(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018002
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】樋エルボ継手
(51)【国際特許分類】
E04D 13/08 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
E04D13/08 301D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-58105(P2013-58105)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-181534(P2014-181534A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006172
【氏名又は名称】三菱樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100154313
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100140615
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 弘
(72)【発明者】
【氏名】古川 英治
【審査官】
油原 博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−63760(JP,A)
【文献】
特開2007−205008(JP,A)
【文献】
特開2010−126899(JP,A)
【文献】
実開平4−129239(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/08
E04D 13/068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略L字形に屈曲していて両端部に竪樋の端部内面に嵌合する差口がそれぞれ設けられた継手本体と、一側の端部を傾斜させてなる前記竪樋と同一断面形状を呈する筒体であって前記両差口からそれぞれ継手本体に装着されて継手本体の外面に取り付けられる一対のカバー材からなる樋エルボ継手であって、
前記継手本体はその両差口の外面にカバー材の端部が係合する凸状の押さえリブが設けられているとともに、屈曲部の外面に当該屈曲部の内折れ部と外折れ部の中央を通って周方向に連続して突出した鍔部が設けられており、
継手本体に装着された両カバー材がその傾斜した端部を前記屈曲部外周面の鍔部に当接させ、且つ他側の端部を差口の押さえリブに係合させて継手本体に取り付けられるようにした構成を有することを特徴とする樋エルボ継手。
【請求項2】
継手本体がその屈曲部の外折れ部を湾曲させて形成されているとともに、当該外折れ部外面の湾曲面内に鍔部と交差して継手本体の両端部側へそれぞれ伸びた突部が設けられた構成を有することを特徴とする請求項1に記載の樋エルボ継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集水器と竪樋や竪樋と這い樋などの、竪樋の配管接続に使用される樋エルボ継手の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の樋エルボ継手として、
図5(A)に示されるように、略L字形に屈曲した継手本体100に、竪樋の管面を略45度の傾斜角度で切断して形成した一対のカバー材101,101を装着し、端部を突き合わせてL字型に接続したカバー材101,101を継手本体100の外面に一体に接着して構成されたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
また、同図(B)に示されるように、継手本体100の差込み部の外面に軸方向に伸びたリブ100a,100aを突設する一方、カバー材101,101の内面にリブ100a,100aが嵌合する凹溝101a,101aをそれぞれ形成し、樋エルボ継手を組み立てる際に、予め継手本体100のリブ100a,100aに接着剤を塗布しておき、両リブ100a,100aにカバー材100,100の凹溝101a,101aを嵌合させることにより、継手本体100周面の所定位置にカバー材101,101が装着固定されるように構成されたものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−129239号公報
