(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明に係る実施例について説明する。
【0015】
まず、
図12を用いて、本発明に係る乗客コンベアの形態について説明する。
図12は乗客コンベアの全体を幅方向から見た側面図を示している。
【0016】
本形態の乗客コンベアでは、建造物(建屋)の上階床c101aと下階床c101bとの間に跨って、枠体f101が設置されている。また、枠体f101はトラス構造の枠体である。トラス構造の枠体は、上側に位置して乗客コンベアの幅方向(
図1に矢印Wで示す方向)の両側に設けられた2本の上弦材が横材で連結され、下側に位置して乗客コンベアの幅方向両側に設けられた2本の下弦材が横材で連結され、上弦材と下弦材とが縦材及び斜め材で連結されて構成される。尚、トラス構造の枠体は、断面がL字形をした山型鋼を用いて構成されるのが一般的である。
【0017】
本発明を実施するにあたり、枠体構造はトラス構造に限定されるものではない。例えば、鋼板を折り曲げて製作した枠体部材を用いて構成してもよい。また、鋼板を折り曲げて製作した枠体部材をトラス構造に組み合わせて枠体を構成してもよい。このように、本発明は、枠体構造が特定の構造に限定されるものではない。
【0018】
枠体f101の長手方向(
図12の矢印Lの方向)の両端部は、建造物側の支承部に支持される。本形態の乗客コンベアでは、上階床c101a側は枠体支持部f102によって上階床c101a上に支持され、下階床c101b側は枠体支持部1によって下階床c101b上に支持されている。上階床c101a側は長手方向L及び幅方向Wの両方向とも、設置床面に対して固定されている。下階床c101b側は、幅方向Wについては設置床面に対して固定されているが、長手方向Lについては非固定である。従って、下階床c101b側は設置床面に対して長手方向Lに相対変位可能に構成されている。設置床面に対する固定側と非固定側とを、上階床c101a側と下階床c101b側とで、入れ替えてもよい。また、上階床c101a側と下階床c101b側との両側とも非固定にすることも可能である。このようにして、乗客コンベアは、枠体f101の端部に設けられた枠体支持部1、f102を建屋に載置して支持されている。
【0019】
建造物側の支承部c103には、設置床面に凹部が形成されている(
図1,2参照)。凹部の底面には金属製の板材である受台c102が固定されている。受台c102は、一般的には、ボルトで凹部底面に固定されるか、建造物の梁に溶接されて凹部底面に固定される。
【0020】
乗客コンベアには、無端状に連結された複数の踏み段f105が組み付けられている。踏み段f105は、図示しない駆動装置によって駆動され、枠体f101に沿って移動する。踏み段f105の両脇には、欄干f106が立設されている。欄干f106には、無端状に構成されたハンドレールf107が欄干f106の長手方向に掛け渡される。ハンドレールf107は、上階床c101aと下階床c101bとの間で、踏み段f105の移動に合わせて、欄干f106の上面に沿って移動するように駆動される。
【実施例1】
【0021】
以下、本実施例における枠体支持部1の構成を、
図1乃至3を用いて説明する。本実施例の説明にあたり、乗客コンベアの外側に移動制限部材を備えた比較例の構造を示す
図4,5を参照する。
【0022】
図1は、本実施例について、乗客コンベアの非固定側支持部の支持構造を示す上面図である。
図2は、本実施例について、乗客コンベアの非固定側支持部の支持構造を乗客コンベアの終端方向から見た側面図(
図1のII−II矢視断面図)である。
図3は、本実施例について、乗客コンベアの非固定側支持部の支持構造を乗客コンベアの幅方向から見た側面図(
図1のIII−III矢視断面図)である。
図4は、本実施例との比較例として示した乗客コンベアの上面図である。
図5は、本実施例との比較例として示した乗客コンベアの終端方向から見た側面図(
