(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれ並行して二次電池を検査するための第1チャンネル及び第2チャンネルを含む複数のチャンネルを備え、各チャンネルは二次電池の充放電電流を検出するための検出抵抗を含む充放電検査装置であって、
前記第1チャンネルの検出抵抗と前記第2チャンネルの検出抵抗とが標準抵抗を介して直列に接続される校正回路において各検出抵抗及び前記標準抵抗に共通の電流が流れるとき各検出抵抗及び前記標準抵抗のそれぞれに生じる電圧降下に基づいて、前記第1チャンネル及び第2チャンネルそれぞれについて各検出抵抗を通じて検出される充放電電流の検出値を補正するための校正パラメタを演算するコントローラを備えることを特徴とする充放電検査装置。
前記コントローラは、前記校正回路に第1方向に電流を流すことを含む第1校正と、前記校正回路に第1方向とは反対の第2方向に電流を流すことを含む第2校正と、を実行することを特徴とする請求項1に記載の充放電検査装置。
前記複数のチャンネルの各々は、二次電池の充電電流を制御するための第1のスイッチング素子と、二次電池の放電電流を制御するための第2のスイッチング素子と、を含み、
前記コントローラは、前記第1チャンネルの第1及び第2のスイッチング素子の一方と前記第2チャンネルの第1及び第2のスイッチング素子の他方とを組み合わせて制御することにより前記校正回路の電流の向きを制御することを特徴とする請求項1または2に記載の充放電検査装置。
複数の二次電池をそれぞれ並行して検査するための複数のチャンネルを備え、各チャンネルは二次電池の充放電電流を検出するための検出抵抗を含む充放電検査装置のための校正方法であって、
前記複数のチャンネルのうち1つのチャンネルの検出抵抗と当該1つのチャンネルとは異なる他の1つのチャンネルの検出抵抗とを標準抵抗を介して直列に接続することと、
直列に接続された各検出抵抗及び前記標準抵抗に共通の電流が流れるとき各検出抵抗及び前記標準抵抗のそれぞれに生じる電圧降下に基づいて、前記1つのチャンネル及び前記他の1つのチャンネルそれぞれについて各検出抵抗を通じて検出される充放電電流の検出値を補正するための校正パラメタを演算することと、を含むことを特徴とする校正方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る充放電検査システム2の構成を示すブロック図である。充放電検査システム2は、検査対象の二次電池1を充電し、あるいは放電することにより、二次電池1の電気的特性が仕様を満たしているかを検査する。二次電池1は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などが例示されるが、特に限定されない。充放電検査システム2は、複数の、望ましくは多数の二次電池1を並行して充電または放電することにより各二次電池1を検査するよう構成されている。
図1においては2つの二次電池1を代表的に示している。充放電検査システム2は、所定の検査項目を検査するための検査プロセスに従って二次電池1の充放電を制御する。なお
図1には本発明の一実施形態を説明するために関連する充放電検査システム2の主要な構成要素を示しており、充放電検査システム2は図示される要素以外の要素を備えてもよいし、場合によっては図示される要素のいずれかを備えていなくてもよい。
【0015】
充放電検査システム2は、電源装置3と電池検査台4とを含む。なお以下では電池検査台4を、電池検査ユニット4または単に検査ユニット4とも称する。一実施例においては、電源装置3と検査ユニット4とはそれぞれ別個の装置として構成されており、例えば接続ケーブルで接続される。電源装置3と検査ユニット4とは例えば隣接または近接して設置されてもよい。あるいは電源装置3は検査ユニット4から離れて設置されてもよい。接続ケーブルには電力線5と制御線6とが含まれる。制御線6は、電源装置3と検査ユニット4とのデジタル通信のために設けられている。なお電源装置3と検査ユニット4とのデジタル通信は有線に限られず無線であってもよい。
【0016】
電源装置3は、電源7及び電源コントローラ8を含む。電源7は例えば、外部の商用電源から電源回生コンバータ(図示せず)を介して電力の供給を受ける。電源回生コンバータにより、二次電池1の放電をするときには外部電源に電力を戻すことができる。電源7は例えばDC−DCコンバータであり、好ましくは絶縁双方向DC−DCコンバータである。電源7は、複数のチャンネル(例えば第1チャンネルCH1及び第2チャンネルCH2)を有しており、検査される各二次電池1に各チャンネルから電力を供給する。こうした給電チャンネルを電源7は多数備えている。
【0017】
電源コントローラ8は、充放電検査システム2を制御する制御部として設けられている。すなわち電源コントローラ8は、電源装置3と電池検査ユニット4とを統括的に制御して二次電池1の検査プロセスを実行するよう構成されている。なおこうした検査プロセスを制御するための制御部は、電池検査ユニット4に設けられていてもよいし(例えば後述のコントローラ20であってもよいし)、電源装置3及び電池検査ユニット4とは別体に設けられていてもよい。電源コントローラ8の制御のために必要な情報を保存するために、電源装置3には電源コントローラ8に付随して例えば不揮発性メモリ(図示せず)が設けられていてもよい。こうしたメモリは、電源コントローラ8からアクセス可能に設けられている。
