【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
先ず、製造された多孔質セルロースビーズの物性の試験方法につき説明する。
【0067】
試験例1 表面孔径の測定
各実施例で得られた多孔質セルロースビーズを5倍体積量の30%エタノールで洗浄し、多孔質セルロースビーズに含まれる液体部分を30%エタノールで置換した。次いで、50%エタノール、70%エタノール、90%エタノール、特級エタノール、特級エタノール、特級エタノールを順に用いて多孔質セルロースビーズを同様に処理し、液体部分をエタノールで置換した。さらにt−ブチルアルコール/エタノールが3/7の混合液を用いて多孔質セルロースビーズを同様に処理した。次いで、t−ブチルアルコール/エタノール=5/5、7/7、9/1、10/0、10/0、10/0の混合液を用いて多孔質セルロースビーズを処理し、液体部分をt−ブチルアルコールで置換した後、凍結乾燥した。凍結乾燥を行なった多孔質セルロースビーズに蒸着処理を行い、2万5千倍のSEM像を撮影した。得られたSEM像からアメリカ国立衛生研究所製のソフトウェア・ImageJを用いて表面孔径を計測した。
【0068】
試験例2 最大細孔径の測定
(1) カラム充填
多孔質セルロースビーズをRO水に分散させ、1時間脱気した。脱気した多孔質粒子を、線速105cm/hでカラム(GEヘルスケア・ジャパン社製Tricorn 10/300)に充填した。その後、pH7.5の溶出液(129mL)を線速26cm/hでカラムに通液した。
【0069】
(2) マーカー添加
マーカーとして次のものを用いた。
【0070】
・Blue Dextran 2000(Pharmacia FIne Chemi
cals社製)
・Low Density Lipoprotein(SIGMA社製),MW3,000,000
・Thyroglobulin(SIGMA社製),MW660,000
・フェリチン(SIGMA社製),MW440,000
・Aldolase(SIGMA社製),MW158,000
・IgG ヒト由来(SIGMA社製),MW115,000(参考例1には不使用)
・Bovine Serum Albumin(Wako社製),MW6,700
・Cytochrome C(Wako社製),MW12,400
・Bacitracin (Wako社製),MW1,400
前記溶出液を線速26cm/hでカラムに通液しながら、上記マーカーをpH7.5のバッファーにて5mg/mLに薄めたものを、各々12μLずつ注入した。なお、マーカーの濃度は都度微調整した。
【0071】
(3) 測定
測定器として、DGU−20A3、SCL−10A、SPD−10A、LC−10AD、SIL−20AC、CTO−10AC(それぞれSHIMADZU社製)を用い、測定ソフトウェアとして、LCSolutionを用いた。液量測定には50mLメスシリンダーを用いた。
【0072】
マーカー注入と同時にUVモニターおよび液量の測定を開始し、
1)ブルーデキストランの最初のピークに対応する液量をV
0(mL)とした。
【0073】
2)各マーカーのピークに対応する液量をV
R(mL)とした。
【0074】
3)カラム内の多孔質粒子のトータルボリュームをV
t(mL)とした。
【0075】
(4) 算出
各マーカーの分配係数(K
av)を次式で算出した。
【0076】
K
av=(V
R−V
0)/(V
t−V
0)
(5)最大細孔径の算出
各マーカーのK
avと分子量の対数をプロットし、直線性を示す部分から下記式の傾きと切片を求めた。
【0077】
K
av=k×L
n(分子量)+b
【0078】
次いで、求めた傾きと切片からK
avが0の時の分子量、つまり排除限界分子量を求めた。次に、中性緩衝液中の球状タンパク質の直径と分子量の下記相関式に排除限界分子量を代入し、求まった値を試料粒子の細孔の最大径とした。
【0079】
球状タンパク質の中性緩衝液中の直径(Å)=2.523×分子量
0.3267【0080】
試験例3 平均細孔径の算出
上記試験例2(5)において、直線性を示す部分の最大K
av/2に相当する分子量を前記中性緩衝液中の球状タンパク質の直径と分子量の相関式に代入し、求まった値を多孔質セルロースビーズの細孔の平均径とした。
【0081】
なお、試験例2および試験例3において、吸着体の目的吸着物質に対するK
avを測定する場合、目的吸着物質が吸着されてしまい、正確な測定ができなくなるおそれがある。よって、吸着体の目的吸着物質に対するK
