(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明に係る一形態を得るに至った経緯>
従来の立体映像表示装置では、パララックスバリアのパターンとプラズマディスプレイの画素パターンとの間に干渉縞(モアレ)が生じ、モアレの状態はパララックスバリアの開口部の幅や形状によって異なることがある。
【0011】
通常、各RGBサブピクセルの間に色の混色を解消させるためにブラックマトリックスと呼ばれる領域が液晶テレビやPDP等には存在している。また、サブピクセル間に存在するブラックマトリックスの他に、各サブピクセル上に補助電極等が配置されている場合もある。そのため、このブラックマトリックスと補助電極が視差バリアのスリットを通して観察され、視聴位置によってブラックマトリックスと補助電極が見える割合が多い開口部と少ない開口部で明暗の差が発生する。その結果、画面上に輝度ムラ(モアレ)が発生し、画質を大きく低下させる問題となっている。
【0012】
モアレの状態は、パララックスバリア開口部形状や画素構造(ブラックマトリックスの大きさ等)、視聴距離、バリア開口部の幅等に依存して発生する。
【0013】
図17は、縦ストライプバリアの場合の開口幅に対するモアレパターン変化を模式的に示す。
図17の左側はパララックスバリアの開口部を模式的に示し、右側は対応するモアレパターンの様子を表している。また、300は透過率100%である領域0(透過領域)を示し、301は透過率0%である領域1(遮蔽領域)を示す。
【0014】
例えば、サブピクセルサイズと同じバリア開口幅をもつ(a)の場合、図のように濃いモアレパターンが視認される。
【0015】
バリア開口幅を(b)のように大きくすると、モアレパターンが薄くなり見えにくくなる現象が発生する。
【0016】
さらにバリア開口幅を(b)より大きくすると、(c)のように再びモアレパターンが濃くなる現象が生じるが、(c)のように、モアレパターンの明部と暗部が(a)とは反対になる。
【0017】
このように、バリア開口部の幅の変化に応じてモアレパターンの変化(強度の変化)が発生するため、モアレ低減を実現するためにはバリア開口部の幅の最適化が重要になる。
【0018】
しかしながら、モアレを完全に除去する開口部の幅を正確に導出することは画素構造やバリア開口部形状の複雑さにも依存しており、通常は困難である。
【0019】
また、開口部の幅が正確に導出されたとしても、製造において設計した幅が正しく再現されないために、モアレを除去することは困難である。例えば製造のための原版は、設計値に対して±1μm程度の誤差が生じることがある。さらにこの原版を元にパララックスバリアを製造する場合、例えば印刷だと、マスクの開口幅に対して±数μmの誤差が生じることが指摘されている。
【0020】
そこで、以下に説明する各実施形態の映像表示装置では、パララックスバリアは光を透過する領域、光を通さない領域および両領域の間に介在する領域を含み、係る介在する領域への印加電圧の制御を行って光の透過率を制御することでモアレの低減を図る。
【0021】
以下、第1〜第4実施形態について説明する。
【0022】
第1実施形態では、パララックスバリアを作製した後に、印加電圧を制御することでモアレを除去もしくは大幅に低減する映像表示装置について説明する。
【0023】
第2実施形態では、光透過率が可変な領域の状態を透過率0%の状態(遮蔽状態)と透過率100%の状態(透過状態)の間で、観察者が視認できない程度の速い速度で繰り返す映像表示装置について説明する。
【0024】
第3実施形態では、光透過率が可変領域において印加する電圧によって遮蔽率(T2%)を変えることができると共に、複数の透過率の状態を高速に切換える映像表示装置について説明する。
【0025】
第4実施形態では、光透過率が可変な領域への印加電圧を変えることで、開口部の中心位置を変化させた2つの状態を高速に切換える2つの状態の印加電圧を変える映像表示装置について説明する。
[第1実施形態]
図1、2、3、4に第1実施形態を示す。
