(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018060
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】照光式手術器具
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20161020BHJP
A61B 90/30 20160101ALI20161020BHJP
【FI】
A61F9/007 130E
A61F9/007 200Z
A61B90/30
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-524150(P2013-524150)
(86)(22)【出願日】2011年8月8日
(65)【公表番号】特表2013-534157(P2013-534157A)
(43)【公表日】2013年9月2日
(86)【国際出願番号】US2011046942
(87)【国際公開番号】WO2012021451
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年7月16日
(31)【優先権主張番号】61/371,882
(32)【優先日】2010年8月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508185074
【氏名又は名称】アルコン リサーチ, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100133008
【弁理士】
【氏名又は名称】谷光 正晴
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ シャラー
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2004/002337(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0056278(US,A1)
【文献】
特開2000−245740(JP,A)
【文献】
特開2001−079010(JP,A)
【文献】
特開2009−148550(JP,A)
【文献】
特表2009−519766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 90/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照光式手術器具の製造方法であって、
器具本体の遠位端に位置するカニューレの少なくとも一部を隣接して覆うように光スリーブを射出成形することを含み、
前記光スリーブは、製造中に、前記カニューレを射出成形のためのインサートとして用いて射出成形される、製造方法。
【請求項2】
前記光スリーブが、前記カニューレを隣接して覆うように射出成形される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記光スリーブが、前記照光式手術器具の長手方向軸線に沿った方向に照光するように方向付けられて射出成形される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
光源に結合するための結合部を前記光スリーブの近位端に設けることを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記照光式手術器具が、前記カニューレの遠位端に配置された切除部を有する硝子体手術プローブである、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝子体手術プローブ又は他の照光式眼科用手術器具のような照光式手術器具、より詳細には、器具の作業端、例えば硝子体手術プローブの切除部において特定の領域に亘り照光するように設計されている成形された光学的光スリーブを有する照光式手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
解剖学上、目は、前方区分及び後方区分といった、2つの別個の部分に分離される。前方区分は、レンズを含み、角膜の最も外側の層(角膜内皮)から水晶体嚢の後方へと延在する。後方区分は、水晶体嚢の後方の目の部分を含む。後方区分は、前方硝子面から、硝子体の後方硝子面が直接接触する網膜へと、延在する。後方区分は、前方区分より非常に大きい。
【0003】
