(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれ異なる延出方向長さの曲がり部が複数あって、前記積層体に近づくにしたがって配置された前記曲がり部の延出方向長さが長くなっていることを特徴とする請求項2に記載の積層型圧電素子。
噴射孔を有する容器と、請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに記載の積層型圧電素子とを備え、前記容器内に蓄えられた流体が前記積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から吐出されることを特徴とする噴射装置。
高圧燃料を蓄えるコモンレールと、該コモンレールに蓄えられた前記高圧燃料を噴射する請求項5に記載の噴射装置と、前記コモンレールに前記高圧燃料を供給する圧力ポンプと、前記噴射装置に駆動信号を与える噴射制御ユニットとを備えたことを特徴とする燃料噴射システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層型圧電素子は、
図7(a)に示すように積層体83が伸びる時に積層体83側面の中央付近が凹んだ形状になり、積層体83が元に戻る時に積層体83側面がフラットになる。それに伴い、外部電極板84の非接合領域842は、積層体83の積層方向に対して垂直な方向に揺さぶられる。これにより、外部電極板84と積層体83との接合端に応力が加わる。そこで、
図7(b)に示すように、外部電極板84の非接合領域842に複数の曲がり部840を設けることで、外部電極板84と積層体83との接合端に加わる応力を低減させることが考えられる。なお、
図7(b)に示す構成は、外部電極板84の非接合領域842に同じ形状の複数の曲がり部840を有する構成になっている。
【0005】
一方で、市場要求として積層型圧電素子の駆動パルスの間隔を短くすることが望まれているが、
図7(b)に示す構成では、パルス間隔が短いと非接合領域842がばねの反動のように共振し、外部電極板と積層体との接合端に繰返し応力が加わる虞がある。その結果、外部電極板84が剥れ、積層型圧電素子の変位量が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、外部電極の剥れによる変位量低下を抑制した積層型圧電素子およびこれを備えた噴射装置ならびに燃料噴射システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の積層型圧電素子は、圧電体層と内部電極層とが積層されてなる積層体と、該積層体の側面に接合された接合領域および該接合領域から延出された非接合領域を有する外部電極板とを含み、前記非接合領域には複数の曲がり部が設けられていて、該複数の曲がり部のうちの少なくとも一つの曲がり部が他の曲がり部とは異なる延出方向長さになって
おり、前記外部電極板が前記積層体を挟んで一対あって、該一対の外部電極板の非接合領域には前記積層体の積層方向の軸に対して対称な位置に前記他の曲がり部とは異なる延出方向長さの曲がり部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の積層型圧電素子は、上記の構成において、前記他の曲がり部よりも延出方向長さの長い曲がり部が前記積層体に最も近い側にあることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の積層型圧電素子は、上記の構成において、それぞれ異なる延出方向長さの曲がり部が複数あって、積層体に近づくにしたがって配置された曲がり部の延出方向長さが長くなっていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の積層型圧電素子は、
圧電体層と内部電極層とが積層されてなる積層体と、該積層体の側面に接合された接合領域および該接合領域から延出された非接合領域を有する外部電極板とを含み、前記非接合領域には複数の曲がり部が設けられていて、該複数の曲がり部のうちの少なくとも一つの曲がり部が他の曲がり部とは異なる延出方向長さになっており、前記他の曲がり部よりも延出方向長さの長い曲がり部が前記積層体に最も近い側にあるとともに、それぞれ異なる延出方向長さの曲がり部が複数あって、前記積層体に近づくにしたがって配置された前記曲がり部の延出方向長さが長くなっていることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、噴射孔を有する容器と、上記の積層型圧電素子とを備え、前記容器内に蓄えられた流体が前記積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から吐出されることを特徴とする噴射装置である。
