特許第6017986号(P6017986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6017986タンクアッセンブリーと燃料電池システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017986
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】タンクアッセンブリーと燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/04 20060101AFI20161020BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20161020BHJP
   F16K 1/34 20060101ALI20161020BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20161020BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20161020BHJP
【FI】
   F17C13/04 301Z
   F16K51/00 C
   F16K1/34 H
   H01M8/04 J
   !H01M8/10
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-26428(P2013-26428)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-156872(P2014-156872A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100097146
【弁理士】
【氏名又は名称】下出 隆史
(72)【発明者】
【氏名】稲木 秀介
(72)【発明者】
【氏名】山下 顕
(72)【発明者】
【氏名】内村 治弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 憲二
(72)【発明者】
【氏名】大槻 賢治
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−301359(JP,A)
【文献】 特開2005−264966(JP,A)
【文献】 特開2006−300249(JP,A)
【文献】 特開2009−168166(JP,A)
【文献】 実開昭62−194294(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/04
F16K 1/34
F16K 51/00
H01M 8/04
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクアッセンブリーであって、
ガス供給源から供給されたガスを貯留し、該貯留したガスをガス消費機器に供給するタンクと、
該タンクの口金に装着されたバルブ機構とを備え、
該バルブ機構は、
前記ガス消費機器に到るガス配管に接続され、前記ガス消費機器の側において流路の開閉を図るガス消費機器側開閉弁を有する第1流路と、
前記ガス供給源からのガス配管に接続され、前記ガス供給源からのガスの流れのみを許容する逆止弁を有する第2流路と、
該第2流路と前記第1流路との接続箇所から延び、前記タンクの内部に到る第3流路と、
前記接続箇所に設けられ、前記ガス供給源から供給されて前記第2流路を通過したガスが衝突して該ガスの流れを前記第3流路の側に転換すると共に、前記ガスの流れが転換後のガスを前記第3流路に誘導するガス誘導部材とを備える
タンクアッセンブリー。
【請求項2】
前記第3流路に、流路の開閉を図る第3流路開閉弁を備える請求項1に記載のタンクアッセンブリー。
【請求項3】
前記ガス誘導部材は、接続箇所において前記第3流路の流路開口の開閉を図る先端部を備え、該先端部により前記第3流路開閉弁としての機能を図り、前記先端部が前記流路開口を開放した開弁位置にある時に、前記ガス供給源から前記第2流路にガスの流入があると、該流入したガスが前記先端部に衝突して前記流入したガスの流れを前記第3流路の側に転換する請求項2に記載のタンクアッセンブリー。
【請求項4】
前記ガス誘導部材は、前記先端部が前記流路開口を開放した開弁位置にある時に、前記第1流路の前記ガス消費機器側開閉弁が流路を開放すると、前記第3流路の側から前記第1流路の側へのガスの通過を許容する請求項3に記載のタンクアッセンブリー。
【請求項5】
ガス消費機器として燃料電池を有する燃料電池システムであって、
