部材と、第2の固定部材の内部に挿入された第2の白金抵抗体と、を備える、流量計が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、個体差の少ない流量計を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係る流量計の上面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る流量計の
図1に示したII−II方向から見た断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る流量計の部分拡大図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る流量計の基体の上面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る流量計の基体の
図4に示したV−V方向から見た断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る流量計の回路の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
実施の形態に係る流量計は、上面図である
図1及びII−II方向から見た断面図である
図2に示すように、流体が流れる流路3が設けられた基体1を備える。基体1には、流路3のバイパス流路であるキャピラリ5が挿入される。キャピラリ5の部分拡大図である
図3に示すように、流量計は、キャピラリ5の表面に配置された第1の熱伝導膜11と、第1の熱伝導膜11上に配置された第1の感熱抵抗素子12と、
図3に示すキャピラリ5の表面に、第1の熱伝導膜11と間隔をおいて配置された第2の熱伝導膜21と、第2の熱伝導膜21上に配置された第2の感熱抵抗素子22と、をさらに備える。第1の感熱抵抗素子12は、電気絶縁体からなる第1の固定部材と、第1の固定部材の内部に挿入された第1の白金抵抗体13と、を備え、第2の感熱抵抗素子22は、電気絶縁体からなる第2の固定部材と、第2の固定部材の内部に挿入された第2の白金抵抗体23と、を備える。
【0011】
基体1は例えば金属からなる。基体1は、例えば直方体である。流路3は、基体1の第1の側面から、第1の側面と対向する第2の側面に貫通する貫通孔である。流路3を流れる流体は、気体であっても、液体であってもよい。上面図である
図4及びV−V方向から見た断面図である
図5に示すように、基体1には、第1の側面及び第2の側面と隣り合い、第1の側面及び第2の側面と垂直な上面から、流路3に向かって二つの貫通孔31、32が設けられている。流路3の貫通孔31、32の間には、層流素子40が配置されている。流路3の貫通孔31、32の間には、圧損素子が配置されていてもよい。
図1及び
図2に示したキャピラリ5の両端は、
図4及び
図5に示した貫通孔31、32に挿入されている。
【0012】
図1乃至
図3に示したキャピラリ5は、例えばSUS316Lなどのステンレス鋼等の金属からなり、熱伝導率は例えば16W/mKである。キャピラリ5の外径は例えば350乃至1000μmであり、肉厚が50μmである。ただし、キャピラリ5の材料、熱伝導率、及び形状は、これらに限定されない。
【0013】
図3に示した第1の熱伝導膜11及び第2の熱伝導膜21のそれぞれは、キャピラリ5の表面の一部に固定されていてもよいし、キャピラリ5の表面を周回するように巻き付けられていてもよい。第1の熱伝導膜11及び第2の熱伝導膜21のそれぞれは、例えば銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、又はアルミニウム(Al)等の金属等の熱伝導性物質からなる。第1の熱伝導膜11及び第2の熱伝導膜21のそれぞれの熱伝導率は例えば420W/mKであり、キャピラリ5の熱伝導率よりも高い。第1の熱伝導膜11及び第2の熱伝導膜21のそれぞれの膜厚は、例えば5μmである。第1の熱伝導膜11及び第2の熱伝導膜21のそれぞれは、例えばスパッタリング法や、電気メッキ法により、キャピラリ5上に成膜される。ただし、第1の熱伝導膜11及び第2の熱伝導膜21のそれぞれの材料、熱伝導率、形状、及び形成方法は、これらに限定されない。
【0014】
第1の感熱抵抗素子12の第1の固定部材及び第2の感熱抵抗素子22の第2の固定部材のそれぞれは、電気絶縁体からなる。第1の固定部材及び第2の固定部材の熱伝導率は高い方が好ましく、熱容量は小さい方が好ましい。電気絶縁体としては、例えばガラスやアルミナ(Al
2O