後方区分は、透明且つ無色で、ゲルのような物質である、硝子体を有する。硝子体は、目の体積の3分の2を占め、生まれる前から目に形態及び形状を与える。それは、1%のコラーゲンとヒアルロン酸ナトリウム及び99%の水から構成される。硝子体の前方境界は前方硝子面であり、後方水晶体嚢に接触している一方で、後方硝子面は、その後方境界を形成しており、網膜と接触している。硝子体は、房水のように自由に流動せず、正常な解剖学的付着部(normal anatomic attachment sites)を有する。これらの部分の1つは、硝子体基部であり、鋸状縁を覆う3mmから4mmの幅の帯である。視神経頭、黄斑及び血管アーケードも付着部位である。硝子体の主要な機能は、所定の位置に網膜を保持すること、眼球の完全性と形状とを維持すること、運動による衝撃を吸収すること、及び、レンズ後方を支持することである。房水とは対照的に、硝子体は連続的に交換されない。硝子体は、老化の過程でシネレシスとして公知な、より流動的なものとなる。シネレシスは、硝子体を収縮させ、その正常な付着部に圧力又はけん引力を生じさせる。十分なけん引力が負荷された場合、硝子体は、それ自体をその網膜の付着部から引張り、網膜裂傷又は網膜裂孔を生じさせ得る。
【0004】
硝子体網膜手術と呼ばれる様々な外科手術は、概して目の後方区分において行われる。硝子体網膜手術は、後方区分の多くの深刻な状態を治療するのに適している。硝子体網膜手術は、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性網膜症と糖尿病性硝子体出血、黄斑円孔、網膜剥離、網膜上膜、CMV網膜炎及び多くの他の眼疾患のような状態を治療する。
【0005】
外科医は、後方区分の鮮明な像を提供するように設計された顕微鏡及び特別なレンズで硝子体網膜手術を行う。わずか1ミリメートル又はその近傍の長さのいくつかの小さな切開部が毛様体扁平部における強膜に形成される。外科医は、目の内側、手術中に目の形状を維持するための注入ライン、及び、硝子体を切除し取り除くための器具(目の中に挿入される切除端を有する硝子体手術プローブのような器具。硝子体手術プローブは目の中に挿入される端部において切除機構を備えた小さなゲージ針又はカニューレを有する)を照光するため、切開部を通して光ファイバー光源のような超微細手術用具を挿入する。
【0006】
こうした外科手術の間、目の内側の適した照光が重要となる。概して、照光するために細い光ファイバーが目の中へと挿入される。メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ又は水銀灯のような光源が、光ファイバーによって目の中へと運ばれる光を生じさせるためによく用いられる。光は、様々な光学的要素(概してレンズ、鏡及び減衰器)を通過し、目の中へと光を運ぶ光ファイバーで送り出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
硝子体手術中に必要な切開部の数を減らし、且つ手術箇所への光の伝播性を向上させるため、光源(概して1又は複数の光ファイバー)を硝子体手術プローブと統合する試みがなされてきた。これらの試みは、硝子体手術プローブの小さな径のため困難だった。非常に小さな切開部を通して目の中へと挿入できるように、硝子体手術プローブの切除端の径を可能な限り小さくすると好適である。
【0008】
しかしながら、従来、多くの細い径のファイバーから構成される照光の設計は、硬い機械的部分の内部及び外部に挿入され、又は、手術器具のチューブ部品に接着されていた。光ファイバーの可能な梱包密度は、限られており、少なくともいくつかのその損傷なく、特性及び生産効率を落とさず、細い光ファイバーを扱うのは困難である。更に光ファイバーは、手術器具の組立前に形成されなければならなかった。更に、概してホウケイ酸塩ガラスである光ファイバーの端部は、研がれ又は磨かれなければならなく、製造中に埃及びバリを生じさせる。従って、製造は、時間を浪費し、高価なものとなっていた。
【0009】
例えば、1つの先行技術に係る照光装置は、硝子体手術プローブ周りに配置された光ファイバーのリング又は他の眼科用器具を具備し、且つ、スリーブによって所定の位置に保持されている。この照光式硝子体手術スリーブは、ハブ領域へと供給され次いで環状パターンで離散した小さな径の光ファイバーの束から構成される。照光式硝子体手術スリーブは、硝子体手術プローブ又は手術器具が挿入される独立型の装置となるように設計される。従って、その照光式硝子体手術スリーブは、2つの金属製又はプラスチック製の円筒形カニューレ間で光ファイバーの配列を挟み込むことによってそれ自体の構造的強度を有しなければならない。手術器具及びスリーブの全体の径を可能な限り小さくすることが好適であるため、光ファイバーを収納するためのかなり小さな断面積が残される。従って、かなり小さな光が目の中へと送られる。