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のタンクアッセンブリーを備え、該タンクアッセンブリーから前記燃料電池に燃料ガスを供給する
燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクアッセンブリーと燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タンクアッセンブリーは、ガス消費機器へのガス供給を図るべく、種々のシステムに組み込まれている。例えば、水素と酸素の電気化学反応を利用して発電する燃料電池を有する燃料電池システムにおいて、タンクアッセンブリーは、いわゆる水素ステーションからタンクへの水素ガス充填と、タンクから燃料電池への水素ガス供給とを担っている(例えば、特許文献1)。燃料電池システムに限らず、ガス精製機能をタンクに持たせたシステムにタンクアッセンブリーを用いることも提案されている(例えば、特許文献2)。この他、ガス通過流路において、ガス中の水分を下流側に流れにくくするバルブ機構も提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−168166号公報
【特許文献2】特開2007−54821号公報
【特許文献3】特開2009−264442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高圧ガスタンクの口金に装着したバルブ機構にあっては、タンクへのガス流入流路とタンクからのガス排出流路とを分離すると、ガス流路が増える分だけ、バルブ機構の外郭が大きくなる。このため、例えば、燃料電池システムを搭載した車両では、重量増になり、コンパクト化や軽量化、低コスト化が阻害されかねない。その一方、特許文献1のようにガス流入とガス排出を一つの流路で賄えば、低コスト化やコンパクト化が可能となるものの、次のような問題点が指摘されるに到った。タンクへのガス充填を行う場合、その充填ガスは、当然にタンク内に入り込むが、充填圧が高いこと、流量も多い等の理由により、充填ガスに含有済みの水分がガス流に流されて、流路下流のレギュレーターや開閉弁等の弁内に入り込むことが有り得る。こうなると、低温環境下において弁内にて水分の凍結が起き、弁駆動の信頼性が低下する。こうした事態の回避には、特許文献3で提案されたバルブ機構をガス充填側の流路に組み込むことが有益であるが、タンクへのガス充填とタンクからのガス供給とを担うバルブ機構とは別のバルブ機構が必要となるので、コンパクト化や軽量化、低コスト化に反することになり、現実的な解決にはならない。こうしたことから、ガス中に含まれる水分の凍結に対する有効な対処を図ることが要請されるに到った。この他、タンクアッセンブリーのコンパクト化や軽量化、低コスト化を可能とすることも要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題の少なくとも一部を達成するために、本発明は、以下の形態として実施することができる。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、タンクアッセンブリーが提供される。このタンクアッセンブリーは、ガス供給源から供給されたガスを貯留し、該貯留したガスをガス消費機器に供給するタンクと、該タンクの口金に装着されたバルブ機構とを備え、該バルブ機構は、前記ガス消費機器に到るガス配管に接続され、前記ガス消費機器側において流路の開閉を図るガス消費機器側開閉弁を有する第1流路と、前記ガス供給源からのガス配管に接続され、前記ガス供給源からのガスの流れのみを許容する逆止弁を有する第2流路と、該第2流路と前記第1流路との接続箇所から延び、前記タンクの内部に到る第3流路と、前記接続箇所に設けられ、前記ガス供給源から供給されて前記第2流路を通過したガスが衝突して該ガスの流れを前記第3流路の側に転換すると共に、前記ガスの流れが転換後のガスを前記第3流路に誘導するガス誘導部材とを備える。上記形態のタンクアッセンブリーでは、ガス供給源から供給されて第2流路を通過したガスは、第2流路と第1流路との接続箇所に設けられたガス誘導部材に衝突してその流れが第3流路の側に転換される。よって、ガス供給源からのガスに水分が含まれていても、その水分は、ガス誘導部材によるガスの流れの転換により、その転換後のガスと共に第3流路の側に導かれるので、接続箇所より下流側の第1流路や当該流路の開閉弁には達しがたくなる。このため、上記形態のタンクアッセンブリーによれば、第1流路の開閉弁における弁内での水分の凍結を抑制できる。また、上記形態のタンクアッセンブリーでは、第3流路を、ガス供給源から供給されて第2流路を通過したガスの通過流路(以下、便宜上、充填流路、と称する)とできるほか、第3流路の末端からタンク内のガスの第1流路への通過流路(以下、便宜上、排出供給流路、と称する)ともできるので、流路増加をもたらさない。この点から、上記形態のタンクアッセンブリーによれば、バルブ機構の外郭を大きくする必要がないので、コンパクト化や軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0007】
