(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図中に示した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向を定義する。
【0020】
まず、
図1を用いて、本発明の第一実施形態に係るすべり軸受50を具備するターボチャージャー1の構成について説明する。
【0021】
ターボチャージャー1は、エンジンのシリンダに圧縮空気を送り込むためのものである。ターボチャージャー1は、主としてシャフト11、コンプレッサ12、タービン13、軸受ハウジング14、コンプレッサハウジング15、タービンハウジング16、すべり軸受50、スラストカラー17、スラスト軸受18及びリテーナーシール19を具備する。
【0022】
シャフト11は、その長手方向(軸線方向)を前後方向に向けて配置される。シャフト11の一端(後端)にはコンプレッサ12が固定され、シャフト11の他端(前端)にはタービン13が固定される。このようにして、シャフト11はコンプレッサ12とタービン13とを連結する。
【0023】
軸受ハウジング14は、本発明に係るハウジングの一実施形態であり、シャフト11を内包すると共に、当該シャフト11を回動可能に支持するものである。軸受ハウジング14には、主として軸受部14a、給油油路14b、排出油路14c及び冷却通路14dが形成される。
【0024】
軸受部14aは、シャフト11を回動可能に支持する部分である。軸受部14aは円形断面を有し、軸受ハウジング14を前後方向に貫通するように形成される。
【0025】
給油油路14bは、軸受部14aに潤滑油を供給(給油)するためのものである。給油油路14bは、軸受ハウジング14の外周面と軸受部14aとを連通するように形成される。給油油路14bの一端(軸受ハウジング14の外周面側端部)は図示せぬ配管等を介してポンプに接続され、当該ポンプから給油油路14bへと潤滑油が供給可能とされる。
【0026】
排出油路14cは、軸受部14aから潤滑油を排出するためのものである。排出油路14cは、軸受ハウジング14の外周面(特に、軸受ハウジング14の下部の外周面)と軸受部14aとを連通するように形成される。
【0027】
冷却通路14dは、軸受ハウジング14を冷却するための冷却液を当該軸受ハウジング14内に流通させるためのものである。冷却通路14dは、正面視において軸受部14aを囲むような略円弧状に形成される。
【0028】
コンプレッサハウジング15は、コンプレッサ12を内包するものである。コンプレッサハウジング15は軸受ハウジング14の後部に固定され、コンプレッサ12を覆うように形成される。
【0029】
タービンハウジング16は、タービン13を内包するものである。タービンハウジング16は軸受ハウジング14の前部に固定され、タービン13を覆うように形成される。
【0030】
すべり軸受50は、シャフト11と軸受ハウジング14の間に介装され、当該シャフト11を滑らかに回動させるためのものである。すべり軸受50は軸受ハウジング14の軸受部14a内に配置されると共に、シャフト11に外嵌される。
すべり軸受50の構成については後に詳述する。
【0031】
スラストカラー17はすべり軸受50の後方においてシャフト11に外嵌され、スラスト軸受18は当該スラストカラー17に外嵌される。リテーナーシール19はスラスト軸受18の後方においてシャフト11に外嵌される。
【0032】
このように構成されたターボチャージャー1において、エンジンのシリンダ内で燃焼した後の高温の空気(排気)によってタービン13が回転される。当該タービン13の回転は、シャフト11を介してコンプレッサ12に伝達され、当該コンプレッサ12が回転することによって圧縮された空気を前記エンジンのシリンダへと供給することができる。
【0033】
