(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017856
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25D 7/00 20060101AFI20161020BHJP
F25D 21/02 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
F25D7/00 A
F25D21/02 F
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-141537(P2012-141537)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-5988(P2014-5988A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】西山 将人
(72)【発明者】
【氏名】明尾 伸基
【審査官】
▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−102956(JP,A)
【文献】
特開平05−164444(JP,A)
【文献】
特開平06−313660(JP,A)
【文献】
特開平07−293806(JP,A)
【文献】
特開昭50−000643(JP,A)
【文献】
特開平08−326129(JP,A)
【文献】
特開2006−177757(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0005961(US,A1)
【文献】
特開2007−237068(JP,A)
【文献】
特開平01−299598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 7/00
F25D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する冷却槽、冷却槽と真空配管によって接続しており冷却槽内の空気を吸引する真空発生装置、真空発生装置が冷却槽から吸引している空気を途中で冷却する熱交換器、熱交換器で空気を冷却することによって発生した凝縮水をためる凝縮水タンクを持ち、冷却槽内を真空化することで被冷却物の冷却を行う真空冷却装置において、
凝縮水タンクには凝縮水タンク内の水位を検出するための電極、
凝縮水タンク内へ凝縮水以外の水を供給するための給水経路、
凝縮水タンク内から凝縮水を排出するための排水経路を設けておき、
真空冷却運転実施後に凝縮水タンク内の水位が検出できなかった場合には、凝縮水タンクへ
電解質を多く含んだ水を供給するようにしていることを特徴とする真空冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空冷却装置において、凝縮水タンク内へ電解質を多く含んだ水を供給しても水位の検出が行えなかった場合には、水位検出部若しくは給水部に異常が発生しているとの判定を行うようにしていることを特徴とする真空冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却槽内を真空化することで冷却槽内の被冷却物を冷却する真空冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷却槽内に加熱調理した食品などの被冷却物を収容しておき、冷却槽内を真空化することで被冷却物を冷却する真空冷却装置がある。被冷却物を収容している冷却槽内を減圧し、飽和温度を被冷却物の温度よりも低下させると、被冷却物中の水分が蒸発する。その際に被冷却物から気化熱を奪うため、被冷却物の温度は低下する。真空冷却では被冷却物の内部から冷却を行うため、均一に短時間で冷却することができる。
【0003】
真空発生装置としては、エジェクタ装置や真空ポンプが使用されており、ドライ式の真空ポンプであれば、蒸気の供給や水の循環が必要ないために装置の構造としては単純なものとすることができる。ドライ式の真空ポンプでは、多量の水分を吸入すると故障を招くおそれがある、という問題がある。また、真空発生装置にて冷却槽内の空気を吸引する場合、空気と同時に被冷却物から発生した蒸気も吸引することになる。しかし、水は液体から気体に変わると体積が大幅に増大するため、真空発生装置で排出しなければならない気体量が多くなり、そのことで冷却槽内を減圧する能力は小さくなる。
