(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017956
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ボレート−ポリオール複合体を含む水性薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/10 20060101AFI20161020BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20161020BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20161020BHJP
A61K 31/498 20060101ALI20161020BHJP
A61K 31/542 20060101ALI20161020BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20161020BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20161020BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20161020BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
A61K47/10
A61K9/08
A61K9/10
A61K31/498
A61K31/542
A61K47/18
A61K47/32
A61K47/36
A61P27/02
【請求項の数】26
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-516295(P2012-516295)
(86)(22)【出願日】2010年6月17日
(65)【公表番号】特表2012-530712(P2012-530712A)
(43)【公表日】2012年12月6日
(86)【国際出願番号】US2010038979
(87)【国際公開番号】WO2010148190
(87)【国際公開日】20101223
【審査請求日】2013年4月11日
【審判番号】不服2015-3780(P2015-3780/J1)
【審判請求日】2015年2月27日
(31)【優先権主張番号】61/218,472
(32)【優先日】2009年6月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508185074
【氏名又は名称】アルコン リサーチ, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】カブラ, バーグワティ ピー.
【合議体】
【審判長】
大熊 幸治
【審判官】
小川 慶子
【審判官】
齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−265357(JP,A)
【文献】
特表平7−506377(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/036847(WO,A2)
【文献】
特開平10−130156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-9/72,31/33-33/44,47/00-47/48
A61P1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数用量眼用組成物であって、該複数用量眼用組成物は、以下:
第一のポリオールであって、該第一のポリオールは、マンニトール、ソルビトール、またはそれらの組み合わせから選択される、ポリオール;
第二のポリオールであって、該第二のポリオールは、プロピレングリコール、グリセリン、またはそれらの組み合わせから選択される、ポリオール;
有効な量のボレートであって、該有効な量は、該組成物全体の0.5w/v%よりも少ない、ボレート;
抗菌性保存剤としての塩化ベンザルコニウム(BAC)であって、該組成物における該BACの濃度は、0.0007w/v%よりも大きいが、0.0035w/v%よりも小さい、BAC;および
水
を含み、パンテノールを含まない、複数用量眼用組成物。
【請求項2】
前記組成物が、Ph.Eur.A、Ph.Eur.B、またはその両方を満たす、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第一のポリオールの濃度が、少なくとも0.01w/v%であるが、0.5w/v%以下である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第一のポリオールの濃度が、0.35w/v%よりも小さい、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記BACの濃度が、前記組成物の0.0025w/v%よりも小さい、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記BACの濃度が、前記組成物の0.0015w/v%よりも小さい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第二のポリオールが、前記組成物の少なくとも0.1w/v%であるが、5w/v%よりも少ない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第一のポリオールが、マンニトールである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、塩化ベンザルコニウム以外に任意の保存剤を実質的に含まない、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物のpHが6.2〜7.7である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
治療剤をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記治療剤が、ブリンゾラミド、ブリモニジン、またはそれらの組み合わせである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
