(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1(a)〜(c)は本発明の実施形態における印刷方法の第1の工程〜第3の工程を示す断面図である。また、同時に積層セラミック電子部品の製造方法の第1の工程〜第3の工程も示す。
【0016】
まず、
図1(a)に示す例のように、第1の工程において光硬化剤を含有するインクの
塗膜1を形成する。
図1(a)においては、塗工ヘッド11からインクを吐出させながら塗工ヘッド11を転写基体3上で移動させる(矢印方向)ことでインクを塗布して塗膜1を形成している。塗工ヘッド11を固定して転写基体3を移動させてもよい。
【0017】
インクは、例えば、積層セラミック電子部品の電極や多層セラミック配線基板の配線導体用であれば、導体材料(金属)にバインダ、光硬化剤、溶剤、分散剤等を加えて混練することで作製される。必要に応じて、セラミック粉末やガラス粉末を加えてもよい。導体材料としては、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極用であれば、Ni、Cu、Ag、Pd、Au等の金属、またはこれらの金属の一種以上を含む、例えばAg−Pd合金などの合金などが挙げられる。このときのインクの塗膜1の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.3μm〜2μm程度である。
【0018】
次に、
図1(b)に示す例のように、第2の工程において塗膜1の表面に光Lを照射して、所定パターンに対応する形状で硬化していないパターン領域1aと、硬化した非パターン領域1bを塗膜1に形成する。
図1(b)においては、所定パターン形状の遮光マスク22を備えた透光性基体21を通して光Lを塗膜1の表面の一部に照射している。塗膜1の透光性基体21を透過して光Lが照射された部分は硬化して、塗膜1の遮光マスク22によって光Lが遮られて光Lが照射されなかった部分は硬化しない。硬化していない部分は遮光マスク22の形状、すなわち所定パターン形状であり、第3の工程において被印刷物2に転写されるパターン領域1aであり、硬化した部分は第3の工程において被印刷物2には転写されない非パターン領域1bである。
【0019】
インクの塗膜1の表面は粘着性を有するものであるが、第2の工程において硬化した部分、非パターン領域1bは硬化したことでパターン領域1aに対して表面の粘着性が低下する。つまり、第2の工程は、塗膜1の非パターン領域1bの表面の粘着性を低下させる工程である。表面の粘着性が低下すればよいので、非パターン領域1bは厚み方向の全てにおいて硬化していなくてもよい。
【0020】
光Lの照射によって塗膜1は硬化するものであり、例えばインクに含まれる光硬化剤が紫外線硬化型のものである場合には光Lは紫外光である。光Lの照射時間や強度は、光硬化剤の種類に応じて適宜設定すればよく、塗膜の表面からの硬化深さについても光Lの照射時間や強度により調整することができる。
【0021】
遮光マスク22は、例えば石英、ガラスおよび樹脂等の透光性基体21の表面に印刷やフォトリソ加工によって形成されている。具体的には、例えばガラス板の上に蒸着法によってクロム膜を形成して、その上にレジスト膜(感光性樹脂)を形成し、レジスト膜をフォトリソ法によってパターン形状に加工した後に、クロム膜のレジスト膜で覆われていない部分をエッチングによって除去し、最後にクロム膜上のレジスト膜を除去することによって形成することができる。あるいは、銀塩乳剤を用いたエマルジョンマスクで形成してもよい。フォトリソ加工によって形成すると高精細な遮光マスク20とすることができるので好ましい。遮光マスク22の形状は、印刷したいパターンの形状(所定形状)であり、例えば、積層セラミック電子部品の内部電極や多層セラミック配線基板の配線導体の形状であって、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極の場合には矩形状である。また、遮光マスク22は透光性基体21の表面に複数個並べられて形成されることで、多数個取りで電子部品を効率よく製造することができる。
【0022】
塗膜1の表面に光Lを照射して、所定パターンに対応する形状で硬化していないパターン領域1aと、硬化した非パターン領域1bを塗膜1に形成する方法としては、遮光マスク22を用いない方法でもよい。例えば、光源を走査しながら光Lの照射のON/OFFをする光走査方式でもよい。あるいは、遮光マスク22を用いて、光源は光Lの照射のO
N/OFFをしない光走査方式でもよい。
【0023】
次に、
