特許第6017852号(P6017852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017852
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】洗浄便座装置及びポータブルトイレ装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20161020BHJP
   A47K 11/04 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   E03D9/08 F
   A47K11/04
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-138311(P2012-138311)
(22)【出願日】2012年6月20日
(65)【公開番号】特開2014-1576(P2014-1576A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598030847
【氏名又は名称】さつき株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303024611
【氏名又は名称】エヌシーエム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】徳永 剛一
(72)【発明者】
【氏名】藤川 昌
(72)【発明者】
【氏名】▲裴▼ 相▲哲▼
(72)【発明者】
【氏名】朴 賢浩
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−284236(JP,A)
【文献】 特開2011−156140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00 − 9/16
A47K 11/00 − 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する便座と、
前記便座の後方に配置された本体部と、を備える洗浄便座装置であって、
前記本体部には、
局部を洗浄するための洗浄水を貯留するタンクと、
前記洗浄水を噴出する噴出孔が形成されたノズルを有するノズルユニットと、が配置されており、
前記ノズルユニットは、前記ノズルを前後方向に移動させる前後移動手段と、前記ノズルを左右方向に移動させるラックとピニオンからなる左右移動手段と、を備えており、そして
前記左右移動手段は、前記ノズルを前方へ移動させた状態での前記ノズルユニットの重心位置に移動ガイド機構を備えていることを特徴とする洗浄便座装置。
【請求項2】
前記移動ガイド機構は、ガイド軸と、前記ガイド軸を挿入する貫通孔と、からなり、
前記左右移動手段は、補助軸と、前記補助軸を挿入する貫通孔と、からなる補助ガイド機構を、備えていることを特徴とする請求項に記載の洗浄便座装置。
【請求項3】
前記ラックと前記ピニオンは、前記移動ガイド機構と前記補助ガイド機構の間に位置することを特徴とする請求項に記載の洗浄便座装置。
【請求項4】
前記移動ガイド機構は、前記ラックと一体に設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の洗浄便座装置。
【請求項5】
前記移動ガイド機構の貫通孔は、真円形状であり、
前記補助ガイド機構の貫通孔は、水平方向に長い楕円形状であることを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載の洗浄便座装置。
【請求項6】
開口を有する便座と、前記便座の後方に配置された本体部と、を備え、前記本体部には局部を洗浄するための洗浄水を貯留するタンクと、前記洗浄水を噴出する噴出孔が形成されたノズルを有するノズルユニットと、が配置されている洗浄便座ユニットと、
前記洗浄便座ユニットを保持するイス本体と、
前記タンクに水を供給する給水タンクと、
前記便座の下方に位置する汚水バケツと、を備えることを特徴とするポータブルトイレ装置であって、
前記ノズルユニットは、前記ノズルを前後方向に移動させる前後移動手段と、前記ノズルを左右方向に移動させるラックとピニオンからなる左右移動手段と、を備えており、そして