avは、目的吸着物質と近い分子量を有する2種以上のタンパク質のK
avを測定し、それらのデータから計算で求めた。例えば、目的吸着物質がIgGの場合、フェリチンとアルブミンのデータからK
avを求めた。
【0082】
試験例4 メジアン粒径の測定
レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場社製LA−950)を用いて、多孔質セルロースビーズの体積基準の粒度分布を測定し、メジアン粒径を求めた。
【0083】
試験例5 強度評価
AKTAexplorer 10S(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い、直径0.5cm、高さ15cmのカラムに22μmのメッシュを取り付け、多孔質セルロースビーズをそれぞれ3mL入れ、線速450cm/hで20%エタノール水溶液(和光純薬工業社製エタノールと蒸留水で調製)を1時間通液して充填した。次いでpH7.4リン酸バッファー(シグマ製)を任意の線速で通液し、圧密化がおきる線速を求めて強度評価とした。
【0084】
実施例1
(1) アルカリ水溶液Aの作製
和光純薬社製の水酸化ナトリウムと蒸留水を用いて、9重量%の水酸化ナトリウム水溶液を作製し、その温度を4℃に調整した。
【0085】
(2) セルロース分散液Aの作製
4℃に調整した前記アルカリ水溶液Aを4℃に保持したまま攪拌し、次いで4℃の環境に2時間静置したJohnson Matthey社製微結晶性セルロース(メジアン粒径:71μm)を投入し、セルロースが5重量%となるよう、少しずつ添加した。添加完了から4℃を保持したまま2時間攪拌を継続し、セルロースが均一に分散・膨潤したセルロース分散液を作製し、4℃で貯蔵した。得られたセルロース分散液の写真を
図1(1)に示す。
【0086】
(3) 多孔質セルロースビーズの作製
中鎖脂肪酸トリグリセリド(理研ビタミン社製アクターM−2)85mLを4℃、300rpmで攪拌し、セルロース分散液A15mLをこれに加え、4℃、300rpmで15分間攪拌した。得られた分散液を50℃、300rpmに調整した300mLの90%メタノール水溶液に添加し、50℃、300rpmで10分間攪拌した。吸引濾過を行なった後、エタノールを75mL用いて洗浄を行い、次いで150mLの水で洗浄を行い、多孔質セルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズの表面孔径のメジアン径は747Åであった。このように、従来、セルロースが溶解しておらず、多孔質セルロースビーズの製造では用いられないと考えられていたセルロース分散液からでも、良好な物性を有する多孔質セルロースビーズを製造することができた。
【0087】
実施例2
凝固溶媒に1.2Mクエン酸水溶液(和光純薬社製クエン酸一水和物と蒸留水にて作製)を用い、凝固溶媒の温度を75℃とした以外は、実施例1と同様の方法で多孔質セルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズの表面孔径のメジアン径は1057Åであった。
【0088】
実施例3
凝固溶媒にメタノールと1.2Mクエン酸水溶液を9:1で混合した溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で多孔質セルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズの表面孔径のメジアン径は932Åであった。
【0089】
実施例4
凝固溶媒にメタノールと和光純薬社製硫酸を8:2で混合した溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で多孔質セルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズの表面孔径のメジアン径は1298Åであった。
【0090】
実施例5
(1) セルロース分散液Bの作製
セルロースを6重量%とした以外は、実施例1(2)のセルロース分散液Aと同様に作製した。
【0091】
(2) 多孔質セルロースビーズの作製