図1は、第1実施形態の映像表示装置の構成を示す。なお、後述の第2〜第4実施形態においても映像表示装置の全体的な構成は
図1と同様である。
【0026】
また、
図2は、分離部制御手段103の構成を示す。
図3は、分離手段として縦ストライプ形状バリアを用いた場合でのバリア調整を模式的に示し、
図4は
図3のバリア調整を実現する電極構造例を示す。これらの図に従い、第1実施形態である映像表示装置について説明する。
【0027】
図1に示されるように、本第1実施形態の映像表示装置は、映像表示手段100、映像分離手段101、分離部制御手段103、表示回路107、複数視差画像108を備える。
【0028】
表示回路107は、複数視差画像108を映像表示手段100に表示させる。
【0029】
映像分離手段101は、映像表示手段100からの画像の光を開口や遮蔽をして所定の位置に視差画像を提示するためのパララックスバリア(視差バリアまたは、単にバリア)から例えば構成される。
【0030】
分離部制御手段103は、視聴情報(適視距離、視差数、サブ画素ピッチ、バリアとパネル間距離、眼間距離など)102に基づいて領域ごとの開口幅やバリアピッチを含む分離部情報を決定する分離部情報決定手段105と、分離部情報決定手段105で決定されたバリア情報をもとにバリアと映像表示手段100間の距離や位置等を調整する分離部調整回路106とを有する。
【0031】
さらに、分離部制御手段103は、視聴情報102より、領域ごとの開口幅やバリアピッチを決定する分離部情報決定手段105、分離部情報決定手段105で決定されたバリア情報をもとにバリアと映像表示手段間の距離や位置等を調整する分離部調整回路106より構成される。
【0032】
また、
図2に示すように、分離部情報決定手段105は、バリアピッチや
図3における開口部1および開口部2の幅を決定する開口幅・ピッチ決定手段200、水平方向の位置を初期化する対象位置初期化手段201、現対象の水平位置が
図3における領域0、領域1、領域2のどれに属するかを判断する領域確認手段202、各領域に応じて透過率x%を決定する対象位置透過率決定手段203、水平方向で全位置での透過率が判断されていない場合に水平方向の対象位置を更新する対象位置更新手段204より構成される。なお、開口幅・ピッチ決定手段200では、開口部1や2の幅は、デフォルト値(ただし、開口部2の幅>開口部1の幅)を設定してもよいし、予め視聴環境の条件で選択された値をそれぞれ設定しても良い。
【0033】
本実施形態では映像分離手段101であるパララックスバリアは、遮蔽状態(光の透過率0%である状態)の領域1と透過状態(光の透過率100%である状態)の領域0と、領域0、1間に介在し光の透過率を可変に制御できる領域2を備えている。領域0、1及び領域2は共に印加電圧により遮蔽率と開口率(光の透過率)を変化することができるようなデバイス(例えばTFT液晶等)でできている。
【0034】
領域0は透過状態(透過率100%)の領域になるように印加電圧が調整されており、領域1は遮蔽状態(透過率0%)の領域になるように印加電圧が調整されているものとする。それに対して、領域2は、印加する電圧によって遮蔽率(T%)を変えることができる領域に相当する。
【0035】
図3において、領域2の透過率T=0%(遮蔽状態)の時、開口部1の状態となり、
図17(a)のようにモアレが生じる状態である。さらに、領域2の透過率Tが100%(透過状態)の時、開口部2の状態となり、
図17(c)のようにモアレが生じる状態である。そして、領域2に印加する電圧を変化させることで透過率が変化し、
図17(a)のモアレの状態と
図17(c)のモアレの状態の間を遷移させることができる。
図17(a)の状態と
図17(c)の状態との間にはモアレが除去できる状態があるので、領域2に印加する電圧を変化させてTを適切な値とすると、モアレが除去できる状態、もしくは大幅に低減した状態を実現することが可能となる。
【0036】
例えば、開口部1の幅がサブ画素ピッチに等しく(サブ画素ピッチ×1)、開口部2の幅がサブ画素ピッチ×2であった場合、領域2の透過率TをT=50%とすると、実質的な平均開口幅はサブ画素ピッチ×1.5の大きさになる。
