(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電性粒子は、炭素粒子、炭素繊維、グラフェン、アルミニウム粒子、銀粒子、銅粒子、金粒子及びカーボンナノチューブのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載のセンシングシステム。
前記絶縁母材は、熱硬化性エポキシ、熱可塑性ポリエステル、ビニルエステル又はナイロンの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項6に記載のセンシングシステム。
前記戻りRF信号の変化は、振幅の変化、周波数の変化、位相シフト、又は干渉効果の変化のいずれかであることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
前記複合材料の結晶化度の変化は、粒子破壊、微小亀裂、剥離、汚染、母材衝撃損傷、又は間隙率の変化のいずれかであることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
母材及び該母材中に実質的に等間隔で配置される複数の非絶縁粒子を含むことで、少なくとも一次元においてコヒーレントな電気的周期性を有する複合材料の結晶化度の変化のセンシング方法であって、
ソースRF信号により前記複合材料を調査する工程と、
前記非絶縁粒子から反射された戻りRF信号を受信する工程と、
少なくとも一つの前記非絶縁粒子の位置の変化により引き起こされる前記戻りRF信号の変化から、前記複合材料の結晶化度の変化を決定する工程と
を備えることを特徴とするセンシング方法。
前記複合材料を調査する工程は、1D又は2D方向に沿った電気的マルチプルプローブにより前記複合材料の表面を走査する工程を含むことを特徴とする請求項13に記載のセンシング方法。
前記複合材料を調査する工程は、表面場プロフィールを生成するアンテナとして機能するように前記複合材料を励起する工程を含むことを特徴とする請求項13に記載のセンシング方法。
前記複合材料を調査する工程は、単一の機械的プローブを使用して前記表面場プロフィールを走査する工程を更に含むことを特徴とする請求項16に記載のセンシング方法。
前記複合材料を調査する工程は、電気的マルチプルプローブを使用して前記表面場プロフィールを走査する工程を更に含むことを特徴とする請求項16に記載のセンシング方法。
前記複合材料は、前記コヒーレントな電気的周期性を実現するように半導体物質をドープすることで得られることを特徴とする請求項13から20のいずれか一項に記載のセンシング方法。
前記複合材料を調査する工程は、前記複合材料内に電磁場モードを導入する工程を含み、前記戻りRF信号を受信する工程は、前記複合材料の表面エバネセント電磁場を検出する工程を含むことを特徴とする請求項13から24に記載のセンシング方法。
前記複合材料の結晶化度の変化を決定する工程は、前記複合材料の2D又は3Dイメージング工程を含むことを特徴とする請求項13から25のいずれか一項に記載のセンシング方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術分野は、厳密な検査のためにすぐには近づくことができない構造体を選択的に且つ連続してモニタリングするため、信頼性の高い正確な無線センシングによる恩恵が得られる。
【0007】
SHM手法は数多く知られている。材料の密度に関連するイメージを形成するためにX線を使用する放射線写真術は100年以上前から利用することができた。しかしながら、この手法は危険であるため、めったに使用されない。赤外線画像又は振動サーモグラフィは、赤外線スペクトルにおける熱エネルギの伝達をモニタリングすることで分解及び剥離を検出する実績のある手法である。しかしながら、赤外線画像の欠点は、結果を解釈することの難しさにある。検査された材料の強さを評価するために使用され得るレーザシェアログラフィ及びホログラフィ画像は、非接触技術であり有用だが、振動に起因する画像ノイズに苦しめられる。
【0008】
蛍光性又は磁性粒子浸透剤を使用する他のSHM手法は、金属/鉄を含む金属構造体に適用できるのみである。ここで留意すべきは、金属検査は渦電流検出法を使用できるが、そのような手法は複合材料には使用できない可能性がある点である。複合材料の外来の性質(ヘテロ性ないしは不均一性)により、欠陥の形式が金属材料に典型的に見られる形式とは大抵の場合大きく異なり、破壊メカニズムもより複雑である。
【0009】
現在のSHMシステムは、関心の高い任意の構造体の重要ポイントにおいて、一又は複数のセンサの設置を要求する。センサの種類は、検出される関心の高い特定のパラメータによって異なる。これにより、この種のシステムは、設置が高価で時間のかかるものになってしまう上に、センサのリアルタイム連続モニタリングは、実際には非現実的である。
【0010】
複合材料の損傷を発見する最も望ましいSHM手法は、音響特性、すなわち多重粒子の電波特性を監視して、固有センサを形成することである。固有センサは、その機械的状態(特定の材料では、温度、圧力、水和等と関連している)に依存する電波特性を有する構造材料(通常は複合材料)である。このような材料の表面又は体積は、SHMのためのイメージとしてマッピングすることができる。
【0011】
しかしながら、規則的な複合材料に向けられた無線信号は、材料の機械的、電気的及び化学的状態に関する情報を引き出すことができない。このため、既存の固有センサは、このモニタリング機能を可能にするために、電子分布及び/又は輸送特性が局所環境によって変更されるセンシング要素の追加を要求する。
【0012】
センシング要素は、材料の誘電特性又は磁気特性等の特性を変動させるように配列される。例えば、損傷によって振動周波数を乱す埋め込み圧電性粒子は、電波を使用して監視される。材料中のいくつかのポイントで振動周波数を検出することで、損傷を検査するための周波数イメージが作成される。
【0013】
しかしながら、そのような固有センサの欠点は、それらが独立した別々のセンシング要素の追加を要求し、上述した多くの用途(特に航空宇宙システム)への使用が増えている規則的な複合材料に適用可能ではないという点である。
【0014】
したがって、本発明は、いなかるセンシング要素の追加も必要としない規則的な複合材料を使用することが可能なセンシングシステム及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、母材及び該母材中に実質的に等間隔で配置される複数の非絶縁粒子を含むことで、少なくとも一次元においてコヒーレントな電気的周期性を有する材料と、ソースRF信号及び該ソースRF信号が前記非絶縁粒子により反射されることで生成される戻りRF信号を受信するように配置された受信機とを備え、少なくとも一つの前記非絶縁粒子の位置の変化は、前記戻りRF信号から前記材料の特性の変化を決定できるように、前記戻りRF信号の変化を引き起こすセンシングシステムが提供される。