前記左右移動手段は、前記ノズルを前方へ移動させた状態での前記ノズルユニットの重心位置に移動ガイド機構を備えていることを特徴とするポータブルトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部を洗浄するための洗浄水を噴出して、便座に着座した使用者の局部を洗浄する洗浄便座装置及び洗浄便座付ポータブルトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭内や公共施設に設置されている多くのトイレには、便座に着座した使用者の局部を、ノズルから噴出する洗浄水で洗浄する洗浄便座装置が取り付けられている。そして、多くの洗浄便座装置には、便座の中心線に沿ってノズルを前後方向に移動させることができる移動手段が備わっており、この前後方向への移動手段により、使用者がノズルの噴出位置と使用者の局部とを適正な位置にあわせることができるようになっている。
【0003】
一方、使用者が便座に座った際、使用者の局部が便座の中心線上から外れている場合(中心線から左右方向にずれている場合)、ノズルの噴出位置を前後方向だけでなく左右方向にも調整できる洗浄便座装置は、使用者にとって体を移動させる必要がないので便利である。
【0004】
特に、近年の高齢化に伴う要介護者の増加により、トイレまでの移動が困難な要介護者のために、ポータブルトイレ装置の需要も増えており、洗浄便座装置を取り付けたポータブルトイレ装置が市販されるようになっている。
【0005】
要介護者用のポータブルトイレ装置の場合、要介護者が一度便座に座ってしまうと、要介護者は自分自身の力でノズルの適正な噴出位置へ移動することは現実には難しい。また、介護者が要介護者を適正な位置へ移動させることも、介護に慣れていないような場合もあるので、要介護者を移動させることは現実には難しいこともある。したがって、このような洗浄便座付ポータブルトイレ装置の場合、ノズルの噴出位置を前後方向に調整できるだけなく左右方向に調整できる洗浄便座装置は、使用者にとって非常に便利である。
【0006】
このように、ノズルの噴出位置を左右方向にも調整できる洗浄便座装置として、特許文献1や特許文献2に記載されている洗浄便座装置が知られている。この特許文献1や特許文献2に記載されている洗浄便座装置は、洗浄用や乾燥用のノズルを前後方向へ駆動させる駆動手段だけでなく、ノズルを回転駆動させる駆動手段を備えることで、ノズルの噴出位置を左右方向へも調整できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−127024号公報
【特許文献2】特開2011−74575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ノズルの噴出位置の左右方向への調整に関して、特許文献1、特許文献2(第1の実施形態)に記載されている洗浄便座装置は、ノズルそのものが左右へ移動することはなく、ノズルの先端に設けられている噴出口が回転する構成である。この構成だと、噴出口の角度によって局部までの距離や局部に対する噴出角度が変化してしまい、また、局部に対する位置合わせが難しい。
【0009】
また、特許文献2の第2の実施形態に記載されている洗浄便座装置は、ノズル全体が移動することはなく、ノズルの後端を固定しておき、ノズルの先端側を揺動する構成である。この構成であっても、局部に対する正確な位置合わせが難しい。
【0010】
そこで、本発明は上記問題を解決することを課題とし、局部に対するノズルの位置合わせを正確に行うことのできる洗浄便座装置及び、洗浄便座付ポータブルトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、開口を有する便座と、前記便座の後方に配置された本体部と、を備える洗浄便座装置であって、前記本体部には、局部を洗浄するための洗浄水を貯留するタンクと、前記洗浄水を噴出する噴出孔が形成されたノズルを有するノズルユニットと、が配置されており、前記ノズルユニットは、前記ノズルを前後方向に移動させる前後移動手段と、前記ノズルを左右方向に移動させるラックとピニオンからなる左右移動手段と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、ノズルユニットは、ノズルを前後方向に移動させる前後移動手段を備えており、更には、ノズルを左右方向に移動させるためのラックとピニオンとからなる左右移動手段を備えて構成されている。したがって、ノズルユニットは、ノズルそのものが前後方向に移動できるだけなく、左右方向にも移動できるので、使用者の着座位置にあわせて、ノズルを正確に位置合わせすることができる。また、ノズルユニットは、ノズルそのものを前後左右に移動させるので、ノズルと使用者の局部との距離を一定にすることができる。
