特許第6017861号(P6017861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6017861車速検出装置及び車速検出装置のプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017861
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】車速検出装置及び車速検出装置のプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/52 20100101AFI20161020BHJP
   G01P 3/50 20060101ALI20161020BHJP
   A01C 15/00 20060101ALI20161020BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20161020BHJP
   A01M 9/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   G01S19/52
   G01P3/50 Z
   A01C15/00 G
   A01B69/00 303M
   A01M9/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-149555(P2012-149555)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-10141(P2014-10141A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】青田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】武智 貫太
(72)【発明者】
【氏名】藤本 義知
【審査官】 ▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−002258(JP,A)
【文献】 特開2008−175730(JP,A)
【文献】 特開平08−036042(JP,A)
【文献】 特開2010−187558(JP,A)
【文献】 特開2007−064880(JP,A)
【文献】 特開2011−227064(JP,A)
【文献】 特開2003−303021(JP,A)
【文献】 特開平09−145816(JP,A)
【文献】 実開平05−008422(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 − G01S 5/14
G01S 19/00 − G01S 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星からの衛星信号を受信し且つ作業装置を備えた車体に取り付けられる受信部と、前記受信部が受信した衛星信号に基づいて前記車体の車速を算出する車速算出部と、前記車速算出部で算出した車速を前記作業装置に出力する車速出力部とを備えた車速検出装置において、
前記車速算出部は、
前記衛星信号の搬送波位相に基づいて車体の車速である第1車速を算出する第1車速算出部と、
前記受信部が衛星信号を受信したときのドップラーシフトに基づいて車体の車速である第2車速を算出する第2車速算出部と、
前記車体に設けられ且つ前記車体の車軸の回転数に基づいて車速を求める車速センサで検出された第3車速が、予め定められた所定速度を超える場合には前記作業装置による作業は高速作業であると判断し、且つ、前記所定速度以下である場合には前記作業装置による作業は低速作業であると判断する作業判断部と、
前記作業判断部によって前記作業装置が低速作業であると判断した場合には前記第1車速算出部による第1車速の算出を選択し、高速作業であると判断した場合には第2車速算出部による第2車速の算出を選択する第2選択部と、
を備えていることを特徴とする車速検出装置。
【請求項2】
前記作業装置は、施肥を行う施肥装置、或いは、薬剤を散布する薬剤散布装置であることを特徴とする請求項1に記載の車速検出装置。
【請求項3】
前記所定速度は、1.0km/hであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車速検出装置。
【請求項4】
