特許第6018058号(P6018058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018058
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】体内水分計及びその作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/05 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   A61B5/05 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-522741(P2013-522741)
(86)(22)【出願日】2012年6月22日
(86)【国際出願番号】JP2012004062
(87)【国際公開番号】WO2013001766
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-144519(P2011-144519)
(32)【優先日】2011年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】小山 美雪
(72)【発明者】
【氏名】吉野 敬亮
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−034946(JP,A)
【文献】 特開2008−167933(JP,A)
【文献】 特開2010−148971(JP,A)
【文献】 特開2002−045346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 5/05
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の水分量を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された今回の水分量を表示する表示手段と、
前記今回の水分量に基づいて、前記被検者が脱水状態か非脱水状態かを判定する判定手段と、
前記今回の水分量と該今回の水分量に対する前記判定手段の判定結果を測定情報として保持する保持手段と、
前記保持手段に保持されている前回の測定情報から得られる前回の水分量および脱水状態か否かの前回の判定結果と、前記今回の水分量および前記判定手段による今回の判定結果とに基づいて、前記表示手段の表示形態を変更する変更手段と、を備えることを特徴とする体内水分計。
【請求項2】
前記変更手段は、
前記今回の判定結果が非脱水状態である第1の状態、
前記今回の判定結果が脱水状態であって前記前回の判定結果が非脱水状態であるか、前記今回の判定結果と前記前回の判定結果が脱水状態であって前記前回の水分量より前記今回の水分量の方が多い第の状態、
前記今回の判定結果と前記前回の判定結果が脱水状態であって前記今回の水分量が前記前回の水分量以下である第3の状態、
のいずれの状態であるかにしたがって前記表示形態を異ならせることを特徴とする請求項1に記載の体内水分計。
【請求項3】
前記変更手段は、前記第1の状態における表示形態を、前記前回の水分量と前記今回の水分量との差に基づいてさらに異ならせることを特徴とする請求項2に記載の体内水分計。
【請求項4】
前記表示手段は、前記今回の水分量と前記前回の水分量を同時に表示する、または操作入力に応じて交互に切り換えて表示することを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の体内水分計。
【請求項5】
前記保持手段に保持された測定情報の有効性を、該測定情報が保持されてからの経過時間に基づいて判断する判断手段を更に備え、
前記変更手段は、前記判断手段により前記前回の測定情報が無効と判定された場合は、前記今回の水分量、または、前記今回の判定結果を用いて前記表示手段による表示形態を判断することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の体内水分計。
【請求項6】
前記判断手段は、前記経過時間を閾値と比較することにより有効性を判定し、前記閾値は、前記前回の水分量または前記前回の判定結果の少なくともいずれかに基づいて変更されることを特徴とする請求項に記載の体内水分計。
【請求項7】
体内水分計の作動方法であって、
測定手段が、被検者の水分量を測定する測定工程と、
