特許第6018051号(P6018051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018051光方向転換フィルム及びそれを組み込んだディスプレイシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018051
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】光方向転換フィルム及びそれを組み込んだディスプレイシステム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20161020BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20161020BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20161020BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   G02B5/02 C
   G02F1/13357
   B32B7/02 103
   B32B3/30
【請求項の数】3
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-512658(P2013-512658)
(86)(22)【出願日】2011年5月17日
(65)【公表番号】特表2013-535021(P2013-535021A)
(43)【公表日】2013年9月9日
(86)【国際出願番号】US2011036825
(87)【国際公開番号】WO2011149715
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年5月13日
(31)【優先権主張番号】61/349,234
(32)【優先日】2010年5月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エー.ヤーペル
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ティー.アロンソン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー アール.シー.アトキンソン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ティー.ボイド
(72)【発明者】
【氏名】スラ ジェンドウビ
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル エー.エフ.ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】スコット アール.カイター
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エイチ.コング
(72)【発明者】
【氏名】ルー フェイ
(72)【発明者】
【氏名】トリ ディー.ファム
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ビー.セコール
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ディー.ソロモンソン
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−103070(JP,A)
【文献】 特開2010−066469(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0063066(US,A1)
【文献】 特開2005−092197(JP,A)
【文献】 特開2005−195819(JP,A)
【文献】 特開2007−108724(JP,A)
【文献】 特開2007−187952(JP,A)
【文献】 特開2008−216430(JP,A)
【文献】 特開2009−265143(JP,A)
【文献】 特開2010−032739(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0121211(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0297773(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/111026(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/020610(WO,A1)
【文献】 特開2010−224427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 − 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の構造化表面と、この第1の構造化表面と反対側の第2の構造化表面とを備える光学フィルムであって、第2の構造化表面が
10%未満の光学的ヘイズと、
50%未満の、透過光の光学的透明度と、を有し、ここで光学的透明度は、Tが垂直方向から1.6〜2°だけ逸れた透過光、Tが垂直方向から0〜0.7°の間の透過光であるものとして、(T−T)/(T+T)の比のことを指し、
前記第2の構造化表面の少なくとも85%が7.5度未満の勾配規模を有する、光学フィルム。
【請求項2】
第1の構造化表面と、この第1の構造化表面と反対側の第2の構造化表面とを備える光学フィルムであって、第2の構造化表面が
7.5%未満の光学的ヘイズと、
60%未満の、透過光の光学的透明度と、を有し、ここで光学的透明度は、Tが垂直方向から1.6〜2°だけ逸れた透過光、Tが垂直方向から0〜0.7°の間の透過光であるものとして、(T−T)/(T+T)の比のことを指し、
前記第2の構造化表面の少なくとも90%が7.5度未満の勾配規模を有し、
0.5マイクロメートル未満の平均寸法を有する複数の粒子を含む、光学フィルム。
【請求項3】
第1の構造化表面と、この第1の構造化表面と反対側の第2の構造化表面を含む光学フィルムであって、第1の構造化表面が第1の方向に延在する複数のミクロ構造を含み、第2の構造化表面が光学フィルムの第2の構造化表面上に不規則に分布する複数のミクロ構造を含み、この不規則な分布のフーリエRR値が2未満であり、ここでフーリエRR値は、第2の構造化表面のフーリエスペクトルにおけるピークと接線の間の第1の領域と接線の下の第2の領域との比を指し、
前記光学フィルムの第2の構造化表面の50%が1度〜5度の勾配を有し、
第2の構造化表面が10%未満の光学的ヘイズと、60%未満の、透過光の光学的透明度と、を有し、ここで光学的透明度は、Tが垂直方向から1.6〜2°だけ逸れた透過光、Tが垂直方向から0〜0.7°の間の透過光であるものとして、(T−T)/(T+T)の比のことを指す、光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本説明は、一般に光の方向を転換するための光学フィルムに関する。本説明は、かかる光学フィルムを組み込んだ、ディスプレイシステムなどの光学システムに更に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)システムなどのディスプレイシステムは様々な用途で用いられており、例えば、コンピュータ用モニター、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、小型音楽プレーヤー、及び薄型LCDテレビなどの市販の装置である。大部分のLCDは、液晶パネルと、液晶パネルを照射するための拡張範囲型光源(バックライトと呼ばれることが多い)と、を含む。バックライトは、典型的に、1つ以上のランプと、多数の光管理フィルム(例えば、光ガイド、ミラーフィルム、光方向転換フィルム、リターダーフィルム、光偏光フィルム、及び拡散フィルム)と、を含む。拡散フィルムは、典型的に、光学的欠陥を隠蔽し、バックライトによって放射された光の輝度均一性を向上させるために含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、本説明は、構造化表面を有する光学フィルムに関する。この光学フィルムは、約10%未満の光学的ヘイズ及び約50%未満の光学的透明度を有する。このフィルムの構造化表面の少なくとも85%は、約7.5度未満である勾配規模を有する。
【0004】
別の態様では、本発明は、構造化表面を有する光学フィルムに関する。この光学フィルムは、約7.5%未満の光学的ヘイズ及び約60%未満の光学的透明度を有する。このフィルムの構造化表面の少なくとも90%は、約7.5度未満である勾配規模を有する。また、このフィルムは、その一部が約0.5マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子からなる。
【0005】
第3の態様では、本説明は、構造化表面を有する光学フィルムに関する。この光学フィルムは、約5%未満の光学的ヘイズ及び約70%未満の光学的透明度を有する。このフィルムの構造化表面の少なくとも85%は、約5度未満である勾配規模を有する。またこのフィルムは、その一部が約0.5マイクロメートル未満の平均寸法を有する複数の粒子からなる。
【0006】
別の態様では、本説明は、構造化表面を有する光学フィルムに関する。この光学フィルムは、約3%未満の光学的ヘイズ及び約65%未満の光学的透明度を有する。このフィルムの構造化表面の少なくとも90%は、約5度未満である勾配規模を有する。
【0007】
更に別の態様では、本説明は、構造化表面を有する光学フィルムに関する。この光学フィルムは、約1.5%未満の光学的ヘイズ及び約80%未満の光学的透明度を有する。このフィルムの構造化表面の少なくとも80%は、約2.5度未満である勾配規模を有する。