作業装置を備えた車体に取り付けられ且つ測位衛星からの衛星信号に基づいて前記車体の車速を算出する車速検出装置に組み込まれたプログラムであって、
前記車速検出装置に、
前記車体に設けられ且つ前記車体の車軸の回転数に基づいて車速を求める車速センサで検出された第3車速が、予め定められた所定速度を超える場合には前記作業装置による作業は高速作業と判断し、且つ、前記所定速度以下である場合には前記作業装置による作業は低速作業であると判断するステップと、
前記作業装置が低速作業であると判断された場合には、前記衛星信号の搬送波位相に基づいて車体の車速である第1車速を算出するステップと、
前記作業装置が高速作業であると判断された場合には、前記衛星信号を受信したときのドップラーシフトに基づいて車体の車速である第2車速を算出するステップと、
を実行させることを特徴とする車速検出装置のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、測位衛星からの衛星信号に基づいて作業装置を備えた車体の車速を算出して出力する車速検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圃場に施肥を行う施肥装置として、圃場に施肥する肥料の単位面積当たりの施肥量を均一化するために当該施肥装置を搭載する乗用管理機の走行速度(車速)に、施肥量を連動させて施肥を行うものがある。車速の検出する方法は様々ものがあるが、GPSからの信号を用いて施肥装置を搭載する乗用管理機の走行車速を検出する技術として、特許文献1に示すものがある。
【0003】
特許文献1では、GPSからの速度情報に基づく車速と、車体に設けた車輪の回転数を検出する車速センサの車速パルスによる車速とを用いて、GPSから速度情報を得られない場合には、車速センサからの車速を施肥装置に出力する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−187558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、GPSから速度情報を得られない場合には、車速センサからの車速を施肥装置に出力するという技術であり、どのようにGPSからの車速情報を用いて車速を求めるのか全く開示されていない。
さて、GPSからの速度情報を用いて車速を求めることを考えた場合、様々な要因によって、車速(演算結果)が変化したり、演算が出来たとしても車速(演算結果)の精度が良くない場合が考えられる。そのため、特許文献1に示すように、単にGPSの速度情報を用いるということだけでは、施肥装置を車速と連動させる場合など、施肥作業を安定的に行うことが難しいのが実情である。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、作業装置に適正な車速を出力することができる車速検出装置及び車速検出装置のプログラムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
請求項1に係る発明では、測位衛星からの衛星信号を受信し且つ作業装置を備えた車体に取り付けられる受信部と、前記受信部が受信した衛星信号に基づいて前記車体の車速を算出する車速算出部と、前記車速算出部で算出した車速を前記作業装置に出力する車速出力部とを備えた車速検出装置において、前記車速算出部は、前記衛星信号の搬送波位相に基づいて車体の車速である第1車速を算出する第1車速算出部と、前記受信部が衛星信号を受信したときのドップラーシフトに基づいて車体の車速である第2車速を算出する第2車速算出部と、前記車体に設けられ且つ前記車体の車軸の回転数に基づいて車速を求める車速センサで検出された第3車速が、予め定められた所定速度を超える場合には前記作業装置による作業は高速作業であると判断し、且つ、前記所定速度以下である場合には前記作業装置による作業は低速作業であると判断する作業判断部と、前記作業判断部によって前記作業装置が低速作業であると判断した場合には前記第1車速算出部による第1車速の算出を選択し、高速作業であると判断した場合には第2車速算出部による第2車速の算出を選択する第2選択部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
前記作業装置は、施肥を行う施肥装置、或いは、薬剤を散布する薬剤散布装置であることを特徴とする。
【0009】
