【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22〜24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽エネルギー技術研究開発/太陽光発電システム次世代高性能技術の開発/超ハイガスバリア太陽電池部材の研究開発」に係る共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材フィルムが、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂及び透明ポリイミド樹脂からなる群から選ばれたいずれか一種又は二種以上の樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の透明積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、本発明が下記実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<透明積層フィルム>
本発明の実施形態の一例に係る透明積層フィルム(以下、「本積層フィルム」と称する。)は、基材フィルムの表裏両側に硬化層を有する透明積層フィルムである。
【0017】
本積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に所定の硬化層を有するため、高温領域における基材フィルムの収縮応力に当該硬化層が対抗して収縮を緩和することができる。そのため、高温時の収縮に対する本積層フィルムの寸法安定性を向上させることができる。
本積層フィルムは、基材フィルムの表裏両面に硬化層を直接重ねて積層してもよいし、また、基材フィルムと当該硬化層との間に他の層を介在させてもよい。例えば、基材フィルムと当該硬化層との間にアンカーコート層などを介在させることができる。
【0018】
<硬化層>
硬化層は、硬化性樹脂及び微粒子を含有する硬化性樹脂組成物層を含む層である。
なお、本積層フィルムの「硬化層」は、基材フィルムの表裏両側に、硬化性樹脂組成物を塗布し“硬化”させて形成するのが通常であるため、“硬化層”という名称とした。但し、硬化層の形成方法をそのような方法に限定するものではない。
【0019】
(硬化性樹脂組成物)
硬化層を形成するための硬化性樹脂組成物としては、例えば、有機シロキサン、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂などの光透過性をもつ光硬化性樹脂を含む組成物や、透明ポリイミド前駆体ワニスなどを含む組成物を挙げることができる。これらの中でも、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有する組成物を用いることが好ましい。
【0020】
かかる(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリレートモノマーや、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、フルオレン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートを例示することができる。
迅速に硬化反応を進行させる観点から、アクリレートモノマー、ウレタンアクリレート及びエポキシアクリレートを用いることが好ましい。
なお、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
上記の他にも、例えば、硬化層の硬化性、吸水性及び硬度などの物性を調整するために、(メタ)アクリレートモノマーや、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマーを、上記硬化性樹脂組成物に対して任意で添加することができる。これらは、1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
また、高温時(例えば200℃以上)において、高い貯蔵弾性率(E´)を硬化層に保持させるのに好適な硬化性樹脂組成物として、分子中に剛直な骨格を有する光硬化性樹脂を含む組成物と多官能光硬化性樹脂を含む組成物を挙げることができる。
【0023】
分子中に剛直な骨格を有する上記の光硬化性樹脂としては、例えば環状脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、環状アセタール、環状ケトン、シロキサン、シルセスキオキサンなどの骨格を分子中に有し、且つガラス転移温度(Tg)が200℃よりも高い光硬化性樹脂を挙げることができる。
【0024】
他方、上記の多官能光硬化性樹脂としては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等のアクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレートをモノマー成分とする樹脂を挙げることができる。このような多官能光硬化性樹脂を用いることで、3次元網目構造を有する硬化層を形成することができ、硬化層が高い貯蔵弾性率(E´)を保持することができる。