(2)上記した形態のタンクアッセンブリーにおいて、前記第3流路に、流路の開閉を図る第3流路開閉弁を備えるようにできる。こうすれば、ガス消費機器側開閉弁を有する第1流路と逆止弁を有する第2流路とを、接続箇所において繋がった一つの流路系としてリーク検査でき、簡便である。
【0008】
(3)上記した形態のタンクアッセンブリーにおいて、前記ガス誘導部材は、接続箇所において前記第3流路の流路開口の開閉を図る先端部を備え、該先端部により前記第3流路開閉弁としての機能を図り、前記先端部が前記流路開口を開放した開弁位置にある時に、前記ガス供給源から前記第2流路にガスの流入があると、該流入したガスの流れを前記第3流路の側に転換するようにできる。こうすれば、ガス誘導部材の先端部により第3流路開閉弁としての第3流路の開閉機能を図るので、より簡便となる。
【0009】
(4)上記した形態のタンクアッセンブリーにおいて、前記ガス誘導部材は、前記先端部が前記流路開口を開放した開弁位置にある時に、前記第1流路の前記ガス消費機器側開閉弁が流路を開放すると、前記第3流路の側から前記第1流路の側へのタンク内のガスの通過を許容するようにできる。こうすれば、ガス誘導部材の先端部を流路開口を開放した開弁位置としておくだけで、第3流路を、ガス供給源からのガスの充填流路と、タンク内のガスの排出供給流路とに確実に兼用できるので、簡便であると共に、コンパクト化や軽量化、低コスト化の実効性が高まる。
【0010】
(5)本発明の他の形態によれば、燃料電池システムが提供される。この燃料電池システムは、ガス消費機器として燃料電池を有する燃料電池システムであって、上記したいずれかの形態のタンクアッセンブリーを備え、該タンクアッセンブリーから前記燃料電池に燃料ガスを供給する。上記形態の燃料電池システムによれば、タンクの口金に装着したバルブ機構の第3流路を、ガス供給源から供給されたガスの充填流路と、タンク内のガスの燃料電池への排出供給流路とに確実に兼用できるので、タンクアッセンブリーとしてのコンパクト化や軽量化、低コスト化を通して、システム全体のコンパクト化等を図ることができる。これに加え、ガス供給源からタンク内にガス充填を図る際には、ガス供給源からのガスに含まれている水分を、第3流路を経てタンク内に導くので、第1流路のガス消費機器側開閉弁および燃料電池の上流側の流路に設けられた各種弁、例えば減圧弁やインジェクター等における弁内での水分の凍結を抑制できる。
【0011】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、タンクの口金に装着されるバルブ機構としての形態の他、燃料電池システムを搭載した車両等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態としての燃料電池システム10を概略的に示す説明図である。
図2】流路規制弁機構300の構成を断面視して示す説明図である。
図3】流路規制弁機構300の構成部品の分解斜視図である。
図4】流路規制弁機構300の要部をなす転換シャフト310の全体斜視図である。
図5】転換シャフト310の先端部の他の角度からの斜視図である。
図6図2における6−6線断面図である。
図7】本発明の他の実施形態としての燃料電池システム10Aを概略的に示す説明図である。
図8】他の実施形態における流路規制弁機構300Aの構成を断面視して示す説明図である。
図9】流路規制弁機構300の構成を組み込み形態を変更した状態で断面視して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。図1は本発明の実施形態としての燃料電池システム10を概略的に示す説明図である。
【0014】