【0016】
前記母材は非導電性母材であってもよく、前記非絶縁粒子は導電性粒子であってもよい。前記導電性粒子は、炭素粒子、炭素繊維、グラフェン、アルミニウム粒子、銀粒子、銅粒子、金粒子又はカーボンナノチューブであってよい。また、前記非絶縁粒子は半導体粒子であってもよいし、金属及び絶縁体を含む複合粒子であってもよい。
【0017】
前記母材は、熱硬化性エポキシ、熱可塑性ポリエステル、ビニルエステル及びナイロンのようなポリマーを含む絶縁母材であってもよい。
【0018】
前記材料は、少なくとも一次元で、コヒーレントで周期的な導電率、又はコヒーレントで周期的な誘電率を有していてもよい。
【0019】
前記戻りRF信号の変化は、複合電荷の測定に関連する振幅の変化、周波数の変化、位相シフト、又は干渉効果の変化であってよい。前記材料の特性の変化は、粒子破壊、微小亀裂、剥離、物質混入、母材衝撃損傷、又は間隙率であってよい。
【0020】
前記受信機は更に、複合材料によって取得できる(ソース信号から分離された)環境RF信号を受信するように配置されていてもよい。
【0021】
また本発明によれば、母材及び該母材中に実質的に等間隔で配置される複数の非絶縁粒子を含むことで、少なくとも一次元においてコヒーレントな電気的周期性を有する材料の特性の変化のセンシング方法であって、ソースRF信号により前記材料を調査する工程と、前記非絶縁粒子から反射された戻りRF信号を受信する工程と、少なくとも一つの前記非絶縁粒子の位置の変化により引き起こされる前記戻りRF信号の変化から、前記材料の特性の変化を決定する工程とを備えるセンシング方法が提供される。
【0022】
前記材料を調査する工程は、単一の機械的プローブ又は電気的マルチプルプローブを使用して前記材料の表面を走査する工程を含んでいてもよい。前記プローブは、電子スイッチング又は多重信号チャネルを備えた2Dプローブアレイであってもよい。
【0023】
前記材料を調査する工程は、表面場プロフィールを生成するアンテナのように前記材料を励起する工程を含んでいてもよい。前記材料は、各々がアンテナ素子に相当する複数のセルを含んでいてもよい。前記複数のセルは、例えば誘起された変調RF電流により結合され、セルアレイを形成していてもよい。好適な実施形態では、前記プローブアレイは、少なくとも1つのハイインピーダンスプローブを含み、前記戻りRF信号は、ホモダイン受信機によって受信される。
【0024】
前記材料を調査する工程は、単一の機械的プローブを使用して前記表面場プロフィールを走査する工程を更に含んでいてもよい。前記材料を調査する工程は、電気的マルチプルプローブを使用して前記表面場プロフィールを走査する工程を更に含んでいてもよい。
【0025】
前記ソースRF信号は、変調されたパルス、又は変調或いは他のデジタル若しくはアナログ手法による変調である。
【0026】
前記材料は、前記コヒーレントな電気的周期性を実現するために、半導体物質をドープすることで得られてもよい。
【0027】
本発明は、規則的な複合材料を使用し、センシング材料の埋め込みが要求されないため、SHM用途を含むよく知られた用途に使用できるという利点を有する。更に、本発明のセンシング材料は、多くの場合、既に利用可能である。例えば、航空宇宙用途に用いられた、ある炭素繊維ラミネート構造は、規則格子状に形成された準結晶である。
【0028】
本発明は、複合材料に浸透し、損傷と直接相互作用するように、電磁スペクトルの低周波数部分を選択することができる。これにより、上述した、表面下損傷の間接的証拠のために表面を見るシェアログラフィ又はIRのような競合するアプローチに対する利点が得られる。また音響特性は、損傷と直接相互作用するという利点を有している。音響信号は、自身の損傷の結果である音響インピーダンス摂動の波動散乱により表面下損傷を明らかにするため、複合SHMストラクチャ/アーキテクチャの中に浸透する。同様に、本発明による電磁的アプローチは、境界不連続により摂動される電磁波モードを励起させる。
【0029】
本発明は、添付図面を参照して詳細に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1を参照すると、アンテナ2を有する無線送受信機1の図が示されている。材料3(例えば、高分子材料)の一部は、複数のセンシング要素4が内部に分散してマトリクス材料(母材材料)3に囲まれるように埋め込まれたマトリクス構造を有する。センシング要素4は、材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する。この性質は、結果的には、マトリクス材料3を調べるために、アンテナ2を介して送受信機1から送信される無線周波数(RF)信号(例えば、マイクロ波信号)の変動を生じさせ、材料の変化を戻り信号から決定できる。このように、センシング要素4によって、材料の特性の変化の非侵襲的固有センシングが可能となる。
【0032】
従って、
図1の先行技術に係る固有センサは、複合材料の電波特性をその構造にリンクするために、埋め込まれたセンシング要素4のマイクロ波共振を使用する。
【0033】
図2は、本発明に係る固有センサの一例を示している。無線信号の振幅を検出するための基本無線プローブ10が示されている。好ましくは、無線プローブは、集中したフィールドを有する開放端同軸線路である。材料30の一部は、粒子又は繊維40(好ましくは、導電粒子)を含むマトリクス構造(母材構造)を有しており、好ましくは絶縁高分子材料である。
図1の先行技術に係るセンシング要素とは異なり、導電粒子40はマイクロ波共振を有していない。即ち、導電粒子40は単に反射する。導電粒子40は、規則格子状の構造に形成されるように、マトリクス材料30内に等間隔で配置されている。従って、複合材料は、基本的に準結晶構造を有する。
【0034】
複合材料を加工する際に、導電粒子40が絶縁材料30内に実質的に等間隔で配置されることは重要である。この目的に使用することができる粒子40は、球状であってもよいし、或いは繊維、シート及び他の形状から構成されてもよい。金属板、グラフェン、アルミニウム、銀、銅又は金粒子のように、多種多様の粒子40が使用されてもよいことが理解されるであろう。或いは、粒子40は(有機及び無機の)半導体、及び導電性ポリマーを含んでいてもよい。更に、(極めて均一な粒子配置である)カーボンブラック材料、又はカーボンファイバーシートのような炭素繊維が使用されてもよい。
