特許第6017855号(P6017855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6017855一軸偏心ねじポンプの定置滅菌方法および一軸偏心ねじポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017855
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】一軸偏心ねじポンプの定置滅菌方法および一軸偏心ねじポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/107 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   F04C2/107
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-141065(P2012-141065)
(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2014-5767(P2014-5767A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】林元 和智
(72)【発明者】
【氏名】種市 準
(72)【発明者】
【氏名】大坪 諭史
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−168991(JP,A)
【文献】 特開2009−293529(JP,A)
【文献】 特開昭61−116084(JP,A)
【文献】 米国特許第04637785(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ねじ状の内面を有するステータと、該ステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるロータとを備え、前記ロータと前記ステータ相互の対向する空間により複数のキャビティが画成され、前記ステータの軸心に対して前記ロータが回転しつつ偏心運動を行うことによって、吸入側から前記キャビティ内に吸い込まれた粘性液を吐出側へ圧送するように構成された一軸偏心ねじポンプを定置滅菌する方法であって、
前記複数のキャビティのうち、密閉空間となるキャビティが一か所のみ設けられるものに適用し、蒸気を用いた定置滅菌をおこなうときに、前記一か所のキャビティが前記ステータの吸入側または吐出側に連通する非密閉位置となるように、前記ロータを前記一か所のキャビティが前記密閉空間となる位相を除外した所定角度に断続的に回転させることを特徴とする一軸偏心ねじポンプの定置滅菌方法。
【請求項2】
前記一軸偏心ねじポンプが、雌ねじ状の内面を有する回転可能に支承されたステータと、該ステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるとともに直線状の基端部がモータの駆動軸に直結されたロータとを備え、前記ロータの回転軸線が前記ステータの回転軸線に対して所定距離だけ偏心して配置されるとともに、前記ロータの回転力で前記ステータを前記ロータの二分の一の回転数で追従回転させるように構成されたものであり、
前記ロータを前記所定角度に断続的に回転させることで、供回りするステータを断続的に所定角度ずつ回転させることを特徴とする請求項1に記載の一軸偏心ねじポンプの定置滅菌方法。
【請求項3】
雌ねじ状の内面を有するステータと、該ステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるロータとを備え、前記ロータと前記ステータ相互の対向する空間により複数のキャビティが画成され、前記ステータの軸心に対して前記ロータが回転しつつ偏心運動を行うことによって、吸入側から前記キャビティ内に吸い込まれた粘性液を吐出側へ圧送するように構成された一軸偏心ねじポンプにおいて、
前記複数のキャビティのうち、密閉空間となるキャビティが一か所のみ設けられる一軸偏心ねじポンプであって、
前記モータを駆動するモータ駆動部を備え、該モータ駆動部が、蒸気を用いた定置滅菌をおこなうための定置滅菌制御手段を有し、該定置滅菌制御手段は、前記一か所のキャビティが前記ステータの吸入側または吐出側に連通する非密閉位置となるように、前記ロータを前記一か所のキャビティが前記密閉空間となる位相を除外した所定角度に断続的に回転させることを特徴とする一軸偏心ねじポンプ。
【請求項4】