アニオン性ポリマーをさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記アニオン性ポリマーが、キサンタンガム、またはカルボキシビニルポリマーから選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記アニオン性ポリマーが、カルボキシビニルポリマーである、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、溶液に懸濁される治療剤を有する懸濁剤である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記懸濁剤の粘度が、20cpsよりも大きいが、500cpsよりも小さく、ここで該懸濁剤の粘度は、室温で120/秒の高いずり速度で測定される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、任意の抗感染薬の治療剤または抗生物質の治療剤を含まない、請求項1〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記懸濁剤が、15秒以下の激しい振とうで再分散される、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項20】
哺乳動物の眼を処置するための請求項1〜19に記載の組成物であって、該組成物は、該哺乳動物の眼へと長期間、反復して投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項21】
前記組成物が、少なくとも1ヶ月の期間、少なくとも1日に1回、投与されることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記哺乳動物の眼は、治療剤の長期にわたる投与で適切に処置される眼の障害を有すると診断された眼である、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
前記眼の障害が眼圧の増大である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、ブリンゾラミドを該組成物中で懸濁するカルボキシビニルポリマーを含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物がブリモニジンを含む、請求項1〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が7.0よりも小さいpHを有する、請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、米国特許法§119に基づき、2009年6月19日に出願された米国仮特許出願第61/218,472号に対する優先権を主張し、この仮特許出願の全内容は参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、薬学的組成物に関し、これは、上記組成物の改善された保存のためのボレート−ポリオール複合体を含む。より具体的には、本発明は、ボレートと組み合わせた2つまたはそれより多くの異なるポリオール、および保存剤、特に塩化ベンザルコニウム(BAC)を含む水性薬学的組成物(例えば、複数用量眼用組成物)に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
本発明は、米国薬局方(「USP」)および/もしくは他の国における類似のガイドラインの保存効力要件を満たすために十分な抗菌活性を有するように処方される薬学的組成物に関する。保存を達成する能力は、処方物成分の特有の組み合わせ、ならびに特にボレートと組み合わせた2つまたはそれより多くの異なるポリオール、および保存剤、特にBACの使用に基づく。
【0004】
多くの薬学的組成物は、滅菌(すなわち、細菌、真菌類、および他の病原性微生物が実質的に存在しない)であることが必要とされる。そのような組成物の例としては:ヒトまたは他の哺乳動物の身体に注入される液剤および懸濁剤;創傷、擦過傷、熱傷、発疹、外科的切開、または皮膚が無傷ではない他の状態に局所的に適用される乳剤、ローション剤、液剤または他の調製物;ならびに直接、眼に適用される(例えば、人工涙、洗浄溶液(irrigating solution)、および薬物製品)か、または眼と接触するデバイスに適用される(例えば、コンタクトレンズ)組成物の種々のタイプが挙げられる。
【0005】
前述のタイプの組成物は、当業者に周知の手順を介して滅菌条件下で製造され得る。しかしながら、一旦、製品のパッケージングが開けられると、結果として、パッケージングに含まれる上記組成物が、大気および他の潜在的な微生物汚染の供給源(例えば、ヒト患者の手)に曝され、製品の滅菌性は損なわれ得る。このような製品は、代表的に、患者によって複数回利用され、従って、それは「複数用量」性質であると頻繁に称される。
【0006】
微生物汚染のリスクに対する複数用量製品の頻繁な、反復した曝露に起因して、このような汚染が起こらないようにするための手段を用いることが必要である。用いられる手段は:(i)本明細書中で「抗菌性保存剤」と称される、組成物中の微生物の増殖を防ぐ化学的薬剤;または(ii)容器内の薬学的組成物に達する微生物のリスクを防ぐ、もしくは低減させるパッケージングシステムであり得る。
【0007】
従来の複数用量眼用組成物は、細菌、真菌類、および他の微生物の増殖を防ぐために1つまたはそれより多くの抗菌性保存剤を一般に含んでいた。このような組成物は、直接的にか、または間接的に角膜と接触し得る。角膜は、外因性の化学的薬剤に特に敏感である。結果として、角膜に及ぼす有害な作用の可能性を最小限にするために、角膜に対して比較的非毒性である抗菌性保存剤を使用すること、およびこのような保存剤を比較的低濃度で使用することが好ましい。
【0008】
抗菌性保存剤の、抗菌効力および潜在的な毒物学的作用を釣り合わせることは、時に、達成することが難しい。より具体的には、微生物汚染からの眼用処方物の保存に必要な抗菌性薬剤の濃度は、上記角膜および/もしくは他の眼の組織に対する毒物学的作用の可能性を作り出し得る。低濃度の上記抗菌性薬剤を使用することは、一般に、このような毒物学的作用に対する可能性を低減させる助けになるが、上記低濃度は、生物学的効力(すなわち、抗菌性保存)の必要とされるレベルを達成するためには不十分であり得る。不適切なレベルの抗菌性保存の使用は、微生物汚染に対する可能性を作り出し得る。
【0009】
抗菌性保存剤の、抗菌効力および潜在的な毒物学的作用との間のバランスは、多くの抗菌性保存剤がいくつかの薬学的賦形剤、および/またはいくつかの薬学的治療剤と組み合わせて使用されるときに有効ではないという事実によって、さらに複雑になる。例えば、いくつかの保存剤は、負に帯電した治療剤または賦形剤と組み合わせて使用されるとき、あまり有効ではなくなる。
【0010】
