(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<個人透析用の人工透析用水製造装置>
図1により説明する。
原水(水道水または地下水)と軟水器1は、原水ライン11で接続されている。このとき、家庭での使用の場合、軟水器1の原水入口と蛇口を原水ライン11で接続して使用することができる。
原水は、原水ライン11に設置された原水ポンプ21を駆動させて軟水器1に送られる。
なお、水道の蛇口に接続した場合には、水圧を利用することで原水ポンプ21を省略することもできる。
また、必要に応じて軟水器1の前にプレフィルターを設置することができる。
【0010】
軟水器1は、原水中の硬度成分(カルシウム、マグネシウムイオン等)の濃度を低減させるためのものである。
軟水器1は、市販の軟水器を使用することができる。
軟水器1で硬度成分の濃度が低減された水は、ライン12から吸着装置2に送られる。
【0011】
吸着装置2は、ケース内に活性炭、ゼオライト等の吸着剤が充填されたものである。
吸着装置2は、残留塩素等を吸着除去するための装置である。
吸着装置2で残留塩素等が除去された水は、ライン13から電解水製造装置3に送られる。
【0012】
電解水製造装置3は、軟水装置1と吸着装置2で処理した前処理水を電気分解して、電解陰極水と電解陽極水を得るためのものである。
電解水製造装置自体は公知のものであるが(例えば、特許文献1、2参照)、本発明で使用する電解水製造装置3は、一人または二人用の個人透析用の人工透析用水製造装置として好適な構造となっている。
電解水製造装置3は、電解水製造装置と、軟水器1および吸着装置2およびRO装置が一体にされた装置にすることもできる。
【0013】
本発明で使用することができる電解水製造装置3を
図2により説明する。
電解水製造装置3は、電気分解槽31内にライン13から送られた前処理水が満たされており、その中に浸漬された状態で、陰極32が4枚と陽極33が3枚(合計7枚)が交互に、かつ両端部側が陰極32になるように配置されている。
また、一定回数もしくは一定時間使用ごとに電極板の極性を反転して、前記の一定回数もしくは一定時間の運転中に電解陰極水側の電極に付着したスケールを電解陽極水側に排出させることもできる。
隣接する陰極32と陽極33の間隔は均等間隔であり、かつ3〜5mmの範囲、好ましくは3〜4.5mmの範囲である。
陰極32と陽極33の間には隔膜34が、陰極32と陽極33の間を等分に区切るように配置されており、陰極32が配置された陰極槽41〜43、62と陽極33が配置された陽極槽51、52、61に分離されている。
なお、陰極と陽極の間と陽極と陰極の間にて電解が生じるため、
図2では、7枚の電極で挟まれた合計6のゾーン(電解槽)で電解が生じることになる。6つの電解槽はそれぞれ隔膜34で2つに仕切られているので、6つの電解槽は6つの陰極セルと6つの陽極セルからなっている。
【0014】
電極板(陰極と陽極)の大きさは、電解水製造装置3の大きさに合わせて調整する。本発明の人工透析用水製造装置は個人透析用であり、25〜80L/hr量(一人用または二人用として好適な量)の透析用水が調製されれば流量的には十分であるため、電極板も医療施設で一般的に使用されている電解水製造装置と比べると小型になる。
図2では陰極32と陽極33が合計で7枚であるが、8枚以上の枚数にすることもできる。前記の通り、本発明の電解装置で調製される必要水量が小さいため、水素を発生させる陰極槽における電解条件(電流密度、槽内の滞留時間)も、電極板面積、陰極槽内流量に応じて、適宜、設定される。
【0015】
電解水製造装置3の運転により陰極槽41〜43、62では、溶存水素濃度の高い電解陰極水が得られ、陽極槽51、52、61では、相対的に溶存水素濃度の低い電解陽極水が得られる。
