【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアクリル系樹脂粒子は、体積基準の累積10%粒子径を個数基準の累積10%粒子径で除した値α、体積基準の累積50%粒子径を個数基準の累積50%粒子径で除した値γ、及び、体積基準の累積90%粒子径を個数基準の累積90%粒子径で除した値ηが下記式1を満し且つ体積基準の粒子径のCV値が式2を満たすと共に、体積基準の累積10%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Aが式3を満たし且つ体積基準の累積90%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Bが式4を満たしていることを特徴とする。
α>γ>η ・・・式1
30%≦体積基準の粒子径のCV値≦40% ・・・式2
A≦0.75 ・・・式3
1.1≦B≦1.6 ・・・式4
α=体積基準の累積10%粒子径/個数基準の累積10%粒子径
γ=体積基準の累積50%粒子径/個数基準の累積50%粒子径
η=体積基準の累積90%粒子径/個数基準の累積90%粒子径
A=体積基準の累積10%粒子径/体積基準の累積50%粒子径
B=体積基準の累積90%粒子径/体積基準の累積50%粒子径
【0009】
上述のように、αは、体積基準の累積10%粒子径と、個数基準の累積10%粒子径で定義される。γは、体積基準の累積50%粒子径と、個数基準の累積50%粒子径で定義される。ηは、体積基準の累積90%粒子径と、個数基準の累積90%粒子径で定義される。
【0010】
更に、本発明のアクリル系樹脂粒子は、体積基準の粒子径のCV値が式2を満たしており、体積基準の粒度分布において概ね正規分布を有している。即ち、横軸を体積基準の粒子径とし、縦軸を粒子の数としたグラフを描くと、体積基準の累積50%粒子径(体積基準の平均粒子径)を中心として略線対称な形状を有し、粒子径が、体積基準の平均粒子径から離れるにしたがって、粒子の数が滑らかな曲線を描きながら(山の裾野のように)徐々に減少している。
【0011】
従って、本発明のアクリル系樹脂粒子は、任意の粒子径の分散度を見たとき、この粒子径に近い粒子径を有する粒子の分散度は、上記任意の粒子径の分散度と近似した値を採る。よって、αは、体積基準の累積10%粒子径及びこの近傍の粒子径の領域(極小径領域)における粒子径の分散度を意味している。γは、体積基準の累積50%粒子径及びこの近傍の粒子径の領域(平均粒子径領域)における粒子径の分散度を意味している。ηは、体積基準の累積90%粒子径及びこの近傍の粒子径の領域(極大径領域)における粒子径の分散度を意味している。以下、極小径領域の粒子を「極小径の粒子」といい、平均粒子径領域の粒子を「中程度の粒子径の粒子」といい、極大径領域の粒子を「極大径の粒子」という。
【0012】
本発明のアクリル系樹脂粒子は、α>γ>η(式1)を満たしている。式1を満たしていることによって、アクリル系樹脂粒子は、その粒子径が小さくなるほどアクリル系樹脂粒子の粒子径の分散度が高くなるように構成されている。
【0013】
加えて、アクリル系樹脂粒子は、体積基準の累積10%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Aが0.75以下に限定され、好ましくは0.7以下であり、極小径の粒子の数が多くなるように構成されている。
【0014】
アクリル系樹脂粒子は、体積基準の累積10%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Aが0.75を超えると、極小径の粒子の数が少なくなり、極大径の粒子及び中程度の粒子径の粒子間に形成された隙間を埋めることが難しくなる。
【0015】
一方、アクリル系樹脂粒子は、体積基準の累積90%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Bが1.1〜1.6に限定され、好ましくは、1.2〜1.6であり、極大径の粒子の数が少なくなるように構成されている。
【0016】
アクリル系樹脂粒子において、体積基準の累積90%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Bが1.1未満となると、極大径の粒子が少なくなりすぎて、中程度の粒子径の粒子の突出が目立つようになって、塗膜を他の材料と接触させた状態で使用した場合に他の材料への傷付き性が増してしまう。
【0017】
アクリル系樹脂粒子において、体積基準の累積90%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Bが1.6を超えると、極大径の粒子が多くなりすぎて、極大径の粒子の突出が目立つようになって、得られる塗膜の表面平滑性が低下する。
【0018】
上述のように、本発明のアクリル系樹脂粒子は、極大径領域において分散度が小さくなるように且つ極大径の粒子の数を少なくなるように構成している。このように、極大径の粒子を存在させつつも、極大径の粒子の数を少なくすることによって、アクリル系樹脂粒子を均一に分散した状態にバインダー樹脂中に存在させることができる。
