(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
図1を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の無線通信システム10の構成を示すブロック図である。無線通信システム10は、通信装置A(100a)及び通信装置B(100b)を備える。本実施形態においては、通信装置B(100b)の構成及び動作は、通信装置A(100a)と同様である。従って、通信装置B(100b)に関しては、通信装置A(100a)の各構成要素の参照符号の末尾「a」を「b」に置き換えて
図1に記載し、通信装置B(100b)の要素に関する説明は省略する。
【0017】
通信装置A(100a)は、アンテナ(101a)、スイッチ(SW、102a)、送信部(103a)、受信部(107a)及び無線制御部(110a)を備える。アンテナ(101a)は、通信装置B(100b)のアンテナ(101b)との間で電波を送受信する。
【0018】
図2は、スイッチ(102a、102b)による経路切替えの例を示す図である。アンテナ(101a)は、スイッチ(102a)が「ON」の場合には送信部(103a)と接続され、「OFF」の場合には受信部(107a)と接続される。スイッチ(102a)は、通信装置A(100a)が信号を送信する際にはアンテナ(101a)と送信部(103a)とを接続し、通信装置A(100a)が信号を受信する際にはアンテナ(101a)と受信部(107a)とを接続する。通信装置B(100b)が備えるスイッチ(102b)も同様に動作する。
【0019】
送信部(103a)は、無線制御部(110a)から出力されるデータを変調して高周波信号に変換し、高周波信号を増幅して、スイッチ(102a)を経由してアンテナ(101a)へ出力する。
【0020】
送信部(103a)は、送信電力増幅部(104a)、送信電力制御部(105a)及び送信高周波部(106a)を備える。送信電力増幅部(104a)は電力増幅回路であり、送信信号の電力を増幅してスイッチ(102a)に出力する。送信電力制御部(105a)は、送信電力増幅部(104a)の増幅率を制御する制御回路である。送信電力制御部(105a)は、制御部(114a)から設定される電力設定値に基づいて、送信電力増幅部(104a)から出力される高周波信号の送信電力が、電力設定値と対応する所定の値となるように、送信電力増幅部(104a)を制御する。送信高周波部(106a)は変調回路であり、セレクタ(111a)から入力されたデータを変調及び周波数変換して高周波信号を生成し、生成された高周波信号を送信電力増幅部(104a)へ出力する。
【0021】
受信部(107a)は、アンテナ(101a)からスイッチ(102a)を経由して受信された受信信号の電力を測定するとともに、受信信号を検波して、それらの結果を無線制御部(110a)へ出力する。
【0022】
受信部(107a)は、受信電力測定部(108a)及び受信高周波部(109a)を備える。受信高周波部(109a)は復調回路であり、アンテナ(101a)からスイッチ(102a)を経由して受信された高周波信号の増幅、周波数変換及び復調を行い、復調された信号を受信信号処理部(117a)に出力する。さらに、受信高周波部(109a)は、入力された受信信号を分岐して受信電力測定部(108a)に出力する。受信電力測定部(108a)は、受信高周波部(109a)に入力された受信信号の電力(受信電力)を測定する測定回路である。受信電力測定部(108a)は、測定された受信電力を受信感度判定部(116a)へ通知する。
【0023】
無線制御部(110a)は、セレクタ(111a)、データバッファ部(112a)、テストデータ生成部(113a)、制御部(114a)、記憶部(115a)、受信感度判定部(116a)及び受信信号処理部(117a)を備える。
【0024】
セレクタ(111a)は、通常動作時とテストモード時とで、送信高周波部(106a)に入力されるデータを切り替える。「通常動作時」とは、「テストモード時」以外の状態であり、本来の伝送の対象となる送信データが送信部(103a)から送信される状態である。「テストモード時」とは、受信性能低下の有無を判断するためのテストデータが通信装置A(100a)から通信装置B(100b)へ送信され、通信装置Bにおけるテストデータの受信状況が測定される状態である。テストモード時の動作については後に説明する。
【0025】
データバッファ部(112a)は、送信データを一時的に保存する、一時記憶装置である。データバッファ部(112a)は、送信データを一時保存し、保存された送信データを順にセレクタに送出する。
