【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
<有機シランの合成>
[合成例1]
(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン(東京化成工業(株)製)150g、リモネン(東京化成工業(株)製)85.7g、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製)8.99gおよびトルエン300mlを、ナスフラスコ内で混合し、窒素ガスで30分間バブリングした後、70℃で6時間反応させた。その後、反応溶液を濃縮し、227gの無色の液体を得た(収率:97%)。反応式は、以下の通りであり、下記化学式で表される(3-((2-(4-メチルシクロヘキシ-3-エン-1-イル)プロパン-2-イル)チオ)プロピル)トリエトキシシラン:(3-((2-(4-methylcyclohex-3-en-1-yl)propan-2-yl)thio)propyl)triethoxysilane(有機シラン1)が得られた。
【0043】
【化5】
【0044】
以下のNMR結果から、生成物が上記化学式で表される有機シラン1であることを同定した。
【0045】
1H NMR (400MHz CDCl
3, δ in ppm): 1.21(t, 9H, -Si-(O-CH
2-C
H3)
3), 3.83(q, 6H, -Si-(O-C
H2-CH
3)
3), 0.58(t, 2H, -C
H2-Si-(O-CH
2-CH
3)
3), 1.7(m, 2H, -S-CH
2-C
H2-CH
2-Si-), 2.60(t, 2H, -S-C
H2-CH
2-CH
2-Si-), 1.38(s, 6H, -C(C
H3)
2-S-), 1.90(m, 1H, cyclohexene C
H), 1.79-2.04(m, 2H, cyclohexene C
H2), 1.91-2.01(m, 2H, cyclohexene C
H2), 1.49-1.74(m, 2H, cyclohexene C
H2), 5.37(t, 1H, cyclohexene C
H), 1.82(s, 3H, 4-methylcyclohexene C
H3).
13C NMR (400MHz CDCl
3, δ in ppm): 18.4(-Si-(O-CH
2-
CH
3)
3), 58.4(-Si-(O-
CH
2-CH
3)
3), 15.6(-
CH
2-Si-(O-CH
2-CH
3)
3), 17.4(-S-CH
2-
CH
2-CH
2-Si-), 31.7(-S-
CH
2-CH
2-CH
2-Si-), 26.0(-C(
CH
3)
2-S-), 45.3(-
C(CH
3)
2-S-), 52.2(cyclohexene
CH), 22.0(cyclohexene
CH
2), 27.0(cyclohexene
CH
2), 30.5(cyclohexene
CH
2), 120.1(cyclohexene
CH), 133.8(cyclohexene
C), 22.0(4-methylcyclohexene
CH
3)
【0046】
[合成例2]
(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン(東京化成工業(株)製)150g、4−ビニル−1−シクロヘキセン(東京化成工業(株)製)68.1g、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製)9.00gおよびトルエン300mlを、ナスフラスコ内で混合し、窒素ガスで30分間バブリングした後、70℃で6時間反応させた。その後、反応溶液を濃縮し、208gの無色の液体を得た(収率:95%)。反応式は、以下の通りであり、下記化学式で表される(3-((2-(シクロヘキシ-3-エン-1-イル)エチル)チオ)プロピル)トリエトキシシラン:(3-((2-(cyclohex-3-en-1-yl)ethyl)thio)propyl)triethoxysilane(有機シラン2)が得られた。
【0047】
【化6】
【0048】
以下のNMR結果から、生成物が上記化学式で表される有機シラン2であることを同定した。
【0049】
1H NMR (400MHz CDCl
3, δ in ppm): 1.21(t, 9H, -Si-(O-CH
2-C
H3)
3), 3.83(q, 6H, -Si-(O-C
H2-CH
3)
3), 0.58(t, 2H, -C
H2-Si-(O-CH
2-CH
3)
3), 1.7(m, 2H, -S-CH
2-C
H2-CH
2-Si-), 2.44(t, 2H, -S-C
H2-CH
2-CH
2-Si-), 2.60(t, 2H, -CH
2-C
H2-S-), 1.62(t, 2H, -C
H2-CH
2-S-), 1.64(m, 1H, cyclohexene C
H), 1.79-2.04(m, 2H, cyclohexene C
H2), 1.91-2.01(m, 2H, cyclohexene C
H2), 1.49-1.74(m, 2H, cyclohexene C
H2), 5.59(t, 2H, cyclohexene C
H).