【0037】
このように、領域2の透過率T%を制御することで、モアレを除去する開口部の幅を正確に導出することができなくても、パララックスバリアを作製した後に、印加電圧を制御することでモアレを除去もしくは大幅に低減することができる。また、最適な開口部の幅が正確に導出されても製造において設計した幅が正しく再現されない場合であっても、製造精度を考慮して
図17(a)の状態になる開口幅1と
図17(c)の状態になる開口幅2となるようパララックスバリアを作製し、印加電圧を制御することでモアレを除去もしくは大幅に低減することができる。
【0038】
図4に
図3の調整を実現するパララックスバリアの電極構造例を示す。2枚の基板に形成された電極間に印加する電圧で電極間に存在する液晶の配列を制御する。一方の基板には、
図4(a)のように領域1用電極400と領域2用電極401が形成されている。他方の基板には
図4(b)のように全面に対向電極402が形成されている。そして、領域1用電極400と対向電極402との間に電圧を印加することで、遮蔽状態と透過状態を切換える。また、領域2用電極401と対抗電極402との間に電圧を印加すると共に、電圧を可変とすることで透過率を制御する。このような電極構造を用いることで、
図3のようなバリア調整を実現することができる。
【0039】
なお、
図4では、領域1、2の透過率制御ために必要な構造例を示したが、
図4(a)において領域0の透過率を制御するために領域0用の電極をさらに加えるとしても構わない。
【0040】
なお、バリア構造として縦ストライプ形状をもとに説明したが、
図5のような斜め(スラント)バリア形状であってもよい。
【0041】
図5では、領域0を両側から挟むようにして2つの領域2が位置しており、領域0および領域2は同じ方向に向かって斜めに延びる形状(斜めストライプ形状)である。
【0042】
また、
図3において、領域0、1及び領域2は共に印加電圧により遮蔽率と開口率(光の透過率)を変化することができるような液晶等のデバイスでできているとしたが、領域0は常時透過状態(透過率100%)の領域になるように常時開口されていたりほぼ透過するガラス等が配置されていてもよく、この場合は領域1と領域2が共に印加電圧により遮蔽率と開口率(光の透過率)を変化することができるようなデバイスでできていることとなる。
また、本実施形態では映像表示手段としてプラズマディスプレイを例にして説明したが、液晶ディスプレイやELディスプレイ等を用いてもよい。
【0043】
さらに、本実施形態では映像分離手段を映像表示手段の前面に配置する方式を例に説明したが、液晶ディスプレイの液晶パネルとバックライトの間に映像分離手段であるパララックスバリアを配置する方式を用いてもよい。また、T%の部分を実現する領域2のみが液晶のように電圧をかけることで変化できるデバイスで構成されていてもよく、この場合、領域0は常時透過状態になるように開口しており、領域1は常時遮蔽状態になるように固定デバイス(マスキングされたガラスやフィルム等)が配置されることとなる。領域0、1をこのように構成することは、製造コスト削減や消費電力の面で有利である。
[第2実施形態]
図1、6、7に第2実施形態を示す。
図6は、第2実施形態における映像表示装置の分離部調整決定手段の構成を示す。
図7は、第2実施形態における映像分離手段として縦ストライプ形状バリアを用いた場合でのバリア調整を模式的に示しており、第1実施形態と同様に領域0、1及び領域2は共に印加電圧により遮蔽率と開口率(光の透過率)を変化することができるようなデバイス(例えばTFT液晶等)でできている。
【0044】
本実施形態では、
図7で示されるように2つの状態(状態1と状態2)を持っており、状態1では領域2が遮蔽状態(光の透過率が0%)となり、状態2では領域2が透過状態(光の透過率が100%)となる。そして、この2つの状態を高速に切換えができるようになっている。
【0045】
そのため、
図6に示されるように、例えばTLK信号のような内部タイミング信号の入力と同調して状態判定手段501が切り替えるべき状態を判定する。