前記一軸偏心ねじポンプは、雌ねじ状の内面を有する回転可能に支承されたステータと、該ステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるとともに直線状の基端部がモータの駆動軸に直結されたロータとを備え、前記ロータの回転軸線が前記ステータの回転軸線に対して所定距離だけ偏心して配置されるとともに、前記ロータの回転力で前記ステータを前記ロータの二分の一の回転数で追従回転させるように構成されており、
前記定置滅菌制御手段は、前記ロータを前記所定角度に断続的に回転させることで、供回りするステータを断続的に所定角度ずつ回転させることを特徴とする請求項3に記載の一軸偏心ねじポンプ。
【請求項5】
前記ステータ両側から前記ステータ内に蒸気を導入する蒸気導入管路が配管されていることを特徴とする請求項3または4に記載の一軸偏心ねじポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食料原料などの粘性液(輸送物)を定量圧送する一軸偏心ねじポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の一軸偏心ねじポンプとして、例えば特許文献1に開示されるものがある。図4に例示するように、この一軸偏心ねじポンプ100は、雌ねじ状の内面をもつ固定された弾性材料製のステータ112に雄ねじ状のロータ103が内装されている。ロータ103とステータ112との対向空間によりキャビティ(密封空間)120が画成される。ロータ103は、自在継手(ユニバーサルジョイント)106を介して駆動軸102に連結され、駆動軸102は、不図示のモータのシャフトに連結される。
【0003】
この一軸偏心ねじポンプ100によれば、駆動軸102をモータによって回転させることにより、ステータ112の軸心に対してロータ103が回転しつつ偏心運動を行うことによって粘性液を吸入側113から吸込み部115に導き、キャビティ120内に吸い込まれた粘性液を吐出側114へ圧送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−153992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この一軸偏心ねじポンプ100は、120℃〜130℃の蒸気を用いた定置滅菌(SIP:Sterilizing In Place)を行う場合、120℃〜130℃の蒸気中でポンプを運転すると、高温によりロータ103とステータ112相互の摺動抵抗が大きくなることから、ステータ112が損傷し易い。そのため、定置滅菌をポンプ停止状態で行うことになるが、ロータ103の吐出側114と吸込み部115の側とは、密封空間とされたキャビティ120によって分断されているため、蒸気を流すことができず、ステータ内部の滅菌を完全に行うことが難しかった。
【0006】
また、ステータ112が固定されているので、ロータ103が大きな反力を受けながら回転するため、ステータ112内面の直線状部分が磨耗し易く、性能が早期に低下する欠点がある。特に、前述した定置滅菌時のポンプ運転に伴うステータ112の損傷はより顕著に現れる。
さらには、ロータ103の回転軸線がステータ112の軸線を中心として公転することから、駆動軸102とロータ103との間に自在継手106を介在させる必要がある。そのため、自在継手106の内在するケーシング130内は長い流路とならざるを得ず、洗浄が難しく定置洗浄(CIP: Cleaning In Place)を行う上で難がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、食料原料などの粘性液(輸送物)を定量圧送する一軸偏心ねじポンプにおいて、ケーシング内の定置洗浄が容易であり、また、120℃〜130℃の蒸気を用いた定置滅菌を行う場合に、ステータ内部の滅菌を可能とし、ステータの損傷を防止し得る一軸偏心ねじポンプの定置滅菌方法および一軸偏心ねじポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る一軸偏心ねじポンプの定置滅菌方法は、雌ねじ状の内面を有するステータと、該ステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるロータとを備え、前記ロータと前記ステータ相互の対向する空間により複数のキャビティが画成され、前記ステータの軸心に対して前記ロータが回転しつつ偏心運動を行うことによって、吸入側から前記キャビティ内に吸い込まれた粘性液を吐出側へ圧送するように構成された一軸偏心ねじポンプを定置滅菌する方法であって、前記複数のキャビティのうち、密閉空間となるキャビティが一か所のみ設けられるものに適用し、蒸気を用いた定置滅菌をおこなうときに、前記一か所のキャビティが前記ステータの吸入側または吐出側に連通する非密閉位置となるように、前記ロータを前記一か所のキャビティが前記密閉空間となる位相を除外した所定角度に断続的に回転させることを特徴とする。