【0012】
また本発明は、高圧燃料を蓄えるコモンレールと、該コモンレールに蓄えられた前記高圧燃料を噴射する上記の噴射装置と、前記コモンレールに前記高圧燃料を供給する圧力ポンプと、前記噴射装置に駆動信号を与える噴射制御ユニットとを備えたことを特徴とする燃料噴射システムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の積層型圧電素子によれば、外部電極板の非接合領域に複数の曲がり部が設けられていることで、外部電極板と積層体との接合端に加わる応力を低減させることができる。さらに、個々の曲がり部の長さは共振ピークの周波数に影響することから、他と異なる長さの曲がり部があることで、積層型圧電素子の駆動パルスの間隔が短くても、共振ピークのシャープさがなまり、共振の振幅を小さくすることができ、接合端に繰返し加わる応力を低減させることができる。したがって、外部電極板が剥れず、変位量が低下せず、長期間の耐久性に優れた積層型圧電素子が得られる。
【0014】
また、本発明の噴射装置によれば、積層型圧電素子の外部電極板の剥れを抑制することができるので、流体の所望の噴射を長期にわたって安定して行なうことができる。
【0015】
また、本発明の燃料噴射システムによれば、高圧燃料の所望の噴射を長期にわたって安定して行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の積層型圧電素子の実施の形態の一例について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の積層型圧電素子の実施の形態の一例を示す断面図である。
図1に示す積層型圧電素子1は、圧電体層2と内部電極層3とが積層されてなる積層体4と、積層体
4の側面に接合された接合領域51および接合領域51から延出された非接合領域52を有する外部電極板5とを含み、非接合領域52には複数の曲がり部52a、52b、52cが設けられていて、複数の曲がり部52a、52b、52cのうちの少なくとも一つの曲がり部52cが他の曲がり部52a、52bとは異なる延出方向長さになっている。
【0019】
積層型圧電素子1を構成する積層体4は、圧電体層2および内部電極層3が積層されてなるもので、例えば圧電体層2および内部電極層3が交互に複数積層されてなる活性部と、活性部の積層方向両端に設けられた圧電体層2からなる不活性部とを有し、例えば縦0.5〜10mm、横0.5〜10mm、高さ5〜100mmの直方体状に形成されている。
【0020】
積層体4を構成する圧電体層2は、圧電特性を有するセラミックスで形成されたもので、このようなセラミックスとして、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO
3−PbTiO
3)からなるペロブスカイト型酸化物、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)などを用いることができる。この圧電体層2の厚みは、例えば3〜250μmとされる。
【0021】
積層体4を構成する内部電極層3は、圧電体層2を形成するセラミックスと同時焼成により形成されたもので、圧電体層2と交互に積層されて圧電体層2を上下から挟んでおり、積層順に正極および負極が配置されることにより、それらの間に挟まれた圧電体層2に駆動電圧を印加するものである。この形成材料として、例えば圧電セラミックスとの反応性が低い銀−パラジウム合金を主成分とする導体、あるいは銅、白金などを含む導体を用いることができる。
図1に示す例では、正極および負極(もしくはグランド極)がそれぞれ積層体4の対向する一対の側面に互い違いに導出されて、積層体4の側面に設けられた一対の導体層6と電気的に接続されている。この内部電極層3の厚みは、例えば0.1〜5μmとされる。
【0022】
積層体4の側面には、内部電極層3と電気的に接続された一対の導体層6が設けられている。この一対の導体層6は、例えば銀とガラスからなるペーストを塗布して焼き付けて形成されたもので、積層体4の側面に接合されて、積層体4の対向する側面に互い違いに導出された内部電極層3とそれぞれ電気的に接続されている。導体層6の厚みは、例えば5〜500μmとされる。
【0023】
導体層6の表面上には、導電性接合材7を介して外部電極板5が取り付けられている。
【0024】
ここで用いられる導電性接合材7としては、例えばAg粉末やCu粉末など導電性の良好な金属粉末を含んだエポキシ樹脂やポリイミド樹脂からなる導電性接着剤からなるのが好ましい。この導電性接合材7は、例えば5〜500μmの厚さに形成される。
【0025】