図4のV−V矢視断面図)である。
【0023】
本実施例は、幅方向の移動制限部材f103を枠体支持部1に対して乗客コンベアの幅方向内側に備える構造の一例である。
【0024】
本実施例は、
図4の比較例のように枠体支持部f102が分割されておらず乗客コンベアの幅方向外側に移動制限部材f103を備えるものと比較して、
図1のように枠体支持部1が分割されておりその間に移動制限部材f103を配置することで、乗客コンベアの幅方向外側に突出する長さが狭い設置幅を備え、施工を容易に行うことができる手段を備えた乗客コンベアを提供する。
【0025】
乗客コンベアの幅方向外側に移動制限部材を備えるものと比較して、乗客コンベアの幅方向外側に突出する長さが狭い設置幅を備えるとは、以下の構成であることを意味する。即ち、乗客コンベアの枠体支持部の据付部における乗客コンベア幅方向の、乗客コンベア端f108から建造物側支承部c103として形成された凹部の側壁部(凹部の開口縁)c104までの長さについて、本発明における長さW1が、乗客コンベアの幅方向外側に移動制限部材を備える構造(以下、比較例という)における長さW2よりも小さい(
図1,4参照)。即ち、W1<W2である。これは、本発明における長さW1が構造的に必須の寸法であるとすると、幅方向の移動制限部材f103の部品寸法WS(>0)が比較例の長さW2の中に含まれていなければならないことから明らかである。即ち、W2=W1+WSとなる。
【0026】
本実施例では、移動制限部材は枠体の幅方向の移動を実質的に止める金具として構成されており、止め金具とも呼ばれる。
【0027】
本実施例の枠体構造は例えばトラス構造である。乗客コンベアの備える分割式の枠体支持部1が、建築物(建屋)を含む建造物側の支承部c103の上に、受台c102及び鉛直荷重支持体f104を介して設置される構造である。枠体支持部1は乗客コンベアの幅方向(
図1に矢印Wで示す方向)に2部材に分割されている。2部材に分割された枠体支持部1は、幅方向に間隔をあけて枠体の幅方向の互いに異なる位置に配置されている。枠体支持部1の幅方向における外側端部は、建造物側の支承部c103として形成された凹部の側壁部c104と長さW1の隙間を介して対向している。
【0028】
本実施例では、枠体支持部1としてアングルを用いる。このため、枠体支持部1を支持アングルと呼ぶ場合もある。アングルは、屈曲部を有して断面がL字形をした部材であり、屈曲部を境として第1の辺1bと第2の辺1cとを有している。アングルの2つの辺のうち一方の辺(この辺を第1の辺1bとする)は、アングルが屈曲することにより凸状になった側の面が枠体f101に固定される。アングルの他方の辺(この辺を第2の辺1cとする)は、アングルが屈曲することにより凹状になった側の面が支承部c103に固定された受台c102側を向いて、乗客コンベアを支承部c103に支承する支持面を構成する。
【0029】
乗客コンベアの枠体f101と枠体支持部1とは、工場などで溶接固定された状態で現地据付場所に搬入される。
【0030】
現地据付場所に搬入された乗客コンベアの枠体f101は、図示しないジャッキボルトなどの高さ調整部品によって、受台102上で枠体支持部1をジャッキアップして、受台102と枠体支持部1との間に隙間を作るように、枠体支持部1の高さ方向の位置を合わせる。枠体支持部1と受台c102との間の隙間に鉛直荷重支持体f104を差し込んで仮置きされる。尚、鉛直荷重支持体f104はライナあるいはスペーサとも呼ばれ、枠体支持部1の高さ調整を行う機能を有する高さ調整部品である。枠体支持部1は乗客コンベアを建造物の階床c101に対して支持する支持部を形成する。
【0031】
高さ方向の位置が調整された乗客コンベアは、図示しないジャッキボルトなどの水平移動部品によって鉛直荷重支持体f104の上を水平移動し、水平方向の位置を調整する。次に、2つの移動制限部材f103を2つの枠体支持部1の内側に設けられた開口部f109から2つの枠体支持部1の間に挿入する。移動制限部材f103は枠体支持部1の内側側面1aと当接させて、支承部c103に固定された受台c102に溶接により固定させる。溶接作業も開口部f109を通じて行うことができる。これにより、乗客コンベアの幅方向の変位を抑制する。尚、移動制限部材f103は、乗客コンベアの長手方向(
