(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記気化器(60)は、前記極低温の液体燃料(112)を加熱するために、前記ガスタービンエンジン(101)からの排気気体(99)の一部分(97)を使用する、請求項1乃至5のいずれか1項記載の航空機システム(5)。
前記気化器(60)は、前記極低温の液体燃料(112)を加熱するために、前記ガスタービンエンジン(101)の前記高圧コンプレッサ(105)からの空気流(2)の一部分(3)を使用する、請求項1乃至5のいずれか1項記載の航空機システム(5)。
前記極低温の液体燃料(112)によって冷却される前記空気流(3)の少なくとも一部分(4)が、前記ガスタービンエンジン(101)の構成要素(155)を冷却するために使用される、請求項11記載の航空機システム(5)。
前記ガスタービンエンジン(101)は、前記推進システムの動作の第1の選択される部分の間、前記第1の燃料(11)を使用し、前記推進システムの動作の第2の選択される部分の間、前記極低温の液体燃料(112)を使用する、請求項1乃至12のいずれか1項記載の航空機システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで図面を参照すると、同一の参照番号は、様々な図の全体にわたって同じ要素を示す。
【0010】
図1に、本発明の例示の実施形態による航空機システム5を示す。例示の航空機システム5は、機体6および機体に取り付けられる翼7を有する。航空機システム5は、航空機システムを飛行させるように推進するために必要な推進力を生成する推進システム100を有する。
図1では、推進システム100は、翼7に取り付けられた状態で示されているが、他の実施形態では、それは、たとえば尾部部分16など、航空機システム5の他の部分に結合することができる。
【0011】
例示の航空機システム5は、推進システム100中で使用される1つまたは複数のタイプの燃料を貯蔵するために、燃料貯蔵システム10を有する。
図1に示す例示の航空機システム5は、ここに以下でさらに述べるように、2つのタイプの燃料を使用する。したがって、例示の航空機システム5は、第1の燃料11を貯蔵することが可能な第1の燃料タンク21と、第2の燃料12を貯蔵することが可能な第2の燃料タンク22とを有する。
図1に示す例示の航空機システム5では、第1の燃料タンク21の少なくとも一部分が、航空機システム5の翼7中に位置決めされる。1つの例示の実施形態では、
図1に示すように、第2の燃料タンク22は、航空機システムの機体6中で、翼が機体に結合される場所の近くに位置決めされる。代替実施形態では、第2の燃料タンク22は、機体6または翼7中の他の適切な場所に位置決めすることができる。他の実施形態では、航空機システム5は、第2の燃料12を貯蔵することが可能なオプションの第3の燃料タンク123を含むことができる。オプションの第3の燃料タンク123は、たとえば
図1に概略的に示すように、航空機システムの機体の後部部分中に位置決めすることができる。
【0012】
ここに後でさらに述べるように、
図1に示す推進システム100は、二系統燃料の推進システムであり、それは、第1の燃料11または第2の燃料12を使用することによって、または第1の燃料11と第2の燃料12の両方を使用することによって、推進力を発生することが可能である。例示の二系統燃料の推進システム100は、第1の燃料11または第2の燃料21を選択的に使用して、または選択した割合で第1の燃料と第2の燃料の両方を使用して推進力を発生することが可能なガスタービンエンジン101を含む。第1の燃料は、Jet−A、JP−8またはJP−5として当技術で知られるものなどのケロシンベースのジェット燃料、または他に知られるタイプまたは等級の燃料など、従来の液体燃料とすることができる。ここに述べる例示の実施形態では、第2の燃料12は、極めて低温で貯蔵される極低温燃料である。ここに述べる一実施形態では、極低温の第2の燃料12は、液化天然ガス(あるいは、ここでは「LNG」と言う)である。極低温の第2の燃料12は、低い温度で燃料タンク中に貯蔵される。たとえば、LNGは、約−265度Fで、絶対圧が約15psiaで、第2の燃料タンク22中に貯蔵される。燃料タンクは、チタン、インコネル、アルミニウムまたは複合材料など、知られる材料から製造することができる。
【0013】
図1に示す例示の航空機システム5は、燃料貯蔵システム10から推進システム100に燃料を供給することが可能な燃料供給システム50を含む。知られる燃料供給システムは、第1の燃料11など、従来の液体燃料を供給するために使用することができる。ここに述べ
