特許第6017948号(P6017948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017948
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】コイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/12 20060101AFI20161020BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20161020BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H01F41/12 E
   H01F27/32 A
   H01F27/28 L
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-273491(P2012-273491)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-120558(P2014-120558A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 雄二
(72)【発明者】
【氏名】逵村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡
(72)【発明者】
【氏名】市川 貴則
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−078417(JP,U)
【文献】 実開昭60−193618(JP,U)
【文献】 特公昭49−007690(JP,B1)
【文献】 国際公開第2007/114257(WO,A1)
【文献】 特開平06−215963(JP,A)
【文献】 特開2010−153121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/12
H01F 27/28
H01F 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁電線を巻回してなるコイル本体を備えるものであって、
前記絶縁電線は、銅線の外周に第1の絶縁被覆層を備えると共に、その外周に第2の絶縁被覆層を備え、
前記第1の絶縁被覆層は、酸化防止剤を添加したアラミド紙を、前記銅線の外周に少なくとも1回巻装して構成され、
前記第2の絶縁被覆層は、酸化防止剤を含まないアラミド紙を、前記第1の絶縁被覆層の外周に1回あるいは複数回巻装して構成されていることを特徴とするコイル。
【請求項2】
前記コイル本体を樹脂により覆った樹脂モールド層を備えていることを特徴とする請求項1記載のコイル。
【請求項3】
前記第2の絶縁被覆層を構成するアラミド紙のかさ密度が、前記第1の絶縁被覆層を構成するアラミド紙のかさ密度よりも小さく構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のコイル。
【請求項4】
前記第2の絶縁被覆層を構成するアラミド紙の厚み寸法が、前記第1の絶縁被覆層を構成するアラミド紙よりも薄く構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、変圧器やリアクトル等の電気機器にあっては、絶縁電線を巻回してなるコイル本体を、絶縁性を有する樹脂でモールドした樹脂モールドコイルが供されている(例えば、特許文献1参照)。前記絶縁電線として、導体(銅線)の外周に絶縁物を直接巻回して構成されるものがあり、前記絶縁物として、アラミド紙と称される周知の耐熱性合成絶縁紙が用いられている。この絶縁電線では、銅線の外周に、テープ状としたアラミド紙が一部を重ねながらスパイラル状に巻回される。この際のアラミド紙の重ね巻回数は、コイルの分担電圧に応じて、例えば2回〜6回とされる。
【0003】
ところで、上記のアラミド紙は、JIS規格の絶縁材料耐熱区分で、C種(200℃以上)の長期耐熱寿命を有している。しかし、アラミド紙は、遷移金属に分類される金属に直接触れた状態では、空気中において長時間加熱されると、酸化反応が進行し、熱酸化劣化が促進されて耐熱寿命がF種(155℃以下)にまで低下してしまうことが知られている。
