特許第6017850号(P6017850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017850
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/30 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   F16K17/30 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-137823(P2012-137823)
(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-1809(P2014-1809A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】豊興工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506002823
【氏名又は名称】古河ユニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖丈
(72)【発明者】
【氏名】木谷 友彦
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−065830(JP,A)
【文献】 実開平01−083975(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/30
F16K 17/20
F16K 17/04
F16K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧力室及び第2圧力室、並びに前記第1圧力室側と前記第2圧力室側とを区画する区画部を有し、前記区画部に前記第1圧力室側と前記第2圧力室側とを連通させる連通穴が設けられたバルブボディと、
前記第1圧力室側に設けられ、前記第1圧力室側と前記第2圧力室側との連通状態を調整する弁体と、
前記連通穴に圧入され、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを連通させる弁口及び前記弁体が着座する弁座部を有する弁座部材と、
前記弁座部材に設けられ、前記第2圧力室側に連通するとともに、前記連通穴の内周面に向けて開口した第1開口部を有する逃がし流路であって、当該第1開口部が当該内周面に閉塞されている逃がし流路と
を備えることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記バルブボディに設けられ、前記弁体が前記弁座部から離間したときに前記弁体に設けられた当接部が接触することにより、前記弁体の移動を停止させるストッパ部を備え、
前記区画部のうち前記第1圧力室側の端部から前記第1開口部の縁部までの寸法を第1寸法と呼び、前記当接部から前記ストッパ部までの寸法を第2寸法と呼ぶとき、
前記第1寸法は、前記第2寸法より小さいことを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記弁座部材は円筒状に形成され、かつ、前記第1開口部は、前記弁座部材の外周面にて開口していることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記逃がし流路のうち前記第2圧力室側で開口する第2開口部は、前記弁座部材の内周面にて開口していることを特徴とする請求項3に記載のバルブ。
【請求項5】
前記弁座部材は、前記第1圧力室側から前記連通穴に圧入されており、
さらに、前記区画部のうち前記第2圧力室側には、前記弁座部材に接触して前記弁座部材が前記第2圧力室側に移動することを規制する規制部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項6】
前記第1圧力室側には、前記弁体を前記弁座部に押し付ける弾性力を発揮する弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流路を開閉等するバルブに関するものである。そして、本発明は、カウンタバランス弁に適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のバルブでは、弁体が着座する弁座部を、バルブボディと別体部品であるバルブシートに設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−130500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常、バルブでは、弁口、つまり弁座部を挟んで一方側と他方側との間で圧力差がある。このため、圧力差が大きい場合には、バルブシート等の弁座部材がバルブボディに対して移動してしまう可能性ある。