【0008】
別の態様では、本説明は、構造化表面を有する光学フィルムに関する。この光学フィルムは、約1%未満の光学的ヘイズ及び約90%未満の光学的透明度を有する。このフィルムの構造化表面の少なくとも90%は、約4度未満である勾配規模を有する。
【0009】
別の態様では、本説明は、構造化表面を有する光学フィルムに関する。この光学フィルムは、約20%未満の光学的ヘイズ及び約40%未満の光学的透明度を有する。このフィルムの構造化表面の少なくとも90%は、約10度未満である勾配規模を有する。
【0010】
更なる一態様では、本説明は、第1及び第2の構造化表面を有する光学フィルムに関する。第1の構造化表面は複数のプリズム構造を有し、第2の構造化表面は第1の構造化表面に対向し、複数のミクロ構造を有する。フィルムの実効透過率は、平滑で、構造化されていない第2の表面を除いて同等の構造を備えるフィルムよりも、最大で1%低い。
【0011】
別個の態様では、本説明は、第1の光学フィルムと、第1の光学フィルム上に配置された第2の光学フィルムと、を有し、第2の光学フィルムが第1の光学フィルムに光学的に結合されている、光学フィルム積層体に関する。第2の光学フィルムは、構造化表面を有する。フィルム積層体の実効透過率は、構造化表面ではなく、平滑な表面を有する第2の光学フィルムを除いて同等の構造を備えるフィルム積層体よりも最大で1%低い。
【0012】
別の態様では、本説明は、その表面に不規則に分布する複数のミクロ構造を有する光学フィルムに関する。この光学フィルムの表面の50%は、約1度〜5度の勾配を有する。
【0013】
別の態様では、本説明は、構造化表面を有する光学フィルムに関する。このフィルムは、約75%〜95%の光学的透明度及び約0〜1%の光学的ヘイズを有する。この光学フィルムは、約0.5マイクロメートル未満の平均寸法を備える複数の粒子を有する。
【0014】
別の態様では、本説明は、構造化表面を有する光学フィルムに関する。このフィルムは、約35%〜70%の光学的透明度及び約1〜4%の光学的ヘイズを有する。
【0015】
別の態様では、本説明は、構造化表面を有する光学フィルムに関する。このフィルムは、約30%〜55%の光学的透明度及び約4〜10%の光学的ヘイズを有する。この光学フィルムは、約0.5マイクロメートル未満の平均寸法を備える複数の粒子を有する。
【0016】
別の態様では、本説明は、構造化表面を有する光学フィルムに関する。このフィルムは、約25%〜45%の光学的透明度及び約10〜18%の光学的ヘイズを有する。この光学フィルムは、約0.5マイクロメートル未満の平均寸法を備える複数の粒子を有する。
【0017】
別の態様では、本説明は、ディスプレイを照射するためのバックライトに関する。このバックライトは、光源と、光源から受光するための第1の光学フィルムと、複数のミクロ構造を有する第2の光学フィルムと、を有する。第1の光学フィルムは、第2の光学フィルム上に配置され、第2の光学フィルムに光学的に結合されている。第2のフィルムは、約85%未満の光学的透明度及び約3.5%未満の光学的ヘイズを有する。
【0018】
更なる態様では、本説明は、構造化表面を有する光学フィルムに関する。この表面の透明度は、((−3×光学的ヘイズ)+80%)未満である。透明度は、20%超であってもよい。
【0019】
最後の態様では、本説明は、マット仕上げを有するフィルムの作製方法に関する。この方法は、基材上に配置されたコーティング可能な材料を含むコーティングされた基材をもたらすことであって、コーティング可能な材料がコーティングされた基材の第1の主表面をもたらすことを含む。この方法は、コーティング可能な材料の粘度を初期粘度から第2の粘度に変化させることを更に含む。コーティングされた基材に第1のローラーを通過させて、全てのくずを取り除く。コーティングされた基材の第1の主表面に少なくとも1つの表面側ローラーを接触させて、マット仕上げを付与する。所望により、コーティング可能な材料を硬化させて、フィルムをもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本説明は、添付の図面に関連して以下の本説明の種々の実施形態の「発明を実施するための形態」を考慮したとき、より完全に理解し正しく認識され得る。
図1】光方向転換フィルムの概略的側面図。
図2】実効透過率を測定するための光学システムの概略的側面図。
図3】本説明に従ってフィルムを作製するために用いるシステムの図。
図4】本説明に従ってフィルムを作製するために用いるシステムの一部の拡大図。
図5】本説明に従ってフィルムを作製するために用いるシステムの一部の拡大図。
図6】別の光方向転換フィルムの概略的側面図。
図7】別の光方向転換フィルムの概略的側面図。
図8】複数のミクロ構造化フィルムのヘイズ及び透過度の値のマップ。
図9】複数のミクロ構造化フィルムのヘイズ及び透過度の値のマップの拡大図。
図10】ミクロ構造の概略的側面図。
図11】本説明によるフィルムの表面のx勾配分布のグラフ。
図12】本説明によるフィルムの表面のy勾配分布のグラフ。
図13】本説明によるフィルムの表面の勾配規模分布のグラフ。
図14】本説明によるフィルムの表面の相補累積分布のグラフ。
図15】光方向転換フィルムの一部の概略的側面図。
図16A】本説明によるフィルムの表面のxプロファイル及びyプロファイルの原子間力顕微鏡画像と、対応するグラフ。
図16B】本説明によるフィルムの表面のxプロファイル及びyプロファイルの原子間力顕微鏡画像と、対応するグラフ。
図16C】本説明によるフィルムの表面のxプロファイル及びyプロファイルの原子間力顕微鏡画像と、対応するグラフ。
図16D】本説明によるフィルムの表面のxプロファイル及びyプロファイルの原子間力顕微鏡画像と、対応するグラフ。
図17A】本説明によるフィルムの表面のxプロファイル及びyプロファイルの位相シフト干渉計画像と、対応するグラフ。
図17B】本説明によるフィルムの表面のxプロファイル及びyプロファイルの位相シフト干渉計画像と、対応するグラフ。
図17C】本説明によるフィルムの表面のxプロファイル及びyプロファイルの位相シフト干渉計画像と、対応するグラフ。
図17D】本説明によるフィルムの表面のxプロファイル及びyプロファイルの位相シフト干渉計画像と、対応するグラフ。
図18】本説明によるフィルムの表面のフィルムの地形図画像。
図19】本説明によるフィルムの2次元フーリエスペクトル。
図20】フーリエスペクトルによって得られた線プロファイル。
図21】フーリエスペクトルによって得られた線プロファイルの正規化された和。
図22】フーリエスペクトルのピークプロファイル。
図23】探索線を伴うフーリエスペクトルのピークプロファイル。
図24A】RR計算比領域を示す、フーリエスペクトルのピークプロファイル。
図24B】RR計算比領域を示す、フーリエスペクトルのピークプロファイル。
図25】本説明によるフィルムのヘイズ率対フーリエRR値のグラフ。
図26】本説明によるフィルムのSEM画像。
図27】本説明によるフィルムの2次元フーリエスペクトル。
図28】本説明によるフィルムのフーリエスペクトルのピークプロファイル。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本説明は、概して、ディスプレイシステム内の輝度を実質的に向上させることができ、一方でそれと同時に、キズなどの物理的欠陥及びモアレ、色むら(color mura)など望ましくない光学的効果を遮蔽及び/又は除去できる光学フィルムに関する。開示される光学フィルムは、ディスプレイにおいて、1つ以上の拡散フィルムなど1つ以上の従来のフィルムの必要性を除去するか、低減する。開示される光学フィルムは、輝度を向上させるために不規則に分布する複数のミクロ構造と、ディスプレイの体裁を向上させるためのマット面と、を含む。マット面は、物理的欠陥、モアレ、色むらの可視性を遮蔽、除去、及び/又は低減し、構造化表面と物理的に接触するフィルムのキズを実質的に除去するか、低減する。構造化表面の光学的ヘイズは輝度を実質的に維持する範囲内であり、構造化表面の光学的透明度は欠陥を実質的に遮蔽及び/又は除去する範囲内である。
【0022】
本説明は、その表面に不規則に配向された複数の構造を有するフィルムに関する。問題の構造は非常に小さい勾配を有し、フィルムは低コストで製造可能である。示されるフィルムは、光学的ヘイズ及び透明度の値を多数有してもよい。これらの値は、所望通りに光学システムの性能を向上させるために、特定のヘイズ及び透明度の値に対して決定されてもよい。
【0023】
図1は、入射光線を所望の方向に方向転換するための光方向転換フィルム100の概略的側面図である。光方向転換フィルム100は、y方向に沿って延在する複数のミクロ構造150を含む第1の構造化表面110を含む。また、光方向転換フィルム100は、第1の構造化表面110の反対側にあって、複数のミクロ構造160を含む第2の構造化表面120を含む。
【0024】
また、光方向転換フィルム100は、それぞれの第1の構造化表面110と第2の構造化表面120との間に配置され、第1の主表面172及び対向する第2の主表面174を含む基材層170も含む。また、光方向転換フィルム100は、基材層の第1の主表面172上に配置され、光方向転換フィルムの第1の構造化表面110を含むプリズム層130と、基材層の第2の主表面174上に配置され、光方向転換フィルムの構造化表面120を含む主表面142を有する構造化層140と、を含む。
【0025】
