(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017847
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】破風化粧板及びその取り付け方法
(51)【国際特許分類】
E04D 13/158 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
E04D13/158 501E
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-133566(P2012-133566)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-256811(P2013-256811A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006172
【氏名又は名称】三菱樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 英治
【審査官】
油原 博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−242394(JP,A)
【文献】
特開2008−208541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根側端部に取り付けて装飾破風を構成する破風化粧板において、
屋根側端部の上方を覆う上部被覆部と側方を覆う側部被覆部と下方を覆う下部被覆部とを有して断面略コ字状に形成され、
前記上部被覆部の端部に屋根側端部の水切り板に係合する係合部が設けられ、
一側の端部には当該端部から突出していて他の破風化粧板の上部被覆部、側部被覆部及び下部被覆部の内面に各々接合する上面部、側面部及び下面部を有する継手部が突設されているとともに、この継手部の前記上面部の突出幅が前記下面部の突出幅よりも大きく設けられた構成を有することを特徴とする破風化粧板。
【請求項2】
継手部の先端部に、その側面部の下部から下面部に亘る切欠き部が設けられた構成を有することを特徴とする請求項1に記載の破風化粧板。
【請求項3】
下部被覆部に上方へ凹んだ凹溝を設けるとともに、この凹溝内の屋外側の壁面に屋根裏空間を換気するための通気孔が複数列設された構成を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の破風化粧板。
【請求項4】
上面に水切り板が取り付けられた屋根側端部に破風化粧板同士を互いの端部を継ぎ合わせて取り付ける方法において、
請求項1〜3の何れかに記載の破風化粧板を屋根側端部の軒側に取り付ける工程と、
前記取り付けられた軒側の破風化粧板の継手部の先端側に、棟側に取り付ける破風化粧板の端部を配置し、当該棟側の破風化粧板の上部被覆部の係合部を水切り板に係合させる工程と、
前記係合部と水切り板との係合部位を支点として棟側の破風化粧板を回転させて、棟側の破風化粧板の上部被覆部を軒側の破風化粧板の継手部の上面部に重ね合せるとともに、棟側の破風化粧板の下部被覆部を軒側の破風化粧板の継手部先端部の上面部の下方に位置する空隙部分に入り込ませる工程と、
棟側の破風化粧板を軒側にスライドさせて、当該棟側の破風化粧板の端部を軒側の破風化粧板の継手部の外周面に嵌合させる工程と、
を有することを特徴とする破風化粧板の取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の妻側端部であるケラバに装飾破風を構成する破風化粧板とその取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋の切妻屋根廻りの造作において、妻側端部の意匠性を高めて見栄えを良くするために、塩化ビニル樹脂シートなどで被覆された樹脂被覆鋼板を用いて破風板状に形成された化粧板を、屋根側端部に複数枚を一体に連ねて取り付けて、ケラバに装飾破風を構成することがある。
【0003】
従来の破風化粧板としては、例えば
図11に示されるように、長尺な樹脂被膜鋼板をベンダーなどで折り曲げて、屋根側端部の上方を覆う上部被覆部101と側方を覆う側部被覆部102と下方を覆う下部被覆部103とを有して断面略コ字状に形成されたものが知られている。
かかる破風化粧板100を用いた装飾破風の施工は、