切り替えることとなる。また、処理カウンタをもとに状態1と状態2のどちらに属するかを判断してもよい。
【0046】
第2対象位置透過率決定手段502では、水平方向での対象位置と上記TLK信号に同調して状態判定手段501にて判定された状態に基づいて、対象位置での透過率を決定する。なお、このTLK信号に同調して制御されるのは、
図7で示されるように領域2の透過率のみであり、領域1や領域0での透過率は本実施形態1の場合と同様にTLK信号に依存せず、領域0は透過状態(透過率100%)の領域になるように印加電圧が調整されており、領域1は遮蔽状態(透過率0%)の領域になるように印加電圧が調整されているものとする。
【0047】
電極構造例としては、第1実施形態で用いた
図5を用いることが可能となる。
【0048】
TLK信号や処理カウンタを用いた領域2での2つの状態の切換えは観察者が視認できないことが望ましく、例えば120Hz〜240Hzの範囲の周波数で領域2の遮蔽状態(状態1)と透過状態(状態2)とを繰り返すことが好ましい。
【0049】
ここで、周期的に遮蔽状態と透過状態を繰り返す際の1サイクル内の遮蔽状態の時間の割合と透過状態の時間の割合の比(遮蔽状態と透過状態のデューティー比)によって、平均透過率が決まる。例えば、遮蔽状態:透過状態=1:1のデューティー比であれば、1サイクル内での領域2の平均透過率は50%となり、これが領域2の1サイクル内での透過率T2(%)と見なすことができる。遮蔽状態:透過状態=M:Nのデューティー比の場合は、1サイクル内での平均透過率T2(%)は(式1)のようになる。
【0050】
【数1】
このように、1サイクル内での平均透過率は、遮蔽状態:透過状態=M:Nのデューティー比であれば領域2の1サイクル内での透過率T2(%)と見なすことができるので、M、Nを調整してT2(%)を適切な値とすることで、モアレが除去できる状態、もしくは大幅に低減した状態を実現することが可能となる。つまり、定性的には、モアレの明暗パターンが互いに逆になるような開口パターンを時間方向に混在させることでモアレを低減させることとなる。
【0051】
なお、バリア構造として縦ストライプ形状をもとに説明したが、第1実施形態で説明したように斜め(スラント)バリア形状であってもよい。
【0052】
また、
図7において、領域0、1及び領域2は共に印加電圧により遮蔽率と開口率(光の透過率)を変化することができるような液晶等のデバイスでできているとしたが、領域0は常時透過状態(透過率100%)の領域になるように常時開口されている場合やほぼ透過するガラス等が配置されている場合でもよく、この場合は領域1と領域2が共に印加電圧により遮蔽率と開口率(光の透過率)を変化することができるようなデバイスでできていることとなる。
【0053】
また、本実施形態では映像表示手段としてプラズマディスプレイを例にして説明したが、液晶ディスプレイやELディスプレイ等を用いてもよい。
【0054】
さらに、本実施形態では映像分離手段を映像表示手段の前面に配置する方式を例に説明したが、液晶ディスプレイの液晶パネルとバックライトの間に映像分離手段であるパララックスバリアを配置する方式を用いてもよい。また、1サイクル内の平均透過率がT2%となる部分を実現する領域2のみが液晶のように電圧をかけることで変化できるデバイスで構成されていてもよく、この場合、領域0は常時透過状態になるように開口しており、領域1は常時遮蔽状態になるように固定デバイス(マスキングされたガラスやフィルム等)が配置されることとなる。
[第3実施形態]
図1、6、8に第3実施形態を示す。
図8は、第3実施形態における分離手段として縦ストライプ形状バリアを用いた場合でのバリア調整を模式的に示しており、第1実施形態と同様に領域0、1及び領域2は共に印加電圧により遮蔽率と開口率(光の透過率)を変化することができるようなデバイス(例えばTFT液晶等)でできている。ここで、
図8のバリア調整を実現する電極構造例は本実施形態1における
図5と同じであるが、領域2の制御の仕方が第1および第2実施形態と異なる。本実施形態において領域2は、印加する電圧によって透過率を複数に変えることができると共に、複数の透過率の状態を高速に切換え可能となっている。