【0026】
テストデータ生成部(113a)は、テストモード時のテストデータを生成する。通常送信動作時には、セレクタ(111a)は、データバッファ部(112a)から入力される送信データを、送信高周波部(106a)へ出力する。テストモード時には、セレクタ(111a)は、テストデータ生成部(113a)から入力されるテストデータを、送信高周波部(106a)へ出力する。
【0027】
制御部(114a)は、スイッチ(102a)、送信電力制御部(105a)の電力設定値及びセレクタ(111a)を制御する、制御回路である。記憶部(115a)は、テストモード時の受信信号の測定結果を保存する、メモリである。受信感度判定部(116a)は、受信信号処理部(117a)にて正常に受信されたテストデータ数から受信成功率を算出するとともに、受信性能が低下しているか否かを、受信成功率と所定の閾値とを比較することにより判定する回路である。受信信号処理部(117a)は、受信されたデータの正常性確認などの、受信信号に関する処理を行う回路である。
【0028】
図1に記載された通信装置A(100a)の各部を構成する電子回路によって、以上で説明した機能が実現される。さらに、通信装置A(100a)は、記憶部(115a)に記憶されたプログラムに従って動作する、CPU(201a)を備えていてもよい。CPU(201a)は、中央処理装置(central processing unit)であり、通信装置A(100a)の各部の機能を、記憶部(115a)に記憶されたプログラムを実行することにより実現する。
【0029】
図3は、通信装置A(100a)及び通信装置B(100b)が、テストモードに移行する手順を示すフローチャートである。
【0030】
初期状態では、通信装置A(100a)及び通信装置B(100b)は、待機状態にある(
図3のステップS201、S205)。通信装置B(100b)は、キャリアセンスを実行し(S202)、無線回線(チャネル)に空きがあるか否かを確認する(S203)。無線回線に空きがない場合は(S203:No)、データの衝突を避けるため、通信装置B(100b)はステップS201に戻って待機した後、ステップS202以降のキャリアセンスを繰り返す。無線回線に空きがある場合(S203:Yes)には、通信装置B(100b)は、情報データBを発信することにより、通信装置B(100b)が存在する旨を他局へ通知する(S204)。情報データBは、通信装置B(100b)の固有情報が含まれたデータである。情報データBを受信した他局は、情報データBに含まれる情報により、情報データBの送信元が通信装置B(100b)であることを判断する。
【0031】
通信装置A(100a)は、通信装置B(100b)から送信された情報データBを受信すると(S206)、通信装置A(100a)の固有情報が含まれた情報データAを、通信装置B(100b)に送信する(S207)。通信装置B(100b)が情報データAを受信すると(S208)、通信装置A(100a)と通信装置B(100b)との間でテストモードが実行される(S209、S210)。テストモードの実行手順の詳細については後述する。
【0032】
テストモードの終了後、通信装置A(100a)及び通信装置B(100b)は、通常の通信サービスの運用(通常動作)を開始する(S211、S212)。通常動作が開始された後も、通信装置B(100b)は、他の通信装置との通信状況に基づいて、定期的にステップS201に戻り、テストモードを実行してもよい。例えば、通信装置A(100a)との通信が一定期間行われていない場合に、通信装置B(100b)は、通信装置Aとの間でテストモードを実行してもよい。
【0033】
テストモード(S209、S210)の手順の説明に先立って、送信電力増幅部(104a)の送信電力の制御について説明する。
図4は、送信電力制御部(105a)に設定された電力設定値と、送信電力増幅部(104a)から送信される送信信号の送信電力との関係例を示す図である。
図4では、電力設定値「1」に対応する送信電力が最も小さく、電力設定値「20」に対応する送信電力が最も大きい。また、電力設定値が増加すると送信電力も増加する。しかし、電力設定値の増加に対して送信電力が単調に増加する必要はない。
図4の関係は、送信電力制御部(105a)に記憶されている。
【0034】
制御部(114a)が送信電力制御部(105a)に「1」から「20」のいずれかの値を電力設定値として設定することにより、送信電力制御部(105a)は、設定された電力設定値に対応する送信電力で送信信号を出力するように、送信電力増幅部(104a)を制御する。その結果、送信電力増幅部(104a)は、電力設定値に対応する送信電力で、送信信号を出力する。