図1に矢印Lで示す方向)については、支承部c103に対する相対変位を可能にしている。
【0032】
次に、連結部材4を2つの枠体支持部1に跨るように取り付け、2つの枠体支持部を連結部材4で連結する。連結部材4は枠体支持部1を構成するアングルの第2の辺1cに固定される。この場合、連結部材4が固定されるのは、第2の辺1cの、支承部c103に支承される支持面とは反対側の面(上側を向く面)である。連結部材4は、第2の辺1cの、屈曲部と反対側に位置する先端部を連結して、枠体支持部1を補強する部材である。連結部材4は枠体支持部1の幅方向に対する剛性を増大させる。すなわち、本実施例のように、長さW1を小さくするために枠体支持部1を分割し、その間に移動制限部材f103を配置しているため、枠体支持部1は分割していない従来の構造に比べて幅方向に対する剛性が小さくなっているが、連結部材4によってこの剛性を補うことが可能となる。
【0033】
ここで、連結部材4と移動制限部材f103とは高さ方向で干渉しない構成となっている。連結部材4の枠体支持部1への固定部は移動制限部材f103の上端よりも低い位置にある。しかし、連結部材4の移動制限部材f103と重畳する部分、或いは、枠体f101が変位した場合に移動制限部材f103と重畳する部分には、逃げ部4aが設けられている。この逃げ部4aが設けられていることにより、移動制限部材f103は連結部材4よりも低い位置に設けられていることになる。これにより、地震などで、建造物が揺れることによって階床間に変位が発生し、乗客コンベアが支承部c103に対して長手方向に変位する場合に、連結部材4と移動制限部材f103とが接触することはない。
【0034】
連結部材4が移動制限部材f103に対して高さ方向で干渉する位置に設けられると、移動制限部材f103に対する枠体支持部1の摺動範囲は連結部材4と移動制限部材f103とが干渉しない範囲に限定される。従って、枠体支持部1の内側側面1aの一部しか、移動制限部材f103との摺動範囲として使用できない。このため、移動制限部材f103に対する枠体支持部1の相対変位可能な範囲(移動可能範囲)が狭くなってしまう。しかし、本実施例では、枠体支持部1の内側側面1aのほぼ全体を、移動制限部材f103との摺動範囲として使用できる。本実施例の場合、枠体支持部1を構成するアングルの第2の辺1cの先端部から屈曲部側の端部近傍までを、摺動範囲として使用できる。尚、屈曲部側の端部における摺動範囲は、アングルの第1の辺1bが建造物側支承部c103に接触することにより制限される。これにより、本実施例では、移動制限部材f103に対する枠体支持部1の相対変位可能な範囲(移動可能範囲)を広くすることができる。したがって、枠体f101の長手方向における移動可能範囲も広くなる。
【0035】
また、連結部材4と移動制限部材f103との接触部がないことにより、連結部材4を枠体支持部1の建屋側端(第2の辺1cの、屈曲部と反対側の先端部側)へ配置することができる。これにより、枠体支持部1に対して乗客コンベアの幅方向(短手方向)に荷重が加わった際、枠体支持部1の建屋側端が連結部材4による補強部を基点とする片持ち梁の状態にならない。これにより、枠体支持部1の合理的な応力負担を可能とすることができる。
【0036】
また、連結部材4と移動制限部材f103とが高さ方向で干渉しないため、移動制限部材f103に重畳する位置に連結部材4を配置することができる。これにより、連結部材4を配置するための専用スペースを枠体支持部1の長手方向寸法に余分に確保しなくても良くなる。従って、枠体支持部1の第2の辺1cの長手方向寸法を短くして枠体支持部1を含む支持装置の小型化を図ることができる。地震の際に必要な枠体支持部1の可動範囲(移動制限部材f103に対する相対変位長さ)を確保したまま、乗客コンベアの据付に必要な建造物側支承部c103の面積を小さくすることができる。