図12に示されるように、先ず屋根側端部110の軒側端部に破風化粧板100Aを取り付け、次いで軒側の破風化粧板100Aに連ねて棟側に破風化粧板100Bを取り付ける手順で行われるが、これら破風化粧板100A,100Bの取り付けは、
図13(A)〜(C)に示されるように、屋根側端部110の上面に取り付けられた水切り板111の上端に、破風化粧板100の上部被覆部101を係合し、この係合部を軸として破風化粧板100を回転させつつ下部被腹部103を押し広げながら、屋根側端部110の下方に下部被腹部103を押し込んで組み付け、組み付けた破風化粧板100の位置を調整した後、釘やボルトなどの固定具112で固定することにより行っていた(例えば特許文献1,2参照)。
【0004】
また、
図14(A)に示されるように、屋根側端部110の上方を覆う上部被覆部201と、側方を覆う側部被覆部202と、下方を覆う換気孔203b付き下部被覆部203とを別体に形成して破風化粧板200を構成し、同図(B)に示されるように、側部被覆部202、下部被覆部203、上部被覆部201の順で各々互いに端部同士を接合し或いは係合させながら取り付け位置を調整した上で固定具112により固定して屋根側端部110に取り付ける構造のものが知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−242394号公報
【特許文献2】特開2006−89973号公報
【特許文献3】特開2011−236695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上部被覆部201、側部被覆部202及び下部被覆部203が別体の破風化粧板200は、各部材が不揃いに取り付けられて妻側端部の見栄えが損なわれることを防ぐため、各部材の固定位置を精密に調整する必要があり、取り付けに手間と時間を要する。
これに対し、断面略コ字状に形成された破風化粧板100は各被覆部を一体に設けてあるため、精密な固定位置の調整は不要であり、少ない作業工数で取り付けることが可能である。
【0007】
しかし、破風化粧板100の下部被覆部103を押し広げるのにある程度の力を要し、また、力を入れ過ぎたのでは破風化粧板100が変形してしまうため、屋根側端部110に破風化粧板100を組み付ける作業は下部被覆部103のみを弾性変形させて慎重に行わなければならず、破風化粧板200ほどではないにしても、取り付けに手間と時間を要することに変りはない。
また、図示した破風化粧板100は、側部被覆部102の下端部で下部被覆部103が直角に屈曲した形状であるため、一人の作業者で下部被覆部103を押し広げて屋根側端部110に組み付けることが可能であるが、破風化粧板の形状によっては、例えば各被覆部を一体に設けて形成された破風化粧板の下部被覆部の面内に凹凸部を設けたり通気孔付きの凹溝を設けたりするなど断面形状が複雑な形態のものでは、下部被覆部或いは破風化粧板全体の剛性が高くなって下部被覆部の押し広げがし難くなり、複数人の作業者によらなければ破風化粧板の組み付けができず、装飾破風の施工に要する作業工数が多くならざるを得ない場合もある。
【0008】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、複雑な断面形状の破風化粧板であっても、一人の作業者による簡単な取り付け作業で、破風化粧板を屋根側端部に沿って確実且つ奇麗に取り付けてケラバに装飾破風を構成し、屋根の妻側端部を見栄え良く装飾できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため本発明は、屋根側端部に取り付けて装飾破風を構成する破風化粧板において、屋根側端部の上方を覆う上部被覆部と側方を覆う側部被覆部と下方を覆う下部被覆部とを有して断面略コ字状に形成され、前記上部被覆部の端部に屋根側端部の水切り板に係合する係合部が設けられ、一側の端部には当該端部から突出していて他の破風化粧板の上部被覆部、側部被覆部及び下部被覆部の内面に各々接合する上面部、側面部及び下面部を有する継手部が突設されているとともに、この継手部の前記上面部の突出幅(W1)が前記下面部の突出幅(W2)よりも大きく設けられた構成を有することを特徴とする(
図3参照)。
【0010】
前記構成の破風化粧板は、継手部の先端部に、その側面部の下部から下面部に亘る切欠き部を設けて構成することができる。また、継ぎ手部の先端側端面を、その上面部先端側から下面部根元側に傾斜するように設けて構成してもよい。