【0035】
図5は、テストモード実行時のフローチャートである。
図3におけるテストモード(S209、S210)における、通信装置A(100a)及び通信装置B(100b)の動作を、
図5を参照して説明する。
【0036】
通信装置A(100a)は、「テスト開始要求」を通信装置B(100b)に送信する(S301)。通信装置B(100b)は、「テスト開始要求」を受信すると(S302)、「テスト開始応答」を通信装置A(100a)に送信し(S303)、受信テストモードに移行する(S304)。受信テストモードは、テストモード時に、テストデータを受信する通信装置B(100b)に設定されるモードである。通信装置B(100b)は、受信テストモードへの移行時に、受信モードタイマを起動する(S305)。受信モードタイマがタイムアウトするまでの期間は、通信装置B(100b)は、テストデータの受信を待ち受ける状態である。
【0037】
「テスト開始要求」及び「テスト開始応答」は他のデータと区別可能なデータパケットであり、それらの生成方法は任意である。例えば、制御部(114a)が送信データとして「テスト開始要求」を生成し、「テスト開始要求」は、セレクタ111aの送信データ側の経路を経由して通信装置B(100b)に送信されてもよい。通信装置B(100b)が生成する「テスト開始応答」に関しても同様である。
【0038】
通信装置A(100a)は、テスト開始応答を受信後(S306)、送信テストモードに移行する(S307)。送信テストモードは、テストモード時に、テストデータを送信する通信装置A(100a)に設定されるモードである。送信テストモードへの移行後、通信装置A(100a)の制御部(115a)は、通信装置A(100a)のセレクタ(111a)をテストデータ生成部(113a)側に切り替える(S308)。その結果、テストモード時にはテストデータが送信部103aから送信される。
【0039】
図5のステップS309において、通信装置A(100a)の制御部(114a)は、送信電力制御部(105a)に電力設定値を設定する。送信電力制御部(105a)は、電力設定値に基づいて、送信電力増幅部(104a)の送信電力が所定の値となるように制御する。
【0040】
図3の手順では、送信電力制御部(105a)の電力設定値が、送信電力が最大(電力設定値「20」)から最小(電力設定値「1」)まで、テストデータの送信ごとに電力設定値を1ずつ下げるように設定される(S309、S313、S317)。しかし、通信装置A(100a)は、送信電力が最小から最大となる順で、または、送信電力の最大値と最小値との間のいずれかの送信電力を示す電力設定値から、送信電力の設定を開始してもよい。
【0041】
テストデータ生成部(113a)は、所定の数のパケットからなるテストデータを生成し(S310)、生成されたテストデータを送信する(S311)。ここでは、送信されるテストデータのパケット数を1回につき100パケットとして説明する。しかし、1個のテストデータに含まれるパケットの数は100パケットに限られない。テストデータには、通信装置A(100a)の情報が含まれる。例えば、テストデータには、テストデータが送信された際の送信電力制御部(105a)の電力設定値や、テストデータの各パケットの番号(1−100)が含まれる。
【0042】
通信装置B(100b)は、通信装置A(100a)が送信したテストデータを受信し、テストデータが正常に受信されているか否かにより、受信成功率を判定する(S312、S316、S320)。受信成功率の判定は、テストデータの受信ごとに行われる。本実施形態では、送信されたパケット数に対する、正常に(すなわち、品質の低下がない状態で)受信されたパケット数の割合が、受信成功率と定義される。例えば、100パケットからなるテストデータが全て正常に受信されていれば受信成功率は100%であり、90パケットのみが正常に受信された場合には、受信成功率は90%となる。正常に受信されたか否かの判断(正常性確認)手順の例については後述する。受信成功率に代えて、受信されたテストデータの品質を示す他の指標が用いられてもよい。受信感度判定部(116b)は、受信成功率と所定の閾値とを比較し、電力設定値に対応するそれぞれのテストデータの受信成功率が閾値を上回るか否かを判定する。
【0043】
制御部(114a)は、送信電力制御部(105a)に設定する電力設定値(1〜20)を選択することによって送信電力増幅部(104a)の送信電力を変更して、テストデータの送信を繰り返す(S309〜S320)。電力設定値が「18」から「2」までの手順は、ステップS316とS317との間で実行される。なお、これらの手順はステップS309〜S312、S313〜S316と同様であるため、