また、外部電極板5は、積層体4の側面に接合された接合領域51および接合領域51から積層方向に延出された非接合領域52を有している。外部電極板5は、銅、鉄、ステンレス、リン青銅等の金属平板からなり、例えば幅0.5〜10mm、厚み0.01〜1.0mmに形成されたものである。積層体4の伸縮により生じる応力を緩和する効果の高い形状として、例えば接合領域51に幅方向にスリットの入った形状や、接合領域51が網目状に加工された形状になっていてもよい。
【0026】
なお、本発明においては、
図2に示すように、導体層6が設けられずに、内部電極層3が直接導電性接合材7を介して外部電極板5と電気的に接続された構成であってもよい。
【0027】
そして、外部電極板5の非接合領域52には複数の曲がり部52a、52b、52cが
設けられていて、複数の曲がり部52a、52b、52cのうちの少なくとも一つの曲がり部が他の曲がり部とは異なる延出方向長さになっている。
図1では、曲がり部52cが他の曲がり部52a、52bよりも長くなっている。例えば、曲がり部52aの延出方向長さL1および曲がり部52bの延出方向長さL2が0.9〜1.1mmである場合に、曲がり部52cの延出方向長さL3とL1およびL2との差が100μm〜1mmであるのが効果的である。なお、他の曲がり部とは異なる延出方向長さとしては、長くなっていても短くなっていてもよいが、長くなっているほうが外部電極板5の非対称性から起こるひねりを吸収する為、接合端に応力が加わらない点で好ましい。
【0028】
この構成によれば、外部電極板5の非接合領域52に複数の曲がり部52a、52b、52cが設けられていることで、外部電極板5と積層体4との接合端50に加わる応力を低減させることができる。
【0029】
さらに、個々の曲がり部52a、52b、52cの長さL1、L2、L3は共振ピークの周波数に影響することから、他と異なる長さの曲がり部(曲がり部52c)があることで、積層型圧電素子1の駆動パルスの間隔が短くても、共振ピークのシャープさがなまり、共振の振幅を小さくすることができ、接合端50に繰返し加わる応力を低減させることができる。したがって、外部電極板5が剥れず、変位量が低下せず、長期間の耐久性に優れた積層型圧電素子1が得られる。
【0030】
なお、本発明においては、
図1に示す形態のように曲がり部が3つある構成に限らず、曲がり部が4つ以上ある構成であってもよい。また、
図1に示す形態のように曲がり部が外部電極板5の接合領域51と同一な平面上より外側に向かって突出するように折り曲げられた外側凸形状のもののみからなる構成だけでなく、外部電極板5の接合領域51と同一な平面上より内側に向かって突出するように折り曲げられた内側凸形状のもののみからなる構成や、外側凸形状と内側凸形状との組合せからなる構成であってもよい。
【0031】
ここで、
図3に示すように、他の曲がり部よりも延出方向長さの長い曲がり部が積層体4に最も近い側にあることが好ましい。なお、
図3では曲がり部52aの延出方向長さL1が他の曲がり部52b、曲がり部52cの延出方向長さL2、L3よりも長くなっている。
【0032】
積層体4に最も近い側にある曲がり部52aの延出方向長さL1が曲がり部52bの延出方向長さL2や曲がり部52cの延出方向長さL3よりも長いことで、外部電極板5の接合端50に近い領域の曲げに対する剛性は低くなる。また、共振に含まれるひねりも吸収する為、外部電極板5の接合領域51でひねりによる応力が低減される。したがって、接合端50に繰返し加わる応力をより低減させることができる。
【0033】
また、
図4に示すように、それぞれ異なる延出方向の長さの曲がり部が複数あって、積層体4に近づくにしたがって配置された曲がり部の延出方向長さが長くなっているのが好ましい。なお、
図4では曲がり部52cの延出方向長さL3よりも曲がり部52bの延出方向長さL2のほうが長く、曲がり部52bの延出方向長さL2よりも曲がり部52aの延出方向長さL1のほうが長くなっている。これにより、曲がり部の中で局所的に極端に共振の振幅が変化する箇所がなくなり、局所的に応力が加わる曲がり部がなくなることで、曲がり部が変形しにくく、曲がり部の変形による外部電極板5と接合端50のせん断応力が小さくなり、外部電極板6が剥れず、積層型圧電素子1の変位量が下がらない。この場合の隣り合う曲がり部の長さの差は、100μm〜500μmであるのがよい。
【0034】
また、
図1乃至
図4に示すように、外部電極板5が積層体4を挟んで一対あって、一対の外部電極板5の非接合領域52には積層体4の積層方向の軸に対して対称な位置に他の
曲がり部とは異なる延出方向長さの曲がり部が設けられているのが好ましい。これにより、一対の外部電極板5のそれぞれの非接合領域52において、共振ピークのシャープさがなまり、共振の振幅を小さくすることができるとともに、一対の外部電極板5間での歪みを抑制し、さらに外部電極板5の剥がれを抑制することができる。