【0010】
別の場合において、1つのファイバーが硝子体手術針のような手術器具のカニューレに取付けられ、プラスチックスリーブで所定の位置に保持されてもよい。例えば、シナジェティクスインコーポレイテッドは、プラスチックスリーブで所定の位置に保持された1つの光ファイバーを備える25ゲージ(呼び外径0.5144mm)の硝子体手術針を製造している。次いでプラスチックスリーブは、目の中へと挿入された20ゲージ(呼び外径0.9081mm)のカニューレ内へと設置されることができる。25ゲージの硝子体手術針とプラスチックスリーブ(概して0.0254mm又は0.0508mmの厚さ)の内面との間のかなり小さな断面積が可能である。更に、より大きな切開部が、プラスチックスリーブが設置されるべき20ゲージのカニューレを収容するために形成されなければならない。今日、23ゲージ(呼び外径0.6414mm)又はより小さな径のプローブを収容するために切開部のサイズを小さく維持することが好適である。十分な光を目に運ぶことができる一方でこれらのより小さな切開部の寸法に対応する眼科手術器具のための改良された照光装置が求められている。
【0011】
上述した硝子体手術プローブに課される同等のサイズ制限は、他の眼科手術器具の実現可能なサイズも制限する。例えば、はさみ、フォーセップ、吸引プローブ、網膜ピック、剥離スパチュラ及び様々なカニューレ等も目的とされた照光から益を得る。これらの手術器具は、手術中に強膜を通して挿入された小さなゲージのカニューレを通して設置されるように設計される。改良された照光式硝子体手術プローブを設計するために用いられた同等の原理は、これらの他の手術器具のために目的とされた照光を提供するためにも用いられ得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る1つの実施形態は、カニューレと、そのカニューレの少なくとも一部を隣接して覆う射出成形された光スリーブと、を具備する照光式手術器具である。手術器具は、カニューレの遠位端に配置された切除部を有する硝子体手術プローブとなり得る。光スリーブは、カニューレの遠位端近傍、例えば硝子体手術プローブの切除部近傍で終結してもよい。光スリーブは、光源と光学的に結合されてもよい。光スリーブは、製造中にカニューレを射出成形のためのインサートとして用いて射出成形されてもよい。光スリーブは、手術器具の長手方向軸線に沿った方向に照光するように方向付けられている。
【0013】
本発明に係る原理と一致する別の実施形態において、本発明は、照光式手術器具である。その手術器具は、手術器具の端部近傍に配置された作業領域を有する。射出成形された光スリーブは、手術器具の端部近傍で終結する。光スリーブは、手術器具に隣接して配置されている。光スリーブは、光源と光学的に結合されている。光スリーブは、製造中に、手術器具の一部を射出成形のためのインサートとして用いて射出成形され得る。光スリーブは、長手方向軸線に沿った方向に照光するように方向付けられている。
【0014】
本発明の原理と一致した別の実施形態において、本発明は、照光式手術器具である。その手術器具は、手術器具の端部近傍に配置された作業領域を有する。作業領域は、手術器具の端部に対する配置を有する。射出成形された光スリーブは、手術器具の端部近傍で終結する。光スリーブは、手術器具に隣接して配置されている。光スリーブは、光源と光学的に結合されている。光スリーブは、製造中に手術器具の一部を射出成形のためのインサートとして用いて射出成形することができる。光スリーブは、作業領域の配置のために構成された方向に照光するように方向付けられている。
【0015】
当然のことながら、前述の一般的説明及び以下の詳細な説明は共に、例示的かつ説明のためのみのものであり、特許請求された本発明に係る更なる説明を提供しようとするものである。本発明に係る以下の説明及び実施が説明され且つ本発明に係る付加的利点及び目的が提案される。
【0016】
組み込まれると共にこの仕様の一部を構成する添付された図面は、本発明に係るいくつかの実施形態を説明と共に示し、本発明に係る原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る実施形態による眼科用エンドイルミネーターの展開図である。