【0013】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様に係る洗浄便座装置であって、前記左右移動手段は、前記ノズルを前方へ移動させた状態での前記ノズルユニットの重心位置に移動ガイド機構を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、洗浄便座装置は、ノズルを前方に移動させた状態のノズルユニットの重心位置に移動ガイド機構が設けられているので、ノズルが左右方向に移動する際の振動を抑えることができる。また、洗浄便座装置は、重心位置に移動ガイド機構があることで、ノズルが前後左右に移動する際や、ノズルから洗浄水を噴出する際にノズルの位置を安定させることができる。
【0015】
また、本発明の第3の態様は、第2の態様に係る洗浄便座装置であって、前記移動ガイド機構は、ガイド軸と、前記ガイド軸を挿入する貫通孔と、からなり、前記左右移動手段は、補助軸と、前記補助軸を挿入する貫通孔と、からなる補助ガイド機構を、備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、洗浄便座装置は、ガイド軸と補助軸を用いてノズルは軸移動するので、移動の際や噴出の際の振動をより一層防止する事ができる。
【0017】
また、本発明の第4の態様は、第2また3の態様に係る洗浄便座装置であって、前記移動ガイド機構は、前記ラックと一体に設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明の第4の態様によれば、洗浄便座装置は、移動ガイド機構とラックとが一体になっているので、左右方向へ移動する際の振動を防止する事ができる。
【0019】
また、本発明の第5の態様は、第3の態様に係る洗浄便座装置であって、前記移動ガイド機構の貫通孔は、真円形状であり、前記補助ガイド機構の貫通孔は、水平方向に長い楕円形状であることを特徴とする。
【0020】
本発明の第5の態様によれば、洗浄便座装置は、左右移動手段を容易に組み立てることができる。
【0021】
また、本発明の第6の態様は、第3から5の何れかの態様に係る洗浄便座装置であって、前記ラックと前記ピニオンは、前記移動ガイド機構と前記補助ガイド機構の間に位置することを特徴とする。
【0022】
本発明の第6の態様によれば、洗浄便座装置は内部のスペースを有効に活用できる。
【0023】
また、本発明の第7の態様は、開口を有する便座と、前記便座の後方に配置された本体部と、を備え、前記本体部には局部を洗浄するための洗浄水を貯留するタンクと、前記洗浄水を噴出する噴出孔が形成されたノズルを有するノズルユニットと、が配置されている洗浄便座ユニットと、前記洗浄便座ユニットを保持するイス本体と、前記タンクに水を供給する給水タンクと、前記便座の下方に位置する汚水バケツと、を備えることを特徴とするポータブルトイレ装置であって、前記ノズルユニットは、前記ノズルを前後方向に移動させる前後移動手段と、前記ノズルを左右方向に移動させるラックとピニオンからなる左右移動手段と、を備えていることを特徴とする。
【0024】
本発明の第7の態様によれば、ポータブルトイレ装置は、使用者の着座位置を直すことが困難な場合であっても、ノズルと使用者の局部との位置を正確に修正することができ、また、ノズルと使用者の局部との距離を一定にすることができる。そして、このようなポータブルトイレ装置は特に介護用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1の正面斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1の背面斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る温水洗浄便座ユニット3の正面斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る温水洗浄便座本体部31の外側を覆う外装カバー31aを外した内部構造の正面斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1における水の流れを示した概念図である。
図6】本発明の実施形態に係るノズルユニット45の側面図であり、(a)はノズル51が後方に後退した状態の側面図であり、(b)はノズル51が前方に進出した状態の側面図である。
図7】本発明の実施形態に係るノズルユニット45の後方斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係るノズルユニット固定台66の上部における断面図である。
図9】本発明の実施形態に係るラック63とピニオン64の周辺の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための洗浄便座装置及び洗浄便座付ポータブルトイレ装置を例示するものであって、本発明をこの洗浄便座装置及び洗浄便座付ポータブルトイレ装置に特定することを意図するものではない。本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも適応し得るものである。