図1(c)に示す例のように、第3の工程において塗膜1のパターン領域1aを被印刷物2に転写する。硬化していないパターン領域1aと、硬化した非パターン領域1bとが形成された塗膜1に被印刷物2を押し当てた後に離間させると、表面が硬化しておらず粘着性を有するパターン領域1aだけが被印刷物2に転写される。転写されたパターン領域1aは所定形状のインク塗膜1aであり、内部電極や配線導体となる部分である。
図1(c)に示す例では、塗膜1のパターン領域1aを被印刷物2に直接転写しているが、一端他の転写基体に転写した後に被印刷物2に転写してもよい。
【0024】
なお、パターン領域1aが被印刷物2に転写され易いように、転写其体3の表面にシリコーン等の離型材の膜を形成してもよい。
【0025】
被印刷物2は、積層セラミック電子部品を製造する場合であれば、セラミック絶縁層やセラミック誘電体層2aとなるセラミックグリーンシートである。絶縁体または誘電体であるセラミック粉末にバインダ、溶剤、分散剤等を加えて混練したセラミックスラリーを、例えば紙やPET(Polyethylene terephthalate)等の樹脂製フィルムからなる基体上に膜状に塗布して乾燥させることで作製される。必要に応じて、焼結助剤、ガラス粉末を加えてもよい。セラミック粉末としては、例えば、積層セラミックコンデンサの誘電体層2a用であれば、BaTiO
3、CaTiO
3、SrTiO
3またはCaZrO
3等の誘電体セラミックスを主成分とするものであり、副成分として、例えばMn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物等が添加されたものであってもよい。セラミックグリーンシート2の厚さは、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサの誘電体層2a用であれば、例えば1μm〜5μm程度である。
【0026】
以上、説明したように、本発明の一つの態様による印刷方法によれば、グラビア印刷のようなグラビア版を用いることなく、グラビア印刷と同様の転写による印刷速度の速い印刷が可能となる。グラビア版を用いないことから、グラビア版の傷による印刷品質の低下がなく、高品質な印刷が可能となる。
【0027】
また、グラビア印刷のグラビア版は複数個の凹点でパターンが形成されるので、例えば50μm以下の幅のような細い配線等は印刷することが困難であるのに対して、本発明の印刷方法によれば、光硬化剤を含有するインクを用いて光の照射の有無によってパターンを形成する、いわゆるフォトリソ法によってパターン領域を形成しているので、50μm以下のパターンでも印刷可能となる。
【0028】
次に、このような印刷方法を用いた、積層セラミック電子部品の製造方法について説明する。
図2(a)〜
図2(c)は本発明の実施形態における積層セラミック電子部品の製造方法を工程毎に示す模式図であり、
図1に続く工程を示す。また、
図3(a)および
図3(b)はさらに
図2に続く工程を示す。
図2および
図3に示す例は、積層セラミック電子部品が積層セラミックコンデンサ5cである場合の製造方法を示す。
【0029】
第1の工程から第3の工程によってセラミックグリーンシート2上に所定パターン形状のインク塗膜1aを形成した後に、第4の工程において
図2(a)に示す例のようにパターン領域1aが転写されて所定パターン形状のインク塗膜1aが形成された複数のセラミックグリーンシート2を積層して生積層体5を作製する。セラミックグリーンシート2と所定パターン形状のインク塗膜1aとが交互に重なるようにし、
図2(a)に示す例では、その上下にさらにセラミックグリーンシート2を積層している。積層された複数のセラミックグリーンシート2は、プレスして一体化することで、
図2(a)に示す例のような、多数個の生積層体5を含む大型の生積層体5aとなる。
【0030】
次に、
図2(b)に示す例のように、この大型の生積層体5aを切断して、
図2(c)に示す例のような積層セラミックコンデンサ5cの積層体5bとなる生積層体5を得る。大型の生積層体5aの切断は、例えばダイシングブレード4を用いて行えばよい。
【0031】
次に、第5の工程において生積層体5を焼成する。上述したようなセラミック粉末の場合であれば、例えば800〜1050℃で焼成することによって積層セラミックコンデンサ5の積層体5bを得る。この工程によって、セラミックグリーンシート2は誘電体層2aとなり、所定パターン形状のインク塗膜1aは内部電極層1cとなる。積層体5bはバレル研磨等の研磨手段によって、
図3(a)に示す例のように角部が丸められる。これにより積層体5bの角部が欠け難いものとなる。
【0032】