図5では記載が省略されている。通信装置B(100b)の制御部(114b)は、受信されたテストデータの電力設定値、テストデータの受信成功率の判定結果及び受信電力を、テストモード測定結果として記憶部(115b)に記憶させる。
【0044】
通信装置B(100b)は、テストモード(受信モード)起動時にスタートさせた受信モードタイマの終了(タイムアウト)により、通信装置A(100a)のテストデータの送信が終了したと判断する(S321)。タイムアウト時に受信部(107b)がテストデータを受信中である場合には、通信装置B(100b)は、テストデータの全てのパケットが受信され、テストモード測定結果が記憶部(115b)に記憶された後に、ステップS322に遷移する。なお、通信装置A(100a)は、テストデータの送信の終了を、通信装置B(100b)へメッセージを送信することで通知してもよい。
【0045】
通信装置B(100b)は、記憶部(115b)に記憶されたテストモード測定結果を、テストモード結果通知として通信装置A(100a)に送信後(S322)、受信テストモードを終了する(S323)。テストモード結果通知には、テストモード測定結果が含まれている。テストモード結果通知の内容に関しては、
図7を用いて後述する。
【0046】
通信装置A(100a)は、テストモード結果通知を受信すると(S324)、テストモード結果通知からテストモード測定結果を抽出する。テストモード測定結果の抽出は、例えば受信信号処理部(117a)で行われる。制御部(114a)は、抽出されたテストモード測定結果に基づいて、送信電力制御部(105a)の電力設定値を、通信装置B(100b)における受信成功率が所定の閾値以上となる値に設定する(S325)。そして、制御部(114a)は、セレクタ(111a)をデータバッファ部(112a)側に切り替える(S326)。この切替えにより、通信装置A(100a)は、通常動作時の送信データを送信信号として送信可能な状態となり、送信テストモードを終了する(S327)。このようにして、通信装置A(100a)及び通信装置B(100b)のテストモード(送信テストモード及び受信テストモード)が終了する。
【0047】
なお、通信装置A(100a)及び通信装置B(100b)は同様の機能を備えているため、通信装置A(100a)と通信装置B(100b)とを入れ替えて
図3及び
図5の手順を実施することもできる。この場合には、通信装置B(100b)は通信装置A(100a)にテストデータを送信し、通信装置A(100a)においてテストデータの受信状態が測定される。
【0048】
次に、
図6を用いて、
図3のステップS312、S316、S320における受信成功率判定(について詳細に説明する。
【0049】
図6は通信装置B(100b)にて受信されたテストデータの受信電力と受信成功率との関係の例を示す図である。
図6の横軸は、受信電力測定部(108b)にて測定されたテストデータの受信電力を示す。テストデータの受信電力は、「P1」〜「P20」で示される。
図6の縦軸は、受信感度判定部(116b)にて算出されたテストデータの受信成功率を示す。受信感度判定部(116b)における閾値は、グラフ中に水平な実線で示されている。閾値の値は、例えば80%である。一般的には、送信電力増幅部(104a)の送信電力の増大に伴って、受信部(107b)における受信電力も増大する。しかしながら、伝送路の状態などにより、例えば、送信電力が異なるテストデータが、同一の受信電力で受信される場合もある。
【0050】
受信信号処理部(117b)は、通信装置A(100a)から受信したテストデータの正常性確認を行い、受信されたテストデータのパケット数及び正常に受信されたテストデータのパケット数を、受信感度判定部(116b)に通知する。本実施形態では、受信信号処理部(117b)におけるテストデータの正常性確認は、パケットのFCS(frame check sequence)エラーの有無により判断される。FCSエラーが発生していなければ、パケットは正常に受信されたと判断される。FCSエラーが発生していれば、パケットは正常に受信されなかったと判断される。ただし、テストデータの正常性確認は、パケットのFCSエラーの有無以外により判断されてもよい。
【0051】
受信成功率は、正常に受信されたと判断されたテストデータ数に基づいて、受信感度判定部(116b)にて算出される。