【0018】
電源コントローラ8は、上位の制御装置または管理サーバ等(例えば
図2に示す管理サーバ19)によって管理されていてもよい。例えばこの管理サーバによって、後述の校正装置、搬送装置が管理されていてもよい。電源コントローラ8には、データ処理ユニット(図示せず)が接続されていてもよい。データ処理ユニットは例えば公知のパソコンであり、検査ユニット4で得られた電池の電圧、電流、温度等の測定データを電源コントローラ8を介して収集して記憶し、必要に応じて測定データを処理する。
【0019】
電池検査ユニット4は、プローブユニット9とテーブル10とを備える。プローブユニット9は、二次電池1を検査するための接触子例えば一対のプローブ11、12を備える。プローブ11、12は二次電池1に接続するための検査装置側の電極であり、二次電池1が着脱可能に接続される。一方のプローブ11は二次電池1の一方の電極(例えば正極)13に接続され、他方のプローブ12は二次電池1の他方の電極(例えば負極)14に接続される。プローブユニット9には複数対のプローブ11、12が設けられており、プローブ対と同数の二次電池1を同時に検査することができる。
【0020】
テーブル10は、検査される二次電池1を保持するために設けられている。テーブル10は、検査対象である複数または多数の二次電池1を例えば一列にまたはマトリックス状に並べて配置するよう構成されている。プローブユニット9のプローブ配列は、テーブル10の電池配列に対応または一致していてもよい。
【0021】
検査ユニット4は、それぞれ並行して二次電池1を検査するための複数のチャンネル(例えば第1チャンネルCH1及び第2チャンネルCH2)を備える。各チャンネルは、各二次電池1への充放電経路18を形成するために、以下に述べる共通の構成を有する。例えば第1チャンネルCH1の充放電経路18を
図1に破線の矢印で示す。
図1に示す矢印の方向は二次電池1を充電するための充電電流の方向であり、二次電池を放電するための放電電流の方向は
図1に示す方向とは逆方向である。第2チャンネルCH2についても同様である。以下では適宜、充電電流、放電電流の方向を充電方向、放電方向と呼ぶことがある。図においては充電方向が時計回りであり、放電方向が反時計回りである。
【0022】
検査ユニット4は、複数のチャンネルによって複数の二次電池1を同時に検査することができる。なおこのことは、各二次電池1がその検査工程において常に同一の局面にあることを要することを必ずしも意味しない(例えばすべての二次電池1が同一の電流または電圧プロファイルで一斉に充電または放電されることを必ずしも要するものではない)。よって、例えば、ある二次電池1の充電中に別の二次電池1では放電していてもよい。
【0023】
検査ユニット4の複数のチャンネルの各々は、電源7から与えられる入力を検査仕様に適合する電圧及び電流に調整するための昇降圧コンバータ17を備える。電源7と検査ユニット4またはプローブユニット9とがそれぞれの接続端子を電力線5で接続することにより接続される。電源7と昇降圧コンバータ17とは、電力線5と、検査ユニット4またはプローブユニット9の内部配線とによって接続される。昇降圧コンバータ17の構成の一例については後述する。昇降圧コンバータ17を以下では単にコンバータ17と呼ぶこともある。
【0024】
一実施例においては、
図1に示す複数のコンバータ17が複数の出力チャンネルをもつ単一のコンバータユニットとして構成されていてもよい。よって、複数のコンバータ17を総称して以下ではコンバータユニットと呼ぶこともある。この場合、コンバータユニットは電源7のある1つのチャンネルから電力の供給を受け、個別的に調整された電圧及び電流を複数の二次電池1の各々に与える。
【0025】
検査ユニット4の複数のチャンネルの各々は、上述の一対のプローブ11、12をさらに含む。プローブ11、12は充放電経路18の末端に設けられている。これら一組のプローブ11、12が二次電池1の両極それぞれに接触することで二次電池1が充放電経路18に接続される。なおプローブユニット9は、こうした給電用のプローブ11、12に加えて、二次電池1の両極間電圧を測定するためのプローブ(図示せず)、または二次電池1の表面またはその近傍の温度を測定するためのプローブ(図示せず)等を含む所望の検査仕様のための測定項目を測定するためのプローブを備えてもよい。
【0026】
複数のチャンネルの各々は、二次電池1の充放電電流を検出するための検出素子の一例である検出抵抗R1またはいわゆるシャント抵抗を含む。検出抵抗R1は、二次電池1の充放電経路18上において、二次電池1の正極13に接続されるほうのプローブ11とコンバータ17との間に設けられている。なお負極14のほうに検出抵抗R1が設けられてもよい。検出抵抗R1は、各検出抵抗R1には、二次電池1の充放電電流に比例した電圧降下が発生する。検出抵抗R1には二次電池1の充電時と放電時とで互いに逆方向に電流が流れる。また、各チャンネルは、検出抵抗R1の電圧降下VR1を増幅するための計装アンプ16を含んでもよい。
【0027】
