【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は飲料調製マシンに関する。そのようなマシンは、供給液体を供給温度から飲料調製温度まで加熱するためのヒータ、特にインラインヒータおよび/またはサーモブロックなどの蓄熱構造と、飲料調製中に供給液体を飲料調製温度まで加熱するために、ヒータが動作温度に達して維持されるべく給電されるように液体供給およびヒータを制御するための制御ユニットとを備える。
【0016】
「飲料調製」とは、一般に、ユーザカップまたはユーザマグカップを所望のレベルまで満たすために所要量の飲料を注出するべく、通常は例えばユーザによりなされる飲料要求を果たすために飲料調製マシンによって自動的に実行される一連のステップのことである。そのようなステップは、特に、例えば一杯のカップまたはマグカップに対応するユーザが要求する量の飲料を処理して、ユーザカップおよび/またはユーザマグカップを配置するための領域へ飲料出口を介して飲料を注出することを含む。所定量の飲料の処理は、水などの所定量の液体、例えばキャリア液を加熱すること、および、液体と香味原材料などの他の原材料(例えば、チョコレート、スープ、水溶きコーヒー、水溶き茶、または、ミルク)とを混合すること、および/または、特にポンプの使用を必要とする圧力の助けを伴ってあるいは伴わずに液体を用いて原材料を煎じること(例えば、挽いたコーヒーまたは茶葉)を含んでもよい。「飲料調製」は、一般に、所定の時点でユーザにより要求される量の飲料が処理されてユーザへ注出されたときに終了する。処理および/または注出のそのような終了は、飲料調製マシンを通じた液体の流通の終了、または、飲料調製マシンの注出装置、例えば飲料出口を介した飲料の注出の終了に対応してもよい。特に、流通終了時のマシンルーチン、特に飲料関連試験、あるいは、安全または人間工学的プロセス(例えば、スケール試験または衛生試験)、または、他の理由を考慮するべく、「飲料調製」は、「飲料調製」の終了が飲料ユーザ要求に従う飲料流通および/または注出の終了に対して僅かに遅延されるように、飲料の実際の流通および注出を超えて数秒または数十秒だけ延びてもよい。
【0017】
マシンは、液体、例えば水を液体リザーバまたは蛇口などの液体源から飲料出口に流通させるための流体回路を有してもよい。前記ヒータは、一般に、流体回路と流体接続している。流体回路を通じた液体の流通を促進するために、ポンプが流体回路に組み込まれてもよい。そのようなポンプは制御ユニットによって制御されてもよい。
【0018】
一般に、マシンは、コーヒー、茶、チョコレート、または、スープを調製するように構成される。特に、マシンは、飲料モジュール内の香味原材料、例えば混合および/または淹出ユニット内に保持される香味原材料に熱水または冷水あるいは他の液体を通すことにより飲料モジュール内で飲料を調製するようにすることができる。例えば、香味原材料は、カプセルに入った状態でモジュールへ供給される。そのようなカプセルは、一般に、挽いたコーヒーまたは茶またはチョコレートまたはカカオまたは粉ミルクなどの調製されるべき飲料の原材料を収容するための内部キャビティを画定するパッケージを形成する。そのため、飲料調製のために使用される原材料を、カプセル、すなわち、原材料を保持して収容するためのパッケージを用いて、予め小分けされた形態でマシン内へ導入できる。
【0019】
本発明によれば、制御ユニットは、飲料調製の範囲外ではヒータが減少温度に達して維持されるべく給電されるようにする。
【0020】
したがって、飲料の調製のためにヒータが使用されないときには、ヒータを減少温度まで冷やすことができる。ヒータは、飲料調製の終了直後に、例えば、飲料の調製のためにヒータが所要量の加熱液体を供給してしまった時点で、あるいは、飲料調製マシンが所要量の飲料を例えばカップまたはマグカップに供給してしまった時点で、あるいは、その直後に、例えば数秒後または数十秒後に、例えば1分または2分後に、この減少温度まで冷却できてもよい。特に、淹出ステップが行なわれる場合には、流通の終了後に、飲料注出が終了してもよい。
【0021】
本発明の特に簡単な実施形態では、飲料調製マシンがカプセルに供給される予め小分けされた飲料原材料を使用する場合、前述した「飲料調製」は、液体が実際に流通されあるいは飲料が実際に注出されるか否かにかかわらず、このカプセル、例えば飲料マシンの淹出ユニット内に配置される原材料カプセルを使用して飲料を注出するための処分状態にあるそのようなカプセルのマシン内の存在と同等と見なされてもよい。この場合には、マシン内における注出形態のカプセルの存在または不存在を監視すれば十分である。これを自動的に行なうことも可能である。
