特許第6017909号(P6017909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017909
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】半導体ウェーハのメッキ用サポート治具
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/06 20060101AFI20161020BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C25D17/06 C
   H01L21/92 604B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-213507(P2012-213507)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-65953(P2014-65953A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小田嶋 智
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−307253(JP,A)
【文献】 特開2002−339079(JP,A)
【文献】 特開2006−016649(JP,A)
【文献】 特開2003−301299(JP,A)
【文献】 特開2014−065952(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0192782(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に回路パターンが形成された厚さ100μm以下の半導体ウェーハをメッキ液に浸漬する場合に、半導体ウェーハの裏面と周縁部とを保護する半導体ウェーハのメッキ用サポート治具であって、
半導体ウェーハを収容する樹脂製の支持リングと、この支持リングの表面周縁部に支持されて支持リングの中空部を被覆し、半導体ウェーハをその裏面側から保持する弾性保持層と、この弾性保持層の表面周縁部に接着され、弾性保持層に保持された半導体ウェーハの表面周縁部に粘着される粘着リングとを含んでなることを特徴とする半導体ウェーハのメッキ用サポート治具。
【請求項2】
粘着リングは、半導体ウェーハの表面周縁部から弾性保持層の表面周縁部にかけて対向する支持基材と、この支持基材の対向面に粘着され、半導体ウェーハの表面周縁部から弾性保持層の表面周縁部にかけて粘着する粘着材とを含み、支持基材の厚さを20〜200μmとし、粘着材をシリコーン系の粘着材としてその厚さを20〜100μmとした請求項1記載の半導体ウェーハのメッキ用サポート治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に回路パターンが形成された薄い半導体ウェーハをメッキ液に浸漬してメッキ処理する場合に使用される半導体ウェーハのメッキ用サポート治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表面に回路パターンが形成された薄い半導体ウェーハにメッキ処理を施す場合には、図示しないメッキ槽のメッキ液中に半導体ウェーハを浸漬し、この浸漬した半導体ウェーハ表面の回路パターンにメッキ液に速く衝突させ、半導体ウェーハの回路パターンにメッキ処理を迅速に施すようにしている(特許文献1、2、3、4参照)。
【0003】
半導体ウェーハは、薄い半導体パッケージに適合させる観点から、例えば厚さ100μm以下に薄く形成され、脆く撓みやすく、ハンドリングが困難であるという特徴を有する。この半導体ウェーハの表面は、周縁部を含む全ての面に回路パターンが多層構造に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010‐109298号公報
【特許文献2】特開2008‐196055号公報
【特許文献3】特開2003‐226997号公報
【特許文献4】特開平05‐308075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
