特許第6017927号(P6017927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017927
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】透明毛髪洗浄料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20161020BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20161020BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20161020BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   A61K8/34
   A61K8/37
   A61K8/73
   A61Q5/02
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-243034(P2012-243034)
(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公開番号】特開2014-91704(P2014-91704A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓太
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/124766(WO,A1)
【文献】 特開2008−189582(JP,A)
【文献】 特開2002−201116(JP,A)
【文献】 特開平09−030938(JP,A)
【文献】 特開2002−071682(JP,A)
【文献】 特開2005−170817(JP,A)
【文献】 特表平06−506219(JP,A)
【文献】 特開平01−139523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−99/00
DB等 DWPI(Thomson Innovation)
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)イソステアリルアルコールを0.1〜0.5質量%、(b)ラウリン酸ジエチレングリコール、(c)カチオン変性ガラクトマンナンを0.3〜1質量%含有し、(a)イソステアリルアルコールに対する(b)ラウリン酸ジエチレングリコールの質量比[(b)/(a)]が2〜10の範囲である透明毛髪洗浄料。
【請求項2】
(c)カチオン変性ガラクトマンナンが、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化タラガム、カチオン化グアーガム及びカチオン化フェヌグリークガムからなる群から選択される一種以上である請求項1記載の透明毛髪洗浄料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明毛髪洗浄料に関する。さらに詳しくは、泡立ち、泡質、すすぎ時の滑らかさ、ごわつきの無さに優れると同時に、低温条件下でも透明性を維持することができる透明毛髪洗浄料に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプー剤等の毛髪洗浄料においては、洗浄力とともに、使用時の豊かな泡立ち、クリーミーな泡質、すすぎ時の滑らかさ、使用後の毛髪のごわつきの無さ、しっとり感の付与等は重要な品質特性である。
【0003】
このような使用性に優れた毛髪洗浄料として、例えば特許文献1には、(a)アニオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤30〜60重量%と、(b)エチレングリコール長鎖エステル3〜10重量%と、(c)多価アルコール6〜20重量%を含有する毛髪洗浄料が提案されている。特許文献1によれば、この毛髪洗浄料は、優れた起泡性を有し、毛髪に対して優れた保湿性を付与することができ、さらに指通り感、滑らかさ、毛髪のまとまり感に優れるとされている。
しかし、このような従来型の毛髪洗浄料は一定の使用感触は満たすものの、滑らかさ等については依然として改善の余地があった。
【0004】
また、近年になって、消費者の好みの多様化に伴い、透明感のある製品に対する需要が高まりつつある。例えば、特許文献2には、(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルと、(B)特定構造のアルキレンオキシド誘導体とを含有する液体洗浄料組成物が記載されており、低刺激で、使用感や透明安定性にも優れるとされている。また、特許文献3には、1)ポリオキシエチレンの平均付加モル数が5以下のPOE付加硫酸エステル系アニオン界面活性剤10〜25質量%と、2)両性界面活性剤8〜20質量%とを含有する水性のジェリー状洗浄料が、透明度が高く、美麗であり、外観形態にも優れることが記載されている。
【0005】
しかし、一般的には、透明な化粧料は他の配合成分や温度変化などの影響により不安定になり、一部の成分が析出して白濁を生じる傾向があった。このため、特に寒冷地のような低温環境下では、経時的に透明性が損なわれる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−273428号公報
【特許文献2】特開2005−220112号公報
【特許文献3】特開2006−8524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かくして、毛髪洗浄料としての使用性に優れると同時に、低温環境下でも透明性を失わない透明毛髪洗浄料が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、透明な毛髪洗浄料に、イソステアリルアルコールと、ラウリン酸ジエチレングリコールと、カチオン変性ガラクトマンナンとを特定量で配合することにより、泡立ち、泡質、すすぎ時の滑らかさ、ごわつきの無さ等の使用性を改善できると同時に、低温環境下での透明安定性をも改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(a)イソステアリルアルコールを0.1〜0.5質量%、(b)ラウリン酸ジエチレングリコール、(c)カチオン変性ガラクトマンナンを0.3〜1質量%含有し、(a)イソステアリルアルコールに対する(b)ラウリン酸ジエチレングリコールの質量比[(b)/(a)]が2〜10の範囲である透明毛髪洗浄料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記(a)〜(c)成分を上記特定量で配合することにより、使用時の泡立ちや泡質の良さ、すすぎ時の指どおりの滑らかさ、使用後のごわつきの無さといった毛髪洗浄料に求められる使用性を改善することができる。さらに、低温条件下(15℃)であっても透明な外観を長期間にわたって維持することが可能である。このため、特に寒冷地での使用に適している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳述する。