和光純薬社製オルトジクロロベンゼン82mLに和光純薬社製ソルビタンモノオレエート(span80相当品)1.15gを加え、4℃、330rpmで攪拌し、セルロース分散液B18mLをこれに加え、4℃、330rpmで15分間攪拌した。得られたエマルションを55℃、300rpmに調整した300mLのメタノールに添加し、55℃、300rpmで10分間攪拌し凝固させた。吸引濾過を行なった後、メタノール75mLを用いて洗浄を行い、次いで150mLの水で洗浄を行い、多孔質セルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズの表面孔径のメジアン径は667Åであった。
【0092】
実施例6
凝固溶媒をエタノールに変更した以外は実施例5と同様の方法でセルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズの表面孔径のメジアン径は453Åであった。
【0093】
比較例1
(1) セルロース溶液の作製
4℃に調整した実施例1(1)のアルカリ水溶液Aを4℃に保持したまま攪拌し、次いで4℃の環境に2時間静置したJohnson Matthey社製微結晶性セルロース(メジアン粒径:71μm)を投入し、セルロースが9重量%となるよう、少しずつ添加した。添加完了から4℃を保持したまま2時間攪拌を継続し、セルロースが均一に分散・膨潤させ、−20℃で完全に凍結させた。次いで4℃で融解し、体積が1.5倍になるように蒸留水で希釈し、攪拌を行い均一化した後、4℃で貯蔵した。得られたセルロース溶液を、
図1(2)に示す。
【0094】
(2) 多孔質セルロースビーズの作製
セルロース分散液Bの代わりに上記セルロース溶液を用いた以外は、実施例6と同様の方法で多孔質セルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズの表面孔径のメジアン径は502Åであった。
【0095】
比較例2
比較例1(1)のセルロース溶液を用いて、凝固溶媒を55℃のメタノールから4℃の60%メタノールに変更し、凝固溶媒の温度を4℃とした以外は実施例5と同様に多孔質セルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズの表面孔径のメジアン径は451Åであった。
【0096】
比較例3
凝固溶媒量を5.4mLとし、凝固溶媒をメタノールとした以外は、比較例2と同様に多孔質セルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズの表面孔径のメジアン径は531Åであった。
【0097】
比較例1〜3のとおり、セルロース分散液を凍結した後に融解することによってセルロース溶液を調製し、当該溶液と凝固溶媒を接触させても、多孔質セルロースビーズは得られた。しかし、分散液の凍結と融解にはエネルギーや時間がかかり、工業的な大量生産には適さない。一方、本発明方法によれば、凍結工程と融解工程を経なくても、同様の多孔質セルロースビーズを製造することができる。
【0098】
実施例7
エマルション調製時の温度を55℃とし、凝固溶媒量を7.2mLとした以外は、実施例5と同様に多孔質セルロースビーズを作製した。
【0099】
実施例8
凝固溶媒を60%メタノールとした以外は実施例7と同様に多孔質セルロースビーズを得た。
【0100】
実施例9
凝固溶媒を蒸留水とした以外は実施例7と同様に多孔質セルロースビーズを得た。
【0101】
実施例10
凝固溶媒をエタノールとした以外は実施例7と同様に多孔質セルロースビーズを得た。
【0102】
実施例11
(1) アルカリ水溶液Bの作製
和光純薬社製の水酸化ナトリウムと蒸留水を用いて、33重量%の水酸化ナトリウム水溶液を作製し、4℃に調整した。
【0103】
(2) セルロース分散液Cの作製
旭化成ケミカルズ社製局方セルロースPH−F20JP(メジアン粒径:21μm)9.2重量部と蒸留水104重量部を混合し、攪拌しながら4℃に調整した。次いで攪拌しながら4℃に調整したアルカリ水溶液Bを40重量部投入し、30分間4℃で攪拌した。
【0104】
(3) 多孔質セルロースビーズの作製
4℃に調整されたセルロース分散液C154重量部と、4℃に調整されたオルトジクロロベンゼン776重量部と、4℃に調整されたソルビタンモノオレエート(span80相当品)7.8重量部を混合し、ディスクタービン翼2枚を取り付けたセパラブルフラスコ内で300rpm(Pv値:0.2kW/m
3)で4℃、30分間攪拌し、エマルションを作製した。温度と攪拌を維持しながら4℃に調整されたメタノール57重量部を凝固溶媒として加えた。この時の凝固溶媒の体積はエマルションに対して0.1倍であった。また凝固溶媒の添加所要時間は2秒であった。その後、攪拌数と温度を維持しながら20分間攪拌した。吸引濾過を行なった後、洗浄液としてエタノール240重量部を用いて洗浄を行い、次いで500重量部の水で洗浄を行い、多孔質セルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズを、38μmと90μmの篩を用いて湿式分級した。