前記所定速度は、1.0km/hであることを特徴とする。
【0010】
作業装置を備えた車体に取り付けられ且つ測位衛星からの衛星信号に基づいて前記車体の車速を算出する車速検出装置に組み込まれたプログラムであって、前記車速検出装置に、前記車体に設けられ且つ前記車体の車軸の回転数に基づいて車速を求める車速センサで検出された第3車速が、予め定められた所定速度を超える場合には前記作業装置による作業は高速作業と判断し、且つ、前記所定速度以下である場合には前記作業装置による作業は低速作業であると判断するステップと、前記作業装置が低速作業であると判断された場合には、前記衛星信号の搬送波位相に基づいて車体の車速である第1車速を算出するステップと、前記作業装置が高速作業であると判断された場合には、前記衛星信号を受信したときのドップラーシフトに基づいて車体の車速である第2車速を算出するステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
送波位相による第1車速と、ドップラーシフトによる第2車速とを求められるため、車速検出装置で求めた第1車速又は第2車速を、様々な状況に応じて適正に作業装置に出力することができる。
また、測位衛星の配置環境が良い場合には、精度の高い(分解能の良い)第1車速を作業装置に出力でき、配置環境が低下する場合には、精度よりも安定性を重視した第2車速を作業装置に出力することができ、作業装置は、精度の高い第1車速又は安定した第2車速を用いて作業を行うことができる。
【0012】
また、作業装置(車体)が低速作業中である場合には精度の良い第1車速を当該作業装置に出力することができ、作業開始直後や低速作業中においては精度の良い車速を用いて作業を行うことができる。また、作業装置が高速作業中には、精度よりも安定性を重視した第2車速を作業装置に出力することができ、安定した第2車速を用いて継続的に作業を行うことができる。
【0013】
更に、作業装置の駆動が止められているときには第2車速を作業装置に出力することで、駆動されていない作業装置の作業量調整具を頻繁に駆動させることがなく、振動等も発生しにくい。
また、作業装置が低速作業中である場合には精度の良い第1車速を当該作業装置に出力することができ、作業開始直後や低速作業中においては精度の良い車速を用いて作業を行うことができる。また、作業装置が高速作業中には、精度よりも安定性を重視した第2車速を作業装置に出力することができ、安定した第2車速を用いて継続的に作業を行うことができる。
【0014】
また、車速に連動して作業を行う作業装置での作業を効率よく行わせることができる。
また、搬送波位相による第1車速と、ドップラーシフトによる第2車速とを求めるステップを有するプログラムのため、このプログラムの制御により、車速検出装置で求めた第1車速又は第2車速を、様々な状況に応じて適正に作業装置に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における車速検出装置をトラクタに装着した場合の制御ブロック図である。
図2】車速算出から車速出力までのフローチャートである。
図3】第2実施形態における車速検出装置をトラクタに装着した場合の制御ブロック図である。
図4】同実施形態での車速算出から車速出力までのフローチャートである。
図5】第3実施形態における車速検出装置をトラクタに装着した場合の制御ブロック図である。
図6】同実施形態での車速算出から車速出力までのフローチャートである。
図7図6の変形例を示すフローチャートである。
図8】トラクタに施肥装置を接続した全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
本発明の車速検出装置は、衛星測位システム(Global Positioning System,Galileo、GLONASSなど)を用いて作業装置を備えた車体の車速等を検出するものである。車速検出装置は、施肥装置、薬剤散布装置などの作業装置を牽引する車体(例えば、トラクタ)に取り付けられるもので、移動する車体の速度(車速)を算出することができる。なお、第1実施形態は、参考例である。
【0017】
図1は、車速検出装置をトラクタに装着した場合の制御ブロック図を示したものである。図8はトラクタの全体図を示したものである。
以下、トラクタに車速検出装置を装着した場合を例にとり説明する。
