(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017863
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】シート設置撤収方法、発電機の分解点検方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
H02K15/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-150627(P2012-150627)
(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公開番号】特開2014-14228(P2014-14228A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】塚村 信也
【審査官】
小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−198023(JP,A)
【文献】
特開2008−223362(JP,A)
【文献】
特開平07−242123(JP,A)
【文献】
実開昭63−091929(JP,U)
【文献】
特開2004−131036(JP,A)
【文献】
特開平07−288954(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3168605(JP,U)
【文献】
特開2002−127759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機にシートを設置し、撤収する方法であって、
前記発電機は、当該発電機の周囲を覆うことが可能なシートを収納するシート収納機構を備え、前記シート収納機構は、前記シートを収納するケースと、前記シートを巻き取るドラムと、を備え、当該シート収納機構は、前記発電機の上部に、前記ドラムの巻き取り軸が長手方向に沿うように2台並設されており、
前記シート収納機構から前記シートの一辺を引張って、前記発電機の設置面に固定するシート設置ステップと、
前記シートの前記一辺を前記設置面から外し、前記シートを前記シート収納機構に収納するシート収納ステップと、を実行することを特徴とするシート設置撤収方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシート設置撤収方法であって、
前記シートは、矩形状をなし、その一辺が前記ドラムに止着される第1シート部と、不等辺四角形状をなし、その一辺が前記第1シート部の左右両辺にそれぞれ連接され、前記シートの収納時には前記第1シート部に重ねられる2枚の第2シート部と、からなり、
前記シート設置ステップでは、
前記シート収納機構から前記第1シート部の他辺を引張って、前記発電機の設置面に固定するステップと、
前記第1シート部の左右両辺において、前記第2シート部を折り返して、当該第2のシートの一辺同士を連結するステップと、
前記連結した第2シート部の一辺同士を外し、当該第2シート部を逆に折り返して、前記第1シート部に重ねるステップと、を実行し、
前記シート撤収ステップでは、前記第1シート部の他辺を前記設置面から外し、前記第1シート部及び前記第2シート部を前記シート収納機構に収納するステップを実行することを特徴とするシート設置撤収方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシート設置撤収方法を用いた前記発電機の分解点検方法であって、
前記発電機から回転子を引き抜き、前記回転子を、前記発電機と、前記シート設置ステップにおける前記シートの一辺の前記設置面への固定予定位置との間に設置した後、前記シート設置ステップを実行し、前記発電機の点検作業が終了した後、前記シート撤収ステップを実行することを特徴とする発電機の分解点検方法。
【請求項4】
請求項3に記載の発電機の分解点検方法であって、
前記シート設置ステップで設けられた前記シートにより覆われる点検作業エリア内に乾燥機を設置することを特徴とする発電機の分解点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機の分解点検時に防湿防塵の作業エリアを確保するための
シート設置撤収方法及び発電機の分解点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電機の分解点検を実施する際には、発電機から回転子を引き抜いた後、回転子の点検作業を行う。そのとき、作業エリア内で発生する粉塵や湿気の影響を受けて、回転子の絶縁低下が起きやすくなる。その絶縁低下を防ぐために確実な品質管理が求められるが、主に防塵対策として、発電機の近辺に仮設ハウスを構築し、その仮設ハウス内で回転子の点検作業を実施している。
【0003】
