(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
<電気絶縁用二軸配向フィルム>
本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは、ポリエステル、ポリスチレンおよびスチレン−マレイン酸半エステル共重合体を含む二軸配向フィルムであって、該フィルムの重量を基準として該ポリエステルの含有量が10重量%以上90重量%以下、該ポリスチレンの含有量が5重量%以上85重量%以下、該スチレン−マレイン酸半エステル共重合体の含有量が0.01重量%以上10重量%以下である。
ポリエステル、ポリスチレンとともに、スチレン−マレイン酸半エステル共重合体を併用することにより、従来のポリエステルとシンジオタクチックポリスチレンとの混合体からなる電気絶縁用ポリエステルフィルムにくらべ、薄肉でも製膜性に優れる。以下、各樹脂について詳述する。
【0012】
<ポリエステル>
本発明の二軸配向フィルムは、該フィルムの重量を基準として10重量%以上90重量%以下の範囲内でポリエステルを含有し、好ましくは20重量%以上80重量%以下、より好ましくは30重量%以上70重量%以下、さらに好ましくは50重量%以上70重量%以下である。また、本発明の好ましい態様として後述するように酸化防止剤あるいはポリフェニレンエーテルをさらに含む場合には、上述の範囲内でそれらの合計量が100重量%となるようにポリエステルの含有量を調整すればよい。
ポリエステルの含有量が下限に満たない場合、併用するポリスチレンの含有量が相対的に増加し、製膜安定性に乏しくなる。またポリエステルの含有量が上限を超えると、併用するポリスチレンの含有量が相対的に減少し、本発明の目的とする温度領域まで耐熱性や耐電圧特性を高めることができない。
【0013】
本発明におけるポリエステルは、ジオールとジカルボン酸との重縮合によって得られるポリマーであり、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが好ましく例示され、特に高温での耐電圧特性の観点からポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが好ましく、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが最も好ましい。ポリエステルとしてポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを用い、さらにポリスチレンとしてシンジオタクチックポリスチレンを併用する場合、長期耐熱性を高めることができる。
【0014】
本発明におけるポリエステルは、ポリエステルの重量を基準としてポリエチレンナフタレンジカルボキシレートあるいはポリエチレンテレフタレートを50重量%以上含むことが好ましく、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。また、かかる主成分以外のポリエステルとして例示されている他の種類のポリエステルを含有することができるほか、その他の公知のポリエステル樹脂を用いてもよい。
【0015】
また、本発明におけるポリエステルはホモポリマーであっても共重合ポリエステルであってもよく、共重合ポリエステルである場合は
ポリエステルの全繰り返し単位を基準としてエチレンナフタレンジカルボキシレートあるいはエチレンテレフタレートが80モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。共重合ポリエステルの場合、従たる共重合成分として、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分などの中から主たる成分以外の成分を用いることが好ましい。
【0016】
ポリエステル製造時の重合触媒として、チタン化合物を使用するのが好ましく、中でもポリエステルに可溶なチタン化合物であることが好ましい。ここでポリエステルに可溶なチタン化合物とは、有機チタン化合物を意味し、具体的にはテトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラフェニルチタネートまたはこれらの部分加水分解物、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルカリウムおよびチタントリスアセチルアセトネートで例示される化合物、ならびに前記のチタン化合物と無水トリメリット酸等の芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させた生成物を挙げることができる。これらの中でも、テトラブチルチタネートおよびトリメリット酸チタンが好ましい。トリメリット酸チタンは、無水トリメリット酸とテトラブチルチタネートとを反応せしめて得られる化合物である。
【0017】
本発明におけるポリエステルは、従来公知の方法、例えばジカルボン酸とジオール、および必要に応じて共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造することができる。また、これらの原料モノマーの誘導体をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造してもよい。
【0018】
<ポリスチレン>
本発明の二軸配向フィルムは、該フィルムの重量を基準として5重量%以上85重量%以下の範囲内でポリスチレンを含有し、好ましくは20重量%以上60重量%以下、より好ましくは20重量%以上45重量%以下、さらに好ましくは20重量%以上40重量%以下である。また、本発明の好ましい態様として後述するように酸化防止剤あるいはポリフェニレンエーテルをさらに含む場合には、上述の範囲内でそれらの合計量が100重量%となるようにポリスチレンの含有量を調整すればよい。