【0011】
これによれば、破風化粧板はその端部に突出させた継手部を棟側に向けて屋根側端部に取り付けられる。継手部が、その下面部よりも上面部の突出幅が大きく設けられており、継手部の先端部において上面部の下側が空隙部分となっているので、この破風化粧板の継手部に屋根側端部の棟側に取り付けられる他の破風化粧板を継ぎ合わせる際に、棟側の破風化粧板の下部被覆部を押し広げなくとも、前記継手部の空隙部分に棟側の破風化粧板の端部をあてがうことで、継手部の下方に棟側の破風化粧板の下部被覆部を入り込ませ、その後、棟側の破風化粧板を軒側へスライドさせて、その端部を継手部の外周面に嵌合することで、両破風化粧板を一つ続きに継ぎ合わせることができる。
【0012】
すなわち、上面に水切り板が取り付けられた屋根側端部に、破風化粧板同士を互いの端部を継ぎ合わせて取り付ける作業手順は、先ず、前記構成の破風化粧板を屋根側端部の軒側に取り付ける。この際、屋根側端部の軒側先端への破風化粧板の取り付けは、屋根側端部の軒側先端の前方に、破風化粧板をその継手部が突出した後端部側を棟側に向けて配置し、これを軒側にスライドさせて屋根側端部の軒側先端部に重ね合わせて装着し、取り付け位置を調整した後、釘やボルトなどの固定具で屋根側端部に留め付けて行ってもよい。
次いで、取り付けられた軒側の破風化粧板の継手部の先端側に、棟側に取り付ける破風化粧板の端部を配置し、この棟側の破風化粧板の上部被覆部の係合部を水切り板に係合させる。このとき、軒側の破風化粧板の継手部の端部表面にシーリング材を予め塗布しておく。
棟側の破風化粧板の上端部の係合部を水切り板に係合させたならば、前記係合部と水切り板との係合部位を支点として、棟側の破風化粧板を下方へ回転させて、棟側の破風化粧板の上部被覆部を軒側の破風化粧板の継手部の上面部に重ね合せるとともに、棟側の破風化粧板の下部被覆部を軒側の破風化粧板の
継手部先端部の上面部の下方に位置する空隙部分に入り込ませる。
そして、棟側の破風化粧板を軒側にスライドさせて、棟側の破風化粧板の先端部を前記軒側の破風化粧板の継手部の外周面に嵌合させる。その後、軒側の破風化粧板に継ぎ合わせた棟側の破風化粧板を固定具で屋根側端部に留め付けることで、取り付けが完了する。上記のようにして屋根側端部に取り付けられた破風化粧板に、さらに棟側に破風化粧板を取り付けるときは、前記と同様の手順で取り付けを行うことができる。
【0013】
本発明によれば、破風化粧板の端部に突出させた継手部の上面部の突出幅を下面部よりも大きく設け、継手部の先端部において上面部の下側が空隙部分となっているので、棟側に接続する破風化粧板がその下部被覆部に凹溝が設けるなどして複雑な断面形状のものであっても、接続する破風化粧板の端部を前記継手部の空隙部分にあてがうことで、接続する破風化粧板を変形させることなくその端部を継手部の外周面に装着することができる。
この際、接続する破風化粧板の上部被覆部に設けた係合部を水切り板に係合させた状態で破風化粧板を回転させて下方へ引き下げれば、破風化粧板の端部が継手部の外周面に装着し、続いて破風化粧板を軒側へスライドさせれば、端部を継手部に嵌合させることができる。
このように、破風化粧板同士の接続を、接続する破風化粧板を水切り板に係合させて下方へ回転し、次いでこれを軒側へスライドさせるという簡単な操作によって行うことができ、従来の如く破風化粧板の下部被覆部を押し広げる操作も不要なので、一人の作業者による少ない作業工数で、破風化粧板を屋根側端部に沿って確実且つ奇麗に取り付けてケラバに装飾破風を構成することが可能となる。
【0014】
また、前記構成の破風化粧板において、下部被覆部に上方へ凹んだ凹溝を設けるとともに、この凹溝内の屋外側の壁面に屋根裏空間を換気するための通気孔を複数列設して構成することができる。
屋根側端部の下方を覆う破風化粧板の下部被覆部に上方へ運んだ凹溝を設け、この凹溝の壁面に通気孔が形成してあれば、通気孔から外気を家屋の内部に取り入れて屋根裏空間へと流入させることで、屋根裏空間の換気を十分に行うことができる。通気孔は、凹溝内の屋外側の壁面に形成してあるので、降雨時に通気孔から化粧板内部に雨水が浸入し難く、また、屋根側端部を下から見上げても通気孔が目に触れることもなく、破風化粧板によりケラバを見栄え良く納めることができる。
【0015】