【0035】
本発明の材料30の重要な特性は、粒子40の間の距離が規則的であることであり、その結果、材料は格子形構造として形成される。粒子40間の距離が少なくとも1次元において規則的であれば、いかなるマトリクス材料30も使用できることは当業者によって理解され得るが、構造は準結晶にほとんど類似している。また、粒子40が絶縁していないことは重要であり、その結果、周期的な導電率又は周期的な誘電率のような、この分野で知られた複合材料の電気的特性において、コヒーレントな周期性が生ずる。半導体粒子を含む非絶縁粒子が使用できることは当業者によって理解され得るが、粒子40は導電性であることが好ましい。母材は、導電体−絶縁体−導電体−絶縁体の周期性を実現するために、絶縁体のように非導電性であることが好ましい。電気的周期性は、少なくとも空間の一次元で要求される。従って、この周期性は、1、2又は3次元(即ち、1D、2D又は3D)で実現されてもよい。
【0036】
この準結晶の複合材料を調査するために電波を使用するメカニズムは、以下に記載される。
【0037】
もし、粒子40の導電率及び/又は大きさが小さければ、無線信号は複合材料に浸透する。いくつかの材料では、この浸透はMHz−GHzレンジ中の数センチメートルかもしれない。その一方で、金属及び導電体では、電波は表面厚さ数ミクロンだけしか浸透しない。本発明で使用される複合材料は、無線信号が数ミリメートルから数センチメートル浸透することを可能にするがゆえに、戻り信号が複合体構造に関連する。
【0038】
無線信号は、無線信号に対して鏡のように作用する粒子40の各々で反射する。しかしながら、無線信号の重要な部分は、調査される材料のより深くに浸透し、いくつかの粒子40で反射され、その結果、表面において反射信号の量を検出することが可能となる。従って、反射信号の量は、調査されている複合材料の体積に関係している。また、調査された複合材料の深さ(奥行き)は、無線信号がどのくらい浸透するかに依存している。この深さは、信号が検出された表面における波長、位相及び干渉効果のごく一部分であり、極めて少量である。このため、第1近似のために、検出された信号の振幅のみを測定することが求められる。
【0039】
従って、複合材料チャージの測定に関連する戻り信号の波長、位相及び干渉の変化も、ごくわずかに存在すると認められるが、戻り信号の変化は、戻り信号の振幅の変化として検出されることが好ましい。
【0040】
本発明に係る方法では、もし必要であれば、
図1の先行技術に係る固有センサに関連する方法より大きな信号を使用することができ、最適化せずとも本発明をより広い用途に適したものにできる。
【0041】
このため、本発明に係る複合材料は、マイクロ波に対して、ミラーの反射特性が複合材料の損傷により影響を受け得る3Dミラーのように作用する。反射された無線信号は、複合材料における表面化の亀裂のようなフォールトタイプである材料の特性の変化を検出できる。
【0042】
従って、本発明の固有センサは、複合材料の電波特性をその構造にリンクするために、(
図1の先行技術に係るセンシング要素4のマイクロ波共振ではなく)複合材料の全域で一定である反射率のボリュームを使用する。しかしながら、場合によっては、既知の作用による損害によって変更される位置に応じて、反射率が変わる可能性があることが認められるであろう。
【0043】
無線送受信機10は、無線周波数信号を生成して送信するように構成され、送信された信号及び複合材料からの戻り信号をリアルタイムで検出するように構成される。ネット反射無線信号は、材料全域の様々な位置において、主として散乱、反射、又は透過設定(反射はほとんどの用途に適している)により集められる。以上説明したように、追跡されたネット反射信号の振幅は、導電粒子40の環境にリンクされる。複合材料への損傷は、周囲の材料と比べると戻り信号の振幅の変化として現れ、その結果、バルク複合材料の物理的及び化学的性質に関する情報のリモート収集を提供する。送信信号及び戻り信号は、同じ位置で測定されるかもしれないし、あるいは、その代わりに、複合材料を介する伝搬によって進行モードの変化を追跡するかもしれない。
【0044】
図3Aは、上述したような導電粒子格子材料の表面で見られる滑らかな外見の戻り信号振幅を示しており、
図3Bは、不規則な(損傷していない)粒子格子に関する乱れた外見の振幅を示している。
図3Cは、損傷後において、
図3Aの材料における内部亀裂がいかにして明確であるかを示している。一方、
図3Dは、
図3Bの不規則な格子に関する内部亀裂がいかにして明確でないかを示している。仮に粒子40の間隔が変化すると、例えば損傷によって、材料30内部のインピーダンスが変化する。従って、無線インピーダンス/ポテンシャルの外見は、関連する方法で更に異なる。また、それは、複合材料の中への無線信号の浸透、即ち表面厚さが変化することを意味する。
【0045】
従来のミラーは、亀裂が生じた場合に、亀裂が滑らかなバックグラウンドに対して明らかとなるように、極めて滑らかでなければならない。同様に、3Dミラーが亀裂を明らかにするためには、電波に対して滑らかでなければならない。この滑らかさは、絶縁材料30内に粒子40を均一に配置することで実現される。
【0046】
プロセスは、複合材料「ラジオスムース(radio smooth)」を作るために開発されている。これらは、(選択された動作周波数での)無線浸透を可能とするように導電性を調節するための、又は複合材料の誘電率を調整するためのプロセスを含み、オプションで、反射無線信号における視覚化のため、複合材料自身が機械的な損傷をコンバート或いはトランスデュースするような進行波をガイドするための薄い導電膜を任意に追加するプロセスを含む。このため、本発明に係るシステムにおいて使用される材料は、固有センサと見なされる。
【0047】
導電性粒子40と絶縁材料30との間の導電率の違いとは別に、複合材料の中への十分な無線浸透が可能な限り、誘電率の違いも3D反射器を作成するために使用することができる。導電率及び誘電率の違いは、それらの原子構造による2つの材料間の電子的違いの使用としてより一般的に見ることができる。これは、バンド構造の伝導又はポラライザビリティを含んでいる。いくつかの用途では、電気的な周期性を作成するために、連続或いは非連続半導体をドープすることが可能である。
【0048】