次に、例えば積層体5bの両端部に外部電極6用の導電ペーストを塗布し、焼き付けることにより外部電極6を形成する。外部電極6は、積層体5bのそれぞれの端面に露出した内部電極層1cを互いに接続するように、所定の端面にそれぞれ設けられる。外部電極6は、例えば厚みが5μm〜50μmで形成されている。
【0033】
外部電極6用の導電ペーストは、外部電極4を構成する金属材料の粉末にバインダ、溶剤、分散剤等を加えて混練することで作製される。外部電極4を構成する金属材料としては、例えば、銅、銀、ニッケル、パラジウムまたはこれらの合金等の金属材料である。また、外部電極6用の導体ペーストは、積層体5bとの接合力を向上させるためにガラスを含んでいてもよい。
【0034】
外部電極6の表面に、必要に応じてニッケル(Ni)層,銅(Cu)層、金(Au)層,スズ(Sn)層あるいははんだ層等の金属層をめっき法により形成して、積層セラミックコンデンサ5cを得る。
【0035】
以上の積層セラミック電子部品の製造方法は、積層セラミック電子部品が積層セラミックコンデンサ5cである場合の例で説明したが、積層セラミック電子部品が多層セラミック配線基板である場合には、インクの導体材料やセラミックグリーンシート2のセラミック粉末をセラミック配線基板用の材料に変えればよい。また、絶縁層を貫通して上下に位置する配線導体を接続する貫通導体を形成する場合には、セラミックグリーンシート2上にインクの塗膜1aを形成する前に、セラミックグリーンシート2に金型やレーザで貫通孔を形成して貫通孔に貫通導体用のインクを充填しておけばよい。
【0036】
第4の工程において大型の生積層体5aを作製した後、上記したようにダイシングブレード4によって大型の生積層体5aを切断してもよいが、大型の生積層体5aの切断したい箇所に溝を設けておき、第5の工程で大型の生積層体5aを焼成して得た大型の多数個取り基板をこの溝に沿って分割することで配線基板を得てもよい。溝の形成は、例えばカッター刃を大型の生積層体5aの表面に押し当てて形成すればよい。
【0037】
配線基板の表面に露出する配線導体には、配線導体の腐食防止のためや配線基板と他の配線基板あるいは電子部品との接続に用いる接合材の接合性を向上させるために、例えば、ニッケル、金等の金属膜をめっき法で形成する。
【0038】
このような積層セラミック電子部品の製造方法によれば、グリーンシート2への導電性インクの印刷による内部電極の形成が高品質なものとなるので、容量ばらつきや絶縁信頼性の高い積層セラミック電子部品を製造することが可能となる。
【0039】
これまで説明した印刷方法は、以下に説明するような印刷装置を用いることで行なうこ
とができる。すなわち、第1の工程を行なうための、光硬化剤を含有するインクの塗膜1を形成する第1の手段10と、第2の工程を行なうための、塗膜1のパターン領域1a以外の表面に光を照射する第2の手段20と、第3の工程を行なうための、硬化していないパターン領域1aを被印刷物2に転写する第3の手段30とを備える印刷装置である。
【0040】
より具体的には、
図4〜
図9に示す例のような印刷装置である。
図4に示す第1の実施形態の印刷装置では、第1の手段10では第1ロール12の上に塗工ヘッド11から光硬化剤を含有するインクを塗布して塗膜1を形成している。第1ロール12は、上述した印刷方法における転写基体3に相当するものであり、回転する第1のロール12の外表面が固定された塗工ヘッド11に対して移動することで、連続的な塗膜1が形成される。
【0041】
第2の手段20は、
図4に示す第1の実施形態の印刷装置においては、遮光マスク22が形成された透光性基体21と、塗膜1との間に遮光マスク22を挟んで配置された光源23とを備えている。遮光マスク22が形成された透光性基体21を通して光源23からの光Lを光硬化剤を含有する塗膜1の表面に照射することで、塗膜1の遮光マスク22によって光Lが照射されなかった部分は硬化せずに所定パターン形状のパターン領域1aとなり、透光性基体21を透過した光Lが照射された部分は硬化して非パターン領域1bとなる。なお、
図4〜
図9においては、塗膜1の光Lが照射されなかった部分(パターン領域1a)にはハッチングを設けて示しており、光Lが照射されて硬化した部分(非パターン領域1b)にはハッチングを設けていない。
【0042】
図4に示す第1の実施形態の印刷装置では、遮光マスク22と光源23との間にシャッター24が設けられており、
図4に白抜き矢印で示したようにシャッターを移動させる(シャッター24を開閉する)ことで光源23からの光Lを塗膜1に照射する時間等を設定できる。また、塗膜1の表面に光Lを照射する第2の手段20がシャッター方式であると、塗膜1の広い領域に対して光Lを照射することができる。