BACは、他の保存剤が有効ではないことがあり得る状況に対して多種多様な治療剤および薬学的賦形剤と組み合わせた保存剤として、しばしば望ましいことが見出されている。しかしながら、BACは、その濃度が特定の閾値レベルより下に落ちるとき、その抗菌効力を急速に失い得ることも見出されている。この効力の損失は、これらの閾値レベルより下のBACの濃度が顕著により低い毒物学的作用を示し得るので、とても不幸な結果となる。このように、低濃度のBACの抗菌作用を高め得る保存剤システムを開発することが望ましく、その結果、BACは、他の保存剤が有効ではないことがあり得る状況において使用され得る。このようなシステムは、眼用組成物にとって特に望ましい。
【0011】
眼用組成物は、等張性の緩衝化液剤として一般に処方される。特に望ましい眼用組成物は、ボレートまたはボレート−ポリオール複合体を含むものである。このような組成物の例は、特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;特許文献6;および特許文献7において開示されており、これらの全ては、全ての目的のために本明細書中で参照により援用される。
【0012】
ボレート−ポリオール複合体が、眼用組成物において、保存剤(例えば、ポリマー第四級アンモニウム)の存在下で抗菌活性を高めるために使用され得ることは、一般に公知である;特許文献8;特許文献9;特許文献10;および特許文献11を参照、これらの全てもまた、全ての目的のために本明細書中で参照により援用される。ポリオール(例えば、ソルビトール、またはマンニトール)の量の増加は、比較的低量のボレートが用いられるときでさえ、抗菌活性を顕著に増加させ得ることが示されてきている。しかしながら、マンニトールおよびソルビトールはまた、眼における上記組成物の滴下後の、涙のpHの正規化に対する抵抗力に影響し得る。
【0013】
一般に、これらの複合体のボレート構成要素(例えば、ホウ酸)は、涙のpHの正規化に対する顕著な抵抗力を有する眼用組成物を提供し得る。これらの眼用組成物が、少なくともいくらかの程度の緩衝を示すことが一般に望ましく、その結果、上記組成物の元来のpHが時間の経過により顕著に変化しない。しかしながら、上記組成物が、望ましくない高程度の緩衝を示すことも可能であり、その結果、適用される場合、眼がそれ自体のpHを維持しようと試みるので、それらは眼が涙ぐむこと、および眼に対する不快感をもたらし得る。従って、適用後の涙のpHの正規化に対する上記組成物の抵抗力を最小限にすることが望ましい。前述のポリオール、特にマンニトール、ソルビトール、またはその両方は、ボレート構成要素の涙のpHの正規化に対する抵抗力を顕著に高め得る。従って、所望されるレベルの緩衝を維持する目的のために、ボレートの存在下において比較的低濃度のこれらのポリオールを維持することが代表的に望ましい。しかしながら、このようなより低濃度は、上記眼用組成物の抗菌活性を制限するか、または低下させ得る。
【0014】
上記を考慮すると、より低濃度の特定のポリオールおよび/またはボレートで形成されるボレート−ポリオール複合体を含み、ならびに低濃度のBACを含み、他方、改善される抗菌活性および望ましい緩衝活性を示す眼用組成物を提供することが特に望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,503,497号明細書
【特許文献2】米国特許第6,011,062号明細書
【特許文献3】米国特許第6,849,253号明細書
【特許文献4】米国特許第5,603,929号明細書
【特許文献5】米国特許第5,653,972号明細書
【特許文献6】米国特許第5,849,792号明細書
【特許文献7】米国特許第5,631,287号明細書
【特許文献8】米国特許第5,505,953号明細書
【特許文献9】米国特許第5,811,466号明細書
【特許文献10】米国特許第6,143,799号明細書
【特許文献11】米国特許第6,365,636号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
本発明は、第一のポリオール、第二のポリオール、ボレート、および塩化ベンザルコニウム(BAC)を含む複数用量眼用組成物に関する。上記第一のポリオールは、マンニトール、ソルビトール、またはそれらの組み合わせから選択される。上記第二のポリオールは、プロピレングリコール、グリセリン、またはそれらの組み合わせから選択される。上記ボレートは、有効な量で含まれ、その有効な量は、組成物全体の約0.5w/v%よりも少ない(than)。上記BACは、抗菌性保存剤として使用され、上記組成物におけるBACの濃度は、0.00001w/v%よりも大きいが、0.0035w/v%よりも小さい。上記組成物は、好ましくは水性であり、代表的に少なくとも70w/v%の純水、より代表的には少なくとも90w/v%、または95w/v%の純水である。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
複数用量眼用組成物であって、該複数用量眼用組成物は、以下:
第一のポリオールであって、該第一のポリオールは、マンニトール、ソルビトール、またはそれらの組み合わせから選択される、ポリオール;
第二のポリオールであって、該第二のポリオールは、プロピレングリコール、グリセリン、またはそれらの組み合わせから選択される、ポリオール;
有効な量のボレートであって、該有効な量は、該組成物全体の約0.5w/v%よりも少ない、ボレート;
抗菌性保存剤としてのBACであって、該組成物における該BACの濃度は、0.00001w/v%よりも大きいが、0.0035w/v%よりも小さい、BAC;および
水
を含む、複数用量眼用組成物。
(項目2)
前記組成物が、Ph.Eur.A、Ph.Eur.B、またはその両方を満たす、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記第一のポリオールの濃度が、少なくとも0.01w/v%であるが、0.5w/v%以下である、項目1または2に記載の組成物。
(項目4)
前記第一のポリオールの濃度が、約0.35w/v%よりも小さい、項目3に記載の組成物。
(項目5)
前記BACの濃度が、前記組成物の0.0025w/v%よりも小さい、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目6)
前記BACの濃度が、前記組成物の0.0015w/v%よりも小さい、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目7)
前記第二のポリオールが、前記組成物の少なくとも約0.1w/v%であるが、約5w/v%よりも少ない、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目8)