【0025】
以上の中でも、芳香族炭化水素であるフルオレン骨格を分子中に有する硬化性樹脂や、シルセスキオキサン骨格を有する硬化性樹脂は、耐熱性が非常に高く、さらに硬化反応が迅速である面から特に好ましいと言える。
なお、光硬化性樹脂は、必要に応じて上記に挙げた樹脂の中の1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
これらの光硬化性樹脂は、硬化層中に30〜100質量%含まれることが好ましく、中でも30質量%以上或いは70質量%以下、その中でも35質量%以上或いは50質量%以下であるのがより一層好ましい。
【0027】
上記の硬化性樹脂組成物は、上記光硬化性樹脂以外の成分として、他の光硬化性のオリゴマー・モノマーや光開始剤、増感剤、架橋剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、充填材、熱可塑性樹脂等を、硬化性や透明性、吸水性等の物性に支障とならない範囲で含有することができる。
【0028】
特に、活性エネルギー線として紫外線照射を応用する場合は、光開始剤は必須である。該光開始剤としては、例えばベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、フォスフィンオキシド系及びパーオキシド系等を使用することができる。
上記の光開始剤の具体例としては、例えばベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート等を例示することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
上記光開始剤の量は、組成物の硬化性等に応じて適宜調整される。典型的な光開始剤の量としては、上記硬化性樹脂組成物100質量部に対して1〜10質量部である。
【0029】
また、上記硬化性樹脂組成物は、必要によって溶剤を添加して使用することができる。溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、さらにシクロヘキサノン、イソプロパノール等を例示することができる。
これら溶剤の使用量は、特に制限されるものではない。通常、硬化性樹脂組成物の固形分全体量100質量部に対して0〜300質量部である。
【0030】
(微粒子)
本積層フィルムの「硬化層」が含有する微粒子は、平均粒径が1nm〜200nmの範囲にあり、かつ粒子径分布の相対標準偏差(標準偏差σ/平均粒径d)が50%以下である微粒子である。
本積層フィルムの硬化層は、光の散乱が少ないナノレベルの粒径を有し、且つ該粒径が揃った微粒子が、隣接する粒子との距離が限りなく小さい値となるような最密充填構造(空間充填率74%)に近い充填状態で含有されるのが特に好ましい。上記のような微粒子を使用することにより。そのような硬化層を形成することが可能となる。
【0031】
ここで「平均粒径」とは、数平均粒子径の意味であり、微粒子の形状が球状の場合には、「測定粒子の円相当径の総和/測定粒子の数」で算出することができ、また、微粒子の形状が球状でない場合には、「短径と長径の総和/測定粒子の数」で算出することができる。
また、2種類以上の微粒子を含有する場合には、それら混合粒子の平均粒径が前記の「平均粒径」となる。
また、「粒子径分布の相対標準偏差」とは、微粒子の粒径の標準偏差(σ)を平均粒径(d)で割った値である。
【0032】
硬化層に含有する微粒子としては、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ソーダガラス、ダイヤモンド等の透明性を有する無機微粒子を挙げることができる。これらの中でも、硬化層の貯蔵弾性率を向上させることができる点、比重や価格等の点から、酸化ケイ素微粒子が好ましい。
【0033】
酸化ケイ素微粒子は、表面修飾されたものが多数開発されており、光硬化性樹脂への分散性が高く、均一な硬化膜を形成することができる。酸化ケイ素微粒子の具体例としては、乾燥された粉末状の酸化ケイ素微粒子、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)等を挙げることができる。これらの中でも、分散性の点で、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を用いるのが好ましい。
分散性を向上させる目的であれば、透明性、耐溶剤性、耐液晶性、耐熱性等の特性を極端に損なうことのない範囲で、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等によって表面処理された酸化ケイ素微粒子や、表面に対して易分散処理をされた酸化ケイ素微粒子であってもよい。
【0034】