電解陰極水量と電解陽極水量の生成量は、電解陰極水量の方が多くなるようにすることが望ましく、例えば電解陰極水量:電解陽極水量=4〜6:1にすることができる。
電解陰極水は、ポンプ22を駆動させてライン14からRO装置4に送られ、電解陽極水はライン15から排出される。
なお、電解水製造装置3とポンプ22の間に電解陰極水を貯水するための電解陰極水タンクを設置して、電解陰極水タンクに貯水した電解陰極水をRO装置4に送るようにすることもできる。
【0016】
RO装置4は公知のものを用いることができ、例えば、ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社より販売されている、装置型式VCR20シリーズ、を用いることができる。
【0017】
RO装置4で得られた透過水は、ライン16から透過水タンク(RO水タンク)5に送られて貯水される。
個人透析による人工透析は、多人数透析と比べると使用頻度が低く、RO装置の停止期間が長くなり、外部からの菌汚染を生じる可能性があるため、必要に応じてRO装置4の出口にUF膜モジュール(UF装置)を設けて、UF膜処透過水をRO水タンク(人工透析液用水タンク)5に貯水することもできる。
RO装置4では、溶存水素濃度の高い電解陰極水を処理しているため、RO水中の溶存水素濃度も高くなっており、一方、残存するイオン成分がさらに除去されており、電気伝導度は1〜20μS程度にまで低下されている。
RO水タンク5内のRO水は、ライン17から採水されて人工透析液用水として使用される。
RO装置3で得られた濃縮水は、ライン18から電解水製造装置3に送られて再度電気分解処理してもよいし、ライン19から排出されるようにしてもよい。
【0018】
図1に示す製造装置の各ラインには、必要に応じて電磁弁等からなる開閉弁、流量計、温度計等を設置することができる。
図1に示す製造装置は、適宜清浄水で通水洗浄することができるほか、RO装置4、タンク5および各ラインは、過酢酸水溶液等の殺菌剤で殺菌・洗浄することもできる。また、電解水製造装置3を除く前記装置類・各ラインは加熱殺菌することができる。さらに、タンク5には、UV殺菌灯を設けてもよい。
【0019】
図3により本発明の製造装置の好ましい実施形態を説明する。
本発明の製造装置は、個人透析用の人工透析用水製造装置であることから、狭いスペースに設置することが多くなる。
図3は、本発明の製造装置を個人用としてより使い易いようにまとめた好ましい実施形態を示している。
個人透析用の人工透析用水製造装置10は、金属製乃至は合成樹脂製の外側ケース11内に、原水源(例えば、水道管)と接続された軟水装置1、吸着装置2、電解水製造装置3、電解陰極水タンク12、RO装置4、UF装置13が配置され、原水ポンプ21、ROポンプ22が配置されている。
RO水タンク(人工透析液用水タンク)5は、ケース11の外側にケース11と一体にかつ着脱自在に設置されている。
破線で示した吸着装置2とROポンプ22は、反対側に配置されていることを示している。
図3で示す人工透析用水製造装置10は、個人透析用としての十分な製造能力を維持したままで、縦幅300〜500mm、横幅900〜1100mmm、高さが950〜1200mm程度の大きさにすることができる。
【0020】
本発明の製造装置は医療施設の個別透析や、家庭での在宅透析に使用できるものであるが、地域によっては原水となる水道水や地下水の電気伝導度が異なる場合がある。
本発明の製造装置で使用する電解水製造装置3は、電極枚数が7枚以上と多く、電極間の距離が小さいことから、電気伝導度が低い原水でも使用することができ、例えば、電気伝導度が40〜100μS/cmと100μS/cm以下の低電導度の原水でも、十分な濃度の溶存水素を含む電解陰極水を製造することができる。
また、電解電圧を70Vまで高めること、電極枚数を増やすことで陰極槽数を増やし、陰極槽当たりの供給流量を相対的に少なくすることにより陰極槽内滞留時間を長くして、より電解効率を高め、低電導度の原水でも溶存水素量を増やすことができる。
