特許第6018049号(P6018049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018049無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び当該樹脂組成物を成形してなる射出成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018049
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び当該樹脂組成物を成形してなる射出成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20161020BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20161020BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20161020BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20161020BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C08L67/02
   C08K3/40
   C08L23/06
   C08L63/00 A
   B29C45/00
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-512427(P2013-512427)
(86)(22)【出願日】2012年4月26日
(86)【国際出願番号】JP2012061198
(87)【国際公開番号】WO2012147845
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2011-100724(P2011-100724)
(32)【優先日】2011年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501183161
【氏名又は名称】ウィンテックポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美香
(72)【発明者】
【氏名】水口 一浩
(72)【発明者】
【氏名】川口 邦明
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−316539(JP,A)
【文献】 特開2005−220148(JP,A)
【文献】 特開2006−056997(JP,A)
【文献】 特表2010−511634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00−67/08
C08L 23/00−23/36
C08K 3/00−13/08
C08L 63/00−63/10
B29C 45/00
B29K 105/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ISO11443に準拠して、温度260℃、せん断速度1216s−1の条件で測定した溶融粘度が30Pa・s以上70Pa・s以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、
(B)ISO11443に準拠して、温度260℃、せん断速度1216s−1の条件で測定した溶融粘度が50Pa・s以上220Pa・s以下であるポリエチレン樹脂を46.6質量部以上100質量部以下、
(C)グリシジル基を有する単量体を2質量%以上15質量%以下、エチレン系単量体を60質量%以上98質量%以下、メタクリル酸アルキルエステル系単量体を0質量%以上30質量%以下、アクリル酸アルキルエステル系単量体を0質量%以上30質量%以下から構成される反応性共重合体を1質量部以上15質量部以下、
(D)ガラス系無機充填材を20質量部以上50質量部以下から構成され、
前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の1kg当たりの末端カルボキシル基量をα(meq/kg)、前記(C)反応性共重合体のエポキシ当量をγ(g/eq)としたとき下記不等式(1)を満足する無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
0.1≦γ−1×10×wγ/(α×wα)≦5 (1)
[ここで、wαは(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量(100質量部)、wγは(C)反応性共重合体の含有量(前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対する含有量)をそれぞれ表す。]
【請求項2】
前記(C)反応性共重合体のエポキシ当量が1000g/eq以上5000g/eq以下である請求項1記載の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)反応性共重合体が、メタクリル酸グリシジルとエチレン系単量体とから構成される共重合体である請求項1又は2いずれか1項記載の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)ポリエチレン樹脂が、密度0.90g/cm以上0.93g/cm以下の直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1から3いずれか1項記載の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項記載の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を製造する方法であって、
少なくとも、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、前記(B)ポリエチレン樹脂と、前記(C)反応性共重合体と、前記(D)ガラス系無機充填材と、を混練し、
前記(B)ポリエチレン樹脂が、バイオエタノールを脱水して得られるエチレンを重合してなるポリエチレン樹脂であ