上記微粒子は、フィルムの透明性を確保する観点から、平均粒子径が1nm〜200nmの範囲にある微粒子を用いるのが好ましい。中でも平均粒子径が1nm以上或いは100nm以下、その中でも4nm以上或いは50nm以下の範囲にある微粒子を用いるのが特に好ましい。
平均粒子径が、かかる範囲にある微粒子を使用することで、ミー散乱現象によって入射する光に対して散乱現象を起こすことがなく、フィルムの透明性を確保することができる。
【0035】
さらに上記微粒子としては、粒子径分布の相対標準偏差が50%以下であるのが好ましく、中でも0%以上或いは45%以下、その中でも40%以下の範囲にある微粒子であるのがより一層好ましい。
硬化層において微粒子を高い密度で充填させるには、例えば50体積%以上となるように充填させるには、隣接する粒子の粒子間距離を小さくし、硬化層中の微粒子を最密充填構造に近い充填状態とすることが効果的である。そのためには、粒子径の相対標準偏差が50%以下であるような粒径の揃った微粒子を用いることが好ましい。このような微粒子を用いることにより、高温時の基材フィルムの配向に由来し発生する収縮による寸法変化を低減することができる。
【0036】
硬化層に入射する屈折光の量を低減させるためには、微粒子の屈折率が1.6未満であることが好ましい。
中でも、透明性向上の観点から、硬化性樹脂組成物中の樹脂、特に硬化性樹脂組成物の主成分をなす樹脂と微粒子(フィラー)との屈折率差が0.2未満である微粒子を用いるのが好ましい。
【0037】
硬化層全体における上記微粒子の含有率としては、50体積%以上であることが好ましく、中でも55体積%以上或いは90体積%以下であることがより好ましく、さらにその中でも60体積%以上或いは80体積%以下、その中でも特に65体積%以上或いは75体積%以下であることがさらに好ましい。
上記微粒子を50体積%以上硬化層に含ませると、当該微粒子は最密充填により近い状態で充填されることになり、72体積%以上となると理論的に最密充填となる。
このような範囲で微粒子を含有することにより、加熱時に基材フィルムの配向などに由来し発生する収縮による寸法変化を硬化層の弾性率によって低減させることが可能となる。
【0038】
(硬化層の厚み)
硬化層の厚みは、表裏両側の硬化層の厚みの合計を基材フィルムの厚みよりも大きくするのが好ましい。表裏両側の硬化層の厚みの合計を基材フィルムの厚みよりも大きくすれば、本積層フィルムの高温時の貯蔵弾性率を高く保持することができ、高い寸法安定性を本積層フィルムに持たせることができる。
かかる観点から、前記硬化層の厚み合計は、基材フィルムの厚みの100%より大きいことが好ましく、特に100%以上或いは400%以下であることがより一層好ましく、中でも特に150%以上或いは300%以下であることがさらに好ましい。
【0039】
<基材フィルム>
本積層フィルムに用いる基材フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、透明ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィンホモポリマー、環状オレフィンコポリマー等の環状オレフィン系樹脂などからなるフィルムを挙げることができる。
【0040】
これらの中でも、透明であり且つ融点が220℃以上であるか、又はガラス転移温度(Tg)が200℃以上であるという観点から、ポリエーテルイミド樹脂(Tg234℃、融点275℃)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(Tg223℃、融点280℃)、ポリエーテルサルフォン樹脂(Tg225℃)、ポリエチレンナフタレート樹脂(Tg155℃、融点270℃)、透明ポリイミド樹脂(Tg250℃以上)などの樹脂からなるフィルムを該基材フィルムとして使用するのが好ましい。
これらは一種類または二種類以上の樹脂を組み合わせて含有するフィルムを使用することができる。
【0041】
なお、上記の透明ポリイミド樹脂として、ポリイミド樹脂の主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン結合を導入したものや、ポリイミド中の水素をフッ素に置換したフッ素化ポリイミドの他、ポリイミド樹脂の構造中に含まれる環状不飽和有機化合物を水添した脂環式ポリイミドなどを挙げることができる。例えば特開昭61−141738号公報、特開2000−292635号公報等に記載されたものを使用することもできる。
【0042】
(ヒートセット処理)
本積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に所定の硬化層を設けることにより、基材フィルムに対してヒートセット処理を行わなくても、透明性及び高温(例えば200℃以上)における熱寸法安定性に優れた透明積層フィルムを得ることができる。しかしながら、収縮を緩和するためのヒートセット処理がなされたフィルムを使用することも可能である。