【0019】
更に、本発明のアクリル系樹脂粒子を含む塗料組成物から塗膜を形成した場合、極大径の粒子の数を少なくすることによって、塗膜の表面に極大径の粒子が突出するのをできるだけ防止して、塗膜の表面平滑性を向上させることができる。
【0020】
本発明のアクリル系樹脂粒子は、平均粒径領域の粒子及び極小径領域の粒子の分散度を、極大径領域の粒子の分散度よりも高くしていると共に、極小径領域のアクリル系樹脂粒子の数を多くしている。
【0021】
第一の理由としては、中程度の粒子径の粒子が、極大径の粒子の分散度よりも高い適度な分散度でもって含有されていることによって、極大径の粒子間に形成された隙間を、中程度の粒子径を有し且つ適度な粒度分布の幅を有する粒子が効果的に埋めることができる。更に、中程度の粒子径の粒子が存在していることによって、本発明のアクリル系樹脂粒子を含む塗料組成物から形成された塗膜が優れた機械的強度を有するからである。
【0022】
第二の理由としては、極小径領域の粒子の分散度を、中程度の粒子径の粒子及び極大径の粒子の分散度よりも高くすると共に、極小径の粒子の数を多くすることによって、極小径の粒子は、幅広い粒度分布を有し且つ数が多いことから、極大径の粒子及び中程度の粒子径の粒子の間に形成された様々な大きさを有する隙間を効果的に且つ容易に略隙間なく埋めることができる。
【0023】
即ち、本発明のアクリル系樹脂粒子は、極小径の粒子の分散度を最も高く且つ極小径の粒子の数を多くしている。従って、極小径の粒子が、中程度の粒子径の粒子では埋めることができない隙間に効果的に入り込み、極大径の粒子及び中程度の粒子径の粒子間に形成された隙間を略隙間なく効果的に埋める。
【0024】
このように、本発明のアクリル系樹脂粒子は、極小径領域、平均粒径領域及び極大径領域のアクリル系樹脂粒子の分散度を式1の関係とし、体積基準の粒子径のCV値を所定範囲とし、極大径領域及び極小径領域の粒子の数を限定することによって、本発明のアクリル系樹脂粒子を含む塗料組成物を用いて塗膜を形成すると、得られる塗膜中には、アクリル系樹脂粒子が凝集することなく且つ略隙間なく略均一に分散された状態で存在している。
【0025】
本発明のアクリル系樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径は、本発明のアクリル系樹脂粒子を含む塗料組成物から形成された塗膜の光拡散性が優れていることから、1〜50μmが好ましく、2〜20μmがより好ましい。
【0026】
α(体積基準の累積10%粒子径/個数基準の累積10%粒子径)は、本発明のアクリル系樹脂粒子を含む塗料組成物から形成された塗膜中において、極大径の粒子及び中程度の粒子径の粒子間の隙間を効果的に埋めてアクリル系樹脂粒子を略隙間なく且つ略均一に分散させて、塗膜の光拡散性を向上させることができることから、1.8〜3.2が好ましく、1.9〜3.2がより好ましい。
【0027】
γ(体積基準の累積50%粒子径/個数基準の累積50%粒子径)は、本発明のアクリル系樹脂粒子を含む塗料組成物から形成された塗膜中において、極大径の粒子間の隙間を効果的に埋めてアクリル系樹脂粒子を略隙間なく且つ略均一に分散させて、塗膜の光拡散性を向上させることができることから、1.4〜2.8が好ましく、1.5〜2.7がより好ましい。
【0028】
η(体積基準の累積90%粒子径/個数基準の累積90%粒子径)は、本発明のアクリル系樹脂粒子を含む塗料組成物から形成された塗膜中において、極大径の粒子が同程度の粒子径を有しており、極端に大きな粒子径を有するアクリル系樹脂粒子が部分的に突出することによって塗膜の表面平滑性が損なわれることがないので、1.4〜2.8が好ましく、1.4〜2.7がより好ましい。
【0029】
アクリル系樹脂粒子における体積基準の粒子径のCV値は、小さすぎると、アクリル系樹脂粒子の粒度分布の幅が狭くなり、本発明のアクリル系樹脂粒子を含む塗料組成物から形成された塗膜中において、アクリル系樹脂粒子間に形成された隙間を効果的に埋めることができなくなると共に、塗膜の表面平滑性が低下し、大きすぎると、極大径のアクリル系樹脂粒子の数が多くなりすぎて、塗膜の表面平滑性が低下するので、30〜40%に限定され、32〜38%が好ましい。
【0030】
更に、アクリル系樹脂粒子において、α、γ及びηに加えて、体積基準の累積25%粒子径を個数基準の累積25%粒子径で除した値β及び体積基準の累積75%粒子径を個数基準の累積75%粒子径で除した値δが式5を満たしていることが好ましい。
α>β>γ>δ>η ・・・式5
β=体積基準の累積25%粒子径/個数基準の累積25%粒子径
δ=体積基準の累積75%粒子径/個数基準の累積75%粒子径
【0031】
加えて、体積基準の累積25%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Cが式6を満たし且つ体積基準の累積75%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Dが式7を満たしていることが好ましい。
C≦0.85 ・・・式6
1.1≦D≦1.4 ・・・式7
