(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防振装置では、例えばシェイク振動の入力時に、アイドルオリフィスと収容室とが連通したり、振幅の比較的大きなアイドル振動の入力時に、アイドルオリフィスと収容室との連通が遮断されたりする等のおそれがあり、アイドルオリフィスと収容室との連通、及びその遮断を、弁部材により精度よく切り替えることに改善の余地があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、アイドルオリフィスと収容室との連通、及びその遮断を、簡易な構成で、しかも入力振動の振幅の影響を受けにくくして、入力振動の周波数に応じて精度よく切り替えることができる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の防振装置は、振動発生部及び振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、及び他方に連結される第2取付部材と、これらの両取付部材同士を互いに連結する弾性体と、液体が封入される前記第1取付部材内の液室を、前記弾性体を壁面の一部に有する主液室、及び副液室に仕切る仕切り部材と、を備え、前記仕切り部材には、前記主液室と前記副液室とを連通し、シェイク振動の入力に対して共振を生じさせる主シェイクオリフィスと、弁部材が変位自在若しくは変形自在に収容された収容室と、前記収容室と前記主液室とを連通し、シェイク振動の入力に対して共振を生じさせる副シェイクオリフィスと、前記収容室と前記主液室とを連通し、かつ前記副シェイクオリフィスより流通抵抗が小さい連通孔と、前記収容室と前記副液室とを連通し、アイドル振動の入力に対して共振を生じさせるアイドルオリフィスと、が形成され、前記弁部材は、前記主液室内の液圧変動に起因した前記収容室内での変位若しくは変形に伴って、前記アイドルオリフィスと前記収容室との連通、及びその遮断を切り替えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、弁部材の収容された収容室に、主液室と連通する副シェイクオリフィスが開口しているので、この防振装置にシェイク振動が入力されたときに、副シェイクオリフィスで共振を生じさせることで、収容室の弁部材が、副液室側に向けて押され、アイドルオリフィスの収容室内に向けた開口を閉塞することとなる。これにより、アイドルオリフィスと収容室との連通が遮断され、液室内の液体が、主シェイクオリフィスを通して流通し共振を生じさせることとなり、入力されたシェイク振動が減衰吸収される。
また、この防振装置にアイドル振動が入力されると、副シェイクオリフィスで目詰まりが生じ、弁部材に対する副液室側へ向けた押し付け力が軽減されることで、収容室内に進入した液体が、弁部材上を外周側に流れて下方に潜り込みやすくなり、弁部材を容易に浮遊させることができる。これにより、アイドルオリフィスの収容室内に向けた開口が開放され、液室内の液体が、アイドルオリフィスを通して流通し共振を生じさせることとなり、入力されたアイドル振動が減衰吸収される。
ここで、例えば、入力されたアイドル振動の振幅が比較的大きくても、副シェイクオリフィスで目詰まりが生ずることで、弁部材が副液室側に向けて押されにくくなるため、前述と同様に、アイドルオリフィスの収容室内に向けた開口が開放され、このアイドル振動を減衰吸収することができる。
以上より、例えばシリンダ室内に摺動自在にピストン部材を設ける等しなくても、簡易な構成で、アイドルオリフィスと収容室との連通、及びその遮断を、入力振動の振幅の影響を受けにくくして、周波数に応じて精度よく切り替えることができる。
【0008】
ここで、前記副シェイクオリフィスは、前記弁部材の表面のうち外周部より内側に位置する内側部分に向けて開口し、前記連通孔は、前記弁部材の表面における外周部に向けて開口してもよい。
【0009】
この場合、副シェイクオリフィスが、弁部材の表面における内側部分に向けて開口しているので、シェイク振動の入力時に、弁部材を安定して副液室側に向けて押すことが可能になり、アイドルオリフィスの収容室内に向けた開口を確実に閉塞することができる。
また、連通孔が、弁部材の表面における外周部に向けて開口しているので、アイドル振動の入力時に、連通孔を通して収容室内に進入した液体を、弁部材の下方に潜り込ませやすくなり、弁部材を確実に浮遊させることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、アイドルオリフィスと収容室との連通、及びその遮断を、簡易な構成で、しかも入力振動の振幅の影響を受けにくくして、入力振動の周波数に応じて精度よく切り替えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る防振装置の一実施形態を、