表示手段が、前記測定工程で測定された今回の水分量を表示手段に表示する表示工程と、
判定手段が、前記今回の水分量に基づいて、前記被検者が脱水状態か非脱水状態かを判定する判定工程と、
保持手段が、前記今回の水分量と該今回の水分量に対する前記判定工程の判定結果を測定情報としてメモリに保持する保持工程と、
変更手段が、前記メモリに保持されている前回の測定情報から得られる前回の水分量および脱水状態か否かの前回の判定結果と、前記今回の水分量および前記判定工程による今回の判定結果とに基づいて、前記表示工程による前記表示手段の表示形態を変更する変更工程と、を有することを特徴とする体内水分計の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の生体の水分を測定する体内水分計及びその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の生体の水分を測定することは重要である。生体における脱水症状は、生体中の水分が減少する病態であり、日常しばしば発現し、特に発汗や体温上昇により多くの水分が体内から体外に排出される運動時や気温の高い時に多く発現する症状である。特に、高齢者においては、生体の水分保持能力自体が低下していることが多いために、高齢者は一般健常者と比較して脱水症状を起こし易いと言われている。
【0003】
一般的に、高齢者になると、水をためる筋肉が減少したり、腎臓機能の低下により尿量が増大したり、感覚鈍化により口の渇きに気づきにくくなったり、細胞内で必要とされる水分が少なくなったりする。この脱水症状を放置すると、脱水症状が引き金となって深刻な症状に進行してしまうことがある。また、同じような脱水症状は、乳幼児でも見られる。乳幼児はもともと水分量が多いが、自ら水分補給を訴えることができず、保護者が気づくのが遅れることから脱水症状を起こすことがある。
【0004】
通常、生体中の水分が体重の3%以上失われた時点で体温調整の障害が起こると言われており、体温調整の障害は体温の上昇を引き起こし、体温の上昇は更なる生体中の水分の減少を引き起こすという悪循環に陥り、遂には熱中症と称される病態にまで至ってしまう。熱中症には、熱痙攣、熱疲労、熱射病等の病態があり、時には全身の臓器障害が起こることもあり、脱水症状を的確に把握することで、熱中症に至る危険を未然に回避できるようにすることが望まれる。
【0005】
脱水症状を把握する装置としては、両手でハンドルを保持するような装置で人体インピータンスを測定し、その測定結果から水分量を算出するものが知られている(特許文献1)。また、肌にセンサを押し当てて、簡易に肌水分を測定する装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−318845号公報
【特許文献2】特開2003−169788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の体内水分計は、被検者自身が両手でハンドルを把持することが要求されるため、被検者以外の他人が容易に体内水分量を測定するという用途には向いていない。すなわち、特許文献1に記載された体内水分計の構造では、乳幼児や意識障害に陥った被検者の体内水分量を測定することが困難である。
【0008】
これに対して、特許文献2に記載されたような肌水分計は、いわゆる肌の潤いをチェックすることを目的としており、「乾燥肌」における水分量と「脱水症」における体内水分量では測定される物理量のレベルが全く異なっている。従って、外気の湿度に影響される肌の潤いの程度をみる肌水分計を上述したような脱水症を見極めるための体内水分計として利用することはできない。
【0009】
これに対して、上記の様に体表から体内水分量を測定しようとする場合には、外気の湿度の影響を受けにくい部位にての測定が必要で、口中または腋下の皮膚を介して測定を行うことが好ましい。特に、検査者が被検者の体内水分を測定しようとした場合には、腋下の皮膚を介した測定が現実的であると考えられる。このように腋下での水分量測定を実現しようとした場合、体内水分計の大きさや重量はより厳しく制限され、例えば特許文献1に記載されたような構造の体内水分計は利用できない。
【0010】