【特許文献2】特開2005−89994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の樋エルボ継手において、継手本体100の外周面に沿ってL字型に接続するカバー材101,101が竪樋を切断して形成されるものであれば、専用の部材の成形が不要となって配管接続に要する部材コストを抑えることができる。
しかし、端部が所定の傾斜角度となるように竪樋の管面を斜めに正確に切断し、カバー材101の傾斜端部を精密な寸法精度に加工するのは容易ではなく、竪樋の切断位置がずれてしまい易い。
接続するカバー材101,101のうちの一方の切断端面がゆがんでいたり傾斜角度が僅かにずれていたりすると、切断端面同士をぴったりと接合させて接続することができず、接合部分に隙間ができて外観上の見栄えが悪くなってしまう。接合部分に隙間があると、そこから水が漏れ出す事態も生じ兼ねない。そのため、従来のものでは、カバー材101の傾斜端部が所定の寸法精度となるまでカットアンドトライを繰り返して竪樋を切断したり、或いは竪樋を切断するための専用の治具を製作したりするなど加工コストが高くならざるを得なかった。
【0005】
また、
図5(B)に示される樋エルボ継手は、竪樋を切断して得られる薄肉なカバー材101の内面に凹溝101aを形成することは極めて困難で実用的ではなく、さらに、従来の樋エルボ継手は、継手本体100の表面にカバー材101,101を装着した後、接着剤が固化するまでカバー材101,101を装着位置に保持しなければならず、組み立ての際に適宜な保持手段を別途用意しておく必要がある。
【0006】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑み、継手本体にカバー材を装着してなる樋エルボ継手を、カバー材を精密に加工しなくとも継手本体の表面でカバー材の端部同士を綺麗に継ぎ合わせることができるようにし、また、保持手段を用いなくとも、継手本体に装着されたカバー材を装着位置に固定して保持することができるように構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明は、略L字形に屈曲していて両端部に竪樋の端部内面に嵌合する差口がそれぞれ設けられた継手本体と、一側の端部を傾斜させてなる前記竪樋と同一断面形状を呈する筒体であって前記両差口からそれぞれ継手本体に装着されて継手本体の外面に取り付けられる一対のカバー材からなる樋エルボ継手において、前記継手本体はその両差口の外面にカバー材の端部が係合する凸状の押さえリブが設けられているとともに、屈曲部の外面に当該屈曲部の内折れ部と外折れ部の中央を通って周方向に連続して突出した鍔部が設けられており、継手本体に装着された両カバー材がその傾斜した側の端部を前記屈曲部外周面の鍔部に当接させ、且つ他側の端部を差口の押さえリブに係合させて継手本体に取り付けられるようにした構成を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の樋エルボ継手の組み立ては、継手本体の表面又は両カバー材の内面に接着剤を塗布し、或いは継手本体と両カバー材の両方に接着剤を塗布した状態で、継手本体の両側の差口に、両カバー材をそれぞれの傾斜端部の側から差し込んで、継手本体の外面にカバー材を装着することにより行われる。継手本体に装着されたカバー材は、その傾斜端部が継手本体の屈曲部外周面に設けられた鍔部に当接し、且つ他側の端部が差口に設けられた押さえリブに係合して装着位置に保持される。
【0009】
組み立てられた樋エルボ継手は、その屈曲部の内折れ部と外折れ部の対角部に沿って突出した鍔部の両側に両カバー材の傾斜端部がそれぞれ当接し、恰も屈曲部に沿って装着されたカバー材を鍔部で分断した如き、屈曲部中央に表出した鍔部が目立つ外観のものとなる。そのため、鍔部に当接するカバー材の傾斜端部の端面が若干ゆがんでいたり傾斜角度がずれていたりしていても、外観上、屈曲部の対角部沿って伸びた鍔部が目立つため、鍔部に当接するカバー材の端面のゆがみやずれは目に付き難く、カバー材の傾斜端部同士の継ぎ合わせ部分の外観を綺麗に収めることができる。