【0037】
これまでの説明では連結部材4を現地据付作業時に固定しているが、乗客コンベアの搬入前に工場などで、連結部材4を枠体支持部1に溶接固定してもよい。本実施例では、移動制限部材f103の固定作業を枠体f101と枠体支持部1と連結部材4とによって囲まれた開口部f109を通じて実施することが可能である。このため、移動制限部材f103を固定する前に、連結部材4を枠体支持部1に溶接固定しても差し支えない。
【0038】
本実施例では、
図1に示すように、連結部材4に重畳する位置に移動制限部材f103を配置している。これに対して、
図6に示すように、移動制限部材f103(又は建造物側支承部c103)と枠体支持部1との相対変位が生じていない状態で、移動制限部材f103に重畳しない位置に連結部材4を配置してもよい。この場合も、移動制限部材f103に対する枠体支持部1の相対変位可能な範囲(移動可能範囲)を広くすることができる。また、枠体f101と枠体支持部1と連結部材4とによって囲まれた開口部f109を大きくすることができる。これにより、移動制限部材f103の取付作業を行い易くなり、乗客コンベアの据付け作業性が向上する。ただし、
図1乃至3の実施例に対して、枠体支持部1の長さが長くなり、建造物側支承部c103の面積が大きくなってしまうデメリットがある。また、
図6の構成では、枠体f101が変位した場合に、連結部材4と移動制限部材f103とが干渉しないよう、枠体f101の変位時に移動制限部材f103と重複する連結部材4の部分には、逃げ部4aが設けられている。この逃げ部4aが設けられていることにより、移動制限部材f103は連結部材4よりも低い位置に設けられていることになる。
【0039】
また、本実施例では、枠体f101の一方の支持部を長手方向及び幅方向の両方向について固定し、他方の端部は幅方向について固定し、長手方向については非固定にしている。長手方向及び幅方向の両方向について固定された支持部を固定側支持部と呼び、長手方向について非固定に支持された支持部を非固定側支持部と呼ぶ。本実施例は非固定側支持部の支持構造に関するものであり、長手方向について枠体f101を非固定に支持する。固定側支持部においては、枠体支持部f102を建造物側支承部c103に固定された受台c102に長手方向及び幅方向の両方向について固定する必要があり、このための止め金具を設置する必要がある。固定側支持部に対して、上述した非固定側支持部の支持構造を応用することができる。例えば、移動制限部材f103と枠体支持部1とを溶接などによって固定し、枠体支持部1が移動制限部材f103に対して長手方向に相対変位できなくすればよい。
【0040】
また、枠体f01の両端に対して、上述した非固定側支持部の支持構造を適用して、両端が非固定側支持部で構成された乗客コンベアにしてもよい。
【実施例2】
【0041】
本実施例は、実施例1の構造に加え、さらに、枠体支持部1の第2の辺1cの長さを延長している。第2の辺1cの延長部分の長さだけ、建造物側支承部c103と枠体支持部1との係り合う長さ(以下、かかり代と言う)を延長することができる。これにより、本実施例では、耐震性能を向上させることができる。このように、本実施例では、かかり代を延長した乗客コンベアの支持構造を備えている。
【0042】
本実施例を、
図7から
図10を用いて説明する。
図7は、本実施例について、乗客コンベアの非固定側支持部の支持構造を示す上面図である。
図8は、乗客コンベアの非固定側支持部の支持構造を、乗客コンベアの幅方向から示した側面図(
図7のVIII−VIII矢視断面図)である。
図9は、乗客コンベアの非固定側支持部の支持構造を、乗客コンベアの終端方向から示した側面図(
図7のIX−IX矢視断面図)である。
図10は、乗客コンベアの枠体を、乗客コンベアの終端方向から示した側面図(