フィルム中にポリスチレンを含有させることにより、フィルムの耐電圧特性を向上でき、誘電正接を低減させることができる。フィルムの誘電正接が向上することにより、電気絶縁用に用いたときにポリエステルによる自己発熱をより低減させることができる。
【0019】
ポリエステルとポリスチレンは相溶性に乏しく、ポリスチレンの含有量を増やそうとすると、フィルム厚みが薄い範囲において製膜性などの取り扱い性が低下することがあったが、本発明においてポリエステル、ポリスチレンとともにスチレン−マレイン酸半エステル共重合体を添加することにより、薄肉フィルムにおいても多量のポリスチレンを添加することができ、耐電圧特性および誘電正接をより向上させることができる。
ポリスチレンの含有量が下限に満たない場合は耐電圧特性および誘電正接特性の向上効果が発現し難く、またポリスチレンの含有量が上限を超えると、スチレン−マレイン酸半エステル共重合体を添加してもフィルム厚みが薄い範囲において製膜性が低下する。
【0020】
本発明においてポリエステルとともに用いられるポリスチレンとして、スチレンやポリ(アルキルスチレン)等のスチレン誘導体などからなる単独重合体または共重合体が挙げられる。また、アタクティックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、アイソタクティックポリスチレン等の各種のポリスチレンをいずれも用いることができるが、これらの中でも特に耐熱性の観点からシンジオタクチックポリスチレンが好ましい。
【0021】
本発明におけるシンジオタクチックポリスチレンは、立体化学構造がシンジオタクチック構造を有するポリスチレンであり、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体の総称として使用される。一般にタクティシティーは、同位体炭素による核磁気共鳴法(
13C−NMR法)により測定され、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッド等によって示すことができる。本発明におけるシンジオタクチックポリスチレンは、ダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、ペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のタクティシティーを有するポリスチレンである。
【0022】
かかるシンジオタクチックポリスチレンとして、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)あるいはこれらのベンゼン環の一部が水素化された重合体やこれらの混合物、またはこれらの構造単位を含む共重合体が挙げられる。
【0023】
ポリ(アルキルスチレン)として、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(プロピルスチレン)、ポリ(ブチルスチレン)が例示される。
ポリ(ハロゲン化スチレン)として、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)が例示される。
またポリ(アルコキシスチレン)として、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)が挙げられる。
これらのうち、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)またはポリ(p−ターシャリーブチルスチレン)が好ましく例示される。
共重合シンジオタクチックポリスチレンの共重合成分は、全繰り返し単位を基準として0.1モル%以上10モル%以下であることが好ましい。共重合成分の下限値は、より好ましくは1モル%、さらに好ましくは3モル%、特に好ましくは5モル%である。
【0024】
シンジオタクチックポリスチレンを用いる場合、その分子量および分子量分布について特に制限はないが、重量平均分子量が10000以上のものが好ましく、50000以上のものがより好ましい。重量平均分子量が10000未満では、耐電圧特性の向上効果が十分でないことがある他、製膜性が低下することがある。
【0025】
<相溶化剤>
本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは、ポリエステルとともに一定量のポリスチレンを含有せしめ、薄肉フィルムでも優れた製膜性を得るために、相溶化剤としてスチレン−マレイン酸半エステル共重合体を用いる点に特徴がある。
【0026】
本発明におけるスチレン−マレイン酸半エステル共重合体は、所定量のスチレンと無水マレイン酸とをモノマー成分として得られたモル比の制御された共重合体にアルコールを付加し、エステル化することによって得られ、マレイン酸由来の共重合成分がモノエステルとモノカルボン酸基の化学構造を有する。
本発明においてスチレン−マレイン酸半エステル共重合体のスチレン/マレイン酸で表されるモル比は、モノマー成分であるスチレンと無水マレイン酸の分子量を基準として算出され、スチレン/マレイン酸で表されるモル比は1以上8以下、好ましくは1以上3以下、より好ましくは1以上2以下である。
本発明者らは、ポリエステルとポリスチレンの相溶化剤として種々の剤を検討しており、ポリエステルとポリスチレンの中間の溶解性パラメーター(SP値)を有する低分子量化合物もしくは熱可塑性樹脂を検討する中で、今回、無水マレイン酸をモノマー成分とする共重合成分がモノエステルとモノカルボン酸基の化学構造を有し、かつスチレン/マレイン酸で表されるモル比が特定範囲に制御されていることにより、島相の分散性を非常に高めることができ、薄肉フィルムにおいても多量の島相成分を添加でき、しかも延伸性が非常に向上することを見出したものである。
【0027】
該スチレン−マレイン酸半エステル共重合体の含有量は、フィルム重量を基準として0.01重量%以上10重量%以下の範囲であり、スチレン−マレイン酸半エステル共重合体の含有量の下限値はより好ましくは0.1重量%、さらに好ましくは0.5重量%である。またスチレン−マレイン酸半エステル共重合体の含有量の上限値は好ましくは5.0重量%、さらに好ましくは3.0重量%である。