【0022】
飲料調製の終わりに、ヒータは、該ヒータを減少温度に維持するように給電される。動作温度と減少温度との間の温度降下は、制御ユニットを介してヒータの給電を遮断することによって達成されてもよい。その後、ヒータは、該ヒータを減少温度に維持するために適切なレベルで給電されてもよい。更なる飲料調製のため、ヒータは、最初に、減少温度から動作温度に至らされる。
【0023】
これにより、ヒータを長期間にわたって動作温度に連続的に維持するシステムと比べて、2つの連続する飲料調製間でヒータのエネルギー消費量がかなり減少される。また、減少温度からその動作温度に達するためのヒータの加熱時間も、完全に中断することにより冷却できるようにされたヒータを加熱するために必要とされる加熱時間より短くなる。また、液体、例えば水の沸点に近い動作温度をヒータが有する場合には、ヒータの温度を数度だけ減らすことにより、ヒータにおけるスケール堆積を既にかなり減らすことができる。
【0024】
例えば、ヒータの動作温度は、65〜98℃の範囲内、特に85〜95℃の範囲内である。コーヒー、例えばエスプレッソを調製する場合には、供給される飲料の温度が80〜90℃の範囲内となり得る。例えば煎じ出し中のヒータの下流側の温度損失を考慮するため、ヒータは、流通水を85〜95℃あるいはそれ以上まで加熱しなければならない場合がある。茶は60〜95℃の温度が最も良いかもしれない。同様に、例えば煎じ出し中のヒータの下流側にわたる温度損失を考慮するため、ヒータは、流通水を65から98℃まで加熱しなければならない場合がある。
【0025】
通常、減少温度は、前述したように例えば動作温度よりも低いとともに、ヒータの非作動温度よりも高く、例えば10〜30℃の範囲内の周囲温度よりも高い。
【0026】
減少温度は、非作動温度に対する動作温度の50〜95%の範囲内、例えば60〜90%、随意的には70〜85%の範囲内であってもよい。例えば、非作動温度が20℃(周囲温度)で、動作温度が90℃である場合には、これらの間の温度範囲が70℃であり、したがって、温度範囲の50〜95%が35〜66.5℃の温度差に対応し、そのため、対応する減少温度(20℃の非作動温度に対する90℃の動作温度の50〜95%)は、20+35℃〜20+66.5℃の範囲内、すなわち、55℃〜86.5℃の範囲内である。
【0027】
減少温度は、動作温度よりも3〜50℃低くてもよく、特に動作温度よりも5〜35℃低くてもよい。
【0028】
1つの実施形態において、減少温度は、ヒータにおけるスケール堆積を実質的に防止するようなレベルである。減少温度は、90℃未満、特に80℃〜89℃の範囲内、例えば84〜88℃の範囲内であってもよい。
【0029】
水回路におけるスケール堆積は、主に、水が蒸気に変わるときに生じる。この時点で、水に存在するミネラルが回路中に沈殿する。例えば最適なコーヒーを調製するために、環境(大気圧)に応じて、水が100℃の水の沸点以下に非常に近い約95℃に加熱されてもよい。
【0030】
ヒータの温度を数度だけ減少させることにより、例えば約85〜90℃にすることにより、水の沸騰がほぼ防止され、スケール堆積が効果的に抑制される。例えば約1〜1.5kWのサーモブロックを使用する従来技術の飲料マシンを用いると、例えば94から88℃への温度減少が、特に飲料調製の終了時において、サーモブロックの遮断後、約1分を要する場合がある。
【0031】
例えば、減少温度は、90℃未満、特に85℃未満である。動作温度が沸騰温度に近い場合、例えば約90〜99℃である場合、ほんの数度のヒータの温度減少でさえ、特にそれらの加熱キャビティ内で不均一な熱分布を有するヒータにおいて、スケール堆積の危険をかなり減らす。不均一な熱分布は「ホットスポット」をもたらす場合があり、そのようなスポットではスケール堆積の危険が高い。そのため、少なくとも2〜3度だけヒータの温度を全体的に減少させることにより、飲料を調製していない期間中にわたって、任意のスケール堆積がかなりの程度まで減少され抑制されあるいは更には防止される。
【0032】