【0004】
そのため、特開2012−102956号公報に記載があるように、冷却槽内の空気を真空発生装置へ送る真空配管の途中に熱交換器を設け、真空発生装置が吸引している空気を真空配管の途中で冷却することを行っている。熱交換器によって空気の冷却を行うと、蒸気は凝縮して液体となるため、空気流から水分を分離することができる。また、蒸気を冷却して液体に戻すと体積は大幅に小さくなるため、真空発生装置が吸引する空気の体積が小さくなり、真空冷却の効率を高めることができる。
【0005】
熱交換器で凝縮させて分離した水分は、空気流から分離して凝縮水タンクにためておき、真空冷却運転が終了した後に排出するようにしている。もしも凝縮水タンクに凝縮水をためたままで次回の冷却運転を行うと、冷却運転時に凝縮水タンク内の凝縮水が再蒸発することになる。そのため、凝縮水の排出は次回の真空冷却運転を開始するまでに終わらせておき、真空冷却運転の開始時には凝縮水タンクは空になっているようにしている。
【0006】
凝縮水タンクには水位を検出するための電極を設置しておき、電極間に電流を流した際の抵抗値によって電極間に水があるか否かを検出する。水位が電極位置より高くり、電極が水中に没することで電極間は水によってつながっている場合、電極間に電流を流すと水中の電解質が電流を流す。水位が電極位置より低くなり、電極は水から出てしまっている場合には、電極間に電流は流れない。そのため、電極間に電流を流した際の抵抗によって電極位置での水の有無を検出でき、電極位置で水有りを検出した場合には凝縮水タンク内の水位は電極位置より高い、電極位置で水なしを検出した場合には凝縮水タンク内の水位は電極位置より低いとの判定を行うことができる。凝縮水タンクからの凝縮水の排出は、前記の電極によって水有りを検出している状態で開始し、水位低下によって水無しの出力を開始した後も所定時間は排水を継続することで、凝縮水タンク内の凝縮水をすべて排出する。
【0007】
ところで凝縮水タンクにためる水は、蒸気を凝縮させた凝縮水であるため、水中に含まれている電解質の量は少なくなっている。純水に近い水の場合、電極が水に触れていても電極間に電流が流れ難いために、水位を検出することができない場合がある。次の冷却運転は、凝縮水タンク内の凝縮水をすべて排出したことを確認後に開始するようにしているが、水位が検出できないと排水が行われたか否かが分からない状況となる。排水が行われておらず、凝縮水がたまった状態で冷却運転を行った場合、凝縮水の再蒸発が発生して冷却運転が大幅に延びることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−102956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、冷却槽内を減圧することで被冷却物から水分を蒸発させており、真空配管途中で蒸気を凝縮させて凝縮水は凝縮水タンクにためるようにしている真空冷却装置であって、凝縮水タンクの水位を正しく検出することのできる真空冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、被冷却物を収容する冷却槽、冷却槽と真空配管によって接続しており冷却槽内の空気を吸引する真空発生装置、真空発生装置が冷却槽から吸引している空気を途中で冷却する熱交換器、熱交換器で空気を冷却することによって発生した凝縮水をためる凝縮水タンクを持ち、冷却槽内を真空化することで被冷却物の冷却を行う真空冷却装置において、凝縮水タンクには凝縮水タンク内の水位を検出するための電極、凝縮水タンク内へ凝縮水以外の水を供給するための給水経路、凝縮水タンク内から凝縮水を排出するための排水経路を設けておき、真空冷却運転実施後に凝縮水タンク内の水位が検出できなかった場合には、凝縮水タンクへ電解質を多く含んだ水を供給するようにしていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記の真空冷却装置において、凝縮水タンク内へ電解質を多く含んだ水を供給しても水位の検出が行えなかった場合には、水位検出部若しくは給水部に異常が発生しているとの判定を行うようにしていることを特徴とする。