【
図2A】本発明に係る実施形態による硝子体手術プローブの斜視図である。
【
図2B】本発明に係る実施形態による硝子体手術プローブの斜視図である。
【
図3】本発明に係る説明による照光式手術器具の実施形態の遠位端部の例示的実施形態の斜視図である。
【
図4】本発明に係る説明による照光式手術器具の例示的実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る例示的実施形態についてここで詳細に説明され、その例示は、添付された図面で示される。可能な限り、図面を通して、同等の参照番号は、同等の又は類似した部品を参照するために使用される。
【0019】
図1は、本発明に係る実施形態による照光式硝子体手術プローブと共に使用されるような眼科用エンドイルミネーターのような例示的照光式手術器具の展開図である。
図1において、エンドイルミネーターは、光源105、コリメートレンズ110、付加的コールドミラー115、付加的ホットミラー116、減衰器120、コンデンサレンズ125、コネクター150、光ファイバー155、ハンドピース160及び硝子体手術プローブ165を有する。
【0020】
光源105からの光は、コリメートレンズ110によって平行にされる。平行にされた光は、付加的コールドミラー115によって反射され且つフィルタリングされ、且つ/又は付加的ホットミラー116によって透過され且つフィルタリングされる。その結果として生じるビームは、減衰器120によって減衰され、コンデンサレンズ125によって集中される。集中されたビームは、コネクター150及び光ファイバー155を通して硝子体手術プローブ165へと送られ、以下で説明されるように目の内側を照光する。
【0021】
光源105は、概して水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ又はハロゲンランプのようなランプである。光源105は、比較的安定した、一定の光出力を生成するため、フルパワー又はその近傍で操作される。本発明に係る1つの実施形態において、光源105は、約0.18mmの弧長を有するキセノンランプである。本発明に係る他の実施形態は、発行ダイオード(LED)のような他の光源を使用する。1又は複数のLEDは、一定且つ安定した光出力を生成するために操作され得る。公知のように、光源105として選択され得る様々な出力定格及び光出力を有する多くの形式のLEDがある。
【0022】
コリメートレンズ110は、光源105によって生成された光を平行にするために構成される。公知のように、光の視準は、光線の整列を含む。平行にされた光は、平面的な波面に対して平行な光線である。
【0023】
付加的コールドミラー115は、有害な赤外線及び紫外線のフィルタリングされたビームを生成するため可視波長光を反射し、赤外線及び紫外線のみ透過させる二色性の反射器である。ホットミラー116は、長波長赤外線光及び短波長紫外線光を反射する一方で、可視光を透過させる。目の自然な水晶体は、目に入る光をフィルタリングする。特に、自然な水晶体は、網膜を損傷し得る青色光及び紫外線光を吸収する。可視光波長の適切な範囲の光を提供する一方で有害な短波長及び長波長をフィルタリングして除外することは、無水晶体症の危険性、青色光光学的網膜損傷、赤外線加熱損傷及び類似の光の有害な危険性のよる網膜の損傷のリスクを大きく低減することができる。概して、約430ナノメートルから700ナノメートルの範囲の光は、これらの危険性のリスクを低減するために好適である。付加的コールドミラー115及び付加的ホットミラー116は、適した波長の光が目の中へと照光されることを可能とするように選択される。この適した波長域において光を生成するために他のフィルター及び/又は二色性のビームスプリッターが使用されてもよい。例えば、光をフィルタリングするためにホログラフィックミラーが使用されてもよい。
【0024】
減衰器120は、光ビームの輝度を減衰又は低減する。任意の数の様々な減衰器が使用されてもよい。例えば、機械的ルーバー、カメラ可変絞り機構又は減光フィルターが使用されてもよい。可変楔回転ディスク減衰器が使用されてもよい。
【0025】