C=体積基準の累積25%粒子径/体積基準の累積50%粒子径
D=体積基準の累積75%粒子径/体積基準の累積50%粒子径
【0032】
上述のように、βは、体積基準の累積25%粒子径と、個数基準の累積25%粒子径で定義される。δは、体積基準の累積75%粒子径と、個数基準の累積75%粒子径で定義される。従って、βは、体積基準の累積25%粒子径及びこの近傍の粒子径の領域(小径領域)における粒子径の分散度を意味している。δは、体積基準の累積75%粒子径及びこの近傍の粒子径の領域(大径領域)における粒子径の分散度を意味している。以下、小径領域の粒子を「小径の粒子」といい、大径領域の粒子を「大径の粒子」という。
【0033】
アクリル系樹脂粒子は、体積基準の累積25%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Cが好ましくは0.85以下とされ、より好ましくは、0.8以下とされており、、小径の粒子の数が多くなるように構成されている。
【0034】
アクリル系樹脂粒子は、体積基準の累積25%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Cが大きくなりすぎると、小径の粒子の数が少なくなり、極大径の粒子及び中程度の粒子径の粒子間に形成された隙間を効果的に埋めることが難しくなる虞れがある。
【0035】
一方、アクリル系樹脂粒子は、体積基準の累積75%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Dが好ましくは1.1〜1.4とされ、より好ましくは、1.1〜1.3とされており、大径の粒子の数が少なくなるように構成されている。
【0036】
アクリル系樹脂粒子において、体積基準の累積75%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Bが小さすぎると、極大径の粒子間に形成された隙間を効果的に埋めることができない虞れがある。
【0037】
アクリル系樹脂粒子において、体積基準の累積75%粒子径を体積基準の累積50%粒子径で除した値Bが大きすぎると、大径の粒子が多くなりすぎて、大径の粒子の突出が目立つようになって、得られる塗膜の表面平滑性が低下する虞れがある。
【0038】
このように、α、β、γ、δ及びηが式5の関係を満たすことによって、極大径の粒子間に形成された隙間を、大径の粒子、中程度の粒径を有する粒子、小径の粒子及び極小径の粒子がより効果的に略隙間なく埋めることができ、より均一な光拡散性を有する塗膜を形成することができる。
【0039】
β(体積基準の累積25%粒子径/個数基準の累積25%粒子径)は、本発明のアクリル系樹脂粒子を含む塗料組成物から形成された塗膜中において、極大径の粒子、大径の粒子及び中程度の粒子径の粒子間の隙間を効果的に埋めてアクリル系樹脂粒子を略隙間なく且つ略均一に分散させて、塗膜の光拡散性を向上させることができることから、1.7〜3.1が好ましく、1.8〜3.1がより好ましい。
【0040】
δ(体積基準の累積75%粒子径/個数基準の累積75%粒子径)は、本発明のアクリル系樹脂粒子を含む塗料組成物から形成された塗膜中において、アクリル系樹脂粒子が凝集するのを防止すると共に、極大径の粒子が塗膜から突出するのをできるだけ防止して塗膜の表面平滑性を向上させることができるので、1.2〜2.2が好ましく、1.3〜2.1がより好ましい。
【0041】
本発明のアクリル系樹脂粒子について、体積基準の累積10%、25%、50%、75%及び90%粒子径と、個数基準の累積10%、25%、50%、75%及び90%粒子径と、体積基準の粒子径のCV値は下記の要領で測定された値をいう。
【0042】
アクリル系樹脂粒子の体積平均粒子径は、コールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター株式会社製測定装置)により測定する。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizer
TM 3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施するものとする。
【0043】
なお、測定に用いるアパチャーの選択は、測定する樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が1μm以上10μm以下の場合は50μmのサイズを有するアパチャーを選択し、測定する樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が10μmより大きく30μm以下の場合は100μmのサイズを有するアパチャーを選択し、樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が30μmより大きく90μm以下の場合は280μmのサイズを有するアパチャーを選択し、アクリル系樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が90μmより大きく150μm以下の場合は400μmのサイズを有するアパチャーを選択するなど、適宜行う。測定後の体積平均粒子径が想定の体積平均粒子径と異なった場合は、適正なサイズを有するアパチャーに変更して、再度測定を行う。