【0005】
仮に、弁座部材が弁体と一体的にバルブボディに対して移動してしまうと、弁体が弁座部に着座したままとなる場合がある。そして、このような場合には、実質的に弁口が閉塞されたままとなってしまうという不具合が発生してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、弁座部材がバルブボディと別体であるバルブにおいて、実質的に弁口が閉塞されたままとなってしまうという不具合の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、第1圧力室(11A)及び第2圧力室(11B)、並びに第1圧力室(11A)側と第2圧力室(11B)側とを区画する区画部(11C)を有し、区画部(11C)に第1圧力室(11A)側と第2圧力室(11B)側とを連通させる連通穴(13B)が設けられたバルブボディ(11)と、第1圧力室(11A)側に設けられ、第1圧力室(11A)側と第2圧力室(11B)側との連通状態を調整する弁体(19)と、連通穴(13B)に圧入され、第1圧力室(11A)と第2圧力室(11B)とを連通させる弁口(21A)及び弁体(19)が着座する弁座部(21B)を有する弁座部材(21)と、弁座部材(21)に設けられ、第2圧力室(11B)側に連通するとともに、連通穴(13B)の内周面(13C)に向けて開口した第1開口部(25A)を有する逃がし流路(25)とを備えることを特徴とする。
【0008】
これにより、本発明では、第1開口部(25A)は、連通穴(13B)の内周面(13C)に向けて開口しているので、圧入された弁座部材(21)が当該圧入位置に保持されている状態では、第1開口部(25A)は当該内周面(13C)により閉塞された状態となる。つまり、この状態では、逃がし流路(25)が設けられていない従来のバルブと同様な状態となる。
【0009】
しかし、第2圧力室(11B)の圧力が第1圧力室(11A)より大きい場合において、何らかの原因により第2圧力室(11B)と第1圧力室(11A)との圧力差が過度に大きくなる場合がある。このような場合においては、弁座部材(21)を第1圧力室(11A)側に押圧する力が大きくなるため、弁座部材(21)が第1圧力室(11A)側に移動してしまう場合がある。
【0010】
そして、仮に弁座部材(21)が弁体(19)と一体的に区画部(11C)に対して移動した場合であっても、本発明では、第2圧力室(11B)側と第1圧力室(11A)側とを連通させることができる。
【0011】
すなわち、弁座部材(21)が第1圧力室(11A)側に移動したときに、本発明では、第1開口部(25A)が第1圧力室(11A)側の空間に開放された状態にすることができる。したがって、第2圧力室(11B)側と第1圧力室(11A)側とを連通させることができる。
【0012】
以上のように、本発明によれば、弁座部材(21)がバルブボディ(11)と別体であるバルブにおいて、実質的に弁口(21A)が閉塞されたままとなってしまうという不具合の発生を抑制できる。
【0013】
なお、本発明における「連通状態を調整する」とは、弁口(21A)を単純に開閉する場合や弁口(21A)の開度を連続的又は段階的に変化させる場合等をいう。
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るバルブを適用した油圧制御回路を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るバルブ部の構造を示す断面図である。
図3図2の作動状態を示す断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るバルブ部において、弁座部材21が移動してしまった状態を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るバルブ部の構造を示す断面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係るバルブ部の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に説明する「発明の実施形態」は実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではない。