この損傷検出技術は、準結晶内の空間的変化に非常に敏感である。そのような変化は、損傷によって起こり得る規則的な順序から離れて、粒子40の位置の変化を表す。更に、温度、負荷、振動および化学変化は、粒子40の位置を変更させる。しかしながら、これらのパラメータの検出は、相関モデル及びソフトウェアの開発を要求する。絶縁材料30は、これらのパラメータに対する感度を最適化するために適合させることができる。例えば、柔軟な高分子材料30は、温度に敏感であるため、より容易に拡大及び収縮する。
【0049】
図4は、本発明に係るローカル波及び進行波を測定するための方法を概略的に示している。作用原理は、複合材料プレートが部分的に導電性を有しており、それらを介して伝搬する進行波による調査を可能とする誘電率を有するという事実に基づく。実際上これを達成するために、伝搬波モードを引き起こす技術において既知の近接アンテナ及びマッチングユニットにより、送信機Txが結合される。
【0050】
横方向の波は、二次元においてアンテナソースから主に伝搬する。これもまた、媒体の減衰性質に起因する、通常は定常波を作成する境界反射からの干渉を減少させるという利点を有している漏洩波として見なされる。漏洩波は、複合媒体によって減衰された電磁波であり、この減衰は不要な反射を減少するのに役立つ。
【0051】
図4Aに関して、開放端同軸プローブ10は、座標XYの特定のポイントで、送信機Txにより無線信号を送信でき、受信機Rxにより戻り信号(表面ポテンシャル、インピーダンス、電圧等)を検出できる。受信機Rxはアンテナを備えてもよい。重複ポイントでのエバネセント信号の収集は、イメージの作成を可能とする。これは、例えば機械的に走査することで又は周知技術の同軸プローブアレイ(
図4B参照)を形成することで可能とされる。同軸プローブアレイは、機械的な走査の代わりに電子スイッチのバンクを使用し、速度及び再現性に関する重要な実質的利点を得る。従って、検出メカニズムは、アンテナそのものとして有効に働く複合材コンポーネント全域でのフィールド振幅の測定を含んでいる。しかしながら、ほとんど完全なコンポーネントに関連のあるケースでは、複合材料損傷による電波インピーダンスの誘電率境界及び不連続性は、信号の振幅を変更し、イメージにおいて検出される。
【0052】
図4C及び
図4Dに関して、複合材料30の分析は、本発明によれば、異方性のアンテナ素子として複合材料の調査領域を扱うことにより行なわれる。送信機Txから送信された電波は円形の波面と共に伝わる。RF信号を伝達しアンテナ素子と見なされる調査された複合領域又は構造は、「セル」と呼ばれる。
【0053】
送信機Txは、容量結合によって構造又はセルに結合されてもよい。送信機Txは、材料30内で電磁EMフィールドモードを導入するRFソースを表わしており、このモードは材料30の表面エバネセント場へ結合する。従って、表面エバネセント場は受信機Rxで調査されてもよい。
【0054】
複合材料30は、電波障害の中心から様々なポイントで調査される。このフィールドモードは、
図4Dに示されるノード及びアンチノードの位置での走査により検出されるセル端反射を伴う連続波となり得る。あるいは、フィールドモードは、セル境界に向けて減衰する減衰波モードの振幅を走査することで検出される進行波となり得る。まれに、ボリュームの総分離が必要な場合、構造又はセル(
図4C)の境界からの反射を避けるためのパルス状の無線信号が使用可能となる。このフォーマット損傷は複合材料30を乱し、表面下情報を明らかにするためのエバネセント電場の分布及び強度(即ち、エバネセント電場の構造)を変化させる、波の速度における不連続性及び変化を生じさせる。エバネセント電場の構造は、複合材料の結晶化度に関連があり、複合材料の性質の尺度として使用することができる。
【0055】
従って、走査された複合材料の領域のボリュームは、既知のデジタル及びアナログ技術を利用し、セルの送信源の電気的なアドレッシング又は特別な性質若しくはタグによる無線信号の変調によって、信号がこの特定の送信源から来ることを示すフラグを設定するために実現される。走査されたボリュームは、ほとんどの場合、走査された複合材料のコンポーネントの面積に関連している。例えば、膜を形成するパネルの場合には、各々のパネルはセルを表す。セル境界は、例えばタグ付けされたソースの強さが任意の閾値を超えているか否かを証明することで決定されてもよい。ある場合には、モバイルフォンネットワークにおいて一般的に使用されるタイムゲーティング法によって、セル間に存在するクロストークを低減することができる。
【0056】
走査された構造の全てのコンポーネントを通して効率的な送信を保証するためには、プレートの厚さ、動作周波数及び誘電率に注意することが要求される。進行波を検出するために、アンテナ受信プローブRxは、複合材パネルの上面又は下面に配置され、前者はその場でのメンテナンスに適しており、後者は、例えば航空機の臨界点のような、材料の臨界点におけるリアルタイムなモニタリングに適している。
【0057】
複合材料は薄い金属コーティングを施されてもよい。これは、進行波の導波路を形成するのに役立つ。しかしながら、コーティングが非常に厚ければ、反対側から調査しなければならない。
【0058】
図4の異なる方法の使用は、形状及び材料(電磁インピーダンス)を変更できない場合に、最も適した測定手順を提供するのに役立つ。
【0059】
分解能は、周波数よりも、調査する次元(mmサイズ)及び間隔に依存する。GHz周波数を使用してもよいが、浸透が周波数に反比例するため、構造体への浸透を増加させるために周波数をMHz領域に減少させるのがよい。
【0060】
本発明に係る固有センサは調整されてもよい。センサキャリブレーションは生信号の収集、及びその時間安定性に関連している。従って、キャリブレーションに関連する態様は、主に温度に起因するアンテナプローブシステムのドリフトを伴う。エバネセント場と共に温度を測定することで、キャリブレーションオフセットをデータ処理アルゴリズムに組み込むことができる。
【0061】
表面信号の変化は、2Dカラーマップの生成に使用されてもよい。複数の周波数での走査は、異なる深さからの情報を含む数々の異なる2Dマップを導くことが理解されるであろう。このデータは、3Dイメージを作成するために処理することができる。このため、2D及び3D両方のマップが、損傷を視覚的に表す。
【0062】
図5は、一のRFソースから複合セルCへと無線周波数信号(矢印で示される)を導く方法を示している。上述したように、各々のセルはアンテナ素子として作用するとみなされる。アンテナ素子の励起は、例えば
図5Aに示される双極子又は
図5Bに示されるリングアンテナを介する。実際には、アンテナ素子は、複合材料の特性及び形状に依存している、より複雑な放射コンポーネントであると理解される。しかしながら、走査された複合材料が損傷していない場合、エバネセント場の滑らかな変化が位置と共に保たれる。