【0028】
<ポリフェニレンエーテル>
本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムには、フィルム重量を基準としてさらに1重量%以上30重量%以下の範囲でポリフェニレンエーテルを含有することができる。
かかるポリフェニレンエーテルとして公知の化合物を用いることができ、ポリフェニレンエーテルの中でも未変性ポリフェニレンエーテルの具体例として、ポリ(2,3−ジメチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−6−クロロメチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ〔2−(4’−メチルフェニル)−1,4−フェニレンエーテル〕,ポリ(2−ブロモ−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−フェニル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−クロロ−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−クロロ−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−クロロ−6−ブロモ−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−クロロ−6−メチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2,6−ジブロモ−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)などが挙げられる。
また、ポリフェニレンエーテルの中でも酸変性ポリフェニレンエーテルの具体例として、上記ポリフェニレンエーテルの置換基の少なくとも一部がカルボン酸、フマル酸、無水マレイン酸などで置換されたものが挙げられる。
【0029】
本発明の二軸配向フィルムにおいて、さらにポリフェニレンエーテルを含有させることで、フィルムのガラス転移温度を高めることができ、例えばコンデンサを作製した時に耐ブロッキング性が向上する。
またポリフェニレンエーテルとして酸変性ポリフェニレンエーテルを10重量%以下の範囲内で使用するか、未変性ポリフェニレンエーテルとともにさらに酸変性ポリフェニレンエーテルを併用することにより、さらにポリエステルとポリスチレンとの相溶性を高めることができ、フィルムのさらなる薄肉化が可能となる。
【0030】
ポリフェニレンエーテルの含有量は好ましくは2重量%以上25重量%以下、さらに好ましくは3重量%以上20重量%以下である。ポリフェニレンエーテルとして未変性ポリフェニレンエーテルのみ用いる場合は前述の含有量に準じる。
また本発明においてポリフェニレンエーテルを用いる場合、未変性ポリフェニレンエーテルおよび酸変性ポリフェニレンエーテルを併用することが好ましく、その合計量が前述の含有量となるよう調整することが好ましい。かかる場合、酸変性ポリフェニレンエーテルの含有量はフィルム重量を基準として10重量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2〜7重量%、さらに好ましくは2〜5重量%である。
【0031】
<酸化防止剤>
本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは、ポリエステル、ポリスチレンおよびスチレン−マレイン酸半エステル共重合体に加え、さらに酸化防止剤を含むことが好ましい。さらに酸化防止剤を含有することによって、室温および130〜160℃の高温域のいずれにおいても高い耐電圧特性が得られる。
【0032】
かかる酸化防止剤としては、生成したラジカルを捕捉して酸化を防止する一次酸化防止剤、あるいは生成したパーオキサイドを分解して酸化を防止する二次酸化防止剤のいずれであってもよく、一次酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤があげられ、二次酸化防止剤としてはリン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤があげられる。
本発明における酸化防止剤は、特に耐腐食性に優れ、絶縁破壊電圧の向上効果をより高めることができるという観点から、一次酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
また本発明における酸化防止剤は、その熱分解温度が250℃以上であることが好ましい。熱分解温度が低すぎる場合は溶融押出時に酸化防止剤自体が熱分解してしまい、製膜工程を汚染する可能性や、フィルムに着色が生じる可能性がある。このような観点から、酸化防止剤の熱分解温度は、より好ましくは280℃以上、さらに好ましくは300℃以上、特に好ましくは320℃以上である。酸化防止剤の熱分解温度はより高い方が好ましいが、フィルム製膜温度や後加工温度、使用温度などを考慮すると、熱分解温度の上限は500℃程度でよい。
【0033】
本発明における酸化防止剤の融点は90℃以上であることが好ましい。融点が低すぎる場合は溶融押出時に酸化防止剤がポリマーより早く融解してしまい、押出機のスクリュー供給部分においてポリマーがスリップしてしまう傾向にある。それによって、ポリマーの供給が不安定となり、フィルムの厚み斑が低下することがある。このような観点から、酸化防止剤の融点の下限は、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは200℃以上である。他方、酸化防止剤の融点が高すぎる場合は、溶融押出時に酸化防止剤が融解しにくくなり、ポリマーへの分散が低下する傾向にある。それにより、酸化防止剤の添加効果が局所的にしか発現しないことがある。このような観点から、酸化防止剤の融点の上限は、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは220℃以下、特に好ましくは170℃以下である。