【0004】
ここで、前記遷移金属には、有機絶縁材料の熱酸化劣化を促進する効果の大きい順に、コバルト>マンガン>銅>鉄といった種類があり、上記のように、銅線に絶縁物(アラミド紙)を直接巻回する絶縁電線では、銅の影響により絶縁物の寿命が比較的短くなる事情がある(「銅害」と称される)。このような銅害を防止するために、従来では、アラミド紙に、酸化防止剤(或いは抗酸化剤)と称される添加剤が添加されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−116814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、絶縁電線の絶縁被覆層に、上記したような酸化防止剤を添加したアラミド紙を用いた場合、アラミド紙が比較的高価になるため、全体としてコスト高となる事情があった。そこで、絶縁被覆層にアラミド紙を用いて優れた耐熱寿命を有するものにあって、熱酸化劣化を抑制しながらも、比較的安価に済ませることができるものが要望されるのである。
【0007】
尚、前記アラミド紙は、例えばパルプ状のアラミド(全芳香族ポリアミド)のフィブリッドと耐熱性短繊維とをベースとして、和紙を作る方法と同様の湿式抄造の方法によって製造されている。このアラミド紙は、通常の紙のように内部に多くの空隙を有するポーラス状とされている。そのため、部分放電開始電圧(CSV)や、部分放電消滅電圧(CEV)が比較的低く、変圧器運転時の電圧によって部分放電が発生しやすいものとなり、ひいては、放電による劣化を起こして絶縁寿命が低下することが知られている。
【0008】
そこで、銅線の外周にアラミド紙からなる絶縁被覆層を設けた絶縁電線を用いたものにあって、比較的安価に済ませながら、絶縁寿命の低下を抑制することができるコイルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態のコイルは、絶縁電線を巻回してなるコイル本体を備えるものであって、前記絶縁電線は、銅線の外周に第1の絶縁被覆層を備えると共に、その外周に第2の絶縁被覆層を備え、前記第1の絶縁被覆層は、酸化防止剤を添加したアラミド紙を、前記銅線の外周に少なくとも1回巻装して構成され、前記第2の絶縁被覆層は、酸化防止剤を含まないアラミド紙を、前記第1の絶縁被覆層の外周に1回あるいは複数回巻装して構成されているところに特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態を示すもので、絶縁電線の断面図(a)及び銅線に対するアラミド紙の巻装の様子を示す図(b)
図2】変圧器コイル組立体の横断平面図(a)及び一部を破断して示す側面図(b)
図3】樹脂モールド工程の様子を概略的に示す図
図4】耐熱寿命の試験結果を示す図
図5】部分放電特性の試験結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、変圧器に用いられる樹脂モールドコイルに適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態例に係るコイルである樹脂モールドコイル1は、変圧器コイル組立体2の高圧側の一次コイルとして設けられている。
【0012】
図2は、変圧器コイル組立体2の構成を概略的に示している。この変圧器コイル組立体2は、円筒状をなす巻枠3の外周に低圧側の二次コイル4を備え、その二次コイル4の外周に、冷却用のダクト5を介して一次コイルである樹脂モールドコイル1を備えて構成されている。詳しくは後述するが、樹脂モールドコイル1は、絶縁電線6を巻回してなるコイル本体7を備えると共に、その全体(外面及び内部)を樹脂モールド層8で覆って構成されている。
【0013】
前記二次コイル4は、絶縁電線10を巻回して構成され、やはり全体が樹脂モールド層11で覆われている。前記二次コイル4の外周面部には、例えば合成樹脂製の絶縁シートからなる絶縁物12が配置されている。樹脂モールドコイル1の内周面部及び外周面部にも、夫々同様の絶縁物13及び14が配置されている。前記ダクト5は、二次コイル4の外周と、樹脂モールドコイル1の内周との間に、軸方向に見て波形をなすダクト形成部材5aを配置することにより、軸方向に延びて形成されている。
【0014】