体内水分計の小型化により、測定結果を表示するための表示部も小型化される。水分量は「%」や「Kg」を単位として表示されるが、その数値は体温などと違って、一般の使用者にはなじみが薄く、測定結果の数値を見ただけでは、被検者がどのような状態なのか(例えば、脱水状態なのか)、どのような処置が必要なのかなどを、直感的には把握しにくい。特許文献1では、過去の水分量の測定結果を、平均的な水分量とともにグラフ表示して、体内水分量の変化を認識可能にしている。しかしながら、そのようなグラフ表示を行うには表示部にある程度の大きさが必要になり、小型化が要求される体内水分計の表示への適用は困難である。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被検者の体内水分量の状態を直感的に、且つ、容易に把握できる体内水分計及びその表示制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の一態様による体内水分計は、以下の構成を備える。すなわち、
被検者の水分量を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された今回の水分量を表示する表示手段と、
前記今回の水分量に基づいて、前記被検者が脱水状態か非脱水状態かを判定する判定手段と、
前記今回の水分量と該今回の水分量に対する前記判定手段の判定結果を測定情報として保持する保持手段と、
前記保持手段に保持されている前回の測定情報から得られる前回の水分量および脱水状態か否かの前回の判定結果と、前記今回の水分量および前記判定手段による今回の判定結果とに基づいて、前記表示手段の表示形態を変更する変更手段と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被検者の体内水分量の状態を直感的に、且つ、容易に把握することができる。
【0014】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】実施形態による体内水分計の外観を示す図である。
図2】実施形態による体内水分計の機能構成を示すブロック図である。
図3】実施形態による体内水分計の測定回路を説明するブロック図である。
図4A】実施形態による体内水分計の動作を説明するフローチャートである。
図4B】実施形態による体内水分計の動作を説明するフローチャートである。
図5】メモリによる測定情報の保持を説明する図である。
図6A】測定結果に応じた表示形態の選択を説明する図である。
図6B】測定結果に応じた表示形態の選択を説明する図である。
図6C】測定結果に応じた表示形態の選択を説明する図である。
図7】前回の測定結果が無効である場合、または、前回の測定結果が存在しない場合の表示形態の選択を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0017】
図1は、実施形態による体内水分計100の外観の一例を示す図である。体内水分計100は、被検者の皮膚に端部を接触させ、端部において供給した電気信号に応じた物理量を検出することで被検者の体内の水分量を検出する。本実施形態の体内水分計100では、被検者の腋の下に端部を接触させ、物理量として被検者の静電容量を測定することにより、腋下の皮膚の湿り具合を検出し、体内の水分量を推定、検出する。なお、体内水分量を測定するために検出する物理量は静電容量に限られるものではなく、例えば、定電圧もしくは定電流を被検者に供給して測定されるインピーダンスを用いることもできる。
【0018】
体内水分計100において、本体部101には、各種ユーザインターフェースが配置されるとともに、体内水分量を測定するための電子回路が収納される。ユーザインターフェースとしては、電源スイッチ102及び表示部103が備わっている。電源スイッチ102がオンされると後述の電源部211(図2)から体内水分計100の各部への電源供給が開始され、体内水分計100は動作状態となる。表示部103には、今回の水分量の測定結果1031が前回の水分量の測定結果1032とともに表示される。また、表示部103では、その表示形態が今回の測定結果と今回の測定結果とに基づいて変更される。本実施形態では、表示部103における背景色が変更される。さらに、表示部103において、電池表示部1033は、電池(図2の電源部211)の残量をユーザに報知する。また、無効な測定結果が得られた場合や測定エラーが検出された場合には、表示部103が“E”を表示してその旨をユーザに報知する。
【0019】