図8に示すように、トラクタ1は、前後に車輪を有する走行車両(走行車体)2に、エンジン3、変速装置4が搭載されて構成されている。このトラクタ1には、制御装置5が搭載されている。この制御装置5は、運転席6の周りに設置された操作具を操作したときの操作信号、走行車体2に搭載された様々なセンサの検出信号等に基づいてトラクタ1の走行系や作業系の制御を行う。
【0018】
例えば、制御装置5は、走行車両2の後部に設けられた3点リンク機構7を操作具の操作信号に基づいて操作したり、アクセルペダルセンサに基づいてエンジン回転数を制御する。なお、制御装置2は、トラクタ1の作業系や走行系を制御するものであればよく、制御方式は限定されない。
トラクタ1の運転席6の周囲、又は、トラクタ1の運転席6を囲むキャビン14の天板には、測位衛星15からの衛星信号に基づいてトラクタの車速を求める車速検出装置13が着脱自在に設けられている。また、トラクタ1の後部であって3点リンク機構7には、車速検出装置13で求めた車速などと連動して動作して圃場に肥料を供給する施肥装置9が装着されている。施肥装置9は、車輪を有していてトラクタ1の牽引によって走行する。
【0019】
図1に示すように、施肥装置9の制御装置10は、車速を入力する入力部(インターフェース)11と、入力部11に入力された車速に応じて施肥量を求める施肥量算出部12とを備えている。入力部11は、ハーネス等が接続される接続口とされており、車速検出装置13のハーネスを接続すると、車速検出装置13で求めた車速が入力される。
施肥量算出部12は、施肥装置9から外部に排出する施肥量を単位面積当たりの量が均一となるように車速が速い場合には施肥量を多く、車速が遅い場合は施肥量を少なくするという車速に連動させた施肥量を求める。この施肥装置9によれば、入力部11に入力された車速に応じて施肥量算出部12によって施肥量が算出され、算出された施肥量を圃場へと供給することができる。
【0020】
図1に示すように、車速検出装置13は、測位衛星15の衛星信号(電波)を受信する受信部20と、受信部20が受信した衛星信号に基づいてトラクタ1(車体)の車速を算出する車速算出部21と、車速算出部21で求めた車速を外部に出力する車速出力部22とを備えている。受信部20、車速算出部21、車速出力部22は半導体などの電子部品から構成されていて、図8に示すように、筐体23内に納められている。
【0021】
車速算出部21は、CPU等から構成されていて、第1車速算出部25と、第2車速算出部26と、第1選択部27とを備えている。これら第1車速算出部25、第2車速算出部26、第1選択部27は、車速算出部21に格納されたプログラム等から構成されている。
第1車速算出部25は、測位衛星15から送信された衛星信号の搬送波位相に基づいてトラクタ1の車速を算出するものである。具体的には、第1車速算出部25は、測位衛星15から送信される衛星信号の搬送波位相に基づいて当該受信部20と測位衛星15との距離を求め、当該距離から受信部20の位置を算出する。そして、第1車速算出部25は、所定時間内において受信部20が位置変化したときの距離を速度に換算し、換算値をトラクタ1の車速とする。以下、第1車速算出部25が求めた車速を第1車速という。
【0022】
測位衛星15がGPS衛星である場合、測位衛星15から送信される衛星信号の基本周波数fは、1575.42MHzであり、搬送波L1の波長は約19mである。第1車速算出部25では、衛星信号の搬送波位相をトラクタ1の位置を求めているため、トラク
タ1の位置を、理論的には波長の10分の1に相当する1.9cm以下の精度で求めることができ、分解能の高い位置検出を行うことができる。そして、第1車速算出部25では、分解能の高いトラクタ1の位置と時間とを用いることにより、車速の分解能は1cm/secとなり、0.036km/h単位でトラクタ1の速度を検出することができる。つまり、第1車速算出部25では、分解能が0.036km/hという高精度の車速を求めることができる。
【0023】
第2車速算出部26は、受信部20が衛星信号を受信したときのドップラーシフト(ドップラーシフト法)に基づいてトラクタ1の車速を算出するものである。具体的には、第2車速算出部26は、測位衛星15が送信した衛星信号の周波数と受信部20が衛星信号を受信したときの当該衛星信号の周波数とのずれ(ドップラーシフト値)と、衛星信号に基づいて当該受信部20の位置を算出する。第2車速算出部26は、所定時間内において受信部20が位置変化したときの距離を速度に換算し、換算値をトラクタ1の車速とする。以下、第2車速算出部26が求めた車速を第2車速という。