この場合、破風化粧板を本体化粧板と破風受板により構成し、通気孔を有する凹溝が設けられた下部被覆部が、本体化粧板の側部被覆部の下端部に設けた、当該下端部から上方へ折り返され且つ先端を家屋側へ屈曲させてなる折り返し面部に、一端部を軒天井に取り付けてなる破風受板の他端部を接続して構成することができる。破風化粧板を本体化粧板と破風受板の二つの部材により構成することにより、破風化粧板の取り付けに要する作業工数が減り、部材の加工性と取り付け作業性の向上が図れる。
また、前記通気孔付きの凹溝は本体化粧板と破風化粧板の何れかの側に設けることができるが、凹溝を挟んでその屋外側の壁面に本体化粧板の折り返し面部の側壁、家屋側の壁面に破風受板の側壁が対向配置されるように構成すれば、本体化粧板と破風受板の接続部位が凹溝内に位置して、屋根側端部を下から見上げても接続部位が目に付かず、前記通気孔が目に触れにくいことと相俟って屋根側端部の造作がスッキリとしたより見栄えの良いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の破風化粧板を取り付けてケラバに装飾破風を構成した屋根側端部の下側を、一部を破断して示した外観図である。
【
図2】
図1における屋根側端部の要部断面図である。
【
図4】
図3の破風化粧板の構成を示す展開斜視図である。
【
図5】(A)は破風化粧板の通気孔が形成された部分の要部拡大断面図、(B)はB−B線断面図である。
【
図6】(A)は
図3の破風化粧板を構成する本体化粧板と破風受板の断面図、(B)は両板を連結し且つ継手部を取り付けた状態の破風化粧板の断面図である。
【
図7】軒側破風化粧板を屋根側端部に取り付ける作業工程を説明するための図である。
【
図8】破風化粧板を屋根側端部に取り付ける際の操作を説明するための図である。
【
図9】(A)は棟側破風化粧板の継手部が突出された側の拡大図、(B),(C)はこれに棟側破風化粧板を接続する作業工程を説明するための図である。
【
図10】(A)は本発明の他の実施形態の破風化粧板の継手部が突出された側の拡大図、(B)はこれに他の破風化粧板を接続する作業工程を説明するための図である。
【
図12】
図11の破風化粧板を屋根側端部に取り付ける状態を示した図である。
【
図13】(A)〜(C)は
図11の破風化粧板を屋根側端部に取り付ける際の操作を説明するための図である。
【
図14】(A)は換気孔を備えた従来の破風化粧板の構成しめす要部斜視図、(B)は破風化粧板を取り付けた屋根側端部の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態の破風化粧板を取り付けてケラバに装飾破風を構成した屋根側端部下方の外観図、
図2は破風化粧板を屋根側端部に取り付けた状態を示す断面図、
図3は破風化粧板の外観斜視図、
図4はその展開斜視図である。
【0018】
図1に示されるように、ケラバに構成された装飾破風1は、屋根側端部2の棟側から軒側に亘りその周囲を覆うようにして破風化粧板3を取り付けて、恰も破風板が取り付けられた如き外観にケラバを装飾したものである。
【0019】
破風化粧板3は、
図1及び
図2に示されるように、屋根側端部2の上方を覆う上部被覆部31と、側方を覆う側部被覆部32と、下方を覆う下部被覆部33とを有して断面略コ字状をなし、本形態では屋根側端部2の軒側に取り付けられる軒側破風化粧板3Aと、棟側に取り付けられる棟側破風化粧板3Bとに分割して形成してある。
【0020】
詳しくは、本形態の破風化粧板3は、軒側破風化粧板3Aと棟側破風化粧板3Bがともに、屋根側端部2の上方、側方及び下方の一部を覆う本体化粧板4と、本体化粧板4とともに屋根側端部2の下方を覆う破風受板5の二つの部材を接続して構成され、さらに軒側破風化粧板3Aはその端部に継手部6を一体に取り付けて構成してある。
本体化粧板4、破風受板5及び継手部6は、表面を塩化ビニル樹脂シートで覆うなどの耐蝕加工が施された樹脂被覆鋼板をベンダーなどで折り曲げて形成してある。各板を形成する鋼板としては、例えば厚みが0.4mmの鋼板の表面を0.25mm厚の塩化ビニル樹脂シートで被覆し、裏面を0.1mm厚の塩化ビニル樹脂シートで被覆した樹脂被覆鋼板が好適である。
【0021】
本体化粧板4は、
図4に示されるように、前記上部被覆部31と側部被覆部32を構成する、屋根側端部2の上方と側方を覆う上面部41及び側面部42とを備えて形成され、屋根側端部2を覆うように本体化粧板4を設置した状態で、側面部42の面内に形成された断面コ字状の凹部42aにビスや釘などの固着具Nを打ち込むことにより、屋根側端部2の側面に固定されるようになっている。