防湿、防塵対策の例として、特許文献1には、天井の一部が開閉可能な全天候形の防水、防塵ハウスを基礎上に組立てた後、その内部で変圧器の中身やタンクの組立を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2509731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回転子の点検作業を終了した後、回転子を再び発電機に挿入する前に、仮設ハウスの撤去を行うが、その撤去に時間を要する。そのため、発電機内の固定子が吸湿し、絶縁低下を招くおそれがある。固定子の絶縁が低下した場合には、長時間に亘る乾燥が必要となり、時間の限られた工程内での対応が困難となる。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、発電機の分解点検時に防湿防塵の作業エリアを速やかに設置、撤去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
発電機にシートを設置し、撤収する方法であって、前記発電機は、当該発電機の周囲を覆うことが可能な
シートを収納するシート収納機構を備え
、前記シート収納機構は、前記シートを収納するケースと、前記シートを巻き取るドラムと、を備え、当該シート収納機構は、前記発電機の上部に、前記ドラムの巻き取り軸が長手方向に沿うように2台並設されており、前記シート収納機構から前記シートの一辺を引張って、前記発電機の設置面に固定するシート設置ステップと、前記シートの前記一辺を前記設置面から外し、前記シートを前記シート収納機構に収納するシート収納ステップと、を実行することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、発電機を分解点検する際に、備え付けのフードを発電機の周囲に設けることにより、防湿防塵の作業エリアを速やかに設置、撤去することができる。
【0009】
また、本発明の上記
シート設置撤収方法において
、前記シートは、矩形状をなし、その一辺が前記ドラムに止着される第1シート部と、不等辺四角形状をなし、その一辺が前記第1シート部の左右両辺にそれぞれ連接され、前記シートの収納時には前記第1シート部に重ねられる2枚の第2シート部と、からな
り、前記シート設置ステップでは、前記シート収納機構から前記第1シート部の他辺を引張って、前記発電機の設置面に固定するステップと、前記第1シート部の左右両辺において、前記第2シート部を折り返して、当該第2のシートの一辺同士を連結するステップと、前記連結した第2シート部の一辺同士を外し、当該第2シート部を逆に折り返して、前記第1シート部に重ねるステップと、を実行し、前記シート撤収ステップでは、前記第1シート部の他辺を前記設置面から外し、前記第1シート部及び前記第2シート部を前記シート収納機構に収納するステップを実行することとしてもよい。
【0010】
この構成によれば、2台のフード収納機構が発電機の上部に並設され、第1シート部は各フード収納機構から引き降ろされ、発電機の両側に斜めに張設され、第2シート部は第1シート部の左右両辺で折り返され、発電機の前面及び後面(開口部)に覆設される。これによれば、第1シート部の張設により、発電機の両側に回転子の点検作業エリアを速やかに確保することができる。そして、第2シート部の覆設により、発電機内部の固定子の防湿を図ることができる。
【0011】
また、本発明は、
上記シート設置撤収方法を用いた前記発電機の分解点検方法であって、前記発電機から回転子を引き抜き、前記回転子を、前記発電機と、前記シート設置ステップにおける前記シートの一辺の前記設置面への固定予定位置との間に設置した後、前記シート設置ステップを実行し、前記発電機の点検作業が終了した後、前記シート撤収ステップを実行することを特徴とする。
【0012】
この方法によれば、発電機の上部に並設された2台のフード収納機構からシートを引き出して、発電機全体を被覆するので、回転子の点検作業エリアを速やかに確保できるとともに、発電機内部の固定子の防湿を図ることができる。また、発電機全体を被覆しているシートを重ねて、フード収納機構に収納するので、回転子の点検作業エリアを速やかに撤去できるとともに、それにより、回転子をすぐに発電機に戻せるので、固定子の防湿を図ることができる。
【0013】
この場合、前記シート設置ステップで設けられた前記シートにより覆われる点検作業エリア内に乾燥機を設置することとしてもよい。
【0014】
その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発電機の分解点検時に防湿防塵の作業エリアを速やかに設置、撤去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】発電機1及びシート収納装置2を示す図である。
【
図2】シート3がシート収納装置2から引き出された状態を示す図である。
【
図3】シート3が発電機1全体を覆った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施の形態に係る発電機は、その上部に一対の巻き上げ式のフード収納機構を設置し、フード収納機構に収納されたフード構成部材をフードとして発電機の周囲に設けることを可能にしたものである。これによれば、発電機を分解点検する際に、速やかな設置及び撤去が可能な防湿防塵作業エリアを確保することにより、点検作業時の品質向上を図り、かつ、限られた時間内での対応を確実に行うことができる。なお、防湿については、作業エリア内の湿度を所定レベルに維持可能な装置を別途設置することで対応する。
【0018】