機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法
【請求項6】
)ガラス系無機充填材が、シラン系カップリング剤又はチタネート系カップリング剤で表面処理されたガラス繊維である請求項5記載の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法
【請求項7】
請求項1からいずれか1項記載の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形する射出成形品の製造方法
【請求項8】
前記射出成形時の金型温度が20℃以上100℃以下である請求項7記載の射出成形品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び当該樹脂組成物を成形してなる射出成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械的特性、電気的特性、耐熱性、耐薬品性及び耐溶剤性等に優れるため、エンジニアリングプラスチックとして、自動車用部品、電気・電子部品等の種々の用途に広く利用されている。
【0003】
近年、特に自動車用部品やモバイル用の電気・電子機器用の樹脂材料としては、省資源・低環境負荷の観点からも軽量化等が望まれている。これらの用途にポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、衝撃強度や剥離性等の物性の改善とともに軽量化も求められている。
【0004】
ポリブチレンテレフタレート樹脂に、より密度の低いポリオレフィン系樹脂等を溶融混練することにより、樹脂材料を軽量化することは可能であるが、単純に混練するだけでは相溶性に優れず、成形品の表面に形成される表層の剥離が発生しやすい等の問題を生じる場合がある。
【0005】
従来、ポリエステル樹脂にポリオレフィン系樹脂や変性ポリオレフィン樹脂、相溶化剤等を溶融混練することにより相溶性を改善しつつ、樹脂成形品の軽量化、衝撃強度の向上が達成されてきた(特許文献1〜4)。
【0006】
ところで、ポリブチレンテレフタレート樹脂は分子内にエステル基を有しているため、加水分解により分子量が低下することにより物性が低下するという欠点を有している。このため、ポリブチレンテレフタレート樹脂に関する技術において、この加水分解を抑制することも重要となる。
【0007】
上記特許文献1〜4によれば、製品の軽量化と製品の性能向上とを実現できるとされているが、上記の特許文献1〜4においては、耐加水分解性の改良に関しては十分な検討が行われていない。
【0008】
そして、ポリブチレンテレフタレート樹脂は無機充填材により強化されて用いられることが多いが、上記の特許文献1〜4では、無機充填材により強化された樹脂材料に関して、物性等の十分な検討は行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−80867号公報
【特許文献2】特開平6−295761号公報
【特許文献3】特開2002−309069号公報
【特許文献4】特開平8−127677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、耐加水分解性に優れ、軽量であり、且つ優れた衝撃強度等の物性を有する樹脂成形品を得るための原料となる、無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を射出成形してなる射出成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、ポリブチレンテレフタレート樹脂、特定のポリエチレン樹脂、及び特定の反応性重合体、ガラス系無機充填材を、特定量組み合わせることにより、上記目的を達成し得る無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0012】
(1) (A)ISO11443に準拠して、温度260℃、せん断速度1216s−1の条件で測定した溶融粘度が30Pa・s以上70Pa・s以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、(B)ISO11443に準拠して、温度260℃、せん断速度1216s−1の条件で測定した溶融粘度が50Pa・s以上220Pa・s以下であるポリエチレン樹脂を10質量部以上100質量部以下、(C)グリシジル基を有する単量体を2質量%以上15質量%以下、エチレン系単量体を60質量%以上98質量%以下、メタクリル酸アルキルエステル系単量体を0質量%以上30質量%以下、アクリル酸アルキルエステル系単量体を0質量%以上30質量%以下から構成される反応性共重合体を1質量部以上15質量部以下、(D)ガラス系無機充填材を20質量部以上50質量部以下から構成され、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の1kg当たりの末端カルボキシル基量をα(meq/kg)、前記(C)反応性共重合体のエポキシ当量をγ(g/eq)としたとき下記不等式(1)を満足する無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
0.1≦γ−1×10×wγ/(α×wα)≦5 (1)
[ここで、wαは(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量(100質量部)、wγは(C)反応性共重合体の含有量(前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対する含有量)をそれぞれ表す。]
【0013】
(2) 前記(C)反応性共重合体のエポキシ当量が1000g/eq以上5000g/eq以下である(1)記載の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【0014】
(3) 前記(C)反応性共重合体が、メタクリル酸グリシジルとエチレン系単量体とから構成される共重合体である(1)又は(2)いずれか1項記載の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【0015】