【0035】
次に、本実施の形態の積層型圧電素子1の製造方法について説明する。
【0036】
まず、圧電体層2となるセラミックグリーンシートを作製する。具体的には、圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系,ブチラール系等の有機高分子からなるバインダーと、可塑剤とを混合してセラミックスラリーを作製する。そして、ドクターブレード法、カレンダーロール法等のテープ成型法を用いることにより、このセラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを作製する。圧電セラミックスとしては圧電特性を有するものであればよく、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO
3−PbTiO
3)からなるペロブスカイト型酸化物等を用いることができる。また、可塑剤としては、フタル酸ジブチル(DBP),フタル酸ジオクチル(DOP)等を用いることができる。
【0037】
次に、内部電極層3となる導電性ペーストを作製する。具体的には、銀−パラジウム合金の金属粉末にバインダーおよび可塑剤を添加混合することによって導電性ペーストを作製する。この導電性ペーストを上記のセラミックグリーンシート上に、スクリーン印刷法を用いて内部電極層3のパターンで塗布する。さらに、この導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを複数枚積層し、所定の温度で脱バインダー処理を行なった後、900〜1200℃の温度で焼成し、平面研削盤等を用いて所定の形状になるよう研削処理を施すことによって、交互に積層された圧電体層2および内部電極層3を備えた積層体4を作製する。
【0038】
なお、積層体4は、上記の製造方法によって作製されるものに限定されるものではなく、圧電体層2と内部電極層3とを複数積層してなる積層体4を作製できれば、どのような製造方法によって作製されてもよい。
【0039】
その後、必要により、銀を主成分とする導電性粒子とガラスとを混合したものに、バインダー,可塑剤および溶剤を加えて作製した銀ガラス含有導電性ペーストを、導体層6のパターンで積層体4の側面にスクリーン印刷法等によって印刷後、乾燥させた後、650〜750℃の温度で焼き付け処理を行ない、導体層6を形成する。
【0040】
次に、導電性接合材7を介して外部電極板5を導体層6の表面に接続し固定する。
【0041】
導電性接合材7は、Ag粉末やCu粉末などの導電性の良好な金属粉末を含んだエポキシ樹脂やポリイミド樹脂からなる接着剤、半田などを用い、スクリーン印刷やディスペンス方式により所定の厚みや幅に制御して形成することができる。
【0042】
外部電極板5は、銅、鉄、ステンレス、リン青銅等の金属平板からなり、例えば幅0.5〜10mm、厚み0.01〜1.0mmに形成されたものである。ここで、曲がり部52a、52b、52cは外部電極板5の先端部に設けられていて、この曲がり部52a、52b、52cは、例えば打ち抜き金型で外部電極板5を打ち抜くと同時に曲がり部52a、曲がり部52b、曲がり部52cの形状の独立した曲げ金型で形成することができる。
【0043】
その後、一対の導体層6にそれぞれ接続した外部電極板5に0.1〜3kV/mmの直流電界を印加し、積層体4を構成する圧電体層2を分極することによって、積層型圧電素子1が完成する。この積層型圧電素子1は、外部電極板5を介して導体層6と外部の電源
とを接続して、圧電体層2に電圧を印加することにより、各圧電体層2を逆圧電効果によって大きく変位させることができる。これにより、例えばエンジンに燃料を噴射供給する自動車用燃料噴射弁として機能させることが可能となる。
【0044】
次に、本発明の噴射装置の実施の形態の例について説明する。
図5は、本発明の噴射装置の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【0045】
図5に示すように、本実施の形態の噴射装置19は、一端に噴射孔21を有する収納容器(容器)23の内部に上記の本実施の形態の積層型圧電素子1が収納されている。
【0046】
収納容器23内には、噴射孔21を開閉することができるニードルバルブ25が配設されている。噴射孔21には流体通路27がニードルバルブ25の動きに応じて連通可能になるように配設されている。この流体通路27は外部の流体供給源に連結され、流体通路27に常時高圧で流体が供給されている。従って、ニードルバルブ25が噴射孔21を開放すると、流体通路27に供給されていた流体が外部または隣接する容器、例えば内燃機関の燃料室(不図示)に、噴射孔21から吐出されるように構成されている。