図4に示す第1の実施形態の印刷装置では、透光性基体21は塗膜1の表面(第1ロール12の表面)に沿って湾曲している。また、塗膜1の移動に合わせて透光性基体21および遮光マスク22が移動するようにしている。このようにすることで、遮光マスク22を通して光Lを照射して所定形状のパターン領域1aを形成する際に、パターン領域1aの形状を精度よく形成することができる。
【0043】
第3の手段30は、
図4に示す第1の実施形態の印刷装置においては、被印刷物2を第1ロール12上に形成された塗膜1に押しつけるための第2ロール31を備えている。被印刷物2はシート状であり、第2ロール31によって移動するので、連続的な印刷が可能となる。被印刷物2がセラミックグリーンシートである場合は、例えばセラミックグリーンシートをPETフィルム等の支持体上に形成して、支持体ごと第2ロール31および第1ロール12の回転によって移動させるとともに、セラミックグリーンシート2を塗膜1に押しつけるとよい。
【0044】
第2ロール31によって被印刷物2を第1ロール12上に形成された塗膜1に押しつけて離間させると、硬化して粘着性の低下した非パターン領域1bは被印刷物2に転写されず、硬化せずに表面が粘着性を有する状態のパターン領域1aのみが被印刷物2に転写され、被印刷物2の表面にインクが所定パターン形状に印刷されることとなる。
【0045】
第1ロール12および第2ロール31は、ステンレス等の鉄系やアルミニウム等の金属からなり、第1ロール12の外表面は、硬化した塗膜1の剥離性をよくするために鏡面仕上げや硬質クロムめっき処理したものをもちいるとよく、また第2ロール31は、被印刷物2との摩擦力によって被印刷物2を移動させやすくするために、外表面にシリコーン等のゴム質の皮膜を設けるとよい。また、第1ロール12および第2ロール31の大きさは
、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極用のインクを印刷する場合であれば、直径150mm、長さ500mm程度とすると、量産性の高いものとなる。
【0046】
図4に示す第1の実施形態の印刷装置においては、例えば、第1ロール12の表面に転写されずの残った塗膜1の非パターン領域1b、すなわち塗膜残渣を掻き取り、掻き取った塗膜残渣を回収し、第1ロール12の表面をふき取る等するクリーニング装置13を設けて、連続印刷運転時の印刷品質を高めるようにしてある。グラビア印刷ではグラビア印刷版は凹点を有しており、この凹点内部の塗膜残渣を掻き取ることは困難であるが、本発明の実施形態における印刷装置は凹点を有さないので、第1ロール12のクリーニングが容易であり、その結果として印刷品質が高いものとなる。
【0047】
図5は、本発明の第2の実施形態における印刷装置を模式的に示す斜視図である。
図4に示す第1の実施形態と異なる点は、第2の手段20が光源23を走査して光Lを照射する光走査方式である点である。光源23として、例えばレーザのようにスポット径の小さい、照射範囲の小さいものを用いて、例えば塗膜1の移動方向に垂直な方向、言い換えれば塗膜1の幅方向(
図5の白抜き矢印の方向)に走査すればよい。
【0048】
図5に示す第2の実施形態では、遮光マスクを用いていない。光源23を走査しながら、光Lの照射のON/OFFをすることによって、光Lを照射したい領域(非パターン領域1b)のみに光Lを照射することが可能であるからである。
図5においては、塗膜1の幅方向の全域にわたってパターン領域1aおよび非パターン領域1bが形成され、塗膜1の長さ方向(塗膜1の移動方向)に交互にパターン領域1aと非パターン領域1bとが形成されている。通常は、塗膜1の幅方向に光源23を走査する際に光Lの照射のON/OFFをして、塗膜1の幅方向においてもパターン領域1aおよび非パターン領域1bが形成され、塗膜1の幅方向に複数のパターン領域1aが配列される。このような光走査方式を用いると、遮光マスク22を作製する必要がなく、遮光マスク22など塗膜1の表面に触れるものがないので、印刷の精度をより高めることができる。
【0049】
パターン領域1aの形状や寸法の精度を高めるには、光Lのスポット径が小さいものが好ましい。内部電極や配線導体の幅よりも小さい径であり、積層セラミックコンデンサの内部電極の場合であれば、例えば0.6mm×0.3mmの矩形状の内部電極となるパターン領域1aを形成するには光Lのスポット径は10μm〜30μm程度とすればよい。
【0050】
このような光Lを走査しながら照射する場合であっても遮光マスクを用いてもよい。このときの照射は、光源と塗膜1の間に遮光マスクを設けて光源23を走査しながら連続的に(光Lの照射のON/OFFをせずに)光Lを照射すればよい。
