(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017938
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】溶接構造物の疲労損傷抑制方法および打撃痕形成用工具
(51)【国際特許分類】
B23K 31/00 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
B23K31/00 F
B23K31/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-261044(P2012-261044)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2013-136090(P2013-136090A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2015年7月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-260544(P2011-260544)
(32)【優先日】2011年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】森影 康
(72)【発明者】
【氏名】伊木 聡
(72)【発明者】
【氏名】鞆 一
【審査官】
奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−131260(JP,A)
【文献】
特開2011−167693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接構造物の溶接部に疲労損傷が発生するのを抑制する方法であって、
前記溶接部の溶接ビードと隣接する母材表面に打撃痕をハンマーピーニングまたは超音波衝撃ピーニングによって形成する打撃痕形成用工具として、前記溶接ビードを直角に横切る方向に沿う幅と前記溶接ビードに沿う長さが3mm以上6mm以下、かつ全体形状が円形に形成された平面状の打撃痕形成面を先端に有するとともに、前記打撃痕形成面の周囲に0.15mm以上0.30mm以下の曲率半径で円弧状に湾曲する面取り部を有する打撃痕形成用工具を用い、
該打撃痕形成用工具により最大深さが0.03mm以上0.50mm未満の打撃痕を前記溶接ビードに沿って連続的に形成して前記溶接部の疲労損傷を抑制することを特徴とする溶接構造物の疲労損傷抑制方法。
【請求項2】
前記打撃痕形成用工具として、前記打撃痕形成面に向けて円錐状に形成された打撃痕形成用工具を用いて前記溶接部の疲労損傷を抑制することを特徴とする請求項1に記載の溶接構造物の疲労損傷抑制方法。
【請求項3】
前記溶接ビードの止端と前記打撃痕との間隔が5mm以下となるように前記打撃痕形成用工具により最大深さが0.03mm以上0.50mm未満の打撃痕を前記溶接ビードに沿って連続的に形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接構造物の疲労損傷抑制方法。
【請求項4】
溶接構造物の溶接ビードと隣接する母材表面に打撃痕をハンマーピーニングまたは超音波衝撃ピーニングによって形成するときに用いられる打撃痕形成用工具であって、
前記溶接ビードを直角に横切る方向に沿う幅と前記溶接ビードに沿う長さが3mm以上6mm以下、かつ全体形状が円形に形成された平面状の打撃痕形成面を先端に有するとともに、前記打撃痕形成面の周囲に0.15mm以上0.30mm以下の曲率半径で円弧状に湾曲する面取り部を有することを特徴とする打撃痕形成用工具。
【請求項5】
前記打撃痕形成面に向けて円錐状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の打撃痕形成用工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼橋などの溶接構造物の溶接部に疲労き裂などの疲労損傷が発生するのを抑制する方法と打撃痕形成用工具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鋼橋の老朽化に伴い腐食や疲労に伴う損傷事例の報告が増加している。これらの防止には、まず検査体制を確立することが必要であるが、特に疲労損傷の場合は、通過車両などの作用外力を軽減したり、設計製作の面から溶接品質を向上させたりすることが重要である。
鋼橋などの溶接構造物では、割れなどの欠陥が溶接部に生じたり、溶接ビードの形状が不適で応力集中が溶接ビードの止端部に発生したりすると、繰り返し応力による影響と溶接残留応力の影響が重畳して疲労き裂が溶接部に発生しやすくなり、疲労破壊をもたらす場合がある。
【0003】