(4) 前記(B)ポリエチレン樹脂が、密度0.90g/cm以上0.93g/cm以下の直鎖状低密度ポリエチレンである(1)から(3)いずれか1項記載の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【0016】
(5) 前記(B)ポリエチレン樹脂が、バイオエタノールを脱水して得られるエチレンを重合してなるポリエチレン樹脂である(1)から(4)いずれか1項記載の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【0017】
(6) (F)ガラス系無機充填材が、シラン系カップリング剤又はチタネート系カップリング剤で表面処理されたガラス繊維である(1)から(5)いずれか1項記載の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【0018】
(7) (1)から(6)いずれか1項記載の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形してなる射出成形品。
【0019】
(8) 前記射出成形時の金型温度が20℃以上100℃以下である(7)記載の射出成形品。
【発明の効果】
【0020】
本発明の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物によれば、耐加水分解性に優れ、軽量であり、且つ優れた衝撃強度等の物性を有する樹脂成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0022】
本発明の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリエチレン樹脂、(C)反応性共重合体、(D)ガラス系無機充填材を含む。
【0023】
<(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂>
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂としては、ブチレンテレフタレートを主成分として含むホモポリエステル(ポリブチレンテレフタレート)及び/又はコポリエステル(ブチレンテレフタレート系共重合体、又はポリブチレンテレフタレートコポリエステル、又は変性PBT樹脂)等が挙げられる。
【0024】
コポリエステルにおける共重合可能なモノマー(以下、単に共重合性モノマーと称する場合がある)としては、テレフタル酸を除くジカルボン酸成分、1,4−ブタンジオールを除くジオール、オキシカルボン酸成分、ラクトン成分等が挙げられる。共重合性モノマーは、一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0025】
ジカルボン酸(ジカルボン酸成分、又はジカルボン酸類という場合もある)としては、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等のC〜C40ジカルボン酸、好ましくはC〜C14ジカルボン酸)、脂環式ジカルボン酸成分(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸等のC〜C12ジカルボン酸)、テレフタル酸を除く芳香族ジカルボン酸成分(例えば、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸等のC〜C16ジカルボン酸)、又はこれらの反応性誘導体(例えば、低級アルキルエステル(ジメチルフタル酸、ジメチルイソフタル酸等のフタル酸又はイソフタル酸のC〜Cアルキルエステル等)、酸クロライド、酸無水物等のエステル形成可能な誘導体)等が挙げられる。さらに、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸又はそのエステル形成誘導体(アルコールエステル等)等を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリブチレンテレフタレート樹脂を得ることもできる。
【0026】
ジオール(ジオール成分又はジオール類という場合もある)には、例えば1,4−ブタンジオールを除く脂肪族アルカンジオール[例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール(1,6−ヘキサンジオール等)、オクタンジオール(1,3−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール等)、デカンジオール等の低級アルカンジオール、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C〜C12アルカンジオール、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C〜C10アルカンジオール等);(ポリ)オキシアルキレングリコール(例えば、複数のオキシC〜Cアルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)等]、脂環族ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等)、芳香族ジオール[例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオール等のジヒドキシC〜C14アレーン;ビフェノール(4,4’−ジヒドキシビフェニル等);ビスフェノール類;キシリレングリコール等]、及びこれらの反応性誘導体(例えば、アルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等のエステル形成性誘導体等)等が挙げられる。さらに、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等のポリオール又はそのエステル形成性誘導体を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリブチレンテレフタレート樹脂を得ることもできる。
【0027】