前記第一のポリオールが、マンニトールである、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目9)
前記組成物が、塩化ベンザルコニウム以外に任意の保存剤を実質的に含まない、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目10)
眼における滴下後の涙のpHの正規化に対して、前記組成物によって提供される抵抗力が、組成物1ml当たり25μlの1M NaOHよりも小さい、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目11)
眼における滴下後の涙のpHの正規化に対して、前記組成物によって提供される抵抗力が、組成物1ml当たり15μlの1M NaOHよりも小さい、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目12)
前記組成物のpHが約6.2〜約7.7である、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目13)
治療剤をさらに含む、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目14)
前記治療剤が、ブリンゾラミド、ブリモニジン、またはそれらの組み合わせである、項目13に記載の組成物。
(項目15)
アニオン性ポリマーをさらに含む、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目16)
前記アニオン性ポリマーが、キサンタンガム、またはカルボキシビニルポリマーから選択される、項目15に記載の組成物。
(項目17)
前記アニオン性ポリマーが、カルボキシビニルポリマーである、項目15に記載の組成物。
(項目18)
前記組成物が、溶液に懸濁される治療剤を有する懸濁剤である、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目19)
前記懸濁剤の粘度が、20cpsよりも大きいが、500cpsよりも小さく、ここで該懸濁剤の粘度は、室温で120/秒の高いずり速度で測定される、項目18に記載の組成物。
(項目20)
前記組成物が、任意の抗感染薬の治療剤または抗生物質の治療剤を含まない、項目1〜19のいずれかに記載の組成物。
(項目21)
前記懸濁剤が、15秒以下の激しい振とうで再分散される、項目18または19に記載の組成物。
(項目22)
哺乳動物の眼を処置する方法であって、該方法は:
前述のいずれかの項目の組成物を該哺乳動物の眼へと長期間、反復して投与する工程
を含む、方法。
(項目23)
前記組成物が、少なくとも1ヶ月の期間、少なくとも1日に1回、投与される、項目22に記載の方法。
(項目24)
投与より前に、治療剤の長期にわたる投与で適切に処置される眼の障害を有する前記哺乳動物の眼を診断する工程を、さらに含む、項目22または23に記載の方法。
(項目25)
前記眼の障害が眼圧の増大である、項目24に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明は、所望される抗菌活性および/または所望される緩衝活性を示す薬学的組成物および特に眼用組成物を提供するためのボレートおよび塩化ベンザルコニウム(BAC)の存在下での2つまたはそれより多くの異なるポリオールの提供に基づき予測される。従って、上記眼用組成物は、代表的に、第一のポリオール、該第一のポリオールと異なる第二のポリオール、BAC、およびボレートを含む。上記眼用組成物は、コンタクトレンズ溶液(例えば、コンタクトレンズ保存溶液または洗浄溶液(washing solution))、あるいは他のタイプの眼用組成物であり得ることが企図される。しかしながら、好ましい実施形態において、上記眼用組成物は、治療剤を含む単一または複数用量眼用組成物である。上記組成物は、代表的に、眼に対する局所適用のために構成される(例えば、直接、眼に対する点眼液)。
【0018】
そうでないと示されない限り、本発明の眼用組成物の成分に提供される百分率は、重量/体積(w/v)の百分率である。
【0019】
本明細書中で用いられる場合、用語「ボレート」は、ホウ酸、ホウ酸の塩、ボレート誘導体、および他の薬学的に受容可能なボレート、またはそれらの組み合わせを指す。最も適切なものは、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マンガン、および他のこのようなホウ酸塩である。ボレートは、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、およびマンニトール)と相互作用し、ボレートポリオール複合体を形成する。このような複合体のタイプおよび比は、互いに対してトランス配置にない隣接する炭素原子上のポリオールのOH基の数に依存する。成分ポリオールおよびボレートの重量/体積の百分率は、複合体の部分としてであろうと、なかろうと、成分ポリオールおよびボレートの量を含むことが理解される。
【0020】
本明細書中で用いられる場合、用語「ポリオール」は、互いに対してトランス配置にない2つの隣接する炭素原子上のそれぞれにおいて、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する任意の化合物を含む。上記ポリオールは、結果として生じる複合体が水溶性で薬学的に受容可能である限り、直鎖状もしくは環状、置換もしくは非置換、またはそれらの混合物であり得る。このような化合物の例としては、糖、糖アルコール、糖酸、およびウロン酸が挙げられる。好ましいポリオールは、糖、糖アルコール、および糖酸であり、マンニトール、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、およびプロピレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書中で利用される場合、具体的な濃度(例えば、1w/v%)に対して、句「よりも小さい」は、具体的な構成要素(例えば、抗菌性保存剤)が、上記組成物中に全く存在しないか、または具体的な限界(例えば、1w/v%)よりも小さい濃度で存在するかのいずれかを意味する。本明細書中で利用される場合、句「有効な量の」は、上記組成物の治療能力、緩衝能力、保存能力、および/または抗菌能力に影響を与えるのに十分な量で、該組成物中に具体的な構成要素が存在することを意味する。
【0022】