本体部101には、センサ部110が矢印1101a、1101bの方向にスライド可能に設けられている。センサ部110は、センサヘッド111の皮膚への密着を保証する上での押し圧を確保するため、不図示のばねにより、矢印1101aの方向へ付勢されており(たとえば200g程度の付勢力)、センサヘッド111が肌に押し当てられてセンサ部110が矢印1101bの方向へ所定量(例えば1mm〜10mm、本実施形態では5mm)移動させることで測定をスタートするようになっている。例えば、ユーザが電源スイッチ102をオンして体内水分計100を動作状態とし、センサヘッド111を被検者の肌に所定時間以上(例えば2秒以上)押し当てたことが検知されると、体内水分量の測定が開始されるようになっている。例えば、ユーザが電源スイッチ102をオンして体内水分計100を動作状態とし、センサヘッド111を被検者の肌に所定負荷(例えば100gf〜300gf、さらに好ましくは150gf〜250gf、本実施形態では200gf)押し当てたことが検知されると、体内水分量の測定が開始されるようになっている。この仕組みにより、測定時におけるセンサヘッド111の肌への密着の程度を一定にしている。
【0020】
なお、センサ部110の先端に装着されたセンサヘッド111の被検者との接触面には、電極が敷設され、電極を覆うように保護膜が設けられている。センサヘッド111の接触面は平面形状でもよいし、凸状の曲面形状でもよい。そのような接触面の形状の例としては、球面(例えば半径15mmの球面)の一部とすることが挙げられる。
【0021】
図2は、実施形態の体内水分計100の機能構成例を示すブロック図である。図2において、制御部201は、CPU202、メモリ203を有し、CPU202はメモリ203に格納されているプログラムを実行することにより、体内水分計100における種々の制御を実行する。例えば、CPU202は、図4A,4Bのフローチャートにより後述する表示部103の表示制御、ブザー222やLEDランプ223の駆動制御、体内水分量の測定(本実施形態では静電容量測定)などを実行する。メモリ203は、不揮発性メモリと揮発性メモリを含み、不揮発性メモリはプログラムメモリとして、揮発性メモリはCPU202の作業メモリとして利用される。
【0022】
電源部211は、交換が可能なバッテリー、或いは充電が可能なバッテリーを有し、体内水分計100の各部へ電源を供給する。電圧レギュレータ212は、制御部201等へ一定電圧(例えば、2.3V)を供給する。電池残量検出部213は、電源部211から供給される電圧値に基づいて、電池の残量を検出し、その検出結果を制御部201に通知する。制御部201は、電池残量検出部213からの電池残量検出信号に基づいて、電池表示部1033の表示を制御する。
【0023】
電源スイッチ102が押下されると、各部への電源部211からの電力供給が開始される。そして、制御部201は、電源スイッチ102のユーザによる押下が1秒以上継続したことを検出すると、電源部211からの各部への電源供給を維持させ、体内水分計100を動作状態とする。上述したように、測定スイッチ214は、センサ部110が矢印1101bの方向へ所定量以上押されるとオン状態になる。制御部201は、測定スイッチ214のオン状態が所定時間(例えば2秒)継続すると、水分量の測定を開始する。なお、電源部211の消耗を防止するために、体内水分計100が動作状態になってから5分経過しても測定開始とならない場合は、制御部201は自動的に体内水分計100を電源オフの状態へ移行する。
【0024】
測定回路221は、センサヘッド111と接続され、静電容量を測定する。図3は、測定回路221の構成例を示す図である。オペアンプ301,302、抵抗303,304、被検体容量310によりCR発振回路が形成されている。被検体容量310によって出力信号305の発振周波数が変化するので、制御部201は、出力信号305の周波数を測定することにより、被検体容量310を推定する。なお、本実施形態のセンサヘッド111は、例えば、2つのくし型電極が、それぞれのくし歯が互い違いに並ぶように配置されているものとするが、これに限られるものではない。
【0025】
図2に戻り、表示部103は、図1で説明したような表示を制御部201の制御下で行なう。ブザー222は、センサ部110の押下による測定の開始や、体内水分量の測定が完了した際に鳴動し、測定の開始や完了をユーザに通知する。LEDランプ223もブザー222と同様の通知を行う。すなわち、LEDランプ223は、センサ部110の押下による測定の開始や、体内水分量の測定が完了した際に点灯し、測定の開始や完了をユーザに通知する。計時部224は、電源がオフの状態であっても電源部211からの電源供給を受けて動作し、動作状態においては時刻を制御部201に通知する。