上記ジオールの一例であるビスフェノール類としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン等のビス(ヒドロキシアリール)C1〜6アルカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)C〜C10シクロアルカン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、及びこれらのアルキレンオキサイド付加体が例示できる。アルキレンオキサイド付加体としては、ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールF)のC〜Cアルキレンオキサイド付加体、例えば、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジエトキシ化ビスフェノールA、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ジプロポキシ化ビスフェノールA等が挙げられる。アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のC〜Cアルキレンオキサイド)の付加モル数は、各ヒドロキシ基に対して1〜10モル、好ましくは1〜5モル程度である。
【0028】
オキシカルボン酸(又はオキシカルボン酸成分又はオキシカルボン酸類)には、例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はこれらの誘導体等が含まれる。ラクトンには、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(例えば、ε−カプロラクトン等)等のC〜C12ラクトン等が含まれる。
【0029】
これらの共重合性モノマーのうち、好ましくはジオール類[C〜Cアルキレングリコール(エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール等の直鎖状又は分岐鎖状アルキレングリコール等)、繰り返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシC〜Cアルキレングリコール(ジエチレングリコール等)、ビスフェノール類(ビスフェノール類又はそのアルキレンオキサイド付加体等)]、ジカルボン酸類[C〜C12脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)、カルボキシル基がアレーン環の非対称位置に置換した非対称芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジメタノール等]等が挙げられる。
【0030】
これらの化合物のうち、芳香族化合物、例えば、ビスフェノール類(特にビスフェノールA)のアルキレンオキサイド付加体、及び非対称芳香族ジカルボン酸[フタル酸、イソフタル酸及びその反応性誘導体(ジメチルイソフタル酸等の低級アルキルエステル)等]等が好ましい。
【0031】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂としては、ホモポリエステル(ポリブチレンテレフタレート)及び/又は共重合体(ポリブチレンテレフタレートコポリエステル)が好ましく、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、共重合性モノマーの割合(変性量)が、通常、0モル%以上30モル%以下、好ましくは0モル%以上25モル%以下のホモ又はコポリエステル(特にホモポリエステル)であってもよい。
【0032】
また、ホモポリエステル(ポリブチレンテレフタレート)と共重合体(コポリエステル)とを組み合わせて使用する場合、ホモポリエステルとコポリエステルとの割合は、共重合性モノマーの割合が、全単量体に対して0.1モル%以上30モル%以下(好ましくは1モル%以上25モル%以下、さらに好ましくは5モル%以上25モル%以下)程度となる範囲であり、通常、ホモポリエステルとコポリエステルとの質量比であるホモポリエステル/コポリエステル=1/99以上99/1以下(質量比)、好ましくは5/95以上95/5以下(質量比)、さらに好ましくは10/90以上90/10以下(質量比)程度の範囲から選択できる。
【0033】
なお、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、市販品を使用してもよく、テレフタル酸又はその反応性誘導体と1,4−ブタンジオールと必要により共重合可能なモノマーとを、慣用の方法、例えばエステル交換、直接エステル化法等により共重合(重縮合)することで製造したものを使用してもよい。また、その製造は、溶融状態、固相状態、溶液状態のいずれの状態で行ってもよい。
【0034】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂はISO11443に準拠した、温度260℃、せん断速度1216s−1で測定した溶融粘度(MV)が、30Pa・s以上70Pa・s以下である。溶融粘度が30Pa・sより小さいと、本発明の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の引張強度が低下する場合があり、70Pa・sを超えると上記樹脂成形品の表面に剥離を生じる場合があるため、いずれも好ましくない。
【0035】
溶融粘度が上記範囲内のポリブチレンテレフタレート樹脂は、従来公知の樹脂の製造方法における製造条件を適宜調整することで製造することができる。また、異なる溶融粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、溶融粘度を上記の範囲に調整してもよい。
【0036】
本発明において用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、1meq/kg以上30meq/kg以下が好ましい。かかる範囲の末端カルボキシル基量の(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、本発明の樹脂組成物が湿熱環境下での加水分解による強度低下を受けにくくなる。
【0037】
<(B)ポリエチレン樹脂>