本発明の組成物は、代表的に、保存剤塩化ベンザルコニウムを含む。本明細書中で用いられる場合、塩化ベンザルコニウム(BAC)は、そうでないと具体的に言及されない限り、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(ADBAC)、およびその全ての誘導体を意味する。ADBACの誘導体としては、ADBACのアルキル基が短くなったものか、もしくは長くなった化合物、および/またはADBACの2つのメチル基の1つもしくは両方がより大きなアルキル基へと変化された化合物が挙げられる。
【0023】
本発明の組成物は、BACの他に、他の誘導体を含み得る。潜在的な追加の保存剤としては、過酸化水素およびポリマー第四級アンモニウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、上記組成物が、BAC以外に任意の保存剤を実質的に含まないか、または全く含まないことが好ましい。
【0024】
本明細書中で用いられる場合、句「を実質的に含まない」は、上記眼用組成物の成分を指すとき、眼用液剤が、その特定の成分を全く含まないか、またはその特定の成分のごくわずかな量だけを含むかのいずれかであり得ることが企図されることを意味する。
【0025】
BACは、上記眼用組成物の、約0.00001w/v%よりも多い量、より代表的には約0.0003w/v%よりも多い量、およびさらにより代表的には約0.0007w/v%よりも多い量で代表的に本発明の組成物中にある。さらに、BACは、上記眼用組成物の、約0.005w/v%よりも少ない量、より代表的には0.0035w/v%よりも少ない量、およびさらにできる限り約0.0025w/v%よりも少ない量、またはさらに約0.0015w/v%よりも少ない量で、本発明の組成物において一般に使用される。
【0026】
前述に示唆されるように、上記眼用組成物は、第一のポリオールが第二のポリオールとは異なる2つまたはそれより多くのポリオールの組み合わせを含む。上記第一のポリオールは、好ましくは、眼における上記眼用組成物の滴下の際に涙のpHの正規化に対するボレート構成要素の抵抗力を顕著に高めるものである。対照的に、上記第二のポリオールは、好ましくは、上記眼用組成物のボレート構成要素のこのような抵抗力を高めないものか、または最小限にのみ高めるものである。
【0027】
上記第一のポリオールは、単一のポリオール、またはポリオールの群であり得る。第一のポリオールの各ポリオールは、好ましくは、アルキル鎖における炭素の実質的部分(すなわち、50%、70%、もしくは90%よりも多いか、または全て)に結合するヒドロキシル基(−OH基)を有するアルキル鎖を含む糖アルコールである。上記第一のポリオールの各ポリオールのアルキル鎖は、代表的に5個の炭素(ペンタン)、6個の炭素(ヘキサン)、7個の炭素(ヘプタン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。上記第一のポリオールについての適切なポリオールの例としては、マンニトール((2R,3R,4R,5R)−ヘキサン−1,2,3,4,5,6−ヘキソール)、ソルビトール((2R,3S,4S,5S)−ヘキサン−1,2,3,4,5,6−ヘキソール)、それらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記第一のポリオールについての別の、可能性のある適切なポリオールは、キシリトール((2R,3r,4S)−ペンタン−1,2,3,4,5−ペンタオール)である。好ましい実施形態において、上記第一のポリオールは、完全に、または実質的に完全に(すなわち、少なくとも95重量%)マンニトールまたはソルビトールまたはその両方である。これらのうち、代表的に、上記第一のポリオールが実質的に完全にマンニトールであることが好ましい。
【0028】
本明細書中で用いられる場合、どの成分(複数可)が上記眼用組成物の構成要素の部分であるかを記載するために使用されるとき、用語「実質的に完全に」は、該構成要素が1つまたはそれより多くの特定の成分(複数可)で完全に形成されることか、あるいはほんの最小限の量のそれら1つまたはそれより多くの特定の成分(複数可)以外で形成される構成要素を含む、それら1つまたはそれより多くの特定の成分(複数可)で実質的に完全に形成されることが企図されることを意味する。
【0029】
上記第一のポリオールは、上記眼用組成物の、代表的に少なくとも約0.01w/v%、より代表的には少なくとも約0.15w/v%、およびさらにより代表的には少なくとも約0.25w/v%である。上記第一のポリオールはまた、上記眼用組成物の、代表的に約5w/v%よりも少なく、より代表的には約1.6w/v%よりも少なく、およびさらにより代表的には約0.5w/v%よりも少ない。
【0030】
上記第二のポリオールはまた、単一のポリオール、またはポリオールの群であり得る。第二のポリオールの各ポリオールは、第一のポリオールのように、好ましくは、アルキル鎖における炭素の実質的部分(すなわち、50%、70%、もしくは90%よりも多いか、または全て)に結合するヒドロキシル基(−OH基)を有するアルキル鎖を含む糖アルコールである。上記第二のポリオールの各ポリオールのアルキル鎖は、代表的に2個の炭素(エタン)、3個の炭素(プロパン)、または4個の炭素(ブタン)を含む。上記第二のポリオールについての適切なポリオールの例としては、グリセロール(プロパン−1,2,3−トリオール)、プロピレングリコール(プロパン−1,2−ジオール)、それらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、上記第二のポリオールは、完全に、または実質的に完全に(すなわち、少なくとも95重量%)グリセロールまたはプロピレングリコールまたはその両方である。これらのうち、代表的に、上記第二のポリオールが実質的に完全にプロピレングリコールであることが好ましい。
【0031】
上記第二のポリオールは、上記眼用組成物の、代表的に少なくとも約0.015w/v%、より代表的には少なくとも約0.2w/v%、およびさらにより代表的には約0.3w/v%である。上記第一のポリオールはまた、上記眼用組成物の、代表的に約5w/v%よりも少なく、より代表的には約3w/v%よりも少なく、さらにより代表的には約1.8w/v%よりも少なく、さらにより代表的には約1.2w/v%よりも少ない。
【0032】
一般に、本発明の眼用組成物において、種々の量のボレートが含まれ得ることが企図される。しかしながら、低濃度のボレートが、上記2つまたはそれより多くの異なるポリオールと組み合わせて使用されるとき、思いがけなく優れた抗菌活性、保存効力、所望される緩衝、またはそれらの組み合わせを生み出し得ることが見出されている。代表的に、本発明について、上記ボレートは、上記眼用組成物の、少なくとも約0.05w/v%、より代表的には少なくとも約0.1w/v%、およびさらにより代表的には少なくとも約0.25w/v%である。さらに上記ボレートは、有利に、上記眼用組成物の、約0.75w/v%よりも少なく、より代表的には約0.5w/v%よりも少なく、およびさらにより代表的には約0.4w/v%よりも少なく、およびさらにできる限り約0.35w/v%よりも少ないことがあり得る。