例示の光方向転換フィルム100は、3つの層130、170、及び140を含む。一般に、光方向転換フィルムは1つ以上の層を有してよい。例えば、幾つかの場合において、光方向転換フィルムは、対応する第1の主表面110と、第2の主表面120と、を含む単一層を有してよい。別の例としては、幾つかの場合において、光方向転換フィルムは多数の層を有してよい。例えば、かかる場合において、基材170は多数の層を有してよい。また、フィルムの様々な層は、別個のフィルムとして理解され得ると理解されてよい。したがって、構造100は、フィルム積層体として理解されてよい。かかる実施形態では、プリズム構造化層130は、第1の光学フィルムとして理解されてよい。同様に、構造化層140は、第1の光学フィルム上に配置され、第1の光学フィルムに光学的に結合される第2の光学フィルムとして理解されてよい。
【0026】
ミクロ構造150は、主として光方向転換フィルムの主表面120への入射光線を所望の方向に沿って(正のz方向に沿ってなど)方向転換するように設計されている。例示の光方向転換フィルム100では、ミクロ構造150はプリズムの線状構造体である。一般に、ミクロ構造150は、例えば、入射光線の一部を屈折させ、入射光線の別の一部を再利用することによって光を方向転換できる任意の種類のミクロ構造であってよい。例えば、微小構造150の断面形状は湾曲かつ/又は区分的に直線状の部分とするか、これを含んだものとすることができる。例えば、特定の場合では、微小構造150を、y方向に沿って延びる直線状の円筒形レンズとすることができる。
【0027】
各線状プリズムミクロ構造150は、頂角152と、例えば主平面172などの共通基準面から測定された高さ154と、を含む。光結合若しくはウェットアウトを低減させること、及び/又は光方向転換フィルムの耐久性を向上させることが望ましいなど幾つかの場合において、プリズムミクロ構造150の高さは、y方向に沿って変化してよい。例えば、プリズム線状ミクロ構造151のプリズム高さは、y方向に沿って変化する。そのような場合、プリズムミクロ構造151は、y方向に沿って変化する局所的高さと、最大高さ155と、平均高さと、を有する。幾つかの場合において、線状ミクロ構造153などプリズム線状ミクロ構造は、y方向に沿って一定高さを有する。そのような場合、ミクロ構造は、最大高さ及び平均高さと等しい、一定の局所的高さを有する。
【0028】
光結合又はウェットアウトを低減させることが望ましいなど幾つかの場合において、一部の線状ミクロ構造は低く、一部の線状ミクロ構造は高い。例えば、線状ミクロ構造153の高さ156は、線状ミクロ構造157の高さ158よりも小さい。あるいは、マット層140の表面上のミクロ構造160はまた、光結合又はウェットアウトを低減させるために様々な高さであってよい。
【0029】
頂角、つまり2面角152は、用途において望ましい可能性がある任意の値を有することができる。例えば、幾つかの場合において、頂角152は、約70度〜約110度、又は約80度〜約100度、又は約85度〜約95度の範囲であってよい。幾つかの場合では、ミクロ構造150は、例えば、約88度若しくは89度〜約92度若しくは約91度の範囲であり得る、又は約90度であり得る等しい頂角を有する。
【0030】
プリズム層130は、用途において望ましい可能性がある任意の屈折率を有することができる。例えば、幾つかの場合において、プリズム層の屈折率は、約1.4〜約1.8、又は約1.5〜約1.8、又は約1.5〜約1.7の範囲である。幾つかの場合において、プリズム層の屈折率は、約1.5以上、又は約1.55以上、又は約1.6以上、又は約1.65以上、又は約1.7以上である。
【0031】
光方向転換フィルム100が液晶ディスプレイシステムで用いられるなど幾つかの場合において、光方向転換フィルム100は、ディスプレイの輝度を増大させる、つまり向上させることができる。そのような場合、光方向転換フィルムは、1を超える実効透過率(ET)、つまり相対利得を有する。本明細書で用いるところの「実効透過率」とは、フィルムが所定位置にないディスプレイの輝度に対する、フィルムがディスプレイシステムの定位置に配されたディスプレイシステムの輝度の比のことである。
【0032】
実効透過率は、図2に概略的側面図を示す光学システム200を用いて測定できる。光学システム200は、光軸250の中心に配置され、放射面、つまり出射面212を通ってランバート光215を放射する中空のランバートライトボックス210と、線状光吸収偏光子220と、光検出器230と、を含む。ライトボックス210は、光ファイバー270によってライトボックスの内側280に接続された安定化広帯域光源260によって照射される。光学システムの測定対象である試験サンプルのETは、ライトボックスと線状吸収偏光子との間の位置240に配置される。
【0033】
光方向転換フィルム100のETは、線状プリズム150が光検出器に面し、ミクロ構造160がライトボックスに面した状態で、光方向転換フィルムを位置240に配置することによって測定できる。次に、スペクトル的に重み付けされた軸方向輝度I(光軸250に沿った輝度)が、線状吸収偏光子を通じて光検出器によって測定される。次に、光方向転換フィルムが取り外され、スペクトル的に重み付けされた輝度Iが、光方向転換フィルムを位置240に配置せずに測定される。ETは、比I/Iである。ET0は、線状プリズム150が線状吸収偏光子220の偏光軸と平行の方向に沿って延在する場合の実効透過率であり、ET90は、線状プリズム150が線状吸収偏光子の偏光軸に対して垂直の方向に沿って延在する場合の実効透過率である。平均実効透過率(ETA)は、ET0とET90との平均である。
【0034】
本明細書に開示される測定実効透過率値は、光検出器230にSpectraScan(商標)PR−650 SpectraColorimeter(Photo Research,Inc(Chatsworth,CA)から入手可能)を用いて測定した。ライトボックス210は、全反射が約85%のテフロン製立方体であった。
【0035】
輝度の向上を目的として光方向転換フィルム100がディスプレイシステムで用いられ、線状プリズムが約1.6超の屈折率を有する幾つかの場合では、光方向転換フィルムの平均実効透過率(ETA)は約1.5以上、又は約1.55以上、又は約1.6以上、又は約1.65以上、又は約1.7以上、又は約1.75以上、又は約1.8以上である。
【0036】
幾つかの場合では、光学フィルム又は光学積層体の平均実効透過率は、ミクロ構造化された第2の表面ではなく、平滑で、構造化されていない第2の表面を除いて、同等の構造を備える光学フィルム又は光学積層体よりも、最大で約2%、又は約1%、又は約0.5%低い。本明細書で用いるところの「同等の構造」とは、記載された例外(例えば、ミクロ構造化された第2の表面ではなく、平滑で、構造化されていない第2の表面)を除くあらゆる点において、実際に同一の構造である。幾つかの場合では、光学フィルム又は光学積層体の平均実効透過率は、ミクロ構造化された第2の表面ではなく、平滑で、構造化されていない第2の表面を除いて、同一の構造を備える光学フィルム又は光学積層体よりも高い。幾つかの実施形態では、ミクロ構造化表面の平均実効透過率は、平滑な第2の表面を備える同等の積層体よりも少なくとも0.5%、又は少なくとも1.0%、又は少なくとも1.5%高い。
【0037】
本明細書で使用するとき、光学的ヘイズは、垂直方向から2.5度を超えて偏向している透過光と全透過光との比として定義される。本明細書で開示するヘイズ値は、ASTM D1003に述べられる方法にしたがって、Haze−Gard Plusヘイズ計(ビー・ワイ・ケー・ガーディナー社(BYK-Gardiner)メリーランド州シルバースプリング)を使用して測定されたものである。本明細書で用いるところの光学的透明度とは、Tが垂直方向から1.6〜2°だけ逸れた透過光、Tが垂直方向から0〜0.7°の間の透過光であるものとして、(T−T)/(T+T)の比のことを指す。本明細書で開示する透明度値は、ビー・ワイ・ケー・ガーディナー社(BYK-Gardiner)より販売されるHaze−Gard Plusヘイズ計を使用して測定されたものである。
【0038】
光学構造化表面上のミクロ構造160は、主として、光方向転換フィルムによる光の方向転換機能及び輝度向上機能に悪影響を及ぼさないか、ほとんど及ぼさずに、望ましくない物理的欠陥(例えば、キズなど)及び/又は光学的欠陥(例えば、ディスプレイ又は照明システムのランプによる、望ましくない輝点、つまり「ホット」スポット)を隠蔽することを目的として設計される。幾つかの場合では、ミクロ構造160を含む構造化表面は、約20%未満、又は約10%未満、又は約7.5%未満、又は約5%未満、又は約3.5%未満、又は約3%未満、又は約2%未満、又は約1.5%未満、又は約1%未満の光学的ヘイズを有する。幾つかの場合では、この表面は、約0〜1%の光学的ヘイズ、約4%〜10%の光学的ヘイズ、約10%〜18%の光学的ヘイズを有する。
【0039】
幾つかの場合では、ミクロ構造160を含む構造化表面は、約90%未満、又は約80%未満、又は約75%未満、又は約70%未満、又は約65%未満、又は約60%未満、又は約55%未満、又は約50%未満、又は約45%未満、又は約40%未満の光学的透明度を有する。幾つかの場合では、この表面は、約75〜95%、又は約35%〜70%、又は約30%〜55%、又は約25%〜45%の光学的透明度を有する。幾つかの場合では、構造化表面の光学的透明度は、関数(−3×光学的ヘイズ)+80%未満である。この構造の光学的透明度はまた、関数(−3×光学的ヘイズ)+80%未満かつ20%超であってよい。
【0040】
光学表面の開示された光学的ヘイズ及び光学的透明度の多数の値は、相互に表示される所与のフィルムの特性であり得ると理解される、つまり、独立して制御可能であると理解されるべきである。例えば、所与の構造化表面は、90%未満の光学的透明度及び10%未満の光学的ヘイズ、又は90%未満の光学的透明度及び5%未満の光学的ヘイズを有してよい。更に、所与の構造化表面は、5%未満の光学的ヘイズ及び70%未満の光学的透明度を有してよい。