3)等のセラミックスが挙げられる。セラミックスの純度が低いと、第1の固定部材及び第2の固定部材に挿入される第1の白金抵抗体13及び第2の白金抵抗体23が不純物で汚染され、第1の白金抵抗体13及び第2の白金抵抗体23の抵抗値のドリフトの原因となったり、切断の原因となったりする。そのため、第1の固定部材及び第2の固定部材のそれぞれの材料となるセラミックスは、高純度セラミックスが好ましい。第1の固定部材及び第2の固定部材のそれぞれは、例えば円柱状であり、第1の白金抵抗体13及び第2の白金抵抗体23が挿入される一又は複数の穴が設けられている。第1の白金抵抗体13及び第2の白金抵抗体23が挿入される穴の直径は、キャピラリ5の直径よりも小さい。ただし、第1の固定部材及び第2の固定部材のそれぞれの材料及び形状は、これらに限定されない。
【0015】
例えば、第1の熱伝導膜11と第1の感熱抵抗素子12の第1の固定部材は、ろう付けにより接合されており、第2の熱伝導膜21と第2感熱抵抗素子22の第2の固定部材も、ろう付けにより接合されている。ろう材の材料としては、銀、リン銅等が使用可能であるが、これらに限定されない。また、第1の熱伝導膜11と第1の感熱抵抗素子12の第1の固定部材とを、半田により固定してもよい。第2の熱伝導膜21及び第2感熱抵抗素子22の第2の固定部材についても同様である。
【0016】
図2に示した第1の白金抵抗体13及び第2の白金抵抗体23のそれぞれは、抵抗値のドリフトを抑制する観点から、純白金(Pt100)からなることが好ましい。第1の白金抵抗体13及び第2の白金抵抗体23のそれぞれは、例えば直径が数μmの細線からなる巻線であってもよい。ただし、第1の白金抵抗体13及び第2の白金抵抗体23のそれぞれの材料及び形状は、これらに限定されない。
【0017】
図6に示すように、第1の白金抵抗体13及び第2の白金抵抗体23は、抵抗素子R
1、R
2と共に、ブリッジ回路を構成する。第1の白金抵抗体13及び第2の白金抵抗体23と、抵抗素子R
1、R
2と、には、電圧Eが印可される。抵抗素子R
1、R
2の接続点xと、第1の白金抵抗体13及び第2の白金抵抗体23の接続点yと、は、増幅器30の入力端子に接続されている。増幅器30は、接続点x、yの電位差を取り出す。キャピラリ5に流体が流れると、上流側に配置された第1の熱伝導膜11から、下流側に配置された第2の熱伝導膜21に流体が熱を運搬する。そのため、第1の白金抵抗体13の温度よりも第2の白金抵抗体23の温度が高くなり、第1の白金抵抗体13の抵抗値よりも第2の白金抵抗体23の抵抗値が高くなる。これに伴い、接続点x、yの電位差に変化が生じる。接続点x、yの電位差の変化は、キャピラリ5を流れる流体の流量に依存する。したがって、接続点x、yの電位差に基づき、キャピラリ5を流れる流体の流量を求めることが可能となる。
【0018】
従来の流量計においては、キャピラリに絶縁被膜された感熱抵抗体の細線を巻き付けている。そのため、巻き付けられた感熱抵抗体の細線の残留応力が強く、感熱抵抗体の抵抗値のドリフトの原因となっている。また、感熱抵抗体をキャピラリに巻き付けると、感熱抵抗体を覆う絶縁膜が変形し、感熱抵抗体とキャピラリの接触面積が一定でなくなるという問題がある。よって、従来の流量計は、流体が流れていないときの出力が一定でなく、また個体差が大きいという問題がある。
【0019】
これに対し、実施の形態に係る流量計においては、第1の白金抵抗体13及び第2の白金抵抗体23のそれぞれは、第1の感熱抵抗素子12の第1の固定部材及び第2感熱抵抗素子22の第2の固定部材に設けられた、キャピラリ5の直径よりも小さい穴の中で巻線されているため、残留応力が小さい。また、第1の感熱抵抗素子12の第1の固定部材及び第2感熱抵抗素子22の第2の固定部材がセラミックスからなる場合、第1の固定部材及び第2の固定部材は経年劣化しにくい。そのため、実施の形態に係る流量計は、流体が流れていないときの出力を一定に保ちやすく、また個体差を抑制することが可能となる。
【0020】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施の形態及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、第1の感熱抵抗素子12の第1の固定部材及び第2感熱抵抗素子22の第2の固定部材のそれぞれの材料としては、ポリイミド等の高分子も使用可能である。また、キャピラリの表面に、第2の熱伝導膜と間隔をおいてさらに第3の熱伝導膜を配置し、第3の熱伝導膜上に第3のセラミック碍子を配置し、第3のセラミック碍子の内部に第3の白金抵抗体を挿入してもよい。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0021】
1 基体
3 流路
5 キャピラリ
11 第1の熱伝導膜
12 第1のセラミック碍子
13 第1の白金抵抗体
21 第2の熱伝導膜
22 第2のセラミック碍子
23 第2の白金抵抗体
30 増幅器
31、32 貫通孔
40 層流素子