より詳しくは、上面部41の先端下折れ部には後述する水切り板7に係合する係合部41aが設けられ、側面部42の下端部には家屋側に向かって略直角に折り曲げられた下面部43が設けられているとともに、当該下面部43の先端に上方へ折り返され且つ先端を家屋側へ屈曲させてなる折り返し面部44を連ね、さらに折り返し面部44の先端に下方へ折り曲げた係止片45を設けて形成してある。また、折り返し面部44の屋外側の側壁44aには、
図5に示されるように、パンチング加工により形成されたスリット状の通気孔46を複数列設してある。
【0022】
破風受板5は、
図4に示されるように、屋根側端部2の下方の一部を覆う幅を有する下面部51の前端に、上方へ略直角に折れ曲がっていて上部に水平折れ面部53を連ねてなる側壁52、後端に家屋側に向かって開口していて後述する軒天井8の端部が係入する係止凹部54をそれぞれ一体に設けて形成してある。
【0023】
継手部6は、
図4に示されるように、前記破風化粧板3の上部被覆部31、側部被覆部32及び下部被覆部33の内面に各々接合する上面部61、側面部62及び下面部63を有して断面略コ字状に形成されており、その一側の端部に、側面部62の下部から下面部63に亘り切除した切欠き部64を設けて形成してある。
【0024】
これら本体化粧板4と破風受板5からなる軒側と棟側の破風化粧板3A,3Bは、
図6に示されるように、本体化粧板4の折り返し面部44の上面に、破風受板5の水平折れ面部53を重ね合わせた状態で、折り返し面部44の上面に設けた孔部44bと水平折れ面部53に設けた孔部53aにブラインドリベットなどの固着具Nを嵌入して両面部を一体に固着することにより構成され、さらに軒側破風化粧板3Aは、同図(B)に示されるように、連結した本体化粧板4と破風受板5の一側の端部内面に継手部6を一体に取り付けて構成される。継手部6の取り付けは、予め継手部6の接合端部にシーリング材を塗布しておき、この接合端部を前記連結した本体化粧板4と破風受板5の一側の端部内面に嵌め合せて固着し、さらに、継手部6の上面部61と本体化粧板4の上面部41の重なり部に固着具Nを打ち込んで両部を留め付けることにより行うことができる。
【0025】
一体に連結した本体化粧板4と破風受板5は、屋根側端部2の下方を覆う下部被覆部33を構成し、また、両板の連結部であって互いに重合した前記折り返し面部44の上面と水平折れ面部53の下側には、折り返し面部44の側壁44aと破風受板5の側壁52が対向配置されてなる、上方へ凹んだ凹溝34が形成され、この凹溝34の屋外側の壁面に屋根裏空間を換気するための通気孔46が列設配置される。
【0026】
また、一側の端部内面に継手部6を一体に取り付けた軒側破風化粧板3Aは、
図3に示されるように、その後端である棟側の端部に継手部6が突設して形成され、前記の通り、継手部6の端部に切欠き部64を設けてあることにより、継手部6の上面部61の突出幅(W1)が下面部63の突出幅(W2)よりも大きくなり、上面部61の下方に切欠け部64による空隙部が配置されるように構成される。
【0027】
このように構成される破風化粧板3は、先に軒側破風化粧板3A、次いで棟側破風化粧板3Bの順で屋根側端部2に取り付けられる。
【0028】
先ず、軒側破風化粧板3Aの取り付けは、屋根側端部2に軒側破風化粧板3Aをあてがい、屋根の側端部上面に取り付けられた水切り板7に、前記本体化粧板4の上面部41に設けた係合部41aを係合させて取り付け位置を位置決めした状態で、前記本体化粧板4の側面部42に設けられた凹部42a内に固着具Nを打ち込むとともに、前記上面部41と水切り板7の係合部位に固着具Nを打ち込んで、軒側破風化粧板3Aを屋根側端部2に固定することにより行うことができる。
【0029】
次いで、屋根側端部2に固定された軒側破風化粧板3Aの棟側の端部に、棟側破風化粧板3Bを接続して取り付ける。このとき、
図7に示されるように、予め軒側破風化粧板3Aの継手部6の端部表面にシーリング材8を塗布しておく。
【0030】
棟側破風化粧板3Bの取り付けは、先ず、軒側破風化粧板3Aの継手部6の先端側に、棟側破風化粧板3Bの先端側端部を配置し、棟側破風化粧板3Bの前記上端部に設けられた係合部41aを水切り板7に係合させた状態で、