【0063】
RFソースは、例えば表面場プローブアレイにより調査される複合材料の表面エバネセント場と結合される複合材料内部に電磁場を導入する。従って、表面エバネセント場は、殆どのアンテナ製造者が通常改善しようとする遠距離場よりも興味を持たれる。
【0064】
アンテナ素子として各セルを扱うことで、各セルに入力されるRF信号を固定することが可能となる。アンテナ素子として作用する各セルは、一のRFソースによって励起されてもよいし、複数のRFソースが一のセルを励起するために使用さてもよい。
【0065】
図6Aは、一のRF信号だけを利用可能な場合に、無線信号を複合構造体の複数の異なるセルCへ供給するための方法を概略的に示している。複数のセルは、セルのアレイを形成している。セルは、各々のプローブアレイから収集された戻り信号を、記憶及び/又は更なる処理に適した収集点へと通過させるために、結合されてもよい。適切な収集点又はハブは、走査された構造体の制約によって決定される。
【0066】
各アレイ内では、セルCは、例えば光ファイバー、ワイヤ又はセルCからデータを集めることを可能とする他の構造体を備える配線織機WLによって結合されてもよい。あるいは、セルCからのデータは、
図6Bに表されるように、部分的に導電性を有するセルCを通過する誘起変調RF電流によって結合されてもよい。
【0067】
図6に示される複数のセルを結合するための方法によれば、単一のRFソースは、セルのアレイを照らすために使用されてもよい。有利には、これらの方法は、例えば複合材料が大きな構造体の一部であり且つRFソースを大きな構造体の内部に実際に配置できない場合に、複合材パネルの走査中の実際の制約を克服するために使用されてもよい。セルアレイ(又は、複数のセルアレイを含むセルネットワーク)の走査の他の主な利点は、走査時間の減少及びリアルタイムな走査を実現できることである。航空宇宙構造物を製造する場合において、例えば、航空宇宙構造物の完成が近い場合には、シート状にプローブを適用すればよい。
【0068】
従って、プローブアレイは試験構造体に組み込まれてもよく、そこでプローブアレイは試験材料に近接して配置されなければならない。例えば単純な複合材料のサンプル試験中に、プローブアレイは、外部にあり且つ複合材料の上面上に位置し得る。航空機のような構造体のモニタリングは、疑わしい領域におけるプローブアレイの外部配置により実行可能とされる。しかしながら、好ましくは、プローブアレイは内表面に配置され、センターシートとして構造体と統合される。このように、プローブアレイは、その下の複合材料のエバネセント場にアクセスするための統合フィールド測定及び送信機となる。このセンターシートは更に、神経系を有する次世代材料の試験に利用される場合に、材料自身の一部になることが想定される。
【0069】
図7は、複合材料からの信号を受信するための様々な方法を示している。
図7のプローブPは、例えば、プローブ及びソースの両方として機能する同軸プローブであってもよい。あるいは、プローブPは、
図8を参照して以下に記載されるタイプのハイインピーダンスプローブであってもよい。
【0070】
図7において、単一のアンテナを備える単一のプローブPは、複合材料の領域を機械的にまたいでもよい。例えば、この受信機は、簡単にアクセスできる及び必ずしも大きな構造体の一部を形成するものではない個々のパネルを走査するのに適している。
【0071】
図7Bに示すように、電子スイッチをそなえる1DプローブアレイAは、複合材料に沿って一方向へ移動されてもよい。例えば、複数のプローブPをそなえる1DプローブアレイAは、構造体のパネルを形成する部分全域を有利にスワイプでき、又は分離した個々のパネルの試験に使用できる。
【0072】
図7Cは、プローブにおけるアンテナ間の電子スイッチを備える2Dプローブアレイを示している。あるいは、2Dプローブアレイは、多重信号チャネルを有していてもよい。2Dアンテナアレイは、個々のパネル又は構造体内部のパネルの両方を走査するのに適しているが、この受信機のタイプは、アレイが構造体内部でセルラーネットワークを形成しているセルアレイを走査するのに使用されるのが好ましい。複数のセルは、無線セルラーネットワーク又は複合神経系として作用できるメッシュネットワークに対応するように作ることができる。2Dアンテナは、(上述した2D又は3Dカラーマップを作成するための)多重チャネル撮影法に使用できる。
【0073】
図8は、
図7B及び
図7Cにおいて示したアンテナアレイに使用できる個々のアンテナを示している。
図8のアンテナは、この信号の振幅又はその調波を測定するための、ホモダイン又は類似の受信システムに適したハイインピーダンスプローブを表す。
【0074】
ハイインピーダンスプローブは、ヘテロダイン及びホモダインシステムの両方を含む、当技術分野で既知のいかなる受信システムにも使用できることが理解されるであろう。しかしながら、ホモダインシステムは、比較的高い環境ノイズが存在する場合に高い性能を有する。ホモダインシステムは、特に、ソースに対して直接的にアクセスできる場合に適している。ホモダインシステムでは、ソース信号及び戻り信号は、要求される情報(この場合、ローカルエバネセント場)を含む実質的なDCレベル信号を得るために混合される。有利には、周波数がわずかに異なる他の信号から得られるノイズレベルの平均値は、ゼロになる。従って、ホモダイン受信システムは、典型的には0.1Hz以下の、非常に狭い信号フィルタリングを提供する。
【0075】
ここで注意すべきは、
図8のハイインピーダンスプローブがプローブとして機能するだけであり、ソースとして機能しない点である。またハイインピーダンスプローブは、電圧ベースアンテナ又はアクティブアンテナとして知られており、非常に広い帯域幅にわたって動作でき、その電磁波の波長より数桁小さい程に、非常にコンパクトにできるという利点を供給する。
【0076】
図8AからCは、複合材料の表面ポイントCとアクティブプローブPとの間のコネクションを示している。アクティブプローブPは、例えばミリメートルレンジである、複合材料の比較的小さい領域を走査するために使用される。このため、スモールエリアプローブPと呼ばれる。スモールエリアプローブPは、ハイインピーダンスプローブのアレイの要素として形成されてもよい。プローブPは、ギャップによって複合材料の表面から離間している。従って、スモールエリアプローブPは、複合材料のローカル表面エバネセント場に容量的に結合する。
【0077】