本発明で用いる(B)ポリエチレン樹脂には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられ、衝撃強度の観点から直鎖状低密度ポリエチレンが特に好ましい。また、(B)ポリエチレン樹脂の製法については特に限定されず、例えば、直鎖状低密度ポリエチレンにおいてチーグラー系の触媒、メタロセン系の触媒等従来公知の各種触媒を使用することが可能である。また、(B)ポリエチレン樹脂中に含まれる残渣の触媒量、及び未反応の不飽和結合量等の制限を受けるものでもない。さらに、一度、作製したポリエチレンを熱分解等することにより低分子量化したものであってもよい。
【0038】
(B)ポリエチレン樹脂にはバイオ由来の原料を用いて重合したポリエチレン樹脂を用いてもよく、特に、バイオエタノールを脱水して得られるエチレンを用いて重合したポリエチレン樹脂を用いてもよい。かかるポリエチレン樹脂を用いることにより、将来的に枯渇が懸念される石油資源の使用量を減量することができる。また、原料となる植物が光合成により二酸化炭素を吸収しているとして材料の二酸化炭素排出量を、ライフサイクル全体で考えるカーボンニュートラルの構想に基づき二酸化炭素排出量を低減することが可能となる。
【0039】
(B)ポリエチレン樹脂の密度は0.90g/cm以上0.97g/cm以下が好ましく、0.90g/cm以上0.93g/cm以下が特に好ましい。密度が0.97g/cmを超えると、本発明の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の衝撃強度の向上効果が見られない場合があり、密度が0.90g/cmより小さいと上記樹脂成形品の剛性が低下する場合があるため、いずれも好ましくない。
【0040】
(B)ポリエチレン樹脂はISO11443に準拠した、温度260℃、せん断速度1216s−1で測定した溶融粘度(MV)が、50Pa・s以上220Pa・s以下である。50Pa・sより小さいと、本発明の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の剛性が低下する場合があり、220Pa・sを超えると本発明の樹脂組成物の成形性が悪化する場合があり、いずれも好ましくない。
【0041】
(B)ポリエチレン樹脂の含有量は(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部当たり、10質量部以上100質量部以下である。10質量部未満であると、本発明の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の衝撃強度の向上効果がみられず、100質量部を超えると上記樹脂成形品の表面が剥離する問題や樹脂成形品の強度低下、耐熱性低下を招く場合があるため好ましくない。
【0042】
<(C)反応性共重合体>
本発明では、ポリエステル樹脂とポリエチレン樹脂との相容化剤として、(C)反応性共重合体を用いる。本発明で用いる(C)反応性共重合体は、グリシジル基を有する単量体、エチレン系単量体から構成される(C)反応性共重合体である。これに加えてメタクリル酸アルキルエステル系単量体、アクリル酸アルキルエステル系単量体を含んだ3種以上の単量体から構成される(C)反応性共重合体であってもよい。
【0043】
(C)反応性共重合体のエポキシ当量をγ(g/eq)、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の1kg当たりの末端カルボキシル基量をα(meq/kg)としたとき、上記エポキシ当量と、上記末端カルボキシル基の当量との比(γ−1×10×wγ/(α×wα)で表され、以下「エポキシ/樹脂当量比率」という場合がある)が、0.1以上5以下である。エポキシ/樹脂当量比率が0.1未満だと、本発明の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品は耐加水分解性に優れず、5を超えた場合、樹脂組成物の流動性の低下による成形性の悪化を招く場合があるため、いずれも好ましくない。ここで、wαは(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量(100質量部)、wγは(C)反応性共重合体の含有量((A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対する(C)反応性共重合体の含有量)をそれぞれ表す。
【0044】
(C)反応性共重合体は、グリシジル基を有する単量体を2質量%以上15質量%以下、エチレン系単量体を60質量%以上98質量%以下、メタクリル酸アルキルエステル系単量体を0質量%以上30質量%以下、アクリル酸アルキルエステル系単量体を0質量%以上30質量%以下で構成される。好ましい(C)反応性共重合体は、エポキシ当量が1000g/eq以上5000g/eq以下である。さらに(C)反応性共重合体はメタクリル酸グリシジルと、エチレン系単量体との共重合体であるのがより好ましい。
【0045】
(C)反応性共重合体の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部当たり、1質量部以上15質量部以下である。1質量部未満であると、本発明の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の耐加水分解性の向上がほとんどみられない場合や、上記樹脂成形品の表面に剥離が生じる場合があり、15質量部を超えると本発明の樹脂組成物の溶融時における流動性の低下による成形性の悪化を招く場合があるため好ましくない。
【0046】
<(D)ガラス系無機充填材>
本発明において使用される(D)ガラス系無機充填材としては、目的に応じて繊維状(ガラスファイバー)、粒状(ガラスビーズ)、粉状(ミルドガラスファイバー)、板状(ガラスフレーク)の充填材、又は中空状(ガラスバルーン)又はこれらの混合物が用いられるが、特にその中でも、繊維状のガラスファイバーが好ましい。
【0047】
また、これらの(D)成分のガラス系無機充填材としては、シラン系、或いは、チタネート系カップリング剤等の表面処理剤により処理を施されている無機充填材を使用することが好ましい。
【0048】
シラン系カップリング剤としては、例えばビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、アリルアルコキシシラン等が挙げられる。
【0049】