尚、前記樹脂モールドコイル1のコイル本体7は多層状をなし、層間には層間絶縁物9が配置されている。また、樹脂モールドコイル1及び二次コイル4からは、夫々図で上方に口出し線1a及び4aが導出されている。さらに、図示はしないが、変圧器としての組立て時には、前記巻枠3の内側には、鉄心が配置される。
【0015】
ここで、前記樹脂モールドコイル1の樹脂モールド層8、及び、二次コイル4の樹脂モールド層11は、共に含浸樹脂として例えばエポキシ樹脂から構成され、いわゆる真空加圧含浸法により形成されている。このとき、本実施形態では、変圧器コイル組立体2(樹脂モールド前の二次コイル4及び樹脂モールドコイル1のコイル本体7)に対し、全体を一括して樹脂モールドすることによりそれら樹脂モールド層8,11が形成されるようになっている。
【0016】
図3は、真空加圧含浸による樹脂モールドの工程の様子を示している。真空タンク15内には、樹脂含浸槽16が設けられ、この樹脂含浸槽16内に樹脂モールド前の変圧器コイル組立体2が配置される。そして、真空タンク15内を例えば約133Paまで減圧状態とした上で、樹脂注入装置17により樹脂含浸槽16内にエポキシ樹脂18が注入される。これにて、樹脂モールドコイル1の表面周囲及び絶縁電線6同士間、二次コイル4の表面周囲及び絶縁電線10同士間等に、エポキシ樹脂18が真空含浸される。その後、真空タンク15内に乾燥空気を0.5MPaになるまで注入し、エポキシ樹脂の加熱硬化後に、変圧器コイル組立体2が取出され、以て、樹脂モールド層8、11が形成される。
【0017】
さて、前記樹脂モールドコイル1(コイル本体7)を構成する絶縁電線6について、図1を参照して述べる。絶縁電線6は、図1(a)に示すように、例えば断面矩形状の銅線19の周囲に、第1の絶縁被覆層20と第2の絶縁被覆層21との二重の絶縁被覆を施して構成されている。このとき、前記第1の絶縁被覆層20は、酸化防止剤を添加したアラミド紙を、前記銅線19の外周に少なくとも1回巻装して構成され、前記第2の絶縁被覆層21は、酸化防止剤を含まないアラミド紙を、前記第1の絶縁被覆層20の外周に1回あるいは複数回(1〜5回)巻装して構成されている。尚、酸化防止剤を添加したアラミド紙及び酸化防止剤を含まないアラミド紙については、共に市販されている周知のものを用いることができる。
【0018】
より具体的には、第1の絶縁被覆層20は、図1(b)に示すように、銅線19の外周に、酸化防止剤が添加されたテープ状アラミド紙22を、図示しない絶縁テープ巻回機を用いて、スパイラル状に1回巻回して構成される。このとき、テープ状アラミド紙22は、厚み寸法(平均)が57μmで、幅寸法が14mmであり、端部を約1.5mmずつ重ねて巻回されている。
【0019】
これに対し、第2の絶縁被覆層21は、酸化防止剤を含まないテープ状アラミド紙を、同様に、スパイラル状に2回(2重に)巻回して構成されている。このとき、第2の絶縁被覆層21を構成するテープ状アラミド紙は、厚み寸法(平均)が、40μmとされ、第1の絶縁被覆層20を構成するアラミド紙22よりも薄く構成されている。幅寸法や、重ね巻き寸法は、テープ状アラミド紙22と同等とされる。この際の第2の絶縁被覆層21を構成するテープ状アラミド紙の巻回数は、コイルの分担電圧に応じて、例えば2回〜5回とされる。
【0020】
さらにこの場合、第1の絶縁被覆層20を構成する酸化防止剤が添加されたテープ状アラミド紙22は、面積係数(坪量)の平均が、40g/m、かさ密度(平均)が、0.72g/cmとされている。これに対し、第2の絶縁被覆層21を構成する酸化防止剤の無添加のテープ状アラミド紙は、面積係数(坪量)の平均が、25.6g/m、かさ密度(平均)が、0.64g/cmとされている。つまり、第2の絶縁被覆層21を構成するアラミド紙のかさ密度が、第1の絶縁被覆層20を構成するアラミド紙22のかさ密度よりも小さく構成されている。
【0021】
尚、第1の絶縁被覆層20を構成するテープ状アラミド紙22の面積係数(坪量)を、例えば34g/m以上(上限は特に規定しないが例えば50g/m以下)とすることができる。これに対し、第2の絶縁被覆層21を構成するテープ状アラミド紙の面積係数(坪量)を、例えば30g/m以下(下限は特に規定しないが例えば20g/m以上)とすることが好ましい。また、テープ状アラミド紙22の厚み寸法を、例えば48μm以上(70μm以下)とし、第2の絶縁被覆層21を構成するテープ状アラミド紙の厚み寸法を、例えば46μm以下(30μm以上)とすることが望ましい。銅線19については、断面四角形に限らず、断面が円形であっても良い。