図1および2に示す例示の実施形態では、燃料供給システム50は、極低温の液体燃料、たとえばLNGなどを、極低温燃料を移送する導管54を通じて推進システム100に供給するように構成される。供給する間、極低温燃料を実質的に液体状態に保つために、燃料供給システム50の導管54の少なくとも一部分が断熱されて、加圧された極低温の液体燃料を移送するように構成される。いくつかの例示の実施形態では、導管54の少なくとも一部分は、二重壁構造を有する。導管は、チタン、インコネル、アルミニウムまたは複合材料など、知られる材料から製造することができる。
【0014】
図1に示す航空機システム5の例示の実施形態は、燃料電池システム400をさらに含み、それは、第1の燃料11または第2の燃料12の少なくとも1つを使用して電力を生成することが可能な燃料電池を含む。燃料供給システム50は、燃料貯蔵システム10から燃料電池システム400に燃料を供給することが可能である。1つの例示の実施形態では、燃料電池システム400は、二系統燃料の推進システム100によって使用される極低温燃料12の一部分を使用して、電力を発生する。
【0015】
推進システム100は、燃焼器中で燃料を燃焼させることによって推進力を発生するガスタービンエンジン101を含む。
図4は、ファン103と、高圧コンプレッサ105を有するコアエンジン108と、燃焼器90とを含む例示のガスタービンエンジン101の概略図である。また、エンジン101は、高圧タービン155、低圧タービン157およびブースタ104を含む。例示のガスタービンエンジン101は、推進力の少なくとも一部分を生成するファン103を有する。エンジン101は、吸気側109および排気側110を有する。ファン103とタービン157は、第1のロータシャフト114を使用して互いに結合され、コンプレッサ105とタービン155は、第2のロータシャフト115を使用して互いに結合される。いくつかの用途、たとえば
図4に示す用途では、ファン103のブレードアセンブリは、エンジン囲壁116内に少なくとも部分的に位置付けられる。他の用途では、ファン103は、ファンのブレードアセンブリを囲繞する囲壁が存在しない「オープンロータ(open rotor)」の一部分を形成することができる。
【0016】
動作の間、空気がファン103によって軸方向に、エンジン101を貫通して伸びる中心線の軸15に対して実質的に平行な方向に流れ、そして圧縮された空気が、高圧コンプレッサ105に供給される。大いに圧縮された空気は、燃焼器90に供給される。燃焼器90からの熱ガス(
図4に示さず)が、タービン155および157を駆動する。タービン157が、シャフト114によってファン103を駆動し、同様に、タービン155が、シャフト115によってコンプレッサ105を駆動する。代替実施形態では、エンジン101は、中間圧コンプレッサとして当技術でときには知られ、別のタービンステージ(
図4に示さず)によって駆動される、追加のコンプレッサを有することができる。
【0017】
航空機システム5の動作の間(
図7に示す例示の飛行プロファイル参照)、推進システム100中のガスタービンエンジン101は、たとえば、推進システムの動作の第1の選択される部分の間、たとえばテイクオフなどの間、第1の燃料11を使用することができる。推進システム100は、クルーズ中など、推進システムの動作の第2の選択される部分の間、第2の燃料12、たとえばLNGなどを使用することができる。あるいは、航空機システム5の動作の選択される部分の間、ガスタービンエンジン101は、第1の燃料11と第2の燃料12の両方を同時に使用して、推進力を発生することが可能である。第1の燃料11と第2の燃料12の割合は、推進システムの動作の様々なステージの間、必要に応じて0%と100%の間で変化させることができる。
【0018】
航空機およびエンジンシステムは、ここに述べるように、2つの燃料を使用する動作が可能であり、その1つは、たとえばLNG(liquefied natural gas)などの極低温燃料とすることができ、他は、Jet−A、JP−8、JP−5または同様の世界中で入手できる等級の燃料など、従来のケロシンベースのジェット燃料とすることができる。
【0019】
Jet−Aの燃料システムは、燃料ノズルを除いて、従来の航空機燃料システムと同様であり、その燃料ノズルは、Jet−Aおよび極低温燃料/LNGを燃焼器に0〜100%の割合で噴射することが可能である。
図1に示す実施形態では、LNGシステムは、燃料タンクを含み、それは、適宜、次の特徴を含む:(i)タンク中で規定された圧力に保つのに適切なチェックバルブを備えるベント管路;(ii)液体の極低温燃料のためのドレイン管路;(iii)タンク中に存在する極低温の(LNG)燃料の温度、圧力および容積を見積もるための計量または他の測定能力;(iv)極低温の(LNG)タンク中に、または適宜タンクの外部に位置決めされるブーストポンプ、それは、極低温の(LNG)燃料の圧力を上昇させて、それをエンジンに移送する;および(v)無期限にタンクを極低温の温度に保つためのオプションの極低温冷却器である。
【0020】