ビニルアルコキシシランとしては、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0050】
エポキシアルコキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
アミノアルコキシシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
メルカプトアルコキシシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
アリルアルコキシシランとしては、例えばγ−ジアリルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アリルチオプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0054】
また、チタネート系表面処理剤としては、例えば、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン等が挙げられる。また、ガラスファイバーにおいては、さらにサイズ剤として、ポリマーバインダー、接着促進剤、他の助剤等を使用しているものが好適に使用される。ポリマーバインダーとして、一般に有機系の材料、例えば水分散性/水溶性の酢酸ポリビニル、ポリエステル、エポキシド、ポリウレタン、ポリアクリレート又はポリオレフィン樹脂、それらの混合物等、従来公知のものが好適に使用される。
【0055】
本発明において、(D)ガラス系無機充填材の使用量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して20質量部以上50質量部以下である。50質量部よりも過多の場合には、本発明の樹脂組成物の溶融時における流動性を損なう場合があり好ましくない。20重量部よりも過少の場合には、本発明の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品に高い剛性が必要となる分野での使用が難しくなる場合がある。
【0056】
<その他の成分>
なお、本発明の無機充填材強化ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂(熱可塑性樹脂等)、種々の添加剤・充填材、例えば酸化防止剤等を含んでいてもよい。
【0057】
<樹脂組成物の調製方法及び用途>
本発明の樹脂組成物の調製法の具体的態様は特に限定するものではなく、一般に合成樹脂組成物又はその成形品の調製法として公知の設備と方法により、樹脂組成物を調製することができる。即ち、必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。また、押出機又はその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。また、樹脂組成物の混練温度(シリンダー温度)は225℃以上275℃以下が好ましく、より好ましくは235℃以上265℃以下である。混練温度が275℃より高いと混練中に樹脂の分解が進行しやすく、225℃より低いと得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が耐加水分解性に優れない場合があり好ましくない。
【0058】
本発明の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品は、実施例に示すように121℃、100%RHの湿熱条件下で72時間暴露処理した際に引張強度保持率が70%以上と耐加水分解性に優れる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂単体に無機充填材を添加した場合に比較し、軽量である。比重は1.4未満であるのが好ましい。
【0059】
本発明の樹脂組成物を原料として、従来公知の成形方法(例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクション成形等の方法)で、種々の成形品を成形することができる。その中でも特に射出成形に適し、金型温度20℃以上100℃以下の条件で成形することができる。
【0060】
また、これらの成形品は、自動車部品(内装部品、電気系統部品、車載電気・電子部品、機構部品、金属と接触する部品等)、電気・電子部品(オーディオ機器、OA機器のシャーシ、レバー等)、雑貨、文房具類等各種用途に利用することができる。
【実施例】
【0061】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
使用した成分の詳細、物性評価の測定法は以下の通りである。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂
(A−1)ポリブチレンテレフタレート(ウィンテックポリマー(株)製、溶融粘度62Pa・s、末端カルボキシル基量24meq/kg)
(A−2)ポリブチレンテレフタレート(ウィンテックポリマー(株)製、溶融粘度173Pa・s、末端カルボキシル基量15meq/kg)
(B)ポリエチレン樹脂
(B―1)直鎖状低密度ポリエチレン:LL−318(Braskem社製、密度0.918g/cm、溶融粘度205Pa・s)
(B―2)高密度ポリエチレン:HA7260(Braskem社製、密度0.955g/cm、溶融粘度67Pa・s)
(B−3)直鎖状低密度バイオポリエチレン:SLL−318(Braskem社製、密度0.918g/cm、溶融粘度210Pa・s)
(B−4)高密度バイオポリエチレン:SHA7260(Braskem社製、密度0.955g/cm、溶融粘度73Pa・s)
(B−5)高密度バイオポリエチレン:SHC7260(Braskem社製、密度0.958g/cm、溶融粘度140Pa・s)
(B−6)高密度バイオポリエチレン:SGE7252(Braskem社製、密度0.950g/cm、溶融粘度177Pa・s)
(C)グリシジル基を有する反応性共重合体
(C−1)メタクリル酸グリシジル/エチレン 共重合ポリマー:ボンドファーストE(住友化学(株)製、エポキシ当量約1180g/eq、メタクリル酸グリシジル12重量%)
(C−2)メタクリル酸グリシジル/アクリル酸メチル/エチレン 共重合ポリマー:ボンドファースト7M(住友化学(株)製、エポキシ当量約2370g/eq、メタクリル酸グリシジル6質量%、アクリル酸メチル27質量%)