厚さ100μm以下の従来の薄い半導体ウェーハは、以上のようにメッキ処理されているが、強度が低いので、メッキ液が速く衝突すると、衝撃により、割れて損傷するおそれが少なくない。このような問題を解消するため、薄い半導体ウェーハの裏面に保護テープを粘着し、半導体ウェーハの強度を向上させるという方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、半導体ウェーハの裏面に保護テープを単に粘着するだけでは、撓んで変形してしまうので、ハンドリングが困難である。また、半導体ウェーハの周縁部以外の損傷を防止することはできても、半導体ウェーハの脆い周縁部を保護して欠けを防ぐことは難しく、そうす ると、表面周縁部の回路パターンが損傷することとなる。さらに、半導体ウェーハの表面に回路パターンが多層構造に形成される際、レジスト液等で半導体ウェーハの周縁部が少なからず汚れるが、この汚れた周縁部がメッキ液に触れると、メッキ処理に悪影響を及ぼすこととなる。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、メッキ液でメッキ処理される薄い半導体ウェーハのハンドリングを容易にし、半導体ウェーハの脆い周縁部を保護して欠けを防ぐことができ、しかも、半導体ウェーハの周縁部の汚れでメッキ処理に悪影響を及ぼすことの少ない半導体ウェーハのメッキ用サポート治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、表面に回路パターンが形成された厚さ100μm以下の半導体ウェーハをメッキ液に浸漬する場合に、半導体ウェーハの裏面と周縁部とを保護するものであって、
半導体ウェーハを収容する樹脂製の支持リングと、この支持リングの表面周縁部に支持されて支持リングの中空部を被覆し、半導体ウェーハをその裏面側から保持する弾性保持層と、この弾性保持層の表面周縁部に接着され、弾性保持層に保持された半導体ウェーハの表面周縁部に粘着される粘着リングとを含んでなることを特徴としている。
【0009】
なお、粘着リングは、半導体ウェーハの表面周縁部から弾性保持層の表面周縁部にかけて対向する支持基材と、この支持基材の対向面に粘着され、半導体ウェーハの表面周縁部から弾性保持層の表面周縁部にかけて粘着する粘着材とを含み、支持基材の厚さを20〜200μmとし、粘着材をシリコーン系の粘着材としてその厚さを20〜100μmとすることができる。
【0010】
ここで、特許請求の範囲における半導体ウェーハには、φ200、300、450mm等のタイプがあるが、特に限定されるものではない。また、周縁部が厚く、それ以外の部分が薄く形成されるタイプもあるが、特に限定されるものではない。弾性保持層は、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。この弾性保持層は、弱粘着性を有していても良いし、そうでなくても良い。
【0011】
本発明によれば、半導体ウェーハの裏面を弾性保持層が保護して撓みを抑制するので、例え半導体ウェーハの回路パターンにメッキ液が速く衝突しても、半導体ウェーハが割れるおそれを排除することができる。また、強度に優れるメッキ用サポート治具の支持リングを操作すれば、半導体ウェーハが撓んで変形することが少ない。また、半導体ウェーハの周縁部を粘着リングが弾性保持層との間に挟んで保護するので、半導体ウェーハの周縁部の欠けを防ぐことができる。さらに、例え半導体ウェーハの周縁部の表面や裏面が汚れていても、汚れた周縁部を粘着リングが被覆し、周縁部に対するメッキ液の浸入を規制する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、メッキ液でメッキ処理される薄い半導体ウェーハのハンドリングを容易にし、半導体ウェーハの脆い周縁部を保護して欠けを防ぐことができるという効果がある。また、半導体ウェーハの周縁部の汚れでメッキ処理に悪影響を及ぼすことを低減することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、粘着リングの支持基材の厚さを20〜200μmとし、粘着材の厚さを20〜100μmとするので、強度を確保しながらメッキ用サポート治具を繰り返し使用することができる。また、粘着材を肉厚化するので、追従性を向上させることが可能になる。また、粘着材を肉厚化し、半導体ウェーハの表面周縁部に位置する回路パターンの凹凸を吸収することにより、半導体ウェーハと粘着リングとの間に隙間が生じ、メッキ液が浸入するのを防ぐことが可能になる。さらに、粘着材をシリコーン系とすれば、優れた撥水性や弱粘着性の確保が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る半導体ウェーハのメッキ用サポート治具の実施形態を模式的に示す全体斜視図である。