図1から
図3を参照しながら説明する。
この防振装置1は、
図1に示すように、振動発生部及び振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材11、及び他方に連結される第2取付部材12と、これらの両取付部材11、12同士を互いに連結する弾性体13と、液体が封入される第1取付部材11内の液室を、弾性体13を壁面の一部に有する主液室14、及び副液室15に仕切る仕切り部材16と、を備えている。
図示の例では、第2取付部材12は柱状に形成されるとともに、弾性体13は筒状に形成され、第1取付部材11、第2取付部材12及び弾性体13は、共通軸と同軸に配設されている。以下、この共通軸を軸線Oといい、軸線O方向に沿う主液室14側を一方側といい、副液室15側を他方側といい、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0013】
なお、この防振装置1が例えば自動車に装着された場合には、第2取付部材12が振動発生部としてのエンジンに連結される一方、第1取付部材11が図示しないブラケットを介して振動受部としての車体に連結されることにより、エンジンの振動が車体に伝達するのを抑える。
第1取付部材11の液室には、例えばエチレングリコール、水、シリコーンオイル等が封入される。
【0014】
第1取付部材11は、軸線O方向に沿って、一方側に位置する一方側外筒体21と、他方側に位置する他方側外筒体22と、を備えている。
一方側外筒体21における一方側の端部に弾性体13が液密状態で連結されていて、弾性体13により一方側外筒体21の一方側の開口部が閉塞されている。一方側外筒体21のうち、他方側の端部21aは、他の部分より大径に形成されている。一方側外筒体21の内部が主液室14となっている。一方側外筒体21において、弾性体13が連結された部分に対して他方側から連なる部分に、全周にわたって連続して延びる環状溝21bが形成されている。
【0015】
他方側外筒体22における他方側の端部にダイヤフラム17が液密状態で連結されていて、ダイヤフラム17により他方側外筒体22における他方側の開口部が閉塞されている。他方側外筒体22のうち、一方側の端部22aは、他の部分より大径に形成されている。この他方側外筒体22における一方側の端部22aが、一方側外筒体21における他方側の端部21a内に嵌合されている。また、他方側外筒体22内に仕切り部材16が嵌合されている。他方側外筒体22の内部のうち、仕切り部材16とダイヤフラム17との間に位置する部分が、副液室15となっている。また、他方側外筒体22は、ダイヤフラム17と一体に形成されたゴム膜によって、全域にわたって被覆されている。
【0016】
第2取付部材12における一方側の端面には、軸線Oと同軸に雌ねじ部12aが形成されている。第2取付部材12は、第1取付部材11から一方側に突出している。第2取付部材12には、径方向の外側に向けて突出し、かつ全周にわたって連続して延びるフランジ部12bが形成されている。フランジ部12bは、第1取付部材11における一方側の端縁から一方側に離れている。
【0017】
弾性体13は、弾性変形可能な例えばゴム材料等で形成され、一方側から他方側に向かうに従い漸次拡径された筒状に形成されている。弾性体13のうち、一方側の端部が、第2取付部材12に連結され、他方側の端部が、第1取付部材11に連結されている。なお、第1取付部材11の一方側外筒体21の内周面は、弾性体13と一体に形成されたゴム膜により、全域にわたって覆われている。
【0018】
仕切り部材16には、主液室14と副液室15とを連通し、シェイク振動の入力に対して液柱共振を生じさせる主シェイクオリフィス31と、弁部材32が変位自在若しくは変形自在に収容された収容室33と、収容室33と主液室14とを連通し、シェイク振動の入力に対して液柱共振を生じさせる副シェイクオリフィス34と、収容室33と主液室14とを連通し、かつ副シェイクオリフィス34より流通抵抗が小さい連通孔27と、収容室33と副液室15とを連通し、アイドル振動の入力に対して液柱共振を生じさせるアイドルオリフィス35と、が形成されている。
【0019】
以下、具体的に説明する。