図8のX−X矢視図)である。
【0043】
図7,8に示すように、乗客コンベアの枠体f101を建造物側支承部c103の上方まで延長する。本実施例では、枠体f101は複数の主弦材(上弦材および下弦材)を有したトラス構造をしている。そして、主弦材を構成する2本の上弦材f101aを、支承部c103に固定した受台c102の上方まで延長する。
【0044】
本実施例における乗客コンベアの枠体f101は、延長プレート部2を有するアングルで構成した枠体支持部1と枠体補強部材3とが固定され、実施例1の乗客コンベアの備える枠体支持部1よりも長いかかり代を有する。
【0045】
本実施例では、アングルで構成した枠体支持部1と、枠体補強部材3と、受台c102の上方まで延長された主弦材(特に上弦材)とによって、枠体支持部が構成されることになる。尚、枠体補強部材3は強度が十分であれば省略してもよい。また、上弦材ではなく下弦材を延長するようにしてもよい。主弦材を延長して枠体支持部の一部としたことにより、強度が向上する。そのため、アングルで構成した枠体支持部1は実施例1よりも幅を小さくしてもよい。
【0046】
本実施例は、連結部材4及び枠体床端連結補強部材5によって、枠体f101の端部において建造物側支承部c103上に延長される左右の枠体部材(上弦材)を連結して、面構造を構成する。これにより、幅方向の強度を増すことができる。本実施例では、枠体床端連結補強部材5も連結部材の一部を構成することになるが、強度的に十分であれば省略してもよい。本実施例のようにかかり代を長くした構造においては、地震などで建造物に揺れが生じた際に、枠体支持部1の延長プレート部2で乗客コンベアを支持することになり、乗客コンベアの支持点が乗客コンベアからより遠くに離れる場合がある。この場合、乗客コンベアと枠体支持部1の固定部に大きな応力が発生する。この応力集中を緩和するため、枠体f101に追加縦材8を追加する。また、追加縦材8の位置まで枠体補強部材3を延長する。尚、追加縦材8についても、強度的に十分であれば省略してもよい。また、応力を枠体f101の全域に均等負担させるため、枠体f101の端部に枠体端面板6を取り付ける。枠体端面板6は左右の縦材7を連結するように取り付けられている。尚、枠体端面板6についても、強度的に十分であれば省略してもよい。本実施例においては、左右の枠体支持部1及び左右の延長した主弦材(上弦材)f101aの間に、移動制限部材f103を取り付ける空間の確保が可能になる。
【0047】
実施例1では連結部材4を枠体支持部1に直接固定したが、本実施例では、連結部材4は延長した主弦材(上弦材)f101a(これも枠体支持部を構成する)に固定される。そして、連結部材4は移動制限部材f103に重畳する位置に設けられている。
【0048】
建造物側支承部c103に仮置された乗客コンベアは位置決めを行い、移動制限部材f103を枠体支持部1の内側側面と当接させて設置する。設置作業中の移動制限部材f103は、枠体f101と枠体支持部1と連結部材4とによって囲まれた開口部(窓)f109を通して露出している。このため、乗客コンベアの位置決め後に移動制限部材f103を取り付ける施工が可能となる。
【0049】
また、本実施例では、鉛直荷重支持体f104で枠体支持部1を受ける。鉛直荷重支持体f104は、複数枚が重ねられていてもよく、一番上の鉛直荷重支持体f104は、
図7、
図9に示すように、移動制限部材f103と接する側に上方に立ち上がった凸状部f104aを有しており、断面がL形をしている。また、鉛直荷重支持体f104は移動制限部材f103を介して受台2に固定される。したがって、鉛直荷重支持体f104も枠体支持部1に当接して移動を制限するので移動制限部材を構成するとともに、一部が枠体支持部1の下に配置されて枠体支持部1の高さ調整を行う機能を有する。この構造は、実施例1に適用してもよい。
【0050】