図8では、3つの状態(状態3、状態4、状態5)を持っており、その状態を切り替える例を示す。
図8では、状態3では領域2の透過率がA%となり、状態4では領域2の透過率がB%、そして状態5では領域2の透過率がC%のように、領域2は印加する電圧によって複数の透過率の状態をもつ。そして、この3つの状態を高速に切換えができるようになっている。
【0055】
そのため、
図6に示されるように、例えばTLK信号のような内部タイミング信号と同調して切り替えることとなる。第2対象位置透過率決定手段502では、水平方向での対象位置とこのTLK信号に同調して対象位置での透過率を決定する。なお、このTLK信号に同調して制御されるのは、
図8で示されるように領域2の透過率のみであり、領域1や領域0での透過率は本実施形態1や2の場合と同様にTLK信号に依存せず、領域0は透過状態(透過率100%)の領域になるように印加電圧が調整されており、領域1は遮蔽状態(透過率0%)の領域になるように印加電圧が調整されているものとする。
【0056】
3つの状態の切換えは観察者が視認できないことが望ましく、例えば120Hz〜240Hzの範囲の周波数で状態間を切り替えて、3つの状態を繰り返すものとする。第2実施形態と同様に、周期的に3つの状態を繰り返す際の1サイクル内の状態3の時間の割合、状態4の時間の割合、そして状態5の時間の割合の比(状態3、状態4、そして状態5のデューティー比)と、各状態での領域2の透過率によって、1サイクル内での平均透過率が決まり、この値が領域2の1サイクル内での透過率T3と見なすことができる。
【0057】
例えば、状態3の透過率A%、状態4の透過率がB%、状態5の透過率がC%、デューティー比が、状態3:状態4:状態5=L:N:Mであれば、平均透過率は、(式2)のようになる。
【0058】
【数2】
ここで、L=0、A=0、B=0、C=100が第2実施形態の場合の平均透過率T2と等価になる。(式2)で得られた平均透過率は領域2の透過率T3と見なすことができるので、A、B、C、L、M、Nを調整してT3を適切な値とすることで、モアレが除去できる状態、もしくは大幅に低減した状態を実現することが可能となる。
【0059】
なお、バリア構造として縦ストライプ形状をもとに説明したが、第1実施形態で説明したように斜め(スラント)バリア形状であってもよい。
【0060】
また、
図8において、領域0、1及び領域2は共に印加電圧により遮蔽率と開口率(光の透過率)を変化することができるような液晶等のデバイスでできているとしたが、領域0は常時透過状態(透過率100%)の領域になるように常時開口されている場合やほぼ透過するガラス等が配置されている場合でもよく、この場合は領域1と領域2が共に印加電圧により遮蔽率と開口率(光の透過率)を変化することができるようなデバイスでできていることとなる。
また、本実施形態では映像表示手段としてプラズマディスプレイを例にして説明したが、液晶ディスプレイやELディスプレイ等を用いてもよい。
【0061】
さらに、本実施形態では映像分離手段を映像表示手段の前面に配置する方式を例に説明したが、液晶ディスプレイの液晶パネルとバックライトの間に映像分離手段であるパララックスバリアを配置する方式を用いてもよい。また、1サイクル内の平均透過率がT3%となる部分を実現する領域2のみが液晶のように電圧をかけることで変化できるデバイスで構成されていてもよく、この場合、領域0は常時透過状態になるように開口しており、領域1は常時遮蔽状態になるように固定デバイス(マスキングされたガラスやフィルム等)が配置されることとなる。
[第4実施形態]
図1、6、9、10に第4実施形態を示す。
図9は、第4実施形態における分離手段として縦ストライプ形状バリアを用いた場合でのバリア調整を模式的に示しており、第1実施形態と同様に領域1及び領域3、4は共に印加電圧により遮蔽率と開口率(光の透過率)を変化することができるようなデバイス(例えばTFT液晶等)でできている。
【0062】