【0024】
第2車速算出部26では、ドップラーシフト法に基づいてトラクタ1の位置を求めているため、トラクタ1の位置精度は第1車速算出部25に比べて低いものの、環境性能が優れていて安定して衛星からの信号を受けることができ、車速を安定して検出することができる。
第1選択部27は、測位衛星の受信状況(測位衛星の配置状況)に基づいて、第1車速算出部25による第1車速を行うか、第2車速算出部26による第2車速の算出を行うかを選択する(切り換える)ものである。
【0025】
具体的には、第1選択部27は、複数の測位衛星15、少なくとも4つ以上の測位衛星15から衛星信号を受信部20が受信すると、まず、各測位衛星15の衛星信号等を用いて測位衛星15の受信状況(測位衛星の配置状況)として、測位衛星15の水平精度低下率(HDOP)を求める。
そして、第1選択部27は、HDOPの値が低く(例えば、HDOPが3未満)、精度が高いと判断すると、車速算出部21を第1モードする。また、第1選択部27は、HDOPの値が高く(例えば、HDOPが3以上)、精度が低いと判断すると、車速算出部21を第2モードにする。車速算出部21は、第1モードであるときは第1車速算出部25による第1車速の算出を実行し、第2モードであるときは第2車速算出部26による第2車速の算出を実行する。なお、第1選択部27は、測位衛星15の受信状況としてHDOPを求めて選択を行っているが、これに加え、測位衛星15の垂直精度低下率(VDOP)を求めて、HDOP及びVDOPを用いて選択(切換)を判断してもよい。
【0026】
車速出力部22は、第1車速、又は、第2車速を外部に出力するものである。具体的には、車速出力部22は、車速を出力する出力端子及び電子部品等から構成されている。例えば、車速出力部22の出力端子と施肥装置9の入力部11とをハーネスによって接続することによって施肥装置9に車速を出力することができる。
なお、車速出力部22は、無線によって車速を出力するものであってもよい。例えば、近距離の無線通信(WiFi(R)、Bluetoooth(R)、ZigBee(R)など)を行うことができる機能が備えられた送受信器によって、車速出力部22を構成してもよい。この場合は、車速を入力する施肥装置9側の入力部を近距離の無線通信を行える送受信器で構成すればよい。
【0027】
図2は、車速算出部21の動作、即ち、車速算出から車速出力までのフローチャートを示したものである。図2を用いて、車速算出部21及び車速算出部21(車速検出装置13)を実行するプログラムについて説明する。図2の説明では、説明の便宜上、測位衛星15はGPS衛星であるとする。
図2に示すように、S1では、トラクタ1のイグニッションキー等をオンするなど方法により車速検出装置13の電源を投入すると、車速算出部21が起動して受信部20による衛星信号の受信が開始される(S1:測位開始)。衛星信号の受信を開始して受信部20が少なくとも4機以上のGPS衛星からの衛星信号を受信可能になると、S2では、第1選択部27によって、受信部20で受信した各GPS衛星からの衛星信号に基づいてH
DOPを算出する(S2:環境算出)。
【0028】
そして、第1選択部27によるHDOPの算出が完了すると、S3にてHDOPに基づく受信状況の判断(車速算出の選択)を行う(S3:受信状況判断)。この受信状況判断では、HDOPが3未満であるときは、第1車速算出部25による車速の算出を行うために当該車速算出部21を第1モードにする(S3、yes)。一方、第1選択部27は、HDOPが3以上であるときは、第2車速算出部26による車速の算出を行うために当該車速算出部21を第2モードにする(S3、No)。
【0029】
S4では、車速算出部21は、第1モードであるため第1車速算出部25により衛星信号の搬送波位相を用いて第1車速を求め(S4:搬送波位相法)、S5では、車速算出部21は、第2モードであるため第2車速算出部26により衛星信号の周波数差を用いて第2車速を求める(S5:ドップラーシフト法)。
S6では、車速算出部21は、車速出力部22に第1車速又は第2車速を出力し、当該車速出力部22は、S4にて第1車速が求めらた場合、当該第1車速を施肥装置9に出力し、S5にて第2車速が求めらた場合、当該第2車速を施肥装置9に出力する(S6:車速出力)。第1車速又は第2車速を出力すると、環境算出S2に戻る。