基材フィルム上に硬化性樹脂組成物を塗布する前に、予め基材フィルムにヒートセット処理を施すことにより、基材フィルム及び本積層フィルムの寸法安定性をさらに向上させることができる。
中でも、収縮を緩和するためのヒートセット処理がなされた2軸延伸ポリエステルフィルムは、基材フィルムとして好ましい一例である。
【0043】
基材フィルムのヒートセット処理は、該基材フィルムのガラス転移温度をTgとした際、Tg〜Tg+100℃の温度で0.1〜180分間、該基材フィルムを加熱処理するのが好ましい。
【0044】
ヒートセット処理の具体的手法は、必要な温度、時間を維持できる方法であれば特に限定されない。例えば、必要な温度に設定したオーブンや恒温室で保管する方法、熱風を吹き付ける方法、赤外線ヒーターで加熱する方法、ランプで光を照射する方法、熱ロールや熱板と接触させて直接的に熱を付与する方法、マイクロ波を照射する方法などが使用できる。また、取扱が容易な大きさにフィルムを切断してから加熱処理しても、フィルムロールのままで加熱処理してもよい。さらに、必要な時間と温度を得ることができる限りにおいては、コーター、スリッター等のフィルム製造装置の一部分に加熱装置を組み込み、製造過程で加熱を行うこともできる。
【0045】
(基材フィルムの厚み)
基材フィルムの厚みは、1μm〜200μmであるのが好ましく、5μm以上或いは100μm以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることで、光線透過率の向上、ハンドリング性能が高いなどの利点を得ることができる。
【0046】
<本積層フィルムの物性>
次に、本積層フィルムが備えることができる各種物性について説明する。
【0047】
(全光線透過率)
本積層フィルムは、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。本積層フィルムがかかる範囲の全光線透過率を有することで、照明やディスプレイ等では光の減衰を抑えることができ、より明るくなる。また、太陽電池部材としてはより多くの光を取り込めるなどの利点を得ることができる。
後述する実施例に示さるように、基材フィルムの両側に所定の硬化層を形成することで、該基材フィルムの光線透過率よりも、本積層フィルムの光線透過率を高めることができる。その際、硬化層における樹脂の種類、微粒子の種類と粒径、微粒子の含有量などを調整することで、該光線透過率を調整することができる。
【0048】
(加熱収縮率)
本積層フィルムは、JIS−C23307.4.6.1(収縮寸法変化率:A法)に準じて測定される220℃で10分間加熱した際の縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の収縮率がいずれも1.0%未満であることが好ましい。本積層フィルムがかかる範囲の収縮率を有することで、回路や素子を形成する際の寸法ズレを少なくし、また無機バリア層を積層させる際にもより高いバリア性を得られる利点を有する。
また、同条件で測定される200℃での本積層フィルムの縦方向及び横方向の収縮率がいずれも、1.5%未満であることが好ましく、特に1.0%未満であることが好ましい。かかる範囲の収縮率を有することで、上記利点をより向上することが可能となる。
本積層フィルムの加熱収縮率は、粒子分布の標準偏差が小さい微粒子を塗布層中に含有することで調整することができる。これにより、微粒子が塗布層中で均一に分散しつつ粒子間距離が小さくなるので、加熱収縮率を1.0%未満とすることができる。またこの際に微粒子を高い濃度で分散させる、より具体的には粒子充填量を50体積%以上とすることにより、更に加熱収縮率を調整(低減)することができる。
【0049】
<本積層フィルムの製造方法>
本積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に、微粒子と共に硬化性樹脂組成物などを塗布して硬化させて硬化層を形成することにより製造することができる。
【0050】
微粒子と共に硬化性樹脂組成物などを塗工する方法としては、例えば、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ディップコートなどによって、微粒子と共に硬化性樹脂組成物を基材フィルムに塗工する方法を挙げることができる。また、ガラスやポリエステルフィルム上で硬化層を成型した後、成型した硬化層を基材フィルムに転写させる方法も有効である。
【0051】
以上のように微粒子と共に硬化性樹脂組成物を基材フィルムに塗工した後、該硬化性樹脂組成物を硬化(架橋)させる方法としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化等の方法を単独又は組み合わせて用いることができる。中でも、短時間かつ比較的容易に硬化達成可能なことから、紫外線硬化による方法を用いることが好ましい。
紫外線により硬化させる場合、光源としてキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置などが調整される。