【0033】
眼内の上記眼用組成物の涙のpHの正規化に対する抵抗力は、代表的に所望される範囲にある。このような抵抗力は、該組成物のpHを前もって決定されたpHへと変化させるために使用される眼用組成物の量または体積当たりの塩基または酸の量または体積に関して定量され得る。該組成物の元来のpHを涙のpH(7.5)へと変化させるための眼用組成物の量または体積当たりに必要とされる塩基または酸の量は、該組成物が、眼における該組成物の滴下後に涙のpHへと正規化するために提供する抵抗力を表し得るので、重要であり得る。特に、本発明について、涙のpHへの正規化に対する抵抗力は、上記組成物の元来のpHから7.5のpHへと変化させるための眼用組成物の体積当たりに必要とされる1N NaOH(1規定のNaOH)、または1N HCl(1規定のHCl)の体積として定量され得る。例えば、10マイクロリットル(μl)の1N NaOHの添加は、1ミリリットル(ml)の上記眼用組成物のpHをその元来のpH(すなわち、7.0よりも小さいpH)を7.5のpHへと動かし得る。本発明の眼用組成物は、7.5のpHを達成するための任意のNaOHまたはHClを必要としないことがあり得る。本発明の代表的な眼用組成物は、1mlの該眼用組成物を7.5のpHに到達させるために代表的に30μlよりも少なく、より代表的には25μlよりも少なく、より代表的には15μlよりも少なく、できる限り10μlよりも少なく、およびさらにできる限り6.0μlよりも少ない1N NaOHまたは1N HClを必要とする。
【0034】
本発明は、特に、上記組成物が、USPの保存効力要件、ならびに水性薬学的組成物に対する他の保存効力基準を満たすことを可能にする十分な抗菌活性を有する複数用量眼用組成物の提供に関する。
【0035】
米国および他の国/地域における複数用量眼用液剤に対する保存効力基準は、次の表において明記される:
保存効力試験(「PET」)規準
(時間の経過による微生物の接種物の対数オーダー減少)
【0036】
【表1】
1欧州薬局方において、「A」および「B」の2つの保存効力基準がある。
【0037】
USP27についての上に同定される基準は、USPの前の版、特にUSP24、USP25、およびUSP26において明記される要件と実質的に同一である。
【0038】
本明細書中に記載されるボレート/ポリオール系は、種々のタイプの薬学的組成物に含まれ得、該組成物(例えば、眼用組成物、耳用組成物、鼻用組成物、および皮膚用組成物)の抗菌活性および保存を高めるが、眼用組成物において、特に有用である。このような組成物の例としては:眼用薬学的組成物(例えば、緑内障、感染、アレルギー、または炎症の処置において使用される局所組成物);コンタクトレンズを処理するための組成物(例えば、洗浄(cleaning)製品、およびコンタクトレンズをつけている患者の眼の快適さを高める製品);および種々の他のタイプの眼用組成物(例えば、眼の潤滑製品、人工涙、および収斂剤など)が挙げられる。上記組成物は、水性、または非水性であり得るが、一般に水性である。
【0039】
本発明の組成物は、種々のタイプの治療剤を含み得る。本発明は、非イオン性である治療剤を含み得る。カチオン性治療剤もまた、上記組成物において利用され得る。
【0040】
本発明の眼用組成物に含まれ得る治療剤の例としては、プロスタグランジン類似体(例えば、ラタノプロスト、トラボプロスト、およびウノプロストン)、降圧脂質(例えば、ビマトプロスト)、およびグルココルチコイド(例えば、プレドニゾロン、デキサメタゾン、およびロテプレドノール(lotoporednol))、チモロール(例えば、マレイン酸チモロール)、オロパタジン(例えば、オロパタジン塩酸塩)、ブリンゾラミド、ドルゾラミド(dorzolomide)、ブリモニジン(例えば、酒石酸ブリモニジン)、エメダスチン(emadastine)、タンドスピロン、ロスコビチン、ネパフェナク、ブラジキニン、PDE4インヒビター、またはそれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0041】
本発明は、角膜または隣接する眼の組織が刺激される状態、またはドライアイ患者の処置におけるような組成物の頻繁な適用を必要とする状態の処置に関連する複数用量眼用組成物の提供に関することがあり得る。本発明の組成物は、ドライアイ状態、ならびに眼の炎症または不快感を伴う他の状態を処置するために使用される、人工涙、眼の潤滑剤、および他の組成物の分野において有用であり得る。上記組成物はまた、緑内障を処置するのに特に有用であり得る。
【0042】
本発明の組成物は、保存剤特徴を示す治療剤を含み得る。このような治療剤の例としては、抗感染薬および/または抗生物質が挙げられる。しかしながら、有利に、本発明の組成物は、所望される保存を、このような保存を助ける治療剤の補助なしに示す。従って、本発明の組成物が、任意の保存剤特徴、または任意の実質的な保存剤特徴を示す任意の治療剤を完全に、または実質的に含まないことがあり得ることが企図される。本明細書中で用いられる場合、実質的な保存剤特徴は、治療剤に関するとき、該治療剤が、組成物が下に議論される米国、または欧州の保存剤効力基準の1つを合格する理由の少なくとも一部であること、および該治療剤を等しい重量の水と置き替えることが、該組成物がその治療剤で合格したこれらの基準の少なくとも1つを該組成物が満たさなくなるようにすることを意味する。このように、本発明の組成物は、考慮された抗感染薬および/または抗生物質である任意の治療剤を含まないか、または実質的に含まないことがあり得る。特に上記組成物は、任意のキノロン類、特にフルオロキノロン類を含まないか、または実質的に含まないことがあり得る。
【0043】
本発明の組成物は、一般に、滅菌水性液剤として処方される。本発明の組成物はまた、該組成物で処置される眼および/または他の組織と適合するように処方される。眼への直接の適用が意図される上記眼用組成物は、眼に適合するpHおよび等張性を有するように処方される。上記組成物が懸濁剤、または他のタイプの液剤であり得ることもまた企図される。
【0044】
上記組成物は、代表的に、4〜9の範囲、好ましくは5.5〜8.5の範囲、および最も好ましくは5.5〜8.0の範囲にあるpHを有する。特に所望されるpH範囲は、6.0〜7.8、およびより具体的には6.2〜7.7である。上記組成物は、1キログラム当たり200〜400または450ミリオスモル(mOsm/kg)、より好ましくは240mOsm/kg〜360mOsm/kgの重量オスモル濃度を有する。