このような疲労破壊を抑制するため、特許文献1〜3には、溶接ビードの止端部に圧縮残留応力を導入して溶接部の疲労強度を向上させる方法が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法は、溶接ビードの止端部に圧縮残留応力を導入する手段として、チップを超音波振動させて溶接ビードの止端部に特定寸法の溝を加工する装置を用いるため、従来の空気圧でチップを駆動する装置と比較すると高価で入手も困難という問題点がある。
【0004】
また、特許文献2に記載の方法は、溶接ビードの止端部に圧縮残留応力をレーザ衝撃ピーニングにより導入する方法であるため、素材の前処理が必要で、且つ装置が高価で大きく、鋼橋などの大形溶接構造物に適用することが難しいという問題点がある。
特許文献3に記載の方法は、溶接ビードの止端部に圧縮残留応力をハンマーピーニングにより導入する方法であるが、先端の曲率半径が2〜10mmの打撃ピンを母材表面に溶接金属に触れないように押し当てて圧縮残留応力を導入する方法であるため、圧縮残留応力を導入することが難しいという問題点がある。
【0005】
なお、非特許文献1には、ハンマーピーニングを施すと疲労強度が低下する場合があるため、溶接止端の応力集中や残留応力を低減させる新たなハンマーピーニング法について検討した結果が記載されているが、ハンマーピーニングは、通常、作業者がピーニング工具を工具先端が溶接ビードの止端部に斜め上方から当たるように持って行われる。このため、
図2に示すように、母材1の表面上にリブ2が直立した状態で溶接された面外ガセット継手にハンマーピーニングを施した場合、溶接ビード3の止端4に応力集中となる深い溝が形成され、溶接ビード3の止端4の近傍から疲労き裂が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−175512号公報
【特許文献2】特開2006−159290号公報
【特許文献3】特開2010−29897号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】IMPROVING FATIGUE STRENGTH OF WELD JOINTS BY HAMMER PEENING TIG−DRESING:Kengo ANAMI、Chitoshi MIKI、Hideki TANI、Haruhito YAMAMOTO,Structual Eng./Earthquake Eng.、JSCE、VoL.7、No.1、57s−68s、2000 April
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、鋼橋などの溶接構造物の溶接部に疲労き裂などの疲労損傷が発生することを確実に抑制することのできる溶接構造物の疲労損傷抑制方法と打撃痕形成用工具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、溶接構造物の溶接部に疲労損傷が発生するのを抑制する方法であって、前記溶接部の溶接ビードと隣接する母材表面に打撃痕をハンマーピーニングまたは超音波衝撃ピーニングによって形成する打撃痕形成用工具として、前記溶接ビードを直角に横切る方向に沿う幅と前記溶接ビードに沿う長さが3mm以上6mm以下、かつ全体形状が円形に形成された平面状の打撃痕形成面を先端に有する
とともに、前記打撃痕形成面の周囲に0.15mm以上0.30mm以下の曲率半径で円弧状に湾曲する面取り部を有する打撃痕形成用工具を用い、該打撃痕形成用工具により最大深さが0.03mm以上0.50mm未満の打撃痕を前記溶接ビードに沿って連続的に形成して前記溶接部の疲労損傷を抑制することを特徴とする。
なお、円形で形成された打撃痕形成面の円形の定義として、長径/短径の比が、1〜1.1であれば、略円形として使用できる。長径の向きは、溶接線に対して特に規定しない。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の溶接構造物の疲労損傷抑制方法において、前記打撃痕形成用工具として、前記打撃痕形成面に向けて円錐状に形成された打撃痕形成用工具を用いて前
記溶接部の疲労損傷を抑制することを特徴とする。
請求項
3の発明は、請求項
1又は2に記載の溶接構造物の疲労損傷抑制方法において、前記溶接ビードの止端と前記打撃痕との間隔が5mm以下となるように前記打撃痕形成用工具により最大深さが0.03mm以上0.50mm未満の打撃痕を前記溶接ビードに沿って連続的に形成することを特徴とする。
【0011】
請求項
4の発明は、溶接構造物の溶接ビードと隣接する母材表面に打撃痕をハンマーピーニングまたは超音波衝撃ピーニングによって形成するときに用いられる打撃痕形成用工具であって、前記溶接ビードを直角に横切る方向に沿う幅と前記溶接ビードに沿う長さが3mm以上6mm以下、かつ全体形状が円形に形成された平面状の打撃痕形成面を先端に有する