また高圧水銀灯を使用する場合、80〜160W/cmの光量を有したランプ1灯に対して搬送速度5〜60m/分で硬化させるのが好ましい。
一方、電子線により硬化させる場合、100〜500eVのエネルギーを有する電子線加速装置の使用が好ましい。
【0052】
<用途>
本積層フィルムは、上述のように、透明性を維持しつつ、加熱処理による寸法変化(熱寸法安定性)が少ないという利点を有するため、例えば液晶ディスプレイ、有機発光ディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、タッチパネル、カラーフィルター、バックライトなどのディスプレイ材料の基板や、太陽電池の基板のほか、光電素子基板など、各種透明基板の基材として好適に使用することができる。
また、本積層フィルムは、前記のような利点を備えることから、高温での寸法安定性が要求される用途、特に包装用フィルム、電子部品用フィルムのほか、ガスバリア加工を行うことで、有機ELなどの半導体デバイスや、液晶表示素子、太陽電池用途にも好適に使用することができる。
【0053】
また、本積層フィルムは、ガスバリアフィルムの基材として使用することができ、ガスバリア加工を施してバリアフィルム(「本バリアフィルム」と称する)として使用することができる。
従来、ポリエステルフィルムをガスバアリア加工用フィルムとして用いた場合、ガスバリア層にひびが入ったり、シワが生じたりして、ガスバリア性を含む機能を十分に発現することができないなどの問題があった。これに対し、本バリアフィルムはこのような問題が無い点で優れている。
【0054】
本バリアフィルムは、有機ELなどの有機半導体デバイスや、液晶表示素子、太陽電池などガスバリア性が求められる用途に好適に用いられる。
【0055】
なお、ガスバリア加工は、金属酸化物などの無機物質や有機物などのガスバリア性の高い材料からなるガスバリア層を、本積層フィルムの少なくとも片面に形成する加工方法である。
この際、ガスバリア性の高い材料としては、例えば珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、或いはこれらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、酸化炭化窒化物、ダイヤモンドライクカーボン又はこれらの混合物等が挙げられるが、太陽電池等に使用した場合に電流がリークする等の恐れがない点から、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム及び酸化窒化アルミニウム等の無機酸化物、窒化珪素及び窒化アルミニウム等の窒化物、ダイヤモンドライクカーボン並びにこれらの混合物が好ましい。特に、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウム及びこれらの混合物は、高いガスバリア性が安定に維持できる点で好ましい。
【0056】
上記材料を用いて本積層フィルムにガスバリア層を形成する手法としては、蒸着法、コーティング法などの方法をいずれも採用可能である。ガスバリア性の高い均一な薄膜を得ることができるという点で蒸着法が好ましい。
この蒸着法には、物理気相蒸着(PVD)、或いは化学気相蒸着(CVD)等の方法が含まれる。
物理気相蒸着法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられる。
化学気相蒸着法としては、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。
【0057】
ガスバリア層の厚さは、安定なガスバリア性の発現と透明性の点から、10〜1000nmであることが好ましく、40〜800nmがより好ましく、50〜600nmがさらに好ましい。
また、ガスバリア層は単層であっても多層であってもよい。ガスバリア層が多層の場合、各層は同じ材料からなっていても、異なる材料からなっていてもよい。
【0058】
本バリアフィルムの40℃90%における水蒸気透過率は、好ましくは0.1[g/(m
2・日)]未満、より好ましくは0.06[g/(m
2・日)]以下、さらに好ましくは、0.03[g/(m
2・日)]以下である。
水蒸気透過率の測定方法は、JISZ0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ、具体的には実施例に記載の方法で測定される。
【0059】
<用語の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明する。但し、本発明はこれらの実施例等により何ら制限を受けるものではない。
【0061】
[実施例1]
(硬化性樹脂組成物の調製)