【0034】
フェノール系酸化防止剤の具体例として、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名IRGANOX1010)、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名IRGANOX1024)、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名IRGANOX1098)等が好ましく例示される。
【0035】
本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムに用いられる酸化防止剤の含有量は、フィルムの重量を基準として0.001重量%以上5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1重量%以上2重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以上1.5重量%以下である。
酸化防止剤の含有量が下限に満たない場合、耐電圧特性のさらなる向上が十分でないことがある。一方、上限を超えて酸化防止剤を添加してもさらなる耐電圧特性が得られないことがある他、製膜安定性の低下や工程汚染が生じることがある。
【0036】
<フィルム厚み>
本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムのフィルム厚みは0.5μm以上300μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上50μm以下、さらに好ましくは1μm以上10μm以下、特に好ましくは2μm以上5μm以下である。電気絶縁特性が求められる各種用途に応じて適宜フィルム厚みを選択することができ、例えばフィルムコンデンサーに用いられる場合、フィルム厚みはより薄い方が好ましい。
【0037】
<製膜性>
本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは、互いに非相溶なポリマー同士のブレンド系であり、ポリエステルの体積分率が多い場合はフィルム中でポリエステルを連続相、ポリスチレンを島相とする海島構造を形成し、ポリスチレンの体積分率が多い場合はフィルム中でポリスチレンを連続相、ポリエステルを島相とする海島構造を形成する。
かかる海島構造を有する場合に島相の樹脂が海相の樹脂中に十分に分散化していないと、二軸延伸の際に海島相の界面から破断が起こりやすくなり、製膜性が低下する。本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは、スチレン−マレイン酸半エステル共重合体を相溶化剤として用いることにより、島相を海相中に十分に分散化させることができ、薄肉フィルムの製膜性を従来よりも高めることができる。かかる島相の粒径は、未延伸フィルムの断面で測定した場合に5μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以下である。
【0038】
<耐電圧特性>
本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは、前記ポリエステル、ポリスチレンおよびスチレン−マレイン酸半エステル共重合体を含有することによってポリエステル単体よりも高い耐電圧特性が得られる。
さらに本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは、前記の組成とともに酸化防止剤を含有することによって、室温および130〜160℃の高温域のいずれにおいても高い耐電圧特性が得られる。
具体的には、本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは25℃におけるフィルムの絶縁破壊電圧が500V/μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは550V/μm以上、特に好ましくは600V/μm以上である。25℃におけるフィルムの絶縁破壊電圧がより高い方がこれらの電気絶縁材料として用いたときの信頼性が高くなり好ましいが、その上限値は樹脂材料の性質上、高々800V/μmであり、さらには750V/μm以下である。
また、前記高温域での耐電圧特性の具体例として、150℃におけるフィルムの絶縁破壊電圧は450V/μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは500V/μm以上、特に好ましくは550V/μm以上である。150℃におけるフィルムの絶縁破壊電圧の上限については、各樹脂の特性上、高々750V/μmであり、さらには700V/μm以下である。
【0039】
<耐熱性>
本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは従来のポリエステルフィルムよりも高温域での長期耐熱性が向上し、例えば高温で絶縁破壊電圧が長期に渡り維持される耐熱性の指標として知られる、IEC60216の温度指数に準拠した耐熱温度について、130〜160℃の範囲の耐熱性が得られることが好ましい。かかる耐熱性は、ポリエステルとともに用いるポリスチレンとしてシンジオタクチックポリスチレンを用いることにより達成される。
前述の耐電圧特性とともに高温領域での長期耐熱性にも優れることにより、従来のポリエステル系樹脂では適用の難しかった高温・高電圧使用を含む用途などに使用することができ、例えば電気自動車やハイブリッドカーなどの環境対応車用のフィルムコンデンサーとして用いることができる。