【0105】
(4) 架橋 − 方法A(特開2008−279366参考法)
上記多孔質セルロースビーズ11体積部に蒸留水を加えて16.5体積部として、反応容器に移した。ここに4N NaOH水溶液(ナカライテスク社製と蒸留水で調製)を3.86体積部加え、40℃に昇温させた。ここに架橋剤としてグリセロールポリグリシジルエーテルを含有するデナコールEX−314(ナガセケムテックス社製)を1.77重量部投入し、40℃で4時間攪拌した。反応終了後、吸引濾過をしながら、ビーズの20倍体積量以上の蒸留水で洗浄し、架橋1回ビーズを得た。
【0106】
得られた架橋1回ビーズを容器に移し、蒸留水を加えて、全量を架橋多孔質ビーズの10倍体積量とし、オートクレーブを用いて、120℃で1時間加温した。室温まで放冷した後、ビーズの5倍体積量以上のRO水で洗浄し、エポキシ基がグリセリル基に変化したオートクレーブ済みの架橋1回ビーズを得た。
【0107】
次いで、このオートクレーブ済みの架橋1回ビーズ11体積部に蒸留水を加えて16.5体積部とし、反応容器に移した。これに4N NaOH水溶液(ナカライテスク社製と蒸留水で調製)を3.86体積部加え、40℃に昇温させた。ここにデナコールEX−314(ナガセケムテックス社製)を1.77重量部投入し40℃で4時間攪拌した。反応終了後、吸引濾過しながら、ビーズの20倍体積量以上の蒸留水で洗浄し、架橋2回ビーズを得た。
【0108】
得られた架橋2回ビーズを容器に移し、蒸留水を加えて、全量を架橋多孔質ビーズの10倍体積量とし、オートクレーブを用いて120℃で60分間加温した。室温まで放冷した後、ビーズの5倍体積量以上の蒸留水で洗浄し、オートクレーブ済みの架橋2回ビーズを得た。
【0109】
(5) 物性試験
上記架橋ビーズのメジアン粒径は75μmであった。また、平均細孔径は215Å、最大細孔径は1756Åで、排除限界分子量は5.0×10
8であった。
【0110】
実施例12
凝固溶媒を15重量%クエン酸一水和物メタノール溶液とした以外は実施例11と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μm、平均細孔径は190Å、最大細孔径は718Åで、排除限界分子量は3.2×10
7であった。
【0111】
実施例13
(1) 多孔質セルロースビーズの作製
攪拌速度を500rpm(Pv値:1.1kW/m
3)とし、90μmの篩を63μmの篩に変更した以外は、実施例11と同様に、多孔質セルロースビーズを作製した。
【0112】
(2) 架橋 − 方法B
上記多孔質セルロースビーズ20体積部に蒸留水を加えて30体積部とし、反応容器に移した。ここに架橋剤としてグリセロールポリグリシジルエーテルを含有するデナコールEX−314(ナガセケムテックス社製)を2.3重量部投入し、40℃に調整しながら攪拌を続けた。40℃に到達後、30分間攪拌した。次いで、2N NaOH水溶液(ナカライテスク社製と蒸留水で調製)7.1体積部を用意し、1時間に1/4ずつ加えた。この間、温度を40℃に維持し、攪拌も継続した。最後の1/4量を添加後、同温度で1時間攪拌した。反応終了後、吸引濾過をしながら、ビーズの20倍体積量以上の蒸留水で洗浄し、架橋1回ビーズを得た。
【0113】
得られた架橋1回ビーズを容器に移し、蒸留水を加えて、全量を架橋多孔質粒子の10倍体積量とし、オートクレーブを用いて、120℃で1時間加温した。室温まで放冷した後、ビーズの5倍体積量以上のRO水で洗浄し、エポキシ基がグリセリル基に変化したオートクレーブ済みの架橋1回ビーズを得た。
【0114】
次いで、このオートクレーブ済みの架橋1回ビーズ20体積部に蒸留水を加えて30体積部とし、反応容器に移した。ここに架橋剤としてグリセロールポリグリシジルエーテルを含有するデナコールEX−314(ナガセケムテックス社製)を2.3重量部投入し、40℃に調整しながら攪拌を続けた。40℃に到達後、30分間攪拌した。次いで、2NNaOH水溶液(ナカライテスク社製と蒸留水で調製)7.1体積部を用意し、1時間に1/4ずつ加えた。この間、温度を40℃に維持し、攪拌も継続した。最後の1/4量を添加後、同温度で1時間攪拌した。反応終了後、吸引濾過をしながら、ビーズの20倍体積量以上の蒸留水で洗浄し、架橋2回ビーズを得た。