【0041】
ミクロ構造の高さは、図15を参照することにより、更に理解できるであろう。一般に、ミクロ構造160は任意の高さ及び任意の高さ分布を有してよい。高さ自体は、領域内の表面の最低極小値185からミクロ構造アレイの隣接するピーク(極大値)195a又は195bまでの、材料142の底面に直交する平面190に沿った距離(例えば、192a、192b)として定義されてよい。高さは、領域内の最低極小値ではない極小値、例えば、187からは測定されない。表面に複数の高さ192が存在する場合、平均高さが決定されてよい(平均高さは、全てのピークの高さの合計をピークの数で除したもの、例えば、(192a+192b)/2に等しい)。幾つかの場合では、ミクロ構造160の平均高さは、約10μm以下、又は約7.5μm以下、又は約5μm以下、又は約2.5μm以下である。
【0042】
前述のように、現在説明しているマットフィルムはまた、フィルムの表面全域に不規則に配置されるミクロ構造を有するものとして理解してよい。かかる不規則化は、周期的構造から生じるモアレ干渉縞の発生を緩和するために重要である。表面の不規則性を測定するために役立つ1つの方法は、表面のフーリエスペクトル値を計算することである。フーリエスペクトルを測定し、不規則性の測定値を得る方法は、図18〜24を参照することによって理解できるであろう。図18は、本説明によるフィルムの地形図を示す。図形データ(即ち、高さ値)は、Matlabなど高機能の計算及び処理プログラムにインポートされてよい。ここからフーリエスペクトルを計算でき、図19に示すものなどの2次元スペクトルを作製できる。図27のスペクトルは、実際に下記に例示した実施例によるものである。次に2次元スペクトルによる線プロファイルは、図20に図示するように一連の方向で測定されてよい。スペクトルが対称であるために、スペクトルの半分だけを調べる必要がある。
【0043】
各線プロファイルの総信号が計算され、プロファイルの長さによって、場合によっては、図21に示すfx及びfy方向における不均等な周波数ステップによって正規化される。最大線プロファイル2110は、この正規化された和から選択される。次に、フーリエスペクトルの線プロファイル(最大信号方向)がプロットされる。このスペクトルにはメディアンフィルター処理が施されて、下記の工程におけるスパイク効果を除去する。図22にフーリエスペクトルを示す。メディアンフィルター処理が施されたスペクトルも示す。この時点では、ユーザーがスペクトル内のピークのすぐ左側にある最小値の地点又はその付近を選択し、極小値を見出す。図23に示すこの極小値2340からは、可視化を目的として一連の試験線分が極小値2340からスペクトルの下まで引かれ、各線分上の各点に対しては、スペクトルと試験線分との間の距離が計算され、50%の最接近点に対する距離の合計が計算される。これらの値は、探索線の長さによって正規化される。
【0044】
結果として生じた曲線の最小値は、スペクトルに最も接近する試験線に対応する。この線は、スペクトルの接線と見なされる。接線は、図24A及び24Bのグラフに適用される。探索は、スペクトルに最も接近する部分に対してこの接線に沿って実行される。この位置は、接線位置2420である。ピークの左側にある極小値及び接線位置は、ピークの境界を画定し、これらの間の線は基線を画定する。接線の下の領域(図24Bの斜線部分2430)に対するピークと接線との間の領域(図24Aの斜線部分2410)の比率は、地形の周期性の強さを指定するために用いられる。これらの領域は、線形(log10ではない)単位で計算される。本開示の目的のために、接線の下の領域に対するピークと接線との間の領域の比率は、RRと呼ばれてよい。
【0045】
本説明によるマットフィルムの多数の異なるRR値のプロットを図25に示す。このグラフでは、RR値は、所与のフィルムのヘイズ値に対して表示される。幾つかの実施形態では、RR値は2未満である。幾つかの実施形態では、RR値は1未満である。幾つかの実施形態では、RR値は、更に0.5未満であってよい。これらの各値は、極めて不規則な配置(つまり、非周期アレイ)に相当すると理解できる。RR値が低ければ、ミクロ構造アレイの周期性は低い。このグラフは、本明細書に開示された所与のヘイズ値を有する少なくとも幾つかのフィルムについて、周期性(又はその欠如)を示すために用いることができる。例えば、約20%未満、又は約10%未満、又は約7.5%未満、又は約5%未満、又は約3%未満、又は約1.5%未満のヘイズを有する本説明による所与のフィルムの場合、このフィルムは、2未満、又は1未満のRR値を有してよい。
【0046】
多くの実施形態では、基材層170を含むことが有用であり得る。基材は、構造上の目的だけではなく、ミクロ構造化表面の作製及び成形プロセスにおいても有用であり得る。ミクロ構造化表面は、同一所有者による米国特許出願公開第2009/0029054号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の方法に従って作製されてよい。したがって、基材170は、例えば、織布材料、編物材料、フィルム(例えば、高分子フィルム)、不織布、金属シート、金属箔、ガラスなどの可撓性材料を含む、基材として用いるのに好適な様々な材料のいずれかであってもよい。最終フィルム製品を光学ディスプレイなど光学用途で用いることが意図される幾つかの実施形態では、基材材料は、意図される用途に対して望ましい光学的特性及び機械的特性にある程度基づいて選択されるであろう。好適な光透過性光学フィルムの例としては、輝度向上多層光学フィルム(例えば、方向転換又は吸収)、偏光フィルム、拡散フィルム、及び補償フィルムが挙げられるが、これらに限定されない。機械的特性としては、可撓性、寸法安定性、及び衝撃耐性が挙げられてよい。幾つかの実施形態では、光学的に透明な材料(例えば、透明)が所望され得る。好適な光学的に透明な材料の例としては、光学的に透明なポリエステルフィルム、トリアセテート(TAC)フィルム、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリ(メチルメタクリレート)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)及び同時二軸延伸ポリプロピレン(S−BOPP)などのポリオレフィン類などが挙げられる。基材170は、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリスチレン、スチレンーアクリロニトリルコポリマー、エポキシなどを含んでもよく、又はこれらからなってもよい。
【0047】
前述のように、ミクロ構造化表面は、同一所有者による米国特許出願公開第2009/0029054号に記載の方法に従って作製されてよい。したがって、構造化表面は、基材上での初期コーティングで開始するプロセスによって形成されてよい。コーティングは、第1の粘度から第2の粘度へとその粘度を変化させる。粘度変化は、より液体様であり、コーティング可能である第1の粘度から、より固体様であり、したがって少なくとも一時的に構造を保持できる第2の粘度への移行と理解されてよい。粘度変化後、コーティングは、ミクロ構造化仕上げを付与する表面側ローラーと接触する。次にコーティングは、所望により硬化されてよい。したがって、用いられる基材は、硬化可能な基材であってよい。このプロセスは、図3を参照することにより、更に理解できるであろう。この実施形態によると、ミクロ構造化表面は、特定の所望の材料特性を有するであろう。この構造に従って作製されたミクロ構造化マットフィルムは、ロール誘導のマット光学構造体と呼ばれてよい。
【0048】
フィルムを構造化するための装置は、図3に概略的に示す装置300として示される。図に示すように、少なくとも幾つかの実施形態では、コーティングは、コーティングアプリケータ312によって基材310に施される。通常、最初は液体状態であってよいコーティングの粘度は、濃化ステーション314で調整される。この粘度変化(第1の粘度から第2の粘度へ)は、樹脂溶液から揮発性溶媒を除去する、100%固体樹脂を冷却する、樹脂を部分架橋する、超高粘度樹脂を温める、これらの手法の2つ以上を組み合わせる、又は他の方法を使用することによって発生し得る。粘度変化後、コーティングされた層316には仕上げが施される。これは、一般にローラー、つまりニップである変換ステーション318で基材とコーティングを圧延することにより一般に達成できる。かかるニップの拡大図を図4に示す。ニップは、フィルム316を圧延する表面側ローラー340とバックアップロール350とを有する。コーティングされた基材の第1の主表面は、表面側ローラーと接触する。コーティング層の一部は、ニップで引き離され、残部がミクロ構造化表面を形成する。模様付きコーティング320は、固体に満たないことがあり得る状態で変換ステーションを離れる。したがって、図3に示すように、固化ステーション330を通って送達される。固化は、紫外線硬化、熱硬化、電子ビーム硬化、エポキシ硬化、更なる溶媒除去、又はその他を含む任意の数の好適な方法で実行されてよい。固化ステーション工程の結果、所定の位置322に固定された模様付きフィルムがもたらされる。
【0049】
ある実施形態では、図3に示すプロセスにデコイニップが追加されてよい。かかる構造体を図5に示す。この実施形態では、フィルム510は、まずデコイニップ520を通過してから、変換ステーションニップ530に入る。この構造体は、大粒の埃粒子が変換ステーションニップに到達する状況において望ましいことがある。かかる状況では、デコイニップを追加することにより、構造化及び変換の前に埃を除去して収集できる。この場合においても、表面の構造は、固化ステーション540において所定の位置に固定される。
【0050】