【0040】
<誘電特性>
本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは150℃におけるフィルムの誘電正接(Tanδ)が0.010以下であることが好ましい。
また、本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムはポリスチレンを含有することにより、ポリエステル単独に比べて誘電率と誘電正接が向上する効果が発現し、具体的には25℃における誘電率が2.5以上3.0未満であることが好ましく、さらに2.6以上2.9以下であることが好ましい。また、高温での良好な誘電特性はポリスチレンの中でもシンジオタクチックポリスチレンを用いることで達成され、150℃でのフィルム誘電正接は0.006以下であることが好ましい。
かかる誘電特性を具備することにより、自己発熱抑制に優れることから、高温下での自己発熱抑制が求められるフィルムコンデンサーの絶縁フィルムとして用いることができる。
【0041】
<滑り性>
本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは、上述の組成からなることにより、フィルム中に滑剤を含有しなくても薄肉フィルムの滑り性を高めることができる。具体的には本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは滑剤を含んでいなくても0.60〜1.0の範囲の静摩擦係数を有しており、さらに好ましくは0.60〜0.90である。また、フィルム中に滑剤を含有しない場合、滑剤を添加した場合に較べて高温領域での耐電圧特性の低下が少ないという効果も奏する。
【0042】
また、本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは粒子を添加してもよく、添加する場合は平均粒径0.1μm以上3.0μm以下の球状架橋高分子樹脂粒子をフィルムの重量を基準として0.01重量%以上1.0重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以上0.5重量%以下、含有することが好ましい。一方で本発明においてはその組成の特徴により、滑剤を含まなくても良好な滑り性を有するため、粒子添加によるさらなる滑り性の向上効果は小さい傾向にある。
【0043】
<塗布層>
本発明の電気絶縁用二軸配向フィルムは、さらにフィルムの片面または両面に塗布層を設けてもよい。該塗布層は、ワックス、シリコーン化合物、フッ素化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を塗布層の重量を基準として1〜50重量%含有してなることが好ましい。
【0044】
塗布層がこれら化合物の少なくとも1種を含有することにより、塗布層を介して積層される金属層との接着力が弱まり、フィルムの欠陥部に絶縁破壊が生じて短絡状態となったときに短絡電流によりその付近の金属層が容易に飛散し、従来よりもさらに優れた自己回復性(セルフヒーリング性)を得ることができる。
一方、塗布層がこれら化合物を含んでいない場合、塗布層が十分な剥離性を備えていないため、金属層との接着力を弱めることができず、フィルムの欠陥部に絶縁破壊が生じて短絡状態となったときにその付近の金属層が容易に飛散することができず、十分な自己回復性を示すことができないことがある。
【0045】
<フィルム製造方法>
本発明の二軸配向フィルムは、公知の逐次二軸延伸方法や同時二軸延伸方法を用いて製膜することができ、その方法は特に制限されない。
なお、酸化防止剤を用いる場合の添加時期は、ポリマーの重合段階、マスターチップの製造段階、樹脂組成物のブレンド段階、樹脂組成物を押出機に投入する段階のいずれの段階で添加してもよく、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0046】
逐次延伸法を用いる製膜方法として、樹脂組成物を押出機に供給してTダイよりシート状に成形し、表面温度10〜60℃の冷却ドラムで冷却固化後、例えばロール加熱または赤外線加熱によって加熱し、縦方向に延伸し、縦延伸フィルムを得る。縦延伸温度は組成物のガラス転移点(Tg)より高い温度、更にはTgより20〜40℃高い温度とするのが好ましい。縦延伸倍率は、使用する用途の要求に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは2.5倍以上5.0倍以下、更に好ましくは3.0倍以上4.5倍以下である。
【0047】
続いて横延伸を行い、横延伸処理は組成物のガラス転移点(Tg)より20℃以上高い温度から始め、ポリエステルの融点(Tm)より(120〜30)℃低い温度まで昇温しながら行う。また横延伸最高温度は、好ましくはTmより(100〜40)℃低い温度である。
横延伸倍率は、使用する用途の要求に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは2.5倍以上5.0倍以下、更に好ましくは3.0倍以上4.5倍以下である。
【0048】
その後、必要に応じて熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、かかる処理はフィルムを走行させながら行う。
塗布層をさらに設ける場合、フィルム延伸工程において塗布する方法が挙げられる。この場合、塗布液は水性塗布液の形態で使用されることが好ましい。水性塗布液の固形分濃度は、通常20重量%以下、好ましくは1〜10重量%である。
【0049】
<用途>
本発明の二軸配向フィルムは、優れた耐電圧特性および耐熱性を有することから、電気絶縁用フィルムとして好適に使用することができ、具体的には、フィルムコンデンサー、ウエッジ材やスロット材などのモーター絶縁部材、フレキシブルプリント回路基板、フラットケーブルなどの電気絶縁用途のベースフィルムとして用いることができる。
【0050】