本実施形態のパララックスバリアは、領域1、3、4から構成され、2つの状態(状態6と7)の間で、開口部の中心位置が変化する。さらに本パララックスバリアは、2つの状態を高速に切換えることができる。これによりモアレの発生位置が高速に切換ることになり、モアレが除去できる状態、もしくは大幅に低減した状態を実現することが可能となる。2つの状態の切換えは観察者が視認できないことが望ましく、例えば120Hz〜240Hzの周波数で2つの状態を繰り返し切り替えるものとする。周期的に2つの状態を繰り返す際の1サイクル内の状態6の時間の割合、状態7の時間の割合の比(状態6、状態7のデューティー比)と、各状態での領域3,4の透過率によって、1サイクル内での領域3と4の平均透過率T33,T34が決まる。例えば、状態6の領域3の透過率R%で領域4の透過率100%、状態7の領域3の透過率が100%で領域4の透過率がS%、デューティー比が、状態6:状態7=U:Vであれば、平均透過率は、(式3)のようになる。
【0063】
【数3】
このように状態6と状態7との切り替えにより平均透過率を調整できることに加えて、本実施形態では、開口部の中心位置を異ならせることができるという特徴がある。
【0064】
すなわち、
図18に示すように、状態6において、領域3の中心位置の座標をX
3、領域4の中心位置の座標をX
4とした場合、開口部の中心位置X
Oは、
X
O=(X
3×R+X
4×100)/(R+100) ・・・(4)
となる。
【0065】
ここで、中心位置X
Oは等価的な開口部の中心位置である。例えば、透過率R%を50%とすると、領域3内では図中左側の50%は遮蔽し右側の50%は開口したとして変換したときの等価な開口部の中心位置となっている。
【0066】
同様に、状態7においては、
X
O=(X
3×100+X
4×S)/(100+S) ・・・(5)
となる。
【0067】
このように、第4実施形態では、開口部の中心位置をずらすことができ、これによりヘッドトラッキングなどの多彩な立体表示への対応が可能となる。
【0068】
そして、
図9のバリア調整を実現する電極構造例は
図10に示され、片側の基板には、領域1、3用電極と領域4用電極が形成される。他方の基板には、領域2、4用電極と領域3用電極が形成される。この電極構造に対して、
図11に2つの状態の印加電圧と発生する遮光部を示す。状態6では、領域1、4用電極、領域4用電極、領域3用電極には同じ電圧V1を印加し、領域1、3用電極にはV1とは異なる電圧V2を印加する。これにより、対面する基板間で異なる電圧が印加されている部分、即ち領域1と3に遮光部が発生する。状態7では、領域4用電極、領域1、3用電極、領域3用電極には同じ電圧V1を印加し、領域1、4用電極にはV1とは異なる電圧V2を印加する。これにより、対面する基板間で異なる電圧が印加されている部分、即ち領域1と4に遮光部が発生する。
【0069】
なお、領域3用電極、領域4用電極に印加する電圧をV1、V2と異なるV3として、透過率が0%と100%との間になるよう制御してもよい。
【0070】
また、状態6における領域4の透過率を100%、状態7における領域3の透過率を100%としたが、状態6における領域4の透過率X%(X>R、50<X<100)、状態7における領域3の透過率Y%(Y>S、50<Y<100)のような値でもよい。
【0071】
さらに、バリア構造として縦ストライプ形状をもとに説明したが、第1実施形態で説明したように斜め(スラント)バリア形状であってもよい。
【0072】
また、
図9において、領域1及び領域3、4は共に印加電圧により遮蔽率と開口率(光の透過率)を変化することができるような液晶等のデバイスでできているとしたが、領域1は常時遮蔽状態(透過率0%)の領域になるように固定デバイス(マスキングされたガラスやフィルム等)が配置されている場合でもよく、この場合は領域3と領域4が共に印加電圧により遮蔽率と開口率(光の透過率)を変化することができるようなデバイスでできていることとなる。
【0073】
また、本実施形態では映像表示手段としてプラズマディスプレイを例にして説明したが、液晶ディスプレイやELディスプレイ等を用いてもよい。