他の実施形態において、制御ユニットは、減少温度に達するときに可能にされるサービスモードを含む。減少温度は、特に動作温度が80〜98℃の範囲内のときには、55〜75℃の範囲内となることができる。洗浄および/またはスケール除去が50〜65または70℃の範囲内の温度で行なわれてもよい。減少温度は、洗浄および/またはスケール除去のために必要とされる温度、例えば50〜65または70℃に設定することができ、あるいは、そのような温度と動作温度との間に設定して、減少温度から動作温度へのヒータの加熱が減少されるようにしてもよい。後者の場合、整備が必要とされおよび/または要求されれば、ヒータを例えば65〜80℃の減少温度から例えば50〜65または70℃の整備温度まで冷却できるようにしてもよい。
【0033】
スケール除去および/または洗浄は、一般に、例えばマシンのポンプを用いて、250〜1000ml、例えば400〜750mlの範囲の量の洗浄液および/またはスケール除去液を流通させることを伴ってもよい。液体は、連続的に流通されてもよく、あるいは、流れの幾つかの遮断を伴ってもよい。
【0034】
スケール除去は、より高い温度で、70〜75℃を超える温度で行なわれてもよい。しかしながら、幾つかのスケール除去剤は、より高い温度で蒸発する傾向があり、それにより、有毒ガスを発生させる場合がある。
【0035】
マシンの液体回路の濯ぎ、特にヒータの濯ぎは、減少温度で行なわれるのが好ましく、それにより、一方では、濯ぎ液の加熱において必要とされるエネルギーが少なくなり、他方では、濯ぎ液が特にヒータにおいてスケールを堆積させる可能性が低くなる。濯ぎは、濯ぎ液のパルス流を伴ってもよい。
【0036】
減少温度レベルは、出荷時に設定されてもよく、および/または、ユーザ、すなわち、消費者および/または保守要員によって選択可能または変更可能であってもよい。特に、マシンは、45〜90℃、例えば55〜85℃、随意的には60〜80℃の温度範囲内でユーザが減少温度を設定できるようにする装置、例えばユーザインタフェースを含んでもよい。所定の温度範囲で減少温度レベルを設定するためのユーザインタフェースは、選択された減少温度におけるエネルギーの節約および/またはヒータを選択された減少温度から動作温度に至らせるために必要な時間に関する表示をユーザに与えるための手段と関連付けられてもよい。該手段は、インタフェースあるいは他の場所に隣接した数値表示または記号表示であってもよく、それにより、ユーザは、減少温度から動作温度へのヒータの加熱に関連する環境保全上の利点および想定し得る不都合を予測して検討することができる。したがって、人間工学的な使用、環境についての意識、および、減少温度に関連して与えられる可能性をうまく利用しようとする意欲が向上される。
【0037】
また、マシンがONに切り換えられるが飲料を調製していないときに減少温度で駆動されるべきヒータの機能をユーザが終了できるようにすることも考えられる。
【0038】
一般的に言えば、「飲料調製」は、例えば、スイッチ、ボタン、タッチパッド、または、タッチスクリーンなどの適切なインタフェースを介して、ユーザ要求によって開始されてもよく、および/または、飲料調製終了時にヒータへの液体の供給が停止されるとき、あるいは、飲料の注出が終了されるときに終了されてもよい。
【0039】
「飲料調製」の開始および終了は、飲料調製マシンの特定の形態および/または特徴と関連付けられてもよい。
【0040】
マシンは、1つ以上の飲料原材料を混合するおよび/または淹出するための装置を備えてもよい。特に、混合および/または淹出装置は、原材料を取り込むおよび/または取り出すための形態、および、そのような原材料を混合するおよび/または淹出するための形態を有してもよい。そのような装置は当該技術分野において良く知られている。適した混合および/または淹出装置は、例えば、その内容が参照することにより本願に組み入れられる欧州特許出願公開第1646305号明細書、欧州特許出願公開第1859713号明細書、欧州特許出願公開第1859714号明細書、国際公開第2009/043630号パンフレット、および、欧州特許出願公開第09172187.8号明細書に開示される。
【0041】
制御ユニットは、混合および/または淹出装置が取り込み形態にある;混合および/または淹出装置に原材料が取り込まれる;および、混合および/または淹出装置において原材料が検出される;から選択される少なくとも1つの事象の発生時にヒータが動作温度に達して維持されるべく給電されるようにしてもよい。
【0042】