これらの電気絶縁用途のうち、例えばフィルムコンデンサーは、本発明の二軸配向フィルムの片面または両面に金属層を積層した積層フィルムを巻回または積層することによって得られる。
また、フレキシブルプリント回路基板は、本発明の二軸配向フィルムの少なくとも片面に銅箔または導電ペーストからなる金属層を積層させ、金属層に微細な回路パターンを形成することによって得られる。
またウエッジ材やスロット材などのモーター絶縁部材は、本発明の二軸配向フィルムをRのついたポンチを用いて変形加工を行うことによって得られる。
【0051】
かかる電気絶縁用途の中でも、本発明の二軸配向フィルムは従来よりも高温領域に至るまで優れた耐電圧特性と耐熱性とを有することから、例えば使用環境の温度が高くなりやすい電気自動車やハイブリッドカーなど環境対応車用のフィルムコンデンサーの絶縁フィルムとして好適に用いられる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量%および重量%を意味する。
【0053】
(1)組成分析
1H−NMRや
13C−NMRを用いて測定した。
【0054】
(2)酸化防止剤の含有量
得られたフィルムサンプル20mgを重トリフルオロ酢酸:重クロロホルム=1:1の混合溶媒に溶解し、600Mの
1H−NMR装置を用いて積算回数256回で測定して、酸化防止剤の含有量を求めた。
なお、測定に際し、例えばN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]の場合は、tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルとアミド結合との間の炭化水素鎖に起因する水素に起因するピーク強度を測定した。かかるNMR測定結果をもとに、安定剤が樹脂と反応している場合はもとの安定剤に換算した含有量を求めた。また、ポリマーと未反応な安定剤と、ポリマーと反応した安定剤とが混在し、同じ炭化水素鎖に着目しても複数のピーク位置が検出される場合は、それらの合計値より含有量を求めた。
その他のフェノール系酸化防止剤についても同様に、着目する水素に起因するピーク強度を測定し、樹脂との反応状態を確認しながら、フィルムに含まれる酸化防止剤の合計値より含有量を求めた。
【0055】
(3)粒子含有量
樹脂を溶解し、粒子は溶解させない溶媒を選択してサンプルを溶解した後、粒子を樹脂から遠心分離し、サンプル重量に対する粒子の比率(重量%)から測定した。
【0056】
(4)フィルム厚み
電子マイクロメータ(アンリツ(株)製の商品名「K−312A型」)を用いて針圧30gにてフィルム厚みを測定した。
【0057】
(5)絶縁破壊電圧
i)20℃における絶縁破壊電圧
得られた二軸配向フィルムを用い、JIS規格C2151に記載のDC試験のうち平板電極法に準拠して、東京精電株式会社製ITS−6003を用いて、0.1kV/secの昇圧速度で測定し、破壊時の電圧を絶縁破壊電圧として測定した。
測定はn=50で行い、平均値を絶縁破壊電圧とした。なお測定は20℃の室温で実施した。
【0058】
ii)150℃における絶縁破壊電圧
150℃での絶縁破壊電圧について、JIS規格K6911に準拠し、得られたフィルムサンプルを用いて試験片寸法10cm×10cm、電極形状;上部電極Φ20mmの球状、下部電極100mm×100mm×100μm厚み(ステンレス製)、昇圧速度;DC0.1kV/sec、試験雰囲気シリコンオイル中(JIS c2320絶縁油適合品)、試験装置;耐電圧試験器TOS5101(菊水電子工業製)を用いて、150℃の温度下でn=3測定し、それらの平均値より求めた。
【0059】
(6)耐熱性
得られたフィルムを用い、IEC60216の温度指数に準拠し、絶縁破壊電圧の半減期の時間と温度の関係をアレニウスプロットして、20000時間に耐えうる温度を求めた。
【0060】
(7)誘電正接(tanδ)
得られたフィルムサンプルを用い、JIS C2151に準拠して、アルミ蒸着を施し、恒温槽(安藤電気株式会社 T0−9形)にセットし、30−200℃の範囲で10℃ピッチ、LCRメーター(HEWLETT PACKAD 4284A)を用いて1KHz、150℃における誘電正接(tanδ)を求めた。また、測定結果をもとに、25℃における誘電率を求めた。
【0061】
(8)フィルム製膜性
組成物を押出機に供給し、フィルムの延伸製膜工程におけるフィルム製膜性について、以下の基準によって評価した。
○:製膜する上で切断などの問題がなく、延伸倍率を面積倍率で10.5倍以上にして12時間以上の連続製膜が可能である。
×:連続製膜性に劣り、延伸倍率を面積倍率で10.5倍以上にするとごく短時間でしか製膜できない。
【0062】
(9)フィルムロールの巻姿
フィルムを幅700mm、長さ10000mでロールに巻き取った後の巻姿を製膜・スリット時に観察し、下記の基準で評価した。
○:製膜・スリット時に肉眼の観察で表面のシワ、巻ズレ等がなく、巻姿が良好。
×:製膜・スリット時に肉眼の観察で表面のシワ、巻ズレ等が確認され、巻姿が不良。
【0063】
(10)静摩擦係数
得られたフィルムを重ね合せた2枚のフィルムの下側に固定したガラス板を置き、重ね合せたフィルムの下側(ガラス板と接しているフィルム)のフィルムを低速ロールにて引取り(約10cm/min)、上側のフィルムの一端(下側フィルムの引取り方向と逆端)に検出器を固定してフィルム/フィルム間のスタート時の引張力を検出する。なお、そのときに用いるスレッドは重さ0.1kg、下側面積100cm
2のものを使用する。
なお、静摩擦係数(μs)は次式より求めた。
μs=(スタート時の引張力kg)/(荷重0.1kg)
フィルムの静摩擦係数が1.0を超える場合は極端に滑り性が低下し、フィルムをロール状に巻き取る際、シワや欠陥が出やすくなる。
【0064】
(11)表面粗さ
非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO社製:New View5022)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm
2)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトMetroProにより中心面平均粗さ(Ra)を求め、これを表面粗さ(Ra)とした。なお、測定は測定箇所を変えて10回行い、それらの平均値を中心面平均粗さ(Ra)とした。
【0065】
(12)島相の平均分散粒径
未延伸フィルムをフィルム長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)にて包埋した。包埋されたサンプルをミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製「ULTRACUT」(登録商標)UCT)でフィルム幅方向に垂直に切断し、5nm厚の薄膜切片にした。
未延伸フィルムの断面を透過型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製S−4300)を用いて10000倍で観察し、島相の面積から円相当径を算出した。島相を20点測定し、その平均値より島相の平均分散粒径を求めた。
【0066】
(13)最大可能延伸倍率
12時間以上連続製膜可能な最大の延伸倍率(面積倍率)。
【0067】
[実施例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル(以下、NDCと称することがある。)100部、エチレングリコール(以下、EGと称することがある。)60部およびチタン化合物(トリメリット酸チタンをチタン元素量が15mmol%となるように添加)をSUS製容器に仕込み、140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、反応混合物を重合反応器に移し、295℃まで昇温し、30Pa以下の高真空下にて重縮合反応させ、固有粘度0.60dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを得た。
得られたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、シンジオタクチックポリスチレン(出光興産株式会社製、XAREC、60ZC(商品名))、未変性ポリフェニレンエーテル(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、PX−100L(商品名))、スチレン−マレイン酸半エステル共重合体(CRAY VALLEY社製、SMA1440商品名)、スチレン/マレイン酸=1(モル/モル))、フェノール系酸化防止剤として「Irganox(登録商標)1098」(N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド])(融点156〜161℃)、および粒子としてシリコーン樹脂粒子を用い、表1に示す組成割合となるよう樹脂組成物を準備し、170℃で6時間乾燥後、300℃に加熱された押出機に供給した。
【0068】
押出機で溶融混練後、290℃のダイスよりシート状に成形して冷却ロールにて冷却固化した未延伸フィルムを140℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向)に延伸した後、60℃のロール群で冷却し、続いて縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、横延伸最高温度が150℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向(横方向)に延伸した。その後、テンター内で210℃で5秒間熱固定を行い、さらに200℃で1%横方向に熱弛緩を行った後、均一に除冷して室温まで冷却し、5μm厚みの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。また縦方向の延伸倍率と横方向の延伸倍率から求められる、12時間以上連続製膜可能な最大の延伸倍率(面積倍率)を表2に示す。
本実施例のフィルムは室温、150℃の高温領域のいずれの絶縁破壊電圧も高いことに加え、ポリエステルを主成分とするフィルムでありながら145℃もの高い耐熱性が得られた。また相溶化剤を含まない比較例や他の相溶化剤を用いた比較例に較べ、フィルム製膜性も安定していた。
【0069】
[実施例2]
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、シンジオタクチックポリスチレン、未変性ポリフェニレンエーテルの含有量を表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、5μm厚みの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
本実施例のフィルムは室温、150℃の高温領域のいずれの絶縁破壊電圧も高いことに加え、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主成分とするフィルムでありながら145℃もの高い耐熱性が得られた。またフィルム製膜性も安定していた。
【0070】
[実施例3]
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、未変性ポリフェニレンエーテルの含有量を表1に示す量に変更し、さらに酸変性ポリフェニレンエーテルとしてフマル酸変性ポリフェニレンエーテル(出光興産株式会社製、CX−1(商品名))を表1に示す量用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、2μm厚みの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