剛直な骨格であるトリシクロデカン構造を有する、光硬化性2官能アクリレートモノマー・オリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DCP」、屈折率1.50)14.4質量部、透明微粒子A(株式会社アドマテックス製、商品名「YA010C−SM1」、コロイダルシリカ、屈折率1.458)51.1質量部、光硬化剤(BASF製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)0.44質量部、及び、溶媒(荒川化学工業株式会社製、メチルエチルケトン)34.1質量部を均一に混合し、硬化層形成用の硬化性樹脂組成物を得た(以下、「塗料A」と称する。)。
硬化層におけるコロイダルシリカの体積割合は63.4体積%であった。
また、上記透明微粒子Aの平均粒子径は10nmであり、その粒子径分布の相対標準偏差は40.3%であった。
【0062】
(透明積層フィルムの作製)
厚さ12μmの二軸延伸フィルム(帝人株式会社製、商品名「テオネックスQ51」、ポリエチレンナフタレートフィルム、以下「フィルムA」と称する)の片面に、上記で調製した塗料Aを、硬化後の厚みが5μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、100℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。
前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に塗料Aを塗布して硬化を行うことにより、両面に硬化層が形成された透明積層フィルムを得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルムの特性を評価した。
【0063】
[実施例2]
(透明積層フィルムの作製)
厚さ12μmの二軸延伸フィルム(三菱樹脂製、商品名「H−100」、ポリエチレンテレフタレートフィルム)の片面に、実施例1と同様に調製した塗料Aを、硬化後の厚みが5μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、100℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。
前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に塗料Aを塗布、硬化を行うことにより、両面に硬化層が形成された透明積層フィルムを得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた透明積層フィルムの特性を評価した。
【0064】
[比較例1]
塗布層を形成していない厚さ12μmの二軸延伸フィルム(帝人株式会社製、商品名「テオネックスQ51」、ポリエチレンナフタレートフィルム)を用いて、実施例1と同様に特性を評価した。
【0065】
[比較例2]
塗布層を形成していない厚さ12μmの二軸延伸フィルム(三菱樹脂製、商品名「H−100」、ポリエチレンテレフタレートフィルム)を用いて、実施例1と同様に特性を評価した。
【0066】
[比較例3]
(硬化性樹脂組成物の調製)
光硬化性2官能アクリレートモノマー・オリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DCP」、屈折率1.50)14.4質量部、透明微粒子A(株式会社アドマテックス製、商品名「YA010C−SM1」、コロイダルシリカ、屈折率1.458)25.5質量部、透明微粒子B(株式会社アドマテックス製、商品名「SO−C2」、コロイダルシリカ、屈折率1.458)25.5質量部、光硬化剤(BASF製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)0.44質量部、及び、溶媒(荒川化学工業株式会社製、メチルエチルケトン)34.1質量部を均一に混合し、硬化層形成用の硬化性樹脂組成物(以下、「塗料B」と称する。)を得た。
硬化層におけるコロイダルシリカの体積割合は63.4体積%であった。
また、上記微粒子混合物の平均粒子径は255.2nmであり、その相対標準偏差は72.9%であった。
【0067】
(積層フィルムの作製)
厚さ12μmの二軸延伸フィルム(帝人株式会社製、商品名「テオネックスQ51」、ポリエチレンナフタレートフィルム)の両面に、実施例1と同様の方法を用いて、塗料Bを塗布、硬化を行うことにより、両面に硬化層が形成された透明積層フィルムを得た。そして、得られた積層フィルムの特性を評価した。
【0068】
[比較例4]
(硬化性樹脂組成物の調製)
光硬化性2官能アクリレートモノマー・オリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DCP」、屈折率1.50)11.6質量部、透明微粒子C(トピー工業株式会社製、商品名「PDM−5B」、鱗片状マイカ、屈折率1.580)52.8、光硬化剤(BASF製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)0.36質量部、及び、溶媒(荒川化学工業株式会社製、メチルエチルケトン)34.1質量部を均一に混合し、硬化層形成用の硬化性樹脂組成物(以下、「塗料C」と称する。)を得た。