また、給油油路14bを介して軸受部14aに供給された潤滑油は、当該軸受部14a(より具体的には、すべり軸受50とシャフト11との摺動面)を潤滑する。当該軸受部14aに供給された潤滑油の余剰分は、排出油路14cを介して軸受ハウジング14の外部へと排出される。このように潤滑油によって軸受部14aを潤滑することにより、当該軸受部14aにおける各摺動面の焼き付きや異常摩耗(損傷)を防止することができる。
【0034】
次に、
図2から
図5までを用いて、すべり軸受50の構成について説明する。
【0035】
図2から
図4までに示すように、すべり軸受50は、本発明に係る軸受の一実施形態であり、その長手方向を前後方向に向けた略円筒形状に形成される。すべり軸受50には、主として給油孔52、ピン孔54、コンプレッサ側摺動面56、コンプレッサ側第一油溝58、コンプレッサ側第二油溝60、タービン側摺動面62、タービン側第一油溝64及びタービン側第二油溝66が形成される。
【0036】
給油孔52は、すべり軸受50内に潤滑油を供給するためのものである。給油孔52は、すべり軸受50の前後方向中途部において、当該すべり軸受50の外周面と内周面とを貫通するように形成される。給油孔52は、当該すべり軸受50が軸受ハウジング14の軸受部14a内に配置された際、当該軸受ハウジング14の給油油路14bと対向する位置に形成される(
図1参照)。
【0037】
ピン孔54は、固定ピンが挿入されることですべり軸受50の前後方向への移動及び回動を規制するためのものである。ピン孔54は、すべり軸受50の前後方向中途部において、当該すべり軸受50の外周面と内周面とを貫通するように形成される。略円柱状の固定ピン(不図示)を軸受ハウジング14に形成された孔及び当該ピン孔54に挿入することによって、すべり軸受50の前後方向への移動及び回動を規制することができる。
【0038】
コンプレッサ側摺動面56は、本発明に係る摺動面の一実施形態であり、すべり軸受50の内周面のうち、シャフト11と摺動する部分である。コンプレッサ側摺動面56は、すべり軸受50の内周面の後端部近傍に形成される。コンプレッサ側摺動面56の直径は、すべり軸受50の前後方向中途部における内周面の直径よりも小さくなるように形成される。また、当該コンプレッサ側摺動面56の直径は、シャフト11のうち当該コンプレッサ側摺動面56が対向する部分の直径よりも若干大きくなるように形成される。
【0039】
コンプレッサ側第一油溝58は、本発明に係る第一油溝(油溝)の一実施形態であり、すべり軸受50内に供給された潤滑油を所定の位置まで案内するためのものである。コンプレッサ側第一油溝58は、コンプレッサ側摺動面56にらせん状に形成される。より詳細には、コンプレッサ側第一油溝58は、前方から後方に向かって反時計回り(左巻き)のらせん状となるように形成される。
【0040】
図3から
図5までに示すように、コンプレッサ側第一油溝58は、コンプレッサ側摺動面56の前端部から当該コンプレッサ側摺動面56の前後中途部(コンプレッサ側摺動面56の後端部(シャフト11の軸線方向における外側の端部)から所定距離だけ離れた位置)まで形成される。すなわち、当該コンプレッサ側第一油溝58の一端(前端)はコンプレッサ側摺動面56の前端において前方に向かって開口しているが、コンプレッサ側第一油溝58の他端(後端)はコンプレッサ側摺動面56の後端から後方に向かって開口していない。
【0041】
また、
図5に示すように、コンプレッサ側第一油溝58は、コンプレッサ側摺動面56を少なくとも1周するように形成される。
【0042】
コンプレッサ側第二油溝60は、本発明に係る第二油溝の一実施形態であり、コンプレッサ側第一油溝58の他端(後端)に連通され、潤滑油を案内するためのものである。コンプレッサ側第二油溝60は、コンプレッサ側摺動面56に円環状に形成される。
コンプレッサ側第二油溝60は、前後方向においてコンプレッサ側第一油溝58の後端と同一位置(すなわち、コンプレッサ側摺動面56の後端部から所定距離だけ離れた位置)に形成され、当該コンプレッサ側第一油溝58と連通される。コンプレッサ側第二油溝60の幅及び深さは、コンプレッサ側第一油溝58と同一となるように形成される。
