(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017980
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】植物栽培構造体
(51)【国際特許分類】
A01G 9/20 20060101AFI20161020BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
A01G9/20 A
A01G9/24 P
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-17132(P2013-17132)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-147314(P2014-147314A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】511189849
【氏名又は名称】株式会社FUJIYA
(73)【特許権者】
【識別番号】506069505
【氏名又は名称】株式会社積水化成品四国
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】冨士谷 仁一
(72)【発明者】
【氏名】日下 孝慶
【審査官】
木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−346572(JP,A)
【文献】
特開平01−199520(JP,A)
【文献】
特開2009−072202(JP,A)
【文献】
特開2003−000071(JP,A)
【文献】
特開2000−184828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14−9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
播種位置の下方に位置し、かつ、農機具で土地を耕す深さよりも深い位置に埋設された温水管と、該温水管よりも下方に設けられた断熱体とを設け、前記耕す深さが、植物の作付け地の表面から下方へ20cm以上で60cm以下の範囲内であり、前記温水管の直下方に水が下方に流れる排水通路が形成されるように該通路を挟んで両横側に前記断熱体を位置させ、該各断熱体の上面が排水通路側ほど下方に位置する傾斜面に構成されていることを特徴とする植物栽培構造体。
【請求項2】
前記断熱体は、その断面が直角三角形の三角柱状に形成され、その斜面が下方に流れてくる水の案内面となっていることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培構造体。
【請求項3】
前記温水管及び前記断熱体が、ハウス内の土中に設置されるものである請求項1又は2に記載の植物栽培構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気温の低い冬場において、土中を暖めることによって、野菜、果物、生け花等の植物の育成を促進させるための植物栽培構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、気温の低い時期のハウス内においては、温風器が設置され、その温風器を用いて室内の暖房を行うようにしている。また、ハウス内の土中に温水管が埋設され、その温水管から発する熱を用いて土中内の暖房も行うようにしている。これによって、植物の育成を促進させることが行われている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記温水管の一端が、水を貯留している水槽に接続され、その水槽の水は、熱風器から排出される排気ガスを利用して暖められる。この暖められた温水が温水管へ供給されることによって、土中内を暖めることができる。このように特許文献1では、室内の暖房と土中内の暖房の両方を一台の温風器の熱で行うことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平4−53246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1によれば、熱風器から排出される熱を利用して水槽内の水を暖める構成であるため、燃料消費量を抑えることができるものの、特に寒い時期において温水管の温度を所定温度(例えば20℃)以上に高めることができない。そのため、温水管から距離のある土表面付近の播種位置における温度を必要以上に維持することができず、植物の育成を促進させることができない。このことから、熱風器の能力をフルに発揮させることによって、温水管の温度を上げることになるが、燃料消費量の増大につながり、燃料代の負担が大きくなるという不都合を解消することができない。
【0006】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、燃料消費量を抑えることができながらも、植物の育成を促進させることができる植物栽培構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の植物栽培構造体は、前述の課題解決のために、播種位置の下方に位置し、かつ、農機具で土地を耕す深さよりも深い位置に埋設された温水管と、該温水管よりも下方に設けられた断熱体とを設け
、前記耕す深さが、植物の作付け地の表面から下方へ20cm以上で60cm以下の範囲内であり、前記温水管の直下方に水が下方に流れる排水通路が形成されるように該通路を挟んで両横側に前記断熱体を位置させ、該各断熱体の上面が排水通路側ほど下方に位置する傾斜面に構成されていることを特徴としている。