スモールエリアプローブPがハイインピーダンス領域にあり、エバネセント場を歪めるような非常に多くの金属を含まなければ、プローブPに蓄積される電荷は、複合領域におけるエバネセント場の強さを忠実に再現できる。好ましい構成では、ハイインピーダンスプローブは、エバネセント場が乱れるのを回避するため、互いに離間して配置された比較的小さい金属要素、又は金属ドット或いはスポットと呼ばれる微小要素から作られる。或いは金属要素は、小さいワイヤループであってもよい。
【0078】
図8B及び
図8Cは、検出された信号を整流するためのRF信号ダイオード整流器Dを備えるハイインピーダンスプローブを示している。好ましくは、ダイオードは、
図8B及び
図8Cに示される近接線に容量結合しない、DC電圧が検出されるようなゲルマニウムダイオードである。アクティブプローブからの電荷のリークを避け、電圧を低減するため、ハイインピーダンスJFETのような電界効果トランジスタのゲートは、代わりに
図8Dに示されるプローブに接続できる。測定のノイズレベルにより、この信号電圧は、他の不要なソースからの寄与を含むことがある。この場合、
図8Dに示すプローブは、ソース周波数に乗算されるように追加信号混合部(図示せず)を備えてもよい。よって、これを基に、
図8のプローブは、他の全ての周波数の平均がゼロになり、ソース周波数でのみ信号成分を検出する。
【0079】
図8のハイインピーダンスプローブの代わりとして、ネットワーク分析器において上述したタイプの同軸プローブが使用されてもよい。
【0080】
図9Aは、複合材料30内に電磁EMフィールドを導入する、
図5で述べられたタイプのRFソースを示している。従って、導入されたEMフィールドは、複合材料30内の電磁モードを構成する。そして、電磁モードは、
図7Bで述べたタイプの表面場プローブアレイAにより調査される複合材料のエバネセント表面場に結合する。走査された表面位置で測定された電位又は電圧は、(
図8で示したタイプの)ハイインピーダンスプローブにより調査されることが好ましい。多くの場合、電位又は電圧は、そのポイントでの電気及び磁気成分の比率を表す表面インピーダンスに比例する。またネットワーク分析器は、そのポイントで同軸プローブから反射されるパワーの振幅及び位相を測定することで、表面インピーダンスを得ることができる。
【0081】
図9Bは、ギャップによりアレイから離間して配置された複合セルCの表面を調査する、アクティブアンテナプローブアレイAのアレイを示している。プローブアレイからのデータは、セルハブHと呼ばれる、セルCのための共通収集点において収集される。プローブにより測定された表面エバネセント場は、スペーサ(図示せず)によって安定化された領域に生ずる。好ましくは、プローブの金属含有量は、表面エバネセント場の装荷及び歪みを回避するため、可能な限り小さい方がよい。従って、各アンテナプローブの電極(及び電極に蓄積された電荷)は非常に短い長さを有する導電体によりアクセスされることが好ましい。短い長さの導電体は、例えば
図9Cに示されるタイプのいずれかのハイインピーダンスバッファにつながっていてもよい。回路(バッファ)におけるこのポイントを越えて、表面場への感度は、より低い回線インピーダンス及び同軸線路のスクリーニングにより、大きく減少される。
【0082】
図9Cから
図9Eは、セルハブHにつながるプローブアレイAから情報を集めるのに適した3つの回路を示している。3つの回路の各々は、アクティブアンテナプローブアレイA(
図9B参照)により検出されたエバネセント場の強さに関する情報を送信する。
図9Cに示される第1の回路は、薄い同軸線路(マイクロ同軸ケーブルMC)に沿って受信機にほとんどのDC信号を通過可能とするローパスフィルタFを使用する。
【0083】
図9Dに示される第2の回路は、
図9Cのローパスフィルタの代わりに、電圧周波数変換器VFCを備える。例えばノイズの多い送信領域を介して信号を送信する場合、検出のポイントで電圧を高周波に変換すれば、情報をよりよく保つことができる。いくつかの場合、アナログデジタル変換器を代わりに使用してもよい。
【0084】
また
図9Eに示される第3の回路は、潜在的にノイズの多い環境を対象としている。回路は、電圧周波数コンバータVFC及び例えば発光ダイオードである光変調機OMを備え、光ファイバーOFを介して受信機(図示せず)に信号を送信する。有利には、この回路は電気的ノイズの影響を受けず、セルハブで受信された高品質データを保証する。
【0085】
図10は、導電体を備える場を装荷することなく、複合材パネルの表面エバネセント場を電気的捕捉するための方法を示す(仮に場が装荷されているとすると、場が歪むと共に、その強さが導電体の存在により効果的に減少される)。この方法は、パネルの上側又は下側のどちらからも、エバネセント場のプロフィールを正確に捕捉できる。同期した(ホモダイン)受信機は、定義されたシーケンスにおける個々のプローブ(p1、p2、…pN)の各々と接続する電子スイッチングによって、位置関数として小さい無線周波数信号の極めて狭い帯域(典型的には、0.1Hz以下)のフィルタリングを提供するために使用される。プローブは、
図8に示されるタイプのハイインピーダンスプローブであってもよい。
【0086】
図11は、典型的な同軸プローブであるプローブ(p1、p2、…pN)での電界検出のためのネットワーク分析器を用いた検出方法を示す。RFソースは、各プローブ(p1、p2、…pN)内に組み込まれてもよく、プローブインピーダンスは、複合材料の表面インピーダンスを得るために測定されてもよい。同軸プローブは、開放同軸線路であってもよく、信号は同軸線路の終点から送信及び受信される。同軸線路の終点の電荷は、エバネセント場の違いにより変化する。ネットワーク分析器は、戻り信号の位相及び振幅の変化を検出するように構成される。また電荷の変化は、電気及び磁気成分、並びに/又は損失正接の比率で表されるフィールドインピーダンスの変化に変換される。
【0087】
図12は、固有のセンシングによる複合材パネルにおける損傷の検出に使用される複合材パネルの代表的イメージを示す。(
図4Bに示されるような)同軸プローブアレイを用いる無線ジオメトリは、この用途に使用されていた。
図13Aは、複合材料から作られる可能性がある旅客機のパーツリストを示し、更に
図13Bは、疲労損傷について調査される旅客機の尾翼のルート領域における試験手順を表す。「バッファリング」として知られる疲労損傷は、航空機の後部での振動性の応力及び歪みにより、この領域で生じ得る。これは、本発明に係る方法を使用することで実現される、この領域での好ましい連続モニタリングを行う。
【0088】