【0012】
<(a)イソステアリルアルコール>
本発明に配合される(a)イソステアリルアルコールは、高級アルコールの一種であり、乳液の流動性の調整剤や可塑剤として化粧料等に汎用されている。イソステアリルアルコールは、従来から化粧料等に使用されているものであれば特に限定されることなく用いることができる。市販品としては、例えば、リソノール18SP、イソステアリルアルコールEX(いずれも高級アルコール工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0013】
イソステアリルアルコールの配合量は、本発明の透明毛髪洗浄料の全量に対して、0.1〜0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜0.5質量%である。0.1質量%未満では泡立ち、泡質、すすぎ時の滑らかさ、ごわつきの無さといった使用性を十分に改善することが難しい。一方、0.5質量%を超えて配合すると油っぽくなり、却って使用性を損なう等の原因にもなり好ましくない。
【0014】
<(b)ラウリン酸ジエチレングリコール>
本発明に配合される(b)ラウリン酸ジエチレングリコールは、ノニオン性界面活性剤として化粧料に広く用いられている。ラウリン酸ジエチレングリコールは、従来から化粧料等に使用されているものであれば特に限定されず、市販品としては、例えば、ゲナポールDEL(クラリアントジャパン社製)等を用いることができる。
【0015】
(b)ラウリン酸ジエチレングリコールは、上記(a)イソステアリルアルコールに対する質量比[(b)/(a)]が2〜10の範囲となる量で透明毛髪洗浄料に配合する。この質量比が前記範囲外であると、使用感触を十分に改善できない傾向がある。また特に、質量比が2未満になると、泡立ちや泡質が著しく損なわれる傾向がある。
【0016】
<(c)カチオン変性ガラクトマンナン>
本発明に配合される(c)カチオン変性ガラクトマンナンは、ガラクトマンナンに含まれる水酸基の一部が第4級窒素含有基で置換されたものである。第4級窒素含有基としては、下記一般式で示される基が好適である。
【0017】
【化1】
[式中R、Rは各々炭素数1〜3個のアルキル基、Rは炭素数1〜24のアルキル基を示し、Xは陰イオンを示す。nは、n=0又はn=1〜30を示し、n=1〜30の時、(RO)は炭素数2〜4のアルキレンオキサイドの重合体残基であって、単一のアルキレンオキサイドからなるポリアルキレングリコール鎖及び/又は2種類以上のアルキレンオキサイドからなるポリアルキレングリコール鎖を示す。]
【0018】
上記第4級窒素含有基において、R及びRの具体例としては、メチル、エチル、及びプロピルが挙げられ、炭素数1〜24のアルキル基としてのRの具体例としては上記R及びRと同じものの他、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ドコシル等が挙げられる。ROの具体例としては、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシが挙げられる。また、陰イオンXの具体例としては、塩素イオン、臭素イオン、及び沃素イオンなどのハロゲンイオンの他、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、酢酸イオン等を挙げることができる。
【0019】
本発明で用いられるカチオン変性ガラクトマンナンを構成するガラクトマンナンとしては、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、フェヌグリークガム等が挙げられる。ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、フェヌグリークガムは、マンノースを構成単位とする主鎖にガラクトース単位が側鎖として結合した非イオン性多糖類である。マンノースとガラクトースの組成比は、ローカストビーンガムでは4対1、タラガムでは3対1、グアーガムでは2対1、フェヌグリークガムでは1対1である。本発明においては、これらの1種または2種以上を任意に選択して用いることができる。
【0020】
前記第4級窒素含有基のガラクトマンナンへの導入は、従来公知の方法に従って行うことができる。例えば、ガラクトマンナンにグリシジルトリアルキルアンモニウム塩、3−ハロゲノ−2−ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩等を反応させることによって製造することができる。
【0021】
本発明におけるカチオン変性ガラクトマンナンのカチオン化反応によって導入される窒素の含有率は特に限定されないが、0.2〜3.0質量%であることが好ましい。窒素含有率が0.2質量%未満であるとごわつき等の改善が不十分になる場合があり、窒素含有率が3.0質量%を超えても効果の向上はみられない。
【0022】
本発明のカチオン変性ガラクトマンナンは、市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えば、カチナールCG−100、カチナールCG−100S、カチナールCLB−100(以上、東邦化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0023】
カチオン変性ガラクトマンナンの含有量は、本発明の透明毛髪洗浄料の全量に対して、0.3〜1質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜1質量%である。0.3質量%未満では特にすすぎ時の滑らかさ、ごわつきの無さを十分に改善することが難しい。一方、1質量%を超えて配合すると、却ってごわつきが増す等の原因にもなり好ましくない。
【0024】
<その他の成分>