図6では、受信電力「P5」〜「P11」、及び「P15」〜「P20」において、受信成功率が閾値を超えている。これらの受信電力では、通信状態は安定していると判断され、それぞれの受信電力における受信成功率判定結果は「OK」となる。しかし、受信電力「P1」〜「P4」、及び「P12」〜「P14」では、受信成功率が、受信感度判定部(116b)の閾値以下となる。これらの結果から、通信装置B(100b)において、受信電力の低い領域(P1〜P4)及び特定の範囲の受信電力(P12〜P14)において受信性能が低下していると判断される。これらの受信電力では、受信成功率判定結果は「NG」(no good)である。
【0052】
なお、受信信号処理部(117b)は、通常動作時に受信するデータのみを受信データとして出力する。従って、テストモード時に受信されるテストデータは、受信信号処理部(117b)にて破棄される。
【0053】
続いて、
図7を用いてテストモード結果通知送信(S322)、テストモード結果通知受信(S324)、送信電力制御部設定(S325)について詳細に説明する。
【0054】
図7は、記憶部(115b)にて記憶された、テストモード測定結果の例を示す図である。
図7は、通信装置A(100a)の送信電力制御部(105a)の電力設定値と、通信装置B(100b)における受信電力及び受信成功率判定結果の対応を示す。P1〜P20には、具体的な受信電力の測定値が記載される。受信成功率判定結果は、受信成功率が、受信感度判定部(116b)の閾値を超えている場合に「OK」、受信感度判定部(116b)の閾値以下である場合に「NG」となる。テストデータは、送信電力制御部(105a)の電力設定値の情報を含む。受信信号処理部(117b)は、テストデータから電力設定値の情報を抽出する。従って、記憶部(115b)は、テストデータの送信電力に対応する電力設定値と、テストデータを受信した際の受信電力と、受信成功率判定結果とを対応させて記憶できる。電力設定値が同一であるテストデータが複数個受信された場合には、通信装置B(100b)は、それらのテストデータの、受信電力の平均値を記憶してもよい。さらに、テストデータにはパケット番号(1〜100)が含まれているため、正常に受信されなかったパケットを判別することも可能である。
【0055】
通信装置B(100b)は、記憶部(115b)に記憶されたテストモード測定結果を、テストモード結果通知として通信装置A(100a)に送信する。ここで、制御部(114b)は、テストモード結果通知を送信データとして生成し、送信データと同様の経路で送信高周波部(106b)に入力し、通信装置A(100a)に送信する。あるいは、テストモード結果通知は、テストデータ生成部(113b)で生成されてもよい。この場合、制御部114bは、受信テストモード開始後に、セレクタ(111b)をテストデータ生成部(113b)と送信高周波部(106b)とを接続するように切り替える。
【0056】
通信装置A(100a)は、テストモード結果通知を受信後、テストモード結果通知を記憶部(115a)に記憶する。さらに、通信装置A(100a)は、テストモード結果通知を参照して通信装置B(100b)において受信性能が低下していない送信電力で信号が送信されるように、送信電力制御部(105a)の電力設定値を設定する。具体的には、通信装置A(100a)が
図7に示すテストモード測定結果を受信した場合には、受信成功率判定結果が「OK」である受信電力「P5」〜「P11」及び「P15」〜「P20」に対応する電力設定値として、「5〜11」及び「15〜20」から選択された1つの値が送信電力制御部(105a)に設定される。その結果、通信装置A(100a)及び通信装置B(100b)は安定した通信状態で通常動作を開始できる。
【0057】
以上説明したように、第1の実施形態の通信システム10は、以下に記載する効果を奏する。
【0058】
第1の効果は、受信性能が低下していない受信電力の範囲で通信を行うことができることである。その理由は、送信電力が異なるテストデータを用いて受信成功率を判定することで、受信性能が低下している受信電力の範囲が検出されるからである。そして、第1の実施形態の無線通信システム10では、受信性能が低下していると判断された受信電力よりも低い受信電力では通信エラーが発生しない場合に、より低い受信電力で通信可能であることを検出できる。従って、第1の実施形態の無線通信システム10は、不必要に大きい電力で通信が行われることを防止できる。
【0059】
第2の効果は、受信性能が低下した状態での運用を迅速に回避できることである。その理由は、通信装置B(100b)の受信性能が低下しているか否かの測定結果を、通信装置B(100b)がテストモード結果通知として通信装置A(100a)に通知するからである。すなわち、通信装置B(100b)において受信性能の低下が検出された場合、通信装置A(100a)は、テストモード結果通知を受信することにより、直ちに送信電力を変更できる。そして、通信装置A(100a)が送信電力を変更することにより、通信装置B(100b)は、受信性能が低下していない領域の受信電力で、送信データを受信できる。その結果、第1の実施形態の無線通信システムは、安定した通信サービスの運用を継続できる。