仕切り部材16は、第1取付部材11内に嵌合されたシェイクオリフィス部材25と、シェイクオリフィス部材25内に配設されたアイドルオリフィス部材26と、を備えている。シェイクオリフィス部材25は、有頂筒状に形成され、その内側にアイドルオリフィス部材26が嵌合されている。
そして、シェイクオリフィス部材25に、主シェイクオリフィス31、副シェイクオリフィス34、及び連通孔27が形成され、アイドルオリフィス部材26に、アイドルオリフィス35が形成され、シェイクオリフィス部材25とアイドルオリフィス部材26との間に収容室33が形成されている。
【0020】
アイドルオリフィス部材26における一方側の表面には、窪み部が形成されており、この窪み部が、シェイクオリフィス部材25の頂壁における他方側の裏面により一方側から閉塞されることで、前記収容室33が画成されている。そして、この収容室33内に、平面視円形状に形成された板状の弁部材32が収容されている。図示の例では、弁部材32は、収容室33と比べて、軸線O方向の大きさ、及び径方向の大きさが双方ともに小さくなっている。弁部材32と収容室33の壁面との間の隙間は、軸線O方向の隙間が径方向の隙間より小さくなっている。なお、弁部材32は弾性体となっている。
【0021】
アイドルオリフィス部材26における他方側の裏面には、窪み部が形成されており、この窪み部がアイドルオリフィス35となっている。アイドルオリフィス35は平面視円形状に形成されている。また、アイドルオリフィス部材26には、アイドルオリフィス35と収容室33とを連通する第1開口部29が形成されている。アイドルオリフィス35の内径は、収容室33の内径と同等とされ、アイドルオリフィス35及び収容室33はそれぞれ、軸線Oから径方向に離れた共通軸と同軸に位置している。図示の例では、収容室33の内径が、アイドルオリフィス35の内径よりわずかに大きくなっている。
そして、弁部材32は、主液室14内の液圧変動に起因した収容室33内での変位若しくは変形に伴って、第1開口部29を開閉することで、アイドルオリフィス35と収容室33との連通、及びその遮断を切り替える。
なお、アイドルオリフィス部材26の裏面には、
図2に示すように、アイドルオリフィス35を囲うような平面視C字状をなす肉抜き孔26aが形成されている。
【0022】
主シェイクオリフィス31は、シェイクオリフィス部材25の外周面に形成された周溝とされ、その両周端部に、主液室14内に向けて開口する第2開口部31a、及び副液室15内に向けて開口する第3開口部31bが各別に接続されている。第2開口部31a及び第3開口部31bは、
図2及び
図3に示されるように、軸線O方向に開口している。主シェイクオリフィス31は、
図1に示されるように、第1取付部材11の他方側外筒体22の内周面により、径方向の外側から閉塞されている。
【0023】
シェイクオリフィス部材25の頂壁は、外周部より径方向の内側に位置する内側部分25aが他方側に向けて窪んでいる。シェイクオリフィス部材25の頂壁の外周部に、
図3に示されるように、第2開口部31aが形成されている。シェイクオリフィス部材25の頂壁の内側部分25aに、一方側に向けて筒体28が立設され、その内側が収容室33内に連通する副シェイクオリフィス34となっている。
副シェイクオリフィス34の流通抵抗の大きさは、主シェイクオリフィス31の流通抵抗の大きさ以下で、かつアイドルオリフィス35の流通抵抗より大きくなっている。副シェイクオリフィス34、及び主シェイクオリフィス31それぞれの液柱共振周波数は、シェイク振動の周波数(例えば、14Hz以下)にチューニングされている。アイドルオリフィス35の液柱共振周波数は、アイドル振動の周波数(例えば、18Hz〜30Hz程度)にチューニングされている。
【0024】
連通孔27は、シェイクオリフィス部材25の内側部分25aにおける筒体28との接続部分に形成されている。連通孔27は、筒体28の外周面に沿って延びる長孔とされ、筒体28の回りに間隔をあけて複数形成されている。また、連通孔27は、副シェイクオリフィス34より軸線O方向に沿う流路長が短くなっている。連通孔27及び第1開口部29は、互いに同形同大に形成されている。また、連通孔27及び第1開口部29は、弁部材32の表面に沿う方向における同等の位置に配置されていて、弁部材32を挟んで軸線O方向で互いに対向している。
【0025】
図示の例では、副シェイクオリフィス34、連通孔27、及び第1開口部29は、軸線O方向で弁部材32の表面と対向している。また、副シェイクオリフィス34は、弁部材32の表面のうち、外周部より内側に位置する内側部分に向けて開口し、第1開口部29及び連通孔27は、弁部材32の表面における外周部に向けて開口している。例えば、副シェイクオリフィス34は、弁部材32の表面のうち、弁部材32の重心位置を含む部分に向けて開口し、第1開口部29及び連通孔27は、弁部材32の表面のうち、弁部材32の重心位置を外れた部分に向けて開口している。