【0044】
又、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−800、Gain(ゲイン)は4と設定し、100μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−1600、Gain(ゲイン)は2と設定し、280μmおよび400μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−3200、Gain(ゲイン)は1と設定する。
【0045】
測定用試料としては、樹脂粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)および超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア社製、「ULTRASONIC CLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。コールターマルチサイザーIIIの測定部に、ISOTON(登録商標)II(ベックマン・コールター株式会社製:測定用電解液)を満たしたビーカーをセットし、ビーカー内を緩く攪拌しながら、前記分散液を滴下して、コールターマルチサイザーIII本体画面の濃度計の示度を5〜10%に合わせた後に、測定を開始する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了し、体積基準の累積10%、25%、50%、75%及び90%粒子径と、個数基準の累積10%、25%、50%、75%及び90%粒子径を算出する。
体積基準の平均粒子径は、10万個のアクリル系樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径である。
アクリル系樹脂粒子の粒子径のCV値(変動係数)を、下記式に基づいて算出する。
アクリル系樹脂粒子の体積基準のCV値(%)
=100×(アクリル系樹脂粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差)
/アクリル系樹脂粒子の体積基準の平均粒子径)
【0046】
本発明のアクリル系樹脂粒子は、汎用の重合方法を用いて製造することができる。アクリル系樹脂粒子の製造方法としては、特に限定されず、例えば、アクリル系モノマー及び重合開始剤を分散安定剤の存在下にて水性媒体中に分散させて攪拌しながら懸濁重合させてアクリル系樹脂粒子を製造する方法の他に、乳化重合、シード重合、塊重合、溶液重合などの汎用の重合方法を用いてアクリル系樹脂粒子を製造する方法が挙げられる。なお、水性媒体としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコールやそれらの混合物などが挙げられ、水が好ましい。
【0047】
アクリル系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリル酸などが挙げられる。アクリル系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0048】
アクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートなどが挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートなどが挙げられ、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートが好ましい。
【0049】
又、アクリル系モノマーにアクリル系モノマーと共重合可能なモノマーを含有させてもよい。このようなモノマーとしては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、αーメチルスチレン、酢酸ビニル、アクリルニトリルなどのビニル基を有するモノマーなどが挙げられる。
【0050】
更に、アクリル系モノマーに、ビニル基を複数個有する多官能モノマーが含有されてもよい。このような多官能モノマーとしては、例えば、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、デカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタデカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコールなどが挙げられる。これらモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。上記多官能モノマーのうち、エチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0051】
重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系重合開始剤が挙げられる。
【0052】