精密な寸法に加工されていないカバー材の傾斜端部同士を直に接合した場合、継ぎ合わせ部分に大きな隙間や撓んだ部分ができることがあるが、前記の通り継手本体の屈曲部に設けた鍔部を介して前記傾斜端部を接続することで、鍔部との間にできる隙間や撓みは極めて小さなものとなって目に付き難く、また、継手本体に設けた鍔部は接着剤を堰き止める堤の機能をなすため、鍔部に当接したカバー材の傾斜端部を鍔部に沿って確実に接着させることができる。
また、カバー材は、その他側の端部が継手本体の差口に設けられた押さえリブに係合して装着位置に保持されるため、継手本体に装着したまま放置しておけば接着剤の固化によりカバー材は装着位置に固定され、カバー材を装着位置に保持するための手段は用いずに継手本体に一体に取り付けることができる。
カバー材の傾斜端部同士を直に接合固定する従来の樋エルボ継手では、継手本体の両端部の差口からカバー材を同時に差込んで傾斜端部同士を接合させ、接着剤が固まるまで接合状態が保持されるように両カバー材を固定しておく必要があったが、本発明の樋エルボ継手では、両カバー材を同時に操作する必要はなく、一方のカバー材を継手本体に装着して固定した後に他方のカバー材を装着するなど、継手本体にカバー材を片方づつ装着し固定するという簡易な操作によって組み立てることが可能である。
【0010】
前記構成の樋エルボ継手において、その内部を雨水がスムーズに流れるように、継手本体はその屈曲部の外折れ部が湾曲して形成されていることが好ましく、また、カバー材を継手本体に装着した際に、その傾斜端部が継手本体の屈曲部外周面に嵌合するように、前記屈曲部の外折れ部外面の湾曲面内に、鍔部と交差して継手本体の両端部側へそれぞれ伸びた突部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樋エルボ継手によれば、継手本体の差口にカバー材を差し込んで、その傾斜端部を継手本体の鍔部に当接させ、且つ他側の端部を押さえリブに係合させるという簡易な装着操作により組み立てることができる。継手本体へのカバー材の取り付けは、片方の差口毎で別々に行え、接着剤が固まるまでにカバー材を装着位置に保持する手段は不要であり、また、カバー材はその傾斜端部が継手本体の鍔部に当接する位置で固定されるように設けてあるので、継手本体に対するカバー材の取り付け位置を微調整することなく、鍔部に傾斜端部が当接するようにカバー材を押し込むだけで所定の固定位置に取り付けることが可能である。
また、本発明の樋エルボ継手は、カバー材の傾斜端部が継手本体の鍔部に沿って固定され、屈曲部の中央に表出した鍔部が目立つ外観を呈するため、カバー材の傾斜端部の端面が若干ゆがんでいたり傾斜角度がずれていたりしていても目に付き難く、傾斜端部が精密な加工精度で形成されていないカバー材を用いた場合であっても、鍔部を介したカバー材の傾斜端部同士の継ぎ合わせ部分の外観を綺麗に収めることができる。
継手本体に装着するカバー材を形成するにあたっては、傾斜端部の精密な加工精度は要求されず、カバー材の傾斜端部の加工が粗かったり若干の寸法誤差があったりするものでも用いることができるので、カバー材の製作コストが抑えられ、特に竪樋を切断してカバー材を形成する場合に、特別な加工治具を用いることなく、切断操作に時間をかけることなく、短時間の加工作業でカバー材を製作することができ、前記組み立て作業の簡易性と相俟って、樋エルボ継手の部材コストや加工コストの低廉化及び生産性の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の樋エルボ継手を用いた竪樋の配管接続の一態様を示した図である。
【
図2】
図1の樋エルボ継手の平面図と側面図である。
【
図3】
図1の樋エルボ継手を片方のカバー材を分離した状態の横断面図である。
【
図4】
図1の樋エルボ継手の継手本体とカバー材を分離した状態の外観図である。
【
図5】(A),(B)はそれぞれ従来の樋エルボ継手の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態の樋エルボ継手を用いて竪樋を配管接続する態様を示している。同図において、符号1は樋エルボ継手、2は継手本体、3はカバー材、4は竪樋本体であり、この樋エルボ継手1は、屋根から軒下に至る竪樋配管経路上の竪樋本体4を流れる雨水の流路の方向を曲げる部分に設置され、その両端に断面略正方形に形成されたアルミニウム製の竪樋本体4,4の端部が一体に接続するように形成してある。
【0014】
図2〜