【0022】
以上のように構成された絶縁電線6を、図示しないコイル巻線機を用いて巻回することにより、コイル本体7が得られ、上記したように、このコイル本体7に対するエポキシ樹脂18の真空加圧含浸により樹脂モールド層8が形成され、樹脂モールドコイル1が得られる。尚、上記した二次コイル4を構成する絶縁電線10については、一次コイル(樹脂モールドコイル1)と同等の絶縁電線を採用しても良いが、それに限定されるものではなく、従来より供されている一般的な絶縁電線を採用することができる。
【0023】
次に、上記構成の作用について、図4及び図5も参照して述べる。本実施形態においては、樹脂モールドコイル1のコイル本体7を構成する絶縁電線6を、銅線19の外周に、酸化防止剤が添加されたテープ状アラミド紙22を1回巻回してなる第1の絶縁被覆層20を設けると共に、その外周に、酸化防止剤を含まないテープ状アラミド紙を2回巻回してなる第2の絶縁被覆層21を設けて構成した。
【0024】
このように、第2の絶縁被覆層21を、酸化防止剤を含まないアラミド紙から構成したので、例えば絶縁被覆層全体を酸化防止剤が添加されたテープ状アラミド紙22から構成した場合と比較して、大幅なコストダウンを図ることができ、樹脂モールドコイル1全体として安価に済ませることができた。
【0025】
ここで、絶縁電線6を構成する銅線19は、遷移金属であり、いわゆる銅害により、直接的に接している絶縁物(アラミド紙22)寿命が比較的短くなる事情がある。しかし、銅線19外面に接触する部分(第1の絶縁被覆層20)については、酸化防止剤を含んだアラミド紙(テープ状アラミド紙22)が用いられているので、銅害と称される熱酸化劣化を抑制することができ、長期間の耐熱寿命を得ることができる。
【0026】
一方、第2の絶縁被覆層21を構成するアラミド紙として、酸化防止剤が添加されていないことに加えて、かさ密度が比較的小さいものを採用している。このとき、アラミド紙は、通常の紙のように内部に多くの空隙を有するポーラス状とされているのであるが、かさ密度が小さいということは、内部の隙間が多く(大きく)なることを意味する。ところが、この第2の絶縁被覆層21において、内部の隙間が多い(大きい)ことは、上記真空加圧含浸の工程において、エポキシ樹脂が第2の絶縁被覆層21(アラミド紙)の内部の隙間に含浸されやすくなる。
【0027】
このように、第2の絶縁被覆層21に対するエポキシ樹脂の含浸性を向上させ手含浸率を高めることができたことにより、絶縁寿命を低下させる要因となるボイドの発生を少なく済ませることができ、部分放電の発生を抑制することができる。しかも、上記した含浸工程における樹脂含浸に要する時間の短縮化を図ることができる。更に、第2の絶縁被覆層21の樹脂の含浸量を増やすことができたことに伴い、第2の絶縁被覆層21の薄型化(絶縁被覆層を薄くしても従来と同等以上の絶縁性能が得られる)が可能となり、第2の絶縁被覆層21を構成するアラミド紙の厚み寸法を小さくすることができた。
【0028】
このように第2の絶縁被覆層21を構成するアラミド紙を、第1の絶縁被覆層20を構成するアラミド紙22よりも薄く済ませたことにより、絶縁層全体の厚みを比較的小さく抑えることができ、絶縁電線6の太さ寸法を小さくすることができる。このことは、樹脂モールドコイル1としてのコンパクト化、言い換えれば占積率の向上を達成することが可能となり、ひいては、変圧器としての性能の向上を図ることができるものである。
【0029】
ちなみに、本発明者は、本実施形態における樹脂モールドコイル1の絶縁寿命を調べるために、実施例の絶縁電線6及び従来例の絶縁電線に対し、耐熱寿命試験並びに部分放電試験を行った。実施例の絶縁電線6は、銅線19の外周に、酸化防止剤が添加されたテープ状アラミド紙22を1回巻回してなる第1の絶縁被覆層20、及び、酸化防止剤を含まないテープ状アラミド紙を2回巻回してなる第2の絶縁被覆層21を備えるものである。これに対し、従来例の絶縁電線は、銅線19の外周に、酸化防止剤が添加されたテープ状アラミド紙22を3回(3重に)巻回して絶縁被覆層を設けたものである。