【0008】
かかる構成によれば、温水管から発する熱が上方だけでなく、下方にも放射される。その下方への熱は、断熱体に当たり、上方へ反射される。これによって、温水管から発する熱の一部が下方へ無駄に放射されることがなくなり、温水管からの熱を播種位置へ効率よく放射することができる。よって、断熱体を設けない場合に比べて土中の温度を上げることができる。また、植物の収穫後において次の植物の種を播種する前に農機具で土地を耕す際に、農機具の爪等が温水管に当たることがないから、温水管を破損する等のトラブル発生を回避することができる。
しかも、土中に流れ込む水は、断熱体の上面に滞留することがなく、断熱体の傾斜面で排水通路側へ案内することができるから、植物の根が、滞留した水で腐ることを抑制できる。また、下方へ根を張る直根タイプの植物においては、その根が断熱体を突き破ることなく排水通路に向かって成長することができる。しかも、排水通路に根を張ることによって、その根に水を十分に与えることができ、植物の成長を更に促進することができる。
【0015】
また、本発明の植物栽培構造体は、前記断熱体が、その断面が直角三角形の三角柱状に形成され、その斜面が下方に流れてくる水の案内面となる構成であってもよい。
【0016】
上記構成によれば、三角柱状のフラットな底面をフラットにならした土に載置して土をかけて埋めるだけで断熱体を配置することができるから、板状又は直方体の断熱体を所定の傾斜角度になるように土中に埋設する作業に比べて、作業がし易い。
【0017】
また、本発明の植物栽培構造体は、前記温水管及び前記断熱体が、ハウス内の土中に設置される構成であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、温水管よりも下方に断熱体を設けることによって、燃料消費量を抑えることができながらも、植物の育成を促進させることができる植物栽培構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一実施形態を示す植物栽培構造体の縦断正面図である。
【
図3】本発明の第二実施形態を示す植物栽培構造体の要部の縦断正面図である。
【
図4】本発明の第三実施形態を示す植物栽培構造体の要部の縦断正面図である。
【
図5】本発明の第四実施形態を示す植物栽培構造体の要部の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る植物(野菜、果物、生け花等)の成長を促進するための植物栽培構造体の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。植物としては、野菜、果物、生花などである。
【0021】
<第一実施形態>
植物栽培構造体は、
図1に示すように、透明又は半透明な塩化ビニル製又はガラス製のハウス1内の土中に設けられている。
図1では、所定間隔を空けて細長い直線状に土を盛り上げた畝2を形成し、その畝2の上側部分が種を蒔く播種位置3となる。この播種位置3の下方で、かつ、農機具で土地を耕す深さよりも深い位置に温水管4を埋設し、温水管4よりも下方に断熱体5を備えて、植物栽培構造体を構成している。尚、畝2の幅Hは、90cmに設定されている。
【0022】
畝2は、上面が平坦面となる台型に形成されているが、山型であってもよいし、場合によっては、畝2の無い土中に植物栽培構造体を埋設してもよい。
【0023】
温水管4は、ポリエチレンから形成され、直径の大きさが40mmの断面が円形の丸パイプから構成されている。また、農機具である耕耘機で土地を耕す際において、耕耘機の爪が当たらないように畝2の表面(植物の作付け地の表面)からの距離L1が40cmとなる深さ位置に温水管4を埋設する。また、乗用の耕耘機(トラクター)で土地を耕す場合には、トラクターの爪が当たらないように畝2の表面(植物の作付け地の表面)からの距離L1が60cmとなる深さ位置に温水管4を埋設する。また、鍬で人手により土地を耕す場合には、少なくとも畝2の表面(植物の作付け地の表面)からの距離L1が20cmとなる深さ位置に温水管4を埋設する。尚、耕耘機やトラクターにおいては、耕す深さを調節することができる場合には、畝2の表面(植物の作付け地の表面)から20cmから60cmの間で耕す深さに応じて調節することになる。尚、温水管4は、図示していない加熱手段により温められて温水に変換される温水タンクに接続されている。前記植物の作付け地の表面とは、植物を植え付ける、又は種子を蒔くための地表面であり、ここでは、畝2の表面としているが、畝2を形成しない場合には、土地の表面が、植物の作付け地の表面となる。
【0024】
断熱体5は、温水管4の直下方に位置し、温水管4の直径よりも広い幅を有するものから構成され、上面が畝2の上面と平行となる水平姿勢で埋設されている。具体的には、断熱体5は、発泡ポリスチレンで構成され、播種される範囲(幅)Eよりも広い幅を有し、その幅Wが50cm、厚みDが5cm、長さ(畝2の形成方向の寸法、つまり
図1の紙面を貫通する方向の寸法)が5mに構成されているが、これらの寸法に限定されない。また、温水管4の下端4Aから断熱体5の上面5Uとの距離は、短いほどよいが、10cm以内にすることが好ましい。
【0025】