燃料タンクは、大気圧で、またはその近傍で動作することになることが好ましいが、0〜100psigの範囲内で動作することができる。燃料システムの代替実施形態は、タンク圧力および温度を高くすることができる。タンクおよびブーストポンプからエンジンのパイロンに走る極低温の(LNG)燃料管路は、次の特徴を有することができる:(i)一重または二重の壁構造;(ii)真空断熱または低熱伝導材料による断熱;および(iii)LNGタンクに熱を加えることなく、LNG流をタンクに再循環させるためのオプションの極低温冷却器である。極低温の(LNG)燃料タンクは、従来のJet−A補助燃料タンクが、既存システム上に位置決めされる場所で、たとえば前部または後部の貨物倉中で、航空機中に位置決めすることができる。あるいは、極低温の(LNG)燃料タンクは、中央翼のタンク場所中に位置決めすることができる。極低温の(LNG)燃料を利用する補助燃料タンクは、延長される期間では極低温の(LNG)燃料を使用しないことになる場合、それを取り外すことができるように、設計することができる。
【0021】
高圧ポンプは、極低温の(LNG)燃料の圧力を、ガスタービン燃焼器中に燃料を注入するのに十分なレベルに上昇させるために、パイロン中に、またはエンジン上に位置決めすることができる。ポンプは、LNG/極低温液体の圧力を、極低温の(LNG)燃料の臨界圧(Pc)より高く上昇させることができる、またはそうしなくてもよい。熱交換器は、ここでは「気化器」と言い、エンジン上に、またはその近くに搭載することができ、熱エネルギーを液化天然ガスの燃料に加えて、その温度を上昇させ、それによって極低温の(LNG)燃料を容積的に膨張させる。気化器からの熱(熱エネルギー)は、多くの源からもたらすことができる。これらは、ただし、これらに限定されないが:(i)ガスタービン排気;(ii)コンプレッサ中間冷却;(iii)高圧および/または低圧タービンのクリアランス制御空気;(iv)LPTパイプの冷却寄生空気(cooling parasitic air);(v)HPタービンからの冷却された冷却空気;(vi)潤滑油;または(vii)機上アビオニックスまたはエレクトロニックスを含む。熱交換器は、様々な設計のものとすることができ、シェルおよびチューブ、二重パイプ、フィンプレートなどを含み、そして、並流、逆流または横流の形態で流れることができる。熱交換は、上記に挙げられた熱源と直接的に、または間接的に接触させて行うことができる。
【0022】
制御バルブが、上記に述べた気化器/熱交換ユニットの下流に位置決めされる。制御バルブの目的は、ガスタービンエンジンの動作と関連する動作条件の範囲全体にわたって、規定のレベルに流れを計量して燃料マニホールド中へ提供することである。制御バルブの二次的な目的は、システムの圧力を、極低温の(LNG)燃料の臨界圧より高く設定する、背圧レギュレータとして働くことである。
【0023】
燃料マニホールドは、制御バルブの下流に位置付けられ、それは、ガスタービンの燃料ノズルに気体燃料を一様に配給するように働く。いくつかの実施形態では、マニホールドは、適宜、コアカウル区画または他の熱的環境から極低温燃料/LNG/天然ガス燃料に熱エネルギーを伝達する熱交換器として働くことができる。適宜、気体燃料システムが動作していないとき、コンプレッサ空気(CDP:compressor air)を用いて燃料マニホールドをパージするために、燃料マニホールドとともにパージ用マニホールドシステムを用いることができる。これは、円周方向の圧力変化に起因する、気体燃料ノズル中への熱ガスの吸い込みを防止することになる。適宜、燃料ノズル中の、またはその近くのチェックバルブが、熱ガスの吸い込みを防止することができる。
【0024】
ここに述べるシステムの例示の実施形態は、次のように動作することができる:極低温の(LNG)燃料が、約15psiaおよび約−265度Fでタンク中に置かれる。それは、航空機上に位置決めされるブーストポンプによって、約30psiに上げられる。液体の極低温の(LNG)燃料は、断熱されて二重に取り囲まれた配管を介して翼を横切って航空機パイロンに流れ、そこでは、それは、約100〜1,500psiaに上げられて、天然ガス/メタンの臨界圧より高く、または低くすることができる。次いで、極低温の(LNG)燃料は、気化器に送られ、そこでは、それは、容積的に膨張して気体になる。気化器は、マッハ数および対応する圧力損失を低く保つような大きさにすることができる。次いで、気体の天然ガスは、制御バルブによって計量されて、燃料マニホールド中に、そして燃料ノズル中に提供され、そこでは、それは、そうでなければ標準である航空用ガスタービンエンジンのシステム中で燃焼して、飛行機に推力をもたらす。サイクル条件が変化するのにつれても、ブーストポンプ中の圧力(たとえば約30psi)およびHPポンプ中の圧力(たとえば約1,000psi)は、ほぼ一定のレベルに保たれる。流れは、絞りバルブによって制御される。適切な大きさに作られた燃料ノズルと組み合わされて、流れの変化は、マニホールド中で許容可能であって変化する圧力をもたらすことになる。