【0047】
また、ニードルバルブ25の上端部は径が大きくなっており、収納容器23に形成されたシリンダ29と摺動可能なピストン31になっている。そして、収納容器23内には、上述した例の積層型圧電素子1がピストン31に接して収納されている。
【0048】
このような噴射装置19では、積層型圧電素子1が電圧を印加されて伸長すると、ピストン31が押圧され、ニードルバルブ25が噴射孔21に通じる流体通路27を閉塞し、流体の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると積層型圧電素子1が収縮し、皿バネ33がピストン31を押し返し、流体通路27が開放され噴射孔21が流体通路27と連通して、噴射孔21から流体の噴射が行なわれるようになっている。
【0049】
なお、積層型圧電素子1に電圧を印加することによって流体通路27を開放し、電圧の印加を停止することによって流体通路27を閉鎖するように構成してもよい。
【0050】
また、本実施の形態の噴射装置19は、噴射孔を有する容器23と、本実施の形態の積層型圧電素子1とを備え、容器23内に充填された流体を積層型圧電素子1の駆動により噴射孔21から吐出させるように構成されていてもよい。すなわち、積層型圧電素子1が必ずしも容器23の内部にある必要はなく、積層型圧電素子1の駆動によって容器23の内部に流体の噴射を制御するための圧力が加わるように構成されていればよい。なお、本実施の形態の噴射装置19において、流体とは、燃料,インク等の他、導電性ペースト等の種々の液体および気体が含まれる。本実施の形態の噴射装置19を用いることによって、流体の流量および噴出タイミングを長期にわたって安定して制御することができる。
【0051】
本実施の形態の積層型圧電素子1を採用した本実施の形態の噴射装置19を内燃機関に用いれば、従来の噴射装置に比べてエンジン等の内燃機関の燃焼室に燃料をより長い期間にわたって精度よく噴射させることができる。
【0052】
次に、本発明の燃料噴射システムの実施の形態の例について説明する。
図6は、本発明の燃料噴射システムの実施の形態の一例を示す概略図である。
【0053】
図6に示すように、本実施の形態の燃料噴射システム35は、高圧流体としての高圧燃料を蓄えるコモンレール37と、このコモンレール37に蓄えられた高圧流体を噴射する複数の本実施の形態の噴射装置19と、コモンレール37に高圧流体を供給する圧力ポンプ39と、噴射装置19に駆動信号を与える噴射制御ユニット41とを備えている。
【0054】
噴射制御ユニット41は、外部情報または外部からの信号に基づいて高圧流体の噴射の量およびタイミングを制御する。例えば、エンジンの燃料噴射に噴射制御ユニット41を用いた場合であれば、エンジンの燃焼室内の状況をセンサ等で感知しながら燃料噴射の量およびタイミングを制御することができる。圧力ポンプ39は、燃料タンク43から流体燃料を高圧でコモンレール37に供給する役割を果たす。例えばエンジンの燃料噴射システム35の場合には例えば1000〜2000気圧(約101MPa〜約203MPa)、好ましくは例えば1500〜1700気圧(約152MPa〜約172MPa)の高圧にしてコモンレール37に流体燃料を送り込む。コモンレール37では、圧力ポンプ39から送られてきた高圧燃料を蓄え、噴射装置19に適宜送り込む。噴射装置19は、前述したように噴射孔21から一定の流体を外部または隣接する容器に噴射する。例えば、燃料を噴射供給する対象がエンジンの場合には、高圧燃料を噴射孔21からエンジンの燃焼室内に霧状に噴射する。
【0055】
なお、本発明は、上記の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行なうことは何ら差し支えない。例えば、積層体4の積層方向に直交する方向における断面の形状は、上記の実施の形態の例である四角形状以外に、六角形状や八角形状等の多角形状、円形状、あるいは直線と円弧とを組み合わせた形状であっても構わない。
【0056】
本実施の形態の積層型圧電素子1は、例えば、圧電駆動素子(圧電アクチュエータ),圧力センサ素子および圧電回路素子等に用いられる。駆動素子としては、例えば、自動車エンジンの燃料噴射装置,インクジェットのような液体噴射装置,光学装置のような精密位置決め装置,振動防止装置が挙げられる。センサ素子としては、例えば、燃焼圧センサ,ノックセンサ,加速度センサ,荷重センサ,超音波センサ,感圧センサおよびヨーレートセンサが挙げられる。また、回路素子としては、例えば、圧電ジャイロ,圧電スイッチ,圧電トランスおよび圧電ブレーカーが挙げられる。