【0027】
図1は本発明の実施形態に係る温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1の正面斜視図であり、図2は温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1の背面斜視図である。本実施形態に係る温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1は、イス本体2と、温水洗浄便座ユニット3と、汚水バケツ4と、給水タンク5と、を備えて構成されている。
【0028】
イス本体2は、脚部を兼ねる左支持部21と、脚部を兼ねる右支持部22と、左支持部21と右支持部22との間で固定されている背もたれ23と、で構成されている。また、イス本体2は、このイス本体2における座部を、後述の温水洗浄便座ユニット3を構成する便座部32により構成されている。なお、イス本体2は、左支持部21と右支持部とに、使用者が着座した際に、使用者の肘が位置するあたりに肘掛を備える等、他の構成を備えていても構わない。
【0029】
温水洗浄便座ユニット3は、詳細を後述するが、イス本体2の左支持部21と右支持部22との間で保持されており、温水洗浄便座本体部31と、温水洗浄便座本体部31の前方に位置する便座部32と、で構成されている。
【0030】
汚水バケツ4は、便座部32の下方において、左支持部21と右支持部22との間で保持されており、使用された後の洗浄水等を汚水として溜めておくような構成となっている。また、この汚水バケツ4は、イス本体2の前方側へスライド可能に取り付けられている。そして、汚水バケツ4内の汚水を廃棄する場合、イス本体2から汚水バケツ4を取り外し、この汚水バケツ4を廃棄場所へ持ち運んで汚水の廃棄が行われる。
【0031】
給水タンク5は、図2に示すように、イス本体2の背面側で、温水洗浄便座本体部31の下方において、左支持部21と右支持部22との間で保持されている。そして、この給水タンク5には、2つの給水口5a、5bが設けられている。この2つの給水口5a、5bは、それぞれキャップで覆われており、洗浄水として使用するための水を給水タンク5内へ注入する場合、一方のキャップを外して水を注入するような構成となっている。
【0032】
温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1は、以上のような構成となっている。そして、温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1は、給水タンク5に注入された水を用いて、後述のノズル51から洗浄水を噴出することにより、使用者の局部を洗浄し、この洗浄後の洗浄水を汚水バケツ4で受ける構成となっている。したがって、温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1は、一般的な温水洗浄便座付トイレ装置のように、洗浄水として使用する水を供給する上水道や、洗浄後の洗浄水を流す下水道との接続を必要としない。そして、このような温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1は、例えば、トイレまでの移動が困難な要介護者のベッドの近くにおいて使用することで、介護用のトイレ装置として利用することができる。また、温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1は、例えば、地震等の災害による上下水道が不通のような状況で使用することで、緊急用のトイレ装置として利用することができる。
【0033】
次に、温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1を構成する温水洗浄便座ユニット3の詳細について説明する。図3は、温水洗浄便座ユニット3の正面斜視図である。温水洗浄便座ユニット3は、後方に温水洗浄便座本体部31を備え、温水洗浄便座本体部31の前方に便座部32を連結する構成となっている。なお、温水洗浄便座本体部31については詳細を後述する。
【0034】
便座部32は、開口32aを備えた樹脂製の環状部32bで構成されている。そして、この環状部32bに使用者が着座して温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1は使用される。
【0035】
また、便座部32は、環状部32bの後部が軸支部32cで支持されており、軸支部32cを介して回動できるようになっている。更に、便座部32は、環状部32bの内部に図示しない便座ヒータが備わっており、この便座ヒータの発熱によって、環状部32bが加温される構成となっている。