(D)ガラス系無機充填材
ガラスファイバー(E−ガラス):ECS03T−187(日本電気硝子(株)製)
(E)酸化防止剤:テトラキス[メチレン3(3,5−ジ−t−ブチル4ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASF社製)
【0063】
<成分(A)および成分(B)の溶融粘度の測定>
ISO11443に準拠し測定した。送風乾燥機を用いて(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を140℃で3時間、(B)ポリエチレン樹脂を105℃で4時間、それぞれ予め乾燥した後、東洋精機(株)製キャピログラフ1B(キャピラリー式レオメータ)を用い、温度260℃、せん断速度1216s−1、キャピラリーL/D=20/1の条件で、それぞれの樹脂について溶融粘度を測定した。測定結果は上記(A−1)から(A−3)および、(B−1)から(B−6)の各成分の詳細に括弧書きで示した。
【0064】
<実施例1〜9、比較例1〜6>
表1、2に示す無機充填材を除く成分をそれぞれドライブレンドし、30mmφのスクリューを有する2軸押出機((株)日本製鋼所製TEX−30α)にホッパー口から供給するとともに、押出機の混練部中腹のサイド口から無機充填材を供給して下記溶融混練条件で溶融混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。続いて、得られた樹脂組成物を用いて、成形及び評価を行った。なお、表1中の各成分の使用量を表す数字の単位は質量部である。
【0065】
<溶融混練条件>
押出機スクリュー:L/D=38.5
吐出量:15kg/h
スクリュー回転数:129rpm
バレル温度:C2=220℃,C3〜C11,ダイヘッド=250℃
ここで、C2〜C11は供給口側から順にヒーターの温度を示している。
【0066】
<機械物性評価用試験片の成形条件>
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、以下の条件で試験片を射出成形した。
成形機:ファナック(株)製 ROBOSHOT S2000i100B
シリンダ温度:250℃
金型温度:80℃(水温調)
射出速度:26mm/s
保圧:60MPa×20s
【0067】
<引張強さ、引張伸び(破壊ひずみ)>
機械物性評価用試験片を用い、ISO527−1,2に定められている評価基準に従い、引張強さ、引張伸びを評価した。
【0068】
<衝撃強度>
機械物性評価用試験片を用い、ISO−179(試験片厚み4mm)に定められている評価基準に従い、シャルピー衝撃強度評価した。
【0069】
<耐加水分解性評価>
引張試験片(ISO527−1,2準拠)を、機械物性評価用試験片と同様の方法で作製し、この試験片を恒温恒湿器内で、121℃、100%RHの条件下で72時間曝露処理した。その後、引張り試験を行い、引張強さを測定し、未処理の引張強さの値に対する保持率を求めた。
【0070】
<エポキシ/樹脂当量比率>
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の1kg当たりの末端カルボキシル基量をα(meq/kg)、(C)反応性共重合体のエポキシ当量をγ(g/eq)として、エポキシ/樹脂当量比率であるγ−1×10×wγ/(α×wα)を算出した。ここで、wαは(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量(100質量部)、wγは(C)反応性共重合体の含有量(ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量を100質量部としたときの反応性共重合体の含有量)をそれぞれ表す。なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、メチルレッドを指示薬として、酸アルカリ中和法(滴定測定)により滴定を行って求めた。
【0071】
<剥離性>
上記引張試験片(ISO527−1,2準拠)のチャック部分の中央部1cm角の中にカッターナイフで1mm角のマス目を100マス設け、これにセロハンテープを一度貼り付けた後、剥がした。100マスのうち、この操作により表面が剥離したマス目の数を目視で測定した。なお、評価は以下の基準により行った。
(評価基準)
剥離なし :○
1〜5枚剥離:△
5枚以上剥離:×
【0072】
<比重>
上記の方法で製造された機械物性評価用試験片の23℃における空気中重量と水中重量を測定し、比重を求めた。
【0073】
<樹脂組成物の溶融粘度の測定>
樹脂組成物の溶融粘度をISO11443に準拠し測定した。具体的には、送風乾燥機を用いて、実施例及び比較例の樹脂組成物を140℃で3時間予め乾燥した後、東洋精機(株)製キャピログラフ1B(キャピラリー式レオメータ)を用い、温度260℃、せん断速度1216s−1、キャピラリーL/D=20/1の条件で上記溶融粘度を測定した。測定結果は表1および2に記載した。
【0074】
【表1】
【表2】
【0075】
実施例と比較例とから、エポキシ/樹脂当量比と耐加水分解性との間に相関があることが確認できる。具体的には、エポキシ/樹脂当量比率が低くなるほど、耐加水分解性が良好でなくなり、エポキシ/樹脂当量比率が高くなるほど、耐加水分解性が良好になる。
【0076】
実施例1と実施例3との比較、及び実施例8と実施例5〜7との比較から、ポリエチレン樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレンを使用すれば、樹脂成形品の衝撃強度がより高まることが確認された。
【0077】
実施例5〜9から、植物由来のポリエチレンを使用しても、樹脂成形品は、耐加水分解性に優れ、軽量であり、衝撃強度等の物性の点で優れることが確認された。
【0078】
実施例と比較例7の対比から、ポリブチレンテレフタレート樹脂として、溶融粘度が適切な範囲にあるポリブチレンテレフタレート樹脂を使用すれば、得られる樹脂組成物は流動性に優れる事が確認された。
【0079】
実施例と比較例8の対比から、エポキシ/樹脂当量比率が適切な範囲にある場合、得られる樹脂組成物は流動性に優れる事が確認された。