図示するように、この燃料電池システム10は、燃料電池搭載車両20に、燃料電池100と、タンクアッセンブリー102と、水素ガス供給系120と、モータ駆動のコンプレッサ150を含む空気供給系160と、図示しない冷却系と、制御装置200とを備える。燃料電池100は、電解質膜の両側にアノードとカソードの両電極を接合させた図示しない膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly/MEA)を備える発電モジュールを積層して構成され、前輪FWと後輪RWの間において車両床下に位置する。そして、この燃料電池100は、後述の水素ガス供給系120と空気供給系160から供給された水素ガス中の水素と空気中の酸素との電気化学反応を起こして発電し、その発電電力にて前後輪の図示しない駆動用モータ等の負荷を駆動する。
【0015】
水素ガス供給系120は、燃料電池100に供給する燃料ガスとしての水素ガスを高圧貯留するタンクアッセンブリー102と、燃料電池100に到る燃料ガス供給管路120Fと、当該流路末端の供給側マニホールド121と、レセプタクル122から充填側マニホールド123に到る水素充填管路120Rと、未消費の水素ガス(アノードオフガス)を大気放出する放出管路124とを備える他、燃料ガス供給管路120Fには、燃料電池100の側からインジェクター125と減圧バルブ126を備え、放出管路124には排出流量調整バルブ127を備える。減圧バルブ126は、後述の制御装置200の制御を受けて駆動し、減圧後の水素ガスをインジェクター125に流す。インジェクター125は、後述の制御装置200の制御を受けて駆動し、水素ガスの流量を調整した上で、燃料電池100に水素ガスを噴出供給する。
【0016】
タンクアッセンブリー102は、車両前方側と後方側とに搭載され、それぞれ、水素ガスタンク110と、タンク口金に装着されたバルブ機構111とを備える。水素ガスタンク110は、樹脂製ライナーの外周に熱硬化性樹脂含有の繊維を巻回した繊維強化層を有する樹脂製タンクであり、図示しない水素ガスステーションから高圧で充填供給された水素ガスを貯留する。バルブ機構111は、開閉バルブ112と、逆止弁113と、タンク内温度を検出する温度センサー114と、流路規制弁機構300の機器に加え、供給側タンク流路115と、充填側タンク流路116と、タンク到達流路117とを備える。開閉バルブ112は、後述の制御装置200の制御下で供給側タンク流路115の流路の開閉を図る。逆止弁113は、充填側タンク流路116において、図示しない水素ガスステーションからの水素ガスの流れのみを許容する。充填側タンク流路116は、バルブ機構111の接続ポート116p(図2参照)からバルブ外流路を延ばして充填側マニホールド123に至り、水素ガス供給系120の水素充填管路120Rと繋がる。供給側タンク流路115は、充填側タンク流路116と同様に図示しない接続ポートからバルブ該流路を延ばして供給側マニホールド121に至り、水素ガス供給系120の燃料ガス供給管路120Fと繋がる。タンク到達流路117は、供給側タンク流路115と充填側タンク流路116との流路接続ポイント119から延びて、水素ガスタンク110の内部に到る。流路規制弁機構300は、この流路接続ポイント119に設けられ、充填側タンク流路116を介した水素ガス充填と、供給側タンク流路115を介した燃料電池100への水素ガス供給に関与する。こうした流路構成により、水素ガスタンク110は、タンク内の水素ガスを、タンク到達流路117と供給側タンク流路115および供給側マニホールド121を経由して燃料ガス供給管路120Fに送り出し、インジェクター125を経て燃料電池100に供給する。
【0017】
上記管路構成を備える水素ガス供給系120は、後述の制御装置200にて供給タンクとして選択された車両前方側または後方側のタンクアッセンブリー102の水素ガスタンク110のいずれか、もしくは両者の水素ガスタンクからの水素ガスを、制御装置200の制御下でなされるインジェクター125での流量調整と減圧バルブ126での減圧(調圧)とを経た上で、燃料電池100のアノードに供給しつつ、放出管路124の排出流量調整バルブ127で調整された流量で、アノードオフガスを後述の放出管路162から大気放出する。インジェクター125は、ガス流量を流量ゼロから調整可能であり、流量ゼロとすることで燃料ガス供給管路120Fの閉塞を図る。なお、インジェクター125の上流側に、流量調整バルブを設けることもでき、インジェクター125を水素ガスの噴出供給用とすることもできる。また、タンクアッセンブリー102にあっては、一つ、或いは三つ以上とすることもできる。
【0018】