本実施例のフィルムは室温、150℃の高温領域のいずれの絶縁破壊電圧も高いことに加え、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主成分とするフィルムでありながら150℃もの高い耐熱性が得られた。またフィルム製膜性も安定していた。
【0071】
[実施例4]
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、シンジオタクチックポリスチレン、未変性ポリフェニレンエーテルの含有量を表1に示す量に変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、2μm厚みの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
本実施例のフィルムは室温、150℃の高温領域のいずれの絶縁破壊電圧も高いことに加え、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主成分とするフィルムでありながら150℃もの高い耐熱性が得られた。また誘電特性が向上し、フィルム製膜性も安定していた。
【0072】
[実施例5]
スチレン−マレイン酸半エステル共重合体の種類をスチレン/マレイン酸のモル比が異なるもの(CRAY VALLEY社製、SMA2625(商品名)、スチレン/マレイン酸=2(モル/モル))に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、5μm厚みの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
本実施例のフィルムは室温、150℃の高温領域のいずれの絶縁破壊電圧も高いことに加え、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主成分とするフィルムでありながら145℃もの高い耐熱性が得られた。実施例1と較べると分散粒径が大きく、実施例1対比では若干フィルム製膜性の低下はあったものの、フィルム製膜性の評価基準○を満たしていた。
【0073】
[実施例6]
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、シンジオタクチックポリスチレンの含有量を表1に示す量に変更し、未変性ポリフェニレンエーテルに代えて酸変性ポリフェニレンエーテルとしてフマル酸変性ポリフェニレンエーテル(出光興産株式会社製、CX−1(商品名))を表1に示す量用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、2μm厚みの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
本実施例のフィルムは室温、150℃の高温領域のいずれの絶縁破壊電圧も高いことに加え、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主成分とするフィルムでありながら140℃もの高い耐熱性が得られた。またフィルム製膜性も安定していた。
【0074】
[実施例7]
粒子を用いず、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートの含有量を表1に示す量に変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、2μm厚みの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
本実施例のフィルムは室温、150℃の高温領域のいずれの絶縁破壊電圧も高いことに加え、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主成分とするフィルムでありながら150℃もの高い耐熱性が得られた。また誘電特性が向上し、フィルム製膜性も安定していた。粒子を含む場合と比較して、150℃における絶縁破壊強度が特に高い効果が得られた。
【0075】
[比較例1]
相溶化剤としてスチレン−マレイン酸半エステル共重合体に代えて、無水マレイン酸由来の共重合成分がアルコール付加されていないスチレン−無水マレイン酸共重合体(CRAY VALLEY社製、SMA1000(商品名)、スチレン/マレイン酸比=1(モル/モル))を用いた以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、本発明の製膜性の評価方法である面積倍率ではフィルム製膜性に乏しく、フィルム破断が多発した。
【0076】
[比較例2]
スチレン−マレイン酸半エステル共重合体を用いず、酸変性ポリフェニレンエーテルとしてフマル酸変性ポリフェニレンエーテル(出光興産株式会社製、CX−1(商品名))を表1に示す量用い、それに伴いポリエチレンナフタレンジカルボキシレートの含有量を表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、本発明の製膜性の評価方法である面積倍率ではフィルム製膜性に乏しく、フィルム破断が多発した。
【0077】
[比較例3]
スチレン−マレイン酸半エステル共重合体の含有量を15重量%に変更し、それに伴いポリエチレンナフタレンジカルボキシレートの含有量を表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、ポリマーの分子量低下によりフィルム製膜を行うことができなかった。
【0078】
[比較例4]
未変性ポリフェニレンエーテル、スチレン−マレイン酸半エステル共重合体、酸化防止剤を用いず、ポリエチレンナフタレンカルボキシレートとシンジオタクチックポリスチレンとの含有量を表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、本発明の製膜性の評価方法である面積倍率ではフィルム製膜性に乏しく、フィルム破断が多発した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】