一実施例においては、こうした検査チャンネルを構成する要素の大半はプローブユニット9に搭載されている。プローブユニット9は、コンバータ17、検出抵抗R1、プローブ11、12、計装アンプ16を備える。プローブユニット9は、A/Dコンバータ15、プローブユニット制御回路20、不揮発性メモリ22をさらに備える。A/Dコンバータ15、計装アンプ16、プローブユニット制御回路20、不揮発性メモリ22は、各チャンネルに共通する構成要素として設けられていてもよいし、チャンネルごとに個別的に設けられていてもよい。
【0028】
A/Dコンバータ15は、充放電電流、両極間電圧、または電池温度等の計測値を表すアナログ信号をデジタル信号に変換する。A/Dコンバータ15は例えば、検出抵抗R1に生ずる電圧降下VR1をアナログ/デジタル変換し、検出抵抗R1に流れる電流を示すデジタルの電流検出値を生成する。計装アンプ16はA/Dコンバータ15の前段に設けられている。なお計装アンプ16は省略され、A/Dコンバータ15がアナログ計測信号を直接受けるようにしてもよい。
【0029】
プローブユニット制御回路20は例えば、CPUまたはFPGAを含んで構成されている。なおプローブユニット制御回路20は簡単のため以下では適宜、単にコントローラ20とも称する。不揮発性メモリ22は、コントローラ20からアクセス可能にコントローラ20に付随してプローブユニット9に設けられており、後述のプローブユニット9の校正パラメタを保存するために設けられている。
【0030】
プローブユニット9は、充放電電流を含む計測値を表すアナログ信号からその計測値を表すデジタルの計測信号を生成する。コントローラ20は、プローブユニット9から外部(例えば電源コントローラ8)に送信するためのデジタル計測信号を生成する。コントローラ20は、A/Dコンバータ15の出力信号から、二次電池1の充放電電流等の二次電池1に関連する計測値を表す計測データを生成する。この計測データは、外部の制御装置(例えば電源コントローラ8)とのデジタル通信に適合する形式で生成される。こうしたデータ変換は公知の手法を用いてもよい。コントローラ20は、そのように生成した計測データを送信するための例えばリモートI/O等の公知の通信ユニットを含んでもよい。
【0031】
一実施例においては、電源コントローラ8は、所定の検査プロセスのための電流設定値に電流検出値が近づくように電源7のフィードバック制御を行う。あるいは、電源コントローラ8は、電流設定値に電流検出値が近づくよう上述の昇降圧コンバータのフィードバック制御を行う。このようにして、例えば二次電池1の定電流での充放電が行われる。定電圧での充放電についても同様である。他の一実施例においては電源コントローラ8に代えてコントローラ20がこうしたフィードバック制御を担ってもよい。電流設定値は例えば、検査プロセスに関連付けられて不揮発性メモリ22または電源装置3のメモリに保存されており、電源コントローラ8またはコントローラ20によって必要に応じて読み出される。
【0032】
電流検出値が示す充放電電流の値は、検出抵抗R1の抵抗値、計装アンプ16の利得、オフセット、A/Dコンバータ15の利得、オフセットなどの、ばらつき、温度依存性、経時的変動の影響を受ける。これらによって、電流検出値は、必ずしも充放電電流の真の値を示しているとは限らない。電圧検出値についても同様である。
【0033】
一実施例においては、コントローラ20は、測定値をその測定値の表す真の値に補正するための校正パラメタを使用してA/Dコンバータ15の出力信号(例えば上記の電流検出値)を補正してもよい。すなわち、コントローラ20は、A/Dコンバータ15のデジタル出力信号を、校正パラメタを参照することにより校正してもよい。校正パラメタは校正プロセスにより予め取得され、例えば不揮発性メモリ22に保存されている。校正パラメタはプローブユニット9に固有であり、1つのプローブユニット9のもつ複数の充放電経路18の各々についても固有の情報である。
【0034】
図2は、校正装置23及びそれを使用する校正プロセスの一例を示す図である。一実施例においては充放電検査システム2は標準抵抗24及び計測器25を備える校正装置23を含み、校正プロセスは校正装置23を使用して行われる。校正プロセスにおいては校正装置23の標準抵抗24が二次電池1に代えてプローブ11、12に接続される。標準抵抗24に電流が供給されると、標準抵抗24には電流に比例した電圧降下が発生する。校正装置23の計測器25による電圧降下の測定値と標準抵抗24の既知の抵抗値とに基づいて真の電流値を求めることができる。計測器25は例えばデジタルマルチメータである。校正プロセスにおいては例えば、複数の電流設定値を切り替え、それらの電流設定値ごとに対応する真の電流値を求める。こうして得られる電流設定値と真の電流値との対応関係から校正パラメタを求める。あるいは、プローブユニット9における電流検出値と真の電流値との対応関係から校正パラメタを求める。
【0035】
校正の方法は特に限定されないが、最も簡易には、複数の測定点を通る直線の近似式
y=ax+b …(1)
の傾きaおよび切片bを校正パラメタとしてもよい。xは電流設定値または電流検出値、yは真の電流値に対応する。校正には、2次以上の多項式近似を用いてもよい。得られた校正パラメタは、例えば不揮発性メモリ22に書き込まれる。こうして、コントローラ20は、電流検出値を式(1)の変数xとして代入することにより、値yを校正された真の電流検出値に補正することができる。
【0036】