水素ガス供給系120におけるレセプタクル122は、既存のガソリン車両における車両側方の燃料給油箇所に相当するガス充填箇所に位置し、車両外装側カバーで覆われている。そして、図示しない水素ガスステーションでの水素ガス充填に際しては、レセプタクル122は、当該ステーションのガス充填ノズルGsに装着され、高圧で充填供給された水素ガスを、水素充填管路120R、充填側マニホールド123および充填側タンク流路116を経て、水素ガスタンク110に導く。こうしたガス充填に際して、水素ガスタンク110ごとの温度センサー114は、タンク内温度を制御装置200およびステーション内制御装置に出力し、充填ガス量や充填圧の確認に用いられる。
【0019】
空気供給系160は、コンプレッサ150を経て燃料電池100に到る酸素供給管路161と、未消費の空気(カソードオフガス)を大気放出する放出管路162と、当該管路の排出流量調整バルブ163とを備える。この空気供給系160は、酸素供給管路161の開口端から取り込んだ空気を、コンプレッサ150にて流量調整した上で燃料電池100のカソードに供給しつつ、放出管路162の排出流量調整バルブ163で調整された流量でカソードオフガスを放出管路162を経て大気放出する。
【0020】
制御装置200は、論理演算を実行するCPUやROM、RAM等を備えたいわゆるマイクロコンピュータで構成され、アクセル等のセンサー入力やガス充填に伴うセンサー入力、温度センサー114のセンサー入力等を受けて、インジェクター125や上記の各種のバルブの開閉制御を含む燃料電池100の種々の制御を司る。
【0021】
次に、流路規制弁機構300について説明する。図2は流路規制弁機構300の構成を断面視して示す説明図、図3は流路規制弁機構300の構成部品の分解斜視図、図4は流路規制弁機構300の要部をなす転換シャフト310の全体斜視図、図5は転換シャフト310の先端部の他の角度からの斜視図、図6図2における6−6線断面図である。
【0022】
図示するように、流路規制弁機構300は、転換シャフト310と、保持スリーブ320と、コイルバネ330と、調整コマ340と、コマ案内体350とを備える。転換シャフト310は、バルブ機構111に形成された案内孔111p1に挿入され、その先端側の円錐状のテーパ凸部312を、案内孔111p1の案内孔ボトム111pbに位置させる。案内孔111p1は、バルブ機構111の上面から、既述した供給側タンク流路115と充填側タンク流路116との流路接続ポイント119に掛けて穿孔され、案内孔ボトム111pbが流路接続ポイント119に達するように形成されている。
【0023】
保持スリーブ320は、キャップ状をなし、バルブ機構111に案内孔111p1と同心でこれより大径に形成された固定孔111p2に挿入されている。そして、この保持スリーブ320は、図示しない突起や当該突起が入り込む図示しない凹部とにより固定孔111p2に位置決めされた上で、当該固定孔に保持される。コイルバネ330は、保持スリーブ320の内部に組み込まれ、転換シャフト310のフランジ部315に、図2における上向きにバネ付勢力を及ぼす。この他、保持スリーブ320は、その周壁に案内切欠324を備え、この案内切欠324にフランジ突起316を挿入させた転換シャフト310を、回転させることなく進退可能とする。転換シャフト310は、Oリング314により案内孔111p1に対してガスシールされ、案内孔111p1に沿って進退し、テーパ凸部312の基部側に設けた二面幅部313の各平面を供給側タンク流路115の開口と充填側タンク流路116の開口に対向させる。転換シャフト310のテーパ凸部312は、タンク到達流路117の開口テーパ面117kと傾斜を合わせて形成され、開口テーパ面117kに当接することで、タンク到達流路117をその流路開口において閉鎖する。
【0024】
コマ案内体350は、固定孔111p2の開口側に螺合して固定され、調整コマ340は、このコマ案内体350の内周壁の雌ネジと螺合している。そして、この調整コマ340は、図示しない六角レンチやハンドルにて、締め付け側或いは開放側に回転されて、図2における上下に移動する。この調整コマ340の上下移動により、転換シャフト310は、図2に示すタンク到達流路117の開放位置とテーパ凸部312にて既述したようにタンク到達流路117を閉鎖した閉弁位置との間を、案内孔111p1に沿って進退する。この転換シャフト310の進退は、位置決め固定済みの保持スリーブ320における案内切欠324へのフランジ突起316の挿入により、転換シャフト310が回転することなく起きるので、転換シャフト310の進退の過程において、二面幅部313の各平面は、供給側タンク流路115の開口と充填側タンク流路116の開口に対向したままとなる。二面幅部313は、転換シャフト310が図2に示すタンク到達流路117の開放位置にある時に、案内孔ボトム111pbの内周壁面と二面幅部313で囲まれた領域をガス流路とする。このガス流路のガス通過面積Sbは、図6に示すように、供給側タンク流路115の流路面積Sr、充填側タンク流路116の流路面積Srと少なくとも同じとされ、本実施形態では、ガス通過面積Sbを流路面積Srよりやや大きくした。