図2】本発明に係る半導体ウェーハのメッキ用サポート治具の実施形態を模式的に示す要部断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における半導体ウェーハのメッキ用サポート治具は、図1図2に示すように、表面に回路パターン2が形成された薄い半導体ウェーハ1を収容する樹脂製の支持リング10と、この支持リング10の中空部11を被覆して半導体ウェーハ1を搭載する弾性保持層13と、この弾性保持層13の表面周縁部14に接着され、弾性保持層13に搭載保持された半導体ウェーハ1の表面周縁部3に粘着される厚い粘着リング15とを備え、薄い半導体ウェーハ1がメッキ液でメッキ処理される場合に、半導体ウェーハ1の裏面と周縁部とを共に保護するよう機能する。
【0016】
半導体ウェーハ1は、例えばバックグラインドされたφ200mmのシリコンウェーハからなり、表面に多層の回路パターン2が公知(例えば、レジスト液の塗布、現像、及びエッチング等)の方法により形成される。この半導体ウェーハ1は、薄い半導体パッケージに適合させる観点から、100μm以下の厚さ、例えば75μm以下や50μm程度の薄さに形成され、脆く撓みやすく、ハンドリングが困難であるという特徴を有する。半導体ウェーハ1の表面は、歪等を防止する観点から、周縁部を含む全ての面に回路パターン2が多層構造に形成される。
【0017】
支持リング10は、所定の成形材料により半導体ウェーハ1よりも拡径の平面リング形に成形され、半導体ウェーハ1に隙間を介して遊嵌される。この支持リング10は、金属製の場合には、メッキ液との相性が悪いので、所定の樹脂を含む成形材料により成形される。支持リング10の所定の成形材料としては、メッキ処理に支障を来さなければ、特に限定されるものではないが、例えば耐衝撃性や強度等に優れるポリカーボネートや厚いポリエチレンテレフタレート等があげられる。
【0018】
支持リング10は、剛性を確保し、半導体ウェーハ1のハンドリングを容易にする観点から、0.5mm以上、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1mm以上の肉厚に射出成形される。
【0019】
弾性保持層13は、例えば耐メッキ液性に優れ、不純物等を溶出させない厚さ100μm以下、好ましくは厚さ40〜60μm程度、より好ましくは厚さ50μm程度の薄いオレフィン系やシリコーン系のフィルム等からなる。この弾性保持層13は、支持リング10の平坦な表面周縁部12に図示しない両面粘着テープ等で粘着されるとともに、緊張して張架され、支持リング10の周縁部に沿って平面円形にカットされた後、半導体ウェーハ1をその裏面側から着脱自在に密接保持する。
【0020】
粘着リング15は、半導体ウェーハ1の表面周縁部3から弾性保持層13の表面周縁部14にかけて対向する支持基材16と、この支持基材16の対向面に粘着される粘着材17とを備えた二層構造の平面リング形に形成され、半導体ウェーハ1の表面周縁部3から弾性保持層13の表面周縁部14にかけて着脱自在に粘着される。この粘着リング15は、係る粘着により、弾性保持層13との間に半導体ウェーハ1を固定し、半導体ウェーハ1の周縁部をシールするよう機能する。したがって、メッキ液が露出していない半導体ウェーハ1の周縁部や裏面側に浸入するのを防止することができる。
【0021】
支持基材16は、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレートやポリイミド等により、平面リング形に形成される。この支持基材16は、剛性を確保し、繰り返し使用する場合には、20〜200μm、好ましくは50〜150μm、より好ましくは90〜120μm程度の厚さに形成される。また、粘着材17は、例えば撥水性等に優れ、弱粘着性を有するシリコーン系タイプ等により、平面リング形に形成される。この粘着材17は、剛性を付与して繰り返し使用したり、追従性を向上させたい場合には、20〜100μm程度の厚さに形成される。
【0022】
このような粘着リング15の使用により、半導体ウェーハ1のメッキ処理が必要な回路パターン2部分のみを露出させた状態でサポート治具に半導体ウェーハ1を保持することができ、しかも、サポート治具の薄肉化や軽量化を図ることができるので、ハンドリングが実に容易になる。