【0025】
例示の航空機システム5は、推進システム100中で使用するために、1つまたは複数のタイプの燃料を貯蔵システム10から供給するための燃料供給システムを有する。たとえばケロシンベースのジェット燃料など、従来の液体燃料について、従来の燃料供給システムを使用することができる。ここに述べ、
図2および3で概略的に示す例示の燃料供給システムは、航空機システム5のために、極低温燃料供給システム50を含む。
図2に示す例示の燃料システム50は、極低温の液体燃料112を貯蔵することが可能な極低温燃料タンク122を含む。一実施形態では、極低温の液体燃料112は、LNGである。また、他の代替の極低温の液体燃料を使用することができる。例示の燃料システム50では、たとえばLNGなど、極低温の液体燃料112は、第1の圧力「P1」である。圧力P1は、たとえば15psiaなどの大気圧に近いことが好ましい。
【0026】
例示の燃料システム50は、それが極低温燃料タンク122と流れが連通しているようなブーストポンプ52を有する。動作の間、極低温燃料が、二系統燃料の推進システム100中に求められたとき、ブーストポンプ52は、極低温の液体燃料112の一部分を極低温燃料タンク122から取り出して、その圧力を第2の圧力「P2」に上昇させ、それを、航空機システム5の翼7中に位置決めされる翼供給導管54中に流入させる。圧力P2は、液体極低温燃料が、供給導管54中で流れている間、その液体状態(L)を保つように、選択される。圧力P2は、約30psia〜約40psiaの範囲内とすることができる。知られる方法を使用するLNGに関する解析に基づくと、30psiaは、適切であるということが見出されている。ブーストポンプ52は、航空機システム5の機体6中で適切な場所に位置決めすることができる。あるいは、ブーストポンプ52は、極低温燃料タンク122に接近して位置決めすることができる。他の実施形態では、ブーストポンプ52は、極低温燃料タンク122の内部に位置決めすることができる。供給する間、実質的に極低温燃料の液体状態を保つために、翼供給導管54の少なくとも一部分が断熱される。いくつかの例示の実施形態では、導管54の少なくとも一部分は、二重壁構造を有する。導管54およびブーストポンプ52は、チタン、インコネル、アルミニウムまたは複合材料など、知られる材料を使用して製造することができる。
【0027】
例示の燃料システム50は、高圧ポンプ58を有し、それは、翼供給導管54と流れが連通しており、ブーストポンプ52によって供給される極低温の液体燃料112を受け取ることが可能である。高圧ポンプ58は、液体の極低温燃料(たとえばLNGなど)の圧力を、推進システム100中に燃料を注入するのに十分な第3の圧力「P3」に上昇させる。圧力P3は、約100psia〜約1000psiaの範囲内とすることができる。高圧ポンプ58は、航空機システム5または推進システム100中の適切な場所に位置決めすることができる。高圧ポンプ58は、推進システム100を支持する航空機システム5のパイロン55中に位置決めすることが好ましい。
【0028】
図2に示すように、例示の燃料システム50は、極低温の液体燃料112を気体の(G:gaseous)燃料13に変えるために、気化器60を有する。気化器60は、高圧の極低温の液体燃料を受け取り、極低温の液体燃料(たとえばLNGなど)に熱(熱エネルギー)を加えて、その温度を上昇させ、それを容積的に膨張させる。熱(熱エネルギー)は、推進システム100中の1つまたは複数の源から供給することができる。たとえば、気化器中で極低温の液体燃料を気化させるための熱は、いくつかの源の1つまたは複数から、たとえばガスタービン排気99、コンプレッサ105、高圧タービン155、低圧タービン157、ファンバイパス107、タービン冷却空気、エンジン中の潤滑油、航空機システムのアビオニックス/エレクトロニックス、または推進システム100中のいずれもの熱源などから供給することができる。気化器60中で行われる熱交換によって、気化器60は、あるいは熱交換器と言うことができる。気化器60の熱交換器部分は、シェルおよびチューブタイプの熱交換器、または二重パイプタイプの熱交換器、またはフィン・プレートタイプの熱交換器を含むことができる。気化器中の熱い流体および冷たい流体は、並流、または逆流、または横流の流れタイプとすることができる。気化器中の熱い流体と冷たい流体の間の熱交換を、壁を通して直接的に、または中間の仕事流体を使用して間接的に行うことができる。
【0029】