13C NMR (400MHz CDCl
3, δ in ppm): 18.4(-Si-(O-CH
2-
CH
3)
3), 58.4(-Si-(O-
CH
2-CH
3)
3), 15.6(-
CH
2-Si-(O-CH
2-CH
3)
3), 16.8(-S-CH
2-
CH
2-CH
2-Si-), 38.4(-S-
CH
2-CH
2-CH
2-Si-), 31.1(-CH
2-
CH
2-S-), 32.1(-
CH
2-CH
2-S-), 38.3(cyclohexene
CH), 28.6(cyclohexene
CH
2), 23.1(cyclohexene
CH
2), 35.7(cyclohexene
CH
2), 126.0(cyclohexene
CH).
【0050】
<ゴム組成物の評価>
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ジエン系ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0051】
・SBR:ランクセス株式会社製「VSL5025−0HM」
・変性SSBR:アミノ基及びアルコキシ基末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、JSR株式会社製「HPR350」
・BR:宇部興産株式会社製「BR150B」
・シランカップリング剤A:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニック・デグサ社製「Si69」
・有機シラン1:合成例1で合成したもの
・有機シラン2:合成例2で合成したもの
・シリカ:東ソー・シリカ株式会社製「ニップシールAQ」(BET=205m
2/g)
・カーボンブラック:三菱化学株式会社製「ダイアブラックN341」
・オイル:昭和シェル石油株式会社製「エキストラクト4号S」
・亜鉛華:三井金属鉱業株式会社製「亜鉛華1号」
・老化防止剤:住友化学株式会社製「アンチゲン6C」
・ステアリン酸:花王株式会社製「ルナックS−20」
・ワックス:日本精鑞株式会社製「OZOACE0355」
・硫黄:鶴見化学工業株式会社製「5%油入微粉末硫黄」
・加硫促進剤:住友化学株式会社製「ソクシノールCZ」
【0052】
得られた各ゴム組成物について、耐スコーチ性能を評価するとともに、160℃×20分で加硫して所定形状の試験片を作製して、低燃費性能とウェットグリップ性能を評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0053】
・耐スコーチ性能:JIS K6300に準拠して東洋精機(株)製ロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴム組成物を125℃で1分間予熱後、最低粘度Vmより5ムーニー単位上昇するのに要した時間t5を測定し、比較例3の値を100とした指数で示した。指数が大きいほど、スコーチタイムが長く、耐スコーチ性能に優れることを意味する。
【0054】
・低燃費性能(発熱特性):東洋精機株式会社製の粘弾性試験機を用いて、初期歪み10%、動的歪み1%、周波数10Hz、温度60℃の条件下で損失係数tanδを測定し、比較例3の値を100とした指数で示した。60℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、低燃費性能の指標として一般に用いられているものであり、上記指数が小さいほどtanδが小さく、従って発熱しにくく、タイヤとしての低燃費性能に優れることを示す。
【0055】
・ウェットグリップ性能(低温特性):測定温度を0℃に変え、その他は上記低燃費性能と同様にして、tanδを測定し、比較例3の値を100とした指数で示した。0℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、ウェットグリップ性能の指標として一般に用いられているものであり、上記指数が大きいほどtanδが大きく、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0056】
【表1】
【0057】
結果は、表1に示す通りである。実施例1〜4に示すように、シランカップリング剤として合成例1,2に係る有機シラン1,2を配合した場合、ポリスルフィドシランを配合した比較例2〜4に対して、同配合量で比較して、低燃費性能とウェットグリップ性能がバランス良く改善されており、また耐スコーチ性能も良好であった。また、実施例6に示すように、ゴム成分として変性ジエン系ゴムを用いることにより、低燃費性能の更なる改善効果が認められた。