【0060】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、
図8、
図9を用いて説明する。第1の実施形態では、通信装置A(100a)及び通信装置B(100b)を備えた無線通信システム10について説明した。第2の実施形態の無線通信システム20は、さらに、通信装置C(100c)を備える。すなわち、第2の実施形態の無線通信システム20は、3台の通信装置を備える。通信装置C(100c)の構成及び動作は第1の実施形態の通信装置B(100b)と同様である。従って、説明は省略する。
【0061】
図8は、無線通信システム20の構成を示すブロック図である。通信装置A(100a)は、通信装置B(100b)及び通信装置C(100c)との通信が可能である。第2の実施形態においては、テストモード時の各通信装置のテストモードは、通信装置A(100a)が送信テストモードであり、通信装置B(100b)及び通信装置C(100c)が受信テストモードである。
【0062】
図9は、第2の実施形態における、テストモード測定結果を示す図である。
図9に示す表は、テストモードが実行された後、通信装置A(100a)にて記憶された、通信装置B(100b)及び通信装置C(100c)のテストモード測定結果の例である。より詳細には、
図9は、通信装置A(100a)の送信電力制御部電力設定値に対する、通信装置B(100b)の受信電力(P1〜P20)及び受信成功率の判定結果、並びに、通信装置C(100c)の受信電力(P21〜P40)及び受信成功率の判定結果の例を示す。テストモードにおける通信装置C(100c)の動作及び通信装置A(100a)との通信内容は、第1の実施形態における通信装置B(100b)と同様である。以下では、第1の実施形態との相違点を中心として説明する。
【0063】
第2の実施形態における、通信装置A(100a)の動作について説明する。通信装置C(100c)は、
図5の通信装置B(100b)と同様の手順で、通信装置A(100a)との間でテストモードの手順を実行する。
【0064】
通信装置A(100a)は、通信装置C(100c)からのテストモード結果通知を受信すると、記憶部(115)に、通信装置B(100b)のテストモード結果通知に加えて、通信装置C(100c)のテストモード結果通知を記憶させる。その結果、通信装置A(100a)は、通信装置B(100b)及び通信装置C(100c)における、受信性能の低下が発生していない送信電力制御部(105)の電力設定値を知ることができる。
【0065】
通信装置A(100a)は、通信装置A、B、Cがテストモードを終了して通常動作に移行すると、通信装置B(100b)及び通信装置C(100c)のいずれにおいても受信成功率判定結果が「OK」である状態に対応する電力設定値を、送信電力制御部(105a)に設定する。
図9の例では、通信装置A(100a)は、送信電力制御部(105a)の電力設定値を「5」〜「11」または「16」〜「20」のいずれかに設定する。
【0066】
あるいは、送信電力制御部(105)の電力設定値は、送信データの送信先ごとに異なっていてもよい。例えば、通信装置A(100a)は、通信装置B(100b)に送信データを送信する場合には送信電力制御部(105a)の電力設定値を「5」とし、通信装置C(100c)に送信データを送信する場合には送信電力制御部(105a)の電力設定値を「3」としてもよい。このようにすることで、より少ない送信電力で、送信先に送信データを送信できる。
【0067】
このように、第2の実施形態の無線通信システム20は、受信性能が低下していない受信電力の範囲で通信を行うことができるとともに、受信性能が低下した状態での運用を迅速に回避できるという、第1の実施形態の無線通信システム10と同様の効果を奏する。さらに、第2の実施形態の無線通信システム20は、異なる通信先に対して、より少ない送信電力で送信データを送信できるという効果を奏する。
【0068】
第2の実施形態では、通信装置を3台備える無線通信システム20について説明した。しかし、さらに多数の通信装置を備える無線通信システムにおいても、通信装置A(100a)は、追加された通信装置のテストモード結果通知を記憶してもよい。そうすることで、通信装置A(100a)は、通信装置B(100b)あるいは通信装置C(100c)と通信する場合と同様に、送信先の通信装置から受信したテストモード結果通知に基づいて、送信電力制御部(105a)の電力設定値を設定することができる。