とともに、前記打撃痕形成面の周囲に0.15mm以上0.30mm以下の曲率半径で円弧状に湾曲する面取り部を有することを特徴とする。
請求項
5の発明は、請求項
4に記載の打撃痕形成用工具において、前記打撃痕形成面に向けて円錐状に形成されていることを特徴とする
。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶接ビードの止端近傍に300MPaを越える圧縮残留応力を導入することが可能となるので、鋼橋などの溶接構造物の溶接部に疲労き裂などの疲労損傷が発生することを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を実施するときに用いられる打撃痕形成用工具の一例を示し、(a)は打撃痕形成用工具の斜視図、(b)は打撃痕形成用工具の側面図、(c)は打撃痕形成用工具の正面図、(d)は打撃痕形成用工具の打撃痕形成面を示す図である。
【
図2】
図1に示す打撃痕形成用工具により母材の表面に形成された打撃痕を示す図である。
【
図3】鋼板の表面上にリブが直立した状態で溶接された溶接部を示す図である。
【
図4】円形をなす球面状の打撃痕形成面が先端に形成された打撃痕形成用工具を示す図である。
【
図5】正方形をなす平面状の打撃痕形成面が先端に形成された打撃痕形成用工具を示す図である。
【
図6】打撃痕形成面の形状が矩形の打撃痕形成用工具を用いて母材表面に打撃痕を形成した場合と打撃痕形成面の形状が円形の打撃痕形成用工具を用いて母材表面に打撃痕を形成した場合とを比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜
図6は本発明に係る溶接構造物の疲労損傷抑制方法と打撃痕形成用工具を説明するための図であり、本発明を実施するときに用いられる打撃痕形成用工具6(
図1参照)は、SM570等の高強度鋼から形成されているとともに、溶接ビード3(
図2参照)と隣接する母材1の表面に打撃痕5を形成するための打撃痕形成面7を有している。この打撃痕形成面7は、溶接ビード3を直角に横切る方向(
図1のX方向)に沿う幅Bと溶接ビード3に沿う方向(
図1のY方向)の長さLが3.0mm以上6.0mm以下の寸法で打撃痕形成用工具6の先端に平面状に形成され、かつ全体形状が3.0mm以上6.0mm以下の直径Dで円形に形成されている。
【0015】
また、打撃痕形成用工具6は打撃痕形成面7に向けて円錐状に形成されているとともに、0.15mm以上0.30mm以下の曲率半径r
Oで円弧状に湾曲する面取り部8を打撃痕形成面7の周囲に有している。
このような打撃痕形成用工具6を用いて本発明を実施する場合は、打撃痕形成面7が溶接ビード3の止端4と隣接するように打撃痕形成用工具6の位置を調整した後、打撃痕形成用工具6の打撃痕形成面7を母材1の表面に押し当て、溶接ビード3と隣接する母材1の表面に最大深さが0.03mm以上0.50mm未満の打撃痕5を溶接ビード3の止端4と打撃痕5との間隔が5mm以下となるようにハンマー衝撃ピーニング法あるいは超音波衝撃ピーニング法により形成する。
【0016】
次に、打撃痕形成用工具6の打撃痕形成面7を母材1の表面から引き離した後、打撃痕形成用工具6を溶接ビード3に沿って所定距離だけ移動させる。そして、再び打撃痕形成用工具6の打撃痕形成面7を母材1の表面に押し当て、母材1の表面に複数の打撃痕5を溶接ビード3に沿って連続的に形成する。
ここで、打撃痕5の最大深さが0.03mm未満では止端4の近傍に十分な圧縮残留応力が導入されず、0.05mmを超えると負荷がかかった際に局部的に応力が集中し、疲労寿命低減の要因となるため、打撃痕5の最大深さを0.03mm以上0.50mm未満とした。
【0017】
また、止端4と打撃痕5との間隔が5mmを超えると、止端4の近傍へ十分な圧縮残留応力の導入ができなくなり、止端4の近傍は引張側の圧縮残留応力となるため、止端4と打撃痕5との間隔を5mm以下とした。
また、溶接ビード3を直角に横切る方向に沿う打撃痕形成面7の幅Bと溶接ビード3に沿う打撃痕形成面7の長さLを3.0mm以上6.0mm以下、つまり打撃痕形成面7の直径Dを3.0mm以上6.0mm以下とした理由は以下の理由からである。すなわち打撃痕形成面7の直径Dが3.0mm未満では、打撃痕5の深さや幅にばらつきが生じやすくなり、安定した形状の打撃痕5を得ることが困難となる。また、打撃痕形成面7の直径Dが6.0mmを超えると打撃痕形成面7の面積が大きくなり過ぎ、最大深さが0.03mm以上0.50mm未満の打撃痕5を母材1の表面に形成することが困難となるため、打撃痕形成面7の直径Dを3.0mm以上6.0mm以下とした。
【0018】
また、面取り部8の曲率半径r
Oを0.15mm以上0.30mm以下とした理由は以下の理由からである。すなわち面取り部8の曲率半径r