【0036】
なお、図示していないが、便座部32を覆う便座蓋を温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1は備えている。また、便座部32の形状は、所謂O字形状の環状部32bに開口32aを備えるものに限定されるものではなく、所謂U字形状のものに開口32aを備えるものでも構わない。
【0037】
次に、温水洗浄便座本体部31の詳細について説明する。図3に示すように、温水洗浄便座本体部31は、外側を樹脂製の外装カバー31aによって覆われている。この外装カバー31aには、各種のスイッチからなる本体操作部33が設けられている。
【0038】
本体操作部33を構成する各種のスイッチには、洗浄水の温度設定を行うためのスイッチや、局部の洗浄の開始・停止を行うスイッチや、後述する洗浄ノズルの位置を調整するためのスイッチ等が設けられており、これらスイッチを操作した信号が制御基板へ入力される。なお、温水洗浄便座付ポータブル装置1は、外装カバー31aに設けられた本体操作部33の他に、温水洗浄便座本体部31と有線或いは無線により接続可能なリモコン用の操作部を備える構成となっていても構わない。また、温水洗浄便座本体部31の内部には、商用電源を供給するための電源コード34が接続されており、外装カバー31aにはこの電源コード34を通すための孔が設けられている。そして、外装カバー31aの側面には、脱臭カセット35の一部が露出している。
【0039】
次に、温水洗浄便座本体部31の内部構造の説明を行う。図4は、温水洗浄便座本体部31の外側を覆う外装カバー31aを外した、温水洗浄便座の内部構造の正面斜視図である。
【0040】
温水洗浄便座本体部31は、内部に給水ポンプ41と、制御基板ユニット42と、温水タンク43と、温風乾燥ユニット44と、ノズルユニット45と、脱臭ユニット46と、を備えている。
【0041】
給水ポンプ41は、給水タンク5の水を温水タンク43に供給するためのものである。この給水ポンプ41は、定量式電磁ポンプやギヤポンプ等、各種のポンプを用いることができる。
【0042】
ここで、温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1における水の流れについて説明する。図5は、温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1における水の流れを示した概念図である。給水タンク5に注入された洗浄用の水は、給水ポンプ41によって汲み上げられ、給水ポンプ41を通過し、図4においては図示していない逆止弁48を通過して、温水タンク43へと供給される。そして温水タンク43において洗浄水は加温され、ノズルユニット45へと水圧により供給されて、ノズルユニット45のノズル先端の噴出孔から噴出され、使用者の局部を洗浄することになる。
【0043】
なお、図5に示す逆止弁48は、温水タンク43の水が給水タンク5側へ逆流するのを防止するためのものである。逆止弁48は、図4においては図示していないが、例えば制御基板ユニット42の背面側に配置されている。
【0044】
制御基板ユニット42は、CPUやメモリ等が備わった制御基板42aを備えており、制御基板42aと各種の構成部との間を有線・無線によって接続している。そして、制御基板ユニット42は、本体操作部33を介して行われた使用者の操作等に基づいて、所定各種の構成部の動作をプログラムに従って行う。
【0045】
温水タンク43は、樹脂製の箱状部材からなる。温水タンク43は、給水ポンプ41とチューブ(図示せず)を介してつながっており、また、ノズルユニット45とチューブ(図示せず)を介してつながっている。
【0046】
温水タンク43には、給水ポンプ41によって給水された洗浄水の水量(水位)を検出するフロートスイッチ43aが取り付けられている。また、温水タンク43には、内部の水を加熱するための温水用ヒータ(図示せず)が取り付けられている。また、加熱された洗浄水の温度を検出する温度検出センサ(図示せず)が取り付けられている。また、温水タンク43には、上部に負圧弁43bが設けられており、温水タンクを43の内部圧力が外気圧よりも低くなったときに、この負圧弁43bは温水タンク43と外気とをパイプ43cを介して連通させる。
【0047】
温風乾燥ユニット44は、温風用ヒータ(図示せず)と、乾燥ファン44aと、ファンケース44bと、を備えて構成されている。そして、使用者が、本体操作部33の温風乾燥開始スイッチを操作することで、温風用ヒータと乾燥ファン44aが動作を開始し、ファンケース44bを介して、使用者の局部周辺に温風を送る。