【0016】
そして、本実施形態は、カウンタバランス弁に本発明に係るバルブを適用したものである。以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るカウンタバランス弁10を用いた油圧制御回路を示している。この油圧制御回路は、油圧シリンダ等の流体圧を利用したアクチュエータ1の作動圧を制御する。
【0017】
なお、図1に示す油圧制御回路は、例えば特開2004−308746号公報に記載された油圧制御回路と同様であり、かつ、図1に示す油圧制御回路を構成する各機器は、JIS B 0125−1(2007)、JIS B 0125−2(2001)の規定に従って記載されている。したがって、油圧制御回路の説明は、概略説明に止める。
【0018】
1.油圧制御回路(図1参照)
油圧ポンプ2は、タンク2Aに貯留されている作動油を吸入し、当該吸入した作動油を吐出する。方向制御弁3は、油圧ポンプ2とカウンタバランス弁10との接続関係を切り替える。因みに、本実施形態に係る方向制御弁3は手動式である。
【0019】
リリーフ弁4は、油圧ポンプ2の吐出圧が予め決められた圧力以上となったときに、油圧ポンプ2の吐出側と吸入側とを連通させることにより、吐出圧の上昇を抑制する安全弁である。
【0020】
そして、油圧ポンプ2とカウンタバランス弁10との接続関係を切り替えることにより、アクチュエータ1、つまり油圧シリンダを(a)伸張作動させる場合、(b)縮小作動させる場合、及び(c)伸張又は縮小した状態を保持する場合等を切り替えることができる。
【0021】
2.カウンタバランス弁
2.1 カウンタバランス弁の概要
図2に示すように、バルブボディ11には、バルブボディ11内を第1圧力室11Aと第2圧力室11Bとに区画する区画部11Cが設けられている。そして、第1圧力室11Aは油圧ポンプ2側に接続され、かつ、第2圧力室11Bはアクチュエータ1側に接続されている。
【0022】
なお、本実施形態に係るバルブボディ11は、鋳鉄にて構成されている。そして、第1圧力室11A及び第2圧力室11B等のバルブボディ11内の空間は、バルブボディ11の鋳造時に鋳穴として成形された後、切削加工等の機械加工による仕上げ工程を経て形成される。このため、本実施形態に係る区画部11Cは、バルブボディ11に一体形成された部位となる。
【0023】
また、区画部11Cには、第1圧力室11A側と第2圧力室11B側とを連通させる第1連通穴13A及び第2連通穴13Bが設けられている。これら第1連通穴13A及び第2連通穴13Bは、区画部11Cにより内周面が構成された円柱状の空間である。
【0024】
なお、第2圧力室11Bは、バルブボディ11に設けられた第1接続口11D及び第2接続口11Eに連通している。第1接続口11Dは、アクチュエータ1の伸張側油室1A(図1参照)側に接続される。第2接続口11Eは、アクチュエータ1の縮小側油室1B(図1参照)側に接続される。
【0025】
そして、油圧ポンプ2から吐出された作動油は、第1連通穴13A及び第1接続口11Dを経由して伸張側油室1A内に流入し、アクチュエータ1を伸張させる。なお、伸張側油室1Aの体積膨張に伴って縮小側油室1Bの体積は縮小するが、縮小した体積に相当する作動油は、流路1C(図1参照)を経由してタンク2Aに戻る。
【0026】
第1連通穴13Aには逆止弁15が設けられている。逆止弁15は、作動油が第1圧力室11A側から第2圧力室11B側に流通することを許容し、作動油が第2圧力室11B側から第1圧力室11A側に流通することを禁止する。
【0027】
なお、逆止弁15は、弁体15A、弁体15Aが着座する弁座部15Bと弁座部15Bに連なって第1圧力室11Aと第2圧力室11Bとを連通させる弁口15Eが設けられたバルブシート15C、及び弁体15Aをバルブシート15Cに押し付けるばね15D等を有して構成されている。そして、バルブシート15Cは、第2圧力室11B側から第1連通穴13Aに圧入されている。
【0028】
また、アクチュエータ1が縮小する際、つまりアクチュエータ1側からタンク2A側に作動油が流通する際には、作動油は、第1接続口11Dから第2圧力室11Bに流入した後、第3接続口11Fからタンク2A側に流出する。
【0029】
すなわち、第2連通穴13B、つまり後述する弁口21Aが開かれると、アクチュエータ1側の作動油は、第1接続口11Dから第2圧力室11Bに流入した後、第3接続口11Fを経由してタンク2A側に流出する。そして、本実施形態では、第2連通穴13Bの連通状態を制御するバルブ部17に本願発明に係るバルブを適用している。