【0012】
凝縮水タンクに設置した電極間に電流を流すことで水位を検出する水位検出装置では、電極間をつなぐ水が電解質をあまり含まない純水に近いものであると、水位を正しく検出することができないことがあった。この場合でも、凝縮水タンクに凝縮水以外の水を供給して凝縮水タンク内の電解質量を増加させることで、凝縮水タンクでの水位を検出することができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
凝縮水タンクにためる凝縮水が純水に近いものであったとしても、水位を正しく検出することができるため、凝縮水タンクにためていた凝縮水を排出する制御を行うことができるようになる。また、水位検出部若しくは給水部に異常が発生していた場合には、異常発生を検出することもできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を実施している真空冷却装置の構成概要図
【
図2】実施例での運転状況を説明するためのタイムチャートで、給水しなくても水位検出が行えた場合のもの
【
図3】実施例での運転状況を説明するためのタイムチャートで、水位検出のために給水を行った場合のもの
【
図4】実施例での運転状況を説明するためのタイムチャートで、水位検出検出部若しくは給水部に異常が発生した場合のもの
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明を実施している真空冷却装置の構成概要図、
図2から
図4は運転状況を説明するためのタイムチャートである。真空冷却装置は、被冷却物を収容する冷却槽2、冷却槽2の空気を吸引する真空発生装置1、冷却槽2と真空発生装置1の間をつなぐ真空配管部9などからなる。冷却槽2は、側面に扉を持った略直方体の容器であり、中に被冷却物を収容して密閉することができるようにしている。真空発生装置1としては、ドライ式の真空ポンプを使用することができる。
【0016】
真空冷却装置は、冷却槽内を減圧することで被冷却物内の水分を蒸発させ、気化熱によって被冷却物の冷却を行うものであるため、冷却槽から吸引している空気には蒸気を含んでいる。水は蒸気になると体積が大幅に大きくなるため、そのままでは大容積の蒸気を真空発生装置1へ送ることになる。それでは真空発生装置1の運転効率が悪くなるため、途中の真空配管部9で蒸気の除去を行う。真空配管部9の途中には複数の熱交換器5を設けておき、吸引空気からの蒸気の除去は、吸引空気を冷却して蒸気を凝縮させることで行う。熱交換器5には、チラー4で製造し、冷却水タンク3にためておいた冷却用水を供給するようにしておき、冷却槽2から吸引してきた空気と冷却用水の間で熱交換を行うことで、吸引空気の冷却を行う。
【0017】
熱交換器5は、横長の円筒形容器と容器内に設けた熱交換部からなり、熱交換部の一方の通路には吸引空気を流し、他方の通路には冷却用水を流すことで熱交換を行う。熱交換器は複数個であって、上下方向に積み重ねるようにして設置しており、熱交換器5は上部から順に、熱交換器A・熱交換器B・熱交換器Cと名付けておく。冷却槽2と熱交換器Aの間は冷却槽配管6でつなぎ、熱交換器Cと真空発生装置1の間は真空発生装置配管11でつなぐ。そして、積み重ねている熱交換器5の下方には、熱交換器5で発生した凝縮水をためる凝縮水タンク8を設置し、熱交換器5と凝縮水タンク8の間は凝縮水配管7をつないでおく。また、熱交換器Aと熱交換器Bの間は並列用配管10でも接続しておくことで、冷却槽2から吸引した空気は、熱交換器Aと熱交換器Bでは並列に流れるようにしておく。
【0018】
真空発生装置1にて空気の吸引を行うと、真空発生装置1は真空配管部9を通して冷却槽2内の空気を吸引することになる。冷却槽2内の空気は、冷却槽2と熱交換器Aの間をつないでいる冷却槽配管6を通して熱交換器に入り、熱交換器5を通った後に真空発生装置配管11を通して真空発生装置1へと流れる。熱交換器A内に入った空気は、熱交換器A内を横断して熱交換器Bと接続している凝縮水配管7へ向けて流れるとともに、熱交換器Aを縦断して熱交換器Bと接続している並列用配管10へ向けても流れる。熱交換器Aと熱交換器Bで並列に流れた空気は合流して熱交換器Cに入り、続いて熱交換器C内を流れる。
【0019】