【0023】
上記構成において、表面に回路パターン2が形成された薄い半導体ウェーハ1にメッキ処理を施す場合には、先ず、半導体ウェーハ1の露出した裏面に弾性保持層13を重ねて積層し、この弾性保持層13の裏面に、半導体ウェーハ1を包囲する支持リング10を重ねて粘着固定し、半導体ウェーハ1を反転させてその表面を露出させる。この際、弾性保持層13の裏面に支持リング10を粘着固定した後、半導体ウェーハ1の裏面に弾性保持層13を重ねて積層しても良い。
【0024】
半導体ウェーハ1の表面を露出させたら、半導体ウェーハ1の表面周縁部3から弾性保持層13の表面周縁部14にかけて粘着リング15を粘着することにより、半導体ウェーハ1のメッキ用サポート治具に半導体ウェーハ1を保持させ、その後、メッキ槽のメッキ液中にメッキ用サポート治具を浸漬し、浸漬した半導体ウェーハ1表面の回路パターン2にメッキ液に速く衝突させれば、半導体ウェーハ1の回路パターン2にメッキ処理を迅速に施すことができる。
【0025】
この際、半導体ウェーハ1の周縁部を粘着リング15が保持するので、半導体ウェーハ1の上下左右方向へのがたつきを有効に防止することができる。メッキ処理された半導体ウェーハ1は、洗浄装置により洗浄され、メッキ用サポート治具から真空のチャックテーブルに移し替えられてダイシングテープに粘着された後、ダイシング工程で多数の半導体チップにダイシングされる。
【0026】
上記構成によれば、半導体ウェーハ1の裏面を弾性保持層13が保護して撓みを抑制するので、例え半導体ウェーハ1の回路パターン2にメッキ液が速く衝突しても、半導体ウェーハ1が割れて損傷するおそれを有効に排除することができる。また、強度に優れるメッキ用サポート治具の支持リング10を取り扱えば、半導体ウェーハ1が撓んで変形することがないので、作業時におけるハンドリングの容易化を図ることができる。
【0027】
また、半導体ウェーハ1の脆い周縁部を粘着リング15が弾性保持層13との間に挟んで保護するので、半導体ウェーハ1の周縁部の欠けを防ぐことができ、表面周縁部3の回路パターン2の損傷防止が期待できる。また、半導体ウェーハ1の汚れた表面周縁部3や裏面周縁部を粘着リング15が水密に被覆し、撥水性に優れるシリコーン系の粘着材17が表面周縁部3等に対するメッキ液の浸入を規制するので、半導体ウェーハ1の汚れた表面周縁部3等がメッキ液に触れることがなく、メッキ処理に何ら悪影響を及ぼすことがない。
【0028】
また、半導体ウェーハ1の周縁部や裏面部分にメッキ液が付着すると、メッキ後の半導体ウェーハ1を収納する保管容器や半導体製造装置の汚染を招くという問題が生じるが、本実施形態によれば、メッキ液の浸入を防止することができるので、係る問題の発生を排除することが可能になる。また、弾性保持層13に自己粘着性が特に要求されないので、弾性保持層13のフィルムの材質が何ら限定されることがなく、様々なフィルムを利用することが可能になる。
【0029】
また、粘着材17が20〜100μm程度の厚さを有するので、例え支持基材16が厚くても、追従性の低下を招くことがない。さらに、厚い粘着材17の使用により、半導体ウェーハ1の表面周縁部3に位置する回路パターン2の凹凸をも有効に吸収することが可能になる。
【0030】
なお、上記実施形態では支持リング10の表面周縁部12に弾性保持層13を粘着テープ等で粘着したが、弾性保持層13の材質を変更して自己粘着性を付与し、支持リング10の表面周縁部12に弾性保持層13を直接粘着しても良い。また、支持リング10の外周縁に弾性保持層13の周縁部を揃えて粘着しても良いし、揃えずに粘着しても良い。
【0031】
また、メッキ用サポート治具に半導体ウェーハ1を保持させる場合、通常の環境下で手作業により保持させても良いが、真空環境下で自動的に保持させても良い。さらに、本発明に係る半導体ウェーハのメッキ用サポート治具は、周縁部を残してバックグラインドされた半導体ウェーハ1にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る半導体ウェーハのメッキ用サポート治具は、半導体ウェーハの製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0033】
1 半導体ウェーハ
2 回路パターン
3 表面周縁部
10 支持リング
11 中空部
12 表面周縁部
13 弾性保持層
14 表面周縁部
15 粘着リング
16 支持基材
17 粘着材
図1
図2