コンデンサレンズ125は、小さな径の光ファイバーへと送り出され得るように減衰された光ビームを集中させる。コンデンサレンズ125は、装置に適した構成のレンズである。概してコンデンサレンズ125は、結果としての集中された光のビームが光ファイバーへと好適に送り出され且つ光ファイバーによって送られ得るように設計されている。公知のように、コンデンサレンズは、両凸球状レンズ若しくは平凸球状レンズ又は非球面レンズであってもよい。平凸非球面レンズにおいて、一方の面は平面的であり、他方の面は光を最小径スポットへと集中させるために正確な非球面を有する凸面である。
【0026】
眼外科医によって扱われるエンドイルミネーターは、コネクター150、光ファイバー155、ハンドピース160及び照光式硝子体手術プローブ(又は他の外科用手術器具)165を有する。コネクター150は、光ファイバー155を、光源105を含むメインコンソール(図示せず)に接続するように設計される。コネクター150は、目へと送られる光のビームを有する光ファイバー155を適切に配列する。光ファイバー155は、テーパー状の又はテーパー状でない小さな径のファイバーである。ハンドピース160は、外科医によって保持され、目の中で照光式硝子体手術プローブ165の手動操作を可能とする。
【0027】
同様に、
図15Aにおいて示されたようなレーザー光源は、レーザー光を提供するため、例えば網膜にレーザー光を提供するためのエンドレーザーファイバーを具備する本発明に係る照光式手術器具のこれらの実施形態におけるエンドレーザー(endolaser)ファイバーと光学的に結合される。
【0028】
図2A及び
図2bは、本発明に係る実施形態による硝子体手術プローブの斜視図である。従来の硝子体手術プローブにおいて、外部カニューレ205は、ポート210を有する。内部ピストン215は、カニューレ205内で往復運動する。ピストン215の一端は、ポート210に入ってきたときに硝子体を切除し得るように構成される。
図2A及び2bにおいて示されたように、ピストン215は切除駆動するためにカニューレ205内で上下する。硝子体手術プローブが
図2Aで示された位置にあるとき、硝子体はポート210に入る。硝子体は、
図2Bに示されたようにピストン215が上方移動してポート210を閉じるときに切除される。硝子体手術プローブのほとんどの詳細は省かれているが、硝子体の切除がポート210で行われることに留意することは重要である。従って、外科医が切除される硝子体(及び切除機構近傍の他の目の構造)を見得るようにポート210周りで照光を集中すると好適である。
【0029】
図3は、本発明に係る説明による照光式手術器具の実施形態の遠位端部300の例示的実施形態の斜視図である。
図3はチューブ310を示しており、例えば多くの眼科手術器具と関連した中空のカニューレとされ得る。チューブ310は、サージカルスチールのような様々な生体適合性を有する材料で作ることができ、チューブ310の外部の側部領域を隣接して覆う成形された光ファイバー/光スリーブ320を有する。光スリーブ320は、光スリーブ320から高い光伝達(出力)を提供するため、その遠位端において磨かれてもよい。光スリーブの近位端330は、例えばフェルール内へ設置することにより光源と光学的に結合されてもよく、高い光伝達を提供するために同様に磨かれることができる。こうした構成は、
図4で示される。光スリーブ320は、例えば射出ダイカスト(injection die-casting)によってチューブ310の周りで射出成形され得る。本発明に係る説明による眼科用手術器具の製造及び組立の一部としてチューブ310は、チューブ(インサート)310の周りで光スリーブ320を射出成形するための射出成形のインサートとして使用され得る。光スリーブ320は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のような射出成形され得る任意の適した光透過性材料から作られ得る。
【0030】
図4は、本発明に係る説明による照光式手術器具の例示的実施形態の概略図である。照光式手術器具400は、光スリーブ320が周りで射出成形されたチューブ310を具備する。チューブ310及び光スリーブ320は、手術器具400の先端キャップ470に結合される。当業者には理解されることだが、例えば先端キャップ470は、手術器具400を保持及び手動操作するためのプローブハンドルの先端キャップを具備することができる。光スリーブ320の近位端は、光スリーブ320を光ファイバー440に光学的に結合するため、フェルール430と光学的に結合される。光ファイバー440は、光カプラー450を介して光源460の出力を手術器具400本体(例えばプローブ本体)に結合するための接続ケーブルとすることができる。光カプラー450は、標準的な光コネクターとすることでき、使用するための特定の手術器具400を識別し、手術器具400を構成するためのRFID識別機能のような識別技術を有することができる。