【0009】
ここで、本発明の一態様に係る一軸偏心ねじポンプの定置滅菌方法において、前記一軸偏心ねじポンプが、雌ねじ状の内面を有する回転可能に支承されたステータと、該ステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるとともに直線状の基端部がモータの駆動軸に直結されたロータとを備え、前記ロータの回転軸線が前記ステータの回転軸線に対して所定距離だけ偏心して配置されるとともに、前記ロータの回転力で前記ステータを前記ロータの二分の一の回転数で追従回転させるように構成されたものであり、前記ロータを前記所定角度に断続的に回転させることで、供回りするステータを断続的に所定角度ずつ回転させることは好ましい。
【0010】
また、本発明の一態様に係る一軸偏心ねじポンプは、雌ねじ状の内面を有するステータと、該ステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるロータとを備え、前記ロータと前記ステータ相互の対向する空間により複数のキャビティが画成され、前記ステータの軸心に対して前記ロータが回転しつつ偏心運動を行うことによって、吸入側から前記キャビティ内に吸い込まれた粘性液を吐出側へ圧送するように構成された一軸偏心ねじポンプにおいて、前記複数のキャビティのうち、密閉空間となるキャビティが一か所のみ設けられる一軸偏心ねじポンプであって、前記モータを駆動するモータ駆動部を備え、該モータ駆動部が、蒸気を用いた定置滅菌をおこなうための定置滅菌制御手段を有し、該定置滅菌制御手段は、前記一か所のキャビティが前記ステータの吸入側または吐出側に連通する非密閉位置となるように、前記ロータを前記一か所のキャビティが前記密閉空間となる位相を除外した所定角度に断続的に回転させることを特徴とする。
【0011】
ここで、本発明の一態様に係る一軸偏心ねじポンプにおいて、前記一軸偏心ねじポンプが、雌ねじ状の内面を有する回転可能に支承されたステータと、該ステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるとともに直線状の基端部がモータの駆動軸に直結されたロータとを備え、前記ロータの回転軸線が前記ステータの回転軸線に対して所定距離だけ偏心して配置されるとともに、前記ロータの回転力で前記ステータを前記ロータの二分の一の回転数で追従回転させるように構成されており、前記定置滅菌制御手段は、前記ロータを前記所定角度に断続的に回転させることで、供回りするステータを断続的に所定角度ずつ回転させることは好ましい。
また、本発明の一態様に係る一軸偏心ねじポンプにおいて、前記ステータ両側から前記ステータ内に蒸気を導入する蒸気導入管路が配管されていることは好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロータとステータ間に画成される複数のキャビティのうち、密閉空間となるキャビティが一か所のみ設けられるものを対象とし、その定置滅菌をおこなうときに、その一か所のキャビティがステータの吸入側または吐出側に連通する非密閉状態となるように、ロータをその一か所のキャビティが密閉空間となる位相を除外した所定角度に断続的に回転させるので、ロータとステータにより蒸気が密閉封印された空間を構成する位置がなくなり、ステータ内部全体に蒸気をいきわたらせることができる。そのため、蒸気による定置滅菌を行う場合でも、これまで困難とされたステータ内部の滅菌も確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一態様に係る一軸偏心ねじポンプの一実施形態の説明図である。なお、同図は軸線を含む断面を示している。
図2】ロータとステータの通常の位相状態(ロータとステータで蒸気が密閉封印された空間を形成する位相状態)の説明図である。
図3】本発明のロータとステータの位置制御された位相状態(蒸気が密閉封印された空間を形成しない位相状態)の説明図である。