【0030】
以上、本発明によれば、車速検出装置13は、衛星信号の搬送波位相に基づいて第1車速を算出する第1車速算出部25と、ドップラーシフトに基づいて第2車速を算出する第2車速算出部26とを備えているため、搬送波位相による第1速度と、ドップラーシフトによる第2車速とを使い分けができるようになり、様々な状況に応じて、車速検出装置13で求めた車速を作業装置(車体)にて用いることができる。
【0031】
詳しくは、車速検出装置13(受信部20)から見てGPS衛星の配置が良好で衛星の受信状況が非常によい場合は、第1選択部27によって車速算出部21を第1モードに切り換え、第1車速算出部25によって衛星信号の搬送波位相を用いて車速(第1車速)を算出することとしているため、精度の良い車速(分解能の高い車速)を施肥装置9に出力することができる。一方、車速検出装置13(受信部20)から見てGPS衛星の配置が良好でなく衛星環境(配置状況)が低下する場合には、第1選択部27によって車速算出部21を第2モードに切り換え、衛星信号の搬送波位相よりも衛星の受信状況(配置状況)の影響を受けにくいドップラーシフトを用いて車速(第2車速)を算出しているため、安定的に車速を施肥装置9に出力することができる。
【0032】
つまり、測位衛星15の受信状況に応じて、配置状況が良い場合には、より精度の高い車速を施肥装置9に出力するようにし、配置状況が低下する場合には、精度よりも安定性を重視した車速を施肥装置9に出力することができる。
そして、車速出力部22によって、第1車速算出部25により算出した第1車速、又は第2車速算出部26により算出した第2車速を、施肥装置9の制御装置10に出力するようにしているため、車速検出装置13から得られた車速に応じて施肥装置9による施肥を行うことができる。
【0033】
施肥装置9に第1車速が入力された場合、第1車速は上述したように非常に分解能が高いため、例えば、0.1km/hの単位の車速に応じて施肥量を決定することが可能になる。特に、作業開始直後や低速作業時である場合は、分解能の高い0.1km/h刻みで車速を出力することが可能であるため、細かい車速に連動した作業を行うことが可能となる。施肥装置9に第2車速が入力された場合、第2車速は第1車速に比べて分解能は低いものの、安定した車速を得ることができるため、車速連動による施肥をスムーズに行うことができる。
[第2実施形態]
第2実施形態は、車速検出装置13は、作業装置の作業状況に基づいて車速を求めるものである。第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0034】
図3は、第2実施形態における車速検出装置13をトラクタ1に装着した場合の制御ブロック図である。
図3に示すように、トラクタ1には、走行車両2からのデータ(例えば、車軸の回転数)に基づいてトラクタ1の車速(第3車速)を検出する車速センサ31が設けられている
【0035】
車速算出部21は、第1車速算出部25と、第2車速算出部26と、第2選択部29と、作業判断部30とを備えている。第1車速算出部25、第2車速算出部26は、第1実施形態と同じであるため説明を省略する。第2選択部29及び作業判断部30は、車速算出部21に格納されたプログラム等から構成されている。
作業判断部30は、車速センサ31で検出された第3車速に基づいてトラクタ1の作業状況を判断するものである。具体的には、作業判断部30は、車速センサ31で検出された第3車速が低速(1km/h以下)であるときは、トラクタ1は低速作業中であると判断し、車速センサ31で検出された第3車速が高速(1km/h超える)であるときは、トラクタ1は高速作業中であると判断する。
【0036】
第2選択部29は、作業判断部30に基づいて、第1車速算出部25による第1車速の算出を行うか、第2車速算出部26による第2車速の算出を行うかを選択するものである。具体的には、第2選択部29は、トラクタ1が低速作業中であるとき、車速算出部21を第1モードにする。また、第2選択部29は、トラクタ1が高速作業中であるとき、車速算出部21を第2モードにする。第1車速算出部25は、第1モードであるときは搬送波位相を用いて第1車速を求め、第2モードであるときはドッブラーシフトを用いて第2車速を求める。
【0037】
図4は、第2実施形態における車速算出から車速出力するまでのフローチャートを示したものである。