【0026】
以上のような構成を備えた、本実施形態の体内水分計100の動作を、図4A,4Bのフローチャートを参照して説明する。本実施形態の体内水分計100では、測定された体内水分量と前回に測定された体内水分量とを参照することにより、表示部103の背景色が変更され、測定された体内水分量からユーザが適切な判断、処置を行なうことを支援する。
【0027】
ステップS401において、制御部201は、測定開始の指示を検出する。本例では、測定スイッチ214の状態を監視し、測定スイッチ214のオン状態が2秒以上継続した場合に測定開始の指示を検出したと判定する。制御部201は、測定開始の指示を検出すると、ステップS402において、測定回路221からの発振信号の周波数を測定することにより被検者の体内水分量を算出する。そして、ステップS403において、制御部201は、ステップS402で推定された体内水分量が所定の閾値を超えるか否かに基づいて被検者が脱水状態か否かを判定する。この場合の閾値とは、例えば、水を100%、空気を0%とした時の25%に相当する値が望ましい。
【0028】
ステップS404において、制御部201は、メモリ203から前回の測定情報を取得し、前回の測定情報の有効性を判定する。メモリ203には、例えば、少なくとも直前に実行された体内水分量の測定結果(前回の測定結果)が、図5に示すようなデータ構成の測定情報として格納されている。図5において、測定値501は、前回の測定時にステップS402で測定された体内水分量である。判定結果502は、前回の測定時にステップS403で得られた、脱水状態か非脱水状態かを示す情報である。測定時刻503は、前回の測定において計時部224から通知された時刻を示す情報である。測定時刻503としては、例えば、ステップS402において測定を実行した時点で計時部224から通知されている時刻とすることができる。
【0029】
制御部201は、測定情報に含まれる測定時刻503と計時部224から通知されている現在の時刻とから、前回の測定からの経過時間を取得し、この経過時間に基づいて測定情報が有効か否かを判断する。たとえば、制御部201は、経過時間が閾値(例えば、2週間)を超えていなければ、当該測定情報は有効であると判断する。実際に、重篤な脱水状態に陥った場合、10日後の脱水状態を捉えることがある。また、半月(2週間)以上、測定されない場合は、水分量の測定そのものが行われていないと判断してもよいであろう。したがって、本実施形態では、前回の測定からの経過時間が2週間以上の場合には、前回の測定値を無効と判定する。なお、例えば、体内水分計100を初めて使用する場合など、前回の測定値が記憶されていない場合も、前回の測定値が無効であると判定されるものとする。
【0030】
また、ステップS404の有効性の判定に、下限の閾値を定め、前回の測定からの経過時間がこの下限の閾値を超えていない場合には前回の測定値を無効と判定するようにしてもよい。たとえば、軽度な脱水状態に陥った場合は、水分補給などを行った後、2,3時間で脱水を解消できるが、重篤な脱水状態に陥った場合、輸液をしても2,3時間では脱水は解消されない。そのため、下限の閾値は、脱水が解消される可能性のある2時間以上、さらに好ましくは重篤な脱水状態を考慮して6時間以上であることが望ましい。また、例えば水分量が15%以下の重篤な脱水状態の場合には下限の閾値を6時間、15〜30%の軽度の脱水状態の場合には下限の閾値を2時間というように、前回の測定値、あるいは前回の状態判定に基づいて下限値を切り替えてもよい。同様に、上限の閾値についても、前回の測定値、あるいは前回の状態判定に基づいて変更するようにしてもよい。
【0031】
測定情報が無効である(或いは、前回の測定結果が存在しない)と判断されると、処理はステップS405からステップS406へ進む。ステップS406において、制御部201は、今回の測定情報のみを用いて表示部103の表示形態を設定する。例えば、今回の体内水分量の測定の結果、脱水状態であると判断された場合は表示部103の背景色を赤に、非脱水状態であると判断された場合は表示部103の背景色を青に設定する。なお、前回の測定値が有効でないことを、前回の水分量の測定結果1032の表示を「−−.−」のように、所定の表示として使用者に通知するようにしてもよい。
【0032】