図4】駆動軸とロータとの間に自在継手を用いた従来の一軸偏心ねじポンプの一例を説明する図であり、同図は軸線を含む断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この一軸偏心ねじポンプ1は、モータ40のケーシングを兼ねるブラケット11をポンプ側に有している。つまり、このモータ40は、ケーシングとして、軸方向中央の胴部45と、胴部45の後端を覆う後部46と、胴部45の前端を覆うブラケット11とを有している。
【0015】
胴部45内には、モータ40のシャフト43が、胴部45の前方および後部46との間で軸受44、44によって両持ち状態で回転自在に支持されている。モータ40の軸受構造は、後述のロータ2にかかるスラスト荷重やラジアル荷重を十分に受けられ、さらに80℃〜130℃の高温にも耐えられるものである。
シャフト43は、自身軸方向に沿って単一の内径で同軸に貫通形成された貫通穴43aを有する。シャフト43の外周には永久磁石41が設けられ、この永久磁石41に対して対向方向に隙間を隔てて胴部45内に固定子42が配置されることで、永久磁石ブラシレスモータが構成されている。この永久磁石ブラシレスモータは、モータ回転数が50〜1000min−1の回転領域において当該一軸偏心ねじポンプ1に必要とされるトルクを十分に出力できるものである。
【0016】
ブラケット11には、ポンプ側となる前側端面11aに、ポンプのハウジング7が装着されている。ハウジング7は、吸込側(同図の右側)から順に、吸込部7a、本体部7bおよび吐出部7cを備えて構成されている。ハウジング7の吸込部7aには圧送流体である食料原料などの粘性液(輸送物)の吸込口8が形成され、また、吐出部7cには粘性液の吐出口9が形成されている。
【0017】
ここで、吸込部7a、および吐出部7cには、後述する定置滅菌モード(定置滅菌制御)を実行する際に、高温(例えば120℃〜130℃)の蒸気を導入可能に付設された蒸気導入管路10が配管されている。蒸気導入管路10は、自身の途中部分に開閉弁10aを有する。開閉弁10aは、通常運転状態(後述する通常モード(通常制御))においては閉じられる。一方、定置滅菌モード(定置滅菌制御)においては開いた状態とされ、吸込部7aと吐出部7c相互が蒸気導入管路10によって連通状態とされるようになっている。
【0018】
なお、ブラケット11の前側端面11aと吸込部7a相互、吸込部7aと本体部7b、および本体部7bと吐出部7c相互は、周知のへルールクランプ22によって着脱可能に固定されている。そして、この一軸偏心ねじポンプ1は、ハウジング7内に、雌ねじ状の内面をもつステータ4と、このステータ4内に雄ねじ状の螺旋部2aが内装されるロータ2とを備えている。
【0019】
詳しくは、ロータ2は、先端側に形成された螺旋部2aと、直線状の基端部2bとを一体に有する。ロータ2の螺旋部2aは、自身の回転軸線L2に対して偏心した円形断面を有している。基端部2bの途中部分とブラケット11との間、並びに、吸込部7aおよび吐出部7cとステータ外筒4b(後述する)との間には、サニタリー性を有するシール30、31がそれぞれ設けられている。シール30は、吸込口8から流入した粘性液が、ロータ2の基端部2bとハウジング7の吸込部7aとの間の隙間を通ってブラケット11内に流入するのを阻止している。
【0020】
ロータ2は、基端部2bの段部2fよりも後方が一回り細径とされ、この細径部分が駆動軸2cとして一体に形成されている。この駆動軸2cは、上記シャフト43の貫通穴43aにスラスト方向にスライド移動可能且つ同軸に挿入可能に形成されている。駆動軸2cの後端には、雌ねじ2eが形成されている。これにより、シャフト43の後端面43bに対してワッシャ51を介してボルト50を雌ねじ2eに締めこむことで、段部2fがシャフト43の前端面43aに当接した位置で軸方向の位置が規定される。なお、シャフト43と駆動軸2cとは、キー47によって相互の回転方向への移動が拘束されて一体で回転するようにされている。これにより、ロータ2は、駆動軸2cが貫通穴43aに挿入された状態で固定されることにより、減速機等を介さずにシャフト43と駆動軸2cを直接接続し、ロータ2がモータ40のシャフト43の両側の軸受44、44によって片持ち構造に支承されている。
【0021】
ステータ4は、その両端が、ラジアル荷重とスラスト荷重をうけることができる転がり軸受5、6を介して上記ハウジング7内に回転自在に支承されている。この例では、ハウジング7を構成する本体部7bの内周面には、凹の段部7tが形成されている。また、ステータ4自身の外周面(後述するステータ外筒4b)には、その外周面に、転がり軸受5、6がそれぞれ外嵌される段部4uが両端に形成され、これら段部4uおよび7tによって、軸受5、6の移動が拘束されている。