図4に示すように、S10では、車速検出装置13に電源が投入されると、車速算出部21が起動して受信部20による衛星信号の受信が開始される(S10:測位開始)。また、車速算出部21に車速センサ31からの車速(第3車速)が入力される(S11:車速センサ入力)。
【0038】
次に、S12では、作業判断部30は、入力された車速センサ31の第3車速が1km/h以下であるか否か、即ち、車速センサ31に計測した第3車速によって、トラクタ1が低速作業中であるか高速作業中であるか否かを判断する(S12:作業状態判断)。
第2選択部29は、トラクタ1が低速作業中であると、車速算出部21を第1モードにする(S12、yes)。一方、第2選択部29は、トラクタ1が高速作業中であると、車速算出部21を第2モードにする(S12、No)。
【0039】
S13では、第1車速算出部25により衛星信号の搬送波位相を用いて第1車速を求め(S13:搬送波位相法)、S14では、第2車速算出部26により衛星信号の周波数差を用いて第2車速を求める(S14:ドップラーシフト法)。
S15では、車速出力部22は、S13で第1車速が求めらた場合、当該第1車速を施肥装置9に出力し、S14で第2車速が求めらた場合、当該第2車速を施肥装置9に出力する(S15:車速出力)。第1車速又は第2車速を出力すると、S11に戻る。
【0040】
以上、本発明によれば、車速検出装置13は、第1車速算出部25と、第2車速算出部26との他に作業判断部30及び第2選択部29を備えているため、トラクタ1(施肥装置9)の作業状況に基づいて、当該トラクタ1に連結した施肥装置9に車速を出力することができる。例えば、施肥装置9が低速作業であるときは、搬送波位相を用いた分解能の高い車速、即ち、0.1km/h単位で車速を施肥装置9に出力することができるため、作業開始直後や低速作業時でも施肥装置9は車速に連動して効率よく施肥作業を行うことができる。一方、施肥装置9が高速作業であるときは、ドップラーシフトを用いた安定性の高い車速を施肥装置9に出力することができるため、安定的に車速連動による施肥作業を行うことができる。
[第3実施形態]
第3実施形態は、車速検出装置13は、車速検出装置13自体で求めた車速に基づいて低速作業及び高速作業の判断を行って第1車速又は第2車速を出力するものである。
【0041】
図5は、第3実施形態における車速検出装置13をトラクタ1に装着した場合の制御ブロック図である。
図5に示すように、車速算出部21は、第1車速算出部25と、第2車速算出部26と
、作業判断部30とを備えている。
第1車速算出部25及び第2車速算出部26は、上述したように車速演算部のモードに関わらず、受信部20にて衛星信号を受信すると、第1車速や第2車速を算出する。第1車速算出部25及び第2車速算出部26において車速を算出する処理は、第1、2実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0042】
作業判断部30は、第1車速算出部25で算出した第1車速に基づいて、トラクタ1の作業状況を判断するものである。具体的には、作業判断部30は、第1車速算出部25で算出した第1車速が低速(1km/h以下)であるときは、トラクタ1は低速作業中であると判断し、第1車速算出部25で算出した第1車速が高速(1km/h超える)であるときは、トラクタ1は高速作業中であると判断する。車速出力部22は、トラクタ1が低速作業中であるときは第1車速を出力し、トラクタ1が高速作業中であるときは第2車速を出力するものである。
【0043】
図6は、第3実施形態における車速算出から車速出力するまでのフローチャートを示したものである。図6のS20は図4のS10と同様であるため説明を省略する。
図6に示すように、S21では、測位開始後、第1車速算出部25により第1車速を求め(S21:搬送波位相法)、S22では、第2車速算出部26により第2車速を求める(S22:ドップラーシフト法)。
【0044】
次に、S23では、作業判断部30により第1車速算出部25で求めた第1車速(演算値)が1km/h以下であるか否かを判断する(S23:作業状態判断)。ここで、第1車速(演算値)が1km/h以下である場合、作業判断部30は、低速作業であると判断する(S23、yes)。S24にて第1車速算出部25で求めた第1車速を、車速出力部22によって施肥装置9に出力する(S24:第1車速出力)