極低温燃料供給システム50は、気化器60およびマニホールド70と流れが連通している流れ絞りバルブ65(「FMV」:flow metering valve、または制御バルブと言う)を含む。流れ絞りバルブ65は、上記に述べた気化器/熱交換ユニットの下流に位置決めされる。FMV(制御バルブ)の目的は、ガスタービンエンジンの動作に関連する動作条件の範囲の全部にわたって、燃料流量を規定のレベルに計量して燃料マニホールド70中に提供することである。制御バルブの二次的な目的は、LNGなどの極低温燃料の臨界圧より高くシステムの圧力を設定する背圧レギュレータとして働くことである。流れ絞りバルブ65は、気化器から供給される気体燃料13を受け取り、その圧力を第4の圧力「P4」に低下させる。マニホールド70は、気体燃料13を受け取り、それをガスタービンエンジン101中の燃料ノズル80に配給することが可能である。好ましい実施形態では、気化器60は、極低温の液体燃料112を実質的に一定の圧力である気体燃料13に変える。
図2aに、供給システム50中の様々な点で、燃料の状態および圧力を概略的に示す。
【0030】
極低温燃料供給システム50は、ガスタービンエンジン101中に位置決めされる複数の燃料ノズル80をさらに含む。燃料ノズル80は、燃焼させるために気体燃料13を燃焼器90に供給する。燃料マニホールド70は、制御バルブ65の下流に位置決めされ、気体燃料13をガスタービンの燃料ノズル80に一様に配給する。いくつかの実施形態では、マニホールド70は、適宜、推進システムのコアカウル区画または他の熱的な環境からLNG/天然ガス燃料に熱エネルギーを伝達する熱交換器として働く。一実施形態では、燃料ノズル80は、従来の液体燃料(従来のケロシンベースの液体燃料など)、またはLNGなどの極低温の液体燃料から気化器によって発生される気体燃料13を選択的に受け取るように構成される。別の実施形態では、燃料ノズル80は、液体燃料および気体燃料13を選択的に受け取るように構成され、そして気体燃料13および液体燃料を燃焼器90に供給して2つのタイプの燃料を共に燃焼させるのを促進するように構成される。別の実施形態では、ガスタービンエンジン101は、複数の燃料ノズル80を含み、燃料ノズル80のいくつかが、液体燃料を受け取るように構成され、そして燃料ノズル80のいくつかが、気体燃料13を受け取るように構成され、燃焼器90中で燃焼させるのに適切なように配置される。
【0031】
本発明の別の実施形態では、ガスタービンエンジン101中の燃料マニホールド70は、気体燃料システムが動作中でないとき、エンジンからのコンプレッサ空気または他の空気を用いて燃料マニホールドをパージするために、オプションのパージ用マニホールドシステムを含む。これは、燃焼器90中の円周方向の圧力変化に起因する、気体燃料ノズル中への熱ガスの吸い込みを防止することになる。適宜、燃料ノズル中の、またはその近くのチェックバルブは、燃料ノズルまたはマニホールド中への熱ガスの吸い込みを防止するために使用することができる。
【0032】
極低温の液体燃料としてLNGを使用する、ここに述べる例示の二系統燃料のガスタービン推進システムでは、次のことが述べられる:LNGは、タンク22、122中に15psiaおよび−265度Fで置かれる。それは、航空機上に位置決めされるブーストポンプ52によって約30psiに上げられる。液体のLNGは、断熱されて二重に囲まれる配管54を介して翼7を横切り、航空機パイロン55に流れ、そこでは、それは、100〜1,500psiに上げられて、天然ガス/メタンの臨界圧より高く、または低くすることができる。次いで、液化天然ガスは、気化器60に送られ、そこでは、それは、容積的に膨張して気体になる。気化器60は、マッハ数および対応する圧力損失を低く保つような大きさにされる。次いで、気体の天然ガスは、制御バルブ65によって計量されて、燃料マニホールド70中に、そして燃料ノズル80中に提供され、そこでは、それは、二系統燃料の航空用ガスタービンシステム100、101中で燃焼して、航空機システム5に推力をもたらす。サイクル条件が変化するにつれても、ブーストポンプ中の圧力(30psi)およびHPポンプ58中の圧力(1,000psi)が、おおよそ一定のレベルに保たれる。流れが絞りバルブ65によって制御される。適切な大きさに形作られる燃料ノズルと組み合わされて、流れの変化は、マニホールド中で、許容可能であって変化する圧力をもたらすことになる。
【0033】
二系統燃料のシステムは、ケロシンベースの燃料(Jet−A、JP−8、JP−5など)および極低温燃料(たとえばLNG)のための並列の燃料供給システムからなる。ケロシン燃料の供給は、実質的には、燃焼器の燃料ノズルを除いて現在の設計と変わらず、その燃料ノズルは、ケロシンと天然ガスをいずれもの割合でも共に燃やすように設計される。