デコイニップは、前述のように、欠陥をもたらす埃などのくずや粒子を収集して除去するために用いられる。この装置は、低清浄度環境における構造化プロセスのロバスト性を向上するために有用である。デコイニップは、変換ステーションニップと同等以上の微粒子に対する親和性を有する。デコイニップは、作製される最終構造化コーティングに悪影響を及ぼすことなく、除去しなければ変換ステーションニップ上で捕捉されるであろうくずを液体コーティングから除去する。デコイロールニップから変換ステーションロールニップまでの距離は、製造環境の清浄度に応じて異なってよい。
【0051】
本説明で用いるのに好適なコーティング可能な材料は、様々なフィルム形成材料のいずれかを含んでよい。幾つかの実施形態では、コーティング可能な材料は、溶媒中の1つ以上のポリマー及び/又はオリゴマーを含むポリマー材料である。幾つかの実施形態では、コーティング可能な材料は、1つ以上の溶媒中の1つ以上のモノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーの混合物である。他の実施形態では、コーティング可能な材料は、大量の粒子又はナノ粒子と共に、1つ以上の溶媒中の前述のオリゴマー、モノマー、及び/又はポリマーを含む。ある実施形態では、コーティング可能な材料は、光開始剤、架橋剤、静電気防止化合物、及び他の活性物質を含んでよい。
【0052】
ナノ粒子を表面改質できるが、これはナノ粒子が改質された表面を有し、例えば、ナノ粒子が安定な分散体を提供することを指す。「安定な分散体」は、例えば、室温(約20〜22℃)及び大気圧、過剰な電磁力がないという周囲条件下で、一定の時間、例えば、約24時間放置された後に、コロイド状ナノ粒子が粒塊しない分散体を指す。
【0053】
表面改質されたコロイド状ナノ粒子は、任意に、本明細書のコーティング可能な組成物として用いられるポリマーコーティング中に、最終要素、つまり光学要素の耐久性を高めるのに有効な量で存在するナノ粒子と共に存在してよい。本明細書に記載される表面改質されたコロイド状ナノ粒子は、例えば、ナノ粒子がコーティング可能な組成物内で安定な分散体を形成するようにする、ナノ粒子のコーティング可能な組成物との相溶性、より耐久性のある複合物にする、ナノ粒子のコーティング可能な組成物との反応性、及び低影響性又は未硬化組成物の粘性など様々な好ましい特質を有することができる。表面改質の組み合わせを利用して、組成物の未硬化及び硬化特性を操作できる。表面改質されたナノ粒子は、コーティング可能な組成物の光学的及び物理的特性を改善でき、これは例えば、樹脂の機械的強度の改善、コーティング可能な組成物中に負荷される固体量増加の間の粘度変化の最小化、及び、コーティング可能な組成物中に負荷される固体量増加の間の光学的透明度の維持などである。
【0054】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子は表面改質されたナノ粒子である。好適な表面改質されたコロイド状ナノ粒子は、オキシド粒子を含んでよい。ナノ粒子は、所与の材料について周知の粒径分布にわたる粒径範囲を含んでよい。幾つかの実施形態において、平均粒子サイズは約1nm〜約100nmの範囲内であってよい。粒径及び粒径分布は、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)などによる周知の方法で測定できる。好適なナノ粒子は、任意の様々な物質、例えば、アルミナ、酸化スズ、酸化アンチモン、シリカ、ジルコニア、チタニア、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせから選択される金属酸化物を含んでよい。表面改質されたコロイド状ナノ粒子は、実質的に完全に凝縮され得る。
【0055】
幾つかの実施形態において、シリカナノ粒子は、約5〜約75nmの範囲の粒径を有することができる。幾つかの実施形態において、シリカナノ粒子は、約10〜約30nmの範囲の粒径を有することができる。シリカナノ粒子は、約10〜約100phrの量でコーティング可能な組成物中に存在してよい。幾つかの実施形態では、シリカナノ粒子は、約25〜約80phrの量でコーティング可能な組成物中に存在し、他の実施形態では、シリカナノ粒子は、約30〜約70phrの量でコーティング可能な組成物中に存在してよい。本説明のコーティング可能な組成物で用いるのに好適なシリカナノ粒子は、Nalco Chemical Co.(Naperville,Ill.)から製品名NALCO COLLOIDAL SILICASで市販される。好適なシリカ製品として、NALCO製品1040、1042、1050、1060、2327及び2329が挙げられる。好適なヒュームドシリカ製品として、例えば、DeGussa AG(Hanau,Germany)から商品名AEROSILシリーズOX−50、−130、−150、及び−200として、並びにCabot Corp.(Tuscola,Ill.)からCAB−O−SPERSE 2095、CAB−O−SPERSE A105、及びCAB−O−SIL MSとして販売される製品が挙げられる。ナノ粒子の表面処理は、コーティング可能な組成物(例えば、ポリマー樹脂)中で安定な分散体を提供できる。好ましくは、粒子がコーティング可能な組成物中に良好に分散されて、実質的に均一な組成物を生じるように、ナノ粒子を表面処理により安定化させる。更に、ナノ粒子は、安定化させた粒子が硬化中にコーティング可能な組成物と共重合又は反応できるように、その表面の少なくとも一部を表面処理剤により改質し得る。
【0056】
多数のマットフィルムは、ミクロ構造の主たる形成理由として粒子が機能するように十分に大粒の粒子を含む。かかるフィルムを図6に示す。かかる実施形態では、光学フィルム800は、ミクロ構造化層860に機械的に結合された基材、つまり第1のフィルム850を有する。この実施形態では、粒子830は結合剤840中に分散している。粒子830の寸法は、規模の面においてミクロ構造870の実際の幅又は高さに非常に近い。現在の説明は、粒子を有する構造化表面160を提供する。しかし、現在の説明の粒子は、コーティング層の厚さに対して小さいため、ミクロ構造の主たる形成理由として機能しない。マットコーティングのヘイズ、透明度、透過率などの光学特性は、コーティング厚、並びにかかる粒子の密度及び分布に対する粒子の寸法によってある程度制御される。現在の説明に従って設計されたフィルムの例を図7に示す。ここでは、光学フィルム、つまりフィルム積層体900は、ミクロ構造化層960に機械的に結合された基材層、つまり第1のフィルム950を有する。粒子930は結合剤940中に分散している。全ての位置における層厚、特にミクロ構造970のピークにおける層厚は、粒子930の厚さよりも著しく大きいことは容易に明らかである。具体的には、光学フィルム中の粒子は、0.5マイクロメートル未満の寸法、幾つかの実施形態では、0.2マイクロメートル未満、又は0.1マイクロメートル未満の寸法を有する。
【0057】
幾つかの実施形態では、構造化表面は、約1.50〜1.70の屈折率を有するであろう。他の実施形態では、構造化表面は、約1.17のように低い屈折率から約1.8のように高い屈折率までを有してよい。
【0058】
ヘイズ及び透明度の性能は、図8及び9を参照することにより、更に理解できるであろう。図8は、本説明に従って作製された多数のフィルムの全てのヘイズ及び透明度のスペクトルを示す。他の構造化フィルムに対する性能上の利点を示すために、他の13の構造化フィルムと比較して示す。フィルム1は、3M製のビードコーティングされたマットフィルムである。フィルム2は、PET上に白色インクで模様が付けられたフィルムである。フィルム3は、Keiwa 100−BMUISフィルムである。フィルム4は、ビードコーティングされたマットフィルムである。フィルム5は、粒子ビードコーティングされたマットフィルムである。フィルム6は、Kimoto 100TL4フィルムである。フィルム7は、フィルムの表面にフレームエンボス加工を施して作製されたマットフィルムである。フィルム8は、電着を使用して作製されたミクロ複製マットフィルムである。フィルム9は、押出可能な剥離性膜の貼り付け及び除去により非平滑化されたフィルムである。フィルム10は、ミクロ複製されたマットフィルムである。フィルム11は、グラビアコーティング中に分散したビードを含むマットフィルムである。フィルム12は、ミクロ複製された、機械加工マットフィルムである。フィルム13は、Dai Nippon DNP M268Yフィルムである。図8及び9を参照すれば明確に理解できるように、現在の説明によるフィルムの多くは、非常に低いヘイズ値及び非常に高い透明度値を示す。図9は、この性能を最も良く理解するために参照され得る。この図は、計測された0〜20%のヘイズ率及び0〜100%の透明度範囲を示す。
【0059】
図9は、現在の説明が、他のフィルムでは達しないレベルの性能に達することを明確に示す。例えば、一態様では、このフィルムは、50%未満の光学的透明度値及び10%未満の光学的ヘイズ値を有するものとして理解されてよい。別の態様では、本説明のフィルムは、約7.5%未満の光学的ヘイズ及び約60%の光学的透明度を有するものとして理解されてよい。この性能範囲内には、1つ又は2つの他のフィルム(例えば、3M Particle Matte)が該当してよい。しかし、かかるフィルムは全て、現在のフィルムが約0.5マイクロメートル未満、又は約0.2マイクロメートル未満の粒径を含む構造化表面を備え、この性能を示す点において区別できる。別の態様では、本説明のフィルムは、約5%未満の光学的ヘイズ及び約70%未満の光学的透明度を有するものとして理解されてよく、この場合においても、このフィルムの構造化表面は約0.5マイクロメートル未満、又は約0.2マイクロメートル未満の寸法の粒子で構成される。
【0060】