【0043】
図2から
図4までに示すように、タービン側摺動面62は、本発明に係る摺動面の一実施形態であり、すべり軸受50の内周面のうち、シャフト11と摺動する部分である。タービン側摺動面62は、すべり軸受50の内周面の前端部近傍に形成される。タービン側摺動面62の直径は、すべり軸受50の前後方向中途部における内周面の直径よりも小さくなるように形成される。また、当該タービン側摺動面62の直径は、シャフト11のうち当該タービン側摺動面62が対向する部分の直径よりも若干大きくなるように形成される。
タービン側摺動面62の前後方向幅は、コンプレッサ側摺動面56の前後方向幅と同一となるように形成される。
【0044】
タービン側第一油溝64は、本発明に係る第一油溝(油溝)の一実施形態であり、すべり軸受50内に供給された潤滑油を所定の位置まで案内するためのものである。タービン側第一油溝64は、タービン側摺動面62にらせん状に形成される。より詳細には、タービン側第一油溝64は、後方から前方に向かって時計回り(右巻き)のらせん状となるように形成される。
【0045】
図3及び
図4に示すように、タービン側第一油溝64は、タービン側摺動面62の後端部から当該タービン側摺動面62の前後中途部(タービン側摺動面62の前端部(シャフト11の軸線方向における外側の端部)から所定距離だけ離れた位置)まで形成される。すなわち、当該タービン側第一油溝64の一端(後端)はタービン側摺動面62の後端において後方に向かって開口しているが、タービン側第一油溝64の他端(前端)はタービン側摺動面62の前端から前方に向かって開口していない。
【0046】
また、タービン側第一油溝64も、コンプレッサ側第一油溝58と同様に、タービン側摺動面62を少なくとも1周するように形成される。
さらに、タービン側第一油溝64のらせんの位相及びピッチは、コンプレッサ側第一油溝58と同一となるように形成される。すなわち、タービン側摺動面62におけるタービン側第一油溝64の始点(後端)の周方向位置は、コンプレッサ側摺動面56におけるコンプレッサ側第一油溝58の始点(前端)の周方向位置と同一であり、かつ、タービン側摺動面62におけるタービン側第一油溝64の終点(前端)の周方向位置は、コンプレッサ側摺動面56におけるコンプレッサ側第一油溝58の終点(後端)の周方向位置と同一である。
【0047】
タービン側第二油溝66は、本発明に係る第二油溝の一実施形態であり、タービン側第一油溝64の他端(前端)に連通され、潤滑油を案内するためのものである。タービン側第二油溝66は、タービン側摺動面62に円環状に形成される。
タービン側第二油溝66は、前後方向においてタービン側第一油溝64の前端と同一位置(すなわち、タービン側摺動面62の前端部から所定距離だけ離れた位置)に形成され、当該タービン側第一油溝64と連通される。タービン側第二油溝66の幅及び深さは、タービン側第一油溝64と同一となるように形成される。
【0048】
次に、
図2から
図5までを用いて、すべり軸受50に供給された潤滑油の流れの様子について説明する。
【0049】
上述の如く構成されたすべり軸受50にシャフト11が挿通された場合、当該すべり軸受50のコンプレッサ側摺動面56及びタービン側摺動面62とシャフト11の外周面とが摺動することになる。
【0050】
また、上述の如く給油油路14bを介して軸受部14aに供給された潤滑油は(
図1参照)、給油孔52を介してすべり軸受50の内部(より詳細には、すべり軸受50の内周面とシャフト11の外周面との間の空間)へと流入する。当該潤滑油は、コンプレッサ側第一油溝58及びタービン側第一油溝64内へと流入する。
【0051】
コンプレッサ側第一油溝58内へと流入した潤滑油は、当該コンプレッサ側第一油溝58内を前方から後方へと流通し、当該コンプレッサ側第一油溝58の後端からコンプレッサ側第二油溝60内へと流入する。
【0052】