図2に示すように、極低温燃料(たとえばLNG)の燃料供給システムは、次の特徴からなる:(A)極低温燃料(たとえばLNG)とJet−Aを0〜100%の範囲のいずれもの割合でも利用することが可能である、二系統燃料のノズルおよび燃焼システム;(B)熱交換器としても働き、極低温燃料(たとえばLNG)を加熱して気体または超臨界的な流体にする燃料マニホールドおよび供給システム。マニホールドシステムは、同時に燃料を燃焼器の燃料ノズルに一様に供給し、そして囲繞するコアカウル、通気システムまたは他の熱源から熱を吸収し、それによって、別個の熱交換器に対する必要性を無くす、または最小限にする;(C)その液体状態にある極低温燃料(たとえばLNG)を臨界圧より高い、または低い圧力に上げ、そして、いくつかの源の中のいずれもからの熱を加える燃料システム;(D)極低温燃料(たとえばLNG)の燃料タンク中に沈められる低圧の極低温ポンプ(適宜、燃料タンクの外部に位置決めされる);(E)航空機パイロン中に、または、適宜、エンジンまたはナセル上に位置決めされて、極低温燃料(たとえばLNG)の臨界圧より高い圧力に上げるための高圧の極低温ポンプ;(F)気体燃料システムが動作していないとき、燃料マニホールドとともに使用して、コンプレッサCDP空気を用いて燃料マニホールドをパージすることができるパージ用マニホールドシステム。これは、円周方向の圧力変化に起因する、熱ガスの気体燃料ノズル中への吸い込みを防止することになる。適宜、燃料ノズル中の、またはその近くのチェックバルブが、熱ガスの吸い込みを防止することができる;(G)タンクおよびブーストポンプからエンジンのパイロンに走り、次の特徴を有する極低温燃料(たとえばLNG)の管路:(1)一重または二重の壁構造、(2)真空断熱、または、適宜、エアロゲルなどの低熱伝導性断熱材料、(3)極低温燃料(たとえばLNG)のタンクに熱を加えることなく、極低温燃料(たとえばLNG)の流れをタンクへ再循環させるためのオプションの極低温冷却器、(H)パイロン中に、またはエンジン上に位置決めされる高圧ポンプ。このポンプは、極低温燃料(たとえばLNG)の圧力を、天然ガス燃料をガスタービン燃焼器に注入するのに十分なレベルに上昇させることになる。ポンプは、極低温燃料(たとえばLNG)の圧力を、極低温燃料(たとえばLNG)の臨界圧(Pc)より高く上昇させることができる、またはそうしなくてもよい。
【0034】
III. 燃料貯蔵システム
図1に示す例示の航空機システム5は、極低温燃料を貯蔵するために、たとえば
図3に示すようなものなど、極低温燃料の貯蔵システム10を含む。例示の極低温燃料の貯蔵システム10は、極低温燃料タンク22、122を含み、それらは、たとえばLNGなどの極低温の液体燃料12を貯蔵することが可能な貯蔵容積24を形成する第1の壁23を有する。
図3に概略的に示すように、例示の極低温燃料の貯蔵システム10は、極低温の液体燃料12を貯蔵容積24中に流入させることが可能な流入システム32と、極低温の液体燃料12を極低温燃料の貯蔵システム10から供給するように適合させる流出システム30とを有する。それは、貯蔵容積24中の極低温の液体燃料12から気体燃料19(貯蔵の間、形成される恐れがある)の少なくとも一部分を取り出すことが可能なベントシステム40をさらに含む。
【0035】
図3に示す例示の極低温燃料の貯蔵システム10は、未使用の気体燃料19の少なくとも一部分29を極低温燃料タンク22中に戻すように適合させる再利用システム34をさらに含む。一実施形態では、再利用システム34は、極低温燃料タンク22、122中に未使用の気体燃料19を戻す前に、その一部分29を冷却する極低温冷却器42を含む。極低温冷却器42の動作の例示の動作は、次のようである:例示の実施形態では、燃料タンクからのボイルオフ(boil off)は、逆ランキン冷凍(reverse Rankine refrigeration)システム、または極低温冷却器として知られるものを使用して再冷却することができる。極低温冷却器は、航空機システム5上の利用できるシステムのいずれもからもたらされる電力によって、または搭乗ゲートに駐機中、利用できる可能性がある地上ベースの電力システムなど、地上ベースの電力システムによって、給電することができる。また、極低温冷却器システムは、二系統燃料の航空機ガスタービンエンジン101で共に燃焼させて遷移中に、燃料システム中の天然ガスを再液化するために使用することができる。
【0036】
燃料貯蔵システム10は、極低温燃料タンク22中に形成される恐れがあるいずれもの高圧のガスを通気させるように適合させる安全リリースシステム45をさらに含むことができる。1つの例示の実施形態では、
図3に概略的に示すように、安全リリースシステム45は、第1の壁23の一部分を形成する破裂板(rapture disk)46を含む。破裂板46は、安全機能であり、知られる方法を使用して設計され、燃料タンク22の内部で過圧が生じた場合、いずれもの高圧のガスを噴出させ、放出させる。
【0037】
極低温燃料タンク22は、一重の壁構造または多重の壁構造を有することができる。たとえば、極低温燃料タンク22は、実質的に第1の壁23を取り囲む第2の壁25をさらに含むことができる(たとえば