【0025】
以上説明した本実施形態の燃料電池システム10では、次のようにして、水素ガスステーションからのガス充填と、燃料電池100へのタンク内の水素ガス供給とを行う。流路規制弁機構300は、図2に示すようにタンク到達流路117の開口側を転換シャフト310のテーパ凸部312が開放させている位置を原位置とし、バルブ機構111に上記各部材が組み込まれる。転換シャフト310がこの原位置を取る状態で、水素ガスステーションからのガス充填がなされる。このガス充填の際には、制御装置200により供給側タンク流路115の開閉バルブ112が閉弁制御され、その後、レセプタクル122がガス充填ノズルGsに装着される。レセプタクル122の装着後は、水素ガスステーションから水素ガスが高圧で供給され、その供給された水素ガスは、水素充填管路120Rと充填側マニホールド123を経て、流路規制弁機構300の充填側タンク流路116に流入する。
【0026】
こうして充填側タンク流路116に流入した水素ガス(以下、充填水素ガスと称する)は、充填側タンク流路116と供給側タンク流路115との流路接続ポイント119に設けられた転換シャフト310の二面幅部313に衝突して、そのガスの流れがタンク到達流路117の側に転換される。このガスの流れの転換を詳しく述べると、充填側タンク流路116を流れる充填水素ガスは、二面幅部313に衝突した後、この二面幅部313の平面および二面幅部313より下端側のテーパ凸部312のテーパ状側面に案内されることで、ガスの流れの転換を起こし、タンク到達流路117に流れ込むことになる。よって、水素ガスステーションからの充填水素ガスに水分が含まれていても、その水分は、転換シャフト310の二面幅部313による充填水素ガスの流れの転換により、詳しくは二面幅部313への充填水素ガスの衝突により、タンク到達流路117の側に充填水素ガスと共に導かれる。このため、本実施形態の流路規制弁機構300を有するタンクアッセンブリー102によれば、充填水素ガス中の水分を、流路接続ポイント119より下流側の供給側タンク流路115や当該流路の開閉バルブ112および減圧バルブ126、インジェクター125に達しがたくできるので、供給側タンク流路115の開閉バルブ112における弁内での水分の凍結を抑制できる。減圧バルブ126やインジェクター125についても、弁内での水分凍結を抑制できる。よって、本実施形態の流路規制弁機構300を有するタンクアッセンブリー102によれば、開閉バルブ112等の上記各機器を低温環境下でも高い信頼性で駆動できるので、低温環境下における燃料電池100の発電性能を確保できる。
【0027】
上記のように水素ガス充填を行う場合、充填側タンク流路116を流れる充填水素ガスの一部は、転換シャフト310のテーパ凸部312の頂上を越えて供給側タンク流路115の側に流れ込み得る。しかしながら、充填側タンク流路116の側で既にガスの流れの転換が起きているので、供給側タンク流路115の側に流れ込んだ水素ガスには、そもそもごく少量の水分しか含まれていない。また、テーパ凸部312の頂上を越えて供給側タンク流路115の側に流れ込む水素ガスの流量事態もごく少量であるので、供給側タンク流路115の開閉バルブ112に水分が到達しがたいことに変わりはない。
【0028】
水素ガス充填の完了後における燃料電池100への水素ガス供給は、次のようになる。図1に示す制御装置200は、アクセル踏込量等で定まる供給量で、水素ガスタンク110に充填済みの水素ガス(以下、タンク内水素ガスと称する)を、燃料電池100に供給する。この際、制御装置200は、供給側タンク流路115の開閉バルブ112を開弁制御すると共に、インジェクター125についてもガス吹出量を調整する。こうしたタンク内水素ガスの供給の際には、タンク内水素ガスは、タンク到達流路117から転換シャフト310のテーパ凸部312に到達し、テーパ凸部312のテーパ状側面に案内されて供給側タンク流路115に導かれ、供給側タンク流路115を経て燃料電池100に支障なく供給される。この場合、充填側タンク流路116では、その有する逆止弁113までタンク内水素ガスは浸入するものの、逆止弁113の上流側には流れない。
【0029】