また、表示形態の設定はこのような例に限定されるものではなく、例えば、非脱水状態であっても、脱水状態に近い場合、すなわち体内水分量が所定の閾値を下回る場合には、背景色を黄に設定するなど、種々の変形が可能である。この場合の閾値とは、水を100%、空気を0%とした時の25%〜35%に相当する値が望ましい。また、脱水状態と判定された場合についても、測定された水分量に基づいて軽度な状態であれば黄色、重篤な状態であれば赤というように表示の背景色を切り替えてもよい。このような表示形態の切り替えの一例を図7に示す。図7の例では、脱水状態か否かの判定は水分量が20%以上か否かでなされるが、水分量が15%以上30%未満の場合には黄色の背景色が選択されている。すなわち、
・水分量が15%未満(重篤な脱水状態)→背景色を赤に設定、
・水分量が15%以上30%未満(軽度の脱水状態または脱水状態に近い状態)→背景色を黄に設定、
・水分量が30%以上(良好な非脱水状態)→背景色を青に設定、としている。
【0033】
他方、測定情報が有効であれば、処理はステップS405からステップS407へ進む。ステップS407〜S412において、制御部201は、今回の測定結果と前回の測定結果に基づいて、表示部103の表示形態(本実施形態では、表示部103の背景色)を設定する。
【0034】
ステップS407において、制御部201は、今回の測定結果が非脱水状態であるか否かを判定する。今回の測定結果が非脱水状態の場合、処理はステップS410へ進み、制御部201は、被検者が非脱水状態ではない良好な状態(第1の状態)にあると判断し、表示部103の背景色を青に設定する。この場合、本例では、前回の測定結果により示される状態(脱水状態か否か)は問わない。
【0035】
一方、ステップS407において今回の測定結果が脱水状態と判定された場合は、処理はステップS408に進む。ステップS408において、制御部201は、ステップS404でメモリ203から読み出した測定情報から、前回の測定による判定結果502が脱水状態か非脱水状態かを判定する。前回の測定による判定結果502が非脱水状態であれば、処理はステップS411へ進む。ステップS411において、制御部201は、被検者が脱水状態にあることを警告するべき状態(第2の状態)にあると判断し、表示部103の背景色を赤に設定する。
【0036】
ステップS408において、前回の判定結果502が脱水状態を示す場合、処理はステップS409へ進む。ステップS409において、制御部201は、ステップS404でメモリ203から読み出した測定情報から前回の測定値501を読み出し、これを今回の測定結果である水分量と比較する。前回の水分量よりも今回の水分量の方が大きければ、被検者の水分量に関して改善の方向にあるが依然として脱水状態にあるため、被検者が脱水状態にあることを警告するべき第2の状態にある判断する。よって、処理は、ステップS409からステップS411へ進み、上述のように表示部103の背景色を赤に設定する。
【0037】
ステップS409において、今回の水分量が前回の水分量以下の場合、処理はステップS412に進む。ステップS412において制御部201は、被検者は前回に引き続き脱水状態にあり、且つ、その症状が悪化している状態(第3の状態)にあると判断し、表示部103の背景を赤の点滅状態に設定する。
【0038】
以上説明したステップS407〜S412による表示部103の表示形態の設定を図6Aに示す。なお、図6A図6Cにおいて、「前」は前回の測定値(水分量)を、「今」は今回の測定値(水分量)を示す。すなわち、
・今回が非脱水状態と判定された場合→第1の状態→青い背景色
・前回が非脱水状態で今回が脱水状態と判定された場合→第2の状態→赤い背景色
・前回も今回も脱水状態であるが、体内水分量が上昇している場合→第2の状態→赤い背景色
・前回も今回も脱水状態であり、体内水分量が減少している場合→第3の状態→背景色は赤の点滅、
となる。
【0039】
以上のようにして、表示形態が設定されると、ステップS413において、制御部201は、ステップS402で得られた測定値(体内水分量)、ステップS403で得られた判定結果、ステップS402で測定値を取得した時の時刻で、メモリ203の測定情報を上書きする。なお、測定情報の保持の仕方は、このような上書きに限られるものではない。例えば、所定回数分の測定情報を保持できるようにしてもよい。そして、ステップS414において、制御部201は、ステップS406、S410〜S412のいずれかにおいて設定された表示形態を用いて、今回の測定値(水分量)と前回の測定値(水分量)を表示部103に表示する。例えば、制御部201は、設定された背景色を表示部103に表示するとともに、今回の測定値(水分量)と前回の測定値(水分量)を図1に示すように表示する。ただし、ステップS405で前回の測定情報が無効であると判定された場合には、前回の測定値の表示は行わない。