図2に示すように、校正装置23は、検査台4の一対のプローブ11、12に対応して一対の接続端子26を備える。プローブ11、12と接続端子26とを接続することにより、プローブ11、12間に標準抵抗24が接続される。接続端子26は校正装置23の本体27から延びる配線の末端に設けられている。校正装置23は、本体27を典型的には検査台4の外部に配置し、接続端子26のみを検査台4のプローブユニット9とテーブル10との間に挿入してプローブ11、12に接続し、上述の校正プロセスを行う。なお可能な場合には校正装置23は、テーブル10に載置され、プローブユニット9とテーブル10との間に挿入されてもよい。
【0037】
校正装置23は、校正プロセスを制御するための校正制御回路28を備えてもよい。校正制御回路28は例えば、昇降圧コンバータ17への電流指令値を異ならせて複数回電流校正値を取得する。この取得結果に基づいて、校正制御回路28は例えば、計測器25で得られた真の電流値と検出抵抗R1による計測値との関係をチャンネルごとに演算し、各チャンネルの計測値を校正するための校正パラメタを求める。あるいは、校正制御回路28は、計測器25で得られた真の電流値と昇降圧コンバータ17への電流指令値との関係をチャンネルごとに演算して校正パラメタを求める。
【0038】
校正制御回路28は例えば、各チャンネルの計測値、昇降圧コンバータ17への電流指令値を含む校正パラメタ演算に必要な情報を管理サーバ19から取得する。またはそうした情報を校正制御回路28はコントローラ20または電源コントローラ8から管理サーバ19を通じて取得してもよい。校正制御回路28は演算した校正パラメタを管理サーバ19に送信する。送信された校正パラメタは、検査において使用するために、管理サーバ19、コントローラ20または電源コントローラ8に付随するメモリに保存される。
【0039】
校正プロセスは、検出抵抗R1に充電方向に通電したときと放電方向に通電したときとで個別的に行い、充電方向の校正パラメタと放電方向の校正パラメタとをそれぞれ求めることが好ましい。それにより、二次電池1の充電時と放電時とでそれぞれ専用の校正パラメタを使用して計測値を補正することができるので、計測精度の向上につながる。
【0040】
図2に示す構成においては検出抵抗R1及び標準抵抗24に充電方向に通電するために電源7を利用することができる。放電方向の通電のために、校正装置23は、電源部29をさらに備えてもよい。電源部29は、電池または電源と、その電池または電源を充放電経路18に組み込みまたは切り離すためのスイッチと、を備えてもよい。電源部29は例えば校正制御回路28により制御される。校正制御回路28は、充電方向の校正プロセスにおいては電源部29の電池または電源を充放電経路18から切り離すようスイッチを切り替え、放電方向の校正プロセスにおいては電源部29の電池または電源を充放電経路18に組み込むようスイッチを切り替える。
【0041】
よって、電池検査ユニット4がn個のチャンネルを有する場合には、充電方向及び放電方向の両方の校正をするために2n回の校正動作を要することになる。例えば
図2に示すように2つのチャンネルについて校正をする場合には、まず第1チャンネルCH1のプローブ11、12に校正装置23すなわち標準抵抗24が接続される。第1チャンネルCH1の検出抵抗R1及び標準抵抗24に充電方向に電流を流す1回目の校正動作が行われ、次に第1チャンネルCH1の検出抵抗R1及び標準抵抗24に放電方向に電流を流す2回目の校正動作が行われる。
【0042】
そして、第1チャンネルCH1から第2チャンネルCH2のプローブ11、12に校正装置23がつなぎ替えられる。第2チャンネルCH2の検出抵抗R1及び標準抵抗24に充電方向に電流を流す3回目の校正動作が行われ、次に第2チャンネルCH2の検出抵抗R1及び標準抵抗24に放電方向に電流を流す4回目の校正動作が行われる。各回の校正動作のたびに、またはすべての校正動作の終了後にまとめて、校正パラメタが演算される。こうして、2つのチャンネルについて4回の校正動作を経て校正プロセスが終了する。
【0043】
図3及び
図4は、本発明の好ましい一実施例に係る校正装置100及びそれを使用する校正プロセスの一例を示す図である。本実施例によれば、n回の校正動作でn個のチャンネルの充電方向及び放電方向の両方の校正をすることができる。充放電検査システム2は、校正装置100を備える。本実施例においては、複数のチャンネルのうち1つのチャンネルと当該1つのチャンネルとは異なる他の1つのチャンネルとが校正装置100の標準抵抗102を介して接続されて、校正プロセスのための校正回路が形成される。
【0044】
好ましい一実施例においては、校正プロセスは、校正回路に第1方向に通電する第1校正と、校正回路に第1方向とは逆方向の第2方向に通電する第2校正と、を含む。
図3には第1校正を示し、
図4には第2校正を示す。好ましい一実施例においては、第1校正においては一方のチャンネルで充電方向の校正がなされ他方のチャンネルで放電方向の校正がなされ、第2校正においては逆に一方のチャンネルで放電方向の校正がなされ他方のチャンネルで充電方向の校正がなされる。
【0045】
好ましい一実施例においては、第1校正と第2校正とで共通の電源(例えば電源7)を使用するために、校正回路は、第1校正と第2校正とで電流経路を切り替えるためのスイッチング素子を含む。このスイッチング素子は、好ましい一実施例においては昇降圧コンバータ17に内蔵されている。スイッチング素子は公知の素子であってよく、例えばFETまたはIGBTであってもよい。すなわち、昇降圧コンバータ17は、校正プロセスのための回路切替手段としても機能する。