【0022】
また、このステータ4は、軸方向の中央に配設された一つのステータ内筒4aと、ステータ内筒4aの外周面を覆って一体に形成されているステータ外筒4bとを有する。ステータ内筒4aはエラストマー製であり、ステータ外筒4bは金属製である。ステータ内筒4aは、雌ねじ状の内面が一定の肉厚になるようにステータ外筒4bの内周面に一体にモールド成形されている。モールド成形された雌ねじ状の螺旋部4eは、その雌ねじ状のピッチがロータ2の螺旋部2aの2倍である。ステータ4の螺旋部4eは長円形断面を有し、ロータ2の回転軸線L2は、ステータ4の回転軸線L1に対して所定の偏心量Eだけ偏心するように配置され、ロータ2の二分の一の回転数でステータ4が追従回転するようになっている。
【0023】
そして、上記ロータ2の螺旋部2aが、雌ねじ状の長円形断面の螺旋部4eを内面に形成したステータ4に内装され、ロータ2の螺旋部2aとステータ4の螺旋部4eとの対向空間によりキャビティ3が画成される。この一軸偏心ねじポンプ1は、ロータ2とステータ4相互の対向する空間により画成されるキャビティ3が一か所のみ設けられている。なお、ステータ4の軸方向の長さは、キャビティ3を一か所形成するのに必要な長さに加えて余裕代分の長さが付加されている。
【0024】
ここで、上記モータ40は、自身の回転角度(位相情報)を検出する不図示の位相検出部(例えば磁気センサ)を有する。この位相検出部により検出された位相情報はモータドライバ回路等を含むモータ駆動部(不図示)に入力される。モータドライバ部は、モータ40の回転角度を監視しつつ、検出された位相情報に基づくフィードバック制御によりモータ40を駆動可能とされている。
【0025】
そして、このモータ駆動部は、図2に示す通常モード(通常制御)と、図3に示す定置滅菌モード(定置滅菌制御)が選択可能に設定されている。つまり、モータ駆動部は、図2に示す通常モード(通常制御)では、モータ40を連続的に駆動して駆動軸2cが回転駆動される。駆動軸2cが回転すると、ロータ2はその回転軸線L2を中心として回転し、ロータ2の螺旋部2aの動きに伴ってステータ4もその回転軸線L1を中心としてロータ2の回転と同期して従動回転することにより、粘性液を吸込口8から吐出口9へ圧送する。このときの上記一か所のキャビティ3は、基本的には密封空間を形成するようにモータ駆動部により駆動制御される。なお、キャビティ3が完全に密封空間を形成しない位相であってもポンプ機能が損なわれるものではない。
【0026】
一方、このモータ駆動部は、図3に示す定置滅菌モード(定置滅菌制御)が設定されて実行されたときは、モータ40を断続的に所定角度ずつ回転させる。ここで、この断続的回転制御は、一か所のキャビティ3がステータの吸入側および吐出側のいずれかに連通することで、同図に示すような非密閉状態となるように、キャビティ3が密閉空間となる位相を除外した所定角度にてロータを断続的に回転させて、供回りするステータを断続的に所定角度ずつ追従回転させるように制御する。なお、キャビティ3が密閉空間となる位相は予め判明しているので、モータ駆動部は、検出された位相情報に基づくフィードバック制御により密閉空間となる位相を確実に回避することができる。なお、モータ駆動部が監視する位相は、密閉空間となる位相を一定点観測することで制御することができる。
【0027】
具体的には、例えば図2に示す例では、同図のステータ4の最も右側での位相(同図での(a))において、ステータ4の上部にロータ2の上部が一致した図が示されているが、この位相で回転されたときキャビティ3が密封空間とされるときである(これを監視の定点とする)。この監視定点のとき、吸込口8に導入された注入側蒸気Aと、吸込口8から蒸気導入管路10を介して吐出口9に導かれる吐出側蒸気Bとは、密封空間とされたキャビティ3内の密封蒸気Cによって分断された状態となる。これに対し、図3に示すように、図2に対応するステータ4の最も右側での位相において、図3(a)ではロータ2が傾いた位置とされることで位相が上記監視定点とは異なる。そして、このような位置とすることにより、以降の位相もずれることから、キャビティ3を非密封空間とすることができる。つまり、上記監視定点以外の位相であれば、注入側蒸気Aと、吐出側蒸気Bとは、キャビティ3の非密封部を介して連通状態とされる。したがって、ステータ4全体に蒸気を行き渡らせることができる。そして、ロータ2の間欠運転によりシールライン(ステータ4とロータ2との接触部分)も順次に移動していくので、局部的に高温蒸気に連続してさらされることも防止される。
【0028】