図1のハウス内の室温を25℃に設定し、温度が38℃の温水を温水管4に流した時の畝2の表面温度を測定すると、28℃であった。これに対して、断熱体5の無い従来の場合においても測定した。従来の場合は、前記同様に、ハウス内の室温を25℃に設定した。この室温に対して、温度が45℃(前記温度よりも7℃高い温度)の温水を温水管4に流した時の畝2の表面温度を測定すると、23〜25℃であり、前回よりも高い温度の温水を流したにも拘らず、畝2の表面温度が3℃〜5℃低くなっていた。これは、一部の熱が下方へ逃げた影響が考えられる。そして、本発明のように、断熱体5を設けることによって、温水管4へ流す温度を低くしても、畝2の表面温度の低下を抑えることができるという結果が得られた。従って、燃料消費量を抑えることができながらも、植物の育成を促進させることができるという効果を奏する。
【0026】
前記断熱体5を、
図2に示すように、下方に凹む円弧状の凹面5Aを備える構成にしてもよい。このように構成しておけば、温水管4から下方へ放射される熱が断熱体5に反射して上方へ放射される時に、拡散されることなく、所定の幅で地表側へ放射することができる。尚、断熱体5の表面(上面)に、金属を蒸着して反射層を設けて反射率の高い断熱体5を構成してもよい。尚、凹面5Aの曲率半径は、図に示される大きさ以外であってもよい。
【0027】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態を
図3に基づいて説明する。
図3では、温水管4の直下方に水が下方に流れる排水通路6が形成されるように該排水通路6を挟んで両横側に
図1で示した板状の断熱体5,5よりも少し幅を狭くした断熱体5,5を位置させ、該各断熱体5の上面5Uが排水通路6側ほど下方に位置する傾斜面になるように断熱体5,5を傾斜した状態で埋設している。このように構成することによって、土中に流れ込む水は、断熱体5の上面に滞留することがなく、断熱体5の傾斜面5Uで排水通路6側へ案内することができるから、植物の根7が、滞留した水で腐ることを抑制できる。また、下方へ根を張る直根タイプの植物において、特に有利になり、その根7が断熱体5を突き破ることなく排水通路6に向かって成長することができる。しかも、排水通路6に根7を張ることによって、その根7に水を十分に与えることができ、植物の成長を更に促進することができる。畝2の表面(上面)(植物の作付け地の表面)から温水管4までの距離は、第一実施形態と同様である。また、温水管4と断熱体5,5との距離L2,L2は、根7が通り抜けることができる距離に設定されることが好ましく、5cm以上20cm以下の範囲に植物に応じて任意の距離に設定される。断熱体5の傾斜角度は、略30度に設定しているが、15度から60度までの間で任意に変更することができる。尚、直根タイプの植物としては、ピーマン、茄子、オクラ、大根、人参、ゴボウ、サツマイモなどが挙げられる。また、根が横方項に張る植物としては、みょうが、しょうがなどが挙げられる。
【0028】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態を
図4に基づいて説明する。
図3と同様に、温水管4の直下方に水が下方に流れる排水通路6が形成されるように該排水通路6を挟んで両横側に断熱体5,5を位置させている。そして、断熱体5は、その断面が直角三角形の三角柱状に形成され、その斜面5Sが下方に流れてくる水の案内面となっている。このように、三角柱状のフラットな底面5Dをフラットにならした土に載置して土をかけて埋めるだけで断熱体5を配置することができるから、
図3に示すように、板状の断熱体5を所定の傾斜角度になるように土中に埋設する作業に比べて、作業がし易い。この場合も、第二実施形態と同様に、下方へ根を張る直根タイプの植物において、特に有利になり、その根7が断熱体5を突き破ることなく排水通路6に向かって成長することができる。しかも、排水通路6に根7を張ることによって、その根7に水を十分に与えることができ、植物の成長を更に促進することができる。畝2の表面(上面)(植物の作付け地の表面)から温水管4までの距離は、第一実施形態と同様である。また、温水管4と断熱体5,5との距離L3,L3は、根7が通り抜けることができる距離に設定されることが好ましく、5cm以上20cm以下の範囲に植物に応じて任意の距離に設定される。
【0029】
<第四実施形態>
次に、第四実施形態を
図5に基づいて説明する。
図3と同様に、温水管4の直下方に水が下方に流れる排水通路6が形成されるように該排水通路6を挟んで両横側に断熱体5,5を位置させている。そして、各断熱体5を、
図3とは異なり、その上面5Uが畝2の表面(上面)と並行となる水平面になるように配置している。畝2の表面(上面)(植物の作付け地の表面)から温水管4までの距離は、第一実施形態と同様である。また、温水管4と断熱体5,5との距離L4,L4は、根7が通り抜けることができる距離に設定されることが好ましく、5cm以上20cm以下の範囲に植物に応じて任意の距離に設定される。
【0030】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0031】
前記実施形態では、ハウス内の土中に植物栽培構造体を設けたが、露地栽培を行う土中に設けてもよい。
【0032】
また、前記実施形態では、断熱体5として板状、三角柱状、直方体状のものを示したが、断熱体5の形状は、自由に変更可能である。
【0033】
また、前記実施形態では、温水管4は、ポリエチレンから構成したが、その他各種の合成樹脂で構成することによって、金属材料で構成した場合の錆付きの問題が発生しないため好ましいが、金属材料を合成樹脂でコーティングしたものから構成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…ハウス、2…畝、3…播種位置、4…温水管、5…断熱体、5A…凹面、5D…底面、5S…斜面、5U…上面(傾斜面)、6…排水通路、7…根