【0040】
また、図1には前回の測定値と今回の測定値を同時に表示部103に表示する例を示したが、これに限られるものではない。例えば、前回の測定値と今回の測定値を交互に表示するようにしてもよい。その際、表示の切り替えは自動的に所定の間隔で行われてもよいし、例えば、電源スイッチ102を押すといった所定の操作入力のたびに表示が切り替わるようにしてもよい。
【0041】
なお、上述した表示形態の設定(図6A)は一例であり、これに限られるものではない。例えば、図6B図6Cに示されるような表示形態の設定を行うようにしてもよい。なお、表中の[前−今]は、前回の測定値(水分量)から今回の測定値(水分量)を差し引いた値を示す。
【0042】
図6Bでは、第1の状態を、前回と今回の測定値(水分量)の差に基づいてさらに分割している。すなわち、前回の測定値から今回の測定値を差し引いた値が閾値Thより小さければ、水分量は前回に比べて増加しているか等しい、或いは、減少してはいるがその減少量は閾値Thより小さいので、水分量が継続して安定した良好な状態にあるとして背景色を青に設定する。他方、前回の測定値から今回の測定値を差し引いた値が閾値Th以上の場合は、水分量の減少量が閾値Th以上に達し、警戒を要する減少傾向にあるとして背景色を黄に設定する。或いは、今回の水分量が所定値以下の場合には、脱水状態へ向かっている可能性があるとして、背景色が黄に設定されるようにしてもよい。以上の処理は、ステップS410において、今回の測定情報と前回の測定情報を参照することで実現できる。また、第2の状態において、前回が非脱水状態であった場合は、脱水状態になったばかりであるとして、背景色を黄の点滅としている。このような設定は、ステップS411において実行され得る。
【0043】
また、図6Cでは、第1の状態において、前回の判定結果502を参照して、前回から継続して非脱水状態なのか、前回は脱水状態であったが今回は非脱水状態になったのかを識別できるようにしている。すなわち、第1の状態において、測定情報の判定結果502が非脱水状態を示す場合は表示背景色が青に、測定情報の判定結果502が脱水状態を示す場合は表示背景色が黄に、設定される。
【0044】
また、今回の水分量の測定値が極めて小さい場合には、緊急的な対処が必要であるとして、前回の測定情報の内容に関わらず赤の点滅とするようにしてもよい。また、表示形態の変更に加えて、第1から第3の状態のそれぞれに対応したブザー222の鳴動やLEDランプ223の点灯を行なってもよい。
【0045】
また、メモリ203に保持される測定情報は判定結果502を保持するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、メモリ203から読み出した測定情報の測定値501から脱水状態か否かを判定して判定結果502を生成するように構成すれば、メモリ203に保持される測定情報において判定結果502は不要となる。
【0046】
なお、上記実施形態では、表示形態として表示部の背景色を設定したがこれに限られるものではない。例えば、設定される表示形態として、背景色ではなく、数字を表示する部分(7セグメント表示部)の色を変更するようにしてもよい。或いは、所定のマーク、アニメーションを表示するようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、前回の測定情報の有効性を判定するために、前回の測定時刻を記憶して、現在時刻と比較したが、これに限られるものではない。たとえば、測定値を取得したタイミングでタイマを起動し、このタイマがタイムアップしていた場合には前回の測定情報が無効であると判断するようにしてもよい。
【0048】
以上のように、上記実施形態の体内水分計によれば、被検者の体内水分量の状態を容易に把握できる。
【0049】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【0050】
本願は、2011年6月29日提出の日本国特許出願特願2011−144519を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。

図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7