【0046】
校正装置100は、標準抵抗102と、標準抵抗102を検査台4に接続するための接続端子104と、を備える。校正装置100は、標準抵抗102に生じる電圧降下を測定するための計測器106をさらに備える。計測器106は例えばデジタルマルチメータである。校正装置100は、充放電検査システム2に収容可能な寸法に、具体的にはプローブユニット9とテーブル10との間に収容可能な寸法に形成されている。校正装置100は、後述するように放電方向の校正のための電源を有する必要がないので、充放電検査システム2に収容可能に小形に設計をすることが比較的容易である。なお
図4に示す校正装置100は1組の接続端子104及び1つの標準抵抗102及び計測器106を備える。しかし、検査台4が多数のプローブ11、12を備える場合には、それに合わせて、校正装置100は複数組の接続端子104及び複数の標準抵抗102を備えてもよい。
【0047】
校正装置100は、計測器106の出力する計測信号を外部に出力するよう構成されている。校正装置100は、充放電検査システム2の電源コントローラ8またはコントローラ20に接続され、計測器106の出力信号を電源コントローラ8またはコントローラ20に与えてもよい。以下ではコントローラ20が校正プロセスを制御する例を説明するが、電源コントローラ8またはその他の制御装置が校正プロセスを制御してもよい。なお、校正装置100に代えて、
図2に示す校正装置23を用いて以下に述べる校正プロセスを実行することも可能である。
【0048】
まず、校正装置100の接続端子104の一方が検査ユニット4のあるチャンネルに接続され、接続端子104の他方が検査ユニット4の別のチャンネルに接続されて、2つのチャンネルの間に標準抵抗102が取り付けられる。例えば
図3及び
図4に示すように、接続端子104の一方が第1チャンネルのプローブ11に接続され、接続端子104の他方が第2チャンネルのプローブ11に接続される。こうして校正プロセスのために一時的に形成される校正回路においては、第1チャンネルの検出抵抗R1と第2チャンネルの検出抵抗R1とが標準抵抗102を介して直列に接続される。よって、第1チャンネルの検出抵抗R1、標準抵抗102、及び第2チャンネルの検出抵抗R1には電源7から共通の電流が与えられる。
【0049】
コントローラ20は第1校正及び第2校正を順次実行する。第1校正においては
図3に示すように、コントローラ20は第1チャンネルから第2チャンネルへと標準抵抗102を第1方向に電流を与えるよう電源7を制御する。第1校正における電流経路を
図3に破線の矢印で示す。第1チャンネルの検出抵抗R1は充電方向に通電され、第2チャンネルの検出抵抗R1は放電方向に通電される。より具体的には、この第1電流経路は、電源7から、第1チャンネルのコンバータ17、検出抵抗R1、プローブ11、校正装置100の一方の接続端子104、標準抵抗102、他方の接続端子104、第2チャンネルのプローブ11、検出抵抗R1、コンバータ17を経て、電源7に戻る。
【0050】
また、第2校正においては
図4に示すように、コントローラ20は第2チャンネルから第1チャンネルへと標準抵抗102を、第1方向とは反対の第2方向に電流を与えるよう電源7を制御する。第2校正における電流経路を
図4に破線の矢印で示す。第1チャンネルの検出抵抗R1は放電方向に通電され、第2チャンネルの検出抵抗R1は充電方向に通電される。より具体的には、この第2電流経路は、電源7から、第2チャンネルのコンバータ17、検出抵抗R1、プローブ11、校正装置100の一方の接続端子104、標準抵抗102、他方の接続端子104、第1チャンネルのプローブ11、検出抵抗R1、コンバータ17を経て、電源7に戻る。
【0051】
このようにコントローラ20は、第1チャンネルにはその検出抵抗に充電方向及び放電方向の一方にかつ第2チャンネルにはその検出抵抗に充電方向及び放電方向の他方に電流を流すようにコンバータユニットを制御する。コンバータユニットの動作については
図5乃至
図7を参照して後述する。
【0052】
コントローラ20は、各検出抵抗及び標準抵抗102のそれぞれに生じる電圧降下に基づいて、第1チャンネル及び第2チャンネルそれぞれについて各検出抵抗を通じて検出される充放電電流の検出値を補正するための校正パラメタを演算する。コントローラ20は、各回の校正動作のたびに、またはすべての校正動作の終了後にまとめて、校正パラメタを演算する。このようにして、2つのチャンネルについて2回の校正動作で校正プロセスを完了することができる。
【0053】
例えば、コントローラ20は、第1チャンネルから第2チャンネルへと標準抵抗102を一方向に流す電流を与え当該一方向についての校正パラメタを第1チャンネル及び第2チャンネルそれぞれについて演算する第1校正を実行する。コントローラ20は、第1チャンネルの検出抵抗R1と標準抵抗102とで電圧降下を対照することにより第1チャンネルについての校正パラメタを演算する。次に、コントローラ20は、第2チャンネルから第1チャンネルへと標準抵抗102を反対方向に流す電流を与え当該反対方向についての校正パラメタを第1チャンネル及び第2チャンネルそれぞれについて演算する第2校正を実行する。コントローラ20は、第2チャンネルの検出抵抗R1と標準抵抗102とで電圧降下を対照することにより第2チャンネルについての校正パラメタを演算する。