本実施形態の流路規制弁機構300を有するタンクアッセンブリー102では、タンク到達流路117を、水素ガスステーションから供給されて充填側タンク流路116に流入した充填水素ガスの充填流路とできるほか、タンク内水素ガスを供給側タンク流路115に至らしめる排出供給流路ともできる。このため、本実施形態の流路規制弁機構300を有するタンクアッセンブリー102によれば、バルブ機構111における流路増加をもたらさないので、バルブ機構外郭を大きくする必要がなくなり、コンパクト化や軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0030】
本実施形態の流路規制弁機構300を有するタンクアッセンブリー102は、調整コマ340の操作により、転換シャフト310のテーパ凸部312を、タンク到達流路117の流路開口の開口テーパ面117kに当接させて、タンク到達流路117をその流路開口において閉鎖する。供給側タンク流路115と充填側タンク流路116についても、転換シャフト310により、流路接続ポイント119にて閉鎖する。よって、本実施形態の流路規制弁機構300を有するタンクアッセンブリー102によれば、タンク到達流路117を閉鎖した状態で、供給側タンク流路115と充填側タンク流路116とを、それぞれ個別にリーク検査できるので、流路からのガスリークの回避の上から有益となる。
【0031】
本実施形態の流路規制弁機構300を有するタンクアッセンブリー102は、流路規制弁機構300の転換シャフト310にて、既述したようにタンク到達流路117の閉鎖と開放を図るので、タンク到達流路117に流路開閉のための開閉弁を別途設ける必要がなく、構成の簡略化、部品点数の削減等が可能となる。
【0032】
本実施形態の流路規制弁機構300を有するタンクアッセンブリー102は、タンク到達流路117を開放した図2に示す原位置に転換シャフト310を位置させておくだけで、タンク到達流路117を、充填水素ガスのガス充填流路とタンク内水素ガスの排出供給流路とに確実に兼用できるので、簡便であると共に、コンパクト化や軽量化、低コスト化の実効性が高まる。
【0033】
本実施形態の流路規制弁機構300を有するタンクアッセンブリー102では、充填水素ガスの流れの転換を図る転換シャフト310の二面幅部313と案内孔ボトム111pbで形成するガス流路のガス通過面積Sbを、供給側タンク流路115と充填側タンク流路116の流路面積Srよりやや大きくした。よって、本実施形態のタンクアッセンブリー102を有するタンクアッセンブリー102によれば、水素ガスタンク110への水素ガス充填の際および燃料電池100へのタンク内水素ガスの供給の際に、不用意な圧力上昇を招かないので、ガス充填およびガス供給に支承を来さないようにできる。
【0034】
本実施形態のバルブ機構111を有するタンクアッセンブリー102では、供給側タンク流路115と充填側タンク流路116とを、流路接続ポイント119において直線状に接続する。よって、バルブ機構111における流路形成が容易となり、低コスト化を図ることができる。
【0035】
本実施形態のタンクアッセンブリー102を有する燃料電池システム10によれば、既述したようなタンクアッセンブリー102としてのコンパクト化や軽量化、低コスト化を通して、システム全体のコンパクト化、軽量化等を図ることができる。これに加え、供給側タンク流路115の開閉バルブ112および減圧バルブ126、インジェクター125に水分を達しがたくして、これら機器での水分の凍結を抑制できるので、本実施形態の燃料電池システム10によれば、開閉バルブ112等の上記各機器を低温環境下でも高い信頼性で駆動できるので、低温環境下における燃料電池100の発電性能を確保できる。
【0036】
次に、他の実施形態について説明する。図7は本発明の他の実施形態としての燃料電池システム10Aを概略的に示す説明図である。この実施形態では、図7に示すように、バルブ機構111は、タンク到達流路117に流路を開閉するタンク側開閉弁118を備え、流路規制弁機構300Aについては、次の構成とする。図8は他の実施形態における流路規制弁機構300Aの構成を断面視して示す説明図である。
【0037】
図8に示すように、バルブ機構111は、案内孔111p1に転換シャフト310Aを挿入して備える。この転換シャフト310Aは、先の実施形態の転換シャフト310と異なり、案内孔111p1において進退することはなく、フランジ部315にて、回転方向および案内孔軸方向に位置決めされている。そして、バルブ機構111は、ネジキャップ360にて転換シャフト310Aを押し付け固定している。このように固定されている転換シャフト310Aは、その先端のテーパ凸部312を、先の実施形態における転換シャフト310と同様、流路接続ポイント119における案内孔ボトム111pbに位置させ、タンク到達流路117を開放したままとする。そして、この転換シャフト310Aにあっても、二面幅部313の各平面を、供給側タンク流路115の開口と充填側タンク流路116の開口に対向させる。これにより、充填側タンク流路116から流れ込んだ充填水素ガスは、二面幅部313にてガスの流れの転換を受けてタンク到達流路117に導かれ、水素ガスタンク110に貯留される。また、水素ガスタンク110のタンク内水素ガスは、タンク到達流路117の開口を通過した後に、テーパ凸部312のテーパ状側面に案内されて供給側タンク流路115に入り込み、インジェクター125から燃料電池100に供給される。