次に、この一軸偏心ねじポンプの動作およびその作用・効果について説明する。
この一軸偏心ねじポンプ1は、駆動軸2cが一体をなして直結された雄ねじ状の螺旋部2aを有するロータ2と、回転可能に支承されるとともにその回転軸線L1がロータ2の回転軸線L2に対して偏心して配置される雌ねじ状の螺旋部4eを内面に有するステータ4とを備え、ロータ2が回転しつつステータ4の軸心に対して偏心運動を行うことによって粘性液を吸入側から吐出側へ圧送する構成なので、モータ駆動部が実行する駆動制御が通常モード(通常制御)のときは、モータ40の駆動によってシャフト43を回転させて駆動軸2cが回転すると、ロータ2はその回転軸線L2を中心として回転し、ロータ2の螺旋部2aの動きに伴ってステータ4もその回転軸線L1を中心としてロータ2の回転と同期して従動回転することにより、粘性液を吸込口8から吐出口9へ圧送することができる。
【0029】
このように、この一軸偏心ねじポンプ1によれば、自在継手を用いない構成とすることができるので、構造が簡単であり、特に食品の圧送においては、自在継手のデッドスペースの洗浄の問題も解消され、吸入側の吸込み部における粘性液の流入も阻害されず、定置洗浄も容易である。
【0030】
そして、この一軸偏心ねじポンプ1によれば、例えば120℃〜130℃の蒸気を用いた定置滅菌を行う場合でも、効果的に定置滅菌を行うことができる。
つまり、この一軸偏心ねじポンプ1は、ロータ2とステータ4間に画成されるキャビティ3が一か所のみ設けられ、モータ駆動部は、定置滅菌モード(定置滅菌制御)では、定置滅菌をおこなうときに、その一か所のキャビティ3がステータ4の吸入側または吐出側に連通する非密閉状態となるように、ロータ2をキャビティ3が密閉空間となる位相を除外した所定角度に断続的に回転させて、供回りするステータ4を断続的に所定角度ずつ回転させるので、キャビティ3が、ロータ2とステータ4により蒸気が密閉封印された空間を構成する位置を無くすことができる。
【0031】
そして、この一軸偏心ねじポンプ1は、吸込部7a、および吐出部7cに、蒸気を導入可能に付設されて開閉弁10aを有する蒸気導入管路10が配管されているので、定置滅菌モード(定置滅菌制御)に際して、開閉弁10aを開けばステータ4の両側から蒸気を導入することができ、ステータ4の内部全体に蒸気をいきわたらせることができる。そのため、蒸気による定置滅菌を行う場合でも、これまで困難とされたステータ4内部の滅菌も確実に行うことができる。
なお、本発明に係る一軸偏心ねじポンプは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【0032】
例えば、上記実施形態では、一軸偏心ねじポンプ1が、雌ねじ状の内面を有する回転可能に支承されたステータ4と、ステータ4に雄ねじ状の螺旋部が内挿されるとともに直線状の基端部がモータ40の駆動軸に直結されたロータ2とを備え、ロータ2の回転軸線がステータ4の回転軸線に対して所定距離だけ偏心して配置されるとともに、ロータ2の回転力でステータ4をロータ2の二分の一の回転数で追従回転させるように構成されたものを例に説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0033】
つまり、本発明の主要構成は、画成されるキャビティが一か所のみ設けられる、1段(1ピッチ)型の一軸偏心ねじポンプにおいて、一か所のキャビティに対して密閉空間となる位相を除外した所定角度(2箇所がシールとならないロータ角度)に管理し、その所定角度で吸入側と吐出側から高温蒸気を供給する点にある。よって、この主要構成は、上記実施形態のようにステータが従動回転するタイプと、特許文献1を例に説明した、従来ながらのステータが固定でロータが自在継手によって偏心回転するタイプの両方で有効である。しかし、上述のように、本実施形態のような、ステータが従動回転するタイプの方が、ステータが固定でロータが自在継手によって偏心回転するタイプに比べるとサニタリー性が格段に優れており、この一軸偏心ねじポンプ1によれば、例えば120℃〜130℃の蒸気を用いた定置滅菌を行う場合に、効果的に定置滅菌を行う上でより好適である。
【符号の説明】
【0034】
1 一軸偏心ねじポンプ
2 ロータ
3 キャビティ
4 ステータ
5 転がり軸受
7 ハウジング
8 吸込口
9 吐出口
10 蒸気導入管路
11 ブラケット
30 シール
40 モータ
41 永久磁石
42 固定子
43 シャフト
44 軸受
A 注入側蒸気
B 吐出側蒸気
C 密封蒸気
E 偏心量
L1 回転軸線
L2 回転軸線
図1
図2
図3
図4