コンプレッサ側第二油溝60は円環状に形成されているため、当該コンプレッサ側第二油溝60内へと流入した潤滑油は、コンプレッサ側摺動面56とシャフト11との隙間から後方へとわずかに流通するだけで、当該潤滑油の大部分はそれ以上(コンプレッサ側第二油溝60よりも)後方へと流通することはできない。このようにして、すべり軸受50の後端部からの潤滑油の漏れが抑制されている。
【0053】
同様に、タービン側第一油溝64内へと流入した潤滑油は、当該タービン側第一油溝64内を後方から前方へと流通し、当該タービン側第一油溝64の前端からタービン側第二油溝66内へと流入する。
【0054】
タービン側第二油溝66は円環状に形成されているため、当該タービン側第二油溝66内へと流入した潤滑油は、タービン側摺動面62とシャフト11との隙間から前方へとわずかに流通するだけで、当該潤滑油の大部分はそれ以上(タービン側第二油溝66よりも)前方へと流通することはできない。このようにして、すべり軸受50の前端部からの潤滑油の漏れが抑制されている。
【0055】
また、
図2に示すように、シャフト11が後方から見て時計回りに回転すると、当該シャフト11の回転につられて、潤滑油のコンプレッサ側第一油溝58及びタービン側第一油溝64内における流通が促される。
【0056】
具体的には、シャフト11が後方から見て時計回りに回転する(シャフト11の外周面は、コンプレッサ側摺動面56に対して相対的に
図5に示す矢印Bの方向に移動する)ため、コンプレッサ側第一油溝58内の潤滑油は当該コンプレッサ側第一油溝58のらせんに沿って、当該シャフト11と同じ回転方向に流動するように促される(
図5のコンプレッサ側第一油溝58内の白抜き矢印参照)。すなわち、潤滑油はコンプレッサ側第一油溝58内を前方から後方に向かって流動するように促される。このようにして、シャフト11の回転によって潤滑油をコンプレッサ側摺動面56の略全域(前後方向における前端部からコンプレッサ側第二油溝60まで)に確実に行き渡らせることができる。
【0057】
同様に、シャフト11が後方から見て時計回りに回転するため、タービン側第一油溝64内の潤滑油は当該タービン側第一油溝64のらせんに沿って、当該シャフト11と同じ回転方向に流動するように促される。すなわち、潤滑油はタービン側第一油溝64内を後方から前方に向かって流動するように促される。このようにして、シャフト11の回転によって潤滑油をタービン側摺動面62の略全域(前後方向における後端部からタービン側第二油溝66まで)に確実に行き渡らせることができる。
【0058】
以上の如く、本実施形態に係るターボチャージャー1のすべり軸受50は、コンプレッサ12とタービン13とを連結するシャフト11と、シャフト11を内包する軸受ハウジング14(ハウジング)と、の間に介装されるターボチャージャー1のすべり軸受50であって、当該すべり軸受50の内周面に形成されるシャフト11との摺動面(コンプレッサ側摺動面56及びタービン側摺動面62)と、当該すべり軸受50内に供給される潤滑油を、前記摺動面のうちシャフト11の軸線方向における外側の端部から所定距離だけ離れた位置まで案内するように当該摺動面にらせん状に形成される第一油溝(コンプレッサ側第一油溝58及びタービン側第一油溝64)と、を具備するものである。
このように構成することにより、すべり軸受50の外側の端部(前端部及び後端部)からの潤滑油の漏れを抑制することができる。これによって、潤滑油の消費量を低減させると共に、エンジンや排気管へと漏れた潤滑油からの白煙の発生を抑制することができる。また、これによって潤滑油の流量を低減させることができるため、当該潤滑油の攪拌抵抗を低減し、シャフト11の回転トルクの低減及びターボ効率の向上を図ることができる。
また、前記摺動面のうち外側の端部近傍には前記第一油溝が形成されないため、当該部分における摺動面積を大きく確保することができる。これによって、当該部分における面圧の上昇を防止し、磨耗や焼き付きの発生を抑制すると共に、摩擦トルクの低減を図ることができる。また、当該部分には前記第一油溝が形成されないため、当該部分の内周面全域に亘って潤滑油による油膜を形成することができ、摩擦トルクの低減を図ることができる。