Oが0.15mm未満では、打撃痕5の周囲に応力集中が発生しやすくなり、疲労き裂の発生原因となる。また、面取り部8の曲率半径r
Oが0.30mmを超えると母材1の表面に接触する打撃痕形成面7の接触面積が大きくなり過ぎ、最大深さが0.03mm以上0.50mm未満の打撃痕5を母材1の表面に形成することが困難となるため、面取り部8の曲率半径r
Oを0.15mm以上0.30mm以下とした。
【実施例】
【0019】
本発明者らは、
図3に示す溶接継手を溶接電流:280A、溶接電圧:32V、溶接速度:28cpmの溶接条件にて試験片として作製し、作製した溶接継手を用いて圧縮残留応力の導入試験を表1に示す条件で行った。
【0020】
【表1】
【0021】
表1の実施例1〜4は、溶接ビード3と隣接する母材1の表面に最大深さが0.03mm以上0.50mm未満の打撃痕5を打撃痕形成面7の直径Dが3mm、4mm、5mm、6mmの打撃痕形成用工具6により溶接ビード3に沿って連続的に形成した場合を示している。
また、表1の実施例5〜8は、溶接ビード3と隣接する母材1の表面に最大深さが0.03mm以上0.50mm未満の打撃痕5を打撃痕形成面7の直径Dが3mm、4mm、5mm、6mm、面取り部8の曲率半径r
Oが0.15mm、0.20mm、0.30mmの打撃痕形成用工具6により溶接ビード3に沿って連続的に形成した形成した場合を示している。
【0022】
一方、表1の比較例1〜3は
図4に示す打撃痕形成用工具10の先端に円形(直径D:2mm、3mm、4mm)の打撃痕形成面11が球面状(曲率半径r:1.5mm、2mm、4mm)に形成されたものを用いて打撃痕5を溶接ビード3と隣接する母材1の表面に形成した場合を示し、比較例4、5は
図5に示す打撃痕形成用工具12の先端に正方形(1辺の長さL:3mm、5mm)の打撃痕形成面13が平面状に形成されたものを用いて打撃痕5を溶接ビード3と隣接する母材1の表面に形成した場合を示している。
なお、表1のRaは打撃痕5の最大深さ(mm)を示し、実施例1〜8及び比較例1〜5では打撃痕形成用工具によるハンマーピーニングを空気圧:約6kg/cm
2、周波数:90Hz、移動速度:0.25mm/秒の条件で行った。
【0023】
表1の残留応力は母材1の表面に形成された打撃痕5から1mm離れた位置に直径1mmのX線を照射して残留応力を測定した結果を示している。
実施例1〜8と比較例1〜5を比較すると、比較例1〜5では打撃痕5により溶接ビード3の止端4の近傍に導入される圧縮残留応力が230MPa〜270MPaであるのに対し、実施例1〜8では打撃痕5により溶接ビード3の止端4の近傍に導入される圧縮残留応力が300MPa〜330MPaとなることがわかる。
【0024】
したがって、実施例1〜8のように、溶接ビード3と隣接する母材表面に打撃痕5をハンマーピーニングまたは超音波衝撃ピーニングによって形成する打撃痕形成用工具として、溶接ビード3を直角に横切る方向に沿う幅と溶接ビード3に沿う長さが3mm以上6mm以下、かつ全体形状が円形に形成された平面状の打撃痕形成面7を先端に有する打撃痕形成用工具6を用い、この打撃痕形成用工具6により最大深さが0.03mm以上0.50mm未満の打撃痕5を溶接ビード3に沿って連続的に形成することで、溶接ビード3の止端4の近傍に300MPaを超える圧縮残留応力を導入することが可能となるので、鋼橋などの溶接構造物の溶接部に疲労き裂などの疲労損傷が発生することを確実に抑制することができる。
【0025】
また、実施例1〜8のように、打撃痕形成面7に向けて円錐状に形成された打撃痕形成用工具6を用いることで、最大深さが0.03mm以上0.50mm未満の打撃痕5を溶接ビード3と隣接する母材1の表面に比較的小さな打撃力で形成することができ、これにより、溶接ビード3の止端4の近傍に圧縮残留応力を容易に導入することができる。
さらに、実施例5〜8のように、打撃痕形成面7の周囲に0.15mm以上0.30mm以下の曲率半径で円弧状に湾曲する面取り部8を有する打撃痕形成用工具6を用いることで、打撃痕5の周囲に応力集中が発生することを防止することができる。
【0026】
なお、打撃痕形成面の形状が矩形(3×4mm)の打撃痕形成用工具を用いて母材表面に打撃痕を形成した場合は、
図6(b)に示すように、溶接止端の線と打撃痕の端線との間に隙間が発生した。これに対し、打撃痕形成面の形状が円形(直径:3.0mm)で平面状の打撃痕形成用工具を用いて母材表面に打撃痕を形成した場合は、
図6(a)に示すように、溶接止端の線と打撃痕の端線との間に隙間は見られず、溶接止端の線と打撃痕の端線との間に隙間を発生させることなく打撃痕を形成できることを確認できた。
【符号の説明】
【0027】
1…母材
2…リブ
3…溶接ビード
4…止端
5…打撃痕
6,10,12…打撃痕形成用工具
7,11,13…打撃痕形成面
8…面取り部