【0045】
本発明の組成物は、種々のタイプの薬学的賦形剤(例えば、界面活性剤、および粘度改変剤など)を含み得る。
【0046】
本発明は、粘性剤(viscosity agent)、または懸濁化剤としてアニオン性ポリマーを含む眼用水性懸濁剤、特に治療剤懸濁剤を形成するために特に有利であることが見出されている。アニオン性ポリマーの例としては、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ゲランガム(gelan gum)、カルボキシメチルセルロースナトリウム アルギン酸、カラギーナンが挙げられるが、これらに限定されない。アニオン性ポリマーの大いに好ましい例としては、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、またはそれらの組み合わせが挙げられる。これらのアニオン性ポリマーは、代表的に、高分子量または多価のカチオン性保存剤(例えば、ポリクオタニウム−1(Polyquaternium−1))と非適合である。しかしながら、これらのアニオン性ポリマーは、塩化ベンザルコニウムと実質的に、より適合する。特に、本発明に先行して、Ph.Eur BまたはPh.Eur.A規準に対するアニオン性ポリマーベースの懸濁剤、ならびに他の眼用組成物を保存するために比較的高濃度の塩化ベンザルコニウムが代表的に必要とされた。
【0047】
代表的にカルボキシビニルポリマーは、架橋したポリマー鎖のネットワークを有する。上記ポリマーは、しばしば、カルボン酸官能基を有する、好ましくは1官能基当たり2個〜7個の炭素原子を含むものとして特徴付けられる。好ましいカルボキシビニルポリマーとしては、B.F.Goodrich CompanyからのCARBOPOLの商品名で入手可能な水溶性および水膨潤性カルボマーが挙げられる。市販のポリマーCarbopol934P、940、および974Pは、大いに好ましい。本発明の薬学的組成物中に存在するカルボキシビニルポリマーの量は、代表的に少なくとも約0.05%、より代表的には少なくとも約0.1%、さらにより代表的に少なくとも約0.2%である。さらに、本発明の薬学的組成物中に存在するカルボキシビニルポリマーの量は、代表的に約4.0%よりも少なく、より代表的には約1.2%よりも少なく、さらにより代表的には約0.7%よりも少ない。
【0048】
懸濁剤、特に、懸濁化剤としてカルボキシビニルポリマーを含むものについて、実質的な期間、治療剤が懸濁されているのを保つために懸濁剤の粘度が十分に高いことが望ましい。上記懸濁剤の粘度は、代表的に5cpsよりも大きく、より代表的には20cpsよりも大きく、およびさらにより代表的には30cpsよりも大きい。上記懸濁剤の粘度は、代表的に1000cpsよりも小さく、より代表的には500cpsよりも小さく、およびさらにより代表的には150cpsよりも小さい。上記懸濁剤の粘度は、120/秒(例えば、スピンドルCP−52用いて60rpm)の高いずり速度で測定される。このような懸濁剤が、240mOsm〜360mOsmの範囲にある重量オスモル濃度を有することが望ましい。1つの実施形態において、ボレート−ポリオールの他に、塩化ナトリウムが等張性および粘度を調整するために使用される。塩化ナトリウムが使用されるとき、塩化ナトリウムの濃度は、代表的に、所望される重量オスモル濃度を達成するのに十分高いが、塩化ナトリウムは、潜在的にボレートおよび/またはマンニトールとともに、少なくともいつくかの組成物についての懸濁剤の粘度に負の影響を与え得るので、0.9%よりも小さく、より代表的には0.6%よりも小さく、およびさらにより代表的には0.4%よりも小さい。
【0049】
本発明の組成物が懸濁剤のとき、該懸濁剤の治療剤が容易に再分散されることが代表的に望ましい。本発明に従う懸濁剤は、代表的に、20秒以下の激しい振とうで、より代表的には15秒以下の激しい振とうで、およびさらにより代表的には10秒以下の激しい振とうで再分散され得る。
【0050】
界面活性剤は、例えば、懸濁剤おける湿潤剤として、または可溶化剤として、または安定剤として使用され得る。好ましい界面活性剤は、チロキサポール、ポリソルベート80、およびポリオキシエチレン(POE)(40)水素化ヒマシ油(またはPEG(40水素化ヒマシ油)(HCO−40)である。使用されるとき、より高濃度の界面活性剤は、少なくともいくつかの組成物についての保存について負に影響(effect)し得るので、上記界面活性剤の濃度は、代表的に、所望される程度の湿潤を達成するのに十分なものであり、1.0重量%よりも小さく、より代表的には0.5%よりも小さく、およびさらにより代表的には0.1%よりも小さい。
【0051】
本発明の利点として、本発明の組成物内のより低濃度のBACは、該組成物が眼への反復した投与に、より適しているようにするということが考えられる。複数の眼の障害(例えば、眼圧(IOP)の増大)があり、それに対する所望される処置は、長期間、反復して、哺乳動物の眼への、前述の主張(claim)の任意のものの組成物の反復した投与である。従って、一旦、哺乳動物(例えば、ヒト)の眼(複数可)が、このような障害だと診断されると、該障害の長期にわたる処置は、代表的に、眼(複数可)への組成物の反復した投与を伴う。このような処置において、上記組成物は、少なくとも1ヶ月の期間、より代表的には少なくとも6ヶ月の期間、およびさらにより代表的には少なくとも1年の期間、少なくとも1週間に1回、より代表的には少なくとも1日に1回、およびさらにできる限り、少なくとも1日に2回または3回で投与され得る。上記組成物は、このような処置にかなり適していると考えられる。
【0052】
出願人は、本開示において、全ての引用される参照の全内容を具体的に援用する。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲、または高い方の好ましい値および低い方の好ましい値の列挙として与えられるとき、これは、範囲が別個に開示されるかどうかに関わらず、任意の高い方の範囲の限界または好ましい値、および任意の低い方の範囲の限界または好ましい値との任意の対から形成される、具体的に開示される全ての範囲として理解され得る。数値の範囲が、本明細書中で列挙される場合、そうでないと言及されない限り、該範囲は、それらの終点ならびに範囲内の全ての整数および分数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を定義するときに列挙される特定の値に限定されることが意図されない。
【0053】
本発明の他の実施形態は、本明細書を考慮すること、および本明細書中で開示される本発明の実施から当業者に明らかである。本明細書および実施例は、以下の特許請求の範囲およびその等価物によって示されている本発明の正当な範囲および趣旨を伴うのみの例示とみなされることが意図される。