本発明の電解装置においては、電解電圧を高めることにより、電流密度は、0.5A/dm2〜2.0A/dm2、好ましくは0.6A/dm2〜1.5A/dm2の範囲を設定でき、また、陰極槽内滞留時間を0.4〜2.3秒、好ましくは1〜2秒の範囲で設定することにより、効率よく高濃度の溶存水素水を製造することができる。
【0021】
本発明の製造装置は、原水として家庭の水道水や地下水を使用した場合、さらに上記した電気伝導度の低い原水を使用した場合においても、溶存水素濃度が100〜1600ppbの人工透析用水を25〜80L/hr量(一人用または二人用として好適な量)製造することができる。
また、本発明の電解効率の高い電解装置を適用し、軟水器、活性炭、逆浸透膜装置と一体化することにより、本発明の透析用水製造装置全体が個人透析用に適応した小型装置として、製作することが可能となる。
【0022】
本発明の製造装置により得られた溶存水素濃度の高い人工透析用水と必要成分を混合して得られた人工透析液は、抗酸化作用が高く、活性酸素種に対して抗酸化作用(還元作用)を発揮することで、人工透析患者に好ましい影響を与えることが期待される。
【0023】
<透析液製造装置>
本発明の透析液製造装置は、上記した個人透析用の人工透析用水製造装置と透析液を調製する手段を有するものである。
透析液を調製する手段は、人工透析用水と周知の透析原剤(例えば、特許第3436912号公報に記載されているもの)を混合する手段である。
【実施例】
【0024】
図1に示す製造装置で、電解水製造装置3として
図2に示すものを備えた製造装置を使用して、室温(20〜25℃)で人工透析用水を製造した。
使用した装置の詳細は次のとおり。
【0025】
軟水器:オートトロール社のATS-18
活性炭(吸着装置):繊維状活性炭
RO装置:ダイセン・メンブレン・システムズ(株)のVCR-42S(4インチスパイラルモジュール・2本;食塩除去率が99%のもの)
溶存水素濃度の測定:東亜ディーケーケー(株)のポータブル溶存水素計DH-35A
【0026】
<電解水製造装置>
定格電圧:AC100V,50/60Hz,70V(max)
電解電流:5A(max)
電気分解槽:7枚電極(プラチナメッキ電極)
電極槽数:6槽
電極板(+及び−):110mm×69mm
隣接する電極板の間隔:3.5mm
入水圧力範囲:0.05〜0.2MPa
電解陰極水量:1.0〜6.5L/分
電解陽極水量:0.2〜1.3L/分
生成量比率:電解陰極水量:電解陽極水量=5:1
【0027】
実施例1
原水として、pH7.56、電気伝導度179.4μSの水道水を3.8L/分で電解装置に供給して、最終的に80L/hrのRO水を製造した。但し、電解水製造装置3では、電解電流5Aで運転した。
電解水製造装置3で得られた電解陰極水は、溶存水素濃度367ppb、pH10.04であり、RO水は、溶存水素濃度298ppb、pH10.39であった。
【0028】
実施例2
原水として、pH7.56、電気伝導度179.4μSの水道水を3.8L/分で電解装置に供給して、最終的に80L/hrのRO水を製造した。但し、電解水製造装置3では、電解電流3.5Aで運転した。
電解水製造装置3で得られた電解陰極水は、溶存水素濃度270ppb、pH9.76であり、RO水は、溶存水素濃度213ppb、pH10.15であった。
【0029】
実施例3
原水として、pH7.56、電気伝導度101.4μSの水道水を3.8L/分で電解装置に供給して、最終的に80L/hrのRO水を製造した。但し、電解水製造装置3では、電解電流5Aで運転した。
電解水製造装置3で得られた電解陰極水は、溶存水素濃度354ppbであった。
【0030】
実施例4