硬化層における透明微粒子の体積割合は63.4体積%であった。
また、上記微粒子Cの形状は鱗片状であり、微粒子Cの短径7nm、長径8000nmであって、微粒子Cの平均粒子径(算術平均値)は403nmであった。
【0069】
(積層フィルムの作製)
厚さ12μmの二軸延伸フィルム帝人株式会社製、商品名「テオネックスQ51」、ポリエチレンナフタレートフィルム)の両面に、実施例1と同様の方法を用いて塗料Cを塗布したが、塗膜の乾燥と同時に塗膜が白化、割れて剥離してしまった。
これは粒子同士の立体的な相互作用が大きすぎるため、塗膜が脆化したこと及び平坦面が光を反射しため白化してしまったと考えられる。
【0070】
[比較例5]
(硬化性樹脂組成物の調製)
光硬化性2官能アクリレートモノマー・オリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DCP」、屈折率1.50)14.4質量部、透明微粒子A(株式会社アドマテックス製、商品名「YA010C−SM1」、コロイダルシリカ、屈折率1.458)25.5質量部、透明微粒子D(株式会社アドマテックス製、商品名「YA050C−SM1」、コロイダルシリカ、屈折率1.458)25.5質量部、光硬化剤(BASF製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)0.44質量部、及び、溶媒(荒川化学工業株式会社製、メチルエチルケトン)34.1質量部を均一に混合し、硬化層形成用の硬化性樹脂組成物(以下、「塗料D」と称する。)を得た。
硬化層におけるコロイダルシリカの体積割合は63.4体積%であった。
また、上記微粒子混合物の平均粒子径は512nmであり、その相対標準偏差は70.9%であった。
【0071】
(積層フィルム)
厚さ12μmの二軸延伸フィルム帝人株式会社製、商品名「テオネックスQ51」、ポリエチレンナフタレートフィルム)の両面に、実施例1と同様の方法を用いて、塗料Dを塗布、硬化を行うことにより、両面に硬化層が形成された透明積層フィルムを得た。そして、得られた積層フィルムの特性を評価した。
【0072】
<特性評価及び測定条件>
上記実施例及び比較例において作製したフィルムについて、以下に記載の方法に準拠し、全光線透過率及び収縮率を測定した。なお、比較例4については、フィルムの作製が困難であったため、全光線透過率のみ測定した。
また上記実施例及び比較例で使用した微粒子についても、以下に記載の方法に準拠し、平均粒径及び相対標準偏差を測定した。
それぞれの測定結果を表1に記載した。
【0073】
(収縮率の測定方法)
フィルムの収縮率は、JISC23307.4.6.1(収縮寸法変化率:A法)に準じて、恒温槽の温度を120℃から200℃又は220℃にそれぞれ変更し、標線を記した短冊の加熱前後の寸法変化率を測定し求めた。なお、収縮率は、フィルムの長手方向である縦方向(MD方向)と、これに直交する横方向(TD方向)の両方について測定した。
【0074】
具体的には、以下の方法によりフィルムの収縮率を測定した。
フィルム流れ方向を長辺とし、幅10mm、長さ100mmの短冊形試験片を3個用意し、各々の試験片の中央部を中心として、間隔100mmの標線を記した。標線間の間隔を0.01mmの精度でノギスを用いて読み取った。この試験片を、所定温度の恒温槽に10分間無荷重の状態で懸垂し、取り出した後、室温で、15分以上放冷し、先に読んだ標線間の間隔を測定した。加熱前後の標線間の間隔の変化率を求め、加熱前後の寸法変化率とした。
【0075】
(全光線透過率の測定)
フィルムの全光線透過率は、以下の装置を用い、JIS K7105に準拠する方法にて測定した。
反射・透過率計:株式会社村上色彩技術研究所「HR−100」
【0076】
(平均粒子径)
微粒子の平均粒子径は、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)S−4500を用いて測定した。具体的には、試料の傾斜角を30度、加速電圧5kV、ソーキングディスタンス15mm、直接倍率を30,000倍に設定し、デジタル画像を取得後、得られた画像からランダムに200個の粒子の粒径を実測し、その平均を求めることで微粒子の平均粒子径とした。
【0077】
(相対標準偏差)
微粒子の相対標準偏差は、上記平均粒子径の計測にて計測した平均粒径及び標準偏差から下記式にて算出した。
相対標準偏差=標準偏差σ/平均粒径d
【0078】
【表1】
【0079】
(考察)
基材フィルムの両面に硬化層を積層した構成とし、該硬化層中に、粒子径の相対標準偏差が50%以下の微粒子を含有することで、粒子間の距離が短くなり、基材の収縮応力に対してより強い硬化層となり、高温時(200℃)の高い寸法安定性を有する透明積層フィルムを得ることができることが分かった。
また、上記微粒子の粒径は、上記効果の維持と、光線透過率を維持する観点とを加味すると、平均粒径が1nm〜200nmの範囲であるのが好ましいと考えることができる。