一方、第1車速(演算値)が1km/h超える場合、作業判断部30は、高速作業であると判断し(S23、No)、S25にて第2車速算出部26で求めた第2車速を、車速出力部22によって施肥装置9に出力する(S25:第2車速出力)。
【0045】
このように、図6の処理では、第1車速算出部25によって第1車速を求めておき、この第1車速からトラクタ1の作業状態が高速作業中であるか低速作業中であるかを判断し、低速作業中であれば第1車速をそのまま継続して出力し、高速作業中であればドップラーシフトによって求めた第2車速を出力する。言い換えれば、搬送波位相を用いて分解能の高い第1車速と、ドップラーシフトを用いて安定性の高い第2車速との両方を予め求めておき、低速作業中は、第1車速と第2車速のうち、分解能の高い第1車速を出力し、高速作業中は、第1車速と第2車速のうち、安定性の高い第2車速を出力することとしている。
【0046】
さて、車速を求めるにあたっては、測位衛星15の受信状況も考慮すると良い。図7は、測位衛星の受信状況を考慮したフローであって、図6の変形例のフローチャートを示したものである。なお、測位衛生の受信状況の判断は車速算出部で行う。図7のS30は図4のS10と同様であるため説明を省略する。
図7に示すように、受信部20が少なくとも4機以上のGPS衛星からの衛星信号を受信可能になると、S31では、車速算出部21によって、受信部20で受信した各GPS衛星からの衛星信号に基づいてHDOPを算出する(S31:環境算出)。
【0047】
そして、HDOPの算出が完了すると、S32にてHDOPに基づく受信状況判断(車速算出の選択)を行う(S32:受信状況判断)。HDOPが3未満であるときは(S32、yes)、次の処理であるS33に進み、S33にて第1車速算出部25により第1車速を求める(S33:搬送波位相法)。
次に、S34では、作業判断部30により第1車速算出部25で求めた第1車速が1km/h以下であるか否かを判断する。ここで、第1車速(演算値)が1km/h以下である場合(S34、yes)、S35の処理に進み、第1車速を車速出力部22によって施肥装置9に出力する。
【0048】
一方、第1車速が1km/h超える場合(S34、No)、S36に進み、第2車速算出部26により第2車速を求める(S36:ドップラーシフト法)。そして、第2車速を
求めると、当該第2車速を車速出力部22によって施肥装置9に出力する。
このように、図7では、測位衛星15の受信状況も考慮して車速を求めるようにしているため、車速検出装置13から出力される車速の誤差等を向上させることができると共に車速検出装置13から出力される車速の途切れを防止することができる。
【0049】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
上述した実施形態では、車速検出装置13は、薬剤散布装置等の他の作業装置9に車速を出力するものであってもよいし、作業装置9に装着されていてもよい。即ち、車速検出装置13は、車両側に搭載されていても作業装置側に搭載されていてもよい。
【0050】
また、車速検出装置13は、トラクタの他、コンバイン、移植機等の車体に装着されるものであってもよい。さらに、トラクタ、コンバイン、移植機等の車体にも車速を出力する場合は、車速出力部22は、車体に設けた車両用通信ネットワーク(Controller Area Networkなど)に車速を出力するようにしてもよい。このように、車両用通信ネットワークに車速を出力すれば、車両用通信ネットワークを介して車体に搭載した作業装置9や各種機器に車速を入力することができる。作業装置9や各種機器を、車速検出装置13で検出した車速と連動して作動させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 トラクタ
2 走行車体
3 エンジン
4 変速装置
5 制御装置
6 運転席
7 3点リンク機構
9 施肥装置
10 制御装置
11 入力部
12 施肥量算出部
13 車速検出装置
14 キャビン
15 測位衛星
20 受信部
21 車速算出部
22 車速出力部
23 筐体
25 第1車速算出部
26 第2車速算出部
27 第1選択部
28 車速出力部
29 第2選択部
30 作業判断部
31 車速センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8