なお、主シェイクオリフィス31と、副シェイクオリフィス34及びアイドルオリフィス35と、は、互いに独立した流路となっていて、主シェイクオリフィス31を流通する液体は、収容室33を通過せずに主液室14と副液室15との間を往来する。
【0026】
以上説明したように、本実施形態による防振装置1によれば、弁部材32の収容された収容室33に、主液室14と連通する副シェイクオリフィス34が開口しているので、この防振装置1にシェイク振動が入力されたときに、副シェイクオリフィス34で液柱共振を生じさせることで、収容室33の弁部材32が、他方側に向けて押され、第1開口部29を閉塞することとなる。これにより、アイドルオリフィス35と収容室33との連通が遮断され、液室内の液体が、主シェイクオリフィス31を通して流通し液柱共振を生じさせることとなり、入力されたシェイク振動が減衰吸収される。
【0027】
また、この防振装置1にアイドル振動が入力されると、副シェイクオリフィス34で目詰まりが生じ、弁部材32に対する他方側へ向けた押し付け力が軽減されることで、収容室33内に進入した液体が、弁部材32上を外周側に流れて下方に潜り込みやすくなり、弁部材32を容易に浮遊させることができる。これにより、第1開口部29が開放され、液室内の液体が、アイドルオリフィス35を通して流通し液柱共振を生じさせることとなり、入力されたアイドル振動が減衰吸収される。
ここで、例えば、入力されたアイドル振動の振幅が比較的大きくても、副シェイクオリフィス34で目詰まりが生ずることで、弁部材32が他方側に向けて押されにくくなるため、前述と同様に、第1開口部29が開放され、このアイドル振動を減衰吸収することができる。
【0028】
以上より、例えばシリンダ室内に摺動自在にピストン部材を設ける等しなくても、簡易な構成で、アイドルオリフィス35と収容室33との連通、及びその遮断を、入力振動の振幅の影響を受けにくくして、周波数に応じて精度よく切り替えることができる。
【0029】
さらに、副シェイクオリフィス34が、弁部材32の表面における内側部分に向けて開口しているので、シェイク振動の入力時に、弁部材32を安定して他方側に向けて押すことが可能になり、第1開口部29を確実に閉塞することができる。
また、連通孔27が、弁部材32の表面における外周部に向けて開口しているので、アイドル振動の入力時に、連通孔27を通して収容室33内に進入した液体を、弁部材32の下方に潜り込ませやすくなり、弁部材32を確実に浮遊させることができる。
【0030】
さらに、本実施形態では、連通孔27及び第1開口部29が、弁部材32を挟んで軸線O方向で互いに対向しているので、アイドル振動の入力時に、液室内の液体を、収容室33を通して連通孔27と第1開口部29との間を滞りなく流通させることが可能になり、弁部材32をより一層確実に浮遊させることができる。
【0031】
なお、本発明の技術範囲は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0032】
例えば、前述した実施形態では、エンジンを第2取付部材12に接続し、第1取付部材11を車体に接続する場合の説明をしたが、逆に接続するように構成してもよいし、それ以外の振動発生部と振動受部に防振装置を設置してもよい。
また、シェイクオリフィス部材25の内側部分25aに窪み部を形成しなくてもよく、アイドルオリフィス部材26の裏面に肉抜き孔26aを形成しなくてもよい。
また、前述した実施形態では、副シェイクオリフィス34が、弁部材32の表面のうち、外周部より内側に位置する内側部分に向けて開口し、第1開口部29及び連通孔27が、弁部材32の表面における外周部に向けて開口した構成を示したが、これに限らず例えば、副シェイクオリフィス34を、弁部材32の表面の外周部に向けて開口させ、第1開口部29及び連通孔27を、弁部材32の表面の内側部分に向けて開口させてもよい。
また、前述した実施形態では、連通孔27及び第1開口部29を、互いに同形同大に形成するとともに、弁部材32を挟んで軸線O方向で互いに対向させたが、これに限らず例えば、互いに異形異大に形成したり、弁部材32の表面に沿う位置を互いに異ならせる等適宜変更してもよい。
【0033】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。