この手順では、セミフレキシブルシート300は、組み立て前又は組み立て後に、ルート領域に固定される。更にプローブは、フレキシブル電子技術に使用されるフレキシブルアンテナ/プローブシートに組み込むことができる。フィールドセンシング装置400は、領域のトポグラフィースキャンに使用され、その際、RFソース100は、本発明に応じて低周波EMモードを励起するために使用される。
【0089】
図14は、上述した方法を使用して検出される不均一なゴムの複合材料の検出された歪んだ場を示す。上述したように、表面エバネセント場における歪みは、
図8及び
図9に記載されたタイプのワイヤアンテナ又はプローブPにより取得できる。歪んだ電界は、材料に存在する任意の欠陥に関する情報を含んでいる。一方で、標準的なワイヤアンテナSAで検出される表面エバネセント場は、滑らかであり、それ故材料の欠陥を明らかにしない。
【0090】
大きい複合材料構造体の測定中には、コントロールセンターは、特定のセルアドレスで発生するデータ収集イベントを検出するために使用されてもよい。これはデータ収集プロセスを引き起こす。これが発生した場合、ソースRF信号は関連するセルにおいて生成される。この信号は、複合材料構造体のあらゆる場所に送信される(即ち、浸透する)。信号は、構造体の任意の層の導電/絶縁領域によって強められてもよい。信号は、材料のあらゆる場所に反射され、簡単な近似で複合材料の空間の導電性の「影」を生成する。表面では、この情報はプローブにより電圧信号として検出されるエバネセント波の中にある。ヘテロダイン又はホモダイン法は、この信号の振幅又はその調波を測定するために使用される。
【0091】
図15は、複数のパネルで形成された大きい複合材構造体からの構造健全性データの収集を表す。多数の複合セルは、上述した方法に応じてスキャンされてもよい。セルは、セル内の単一のソースに関連した、又は、その代わりに、セル内部の複数の照明光源に関連した多数のアレイプローブでスキャンされる。スイッチング手段及びセル内の受信システムを含めることで、複合材料全体の位置の関数として電磁場を表す生データの統合されたセットを収集することができる。それから、データは統合される。それから、データは、蓄積され(S1)、処理され(S2)、そしてイメージデータが取得される(S3)。あるいは、フィードバックがすぐに要求されない場合、データ処理はオフラインで行える。
【0092】
一旦データが個々のネットワークから収集されれば、構造体全体のエバネセント場を表す生データのセットとして統合することができる。最初の処理ステップは、当技術において既知のベイジアンフィルタのようなフィルタの選択を利用するノイズ及びモーションブラーの減少による修復である。
【0093】
次の処理ステップは、特定の特徴を有する幾何学的オブジェクトの認識である。特定のタイプの損傷のための特徴を抽出するために、本願発明者は、疑似結晶構造体から数値的及び実験的に決定されたエバネセント場のテクスチャの実証されたライブラリを使用するアルゴリズムを改良する。これらのエバネセント場のテクスチャは、ユニークな空間周波数成分を有しており、異なる損傷/欠陥タイプの痕跡となる。イメージアルゴリズムは、特定の構造位置での損傷を顕在化する空間周波数特性をデコンボリューションするために、このデータライブラリを使用する。これらのパターンは、特定の色でタグ付けされる。従って、特定の周波数部分の画像は、カラーコード化されたイメージになる。最終的なユーザイメージは、3Dイメージを作るために、これらの周波数部分を結合している。
【0094】
処理されるために、取得されたデータは解釈(データ「診断」)を要求する。データは、データのパターンを識別するのに適したソフトウェアによって解釈されてもよい。これは、以下に詳細に記載する3Dイメージ法、及び他のイメージ分析法を含んでいてもよい。例えば、オブジェクトの特徴を決定するためのイメージ分析法は、補間及びデモザイク、並びに当技術において既知の他の方法に基づくことができ、それらのいずれも、ノイズを減少させるためのローパスフィルタ及びベイズ的解釈を含んでよい。
【0095】
解釈を支援するために、損傷/欠陥タイプのライブラリ、及びそれらの対応する無線特性は、参考のためにコンパイルされてもよい。欠陥タイプは、亀裂、歪み/応力/疲労、又は温度を特に含んでいる。更に、これらの方法は、複合材損傷を評価するために重要な尺度/測定基準である、複合材料内の結晶化度の大きさを提供する。
【0096】
データの管理は、大規模な構造体のために要求される。データ管理システムは、(パーソナルコンピュータがその動作を収集し記録するように)適切な時間間隔で定期的にデータのログをとるために使用されてもよい。例えば、試験がこの間隔で行われる場合には、データは1日に2回又は3回記録されればよい。試験がリアルタイムで行われる場合には、データ記録はより頻繁になる。データログの検査は、いかなる問題も診断でき、いかなる懸案事項にも注意を与えるのに役立つ。
【0097】
複合材料のエバネセント場からの複雑な構造の情報を処理できる重要な部分は、複合材料構造体に浸透するバルク電磁場の理解を要求する。留意すべきは、内部フィールドが、複合材料の構造、特に(
図3で示したような)損傷により減少する結晶化度及び規則性によって決定される点である。
【0098】
バルクからエバネセント場に渡される構造情報をデコンボリューションするのを支援するため、本願発明者は、現実の複合材料に認められるユニットセルから仮想材料を作り出すことで導出された電磁特性のライブラリをコンパイルした。当技術において既知のイーセル法(
図16参照)は、電磁場構造関係を解決するため、及び広い周波数レンジ、特に通常「拡散」により表される電磁場である低周波数をカバーするために使用された。「拡散」は、波長が大きくなる場合、例えば元の値より10倍まで大きくなる場合、電磁場相互作用の単純化に関係している。この型では、位相は無視できると見なされる。しかしながら、この単純化は、得られたイメージにおける影として欠陥の視覚化を招く。有利には、イーセル法はこの単純化に要求されない。この手法は、特に拡散が適用される低周波数で、材料の異方性導電率を回復させる。
【0099】
イーセル法は、6つの時間進行関数を備える。
【0101】
図17は、複合材料における異なる深さからの構造情報を含む様々なイメージパネルが、エバネセント場においてどのように集められるのか、及びデコンボリューションを要求されるのかを示す。3Dイメージを作成するための
図17に示される方法は、異なる周波数レンジでのイメージの作成及びイメージされた各特徴への減衰作用の帰結を含む。例えば、高い周波数は表面特徴を検出し、得られたイメージの中でそれらをより強く示す、一方で低い周波数は、相対的に少ない表面情報及び相対的に多いより深い内部構造を検出する。この方法で、特徴及びその深さ情報の両方を引き出すことができる。