図8に示されるように、前記係合部41aと水切り板7との係合部位を支点として棟側破風化粧板3Bを下方へ回転させて、棟側破風化粧板3Bの前記本体化粧板4の上面部41を軒側破風化粧板3Aの継手部6の上面部61に重ね合せるとともに、
図9(B)に示されるように、棟側破風化粧板3Bの下部被覆部33を構成する破風受板5を前記継手部6の上面部61の下方に位置する切欠け部64内に入り込ませ、棟側破風化粧板3Bの端部を継手部6に装着する。
【0031】
次いで、
図9(C)に示されるように、棟側破風化粧板3Bを軒側にスライドさせて、棟側破風化粧板3Bの先端部を軒側破風化粧板3Aの継手部6の外周面に嵌合させて、両板の端部同士を一体に継ぎ合わせる。この際、継手部6と棟側破風化粧板3Bの端部との接合部を、棟側破風化粧板3Bの側面部42の凹部42aから固着具Nを打ち込んで留め付ける。
【0032】
そして、前記と同様にして、棟側破風化粧板3Bを固定具Nで屋根側端部2に固定した後、
図2に示されるように、一体に接続した両破風化粧板3A,3Bの破風受板5,5の端部をそれぞれ屋根側端部2の下面に固着具Nで固定し、両破風受板5,5の係止凹部54に軒天井9の端部を係合させて支持することにより、破風化粧板3の取り付けが完了する。
【0033】
図10は、破風化粧板3の他の形態を示しており、破風化粧板3の棟側の端部に突設される継手部6を、その先端側端面が上面部61の先端側から下面部63の根元側に向かって傾斜するように設けることにより、上面部61の突出幅が下面部63の突出幅よりも大きくなるようにして、上面部61の下方に空隙部が配置されるように構成したものである。
このような破風化粧板3においても、同図(B)に示されるように、前記と同様にして、棟側に接続する破風化粧板3Bの先端部下側を、継手部6の上面部61下方の空隙部分に入り込ませることにより、棟側の破風化粧板3Bの端部を継手部6に簡単に装着して、両板の端部同士を一体に継ぎ合わせることができる。
【0034】
本発明によれば、軒側破風化粧板3Aの端部に突出させた継手部6の上面部61の突出幅を下面部63よりも大きく設け、継手部6の先端部において上面部61の下側が空隙部分となっているので、これに接続する棟側破風化粧板3Bがその断面形状が複雑なものであっても、棟側破風化粧板3Bの端部を前記継手部6の空隙部分にあてがうことで継手部6に簡単に装着することができる。この際、棟側破風化粧板3Bの上部被覆部31に設けた係合部41aを水切り板7に係合させた状態で棟側破風化粧板3Bを回転させて下方へ引き下げれば、その端部が継手部6の外周面に装着し、続いて棟側破風化粧板3Bを軒側へスライドさせれば、端部を継手部6に嵌合させることが可能である。
このように、破風化粧板3A,3B同士の接続を、接続する破風化粧板3Bを水切り板7に係合させて下方へ回転し、次いでこれを軒側へスライドさせるという簡単な操作によって行うことができ、破風化粧板3Bを変形される操作も不要なので、一人の作業者による少ない作業工数で、破風化粧板を屋根側端部に沿って確実且つ奇麗に取り付けてケラバに装飾破風を構成することが可能となる。
【0035】
本発明の破風化粧板3によれば、屋根側端部2の下方を覆う下部被覆部33に上方へ運んだ凹溝34を設け、この凹溝34の壁面に通気孔46を形成してあるので、通気孔46から外気を取り入れて屋根裏空間へと流入させることで、屋根裏空間の換気を十分に行うことができる。通気孔46は、凹溝34内の屋外側の壁面に形成してあるので、降雨時に通気孔46から化粧板内部に雨水が浸入し難く、また、屋根側端部2を下から見上げても通気孔46が目に触れることもなく、破風化粧板3によりケラバを見栄え良く納めることができる。
【0036】
なお、図示した破風化粧板3は本発明の実施形態の一例を示すものであり、本発明はこれらに限定されず、取り付ける屋根側端部の形状や寸法などに応じて、他の適宜な形態で構成することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 装飾破風、2 屋根側端部、3 破風化粧板、3A 軒側破風化粧板、3B 棟側破風化粧板、31 上部被覆部、32 側部被覆部、33 下部被覆部、34 凹溝、4 本体化粧板、41 上面部、41a 係合部、42 側面部、43 下面部、44 折り返し面部、44a 側壁、45 係合片、46 通気孔、5 破風受板、51 下面部、52 側壁、53 水平折れ面部、6 継手部、61 上面部、62 側面部、63 下面部、64 切欠け部、7 水切り板、8 シーリング材、9 軒天井、N 固着具