【実施例】
【0057】
本発明の実施例について説明する。
【0058】
本発明の積層型圧電素子を備えた圧電アクチュエータを以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO
3−PbTiO
3)を主成分とする圧電セラミックスの仮焼粉末、バインダーおよび可塑剤を混合したセラミックスラリーを作製した。このセラミックスラリーを用いてドクターブレード法により厚み50μmの圧電体層となるセラミックグリーンシートを作製した。
【0059】
次に、銀−パラジウム合金にバインダーを加えて、内部電極層となる導電性ペーストを作製した。
【0060】
次に、セラミックグリーンシートの片面に、内部電極層となる導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷し、導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを200枚積層した。また、内部電極層となる導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシート200枚を中心にして、その上下に、内部電極層となる導電性ペーストが印刷されていないセラミックグリーンシート合計15枚を積層した。そして、980〜1100℃で焼成し、平面研削盤を用いて所定の形状に研削して端面が5mm角の積層体を得た。
【0061】
次に、積層体の側面の導体層の形成部に、銀とガラスにバインダーを混合した導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷し、700℃で焼き付け処理を行なって、導体層を形成した。
【0062】
次に、導体層の表面に、Ag粉末とポリイミド樹脂を混合ペースト状にした導電性接合材をディスペンサーにて塗布し、外部電極板を積層体の表面と平行に接続し固定した。
【0063】
そして、試料1として、
図1に示す断面形状を有する外部電極板を用いて積層型圧電素子を作製した。具体的には、外部電極板の厚みは100μm、幅は1.2mmであって、非接合領域における曲がり部の延出方向長さL1、L2、L3をそれぞれ1.0mm、1.0mm、1.1mmとした。
【0064】
また、試料2は、
図3に示す断面形状を有する外部電極板を用いて積層型圧電素子を作製した。具体的には、外部電極板の厚みは100μm、幅は1.2mmであって、非接合領域における曲がり部の延出方向長さL1、L2、L3をそれぞれ1.1mm、1.0mm、1.0mmとした。
【0065】
また、試料3は、
図4に示す断面形状を有する外部電極板を用いて積層型圧電素子を作製した。具体的には、外部電極板の厚みは100μm、幅は1.2mmであって、非接合領域における曲がり部の延出方向長さL1、L2、L3をそれぞれ1.1mm、1.0mm、0.95mmとした。
【0066】
また、比較例として、
図7(b)に示す断面を有する外部電極を用いた積層型圧電素子(試料4)も作製した。具体的には、外部電極板の厚みは100μm、幅は1.2mmであって、非接合領域における曲がり部の延出方向長さL1、L2、L3をそれぞれ1.0mm、1.0mm、1.0mmとした。
【0067】
これらの積層型圧電素子について、外部電極板に溶接で接合されたリード部材を介して外部電極に3kV/mmの直流電界を15分間印加して、分極処理を行なった。これらの積層型圧電素子に160Vの直流電圧を印加したところ、積層体の積層方向に30μmの変位量が得られた。
【0068】
その後、各試料を同時に駆動させ、外部電極の非接合領域の振動が起きる周波数で、振動の様子を比較確認した。
【0069】
その結果は、室温で0V〜+160Vの交流電圧で周波数を徐々に上げていくと、ある周波数で試料4は外部電極板の非接合領域が撓み振動し始め、試料1〜3はそれぞれ異なる周波数で外部電極板の非接合領域が撓み振動し始めた。試料1〜3の振動の様子は、試料4に対して、歪んでいるものの、撓み振動の振幅は小さかった。
【0070】
また、試料1〜3の中でも、試料2,3での撓み振動は、外部電極板と積層体との接合端側の振動が試料1での撓み振動と比べ、その振幅が小さかった。さらに、試料3での撓み振動は、試料1,2での撓み振動に比べ、共振の振幅が変化する箇所およびその変化量が小さかった。
【0071】
振幅の大きさが大きいほど、外部電極板と積層体との接合端に掛かる負荷は大きい為、試料4が長期振動後、外部電極板と積層体との接合部に亀裂が入り、積層型圧電素子の変位量が小さくなることは容易に想定できる。
【0072】
以上の結果から、本発明によれば、長期間の耐久性に優れた積層型圧電素子を実現することができることがわかる。