図3参照)。タンクの一実施形態では、タンクを断熱してタンク壁を横切る熱流量を減少させるために、第1の壁23と第2の壁25の間にギャップ26が存在する。1つの例示の実施形態では、第1の壁23と第2の壁25の間のギャップ26中が真空である。真空は、真空ポンプ28によって生成して維持することができる。あるいは、タンクを断熱するために、第1の壁23と第2の壁25の間のギャップ26は、たとえばエアロゲルなど、知られる断熱材料27を実質的に充填することができる。他の適切な断熱材料を使用することができる。タンク内の液体の移動を制御するために、バッフル17を含めることができる。
【0038】
図3に示す極低温燃料の貯蔵システム10は、供給ポンプ31を有する流出システム30を含む。供給ポンプは、タンク22の近くの都合のよい場所に位置決めすることができる。極低温燃料中への熱伝達を減少させるために、
図3に概略的に示すように、極低温燃料タンク22中に供給ポンプ31を位置決めすることは、好ましい可能性がある。通気システム40は、燃料タンク22中に形成される恐れがあるいずれもの気体を通気させる。これら通気されたガスは、航空機システム5中で、いくつかの有用な方法で利用することができる。これらの中のいくつかは、
図3に概略的に示されている。たとえば、気体燃料19の少なくとも一部分は、冷却する、またはエンジン中で燃焼させるために、航空機推進システム100に供給することができる。別の実施形態では、通気システム40は、気体燃料19の少なくとも一部分をバーナに供給し、さらに、燃焼生成物をバーナから航空機システム5の外部に安全に排出する。別の実施形態では、通気システム40は、気体燃料19の少なくとも一部分を補助パワーユニット180に供給し、それは、補助電力を航空機システム5に供給する。別の実施形態では、通気システム40は、気体燃料19の少なくとも一部分を燃料電池182に供給し、それは、電力を生成する。別の実施形態では、通気システム40は、気体燃料19の少なくとも一部分を極低温燃料タンク22の外部に放出する。
【0039】
燃料貯蔵システムの例示の動作、燃料タンクを含むその構成要素、および例示のサブシステムおよび構成要素について、次のように述べる。
【0040】
天然ガスは、温度が約−260度Fで、大気圧である液体の形態(LNG)で存在する。これらの温度と圧力を、旅客、貨物、軍用または汎用の航空機の機上で保つために、以下で識別される特徴は、選択される組み合わせで、LNGの安全な、効率的な、および費用効率が高い貯蔵をもたらす。
図3を参照すると、これらは、以下を含む:
(A)これらに限定されないが、アルミニウムAL5456および強度がより高いアルミニウムAL5086または他の適切な合金など、合金から構築される燃料タンク21、22。
【0041】
(B)軽量複合材料から構築される燃料タンク21、22。
【0042】
(C)断熱を向上させて、LNG流体への熱流量を大いに減少させるために、二重壁の真空機能を備える上記のタンク21、22。また、二重壁のタンクは、主タンクが破裂するまれな場合に安全閉じ込め装置として働く。
【0043】
(D)環境からLNGタンクおよびその内容物への熱流量を最小にするために、たとえばエアロゲルなどの軽量断熱27を利用する上記のどちらでもの代替実施形態。エアロゲル断熱は、二重壁のタンク設計に加えて、またはその代わりに使用することができる。
【0044】
(E)タンクの二重壁の間のスペースを能動的に排気するために設計されるオプションの真空ポンプ28。ポンプは、LNGのボイルオフの燃料、LNG、Jet−A、電力または航空機で利用できるいずれもの他のパワー源から動作させることができる。
【0045】
(F)LNG流体への熱伝達を減少させるために、主タンクの内部に沈められる極低温のポンプ31を備えるLNGタンク。
【0046】
(G)正常、または非常時の条件の下でタンクからLNGを除去することが可能な1つまたは複数のドレイン管路36を備えるLNGタンク。LNGのドレイン管路36は、重力LNG頭による排出速度より低い除去速度を増加させるために、適切な極低温のポンプに接続される。
【0047】
(H)外部環境からの熱吸収によって形成される気体の天然ガスを取り出すために、1つまたは複数のベント管路41を備えるLNGタンク。このベント管路41システムは、タンクを、一方向リリーフバルブまたは背圧バルブ39を使用して所望の圧力に保つ。
【0048】
(I)過圧状況が生じた場合、主ベント管路に対する並列の安全リリースシステム45を備えるLNGタンク。バーストディスク(burst disk)が、代替機能または並列機能46である。リリース通気が、気体燃料を機外に導くことになるはずである。
【0049】
(J)LNG燃料タンクであって、上記の設計特徴のいくつか、またはすべてを備え、その形状は、商用の航空機上で設計され利用できるようなものなど、標準のJet−A補助燃料タンクと関連する既存のエンベロープに適合するように設計される、LNG燃料タンク。
【0050】
(K)LNG燃料タンクであって、上記の設計特徴のいくつか、またはすべてを備え、その形状は、商用の航空機上で見られるようなものなど、従来の旅客機および貨物航空機の下部貨物倉(複数可)内に適合し合うように設計される、LNG燃料タンク。