飲料を注出するために液体を加熱する直前の必要性を示す混合および/または淹出ユニットの好ましくは自動的に検出される特定の形態を飲料調製の開始点として設定すると、ヒータを動作温度に至らすための時間を節約するのに役立つ。
【0043】
混合および/または淹出装置内における原材料および/または原材料のカプセルの自動検出は、そのような原材料を用いた飲料調製の開始点として使用されてもよい。結果として、制御ユニットは、ヒータをその動作温度に至らせるために飲料調製マシンにある小型カップまたは大型カップに注出するための飲料注出インタフェース、例えばボタンをユーザが操作するまで待たない。
【0044】
同様に、制御ユニットは、混合および/または淹出装置が取り出し形態にある;混合および/または淹出装置から原材料が取り出される;および、特に前記装置が混合および/または淹出形態にあるときに、混合および/または淹出装置において原材料の不存在が検出される(例えば、混合および/または淹出装置が空である);から選択される少なくとも1つの事象の発生時にヒータが減少温度に達して維持されるべく給電されるようにすることができる。
【0045】
特定の実施形態では、混合および/または淹出装置を、そのような原材料、例えば、挽いたコーヒー、茶、チョコレート、スープ、ミルクなどの香味原材料を収容するカプセルを取り込むように構成することができる。特に、制御ユニットは、混合および/または淹出装置内のカプセルを自動的に検出するためのセンサを備えてもよい。そのようなセンサは、当該技術分野において知られるような光学、無線に基づくものである。例えば、カプセルセンサは、例えばその内容が参照することにより本願に組み入れられる欧州特許出願公開第10167463.8号明細書に開示されるように、カプセルの電気的特性を検出するようになっている。
【0046】
混合および/または淹出装置内における原材料および/または原材料のカプセルの自動検出は、そのような原材料を用いた飲料調製の開始点として使用されてもよい。結果として、制御ユニットは、ヒータをその動作温度に至らせるために飲料調製マシンにある小型カップまたは大型カップに注出するための飲料注出インタフェース、例えばボタンをユーザが操作するまで待たない。
【0047】
1つの実施形態において、混合および/または淹出装置内における原材料および/またはカプセルの自動検出は、ヒータを動作温度に至らせるために使用される。混合および/または淹出装置内における原材料および/またはカプセルの検出の欠如は、ヒータをその減少温度に至らせるための時間点として使用できる。原材料および/またはカプセルのそのような検出時の液体流通の終了は、ヒータをその減少温度に至らせるための時間点として使用されてもよい。
【0048】
他の実施形態において、混合および/または淹出装置内における原材料および/またはカプセルの自動検出、並びに、取り込み形態にある混合および/または淹出装置は、ヒータを動作温度に至らせて維持するために使用される。その場合、混合および/または淹出形態にある混合および/または淹出装置内における原材料および/またはカプセルの検出の欠如は、ヒータをその減少温度に至らせるための時間点として使用される。
【0049】
また、制御ユニットは、更に、中断条件および/または待機条件が満たされるときに定常非作動温度、例えば周囲温度に達するようにヒータの給電を自動的に中断するようになっていてもよい。ヒータの給電の中断に加えて、飲料マシンの他の構成要素、例えば、ポンプ、または、能動センサ、または、他のエネルギーを消費する構成要素、例えばインタフェースの給電が中断されてもよい。
【0050】
また、本発明は、従来技術の飲料調製マシンを前述したマシンに変換する方法にも関連する。従来技術のマシンは、変換前に、
供給液体を供給温度から飲料調製温度まで加熱するためのヒータ、特にインラインヒータおよび/またはサーモブロックなどの蓄熱構造と、
飲料調製中にそのような供給液体を飲料調製温度まで加熱するために、ヒータが動作温度に達して維持されるべく給電されるようにそのような液体供給およびヒータを制御するための制御ユニットと、
を備える。
【0051】
本発明によれば、制御ユニットは、使用中に飲料調製の範囲外ではヒータが減少温度に達して維持されるべく給電されるように変更され、特に再プログラミングされる。
【0052】
したがって、本発明は、最小のコストで既存の飲料調製マシンに実装することができるとともに、付加的なコストを殆ど伴わずに新規なビルトマシンに実装される。
【0053】
ここで、概略図面を参照して、本発明について説明する。