【0051】
図6は、本発明の第3の実施形態における印刷装置を模式的に示す斜視図である。
図4に示す第1の実施形態と異なる点は、第2の手段20は、光Lを透過させる円筒状の透光性基体21と、透光性基体21に設けられた遮光マスク22と、円筒状の透光性基体21の内部に配置された光源23とを有する点である。すなわち、第1ロール12上の塗膜1に接するように円筒状の透光性基体21を配置しており、円筒状の透光性基体21の内部に配置された光源23から円筒状の透光性基体21に設けられた遮光マスク22を通して塗膜1に光Lが照射されるようになっている。第1ロール12の回転と遮光マスク22が形成された円筒状の透光性基体21の回転とは同期しており、遮光マスク22の塗膜1に対する連続的な位置合わせが容易となり、複数のパターン領域1a間の位置精度が良好となる。
【0052】
円筒状の透光性基体21は透光性のガラスやプラスチックで形成されており、例えばこの円筒状の透光性基体21の外周面に遮光マスク22が形成されている。遮光マスク22
は、円筒状の透光性基体21に直接形成してもよいが、例えばPET等の樹脂からなる透光性のフィルムに形成したもの(ポジフィルム)を円筒状の透光性基体21に巻き付けるなどして透光性基体21の外表面に配置してもよい。このようにすると、印刷パターン(遮光マスク22の形状)の変更が容易となり、円筒状の透光性基体21に直接形成するよりも、遮光マスク22の形成や印刷パターンの変更のコストを抑えることもできる。このとき、ポジフィルムおよび遮光マスク22の表面は、インクに対して濡れ性が悪くなる、インクをはじきやすくなるような処理を施しておくと、インクの塗膜1が円筒状の透光性基体21に転写されることを抑えられるのでよい。例えば、インクに含まれる溶剤が水の場合であれば、ポジフィルムのインクの塗膜1に触れる側の表面に撥水剤を塗布しておくとよい。また、円筒状の透光性基体21(ポジフィルム)の表面に付着したインクを取り除くためのクリーニング装置を設けてもよい。
【0053】
第3の実施形態においても、遮光マスク22を用いて、光源23は光Lの照射のON/OFFをしない光走査方式でもよい。
【0054】
図7は、第3の実施形態における印刷装置の他の例を模式的に示す断面図である。
図6に示す第3の実施形態と異なる点は、第3の実施形態においては、パターン領域1aは第1ロール12から被印刷物2へ直接転写されているのに対して、
図7に示す変形例においては、パターン領域1aは一旦、第2ロール31に転写された後に、第2ロール31から被印刷物2に転写されるようになっている点である。被印刷物2を第2ロール31に押しつけるための機構、例えば第3ロールを設けてもよい。
【0055】
図8は、本発明の第4の実施形態における印刷装置を模式的に示す断面図である。本実施形態における印刷装置では、第1の手段10において透光性基体21の表面に塗膜1を形成する。遮光マスク22が形成された円筒状の透光性基体21からなる第1ロール21上に塗膜1を形成する。光源23は、第3の実施形態と同様に、第1ロール21の内部に設けられており、第1ロール21の内部から塗膜1に光Lを照射するようになっている。
図8に示す例では、第1ロール21の円筒状の透光性基体21の外周面に遮光マスク22が形成されており、この遮光マスク22を通して塗膜1の一部に光Lが照射され、塗膜1にパターン領域1aが形成される。すなわち、第1の手段10の第1ロール12と第2の手段とが1つにまとめられた構造となっており、印刷装置がより小型になり、省スペース化に適したものとなっている。
【0056】
第4の実施形態においても、パターン領域1aを一旦、第2ロール31に転写した後に、第2ロール31から被印刷物2に転写するような構造としてもよい。
【0057】
また、
図8の第4の実施形態における印刷装置では、円筒状の透光性基体21に設けた遮光マスク22を通して塗膜1に光Lを照射しているが、遮光マスク22を設けずに光Lの照射のON/OFFをしながら走査する光走査方式で塗膜1の一部に光Lを照射しても構わない。あるいは、遮光マスク22を用いて、光源23は光Lの照射のON/OFFをしない光走査方式であってもよい。
【0058】
また、第1〜第4の実施形態の印刷装置においては、被印刷物2は第2ロール31に沿って折り返しているが、
図9に示す変形例のように、第2ロール31によって第1ロール12に押しつけられながら、被印刷物2は第1ロール12と第2ロール31との間を直線的に移動するようにしてもよい。
【0059】
以上のような本発明の実施形態における印刷装置によれば、グラビア版を用いずにグラビア印刷機と同様の転写による印刷が可能であることから、印刷速度が速く、高品質な印刷が可能となる。