本発明にかかる透明毛髪洗浄料は、目的に応じて、本発明の効果を損なわない量的、質的範囲内で通常化粧品や医薬品等に用いられる他の成分を添加してもよい。このような成分としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルグルタミン酸塩等の、AMT型活性剤以外のアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤;脂肪酸アルカノールアミン等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0025】
さらに、炭化水素油、エステル油、高級脂肪酸、シリコーン油等の油分;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の保湿剤;トリクロロカルバニリド、イオウ、ジンクピリチオン、イソプロピルメチルフェノール等の抗フケ用薬剤;増粘剤;粘度調整剤;乳濁剤;金属イオン封鎖剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;防腐剤;粉末成分;血行促進剤、局所刺激剤、毛包賦活剤、抗男性ホルモン剤、抗脂漏剤、角質溶解剤、殺菌剤、消炎剤、アミノ酸、ビタミン類、生薬エキス類等の育毛薬剤;pH調整剤;色素;香料;低級アルコール等が挙げられる。
【0026】
<透明毛髪洗浄料>
本発明の透明毛髪洗浄料は、選択する剤形と形態に応じた方法に従って製造することが可能であり、典型的には、上記の必須配合成分と必要な選択的成分を、水等の溶剤に溶解させることにより製造され、その製品形態としては、透明ヘアシャンプー、透明リンスインシャンプー等が挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%を示す。
【0028】
<評価方法>
下記表1〜5に示す処方の毛髪洗浄料組成物(試料)を、処方成分をイオン交換水に溶解混合することにより調製し、下記の手法により評価した。
【0029】
<使用性評価>
調製した各試料を専門パネル10名に実際に使用してもらい、使用時の泡立ちの豊かさ、泡質の細やかさ(クリーミーさ)、すすぎ時の滑らかさ(指通りの良さ)、使用後の毛髪のごわつきの無さについて、下記の基準に従って採点させた。次いで、各試料につき平均点を算出し、下記の4段階で評価した。
(採点基準)
5点:良い
4点:やや良い
3点:普通
2点:やや悪い
1点:悪い
(評価)
◎:平均点が4.5点以上
○:平均点が3.5点以上4.5点未満
△:平均点が2.5以上3.5点未満
×:平均点が2.5点未満
【0030】
<低温安定性評価>
調製した各試料を、15℃で1ヶ月間保存した後に外観観察を行い、透明性について評価を行った。評価は次の基準により判定した。
(評価)
◎:透明であった
○:僅かな濁りが認められるが、ほぼ透明であった
△:やや濁りが観察された
×:白濁した
【0031】
1.イソステアリルアルコール(a成分)の配合量及びa成分に対するラウリン酸ジエチレングリコール(b成分)の質量比の検討
表1に示す処方の試料を調製し、a成分の配合量、並びにa成分に対するb成分の質量比[(b)/(a)]について検討した。結果を表1に併せて示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示すとおり、ラウリン酸ジエチレングリコール(b成分)を含有しても、イソステアリルアルコール(a成分)及びカチオン化グアーガム(c成分)を含まない場合には、すすぎ時の滑らかさとごわつきの評価が悪く、泡質も満足できるものではなかった(試料1)。また、これにc成分を追加配合することで、これらの評価が多少改善されるものの、依然として満足できるレベルには至らなかった(試料2)。これに対し、a〜c成分の全てを含み、なおかつ、a成分に対するb成分の質量比[(b)/(a)]が2〜10の範囲を満たす場合には、全ての評価項目において優れた評価結果を示した(試料4〜6)。しかし、a成分に対するb成分の質量比が前記範囲外になると、これらの評価項目について優れた結果が得られないことが確認された(試料3、7〜10)。
【0034】
2.カチオン変性ガラクトマンナン(c成分)の配合量検討
表2に示す処方の試料を調製し、c成分の配合量について検討した。結果を表2に併せて示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示すとおり、カチオン変性ガラクトマンナン(c成分)のひとつであるカチオン化グアーガムを、試料の全量に対して、0.3〜1質量%の範囲で含有する場合には全ての評価項目において優れた評価結果を示した(試料13〜15)。しかし、c成分の配合量が前記範囲外の場合には、すすぎ時の滑らかさやごわつきの悪化が目立った(試料11、12、16)。
【0037】
3.カチオン変性ガラクトマンナン(c成分)と他のカチオンポリマーとの対比
表3に示す処方の試料を調製し、カチオン変性ガラクトマンナン(c成分)とカチオンポリマーとの配合効果を比較した。結果を表3に併せて示す。
【0038】
【表3】
【0039】
表3に示すとおり、カチオン変性ガラクトマンナン(c成分)であるカチオン化グアーガム又はカチオン化ローカストビーンガムを配合した場合には、ガラクトマンナン骨格を有しないカチオンポリマーであるカチオン化セルロースやポリクオタニウム−7を配合した場合と比べて、全ての評価項目において高い評価が得られた。
【0040】
4.イソステアリルアルコール(a成分)と他の高級アルコールとの対比
表4に示す処方の試料を調製し、イソステアリルアルコール(a成分)と高級アルコールとの配合効果を比較した。結果を表4に併せて示す。
【0041】
【表4】
【0042】
表4に示すとおり、イソステアリルアルコール(a成分)を配合した場合には、低温(15℃)環境下で1ヶ月保管しても透明性を維持することができたが、他の高級アルコールであるセタノールやステアリルアルコールを配合した場合には、低温安定性が悪く、白濁が確認された。
【0043】
5.ラウリン酸ジエチレングリコール(b成分)と他のラウリン酸グリコールエステルとの対比
表5に示す処方の試料を調製し、ラウリン酸ジエチレングリコール(b成分)とラウリン酸グリコールエステルとの配合効果を比較した。結果を表5に併せて示す。
【0044】
【表5】
【0045】
表5に示すとおり、ラウリン酸ジエチレングリコール(b成分)に代えて、ラウリン酸プロピレングリコールを配合すると、泡立ちや泡質が悪くなることが確認された。