【0048】
ノズルユニット45は、温水タンク43から供給された温水を洗浄水として噴出し、使用者の局部を洗浄するものである。なお、ノズルユニット45については、詳細を後述する。
【0049】
脱臭ユニット46は、脱臭カセット35と、脱臭ファン46aと、ファンケース46bと、脱臭フィルタ47と、を備えて構成されている。脱臭ファン46aは、使用者が便座部32に着座すると動作し、脱臭フィルタ47を介して、汚水バケツ4の空気をファンケース46bへ吸い込む。そして、脱臭ファン46aによって吸い込まれた空気は、脱臭カセット35を通じて臭い成分を吸着・分解等して、外部へ排気される。
【0050】
次に、ノズルユニット45の詳細について説明する。図6はノズルユニット45の側面図であり、図6(a)はノズルユニット45を構成するノズル51が後方に後退した状態の側面図であり、図6(b)はノズルユニット45を構成するノズル51が前方に進出した状態の側面図である。図7はノズルユニット45の各構成を分解して示す後方斜視図である。図8はノズルユニット固定台66の上部における断面図である。図9はラック63とピニオン64の周辺の拡大側面図である。
【0051】
ノズルユニット45は、ノズル51と、ノズル51を前後方向に移動させるための前後移動手段52と、ノズル51を左右方向に移動させるための左右移動手段53と、を備えて構成されている。
【0052】
ノズル51は、樹脂製やステンレス製の筒状部材からなるノズル胴体54と、ノズル胴体54の先端に取り付けられたノズルヘッド55と、ノズル胴体54の後端に取り付けられた、おしり用ポート56とビデ用ポート57と、を備えて構成されている。
【0053】
このノズル胴体54の内部には、おしり用ポート56につながるおしり用パイプ(図示せず)と、ビデ用ポート57につながるビデ用パイプ(図示せず)とが並んで設けられている。そして、おしり用パイプはノズルヘッド55の上面に設けられたおしり用噴出孔58とつながっており、ビデ用パイプはノズルヘッド55の上面に設けられたビデ用噴出孔59とつながっている。
【0054】
おしり用ポート56には、おしり用チューブ(図示せず)が装着され、このおしり用チューブとおしり用ポート56とノズル胴体54内部のおしり用パイプによって、おしり用洗浄水路が形成される。
【0055】
また、ビデ用ポート57には、ビデ用チューブ(図示せず)が装着され、このビデ用チューブとビデ用ポート57とノズル筐体54内部のビデ用パイプによって、ビデ用洗浄水路が形成される。
【0056】
そして、目的とする洗浄にあわせて、水路切換えユニット50(図4に示す)によっておしり用洗浄水路とビデ用洗浄水路とが切り換えられ、温水タンク43から供給された洗浄水は、水路切換えユニット50によって、おしり用洗浄水路或いはビデ用洗浄水路へと流れて行く。
【0057】
また、ノズル51は、ノズル支持台60の上に載置されており、洗浄時には図6(b)に示すように、前後移動手段52によってノズル支持台60上を前方へ移動する。
【0058】
このノズル支持台60は、樹脂製の部材から形成されている。そして、ノズル支持台60は、ノズル51が載置される上面側が前方下側に向かって傾斜する傾斜面61を備えている。この傾斜面61の傾斜角度は、大体30度乃至70度の範囲で選定される。
【0059】
また、ノズル支持台60は、傾斜面61の先端に、ノズルヘッド55を覆うようなアーチ状のノズル洗浄室62が設けられている。ノズル洗浄室62は、ノズル51が図6(a)の収納状態になると、例えば、おしり用噴出口58から水を噴出し、その噴出した水を跳ね返らせることで、ノズルヘッド55の洗浄を行う。
【0060】
前後方向移動手段52は、一般的な温水洗浄便座装置に従来から備わっているものであるため、どのような方法を用いても構わない。本実施形態においては、前後移動手段52は、ノズル支持台60に図7に示すモータ52aと、渦巻き状のスチールベルト52bを設けて構成している。そして、スチールベルト52bの一端をノズル51に固定しておき、モータ52aを矢印Aの方向に回転させると、スチールベルト52bが傾斜面61の上を滑るようにして前方に向かって導出される(ノズル51が前方に移動する)。また、モータ52aを矢印Bの方向に回転させると、スチールベルト52bが傾斜面61の上を滑るように後方に向かいながら収納されていく(ノズル51が後方に移動する)。
【0061】
なお、前後移動手段52は、モータ52aのような動力を用いることなく、水圧を利用してノズル51を移動させる方法でも構わないが、本実施形態のようなモータ52aを用いる方法によれば、水圧によることなくノズル51の正確な位置合わせを容易におこなうことができる。また、前後移動手段52は、本実施形態のようなモータ52aを用い、後述の補助ガイド機構80上に配置しておくことにより、前後左右への移動時にモータ52aの重量によりノズルユニット45の振動を防ぐことができ、また安定した洗浄水の噴出を行うことができる。