図4に示されるように、樋エルボ継手1は、略L字形に屈曲していて両端部に竪樋本体4の端部内面に嵌合する差口21,21がそれぞれ設けられた合成樹脂製の継手本体2に、前記竪樋本体4の管面を略45度の傾斜角度で切断して形成した一対のカバー材3,3を装着し、継手本体2の外面にカバー材3,3を一体に接着して構成してある。
【0015】
詳しくは、継手本体2は、断面略正方形の筒体をその中央で90度に屈曲した形状を呈しており、その両端の差口21,21が竪樋本体4の端部内周面に圧密に嵌合する寸法に形成され、差口21を形成する四周面の各外面に後述するカバー材3の端部32が係合する凸状の押さえリブ21aが各々設けられているとともに、両差口21,21の間の屈曲部22の外折れ部22aを、緩やかに湾曲して両差口21,21に連なる湾曲面としてある。
【0016】
また、前記屈曲部22の外面には、屈曲部22の外折れ部22aと内折れ部22bの対角中央を通って周方向に連続していて、屈曲部22の表面から適宜な高さで突出した鍔部23が設けられているとともに、前記外折れ部22aの湾曲した外面中央に、鍔部23と交差して両差口21,21側へとそれぞれ伸びた突部24,24が設けてある。
鍔部23と突部24の屈曲部22の表面からの突出高さは、鍔部23が、継手本体2にカバー材3を差し込んだときに後述するカバー材3の傾斜端部31の端面全周が鍔部23の側部に当接する高さに設定され、突部24が前記差し込まれたカバー材3の傾斜端部31の内面に嵌合する高さに設定してある。
【0017】
カバー材3,3は、前記の通り竪樋本体4を切断して形成され、一側の端部を端面が略45度で傾斜した傾斜端部31とし、当該傾斜端部31から他側の端部32までの長さを、カバー材3を継手本体2の差口21から装着し、前記鍔部23に傾斜端部31を当接した状態で前記差口21に設けた押さえリブ21aに端部32が係合する長さに設定して形成してある。
【0018】
継手本体2とカバー材3,3からなる樋エルボ継手1の組み立ては、継手本体2の表面又はカバー材3,3の内面に接着剤を塗布した状態で、継手本体2の差口21,21に、カバー材3,3をそれぞれの傾斜端部31側から差し込んで、継手本体2の外面にカバー材3,3を装着することにより行われ、装着されたカバー材3,3は、その傾斜端部31,31が継手本体2の屈曲部22の外周面に設けられた鍔部23に当接し、且つ他側の端部32,32が差口21、21に設けられた押さえリブ21a,21aに係合して装着位置に保持され、接着剤の固化により一体に組み付けられる。カバー材3,3は、その他側の端部32,32が継手本体2の差口21,21に設けられた押さえリブ21a,21aに係合して装着位置に保持されるため、カバー材3,3を装着位置に保持するための手段は不要である。
【0019】
組み立てられた樋エルボ継手1は、その屈曲部22の外折れ部22aと内折れ部22bの対角部に沿って突出した鍔部23の両側にカバー材3,3の傾斜端部31,31がそれぞれ当接し、屈曲部22の中央に表出した鍔部23が目立つ外観のものとなるため、鍔部23に当接するカバー材3,3の傾斜端部31,31の端面が若干ゆがんでいたり傾斜角度がずれていたりしていても、外観上、ゆがみやずれは目に付き難く、カバー材3,3の傾斜端部31,31同士の継ぎ合わせ部分の外観を綺麗に収めることができる。
また、樋エルボ継手1は、その差口21,21に竪樋本体4,4の端部を接続して、屋根から軒下に至る竪樋の配管経路を構成し、前述の通り、継手本体2の屈曲部22の外折れ部22aを湾曲面としてあるので、上流の竪樋本体4から流入する雨水を下流の竪樋本体4へとスムーズに流し落とすことができる。
【0020】
なお、図示した樋エルボ継手1は、断面略四角形の竪樋本体4,4同士を接続できるように差口21,21を断面略四角形に設けたが、円形断面の竪樋など、接続する竪樋の形状に対応して差口21を適宜な断面形状に設けることができる。カバー材3は、竪樋本体4を切断して形成されるものの他に、専用に形成したものや適宜な手段で形成したものを用いることができる。
また、図示した樋エルボ継手は本発明の実施形態の一例を示すものであり、本発明は図示した形態のものに限定されず、他の適宜な形態で構成することが可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 樋エルボ継手、2 継手本体、21 差口、21a 押さえリブ、22 屈曲部、22a 外折れ部、22b 内折れ部、23 鍔部、24 突部、3 カバー材、31 傾斜端部、32 端部、4 竪樋本体