【0030】
2.2 バルブ部の詳細
<バルブ部の構造>
バルブ部17は、弁体19、弁座部材21及びばね23等を有している。弁座部材21は、第1圧力室11Aと第2圧力室11Bとを連通させる弁口21A、及び弁体19が着座する弁座部21B、並びに弁口21Aと後述する絞り29Aとを連通させる連通口21Cを有している。そして、弁座部材21は、第1圧力室11A側から第2連通穴13Bに圧入されている。
【0031】
なお、弁座部材21は、第1圧力室11Aと第2圧力室11Bとの圧力差が、予め決められた仕様範囲である限り、区画部11Cに対して移動しない程度に圧入固定されている。また、弁座部材21は、バルブボディ11よりじん性が高い金属材料(例えば、炭素鋼)製である。
【0032】
弁体19は、第1圧力室11A側に配設され、かつ、弁座部21Bに対して離接可能に変位できる。そして、弁座部21Bに対して弁体19が離接することにより、第1圧力室11A側と第2圧力室11B側との連通状態が調整される。すなわち、図3に示すように、弁体19が弁座部21Bから離間すると、弁口21Aが開く。一方、図2に示すように、弁体19が弁座部21Bに接触すると、弁口21Aが閉じる。
【0033】
また、弁座部材21には、少なくとも1つの逃がし流路25が設けられている。この逃がし流路25は、一端側に第1開口部25Aを有し、他端側が第2圧力室11B側に連通した流体通路である。第1開口部25Aは、第2連通穴13Bの内周面13Cに向けて開口している。
【0034】
本実施形態に係る弁座部材21は、円筒状に形成された筒体である。そして、本実施形態に係る逃がし流路25は、弁座部材21の外周面側と弁座部材21の内周面側とを連通させている。
【0035】
つまり、当該逃がし流路25は、弁座部材21を径方向に貫通する貫通穴にて構成されている。このため、逃がし流路25のうち第2圧力室11B側で開口する第2開口部25Bは、弁座部材21の内周面にて開口している。
【0036】
また、弁体19は、弁部19B及び当接部19C等を有して構成されている。弁部19Bは、弁座部21Bと離接する円錐テーパ面19Aを有している。当接部19Cは、第1圧力室11A側において、弁口21Aから離間する向きに弁部19Bから延びる柱状部位の先端部に設けられている。
【0037】
そして、当接部19Cは、図3に示すように、弁部19Bが弁座部21Bから離間したときに、バルブボディ11に設けられたストッパ部27Aに接触することにより、ストッパ部27Aと協働して弁体19の移動を停止させる。
【0038】
なお、本実施形態に係るストッパ部27Aは、加工穴を閉塞するプラグ27の内壁面に設けられている。因みに、加工穴とは、第2連通穴13B等に機械加工を行う際に形成された穴である。そして、プラグ27とバルブボディ11との隙間には、Oリング等のシール材27Bが配設されている。
【0039】
また、弁部19Bを挟んで当接部19Cと反対側、つまり、第2圧力室11B側には、ピストン部19Dが設けられている。このピストン部19Dは、弁部19Bと一体的に変位するとともに、第2圧力室11Bを背圧室11Gとパイロット圧室11Hとに区画する。なお、Oリング19Eは、パイロット圧室11H側と背圧室11G側とを液密に区画するシール部である。
【0040】
背圧室11Gは、ピストン部19Dに対して弁部19B側に設けられた圧力室であって、第1絞り部29Aを介して第1接続口11D側と連通している。パイロット圧室11Hは、ピストン部19Dを挟んで背圧室11Gと反対側に設けられた圧力室であって、第2絞り部29Bを介して第2接続口11E側と連通している。
【0041】
また、区画部11Cのうち第2圧力室11B側、つまり第2連通穴13Bの背圧室11G側には、規制部11Jが設けられている。規制部11Jは、弁座部材21に接触して弁座部材21が第2圧力室11B側、つまり背圧室11G側に移動することを規制する。
【0042】
なお、本実施形態に係る規制部11Jは、第2連通穴13Bの内周面13C全域において、内周面13Cから中心側に突出した鍔状の突起により構成されている。つまり、第2連通穴13Bの第2圧力室11B側は段付き形状に形成され、かつ、その段部により規制部11Jが構成されている。
【0043】
また、ばね23は、第1圧力室11A側に配設され、かつ、弁部19Bを弁座部21Bに押し付ける弾性力を発揮する弾性部材である。したがって、パイロット圧室11Hの圧力に基づきピストン部19Dに作用する力、すなわち、弁部19Bを第1圧力室11A側に押圧する力が上記弾性力を上回ったときに、弁部19Bがストッパ部27A側に移動して弁口21Aが開く。