【0054】
本実施例は検査ユニット4のチャンネル数が偶数であることが好ましい。しかし、容易に理解されるように、検査ユニット4のチャンネル数が奇数であっても本実施例を適用することは可能である。偶数であるチャンネル数nの場合にはn回の校正動作でn個のチャンネルの充電方向及び放電方向の両方の校正をすることができ、奇数であるチャンネル数mの場合には、m+1回の校正動作でm個のチャンネルの充電方向及び放電方向の両方の校正をすることができる。つまり奇数の場合であっても端数となる1つのチャンネルについて別途校正するようにすれば、偶数の場合と同様に検査ユニット4の校正をすることができる。
【0055】
図5は、本発明の一実施形態に係る昇降圧コンバータ17の構成、及び校正回路の一例を示す図である。
図6及び
図7は、本発明の一実施形態に係る校正プロセスの一例を示す図である。
図6及び
図7はそれぞれ
図3及び
図4に対応しており、
図6には第1校正を示し、
図7には第2校正を示す。
図6及び
図7においても電流経路を破線の矢印で示す。なお
図5乃至
図7において
図1乃至
図4に示す構成要素と共通する要素については、説明の不必要な重畳を避けるため共通の参照符号を付すことにより適宜説明を省略する。
【0056】
電池検査ユニット4の複数のチャンネルの各々は、二次電池1の充電電流を制御するための第1トランジスタ50と、二次電池1の放電電流を制御するための第2トランジスタ52と、を含む。第1トランジスタ50及び第2トランジスタ52は、スイッチング素子または電流制御素子として設けられており、例えばFET(電界効果型トランジスタ)である。コントローラ20は、第1トランジスタ50及び第2トランジスタ52のそれぞれのゲート電圧を制御することにより、第1トランジスタ50及び第2トランジスタ52のスイッチング素子としての開閉、及び電流制御素子としての通電量を制御する。
【0057】
図5に示すように、コンバータ17は、1対のプローブ11、12にコンバータ17を接続するための1対のプローブ接続端子54と、電源7にコンバータ17を接続するための1対の電源接続端子56と、を備える。プローブ接続端子54及び電源接続端子56の一方どうしを結ぶ導線とプローブ接続端子54及び電源接続端子56の他方どうしを結ぶ導線との間に第1トランジスタ50と第2トランジスタ52とが直列に接続されている。第1トランジスタ50及び第2トランジスタ52のそれぞれには並列にダイオード58、60が設けられている。第1トランジスタ50及び第2トランジスタ52の電流方向とダイオード58、60の電流方向とは逆向きである。
【0058】
コンバータ17はリアクトル62を備え、リアクトル62は、一端が第1トランジスタ50と第2トランジスタ52との間に接続され、他端がプローブ接続端子54の一方に接続される。そのプローブ接続端子54の一方は検出抵抗R1を介してプローブ11へと接続されている。プローブ接続端子54の他方はプローブ12に接続されている。コンバータ17は、2つのダイオード64、66からなる保護回路を更に備える。この保護回路は二次電池1をプローブ11、12から取り外す際にリアクトル62から放出される電流を端子56に導くための回路である。
【0059】
電池検査に際して充電方向に電流を流す場合には第1トランジスタ50が制御される。電源7の正極Pから、第1トランジスタ50、リアクトル62、検出抵抗R1を通じて二次電池1(
図1参照)または校正装置23(
図2参照)に電流が流れる。二次電池1からプローブ12、プローブ接続端子54、電源接続端子56を通じて電源7の負極Nに戻る。一方、放電方向に電流を流す場合には第2トランジスタ52が制御される。二次電池1または電源部29(
図2参照)の正極から、プローブ11、検出抵抗R1、リアクトル62、ダイオード58、電源7の正極P、電源7の負極N、電源接続端子56、プローブ接続端子54、プローブ12を経て二次電池1の負極に戻る。
【0060】
好ましい一実施例においては
図6及び
図7に示すように、コントローラ20は、第1チャンネルの第1トランジスタ50及び第2トランジスタ52の一方と第2チャンネルの第1トランジスタ50及び第2トランジスタ52の他方とを組み合わせて制御することにより校正回路の電流を制御する。
【0061】
第1校正においては
図6に示すように、コントローラ20は、第1チャンネルの第1トランジスタ50と第2チャンネルの第2トランジスタ52とを組み合わせて制御する。具体的には、コントローラ20は、第2チャンネルの第2トランジスタ52をオン状態とし、第1チャンネルの第1トランジスタ50によって電流制御を行う。その結果、電源7の正極Pから、第1チャンネルの第1トランジスタ50、リアクトル62、検出抵抗R1、標準抵抗102、第2チャンネルの検出抵抗R1、リアクトル62、第2トランジスタ52を経て電源7の負極Nへと制御された電流が流れる。このようにして、第1チャンネルの検出抵抗R1、標準抵抗102、及び第2チャンネルの検出抵抗R1に共通の電流を同時に与えることができる。
【0062】
一方、第2校正においては