尚、鉛直荷重支持体f104の凸状部f104aをなくして移動制限部材としての機能を持たせないようにし、枠体支持部1の下に配置されて枠体支持部1の高さ調整を行う調整部品としてもよい。この場合、高さ調整部品である鉛直荷重支持体f104は移動制限部材f103に固定される。この構造は、実施例1に適用してもよい。
【0051】
本実施例では、延長を行う枠体f101の主弦材にL鋼(山型鋼)を用いた場合について記述しているが、枠体f101の主弦材に使用する部品としては、断面形状が中空の角パイプなどを採用することができる。
【0052】
また、本実施例は、乗客コンベアの非固定側支持部の構成を説明するものである。実施例1の説明と同様に、本実施例の非固定側支持部の支持構造を乗客コンベアの片方の端部に採用するだけでなく、両端部に採用して両端が非固定側支持部で構成された乗客コンベアにしてもよい。また、固定側支持部に本実施例の支持構造を応用することもできる。例えば、移動制限部材f103と枠体支持部1とを溶接などによって固定し、枠体支持部1が移動制限部材f103に対して長手方向に相対変位できなくする。
【0053】
尚、かかり代を長くするために延長プレート部2を用いたのは、アングルで構成された枠体支持部1は製作上の問題から大きさに制限があり、大きなものは高価あるいは入手困難であるため、延長プレート部2を用いて安価にかかり代を長くするとともに、強度を補強するために主弦材を延長したものである。よって、必要な大きさのアングルで構成された枠体支持部1が入手できるのであれば延長プレート部2は省略してもよい。
【0054】
また、本実施例では上弦材f101aを延長した例を示しているが、下弦材を延長するようにしてもよい。
【実施例3】
【0055】
実施例1では2つの枠体支持部を枠体f101の端部に固定されたL字状の支持アングルで構成し、実施例2では2つの枠体支持部を枠体f101の端部に固定されたL字状の支持アングルと枠体支持部を枠体f101を構成する主弦材の一部を延長して形成された部分とを含むように構成する例を説明した。
【0056】
本実施例では、L字状の支持アングルを省略し、2つの枠体支持部を主弦材(上弦材または下弦材)の一部を延長して形成された部分で構成する(図示せず)。この場合、連結部材4は枠体支持部である主弦材の一部を延長して形成された部分同士を連結する。また、移動制限部材は、枠体支持部である主弦材の一部を延長して形成された部分の移動を制限する。尚、本実施例では、実施例1、2に比べて強度が不足する可能性があるため、連結部材4に強度の大きいものを用いるか、複数設けることが好ましい。それ以外は実施例1、実施例2と同様にすることができる。
【実施例4】
【0057】
本実施例は、地震などの影響により乗客コンベアが幅方向に変位する場合において、変位の影響を減少させ、一定の自動位置復元機能を備えた構造を備える。
【0058】
本実施例を、
図11を用いて説明する。
図11は、本実施例について、乗客コンベアの非固定側支持部の支持構造を示す上面図である。
【0059】
本実施例では、移動制限部材f103と枠体支持部1との間に弾性体又は弾性部を設ける。弾性体又は弾性部を設ける構造としては、乗客コンベアと一体とする構造、枠体支持部1に追加する構造、独立した部品として設ける構造が挙げられる。いずれの構造を採用しても本発明に制限を与えるものではない。また、弾性体は、コイルばね、板ばねのようなばね部材の他、ゴムのような部材、或いは種類の異なる弾性体を複合して構成したものであってもよい。
【0060】
移動制限部材f103に弾性体10を取り付けた構造を例として説明する。地震などの影響によって乗客コンベアが設置された建造物の階層間に幅方向の層間変形角が生じた場合には、乗客コンベアに対して加速度が生じ、建造物側支承部c103との間に相対変位が生じる。この際相対変位の影響により弾性体10の片側には圧縮方向の変位が、もう片側には拡大方向の変位が生じる。弾性体10は入力された変位に対して反対方向に外力を加える。この外力は地震などの揺れの影響に対して常に反対方向に作用するため、乗客コンベア全体では地震などの揺れの影響が小さくなる。