更に別の実施形態では、図8において、及び図9においてより明確に示されるように、本説明のフィルムは、約3%未満の光学的ヘイズ及び約65%未満又は75%未満の光学的透明度を有する。更に別の態様では、フィルムは、約1.5%未満の光学的ヘイズ及び約80%未満の光学的透明度を有するものとして理解されてよい。更に別の態様では、フィルムは、約1%未満の光学的ヘイズ及び約90%未満の光学的透明度を有するものとして理解されてよい。また、現在のフィルムは、約20%未満の光学的ヘイズ及び約40%未満の光学的透明度を有するものとして理解されてよい。
【0061】
別の様式では、本説明のフィルムは、約75%〜95%の光学的透明度及び約0〜1%の光学的ヘイズを有するものとして理解されてよく、このフィルムは、約0.5マイクロメートル未満の平均寸法の粒子で構成される。また、このフィルムは、約35%〜70%の光学的透明度及び約1〜4%の光学的ヘイズを有してよい。また、このフィルムは、約30%〜55%の光学的透明度及び約4〜10%の光学的ヘイズを有してよく、このフィルムは、約0.5マイクロメートル未満の平均寸法の粒子で構成される。別の実施形態では、このフィルムは、この場合においても約0.5マイクロメートル未満の平均寸法の粒子で構成され、このフィルムの光学的透明度値は約25%〜45%であり、光学的ヘイズ値は約10%〜18%である。
【0062】
構造化表面が第2のフィルムとして説明され、基材が第1のフィルムとして説明される更に別の態様では、第2のフィルムは、約85%未満の光学的透明度及び約3.5%未満の光学的ヘイズを有する。
【0063】
図10は、マット層140の一部の概略的側面図である。詳細には、図10は、構造化表面120におけるミクロ構造160を示す。ミクロ構造160は、ミクロ構造の表面全域に勾配分布を有する。例えば、ミクロ構造は、位置510において勾配θを有し、θは、位置510においてミクロ構造面に垂直である(α=90度)法線520と、同一の位置でミクロ構造面に接する接線530との間の角度である。傾きθは、接線530と艶消し層の主面142との間の角度でもある。
【0064】
ミクロ構造の勾配を最も良く理解するために、構造化表面120の勾配は、まずx方向に沿って測定し、次にy方向に沿って測定した。即ち、次のとおりである。
【0065】
【数1】
ここで、H(x,y)は、表面の高さプロファイルである。
【0066】
平均x勾配及びy勾配は、各ピクセルに中心がある6マイクロメートルの間隔で評価した。別の実施形態では、一定間隔を用いる限り、このマイクロメートルの間隔は、2マイクロメートル、又は3マイクロメートルなどより小さくなるように選択してよい。x勾配及びy勾配のデータから、勾配規模を決定することが可能である。これは、次のように理解できる。
【0067】
【数2】
次に、平均勾配規模は、各ピクセルに中心がある6μm×6μmの四角形で評価可能であった。勾配規模は、0.5度のビンサイズ内で生成した。勾配規模分布は、Nと表してよい。x勾配、y勾配の角度値、及び上記の値に対応する勾配規模の角度を見出すためには、等式1、2、及び3の値の逆正接を用いる必要があることを理解するべきである。表面の性質を更に理解するためには、相補累積分布(FCC(θ))を定義することが重要である。これにより、角度θ以上である勾配規模の割合がもたらされる。これは、次のように定義される。
【0068】
【数3】
したがって、構造化表面の一定割合がほぼ一定数の角度未満である勾配角度を有することが示される場合、この数字は、等式4のFCC(θ)から得られる。勾配規模は、x勾配とy勾配とを組み合わせたものに相当する。したがって勾配規模は、一般的な勾配規模として理解されてよい。用語「勾配規模」及び「勾配規模」は、本説明において同じ意味で用いられ得ると理解されるべきであり、これらの用語は、同じ意味を有すると理解されるべきである。
【0069】
本説明の多数の実施形態についてX勾配分布及びY勾配分布を計算した。これらのフィルムは、0.7%、1.2%、1.6%、8%、23%、40%、及び80%のヘイズ値を有した。図11は、本説明に従って作製されたこれら7つのフィルムのx勾配分布を示す。図12は、同じ7つのフィルムのy勾配分布を示す。2つのグラフから容易に明らかなように、フィルムの表面の大部分は、x及びyの両方向において非常に小さい勾配を有する。最低ヘイズ値(1.6%以下)を有したフィルムはまた、x勾配分布及びy勾配分の両方において0度勾配に相当する領域の最高の正規化カウントを有した。同様のデータからは、本説明に従って作製された7つの異なるフィルムについて、上記の等式から勾配規模分布を生成することが可能であった。図13は、この勾配規模分布を示す。このグラフにおいても、非常に低い勾配を有する各フィルムが多量の表面を有することが示される。最も高い3つのピークは、1.6%ヘイズ、1.2%ヘイズ、及び0.7%ヘイズのヘイズ値に対するものであった。このデータは、対応する相補累積勾配分布(FCC(θ))によって更に理解できるであろう。図14にFCCグラフを示す。これから、フィルムの所与のヘイズ値に準じて表面の様々な勾配を決定することが可能であった。したがって、所与の数未満の勾配を有するフィルムの表面の割合は、フィルムの様々なヘイズ値に準じて数値化されてよい。
【0070】
この理解によると、フィルムの表面勾配は、ヘイズ値と相関性があると理解されてよい。したがって、約10%未満のヘイズ値を有するフィルムの場合、このフィルムの構造化表面の少なくとも85%は、約7.5度未満である勾配規模を有してよい。他のフィルムでは、構造化表面の95%は、約10度未満である勾配規模を有する。更に、構造化表面の95%は、約5度未満である勾配規模を有してよい。
【0071】
フィルムのヘイズ値が約7.5%未満である場合、構造化表面の90%は、約7.5度未満である勾配規模を有してよい。この同一のヘイズ値を有するフィルムでは、構造化表面の97%は、約10度未満である勾配規模を有してよい。更に、構造化表面の95%は、約5度未満である勾配規模を有してよい。
【0072】
フィルムのヘイズ値が約5%未満である場合、構造化表面の85%は、約5度未満である勾配規模を有してよい。この同一のヘイズ値を有するフィルムでは、構造化表面の90%は、約5度未満、又は約4度未満である勾配を有してよい。
【0073】
フィルムのヘイズ値が約3%未満である本説明の別の態様では、構造化表面の少なくとも90%は約5度未満の勾配規模を有してよいか、少なくとも95%の構造化表面は約5度未満である勾配規模を有してよい。
【0074】
フィルムのヘイズ値が約1.5%未満である場合、構造化表面の少なくとも80%は、約2.5度未満である勾配規模を有してよい。この同一のヘイズ値を有するフィルムでは、構造化表面の少なくとも98%は、約5度未満である勾配規模を有してよい。
【0075】
フィルムの光学的ヘイズ値が約1%未満である場合、構造化表面の少なくとも90%は約4度未満である勾配規模を有してよいか、構造化表面の99%は約5度未満である勾配規模を有してよい。
【0076】
光学的ヘイズが約20%未満である実施形態では、構造化表面の少なくとも90%は、約7度未満、又は約10度未満である勾配規模を有してよい。
【0077】
別の態様では、光学フィルムの少なくとも50%は、約1度〜5度の勾配を有するものとして理解されてよい。
【実施例】
【0078】
図16A及び16Cは、本説明による特定のフィルムの、xプロファイル及びyプロファイルに沿った原子間力顕微鏡の画像を示す。図16Cは、フィルムの対応するXプロファイルを示し、16Dは、フィルムの対応するYプロファイルを示す。図に示される特定のフィルムは、0.7%の光学的ヘイズ及び70.9%の光学的透明度を有した。Xプロファイル(図16B)及びYプロファイル(図16D)に示されるフィルムの不規則な分布と不規則な高さの変化に気付くであろう。更に、プロファイルグラフは大きい勾配を有するように見えることがあるが、x軸及びy軸の目盛が極めて不釣り合いである。Yプロファイルの最も急な勾配は、約300μm〜350μmの横方向範囲にわたって約+0.35μmの高さレベルから−0.95μmまで移動した。これは、わずか−.026の負勾配に等しく、更にフィルムの平面からの小角度に等しい。y/xは、勾配及び勾配角の接線の両方に等しいため、逆正接(.026)は角度をもたらす。より具体的には、逆正接(.026)は、角度1.49度をもたらす。
【0079】
図17A及び17Cは、現在の説明による所与のフィルムの別の画像を示す。この画像では、フィルムのWyko位相シフト干渉計の画像をxプロファイル及びyプロファイルに沿って撮影した。このフィルムは、1.4%の光学的ヘイズ値及び69.6%の光学的透明度値を有した。示されるxプロファイル(図17Bに示す)及びyプロファイル(図17Dに示す)はより急激な勾配を示すように見えるが、この場合もまた、x方向における30μmの横方向移動(270から300μmへ)により1.5μm(−1.0から+0.5へ)のz変化が生じるなど(図17Bを参照)、軸の目盛が不釣り合いであった。ほぼ同一規模の垂直偏差がyプロファイルでも見られた。上記のxプロファイルの計算は、0.05の勾配を示した。これは、2.86度の角度(ここでも逆正接から計算した)に等しい。
【0080】
別のサンプルは、本説明に従って作製されたフィルムの測定値であった。表面の走査型電子顕微鏡の画像を図26に示す。このサンプルは、2.47%のヘイズ値及び59.1%の光学的透明度値を有することが測定された。上記のフーリエ計算法に従って、フィルムプロファイルのフーリエスペクトルを作製した。このサンプルのスペクトルを図27に示す。このスペクトルからは、上記に開示し、図18〜24A及びBに示す方法にここでも従って、図28に示すようにこのサンプルのピークプロファイルを作製した。これから、このフィルムプロファイルのフーリエ比RR値が0.65であったことを測定することが可能であった。
【0081】
項目1.