【0031】
本発明に係る照光式手術器具の実施形態は、射出成形技術を使用する光スリーブ320のような手術器具の光スリーブの製造方法も含む。手術器具のカニューレを射出成形のためのインサートとして用いる光スリーブ320の射出成形は、光スリーブが、組立前に形成される必要がなく、分離された工程でカニューレに取り付けられる必要もないといった、先行技術に係る照光式手術器具以上の利点を有する。代わりに、カニューレが、インサート及び適した金型で射出成形された光スリーブとして用いられることができる。
【0032】
本発明に係る照光式手術器具の様々な実施形態の、先行技術より優れた他の利点は、射出成形法が光スリーブをカニューレに結合するための接着剤を使用しないことによる、カニューレ内部における接着剤の未硬化による潜在的リスクの排除と、安価、簡易且つ全自動化された製造工程の機能と、短い製造サイクルタイムと、高い繰り返し性を有する製造精度と、形成されたカニューレ及び光スリーブの組合せを光ファイバーの破損のリスクなく所望する形状へと曲げる機能と、半製品の簡易且つ安全な取り扱い、及び、手術器具カニューレ外径を射出成形部品の設計によって定義する機能と、を含む。
【0033】
ここで提供された例示は、23ゲージカニューレを通して設置できる照光式硝子体手術プローブ又は他の照光式手術器具を説明したが、当然のことながら、硝子体手術プローブ及び光ファイバー配列の同等の機構が他のサイズのカニューレに適用され得る。例えば、光学的光スリーブは、20ゲージのカニューレ又は23ゲージのカニューレよりも小さなカニューレに設置するためであっても、ここで説明した同等な方法によって硝子体手術プローブ周りで構成され得る。例えば、硝子体手術プローブの径が小さくなれば、より大きな断面積が照光のため可能となる。25ゲージカニューレを通して設置する照光式手術器具は、ここで説明したのと同等の光学的光スリーブを有することができる。
【0034】
より一般的に、前述の図面の照光式手術器具について説明された同等の原理は、小さなゲージのカニューレを通して設置するために設計された任意の手術器具へと適用され得る。例えば、眼科手術において、はさみ、フォーセップ、吸引プローブ、網膜ピック、剥離スパチュラ、及び様々なカニューレ等も、目的とされた照光から益を得る。これらの手術器具は、眼科手術中に強膜を通して挿入された小さなゲージのカニューレを通して設置するために設計される。これらの手術器具のそれぞれのため、器具の作業端周りの目的とされた照光は、益となる。
【0035】
同等の光スリーブ構成は、略円形、楕円形、矩形又は他の断面を有する任意の手術器具に適用され得る。従って、照光は、必要な所に光を提供するために特定の領域(概して目の中の器具の配置を考慮した器具の作業端)を目的とされ得る。例えば、眼科手術において、はさみ、フォーセップ、吸引プローブ、網膜ピック、剥離スパチュラ及びカニューレ等は、目的とされた照光から益を得る。手術器具の作業領域又は目の構造体に光を提供することによって、器具の接触部は、手術中における外科医の好適な視認性を可能とする。
【0036】
同等の原理は、任意の断面の器具に適用され得る。更に、器具は、幾何学的形状によって近似されてもよい。例えば、長方形の断面を有する手術器具は、楕円によって近似され得る。当然のことながら、目的とされた照光の配置は、光スリーブ320の遠位端の配置に対応する。光スリーブ320は光の出力を最小化するように概して選択されるが、その配置は、所定の器具のために適合され得る。
【0037】
当然のことながら、上述したことから本発明は、改良された照光式手術器具を提供した。光スリーブを手術器具の作業領域近傍の遠位端に配置すると、手術中に外科医によって利用可能な光を提供する。更に、本発明は、光源に結合して手術箇所に照光するため、効果的に光スリーブを眼科用手術器具のカニューレの周りで射出成形するための方法を提供する。本発明は、ここで例示によって示されており、様々な変形例が当業者によって作られてもよい。
【0038】
本発明に係る他の実施形態は、ここで開示された本発明に係る仕様及び実施の検討により当業者に明らかとなる。仕様及び例示は、例示にすぎないものみなされることを想定しており、本発明の正しい範囲と精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。