原水として、pH7.56、電気伝導度101.4μSの水道水を3.8L/分で電解装置に供給して、最終的に80L/hrのRO水を製造した。但し、電解水製造装置3では、電解電流3.5Aで運転した。
電解水製造装置3で得られた電解陰極水は、溶存水素濃度274ppbであった。
【0031】
実施例5
原水として、pH7.25、電気伝導度109.6μSの水道水を4.5L/分で電解装置に供給して、最終的に80L/hrのRO水を製造した。但し、電解水製造装置3では、電解電流5Aで運転した。
電解水製造装置3で得られた電解陰極水は、溶存水素濃度349ppb、pH9.58であり、RO水は、溶存水素濃度328ppb、pH10.06であった。
【0032】
実施例6
原水として、pH7.13、電気伝導度75.05μSの水道水を4.6L/分で電解装置に供給して、最終的に80L/hrのRO水を製造した。但し、電解水製造装置3では、電解電流5Aで運転した。
電解水製造装置3で得られた電解陰極水は、溶存水素濃度336ppb、pH9.65であり、RO水は、溶存水素濃度313ppb、pH9.92であった。
【0033】
実施例1〜6で示す通り、本発明の電解水製造装置を用いることにより、低い電気伝導度から通常の電気伝導度の広範囲の電導度の原水に対して、溶存水素濃度の高い電解陰極水を得ることができた。本発明の電解効率の良い電解水製造装置を使用することにより、透析用水製造装置全体が小型化でき、軟水器、活性炭、逆浸透膜装置も含めて、装置外形は、巾100cm以内、高さ120cm以内、奥行き50cm以内の寸法の個人透析用水製造装置を製作することができた。
【0034】
(参考例)
実施例1〜6の電解水製造装置における印加電流密度と陰極槽における滞留時間を求めた。
1.電流密度の計算
1)電極面積は、電極の横幅69mm(0.69dm)と高さ110mm(1.1dm)から、
0.69dm×1.1dm=0.759dm
2となる。
2)電解電流
・実施例1、3、5、6の場合は電解電流5Aである。
図2における7枚の電極によって仕切られた電解槽は6槽であり、各電解槽あたりの印可電流は、全電解電流/電解槽数で求められる。
よって、5A/6槽=0.83A/槽となる。
・実施例2、4の場合は電解電流3.5Aである。
よって、3.5A/6槽=0.58A/槽となる。
3)電流密度は、電解槽当たり電流値/電極面積で求められる。
・実施例1、3、5、6の場合は、0.83/0.759=1.1A/dm
2となる。
・実施例2、4の場合は、0.58/0.759=0.7A/dm
2となる。
【0035】
2.滞留時間の算出
1)陰極槽の容積
図2の通り、電解装置は陰極32と陽極33が隔膜34で等分に区切られて陰極槽と陽極槽を形成しており、それぞれの電極間距離は3.5mmでそれが等分に区切られた陰極槽、陽極槽を形成しているので、陰極槽の全容積と陽極槽の全容積は等しくなる。
電極槽は陰極槽と陽極槽を合わせて6槽あるので、陰極槽全体としては全電極槽容積の1/2(3槽分)となる。
従って、陰極槽全体容積は、6.9cm(電極高さ)×11.0cm(電極幅)×0.35cm(陰極槽厚み)×3(槽)=70.695cm
3と計算される。
2)各実施例の陰極槽供給流量は次のように計算される。
実施例1〜4:全体供給水量3.8L/分=52.778ml/秒
52.778ml/秒×5/6=43.98ml/秒
実施例5:全体供給水量4.5L/分=75ml/秒
75ml/秒×5/6=62.5ml/秒
実施例6:全体供給水量4.6L/分=76.667ml/秒
76.667ml/秒×5/6=63.89ml/秒
3)前記の陰極槽供給流量と陰極槽容積から陰極槽内滞留時間は下記の通りに計算される。
<滞留時間>
実施例1〜4:79.695cm
3/43.98ml/sec=1.81秒
実施例5:79.695cm
3/62.5ml/sec=1.28秒
実施例6:79.695cm
3/63.89ml/sec=1.25秒