【0115】
得られた架橋2回ビーズを容器に移し、蒸留水を加えて、全量を架橋多孔質粒子の10倍体積量とし、オートクレーブを用いて120℃で60分間加温した。室温まで放冷した後、ビーズの5倍体積量以上の蒸留水で洗浄し、オートクレーブ済みの架橋2回ビーズを得た。
【0116】
(3) 物性試験
上記架橋ビーズのメジアン粒径は56μmであった。また、平均細孔径は336Å、最大細孔径は3400Åで、排除限界分子量は3.8×10
9であった。このビーズは線速3057cm/hでも圧密化しなかった。
【0117】
実施例14
凝固溶媒を15重量%クエン酸一水和物エタノール溶液とした以外は実施例11と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μm、平均細孔径は163Å、最大細孔径は1040Åで、排除限界分子量は1.0×10
8であった。
【0118】
実施例15
凝固溶媒量を28重量部とした以外は実施例11と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μm、平均細孔径は232Å、最大細孔径は1419Åで、排除限界分子量は2.6×10
8であった。
【0119】
実施例16
63μmの篩を90μmの篩に変更した以外は、実施例13と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μmであった。このビーズは装置で通液可能な最大線速である3057cm/hでも圧密化しなかった。
【0120】
実施例17
攪拌速度を700rpm(Pv値:3.1kW/m
3)とした以外は、実施例16と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μmであった。このビーズは線速3057cm/hでも圧密化しなかった。
【0121】
実施例18
攪拌速度を250rpm(Pv値:0.1kW/m
3)とした以外は、実施例16と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μm、平均細孔径は130Å、最大細孔径は562Åで、排除限界分子量は1.5×10
7であった。
【0122】
実施例19
攪拌翼をWH型大型翼1枚とし、攪拌速度を350rpm(Pv値:1.1kW/m
3)とした以外は、実施例16と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。造粒直後の粒度分布は、実施例16と比べて広かった。
【0123】
実施例20
凝固溶媒の添加所要時間を60秒とした以外は、実施例16と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μmであった。
【0124】
実施例21
凝固溶媒の添加所要時間を160秒とした以外は、実施例16と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μmであった。このビーズは線速1987cm/hで圧密化した。また、カラムへの充填性が若干低下し、タンパク質は比較的早く流出した。
【0125】
実施例22
攪拌翼を傾斜パドル翼2枚とした以外は、実施例17と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0126】
実施例23
調整温度を9℃とした以外は、実施例22と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0127】
実施例24
調整温度を0℃とした以外は、実施例22と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0128】
実施例25
凝固溶媒の添加所要時間を10秒とした以外は、実施例16と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0129】
実施例26
凝固溶媒の添加所要時間を30秒とした以外は、実施例16と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0130】
実施例27
攪拌速度を1180rpm(Pv値:12kW/m
3)とした以外は、実施例16と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0131】
実施例28