また、前記第一油溝を本実施形態のようならせん状に形成することにより、シャフト11の回転を利用して潤滑油の前記第一油溝内における流通を促すことができる。
【0059】
また、本実施形態に係るターボチャージャー1のすべり軸受50は、前記第一油溝の外側の端部に連通されるとともに、前記摺動面に円環状に形成される第二油溝(コンプレッサ側第二油溝60及びタービン側第二油溝66)を具備するものである。
このように構成することにより、前記第一油溝の外側の端部(前記摺動面の中途部で途切れるような端部)が無くなるため、切削加工により油溝(前記第一油溝及び前記第二油溝)を形成する際の加工が容易となる。
【0060】
なお、本実施形態においては、前記第一油溝(コンプレッサ側第一油溝58及びタービン側第一油溝64)は、前記摺動面(コンプレッサ側摺動面56及びタービン側摺動面62)の、シャフト11の軸線方向(前後方向)における外側の端部から所定距離だけ離れた位置まで形成されるものとしたが、当該「所定距離」の値は任意に設定することが可能である。
例えば、当該所定距離を大きく設定すれば、前記摺動面のうち外側の端部近傍の摺動面積を大きく確保することができ、当該所定距離を小さく設定すれば、前記摺動面のうち外側の端部により近い位置まで潤滑油を案内することができる。
【0061】
また、すべり軸受50の下部に当該すべり軸受50の外周面と内周面とを貫通するような孔を形成し、すべり軸受50内の潤滑油を当該孔から排出する構成とすることも可能である。
また、本実施形態においては円柱状の固定ピン(不図示)をピン孔54に挿入することで、すべり軸受50の前後方向への移動及び回動を規制するものとしたが、当該すべり軸受50の移動及び回動を規制する方法はこれに限るものではない。すなわち、円筒状のピン、角柱状のピン又はCリングで規制したり、すべり軸受50の外周面に凹凸の溝を形成し、当該溝を軸受ハウジング14の軸受部14aと係合させることで規制したりすることも可能である。
また、本実施形態においては、すべり軸受50の回動を規制するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、すべり軸受50を回動可能となるように構成することも可能である。この場合、軸受ハウジング14の軸受部14aに供給された潤滑油によって、当該すべり軸受50と当該軸受部14aとの摺動面(すべり軸受50の外周面及び軸受部14aの内周面)を潤滑する。
【0062】
また、本実施形態に係るターボチャージャー1の軸受構造は、コンプレッサ12とタービン13とを連結するシャフト11と、シャフト11を内包する軸受ハウジング14(ハウジング)と、シャフト11と軸受ハウジング14との間に介装されるすべり軸受50(軸受)と、を具備し、シャフト11がすべり軸受50を介して軸受ハウジング14に回動可能に支持されるターボチャージャー1の軸受構造であって、シャフト11とすべり軸受50との摺動面(コンプレッサ側摺動面56及びタービン側摺動面62)のうちシャフト11の軸線方向における外側の端部から所定距離だけ離れた位置まで潤滑油を案内するように当該摺動面にらせん状に形成される油溝(コンプレッサ側第一油溝58及びタービン側第一油溝64)を具備するものである。
このように構成することにより、すべり軸受50の外側の端部(前端部及び後端部)からの潤滑油の漏れを抑制することができる。これによって、潤滑油の消費量を低減させると共に、エンジンや排気管へと漏れた潤滑油からの白煙の発生を抑制することができる。また、これによって潤滑油の流量を低減させることができるため、当該潤滑油の攪拌抵抗を低減し、シャフト11の回転トルクの低減及びターボ効率の向上を図ることができる。
【0063】