【0062】
左右移動手段53は、ノズル51を左右方向に移動させるものである。また、本実施形態においては、左右移動手段53は、ノズル51だけでなく、ノズル51を支持するノズル支持台60も左右方向に移動させる。具体的には、左右移動手段53は、ラック63とピニオン64とで構成されている。
【0063】
ラック63は、ノズル支持台60の下方側に設けられており、歯が左右方向に平行に伸びている。ピニオン64は、小型の歯車であり、ステッピングモータ65によって回転力が加えられる。このステッピングモータ65は、ノズル支持台60の下方に位置するノズルユニット固定台66に、固定部67を介して固定されている。なお、ステッピングモータ65の他に、ギヤードモータ等を用いても構わない。
【0064】
そして、ステッピングモータ65によってピニオン64に回転力が加えられると、その回転がラック63によってノズル支持台60を左右方向へ移動させる力に変換され、ノズル支持台60ごとノズル51が左右方向へ移動する。
【0065】
このステッピングモータ65を収容するノズルユニット固定台66は、樹脂成型品からなるものであり、4箇所の取付部68を介して、ノズルユニット45を温水洗浄便座本体部31に固定するものである。
【0066】
また、本実施形態においては、左右移動手段53は、更に移動ガイド機構70と補助ガイド機構80と、を備えている。具体的には、移動ガイド機構70は、ガイド軸71と、ノズル支持台60に設けられた支持台貫通孔72と、ノズルユニット固定台66に設けられた固定台貫通孔73と、軸止め輪74と、を備えて構成されている。そして、ガイド軸71を支持台貫通孔72と固定台貫通孔73に挿入し、ガイド軸71の端部に設けられている軸止め溝71aに軸止め輪74を嵌合するとことで、ノズル支持台60がガイド軸71に沿って左右方向に移動可能になる。
【0067】
なお、本実施形態においては、図8に示すように、ラック63は、移動ガイド機構70と近接して平行に設けられている。また、支持台貫通孔72とラック63とが一体になって設けられている。したがって、左右移動手段53は、ノズルユニット45が左右方向へ移動する際の振動を防ぐことができる。
【0068】
この移動ガイド機構70は、図6(b)に示しているように、ノズル51が前方に移動した状態(洗浄時の状態)で、ノズルユニット45の重心位置よりも、少なくとも後方に位置するように設けられている。そして、本実施形態においては、移動ガイド機構70は、ノズルユニット45の重心C(図6(b)に破線Cで示す位置)の真下に位置するように設けられている。
【0069】
したがって、移動ガイド機構70がノズルユニット45の重心Cの下方に位置することで、ノズル51を前方へ移動させる際のノズルユニット45の振動を低減することができる。また、ノズル51は斜め下方向に移動して、ノズルヘッド55の上面側から洗浄水を噴出するため、洗浄水の噴出時ノズルヘッド55側は下方向に大きな力が加わるが、移動ガイド機構70がノズルユニット45の重心Cの下方に位置することで、ノズルユニット45を安定して支えることができる。
【0070】
補助ガイド機構80は、補助軸81と、ノズル支持台60に設けられた補助軸81用の支持台貫通孔82と、ノズルユニット固定台66に設けられた補助軸81用の固定台貫通孔83と、軸止め輪84と、を備えて構成されている。補助軸81を支持台貫通孔82と固定台貫通孔83に挿入し、補助軸81の端部に設けられている軸止め溝81aに軸止め輪76を嵌合するとことで、ノズル支持台60が補助軸81に沿って左右方向に移動可能になる。
【0071】
この補助ガイド機構80は、ノズル支持台60が左右方向への移動する時や、ノズル51が前方向や後方向へ移動する時に、ガイド軸71を中心にノズルユニット45に加わる力による振動を防止するためのものである。したがって、補助ガイド機構80によって、温水洗浄便座ユニット3はノズルユニット45の移動が安定し、使用者の局部に対する正確な位置合わせを行うことができる。
【0072】
なお、補助ガイド機構80は上記の構成に限られるものではなく、例えば補助軸81を用いないで、ノズル支持台60とノズルユニット固定台66とがフック形状により係合するような構造でも構わない。
【0073】
また、本実施形態においては、ラック63とピニオン64とステッピングモータ65は、移動ガイド機構70と補助ガイド機構80の間に位置して形成されている。
【0074】