図7に示すように、第2チャンネルの第1トランジスタ50と第1チャンネルの第2トランジスタ52とを組み合わせて制御する。具体的には、コントローラ20は、第1チャンネルの第2トランジスタ52をオン状態とし、第2チャンネルの第1トランジスタ50によって電流制御を行う。その結果、電源7の正極Pから、第2チャンネルの第1トランジスタ50、リアクトル62、検出抵抗R1、標準抵抗102、第1チャンネルの検出抵抗R1、リアクトル62、第2トランジスタ52を経て電源7の負極Nへと制御された電流が流れる。このようにして、第1校正とは反対方向に第1チャンネルの検出抵抗R1、標準抵抗102、及び第2チャンネルの検出抵抗R1に共通の電流を同時に与えることができる。
【0063】
なお、第1校正においてコントローラ20は、第1チャンネルの第1トランジスタ50をオン状態とし、第2チャンネルの第2トランジスタ52によって電流制御をしてもよい。同様に第2校正において、コントローラ20は、第2チャンネルの第1トランジスタ50をオン状態とし、第1チャンネルの第2トランジスタ52によって電流制御をしてもよい。オン状態とは例えば、許容されるゲート電圧範囲の最大値またはオン状態として設定されているゲート電圧値を与えてスイッチング素子としてのトランジスタを開放することをいう。上記においてオン状態とされるトランジスタは必ずしもオン状態に固定されなくてもよく、他方のトランジスタによる電流制御に制限を与えることを避けるように当該他方のトランジスタに連動させて制御されてもよい。
【0064】
図8及び
図9は、本発明の一実施形態に係る電池検査ユニット4の構成を概略的に示す図である。
図8は検査のために二次電池1が電池検査ユニット4に収容された状態を示し、
図9は隣接する2つのチャンネルを同時に校正するための校正装置100が収容された状態を示す。
図9に示す校正プロセスの際には二次電池1は電池検査ユニット4の外部に搬出されている。説明の便宜上、図示のように、二次電池1の配列方向をX方向、鉛直方向をY方向、両者に直交する方向をZ方向とするXYZ直交座標系を定める。
【0065】
電池検査ユニット4は上述のように、プローブユニット9と、テーブル10と、を含んで構成されている。プローブユニット9は、プローブユニット支持部49に取り付けられている。テーブル10は、二次電池1のための電池支持台である。テーブル10は、二次電池1を直に支持するよう構成されていてもよいし、二次電池1を支持するための電池フォルダ40またはパレットを支持するよう構成されていてもよい。
【0066】
電池検査ユニット4は、天板32、底板34、及び支柱36を含む支持構造を備える。支柱36の一端に天板32が固定され、他端に底板34が固定されている。天板32及び底板34は概ね同一形状(例えば矩形)の平板部材であり、その複数の角部にそれぞれ支柱36が取り付けられている。支柱36は、プローブユニット支持部49を案内するためのガイドとしても設けられている。天板32により検査ステージ30が支持され、底板34によりテーブル10が支持されている。検査ステージ30の駆動機構を作動させることによりプローブユニット支持部49は支柱36に沿って上下に移動することができる。
【0067】
図示の実施例においては、検査ステージ30(及びプローブユニット9)とテーブル10とは対向し、両者の間に電池収容空間38が形成される。検査ステージ30は、テーブル10の鉛直方向上方に配置されている。テーブル10には、二次電池1の温度調整または冷却をするためのクロスフローファン等の送風機が取り付けられていてもよい。
【0068】
二次電池1は、図示の例では直方体形状を有し、側面を互いに対向させ隣りの二次電池1と間隔をあけて水平方向(X方向)に並べられている。二次電池1の側面は鉛直方向(Y方向)に平行な平面である。本実施例では二次電池1は、電池フォルダ40に保持された状態で図示しない搬送装置により例えばX方向に検査ユニット4に搬入され検査され搬出される。電池フォルダ40により二次電池1の下部が支持されている。二次電池1は、その上面に1つまたは複数の(例えば2つの)電極を有する。なお二次電池1の形状及び配列はこれに限られず、任意の形状を有してもよいし、任意の配列で並べられてもよい。また、電極の配置及び数も図示の形態に限られない。
【0069】
一実施例においては、テーブル10は位置が固定されており、検査ステージ30によってプローブユニット9が上下に移動される。検査ステージ30の移動によって、二次電池1の電極13、14とプローブ11、12とが接離される。なお電極14及び対応するプローブ12は電極13及びプローブ11のZ方向背後にある。検査ステージ30とともに、または検査ステージ30に代えて、テーブル10が移動可能とされてもよい。好ましくはプローブユニット9は、プローブ配列が二次電池1の配列に一致するよう構成されている。図示しない搬送装置は各二次電池1が対応するプローブ11の直下に位置するよう電池フォルダ40を検査ステージ30に載置する。このようにして検査ユニット4は、プローブ11に対する二次電池1の相対前進によって各プローブ11が対応する二次電池1に接続されるよう構成されている。
【0070】
また、プローブユニット9は、プローブ11を支持するためのプローブ支持プレート46を備える。プローブユニット9は、電装品収容部48を備える。電装品収容部48は例えば、プローブ支持プレート46とプローブユニット支持部49との間に形成されている。電装品収容部48には、