【0074】
さらに、本実施形態では映像分離手段を映像表示手段の前面に配置する方式を例に説明したが、液晶ディスプレイの液晶パネルとバックライトの間に映像分離手段であるパララックスバリアを配置する方式を用いてもよい。
[その他]
(1)上記実施形態において説明した第1実施形態の映像表示装置で、印加電圧により透過率を可変にすることのできる領域2の形状は、
図12で示されるような細分矩形群を特徴とする櫛型形状を取ることも可能である。この場合、画素構造やサイズ、ブラックマトリックス等に応じて適正な櫛型形状を用いることで、第1実施形態における平均開口率を変えないでモアレをより低減することが可能である。同様に、第2、第3の実施形態でも、印加電圧により透過率を可変にすることのできる領域2の形状は、
図13、
図14のような細分矩形群を特徴とする櫛型形状を取ることも可能である。
【0075】
図13では、ストライプ形状をした開口部(領域0)の両側には、矩形状をした切片が互いに一定の間隔を空けて配列されてなる細分矩形群により領域2が構成されている。
【0076】
また、同様に、第4の実施形態でも、印加電圧により透過率を可変にすることのできる領域3と4の形状は、
図15のような細分矩形群を特徴とする櫛型形状を取ることも可能である。
【0077】
なお、
図12、13、14,15における細分矩形群の代わりに、印加電圧により透過率を可変できる液晶デバイス等で表現できる複数の細分三角形や細分台形のような複雑な細分形状より構成される櫛形形状を用いることも可能である。
【0078】
(2)さらに、上記実施形態において説明した映像表示装置では、視差画像を表示する映像表示手段100は、バックライト光源を用いる液晶パネルでも自発光するPDPや有機ELパネルでもよく、視差画像の画素列を表示できる表示手段であれば適用可能である。
【0079】
(3)また、カメラ画像1枚や2つ以上の複数カメラ画像を用いて頭部位置検出した結果と組合せることも可能である。これらのヘッドトラッキングやアイトラッキングと組合せることで、バリア間ピッチやパネルとバリア間距離等の調整をダイナミックに行うことが可能となる。また、画像を用いる以外に、LED光源のような照明光を対象物体に照射して戻ってくるまでの時間TOF(Time Of Flight)を計測することで距離を測定するTOF法や、電磁力等を用いて3次元位置測定を行う有線接続された手法を用いたトラッキングをすることも可能である。
【0080】
(4)また、所定のテストパターンを常に、視聴者撮影内に含めて表示してそのテストパターン部分の大きさや画素値のモアレ変化等をもとに幾何学測量をしてトラッキングする手法を用いることも可能である。
【0081】
(5)また、位置検出する際に、(3)では人物頭部の検出を前提としたが、人物全体像であっても、瞳孔や眼領域抽出を行い、その結果を用いることでもよい。
【0082】
頭部位置に応じて複数視差画像の画素列配置を制御する際に、CPUやGPU等を用いてリアルタイム算出制御することも可能であるし、また予め用意されたLUTテーブルより選択して制御することも可能である。
【0083】
(6)第2〜第4実施形態などの、状態を高速に切り替える実施形態においては、切り替えの周波数は120Hz〜240Hzの範囲であるとして説明したが、これに限られない。
【0084】
切り替えの周波数の下限値は、観察者が視認できない程度のものであればよく、例えば、50Hzとしても構わない。
【0085】
(7)第1実施形態の
図3、
図5では、透過率T%と可変な領域2が領域1と領域0との間にあるとしているが、
図19のように、領域2を領域2a(透過率はT1%)と領域2b(透過率はT2%)とに分けて構成しても構わない。
【0086】
特に、T1<T2とすることにより、0%<T1%<T2%<100%と領域1から領域2a、領域2bを経て領域0に行くに連れて透過率を段階的にすることができ、観察者により違和感のない形でモアレを低減することに寄与できる。
【0087】