【0102】
図18は、上述したイメージング方法とは別に或いは共に立体的なイメージを得るためのイメージング方法を表す。プローブの半数は、一のポイントで最初のイメージであるイメージ1を得るために使用され、プローブの他の半数は、プローブ間の間隔に等しいわずかにずれた基準点からイメージ2を測定するために使用される。立体的なイメージは、イメージ1及びイメージ2から、従来の立体技術を使用して得られてもよい。
【0103】
複合材料は、典型的には補強材及び母材から構成され、航空宇宙、とりわけ旅客機のための補強材は、典型的には、炭素繊維又はケブラーである。母材は、通常、熱硬化性エポキシ、又は熱可塑性ポリエステル、ビニルエステル若しくはナイロンである。その結果、炭素繊維補強ポリマー又は炭素繊維補強プラスチック(CFRP又はCRP)となる。これらの高度な複合材料のための典型的な航空宇宙用途では、超高性能圧力容器、ロケットモータケース、及び発射管である。固有センサ用途のため、比較的絶縁された母材中の導電性繊維は、本発明に係る方法で利用できる十分な電気的周期性を生み出す。電気的特性において重要な周期性に結びつく他の補強材の選択は、金属、半導体、複合粒子(例えば、金属或いは絶縁体)又はマトリクス内の空孔を含んでいる。
【0104】
本発明に係る固有センシング方法を使用すれば、製造工程及び最終用途内の両方で、構造材料に関する情報への素早いアクセスを実現できる。センシングは、現在のSHMシステム及び方法と比較して、都合がよいことに非常に低コストで実現される。
【0105】
本発明で検出され得る複合材料の欠陥を示す複合材料の特性の典型的な変化は、繊維破損、微小亀裂、剥離、異物又は汚染物質、衝撃損傷、及び間隙率である。間隙率という用語は、一般的に封入空気及び回復プロセスの間に放出される揮発性ガスにより生じる空洞を指す。例えば圧縮強度、横軸の張力の強さ、及び層間せん断強度のような母材に支配された特徴は、間隙率によって影響を受ける。約7%の総空洞率まで、空洞1%につき、およそ7%層間せん断強度が減少することが一般的に分かっている。
【0106】
複合材料における間隙率を検出するための技術は、以下の1つとして大きく分けられる。即ち、直接画像化、単一の超音波周波数による相関(狭帯域アプローチ)、又は超音波周波数勾配による相関(広帯域アプローチ)である。減衰曲線の周波数による相関は、成功裏に実証され、広く応用されている。また、増加する空洞率の関数として、ほぼ直線的な変化の勾配となる。空洞率と減衰勾配との相関を使用することで、空洞率は超音波的に決定され、酸分解法により破壊的に決定される空洞率と比較される。違いは微妙かもしれないが、本発明に係る方法のような高度なイメージング技術は、走査される試料における母材豊富な又は母材不足な領域の決定の助けとなる。
【0107】
更に、繊維/母材分布、繊維波形、及び繊維配向は、複合材料の重要な微細構造特性である。また粒子の環境の変化は、経時的な変形又は材料内の不安定性によって生じ、材料の性能を悪化させる。これらの特性は全て、本発明に係る方法を用いても検出できる。
【0108】
使用された複合材料は、典型的には構成素材であり、摩耗、損傷又は温度に関する情報が求められる。有利には、規則的な複合材料は、応力、歪み、体積ひずみ、又は密度変動のような材料の環境の変化に関する情報を提供するために使用される。更に、開発モデル及びソフトウェアにより、材料の温度、pH、水和、汚染、放射又は着氷を決定するための戻り信号を相互に関連づける。
【0109】
従って、本発明は多くの重要な利点を有する。例えば、構造体を弱らせる余分なセンサを構造体上又は構造体内に取り付ける必要なしに、航空宇宙産業向け構造部品(航空機の翼、パネル、ボルト、容器及びシール等)並びに石油及びガス産業向けのスマートシールのような重要構造部品に関連する連続的又は選択的なデータ収集を可能とする。これらの固有センサは規則的な材料を使用するため、いくつかのケースでは、固有センシング材料は既に利用可能である。例えば、航空宇宙用途に用いられた、ある炭素繊維ラミネート構造体は準結晶である。
【0110】
これは、このような構造部品の形成に複合材料の使用が増えている産業において航空機のメンテナンス及び修理費を減らす、はるかに経済的なSHMシステムを示す。
【0111】
航空宇宙技術における複合材料試験のための既存の方法は、例えば2Dイメージを得るための水浴した超音波振動子及び複合材試料を含み、「音」が「聞かれる」コインタップ法を含む。有利には、本発明は、水浴の使用を必要とせずに、そのような材料の試験を可能とする。更に、本発明に係る試験システムによれば、小型化が可能であり、携帯優位性を提供できる。本発明はまた、低消費電力である(ミリワットの電力しか要求しない)。
【0112】
本発明の他の利点は、素早いデータ取得及びリアルタイムでの部品の摩耗又は疲労状態の収集が可能とされる点であり、その結果、取替え時間が明確となり、故障時間、並びに部品の製造時又は使用時における管理及び作業コストが減少する。製造工程も細かく管理され、材料内部からのフィードバックを用いて最適化される。
【0113】
更に、パイプラインセンシングの分野では、本発明のシステム及び方法によって、連続的な歪みモニタリングが可能であり、オペレータが漏洩等の問題の発生を防止できるようになる。対照的に、現在の光ファイバー技術は、一旦漏洩が生じた場合にのみ、液体又は気体システムにおける漏洩の存在を夫々示す「ホットスポット」又は「コールドスポット」を認識する。
【0114】
本発明の他の利点は、坑内モニタリングのようなモニタリングシステムのロバスト性を向上させ、コネクタやワイヤ等の必要性を取り除く。別々の電源を有するセンサ装置の必要性も取り除かれる。ワイヤレス相互作用を介して、センシング要素に電力が供給されるからである。その他の応用分野は、複合体の品質管理、航空機及び高速車のブレーキシステム、土木構造物及び人の健康モニタリング、原子力及び化学プラントでの圧力モニタリング、熱シールド及びノーズコーンの温度測定、並びに宇宙ステーション、線路及びタンカーでの亀裂検出を含む。
【0115】
過酷な環境における信頼性のために、本発明は構造体をセンサとして利用できる。よい例は、パイプ内の水粘性の測定である。機体の外板を支持フレームと結合させる表面に、固有センシングが組み込まれた複合材の航空機の翼が取り付けられる。これらの領域は、しばしばパネルにおける応力又は構造体における耐荷重性のホットスポットであり、それらの機械的状態に関する情報を伝達する。この理由で、複合構造体のための重要な機械的情報は、接合点で利用可能となる。