【0054】
下の表Aは、本発明の眼用組成物の例示的に好ましい処方物に適した例示的な成分、およびそれらの成分についての所望される重量/体積の百分率の列挙を提供する。
【表A】
【0055】
表Aにおける重量/体積の百分率は、それらの重量/体積の百分率の±10%、±20%、±30%、±90%、またはそれより高くで変動し得ること、およびそれらの変動は、本発明の成分についての範囲を作り出すために具体的に使用されることが理解される。例えば、±20%の変動を伴う10%の成分重量/体積の百分率は、該成分が8w/v%〜12w/v%の重量/体積の百分率の範囲を有し得ることを意味する。
【0056】
以下の実施例は、本発明の選択される実施形態をさらに説明するために提示される。実施例において示される処方物は、眼用薬学的組成物の分野の当業者に周知の手順を用いて調製された。
【0057】
実施例によって下に明記される抗菌性保存剤の有効性を、カテゴリー1A製品についての米国薬局方24(USP)に記載される方法に従って生物チャレンジ試験を用いて決定した。サンプルを、以下の1つまたはそれより多くの公知のレベルで接種した:グラム陽性増殖型細菌(Staphylococcus aureus ATCC 6538)、グラム陰性増殖型細菌(Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027および大腸菌ATCC 8739)、酵母菌(Candida albicans ATCC 10231)、およびカビ(Aspergillus niger ATCC 16404)。上記サンプルを次に、抗菌性保存剤システムが、処方物へと故意に導入された生物を殺すこと、または該生物の繁殖を阻害することが可能かどうかを決定するために特定の間隔で採取した。抗菌活性の率またはレベルは、調製物の引用されるカテゴリーについてのUSP保存剤効力基準に従って決定する。
【0058】
表B
生物個体数の対数減少として提示される米国カテゴリー1A製品についての保存剤基準
【表B】
【0059】
表Bに示されるように、USP27抗菌性有効性試験は、カテゴリー1A製品を含む組成物が約10
5〜10
6の細菌の開始の接種物を、7日の期間にわたって1log(すなわち、微生物個体数における90%の減少)で、および14日の期間にわたって3log(すなわち、微生物個体数における99.9%の減少)で、減少させるための十分な抗菌活性を有することを要求し、14日の期間の終了後に微生物個体数において全く増加があり得ないことを要求する。真菌類に関してUSP基準は、上記組成物が、全28日の試験期間にわたって開始の接種物の個体数と比較して均衡状態(すなわち、成長なし)を維持することを要求する。カテゴリー1A製品は、水性の基材またはビヒクルで作られる、注入、または他の非経口(エマルジョン、耳用、滅菌鼻用製品、および眼用製品が挙げられる)である。
【0060】
微生物個体数を計算することにおける誤差は、一般に+/−0.5logであると解釈される。従って、用語「均衡状態」は、上記に議論されるUSP基準に関して本明細書中で利用されるとき、開始の個体数が、開始の個体数と比較して0.5logオーダーよりも大きく増加し得ないことを意味する。
【実施例】
【0061】
実施例A
、C、D、F〜IおよびK〜M
ならびに参考例B、EおよびJの処方物を、本発明の望ましいものの説明として提供する。実施例は、特にボレート、ポリマー第四級アンモニウム化合物、またはその両方と組み合わせた2つの異なるポリオールの組み合わせを含む本発明の眼用組成物の抗菌活性および/または保存剤効力を説明する。実施例A
、C、D、F〜IおよびK〜M
ならびに参考例B、EおよびJにおける成分の百分率は、重量/体積の百分率である。
【0062】
(実施例A
、C
および参考例B)
表Cは、組成物A〜Cおよびそれらの処方物に関するデータを提供する。上記組成物のそれぞれは、該組成物の粘度を増加させるためにカルボマー974Pを含み、0.002%のBAC、ホウ酸、および2つのポリオールを含む。3つすべての組成物は、Ph.Eur.B/A規準を満たす。これらの組成物は、薬物(例えば、ブリンゾラミド、ロスコビチン、アンフェナクアミド(amfenac amide)、デキサメタゾン、ブラジキニンインヒビター、酢酸アネコルタブ、タンドスピロン、それらの組み合わせ、およびそれらの他の薬物との組み合わせ)の眼用懸濁剤に使用され得る。
【0063】
表C:0.002%のBACでの実施例A
、C
および参考例B
【表C-1】
【0064】
【表C-2】
【0065】
(実施例D)
表3に提示される実施例Dは、0.002%のBAC、ホウ酸、および2つの異なるポリオールを有する組成物であり、Ph.Eur BおよびA PET規準を満たすように計画される。
【0066】
表D:0.002%のBACでの実施例D
【表D】
【0067】
(
参考例Eおよび実施例
F〜G)
3つ全ての
参考例Eおよび実施例
F〜Gは、0.001%のBAC、ホウ酸を含む。
参考例Eはまた、2つの異なるポリオール、ソルビトール、およびプロピレングリコールを含む。Ph.Eur BおよびA PET規準に合格するように計画される。しかしながら、ホウ酸を含まない実施例F、およびホウ酸とともに1つのみのポリオール(ソルビトール)を含む実施例Gは、Ph.Eur BおよびA規準に不合格である。
【0068】
表E:0.001%のBACでの
参考例Eおよび実施例
F〜G
【表E】
【0069】
(実施例H
、I、K〜M
および参考例J)
実施例H
、I、K〜M
および参考例Jのそれぞれは、Ph.Eur Aおよび/またはPh.Eur B保存効力を満たす。
【0070】
表F:カルボキシビニルポリマー、および0.001%のBACを有する組成物H〜J
組成物H〜Jのそれぞれは、数ある使用の中で、治療剤を懸濁するための懸濁剤ビヒクルとして使用され得る。
【表F-1】
【0071】
【表F-2】
【0072】
表G:低量のBAC、ホウ酸、および2つのポリオールを有するロスコビチン処方物
【表G-1】
【0073】
【表G-2】
【0074】
組成物Kは、約4.4の涙の正規化に対する抵抗力を示す。
【0075】
表H:低量のBAC、ホウ酸、および2つのポリオールを有するブリンゾラミドおよびブリンゾラミド/ブリモニジン処方物
【表H】
【0076】
組成物MおよびNは、約18の涙の正規化に対して抵抗力を示す。
【0077】
表I:実施例O
、V
実施例O
、Vは、カルボマー含有組成物の重量オスモル濃度および粘度の両方が、ナトリウム濃度を0.4%よりも低くしたままで塩化ナトリウムを使用することによって所望される範囲で得られ得ることを示す。
【表I-1】
【0078】
【表I-2】