攪拌速度を800rpm(Pv値:5.5kW/m
3)とした以外は、実施例16と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0132】
実施例29
分散液作製のための攪拌時間を30分から120分に変更した以外は実施例16と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0133】
実施例30
(1) セルロース分散液Dの作製
旭化成ケミカルズ社製局方セルロースKG−1000(メジアン粒径:54μm)を用いた以外は、実施例11(2)のセルロース分散液Cと同様に作製した。
【0134】
(2) 多孔質セルロースビーズの作製
上記セルロース分散液Dを用いた以外は実施例27と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0135】
実施例31
セルロース分散液Dを用いた以外は実施例27と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0136】
実施例31
凝固溶媒量を228重量部とした以外は実施例30と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0137】
比較例4
和光純薬社製の水酸化ナトリウムと蒸留水を用いて、9重量%の水酸化ナトリウム水溶液を作製し、25℃に調整した。25℃に調整した前記水酸化ナトリウム水溶液を25℃に保持したまま攪拌し、次いで25℃の環境に2時間静置したJohnson Matthey社製微結晶性セルロースを投入し、セルロースが5重量%となるよう、少しずつ添加した。添加完了から25℃を保持したまま2時間攪拌を継続し、25℃で貯蔵を行なったところ、セルロース粒子が沈降してしまい、セルロース分散液は得られなかった。また黄色に着色した。
【0138】
比較例5
(1) セルロース溶液の作製
100gのチオシアン酸カルシウム60重量%水溶液に6.4gの結晶性セルロース(旭化成ケミカルズ社製セオラスPH101,メジアン粒径:73μm)を加え、120℃に加熱して溶解した。この温度で貯蔵することが困難なため、用時調整とした。
【0139】
(2) 架橋多孔質セルロースビーズの作製
チオシアン酸カルシウムを用いて作製される多孔質セルロースビーズを、WO2010/095573の実施例を参考に、以下のように作製した。具体的には、上記セルロース溶液に界面活性剤としてソルビタンモノオレエート6gを添加し、140℃に予め加熱したオルトジクロロベンゼン480mL中に滴下し、300rpmにて攪拌した。次いで上記分散液を40℃まで冷却し、メタノール190mL中に注ぎ、凝固させた。吸引濾過を行なった後、メタノール190mLにて洗浄した。このメタノール洗浄を数回行なった。さらに大量の蒸留水で洗浄した後、吸引濾過を行い多孔質セルロースビーズを得た。濾過後の多孔質セルロースビーズ100gを121gの蒸留水に60gの硫酸ナトリウムを溶解した液に加え、50℃で2時間攪拌した。次いで、45重量%の水酸化ナトリウム水溶液3.3gと水素化ホウ素ナトリウム0.5gを加えて攪拌した。50℃で攪拌を継続しながら、45重量%の水酸化ナトリウム水溶液48gとエピクロロヒドリン50gとをそれぞれ25等分した量を、15分置きに添加した。添加終了後、50℃で16時間反応させた。反応後、40℃に冷却し、酢酸2.6gを加えて中和し、吸引濾過を行い、蒸留水で洗浄した。53μmと90μmの篩を用いて湿式分級を行ない、平均粒子径78μmの架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0140】
(3) 物性試験
上記架橋多孔質セルロースビーズの表面孔径は1649Åで、平均細孔径は793Å、最大細孔径は14100Åで、排除限界分子量は2.9×10
11であった。このビーズは線速3057cm/hでも圧密化しなかった。
【0141】
このように、比較例5で得られた架橋多孔質セルロースは、かなり大き過ぎる細孔を有するものであった。また、毒性の高いチオシアン酸カルシウムを含む溶液が廃液として残ってしまった。
【0142】
参考例1
比較的、モノクローナル抗体の吸着量が大きいタイプとして販売されている、プロテインAが導入された多孔質アガロースビーズ、MabSelect SuRe LX(ジーイーヘルスケア社製)の平均細孔径は425Å、最大細孔径は2970Åで、排除限界分子量は2.5×10
9であった。