≪作業エリアの構成≫
図1は、発電機1及びシート収納装置(フード収納機構)2を示す図である。発電機1は、例えば、火力発電所に設置される発電機であり、その直径は数メートルに及ぶ。そして、固定子と、回転子とを備え、点検作業の際には、回転子が発電機1から引き抜かれる。シート収納装置2は、シート3(フード構成部材:
図2、
図3参照)の収納ケースと、シート3の一辺が止着されたドラム(図示せず)とを備え、そのドラムによりシート3を巻き取って収納したものであり、発電機1の上部に、ドラムの巻き取り軸が長手方向に沿うように2台が並設される。そのうち、シート収納装置2aは、図面に向かって右側に引き出されるシート3を格納し、シート収納装置2bは、図面に向かって左側に引き出されるシート3を格納する。
【0019】
引掛け部材33は、紐状の部材であり、シート3の他辺(上記一辺に対向する辺)の3箇所に付設される。フック4は、引掛け部材33を引っ掛けるための鉤形の留め金であり、引掛け部材33の位置に対応するように、発電機1が設置された床面又は地面(発電機1の設置面)に固定される。引掛け部材33及びフック4は、シート収納装置2aだけでなく、シート収納装置2bに関しても同様に設けられる。
【0020】
図2は、シート3がシート収納装置2から引き出された状態を示す図である。
図1の状態から、引掛け部材33が斜め下方に引張られ、フック4に掛止されることにより、発電機1の両側にシート3が張設される。シート3は、畳み易く、巻き取り易い材質及び形状の、防塵防湿用シートであり、主シート部31と、副シート部32とを備える。主シート部31は、矩形状に形成されており、一辺がシート収納装置2のドラム(図示せず)に止着され、他辺が引掛け部材33によりフック4に掛止される。これにより、2枚の主シート部31と、発電機1との間、2箇所に作業エリアを確保することができる。副シート部32は、主シート部31の左右両辺(上記一辺と隣り合う辺)を折り線として折り畳まれており、
図3に示すように、展開したときに両側の副シート部32の一辺同士が合わさるような、直角を有する不等辺四角形状に形成される。
【0021】
なお、シート3は、主シート部31の上に両側の副シート部32が折り畳まれて、全体が矩形状になった状態で、シート収納装置2に収納される。
【0022】
図3は、シート3が発電機1全体を覆った状態を示す図である。
図2の状態から、主シート部31の左右両辺を折り線として、副シート部32を折り返し、発電機1の前方及び後方において、左右両側の副シート部32の一辺を連結することにより、発電機1の開口部が閉塞される。両側の副シート部32を張り合わせるために、例えば、合わせるべき副シート部32の一辺同士に、対になる面ファスナを予め装着しておく。さらに、防湿防塵効果を高めるために、シート3と、発電機1の設置面との間のすきまをなくすようにする。これにより、密閉性の向上が図られ、発電機1内の固定子の吸湿や絶縁低下を防止することができる。
【0023】
≪回転子を点検する手順≫
次に、
図1〜
図3を参照しながら、発電機1の回転子を点検する手順を説明する。
(S1)まず、発電機1の内部から回転子(図示せず)を
図1の手前方向に引き抜き、その回転子を、発電機1とフック4との間に設置する。その際、回転子を左右いずれの側に置いてもよいし、専用の架台を予め設けておき、その上に載せるようにしてもよい。
(S2)次に、シート収納装置2からシート3を引張り降ろして、
図2に示すように、引掛け部材33をフック4に掛止する。
(S3)そして、両側の副シート部32を折り返して、
図3に示すように、発電機1の前方及び後方において張り合わせる。
【0024】
以上により、回転子の点検作業エリアが確保されるとともに、そのエリア内の防塵防湿を維持しながら、点検作業を行うことができる。特に、副シート部2により発電機1の開口部を塞ぐので、発電機1内の固定子の防湿を図ることができる。なお、湿度の管理は非常に重要であり、冬場の結露等を考慮して、点検作業エリアの中に乾燥機を置く。
【0025】
点検作業が終了すれば、以下の手順で後始末を行う。
(S4)張り合わせた副シート部32を外し、逆に折り返して、
図2に示すように、主シート部31の上に重ねる。
(S5)次に、引掛け部材33をフック4から外して、
図1に示すように、シート3をシート収納装置2に収納する。
(S6)発電機1と、フック4との間に設置していた回転子を、発電機1の内部に装着し直す。
【0026】
以上により、点検作業エリアとして用いたシート3を速やかに撤収できるので、その後の回転子の再装着もすぐに実施可能であり、発電機1内の固定子の防湿を図ることができる。
【0027】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、発電機1の分解点検時において、確実な防湿、防塵の対策による回転子及び固定子の品質向上を図ることができる。そして、その品質向上により、作業工程の時間を短縮することができる。
【0028】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1 発電機
2 シート収納装置(フード収納機構)
3 シート
31 主シート部(第1シート部)
32 副シート部(第2シート部)
33 引掛け部材
4 フック