【0069】
(第3の実施形態)
図10は、本発明の第3の実施形態の通信システム30の構成を示す図である。通信システム(30)は、第1の通信装置(310)及び第2の通信装置(320)を備える。第1の通信装置(310)及び第2の通信装置(320)は、通信可能なように対向して接続されている。
【0070】
第1の通信装置(310)は、テストデータ生成部(311)と、増幅部(312)と、受信部(313)と、制御部(314)と、を備える。
【0071】
テストデータ生成部(311)は、所定の数のパケットからなるテストデータを生成する。増幅部(312)は、送信データ及びテストデータのうち選択された一方を、設定された電力設定値に対応する送信電力に増幅して対向装置に送信する。受信部(313)は、電力設定値、及び、電力設定値に対応する、テストデータのパケットの受信成功率の判定結果を含む測定結果を、第2の通信装置(320)から受信する。制御部(314)は、送信データの送信の際に、受信成功率が所定の閾値を超えたことを示す判定結果に対応する電力設定値を、増幅部(312)に設定する。
【0072】
第2の通信装置(320)は、受信部(321)と、判定部(322)と、送信部(323)と、を備える。
【0073】
受信部(321)は、テストデータを第1の通信装置(310)から受信する。判定部(322)は、テストデータのパケットの受信成功率が所定の閾値を超えたか否かを示す判定結果を生成する。送信部(323)は、判定結果と、テストデータに含まれる第1の通信装置(310)におけるテストデータの送信電力に対応する電力設定値と、が関連づけられた測定結果を、第1の通信装置(310)に送信する。
【0074】
このような構成を備える通信システム(30)では、第1の通信装置(310)がテストデータを所定の送信電力で第2の通信装置(320)へ送信する。第2の通信装置(320)は、テストデータのパケットの受信成功率が所定の閾値を超えたか否かを示す判定結果を生成して、判定結果と電力設定値とが関連づけられた測定結果を第1の通信装置(310)に送信する。
【0075】
そして、第1の通信装置(310)は、送信データの送信の際に、受信成功率が所定の閾値を超えたことを示す判定結果に対応する電力設定値を、増幅部(312)に設定する。
【0076】
第1の通信装置(310)及び第2の通信装置(320)がこのように動作することにより、第1の通信装置(310)は、第2の通信装置(320)において受信成功率が所定の閾値を超える受信電力で送信データが受信されるように、増幅部の送信電力を設定できる。
【0077】
その結果、第3の実施形態の通信システム(30)、第1の通信装置(310)及び第2の通信装置(320)は、受信性能が低下していない受信電力の範囲で通信を行うことができるとともに、受信性能が低下した状態での運用を迅速に防止できるという、第1及び第2の実施形態の無線通信システム(10、20)と同様の効果を奏する。
【0078】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記の実施形態に限定されない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。例えば、第1及び第2の実施形態では、本発明の無線通信への適用について説明した。しかし、本願発明が適用される通信方式は無線に限られず、例えば、光ファイバ通信や光空間通信にも適用できる。
【0079】
なお、本発明の実施形態は、以下の付記のようにも記載されうるが、これらには限定されない。
【0080】
(付記1)
所定の数のパケットからなるテストデータを生成するテストデータ生成手段と、
送信データ及び前記テストデータのうち選択された一方を、設定された電力設定値に対応する送信電力に増幅して対向装置に送信する増幅手段と、
前記電力設定値、及び、前記電力設定値に対応する、前記テストデータの前記パケットの受信成功率の判定結果を含む測定結果を前記対向装置から受信する受信手段と、
前記送信データの送信の際に、前記受信成功率が所定の閾値を超えたことを示す前記判定結果に対応する前記電力設定値を、前記増幅手段に設定する制御手段と、
を備える通信装置。
【0081】
(付記2)
前記増幅手段は、複数の前記電力設定値のそれぞれに対応する送信電力でテストデータを送信し、
前記制御手段は、前記送信データの送信の際に、前記受信成功率が所定の閾値を超えたことを示す前記判定結果に対応する前記電力設定値から選択された前記電力設定値を、前記増幅手段に設定する、