約10%未満の光学的ヘイズと、
約50%未満の光学的透明度と、を有する構造化表面を備え、
構造化表面の少なくとも85%が約7.5度未満である勾配規模を有する、光学フィルム。
【0082】
項目2.構造化表面上の構造が約10μm未満の平均高さを有する、項目1の光学フィルム。
【0083】
項目3.構造化表面が硬化可能な基材を含む、項目1の光学フィルム。
【0084】
項目4.構造化表面が約1.50〜1.70の屈折率を有する、項目1の光学フィルム。
【0085】
項目5.光学フィルムが、約0.5マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子を更に含む、項目1の光学フィルム。
【0086】
項目6.光学フィルムが、約0.2マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子を更に含む、項目5の光学フィルム。
【0087】
項目7.光学フィルムが、約0.1マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子を更に含む、項目6の光学フィルム。
【0088】
項目8.粒子が表面改質されている、項目7の光学フィルム。
【0089】
項目9.構造化表面の光学的透明度が約45%未満である、項目1の光学フィルム。
【0090】
項目10.構造化表面の少なくとも95%が約10度未満である勾配規模を有する、項目1の光学フィルム。
【0091】
項目11.構造化表面の少なくとも95%が約5度未満である勾配規模を有する、項目5の光学フィルム。
【0092】
項目12.フィルムが2未満のRR値を有するように構造化表面上の構造が分布している、項目1の光学フィルム。
【0093】
項目13.フィルムが1未満のRR値を有するように構造化表面上の構造が分布している、項目12の光学フィルム。
【0094】
項目14.更に基材を含み、基材上に構造化表面が配置され、構造化表面及び基材がそれぞれ屈折率を有する、項目1の光学フィルム。
【0095】
項目15.構造化表面の屈折率が基材の屈折率よりも小さい、項目14の光学フィルム。
【0096】
項目16.
約7.5%未満の光学的ヘイズと、
約60%未満の光学的透明度と、を有する構造化表面を備え、
構造化表面の少なくとも90%が約7.5度未満である勾配規模を有し、
約0.5マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子を含む、光学フィルム。
【0097】
項目17.複数の粒子が約0.2マイクロメートル未満である平均寸法を有する、項目16の光学フィルム。
【0098】
項目18.光学フィルムが、約0.1マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子を更に含む、項目17の光学フィルム。
【0099】
項目19.粒子が表面改質されている、項目18の光学フィルム。
【0100】
項目20.構造化表面上の構造が約7.5μm未満の平均高さを有する、項目16の光学フィルム。
【0101】
項目21.構造化表面の少なくとも97%が約10度未満である勾配規模を有する、項目16の光学フィルム。
【0102】
項目22.構造化表面の少なくとも95%が約5度未満の勾配規模を有する、項目16の光学フィルム。
【0103】
項目23.構造化表面の光学的透明度が約55%未満である、項目16の光学フィルム。
【0104】
項目24.フィルムが2未満のRR値を有するように構造化表面上の構造が分布している、項目16の光学フィルム。
【0105】
項目25.フィルムが1未満のRR値を有するように構造化表面上の構造が分布している、項目24の光学フィルム。
【0106】
項目26.更に基材を含み、基材上に構造化表面が配置され、構造化表面及び基材がそれぞれ屈折率を有する、項目16の光学フィルム。
【0107】
項目27.構造化表面の屈折率が基材の屈折率よりも小さい、項目26の光学フィルム。
【0108】
項目28.構造化表面が約1.50〜1.70の屈折率を有する、項目26の光学フィルム。
【0109】
項目29.
約5%未満の光学的ヘイズと、
約70%未満の光学的透明度と、を有する構造化表面を備え、
構造化表面の少なくとも85%のが約5度未満の勾配規模を有し、
約0.5マイクロメートル未満の平均寸法を有する複数の粒子を含む、光学フィルム。
【0110】
項目30.複数の粒子が約0.2マイクロメートル未満である平均寸法を有する、項目29の光学フィルム。
【0111】
項目31.光学フィルムが、約0.1マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子を更に含む、項目30の光学フィルム。
【0112】
項目32.粒子が表面改質されている、項目31の光学フィルム。
【0113】
項目33.構造化表面上の構造が約5μm未満の平均高さを有する、項目29の光学フィルム。
【0114】
項目34.構造化表面の光学的透明度が約60%未満である、項目29の光学フィルム。
【0115】
項目35.構造化表面の少なくとも90%が約4度未満である勾配を有する、項目29の光学フィルム。
【0116】
項目36.構造化表面の少なくとも90%が約5度未満である勾配規模を有する、項目29の光学フィルム。
【0117】
項目37.フィルムが2未満のRR値を有するように構造化表面上の構造が分布している、項目29の光学フィルム。
【0118】
項目38.フィルムが1未満のRR値を有するように構造化表面上の構造が分布している、項目37の光学フィルム。
【0119】
項目39.更に基材を含み、基材上に構造化表面が配置され、構造化表面及び基材がそれぞれ屈折率を有する、項目29の光学フィルム。
【0120】
項目40.構造化表面の屈折率が基材の屈折率よりも小さい、項目39の光学フィルム。
【0121】
項目41.構造化表面が約1.50〜1.70の屈折率を有する、項目39の光学フィルム。
【0122】
項目42.
約3%未満の光学的ヘイズと、
約65%未満の光学的透明度と、を有する構造化表面を備え、
構造化表面の少なくとも90%が約5度未満である勾配規模を有する、光学フィルム。
【0123】
項目43.構造化表面上の構造が約2.5μm未満の平均高さを有する、項目42の光学フィルム。
【0124】
項目44.構造化表面の光学的透明度が約60%未満である、項目42の光学フィルム。
【0125】
項目45.光学フィルムが、約0.5マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子を更に含む、項目42の光学フィルム。
【0126】
項目46.複数の粒子が約0.2マイクロメートル未満である平均寸法を有する、項目45の光学フィルム。
【0127】
項目47.光学フィルムが、約0.1マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子を更に含む、項目46の光学フィルム。
【0128】
項目48.粒子が表面改質されている、項目47の光学フィルム。
【0129】
項目49.構造化表面の少なくとも95%が約5度未満である勾配規模を有する、項目42の光学フィルム。
【0130】
項目50.フィルムが2未満のRR値を有するように構造化表面上の構造が分布している、項目39の光学フィルム。
【0131】
項目51.フィルムが1未満のRR値を有するように構造化表面上の構造が分布している、項目50の光学フィルム。
【0132】
項目52.更に基材を含み、基材上に構造化表面が配置され、構造化表面及び基材がそれぞれ屈折率を有する、項目52の光学フィルム。
【0133】
項目53.構造化表面の屈折率が基材の屈折率よりも小さい、項目52の光学フィルム。
【0134】
項目54.構造化表面が約1.50〜1.70の屈折率を有する、項目52の光学フィルム。
【0135】
項目55.
約1.5%未満の光学的ヘイズと、
約80%未満の光学的透明度と、を有する構造化表面を備え、
構造化表面の少なくとも80%が約2.5度未満である勾配規模を有する、光学フィルム。
【0136】
項目56.構造化表面の光学的透明度が約75%未満である、項目55の光学フィルム。
【0137】
項目57.光学フィルムが、約0.5マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子を更に含む、項目55の光学フィルム。
【0138】
項目58.複数の粒子が約0.2マイクロメートル未満である平均寸法を有する、項目57の光学フィルム。
【0139】
項目59.光学フィルムが、約0.1マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子を更に含む、項目58の光学フィルム。
【0140】
項目60.粒子が表面改質されている、項目59の光学フィルム。
【0141】
項目61.構造化表面の少なくとも98%が約5度未満である勾配規模を有する、項目55の光学フィルム。
【0142】
項目62.フィルムが2未満のRR値を有するように構造化表面上の構造が分布している、項目55の光学フィルム。
【0143】
項目63.フィルムが1未満のRR値を有するように構造化表面上の構造が分布している、項目62の光学フィルム。
【0144】
項目64.更に基材を含み、基材上に構造化表面が配置され、構造化表面及び基材がそれぞれ屈折率を有する、項目55の光学フィルム。
【0145】
項目65.構造化表面の屈折率が基材の屈折率よりも小さい、項目64の光学フィルム。
【0146】
項目66.構造化表面が約1.50〜1.70の屈折率を有する、項目64の光学フィルム。
【0147】
項目67.