又、分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウムなどの難水溶性無機塩、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩などのアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドのような第四級アンモニウム塩などのカチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどのノニオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどの両性界面活性剤などが挙げられる。なお、分散安定剤は単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0053】
本発明のアクリル系樹脂粒子は、粒度分布が式1〜4を満たすように調整されるが、この調整方法としては、上述の要領で製造されたアクリル系樹脂粒子を汎用の要領で分級すればよい。分級する際の目安としては、分級前のアクリル系樹脂粒子における体積基準の累積25%粒子径以下の粒子径を有する粒子、又は、分級前のアクリル系樹脂粒子における体積基準の累積75%粒子径以上の粒子径を有する粒子の一部を、分級後のアクリル系樹脂粒子の粒度分布を確認しながら、各種分級機を用いて分級条件を適宜調整しながら除去すればよい。
【0054】
本発明のアクリル系樹脂粒子はバインダー樹脂と混合することによって、本発明のアクリル系樹脂粒子とバインダー樹脂とを含む塗料組成物を構成する。この塗料組成物は、光学材料、家電などの電気製品の表面の艶消し塗料、建築物の外装塗料を形成するために好適に用いられる。光学材料としては、例えば、防眩フィルム、光拡散シート及び導光板などが挙げられ、光拡散シートを形成するために特に好適である。
【0055】
塗料組成物を製造する方法としては、汎用の混合機を用いて、本発明のアクリル系樹脂粒子とバインダー樹脂とを混合すればよい。混合機としては、例えば、押出機などの混練機、ビーズミル、高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。
【0056】
バインダー樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、上述したアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが挙げられ、透明性に優れていることから、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0057】
塗料組成物中におけるバインダー樹脂の含有量は、光拡散性及び光透過性の双方が優れた光学材料を製造することができることから、アクリル系樹脂粒子100重量部に対して25〜400重量部が好ましく、50〜200重量部がより好ましい。
【0058】
塗料組成物には、塗料組成物の粘度を調整するために溶媒が含有されていてもよい。溶媒としては、特に限定されず、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アルコールなどが挙げられる。なお、溶媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0059】
次に、本発明のアクリル系樹脂粒子を用いて光学材料を製造する要領について説明する。光学材料は、基材上に光拡散層を積層一体化することによって製造される。光学材料の製造方法としては、特に限定されず、例えば、基材上に上記塗料組成物を塗工し乾燥させて、バインダー樹脂中にアクリル系樹脂粒子が分散してなる光拡散層を基材上に積層一体化させて光学材料を製造することができる。なお、塗料組成物中に溶媒が含まれている場合には、塗料組成物の乾燥時に溶媒を除去する。
【0060】
基材としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどの合成樹脂基材、ガラスシートなどの無機基材などが挙げられる。光学材料が光拡散シートである場合には、基材は透明基材であることが好ましい。なお、「透明」には半透明も含まれる。
【0061】
基材上に塗料組成物を塗工する方法としては、リバースロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、スプレーコート法などの公知の方法を用いることができる。光拡散層の厚みは、特に限定されるものではないが、光拡散性、膜強度などを考慮して1〜100μmが好ましく、3〜30μmがより好ましい。
【0062】
上述のようにして形成された光拡散層は、本発明のアクリル系樹脂粒子を含んでいることから、光拡散層中にアクリル系樹脂粒子が均一に分散した状態に且つアクリル系樹脂粒子間に殆ど隙間がない状態で分散している。従って、光拡散層は、全面的に略均一な光拡散性を有している。
【0063】
更に、光拡散層は、その表面にアクリル系樹脂粒子が過度に突出しておらず、表面平滑性に優れているので、光学材料を他の材料と重ね合わせて使用した場合にあっても、他の材料を傷つけるようなことはない。