【0044】
<カウンタバランス弁の作動>
第3接続口11Fに油圧ポンプ2の吐出圧が作用している場合には、弁部19Bは、上記弾性力に加えて当該吐出圧により弁座部21Bに押し付けられるので、弁口21Aは閉じた状態となる。
【0045】
なお、弁座部材21は、第2連通穴13Bに圧入され、かつ、第1開口部25Aは、第2連通穴13Bの内周面13Cにより閉塞された状態となるので、第2連通穴13Bと弁座部材21との合わせ面を経由して作動油が流通することはない。
【0046】
このため、第1圧力室11A内の圧力が第2圧力室11B内の圧力より高くなるため、油圧ポンプ2から送り出された作動油は、逆止弁15及び第1接続口11Dを経由して伸張側油室1Aに流れ込む。一方、縮小側油室1B内の作動油は、流路1Cを経由してタンク2Aに戻る。
【0047】
また、第3接続口11Fがタンク2A側に接続されると、第1圧力室11A内の圧力がタンク2A側の圧力に低下する。油圧ポンプ2から吐出された作動用は、流路1Cを経由して縮小側油室1Bに導入されるとともに、第2絞り部29Bを介してパイロット圧室11Hに導入され、この作動油の圧力がピストン部19Bに作用する。
【0048】
そして、ピストン部19Dに作用して弁部19Bを第1圧力室11A側に押圧する力がばね23の弾性力を上回るため、弁部19Bが弁座部21Bから離間し、弁口21Aが開く。このため、伸張側油室1A内の作動油は、第1接続口11Dから絞り29A、第3接続口11Fを経由してタンク2Aに戻る。
【0049】
3.本実施形態に係るバルブ部の特徴
本実施形態では、圧入された弁座部材21が、図2及び図3に示す圧入位置に保持されている状態では、第2連通穴13Bの内周面13Cに向けて開口した第1開口部25Aは、当該内周面13Cにより閉塞された状態となる。つまり、この状態では、逃がし流路25が設けられていないバルブと同様な状態となる。
【0050】
しかし、何らかの原因により第2圧力室11Bと第1圧力室11Aとの圧力差が過度に大きくなると、弁座部材21を第1圧力室11A側に押圧する力が大きくなるため、図4に示すように、弁座部材21が第1圧力室11A側に移動してしまう場合がある。
【0051】
このとき、本実施形態では、逃がし流路25が設けられているので、弁座部材21が第1圧力室11A側に移動した場合であって、第1開口部25Aが第1圧力室11A側の空間に向けて開放された状態とすることができる。
【0052】
以上のように、本実施形態では、仮に弁座部材21が弁部19Bと一体的に区画部11Cに対して移動した場合でも、第2圧力室11B側と第1圧力室11A側とを連通させることができるので、弁座部材21がバルブボディ11と別体であるバルブ部17において、実質的に弁口21Aが閉塞されたままとなってしまうという不具合の発生を抑制できる。
【0053】
そして、本実施形態では、仮に弁座部材21が弁部19Bと一体的に区画部11Cに対して移動した場合でも、第2圧力室11B側と第1圧力室11A側とを確実に連通させるべく、図2及び図3に示すように、第1寸法Aを第2寸法Bより小さくしている。
【0054】
ここで、第1寸法Aとは、区画部11Cのうち第1圧力室11A側の端部(以下、圧力室側端部という。)から第1開口部25Aの縁部までの寸法をいう。
すなわち、第1開口部25Aの縁部とは、図2に示すように、弁座部材21が圧入位置にある状態において、圧力室側端部に近接した縁部をいう。そして、第1寸法Aは、弁座部材21の圧入方向に沿って圧力室側端部から第1開口部25Aの縁部まで測定した寸法となる。
【0055】
また、第2寸法Bとは、弁体19が弁座部21Bに着座している状態において当接部19Cからストッパ部27Aまで当接部19Cの移動方向に沿って測定した寸法をいう。なお、本実施形態では、当接部19C、つまり弁体19の移動方向と弁座部材21の圧入方向とは一致している。
【0056】
また、本実施形態では、区画部11Cのうち第2圧力室11B側に、弁座部材21に接触して弁座部材21が第2圧力室11B側に移動することを規制する規制部11Jが設けられている。これにより、弁座部材21を容易に位置決めしながら圧入することができる。
【0057】
また、本実施形態では、バルブボディ11を切削性及び鋳造性に優れた鋳鉄とし、弁座部材21をじん性に優れた炭素鋼としたので、カウンタバランス弁10の加工性を向上させつつ、製造原価を低減することが可能となる。
【0058】
(第2実施形態)
第1実施形態では、逃がし流路25は、弁座部材21を径方向に貫通する貫通穴にて構成されていたので、逃がし流路25のうち第2圧力室11B側で開口する第2開口部25Bが弁座部材21の内周面にて開口していた。