なお、本実施形態においては、前記油溝(コンプレッサ側第一油溝58及びタービン側第一油溝64)が形成される摺動面はすべり軸受50のコンプレッサ側摺動面56及びタービン側摺動面62であるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、前記油溝が形成される摺動面は、すべり軸受50の外周面や、軸受ハウジング14の軸受部14aの内周面(すなわち、軸受ハウジング14とすべり軸受50との摺動面)であっても良い。
また、本実施形態においては、シャフト11と軸受ハウジング14との間に介装される軸受とはすべり軸受50のことであり、当該すべり軸受50に前記油溝が形成されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、例えばスラスト軸受18に油溝を形成することも可能である。
【0064】
以下では、
図6を用いて、本発明の第二実施形態に係るすべり軸受250及び第三実施形態に係るすべり軸受350について説明する。
【0065】
図6(a)に示す第二実施形態に係るすべり軸受250においては、第二油溝(コンプレッサ側第二油溝60及びタービン側第二油溝66(図示省略))の幅が、第一油溝(コンプレッサ側第一油溝58及びタービン側第一油溝64(図示省略))の幅よりも広くなるように形成されている。
【0066】
また、
図6(b)に示す第三実施形態に係るすべり軸受350においては、第二油溝(コンプレッサ側第二油溝60及びタービン側第二油溝66(図示省略))の深さが、第一油溝(コンプレッサ側第一油溝58及びタービン側第一油溝64(図示省略))の深さよりも深くなるように形成されている。
【0067】
このように構成することにより、前記第二油溝を油溜まりとして利用することができる。
具体的には、前記第二油溝内に貯溜することができる潤滑油の量を増加させることができる。このような第二油溝内に潤滑油が貯溜されていれば、エンジンが始動した直後などの、外部から軸受ハウジング14(ひいてはすべり軸受250及びすべり軸受350)へと潤滑油が供給される前であっても、当該第二油溝内に貯溜された潤滑油によって当該すべり軸受(すべり軸受250及びすべり軸受350)とシャフト11との摺動面(コンプレッサ側摺動面56及びタービン側摺動面62)を潤滑することができる。
【0068】
なお、上記第二実施形態及び第三実施形態で説明したものに限らず、第二油溝の幅が第一油溝の幅よりも広く、かつ、第二油溝の深さが第一油溝の深さよりも深くなるようにすべり軸受を構成することも可能である。
【0069】
以下では、
図7を用いて、本発明の第四実施形態に係るすべり軸受450について説明する。
【0070】
第四実施形態に係るすべり軸受450においては、タービン側第一油溝64のらせんの位相が、コンプレッサ側第一油溝58のらせんの位相と異なるように形成される。すなわち、すなわち、タービン側摺動面62におけるタービン側第一油溝64の始点(後端)の周方向位置は、コンプレッサ側摺動面56におけるコンプレッサ側第一油溝58の始点(前端)の周方向位置と異なり、かつ、タービン側摺動面62におけるタービン側第一油溝64の終点(前端)の周方向位置は、コンプレッサ側摺動面56におけるコンプレッサ側第一油溝58の終点(後端)の周方向位置と異なる。
【0071】
このように、コンプレッサ側第一油溝58とタービン側第一油溝64とでそれぞれらせんの位相を任意に設定することで、潤滑油の流れを任意に調節することが可能となる。
【0072】
なお、第四実施形態で説明したものに限らず、タービン側第一油溝64のらせんのピッチが、コンプレッサ側第一油溝58のらせんのピッチと異なるように形成することも可能である。また、タービン側摺動面62の前後方向幅が、コンプレッサ側摺動面56の前後方向幅と異なるように形成することも可能である。
【0073】
以下では、
図8を用いて、本発明の第五実施形態に係るすべり軸受550及び第六実施形態に係るすべり軸受650について説明する。
【0074】