【0030】
図4は、耐熱寿命を調べるための加熱加速試験を行った試験結果を示している。ここでは、構造が複雑で外乱が含まれる虞のある実際の樹脂モールドコイル1を用いるのではなく、一般にアローペアと称されるモデルを用いて試験を行っている。このアローペアと称されるモデルは、周知のように、電線と電線との間の絶縁の状態を、より適切に評価できるように考案されたものであり、試験に要するコストも抑えることができる。
【0031】
具体的には、アローペアとは、電線を約30cmに切断したものを両端を揃えて2本ペアにして、両端約5cmを残して絶縁紐で一体に縛り、その両端を左右に広げて2線間に電圧を加えることができるようにしたものである。試験にあたっては、アローペアを、その両端が外に出るように金型にセットし、金型内の空間にエポキシ樹脂を真空加圧含浸し、硬化させたものを用いる。実施例、従来例の夫々について、複数のアローペアを用意する。そして、それら実施例及び従来例のアローペアを、3種類の温度とされた乾燥炉に夫々入れ、定期的に取出して耐電圧が1kVで破壊するまでの時間を寿命として調べた。
【0032】
この場合、従来例については、200℃、220℃、240℃の3種類の温度とし、実施例については、240℃、260℃、280℃の3種類の温度としている。図4では、従来例の測定寿命を黒三角、実施例の測定寿命を黒菱形でプロットした。この図4では、縦軸が寿命を示し、対数表示している。また、横軸は、試験温度を、絶対温度の逆数で表わしたもので、通常1/T表示と呼ばれる。試験温度を1/Tで表示し、寿命を対数表示すると、直線関係になることが、アレニウス則として知られており、この試験結果においても、直線関係が得られた。
【0033】
そこで、変圧器の運転時間に相当する10万時間を寿命とする温度を外挿推定すると、従来例では、白丸で示すように156℃となり、実施例では、かけるで示すように、202℃となった。つまり、従来例のものでは、耐熱寿命が、耐熱区分でF種相当となっており、実施例では、耐熱寿命がC種相当となっている。このことからも、本実施形態の樹脂モールドコイル1では、優れた耐熱寿命が得られることが明らかとなった。
【0034】
次に、部分放電試験として、部分放電開始電圧を調べた結果を図5に示す。この部分放電試験においても、上記耐熱寿命の試験と同様に、実施例、従来例の夫々について、アローペアに樹脂モールドしたモデルを用いて試験を行った。その結果、従来例では、部分放電開始電圧が3.5kVであったものが、実施例では、4.0kVに向上している。この理由は、上記のように、かさ密度を小さくした第2の絶縁被覆層21においてエポキシ樹脂の含浸性を良好にすることができ、ボイドが少なく、部分放電の発生を抑制する点で改善が図られたものと推定される。この結果から、本実施形態の樹脂モールドコイル1では、部分放電に対する寿命の向上も期待できることが明らかとなった。
【0035】
このように本実施形態の樹脂モールドコイル1によれば、コイル本体7を構成する絶縁電線6を、銅線19の外周に、酸化防止剤が添加されたテープ状アラミド紙22を1回巻回してなる第1の絶縁被覆層20を設けると共に、その外周に、酸化防止剤を含まないテープ状アラミド紙を2回巻回してなる第2の絶縁被覆層21を設けて構成したので、比較的安価に済ませながら、絶縁寿命の低下を抑制することができる等の優れた効果を奏するものである。
【0036】
尚、上記した実施形態では、樹脂モールド層8を形成する方法として、真空加圧含浸を採用したが、大気圧下で含浸樹脂を注型することにより樹脂モールド層を形成するようにしても良い。また、上記実施形態では、一次コイル1と二次コイル4とを一括して樹脂モールドするようにしたが、個別に樹脂モールドするようにしても良い。その他、各絶縁被覆層を構成するアラミド紙の巻回数や、テープ状アラミド紙の幅寸法、アラミド紙の厚み寸法やかさ比重などの具体的数値は、あくまでも一例を示したに過ぎない等、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0037】
図面中、1は樹脂モールドコイル(コイル)、6は絶縁電線、7はコイル本体、8は樹脂モールド層、19は銅線、20は第1の絶縁被覆層、21は第2の絶縁被覆層、22はテープ状アラミド紙を示す。
図1
図2
図3
図4
図5