約1%未満の光学的ヘイズと、
約90%未満の光学的透明度と、を有する構造化表面を備え、
構造化表面の少なくとも90%が約4度未満である勾配規模を有する、光学フィルム。
【0148】
項目68.構造化表面の少なくとも99%が約5度未満である勾配規模を有する、項目67の光学フィルム。
【0149】
項目69.
約20%未満の光学的ヘイズと、
約40%未満の光学的透明度と、を有する構造化表面を備え、
構造化表面の少なくとも90%が約10度未満である勾配規模を有する、光学フィルム。
【0150】
項目70.フィルムが2未満のRR値を有するように構造化表面上の構造が分布している、項目69の光学フィルム。
【0151】
項目71.フィルムが1未満のRR値を有するように構造化表面上の構造が分布している、項目70の光学フィルム。
【0152】
項目72.構造化表面の少なくとも90%が約7度未満である勾配規模を有する、項目69の光学フィルム。
【0153】
項目73.
複数のプリズム構造を含む第1の構造化表面と、
第1の構造化表面に対向し、複数のミクロ構造を含む第2の構造化表面と、を備え、
フィルムの実効透過率が、平滑で、構造化されていない第2の表面を除いて同等の構造を備えるフィルムよりも、最大で1%低い、光学フィルム。
【0154】
項目74.フィルムの実効透過率が、構造化表面ではなく、平滑な表面を有する第2の光学フィルムを除いて同等の構造を備えるフィルムよりも高い、項目73の光学積層体。
【0155】
項目75.フィルムが少なくとも約1.5の光学利得を有する、項目73のフィルム。
【0156】
項目76.第2の構造化表面が約20%未満の光学的ヘイズ及び約40%未満の光学的透明度を有する、項目73のフィルム。
【0157】
項目77.第2の構造化表面が約10%未満の光学的ヘイズ及び約50%未満の光学的透明度を有する、項目73のフィルム。
【0158】
項目78.第2の構造化表面が約7.5%未満の光学的ヘイズ及び約60%未満の光学的透明度を有する、項目73のフィルム。
【0159】
項目79.第2の構造化表面が約5%未満の光学的ヘイズ及び約70%未満の光学的透明度を有する、項目73のフィルム。
【0160】
項目80.第2の構造化表面が約3%未満の光学的ヘイズ及び約75%未満の光学的透明度を有する、項目73のフィルム。
【0161】
項目81.第2の構造化表面が約1.5%未満の光学的ヘイズ及び約80%未満の光学的透明度を有する、項目73のフィルム。
【0162】
項目82.第2の構造化表面が約1%未満の光学的ヘイズ及び約90%未満の光学的透明度を有する、項目73のフィルム。
【0163】
項目83.第1及び第2の構造化表面が異なる材料を含む、項目73のフィルム。
【0164】
項目84.
第1の光学フィルムと、
第1の光学フィルム上に配置され、第1の光学フィルムに光学的に結合されている第2の光学フィルムと、を含み、
第2の光学フィルムが構造化表面を備え、
更に、フィルム積層体の実効透過率が、構造化表面ではなく、平滑な表面を有する第2の光学フィルムを除いて同等の構造を備えるフィルム積層体よりも最大で1%低い、光学フィルム積層体。
【0165】
項目85.フィルム積層体の実効透過率が、構造化表面ではなく、平滑な表面を有する第2の光学フィルムを除いて同等の構造を備えるフィルム積層体よりも高い、項目84のフィルム積層体。
【0166】
項目86.第1の光学フィルムが輝度向上フィルムを含む、項目84のフィルム積層体。
【0167】
項目87.第1の光学フィルムが偏光子を含む、項目84のフィルム積層体。
【0168】
項目88.第1の光学フィルムがポリカーボネート、PET、TAC、又はS−BOPPを含む、項目84のフィルム積層体。
【0169】
項目89.第1の光学フィルムが多層を含む、項目84のフィルム積層体。
【0170】
項目90.第1の光学フィルムが反射偏光子を含む、項目84のフィルム積層体。
【0171】
項目91.第1の光学フィルムが第1の屈折率を有し、第2の光学フィルムが第1の屈折率よりも小さい第2の屈折率を有する、項目84のフィルム積層体。
【0172】
項目92.第1の光学フィルムと第2の光学フィルムとの間に配置された第3の光学フィルムを更に含む、項目84のフィルム積層体。
【0173】
項目93.フィルム積層体が少なくとも約1.5の光学利得を有する、項目84のフィルム積層体。
【0174】
項目94.第2のフィルムの構造化表面が約20%未満の光学的ヘイズ及び約40%未満の光学的透明度を有する、項目84のフィルム積層体。
【0175】
項目95.第2のフィルムの構造化表面が約10%未満の光学的ヘイズ及び約50%未満の光学的透明度を有する、項目84のフィルム積層体。
【0176】
項目96.第2のフィルムの構造化表面が約7.5%未満の光学的ヘイズ及び約60%未満の光学的透明度を有する、項目84のフィルム積層体。
【0177】
項目97.第2のフィルムの構造化表面が約5%未満の光学的ヘイズ及び約70%未満の光学的透明度を有する、項目84のフィルム積層体。
【0178】
項目98.第2のフィルムの構造化表面が約3%未満の光学的ヘイズ及び約75%未満の光学的透明度を有する、項目84のフィルム積層体。
【0179】
項目99.第2のフィルムの構造化表面が約1.5%未満の光学的ヘイズ及び約80%未満の光学的透明度を有する、項目84のフィルム積層体。
【0180】
項目100.第2のフィルムの構造化表面が約1%未満の光学的ヘイズ及び約90%未満の光学的透明度を有する、項目84のフィルム積層体。
【0181】
項目101.第1のフィルムが約2%未満の光学的ヘイズを有する、項目84のフィルム積層体。
【0182】
項目102.
光学フィルムの表面に不規則に分布する複数のミクロ構造であって、不規則な分布のフーリエRR値が2未満である複数のミクロ構造を含み、
光学フィルムの表面の50%が約1度〜5度の勾配を有する、光学フィルム。
【0183】
項目103.不規則な分布のRR値が1未満である、項目102の光学フィルム。
【0184】
項目104.構造化表面を備え、約75%〜95%の光学的透明度及び約0〜1%の光学的ヘイズを有し、約0.5マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子を含む、光学フィルム。
【0185】
項目105.構造化表面を備え、約35%〜70%の光学的透明度及び約1%〜4%の光学的ヘイズを有する、光学フィルム。
【0186】
項目106.構造化表面を備え、約30%〜55%の光学的透明度及び約4〜10%の光学的ヘイズを有し、約0.5マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子を含む、光学フィルム。
【0187】
項目107.構造化表面を備え、約25%〜45%の光学的透明度及び約10〜18%の光学的ヘイズを有し、約0.5マイクロメートル未満である平均寸法を有する複数の粒子を含む、光学フィルム。
【0188】
項目108.
光源と、
光源から受光する第1の光学フィルムと、
第2の光学フィルムであって、第1の光学フィルムが第2の光学フィルム上に配置され、第2の光学フィルムに光学的に結合され、複数のミクロ構造を含む第2の光学フィルムと、を備え、
第2のフィルムの光学的透明度が約85%未満であり、第2のフィルムの光学的ヘイズが約3.5%未満である、ディスプレイを照射するためのバックライト。
【0189】
項目109.構造化表面を備え、構造化表面の光学的透明度が((−3×光学的ヘイズ)+80%)未満である、光学フィルム。
【0190】
項目110.構造化表面の光学的透明度が20%超である、項目109の光学フィルム。
【0191】
項目111.マット仕上げを有するフィルムの作製方法であって、
基材上に配置されたコーティング可能な材料を含むコーティングされた基材をもたらす工程であって、コーティング可能な材料がコーティングされた基材の第1の主表面をもたらす工程と、
コーティング可能な材料の粘度を初期粘度から第2の粘度に変化させる工程と、
コーティングされた基材に第1のローラーを通過させて、全てのくずを取り除く工程と、
コーティングされた基材の第1の主表面に少なくとも1つの表面側ローラーを接触させて、マット仕上げを付与する工程と、
所望により、コーティング可能な材料を硬化させてフィルムをもたらす工程と、を含む方法。
【0192】
上記に引用した全ての特許、特許出願及び他の刊行物を、それらがあたかも完全に再現されたものとして本明細書に援用するものである。本発明の様々な態様の説明を容易にするために本発明の特定の実施例を上記に詳細に説明したが、本発明は、それら実施例の詳細に限定されるものではないことを理解すべきである。むしろ添付の「特許請求の範囲」により規定されるように本発明の趣旨及び範囲内にある全ての変形例、実施形態及び代替例を全て網羅しようとするものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C
図17D
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図25
図26
図27
図28