ラック63とピニオン64とステッピングモータ65が、移動ガイド機構70よりも前方に位置する場合、ノズル51の傾斜角度を大きくしようとすると、ノズル51とノズルユニット固定台66との距離(図6(b)の符号Dの距離)が狭くなり、ラック63やピニオン64と、ノズル51の干渉を考慮した設定が必要となり、また、温水洗浄便座本体部31の底部を便座部32側に大きくする必要があるが、本実施形態の温水洗浄便座ユニット3は、温水洗浄便座本体部31のスペースを有効に利用できる。
【0075】
また、ラック63とピニオン64とステッピングモータ65が、補助ガイド機構80よりも後方に位置する場合、ラック63とピニオン64とステッピングモータ65の設置スペースだけ、ノズルユニット45が大きくなってしまうが、本実施形態の温水洗浄便座ユニット3は、スペースを効率的に利用することができる。
【0076】
また、本実施形態においては、図9に示しているように、ノズル支持台60に設けられたガイド軸71用の支持台貫通孔72は、ガイド軸71の径と略同様の径からなる真円形状となっており、ノズル支持台60に設けられた補助軸81用の支持台貫通孔82は、前後方向に細長い楕円形状となっている。
【0077】
したがって、ノズルユニット45は、ガイド軸71上を振動なく移動できる。また、支持台貫通孔82が細長い楕円形状なので、補助軸81と支持台貫通孔82との間に隙間が生じるため、ノズルユニット45は容易に組み立てられる。また、支持台貫通孔82は、前後方向に細長い楕円形状なので、ガイド軸71を中心にノズルユニット45に回転力が加わっても、この回転力による補助軸81側での振動を防ぐことができる。
【0078】
上記のように、本実施形態における温水洗浄便座ユニット3は、温水洗浄便座本体部31のノズルユニット45に、ノズル51を前後方向に移動させる前後移動手段52を備えており、更には、ノズル51を左右方向に移動させるためのラック63とピニオン64とからなる左右移動手段53を備えて構成されている。
【0079】
したがって、温水洗浄便座ユニット3は、ノズル51そのものが前後方向に移動できるだけなく、左右方向にも移動できるので、使用者の着座位置がずれていたとしても、ノズル51そのものを前後左右へ移動させることにより、ノズルヘッド55と使用者の局部との間の距離を一定にすることができる。
【0080】
特に、この温水洗浄便座ユニット3を備える温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1を介護用として用いた場合、温水洗浄便座ユニット3は、要介護者及び介護者に負担をかけることなく、要介護者の局部とノズル51との位置合わせを簡単に行うことができる。また、介護用のポータブルトイレ装置の場合、着座した後で要介護者を移動させるのは非常に困難であるため、温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1は、通常よりもノズル51を大型化し、移動可能な範囲を広くすることも考えられる。本実施形態によれば、温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1は、ノズル51を大型化することにより、移動時や洗浄水噴出時にノズル51を振動させる力が大きくなったとしても、振動を効果的に防ぐことができる。
【0081】
なお、本実施形態においては、ノズル51へ洗浄水を供給する温水タンク43は、内部に温水用ヒータを備え、洗浄水の加熱を行うことが可能なものである。しかしながら、温水タンク43は、温水用ヒータのような加熱手段を備えていない単なる貯留するタンクであっても構わない。
【0082】
また、本実施形態においては、温水洗浄便座ユニット3を備える温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1について説明を行ったが、一般的な上下水道とつながっているトイレ装置の便座に取り付けられた温水洗浄便座装置であっても、本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0083】
1…温水洗浄便座付ポータブルトイレ装置1
2…イス本体
3…温水洗浄便座ユニット
4…汚水バケツ
5…給水タンク
31…温水洗浄便座本体部
32…便座部
43…温水タンク
45…ノズルユニット
51…ノズル
52…前後移動手段
53…左右移動手段
54…ノズル胴体
55…ノズルヘッド
60…ノズル支持台
63…ラック
64…ピニオン
65…ノズルユニット固定台
70…移動ガイド機構
71…ガイド軸
72、82…支持台貫通孔
73、83…固定台貫通孔
80…補助ガイド機構
81…補助軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9