図1に示す検出抵抗R1、A/Dコンバータ15、計装アンプ16、プローブユニット制御回路20、及び不揮発性メモリ22が収容される。ノイズの影響低減のために、アナログ信号を取り扱う構成要素がプローブユニット9に集約され、アナログ信号線が物理的に短くされている。検査台4と電源装置3との間はデジタル通信が採用されている。検査台4と電源装置とをアナログ線で接続する場合に比べて、信号へのノイズの影響を低減することができる点も好ましい。
【0071】
充放電検査システム2の動作の一例を説明する。検査が開始される。まず二次電池1が電池フォルダ40に配列された状態で、検査ユニット4に搬入される。プローブユニット9の各プローブ11の直下に各二次電池1の電極が位置するよう電池フォルダ40は検査ステージ30に位置決めされる。検査ステージ30の移動機構によってプローブユニット9は鉛直方向下方に移動され、二次電池1の電極とプローブ11との接触により二次電池1とプローブ11との電気的接続が確立される。こうして検査の準備段階は完了する。
【0072】
例えば電源コントローラ8及びコントローラ20の制御のもとで二次電池1の検査が実行される。検査項目ごとに電圧プロファイルまたは電流プロファイルが予め定められている。こうしたプロファイルに従って電源コントローラ8は各二次電池1の充放電を制御する。それとともに、必要な計測項目についての計測値が取得される。校正パラメタを使用して、計測値を表すアナログ信号から校正されたデジタルの計測信号が生成される。校正された計測値に基づいて検査が実行され、各二次電池1の例えば良否が判定される。
【0073】
検査が完了すると、搬入とは逆の流れで検査ユニット4から電池フォルダ40及び二次電池1が搬出される。続いて、次に検査される二次電池1が電池フォルダ40に搭載されて検査ユニット4に搬入され、同様にして検査が実行される。あるいは次の電池を検査する代わりに、充放電検査システム2の校正を含む保守作業が実行される。
【0074】
図9に示すように、校正装置100が検査ユニット4に搬入される。校正装置100の複数の接続端子104は複数のプローブ11の配列に適合する配列で形成されている。例えば、複数の接続端子104の数及び間隔は、複数のプローブ11の数及び間隔に一致している。接続端子104は、検査ユニット4への搬入の際に二次電池1の電極の位置決めされるべき位置に位置決めされる。検査ステージ30の移動によってプローブユニット9が鉛直方向に移動され、接続端子104とプローブ11とが接離される。このようにして、プローブユニット9の隣接する2つのチャンネルの各プローブ11を校正装置100の接続端子104に容易に接続することができる。
【0075】
プローブユニット9と校正装置100とが接続されて、上述の校正プロセスが実行される。例えば第1校正及び第2校正が順次実行される。校正プロセスが完了したら、校正装置100は検査ユニット4から搬出される。保守作業の他の工程が行われるか、電池検査が再開される。
【0076】
本発明の一実施形態によれば、校正作業に要する時間を好ましくは半減させることができる。2つの検査チャンネルについての充電/放電の双方向の校正を、従来の典型的な手法では4回の校正動作を要するところ、2回の動作で済ませられる。また、2つのチャンネルについて1つの標準抵抗を共用して校正することができる。同時に多数のチャンネルを校正するために要する標準抵抗を少数にする(例えば半減する)ことができるので、校正装置の小型化が可能となる。充放電検査装置に校正装置を収容しやすくなり、校正装置を外部に配置してケーブル等で充放電検査装置に接続する場合に比べて、作業性の向上を期待できる。比較的高額である標準抵抗に要するコストも小さくすることができる。
【0077】
また、充放電検査装置の電源を使用して双方向の校正をすることができるので、校正装置に放電側校正のための電源または電池を設ける必要がない。このことも、校正装置の小型化に寄与する。
【0078】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0079】
例えば、上述の実施形態においては、昇降圧コンバータを校正プロセスのための回路切替手段に兼用するようにしているが、校正プロセス専用のスイッチング手段を設けてもよい。そうした場合には、第1及び第2のチャンネルの一方で充電方向、他方で放電方向に校正をする以外に、第1及び第2のチャンネルの両方で充電方向にまたは放電方向に校正をすることも可能となるであろう。
【0080】
また、上述のように、検出抵抗R1は負極14側に設けられていてもよい。検出抵抗R1は、対応するプローブ12と、コンバータ17を接続するための1対のプローブ接続端子54のうち一方との間に設けられる。つまり、
図5においては検出抵抗R1は上側のプローブ接続配線に設けられているが、検出抵抗R1は下側のプローブ接続配線に設けられていてもよい。
【0081】
この場合、校正回路は次のように構成することもできる。まず、第1チャンネルCH1のプローブ11、12が配線で直接接続される。第2チャンネルCH2のプローブ11、12についても直接接続される。検出抵抗R1を有するプローブ接続配線のプローブ接続端子54側の端子がプローブ接続端子54から取り外され、その端子どうしを第1チャンネルCH1と第2チャンネルCH2とで標準抵抗102を介して接続する。このようにしても、第1チャンネルCH1の検出抵抗R1、標準抵抗102、及び第2チャンネルCH2の検出抵抗R1が直列に接続される校正回路を形成可能であり、上述の第1校正及び第2構成を同様に適用することができる。