(8)また、本実施例では映像分離手段を映像表示手段の前面に配置する方式を例に説明したが、液晶ディスプレイの液晶パネルとバックライトの間に映像分離手段であるパララックスバリアを配置する方式を用いて、その開口幅を制御してもよい。また、液晶ディスプレイの液晶パネルとバックライトの間に映像分離手段であるパララックスバリアを配置するのに替えて、ストライプ形状の発光部を備える光源を用いることで、同様の効果を得ることができる。その場合、光源の発光部の形状を、液晶ディスプレイの液晶パネルとバックライトの間に入れる本発明の映像分離手段であるパララックスバリアの開口部と同じ形状を用いることでもよいし、光源からの光量が一定となる領域と、光源からの光量が可変となる領域とを組み合わせることでも同様の効果を得ることができる。
[補足]
本実施形態は、以下の態様を含むものである。
【0088】
(A)実施形態に係る映像表示装置は、複数の視差画像を合成して表示する映像表示手段と、光を透過する領域、光を通さない領域および両領域の間に介在する領域を含み、表示された各視差画像を光学的に分離する映像分離手段と、前記介在する領域における光の透過率を制御する制御手段と、を備える。
【0089】
(B)(A)において、前記制御手段は、前記介在する領域において、第1の透過率で光を透過させる第1状態と、前記第1の透過率とは異なる第2の透過率で光を透過させる第2状態とを高速に切り換えることにより光の透過率を制御するとしても構わない。
【0090】
この構成によれば、例えば、上記切り換えをを観察者が視認できない程度の速度で繰り返すことで、モアレを除去もしくは大幅に低減することができる。
【0091】
(C)(B)において、前記第1の透過率は0%、前記第2の透過率は100%であって、前記制御手段の切り換えは、第1状態と第2状態とを交互に繰り返し切り換えることにより行われるとしても構わない。
【0092】
(D)(A)において、前記介在する領域は、前記光を透過する領域の一方側に存する第1領域と、前記光を透過する領域の他方側に存する第2領域とを含み、前記制御手段は、前記第1領域の透過率をR%(0≦R<100)とし前記第2領域の透過率を100%とする第1状態と、前記第1領域の透過率を100%とし前記第2領域の透過率をS%(0≦S<100)とする第2状態との両状態を高速に切り換えることにより光の透過率を制御するとしても構わない。
【0093】
この構成によれば、第1状態と第2状態とでは、光を透過する領域としての開口部の中心位置を等価的に変化させることができ、これによりモアレを除去もしくは大幅に低減することができる。
【0094】
(E)(D)において、前記映像分離手段の開口部は、ストライプ形状であって、前記第1領域は、前記開口部の幅方向における一方側の端部に位置する切片群により構成され、当該切片群は前記幅方向とは直交する方向に向かって互いに間隔を空けて配列されてなる複数の切片により構成され、前記第2領域は、前記開口部の幅方向における一方側の端部に位置する切片群により構成され、当該切片群は前記幅方向とは直交する方向に向かって互いに間隔を空けて配列されてなる複数の切片により構成されるとしても構わない。
【0095】
(F)(A)において、前記映像分離手段の開口部は、ストライプ形状であって、前記介在する領域は、前記開口部の幅方向における一方側の端部に位置する切片群と他方側の端部に位置する切片群とにより構成され、両切片群は、前記幅方向とは直交する方向に向かって互いに間隔を空けて配列されてなる複数の切片によりそれぞれ構成されるとしても構わない。
【0096】
(G)(A)において、前記映像分離手段の開口部は、斜めストライプ形状であって、前記介在する領域は、前記開口部の幅方向における両端部に隣接する各位置に、斜めストライプ状に構成されてなるとしても構わない。
【0097】
(H)実施形態に係る映像表示方法は、複数の視差画像を合成して映像表示手段に表示させる表示ステップと、光を透過する領域、光を通さない領域および両領域の間に介在する領域を含む映像分離手段に、表示された各視差画像を光学的に分離させる映像分離ステップと、前記介在する領域における光の透過率を制御する制御ステップと、を含む。