【0061】
地震などの揺れの影響が収束していく過程においては、乗客コンベアと建造物側支承部c103との間に生じる摩擦力の影響により、建造物に生じる揺れの影響が完全に収束する前に乗客コンベアの変位が収束する場合がある。弾性体10が設置されていれば、乗客コンベアの据付位置からの変位の大きさに比例した外力が作用するため、弾性体10が設置されていない場合と比較して、乗客コンベアが据付位置に近づく効果を得ることができる。
【0062】
図11では、枠体支持部1を含む乗客コンベアの支持構造が実施例1の構造であるが、実施例2、実施例3の支持構造を採用してもよい。
【0063】
以上の実施例では、乗客コンベアの枠体を構成する要素にトラスを用いた例を説明した。乗客コンベアの枠体を構成する要素は、本発明を限定するものではない。例えば枠体を一体鋼板を曲げて成型した板金型としたり、枠体にH鋼を用いたりする構造も採用できる。
【0064】
図13を用いて、連結部材4を利用して枠体f101をジャッキアップする作業について説明する。
図13は、
図3の側面図に対応する側面図において、連結部材4にジャッキボルト20を組み付けて枠体f101をジャッキアップした状態を示している。尚、実施例2から実施例4でも同様に、連結部材4を利用して、枠体f101をジャッキアップすることができる。すなわち、連結部材4は、枠体f101の高さ調整機能を有する。
【0065】
図13では、例えば受台102と枠体支持部1との間に鉛直荷重支持体f104を差し込む際のジャッキアップ時に、連結部材4を利用する状態を示している。この場合、枠体f101と2つの枠体支持部1と連結部材4とを予め組み付けておく。連結部材4には、ジャッキボルト20をねじ込むねじ穴を形成しておく。そして、
図13に示すように、受台c102上で、連結部材4のねじ穴にジャッキボルト20を挿入して、枠体f101を支持する枠体支持部1をジャッキアップする。受台c102と枠体支持部1との間にできた隙間に、鉛直荷重支持体f104を差し込むことができる。このように、連結部材4を利用することにより、枠体f101ジャッキアップ作業を容易に行うことができる。
【0066】
また、上述した各実施例において、連結部材4が乗客コンベアを揚重するための強度を有するように構成すると良い。これにより、据付搬入時において、連結部材4を持ち上げることにより、乗客コンベアを揚重することができ、据え付け作業を行い易くなる。
【0067】
また、上述した各実施例においては、枠体f101と枠体支持部1と連結部材4とによって囲まれた開口部f109を有している。開口部f109は移動制限部材f103の固定作業が可能な範囲に形成されている。例えば、移動制限部材f103を溶接で固定する場合には、溶接棒などの溶接器具を開口部f109から挿入して溶接部にあてることができる範囲に、開口部f109を開口させる必要がある。このとき、溶接器具の角度が45度以上確保できることが望ましい。
【0068】
また、特許文献1に提案されているように長穴を用いる方法では、許容できる相対変位量の最大値がトラス支持アングルの長さよりも短くなる構造上の制限がある。さらに、長穴の端部とトラス支持アングルのトラス接続側とは反対側の端部との間には、強度を確保するためにある程度の寸法が必要であり、長穴の端部をトラス支持アングルの前記端部に寄せて配置するのには限界がある。
【0069】
しかし、上述した実施例1〜4では、枠体支持部1(あるいは枠体支持部を構成する延長された主弦材)の内側側面の先端部まで移動制限部材f103との摺動面にすることができる。これにより、移動制限部材f103との摺動面を長くすることができる。
【0070】
上述の各実施例では、エスカレータを対象として記載しているが、乗客コンベアの別形態である動く歩道(電動道路)についても、上述の各実施例と同様な支持部を構成することが可能である。
【0071】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。