付記1に記載された通信装置。
【0082】
(付記3)
前記対向装置は複数であり、
前記制御手段は、前記複数の前記対向装置に共通して用いられる前記電力設定値を、前記増幅手段に設定する、
付記1又は2に記載された通信装置。
【0083】
(付記4)
前記対向装置は複数であり、
前記制御手段は、前記複数の前記対向装置ごとに、前記増幅手段に前記電力設定値を設定する、
付記1又は2に記載された通信装置。
【0084】
(付記5)
所定の数のパケットからなるテストデータを対向装置から受信する受信手段と、
前記テストデータの前記パケットの受信成功率が所定の閾値を超えたか否かを示す判定結果を生成する判定手段と、
前記判定結果と、前記テストデータに含まれる前記対向装置における前記テストデータの送信電力に対応する電力設定値と、が関連づけられた測定結果を前記対向装置に送信する送信手段と、
を備える通信装置。
【0085】
(付記6)
前記受信手段は、複数の前記電力設定値に対応する複数の前記テストデータを受信し、
前記判定手段は、前記複数の前記電力設定値ごとに前記判定結果を生成する、
前記送信手段は、複数の前記判定結果と前記複数の前記電力設定値とが関連づけられた前記測定結果を、前記対向装置に送信する、
付記5に記載された通信装置。
【0086】
(付記7)
付記1に記載された通信装置及び付記5に記載された通信装置が、それぞれ第1の通信装置及び第2の通信装置として対向して通信可能に接続され、
前記第1の通信装置は、
前記テストデータを前記第2の装置に送信し、
前記測定結果を前記第2の装置から受信し、
前記送信データの送信の際に、前記判定結果に対応する前記電力設定値を前記増幅手段に設定し、
前記第2の通信装置は、
前記第1の通信装置から受信した前記テストデータに基づいて前記判定結果を生成し、
前記測定結果を前記第1の装置に送信する、
ことを特徴とする通信システム。
【0087】
(付記8)
さらに、付記5に記載された通信装置が、第3の通信装置として前記第1の通信装置と通信可能に接続され、
前記第1の通信装置は、
前記テストデータを前記第3の装置に送信し、
前記測定結果を前記第3の装置から受信し、
前記送信データの送信の際に、前記判定結果に対応する前記電力設定値を前記増幅手段に設定し、
前記第3の通信装置は、
前記第1の通信装置から受信した前記テストデータに基づいて前記判定結果を生成し、
前記測定結果を前記第1の装置に送信する、
ことを特徴とする、付記3に記載された通信システム。
【0088】
(付記9)
所定の数のパケットからなるテストデータを生成し、
送信データ及び前記テストデータのうち選択された一方を、設定された電力設定値に対応する送信電力に増幅して対向装置に送信し、
前記電力設定値、及び、前記電力設定値に対応する、前記テストデータの前記パケットの受信成功率の判定結果を含む測定結果を前記対向装置から受信し、
前記送信データの送信の際に、前記受信成功率が所定の閾値を超えたことを示す前記判定結果に対応する前記電力設定値に基づいて前記送信電力を設定する、
ことを特徴とする通信方法。
【0089】
(付記10)
所定の数のパケットからなるテストデータを対向装置から受信し、
前記テストデータの前記パケットの受信成功率が所定の閾値を超えたか否かを示す判定結果を生成し、
前記判定結果と、前記テストデータに含まれる前記対向装置における前記テストデータの送信電力に対応する電力設定値と、が関連づけられた測定結果を前記対向装置に送信する、
ことを特徴とする通信方法。
【0090】
(付記11)
通信装置のコンピュータに、
所定の数のパケットからなるテストデータを生成する手順、
送信データ及び前記テストデータのうち選択された一方を、設定された電力設定値に対応する送信電力に増幅して対向装置に送信する手順、
前記電力設定値、及び、前記電力設定値に対応する、前記テストデータの前記パケットの受信成功率の判定結果を含む測定結果を前記対向装置から受信する手順、
前記送信データの送信の際に、前記受信成功率が所定の閾値を超えたことを示す前記判定結果に対応する前記電力設定値に基づいて前記送信電力を設定する手順、
を実行させるための通信装置の制御プログラム。
【0091】
(付記12)
通信装置のコンピュータに、
所定の数のパケットからなるテストデータを対向装置から受信する手順、
前記テストデータの前記パケットの受信成功率が所定の閾値を超えたか否かを示す判定結果を生成する手順、
前記判定結果と、前記テストデータに含まれる前記対向装置における前記テストデータの送信電力に対応する電力設定値と、が関連づけられた測定結果を前記対向装置に送信する手順、
を実行させるための通信装置の制御プログラム。