【0038】
この実施形態の流路規制弁機構300Aを有するタンクアッセンブリー102Aによっても、転換シャフト310Aの二面幅部313にて充填水素ガスの流れの転換を図るので、既述した効果を奏することができる。そして、この実施形態の流路規制弁機構300Aを有するタンクアッセンブリー102Aでは、タンク到達流路117に設けたタンク側開閉弁118によりタンク到達流路117を閉鎖することで、供給側タンク流路115と充填側タンク流路116とを流路接続ポイント119において繋がった一つの流路系として、両流路のリーク検査を同時にでき、簡便である。タンク側開閉弁118については、手動操作とできるほか、制御装置200にて駆動制御される電動式の開閉弁としてもよい。
【0039】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、或いは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0040】
上記の実施形態では、流路規制弁機構300を、バルブ機構111の上面側から組み込んだが、バルブ機構111の側面側から組み込むようにしてもよい。図9は流路規制弁機構300の構成を組み込み形態を変更した状態で断面視して示す説明図である。図示するように、この実施形態では、水素ガスタンク110に到るタンク到達流路117は、屈曲流路とされ、案内孔ボトム111pbから延びる上流側流路の奥側に水分貯まり117wを備える。供給側タンク流路115は、例えば図における紙面奥側から水平に延びて流路接続ポイント119にて充填側タンク流路116と接続し、充填側タンク流路116は、流路接続ポイント119から紙面手前に水平に延びる。そして、転換シャフト310は、案内孔ボトム111pbにおいて、二面幅部313を既述したように供給側タンク流路115の開口と充填側タンク流路116の開口に対向させる。このような組み付け形態の流路規制弁機構300を有するタンクアッセンブリー102によっても、既述した効果を奏することができる。通常、水素ガスタンク110は、車両において横置き搭載されるので、図9に示す流路規制弁機構300は、タンク到達流路117をその流路開口で閉鎖する際の操作対象である調整コマ340を、車両床下から操作できるようにする。よって、供給側タンク流路115や充填側タンク流路116のリーク検査に当たり、図1に示した燃料電池搭載車両20をジャッキアップすれば、保守作業員は、車両床下側から容易に調整コマ340を操作できるので、作業性が高まる。
【符号の説明】
【0041】
10、10A…燃料電池システム
20…燃料電池搭載車両
100…燃料電池
102、102A…タンクアッセンブリー
110…水素ガスタンク
111…バルブ機構
111p1…案内孔
111p2…固定孔
111pb…案内孔ボトム
112…開閉バルブ
113…逆止弁
114…温度センサー
115…供給側タンク流路
116…充填側タンク流路
116p…接続ポート
117…タンク到達流路
117k…開口テーパ面
117w…水分貯まり
118…タンク側開閉弁
119…流路接続ポイント
120…水素ガス供給系
120F…燃料ガス供給管路
120R…水素充填管路
121…供給側マニホールド
122…レセプタクル
123…充填側マニホールド
124…放出管路
125…インジェクター
126…減圧バルブ
127…排出流量調整バルブ
150…コンプレッサ
160…空気供給系
161…酸素供給管路
162…放出管路
163…排出流量調整バルブ
200…制御装置
300、300A…流路規制弁機構
310、310A…転換シャフト
312…テーパ凸部
313…二面幅部
314…Oリング
315…フランジ部
316…フランジ突起
320…保持スリーブ
324…案内切欠
330…コイルバネ
340…調整コマ
350…コマ案内体
360…ネジキャップ
Sb…ガス通過面積
Sr…流路面積
Gs…ガス充填ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9