【0059】
これに対して、本実施形態に係る逃がし流路25は、図5に示すように、弁座部材21を径方向に貫通する貫通穴ではなく、弁座部材21の外周面において、第1開口部25Aから背圧室11G側に延びる溝にて構成したものである。このため、第2開口部25Bは、弁座部材21の内周面にて開口することなく、連通口21Cに連なって、弁座部材21の背圧室11G側端部にて開口している。
【0060】
(第3実施形態)
本実施形態は、図6に示すように、区画部11Cのうち第1圧力室11A側にざぐり11Kを設けたものである。したがって、本実施形態に係る第1寸法Aは、ざぐり11Kの底面11Lから第1開口部25Aの縁部までの寸法となる。
【0061】
なお、図6に示された逃がし流路25は、第1実施形態に係る逃がし流路25と同一形状であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、第2実施形態に係る逃がし流路25と同一形状であってもよい。
【0062】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、カウンタバランス弁に本発明に係るバルブを適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、その他用途のバルブにも適用することができる。
【0063】
また、上述の実施形態では、ばね23にて弁体19を弁座部21Bに押し付けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば電磁力等を利用して弁体19を弁座部21Bに押し付けてもよい。
【0064】
また、上述の実施形態では、当接部19C及びストッパ部27Aを設けて弁体19の移動量を規制したが、本発明はこれに限定されるものではない。
そして、上記場合には、当接部19C及びストッパ部27Aを廃止してもよいので、当接部19C及びストッパ部27Aを廃止した場合には、第1寸法Aは、第2寸法Bとの関係で規定されない。
【0065】
つまり、仮に弁座部材21が区画部11Cに対して移動した場合に、逃がし流路25を介して第2圧力室11B側と第1圧力室11A側とを連通させることが可能であれば、第1寸法Aと第2寸法Bとの関係は、上記の関係に限定されるものではない。
【0066】
また、上述の実施形態に係るストッパ部27Aは、加工穴を閉塞するプラグ27の内壁面に設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、上述の実施形態では、規制部11Jが設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、規制部11Jを廃止してもよい。
【0067】
また、上述の実施形態では、バルブボディ11は鋳物であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、バルブボディ11を構成する材料から削り出しにより形成してもよい。
【0068】
また、上述の実施形態では、バルブボディ11と区画部11Cとが一体形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、バルブボディ11と区画部11Cとを別体として形成後、区画部11Cをバルブボディ11に一体化してもよい。なお、この場合においては、区画部11Cと弁座部材21とを別体として形成した後にこれらを一体化する、又は弁座部材21と区画部11Cと一体形成する等としてもよい。
【0069】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0070】
10… カウンタバランス弁 11… バルブボディ 11A… 第1圧力室
11B… 第2圧力室 11C… 区画部 11D… 第1接続口
11E… 第2接続口 11F… 第3接続口 11G… 背圧室
11H… パイロット圧室 11J… 規制部 11L… 底面
13A… 第1連通穴 13B… 第2連通穴 13C… 内周面
15… 逆止弁 15A… 弁体 15B… 弁座部 15C… バルブシート
17… バルブ部 19… 弁体 19A… 円錐テーパ面 19B… 弁部
19C… 当接部 19D… ピストン部 21… 弁座部材
21A… 弁口 21B… 弁座部 25… 逃がし流路 25A… 第1開口部
25B… 第2開口部 27… プラグ 27A… ストッパ部
27B… シール材 29A… 第1絞り部 29B… 第2絞り部
図1
図2
図3
図4
図5
図6