各熱交換器で吸引空気の冷却を行うと、空気中に含まれている蒸気が凝縮し、凝縮水が発生する。熱交換器で発生した凝縮水は凝縮水配管7を通して下段の熱交換器内へ流れ落ち、下段側の熱交換器で発生した凝縮水と合流した後にさらに下段側の熱交換器へ流れ落ちていき、最終的には凝縮水タンク8へ入る。
【0020】
凝縮水タンク8には水位検出用電極棒12を設置しておき、電極間に電流を流した際の抵抗値により電極が水に接しているか否かの判定を行う。凝縮水タンク8には、凝縮水タンク8内へ水道水を供給するための給水経路13と、凝縮水タンク8にためた凝縮水を排出するための排水経路14も接続しておく。凝縮水タンク8への水道水の供給は、凝縮水タンク8内にためた凝縮水が純水に近いものであって、そのままでは水位を検出できない場合にも水位の検出を行うためのものである。凝縮水が電解質をあまり含まないものであって、水位検出用電極棒12に電流を流しても水位の検出が行えない場合、電解質を多く含んだ水道水を凝縮水タンク8に入れると、その電解質が電流を流すことになるため、水位を検出することができるようになる。凝縮水タンク8からの凝縮水の排出は、冷却運転を終了するごとに行っており、排水によって凝縮水タンク8内の水位が水位検出用電極棒12の位置より低くなったときより、さらに所定時間排水を継続した後に排水を停止するようにしている。
【0021】
図2から
図4に基づいて運転動作を説明する。
図2は凝縮水タンク8へ水道水を供給しなくても水位検出が行えた場合のものである。冷却運転を行うと被冷却物から蒸気が発生し、熱交換器5では蒸気を凝縮させるため、凝縮水タンク8には凝縮水がたまる。冷却運転を終了すると、次回の冷却運転に備え、排水経路14を通して凝縮水タンク内にたまっている凝縮水を排出する。冷却終了時には水位検出用電極棒12によって水有りの検出が行われており、排水を行うことで凝縮水タンク8内の水位は低下する。排水によって凝縮水タンク8内の水位が水位検出用電極棒12より低くなり、水有りの検出がなくなっても排水は継続しておき、そこからさらに所定時間排水を行うことで凝縮水タンク8内の凝縮水をすべて排出する。
【0022】
図3は凝縮水タンク8内の水位を検出することができなかった場合のものである。凝縮水タンク8にためる凝縮水は、通常の水より電解質の少ないものであるため、状況によっては水位検出用電極棒12によって水位を検出することができない場合がある。冷却運転終了時には凝縮水タンク8に凝縮水がたまっているはずであるが、水有りの検出を行えなかった場合、凝縮水タンクの凝縮水は純水に近いものである可能性が高いと判断し、凝縮水タンク8に水道水を供給する。給水経路13から凝縮水タンク8へ水道水を供給すると、凝縮水タンク8内の電解質量が増加するため、水位検出用電極棒12によって水有りの検出が行えるようになる。水有りが検出できるようになると、凝縮水タンク8からの排水を行い、凝縮水タンク8内の水位を低下させる。水位低下によって水位検出用電極棒12より低くなっても排水は継続しておき、水有りの検出が無くなった時からさらに所定時間排水を継続することで凝縮水タンク8内の凝縮水をすべて排出する。
【0023】
図4は水位検出検出部若しくは給水部に異常が発生した場合のものである。冷却運転終了時の凝縮水がたまっている時期に水位検出用電極棒12で水位の検出が行えなかった場合、
図3の実施例と同様に凝縮水タンクへ水道水を供給することで凝縮水タンク8内の電解質量を増加させる。しかし、給水時間があらかじめ定めておいた異常判定用の時間を経過しても水位検出用電極棒12での水有り検出が行えなかった場合には、水位検出検出部若しくは給水部に異常が発生したとの判定を行う。異常発生の判定時には、異常が発生していることの報知を行い、修理などの処置を行う。
【0024】
このようにすることで、凝縮水タンク8にためた凝縮水が純水に近いものであって、水位検出用電極棒12では水位を検出することができないものであっても、水位を検出することができるようになり、凝縮水の排出を確認することができる。
【0025】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 真空発生装置
2 冷却槽
3 冷却水タンク
4 チラー
5 熱交換器
6 冷却槽配管
7 凝縮水配管
8 凝縮水タンク
9 真空配管部
10 並列用配管
11 真空発生装置配管
12 水位検出用電極棒
13 給水経路
14 排水経路