図8(a)に示す第五実施形態に係るすべり軸受550においては、コンプレッサ側第一油溝58は、前方から後方に向かって時計回り(右巻き)のらせん状(第一実施形態に係るすべり軸受50(
図3等参照)とは逆巻きのらせん状)となるように形成される。
また、第五実施形態に係るすべり軸受550においては、タービン側第一油溝64は、後方から前方に向かって反時計回り(左巻き)のらせん状(第一実施形態に係るすべり軸受50(
図3等参照)とは逆巻きのらせん状)となるように形成される。
【0075】
このように構成することにより、シャフト11が第一実施形態と同様に後方から見て時計回りに回転すると、コンプレッサ側第一油溝58内の潤滑油は当該コンプレッサ側第一油溝58内を後方から前方に向かって流動するように、タービン側第一油溝64内の潤滑油は当該タービン側第一油溝64内を前方から後方に向かって流動するように、それぞれ促される。これによって、コンプレッサ側第一油溝58及びコンプレッサ側第二油溝60並びにタービン側第一油溝64及びタービン側第二油溝66内へと供給される潤滑油の量を低減させることができる。
【0076】
また、
図8(b)に示す第六実施形態に係るすべり軸受650においては、コンプレッサ側第一油溝58は、前方から後方に向かって時計回り(右巻き)のらせん状(第一実施形態に係るすべり軸受50(
図3等参照)とは逆巻きのらせん状)となるように形成される。
また、第六実施形態に係るすべり軸受650においては、タービン側第一油溝64は、後方から前方に向かって時計回り(右巻き)のらせん状(第一実施形態に係るすべり軸受50(
図3等参照)と同じ右巻きのらせん状)となるように形成される。
【0077】
このように構成することにより、シャフト11が第一実施形態と同様に後方から見て時計回りに回転すると、コンプレッサ側第一油溝58内の潤滑油は当該コンプレッサ側第一油溝58内を後方から前方に向かって流動するように、タービン側第一油溝64内の潤滑油は当該タービン側第一油溝64内を後方から前方に向かって流動するように、それぞれ促される。これによって、コンプレッサ側第一油溝58及びコンプレッサ側第二油溝60内へと供給される潤滑油の量を低減させると共に、タービン側第一油溝64及びタービン側第二油溝66内へと供給される潤滑油の量を増加させることができる。
【0078】
このように、第一油溝(コンプレッサ側第一油溝58及びタービン側第一油溝64)のらせんの巻き方向を任意に設定することで、潤滑油の流れ(流量等)を任意に調節することが可能となる。
【0079】
なお、上記第五実施形態及び第六実施形態で説明したものに限らず、コンプレッサ側第一油溝58は前方から後方に向かって反時計回り(左巻き)のらせん状となるように、タービン側第一油溝64は後方から前方に向かって反時計回り(左巻き)のらせん状となるように、それぞれ形成することも可能である。
【0080】
以下では、
図9を用いて、本発明の第七実施形態に係るすべり軸受750・750について説明する。
【0081】
第七実施形態に係るすべり軸受750・750は、第一実施形態等で説明したすべり軸受50等を、コンプレッサ12側とタービン13側とに分割したものである。コンプレッサ12側のすべり軸受750には、コンプレッサ側摺動面56、コンプレッサ側第一油溝58及びコンプレッサ側第二油溝60が形成される。タービン13側のすべり軸受750には、タービン側摺動面62、タービン側第一油溝64及びタービン側第二油溝66が形成される。また、それぞれのすべり軸受750・750に給油孔52が形成される。
【0082】
このように、ターボチャージャー1には複数のすべり軸受750・750を設ける構成とすることも可能である。
【0083】
なお、上記第七実施形態においては、ターボチャージャー1にはすべり軸受750・750を2つ設けるものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、3つ以上のすべり軸受750・750・・・を設けることも可能である。