【0051】
(L)LNG、タンクおよび構造上の要素を適切に断熱するための、既存の、または新しい航空機の中央翼タンク22に対する変更。
【0052】
通気およびボイルオフのシステムは、知られる方法を使用して設計される。LNGのボイルオフは、エネルギーを吸収して、タンクおよびその内容物を冷却する蒸発プロセスである。ボイルオフしたLNGは、様々な異なるプロセスによって利用する、および/または消費することができ、いくつかの場合、航空機システムに対して有用な仕事をし、他の場合、環境上より許容可能な設計として、燃料を単に燃焼させる。たとえば、LNGタンクからの通気ガスは、主にメタンからなり、次の事項のいずれもの、またはすべての組み合わせのために使用される:
(A)航空機のAPU(Auxiliary Power Unit:補助パワーユニット)180に送る。
図3に示すように、タンクからの気体のベント管路は、燃焼器中で使用するために、直列で、または並列で補助パワーユニットに至る経路に指定される。APUは、民間用および軍用の航空機上で通常見られる既存のAPU、または天然ガスのボイルオフを有用な電気的な、および/または機械的なパワーに変換するのに専用の別個のAPUとすることができる。ボイルオフの天然ガスのコンプレッサが、APU中で利用するのに必要な適切な圧力にまで、天然ガスを圧縮するために利用される。次いで、APUは、エンジンまたはA/C上のいずれものシステムに電力を提供する。
【0053】
(B)1つまたは複数の航空機ガスタービンエンジン(複数可)101に送る。
図3に示すように、LNG燃料タンクからの天然ガスのベント管路は、主ガスタービンエンジン101の1つまたは複数に至る経路に指定され、動作の間、追加の燃料源をエンジンにもたらす。天然ガスのコンプレッサが、航空機ガスタービンエンジン中で利用するのに必要な適切な圧力に通気気体を上げるために利用される。
【0054】
(C)燃やされる。
図3に示すように、タンクからの天然ガスのベント管路は、それ自体の電気的な火花点火システムを備える小さな専用の通気燃焼器190に至る経路に指定される。このようにして、メタンガスは、大気に放出されない。燃焼生成物は、排出され、それは、環境上より許容可能なシステムをもたらすことになる。
【0055】
(D)通気される。
図3に示すように、タンクからの天然ガスのベント管路は、航空機ガスタービンの1つまたは複数の排気ダクトに至る経路に指定される。あるいは、ベント管路は、APU排気ダクトまたは航空機の後縁のいずれもへの別個の専用の管路に至る経路に指定することができる。天然ガスは、これらの場所Vの1つまたは複数で、大気中に適切に排出することができる。
【0056】
(E)地上動作。
図3に示すように、地上動作の間、ベント管路41が、地上支援装置に取り付けられるように、システムのいずれも設計することができ、地上支援装置は、天然ガスのボイルオフを集めて、いずれもの地上ベースのシステム中でそれを利用する。また、通気は、地上支援装置を用いて燃料を補給する動作中に、行うことができ、地上支援装置は、流入システム32を使用して航空機のLNGタンク中に燃料を注入し、かつ通気ガスを捕捉して再使用することが同時にできる(同時の通気および燃料補給は、
図3で(S)として示す)。
【0057】
IV. 推進(エンジン)システム
図4に、極低温の液体燃料112を使用して推進力を発生することが可能なガスタービンエンジン101を含む、例示の二系統燃料の推進システム100を示す。ガスタービンエンジン101は、高圧タービン155によって駆動されるコンプレッサ105と、燃料を燃焼させ、高圧タービン155を駆動する熱ガスを発生する燃焼器90とを含む。燃焼器90は、ケロシンベースの燃料など、従来の液体燃料を燃焼させることが可能である。また、燃焼器90は、たとえば気化器60などによって燃焼させるために適切に準備された、たとえばLNGなどの極低温燃料を燃焼させることが可能である。
図4に、極低温の液体燃料112を気体燃料13に変えることが可能な気化器60を概略的に示す。二系統燃料の推進システム100のガスタービンエンジン101は、点火するために気体燃料13を燃焼器90に供給する燃料ノズル80をさらに含む。1つの例示の実施形態では、使用される極低温の液体燃料112は、液化天然ガス(LNG)である。ターボファンタイプの二系統燃料の推進システム100(たとえば
図4に示す)では、ガスタービンエンジン101は、高圧コンプレッサ105から軸方向で前部に位置決めされるファン103を含む。ブースタ104(
図4に示す)は、ファン103と高圧コンプレッサ105の間で軸方向に位置決めされ、ファンおよびブースタは、低圧タービン157によって駆動される。他の実施形態では、二系統燃料の推進システム100のガスタービンエンジン101は、中間圧タービンによって駆動される中間圧コンプレッサを含むことができる(両方とも、
図4に示さず)。ブースタ104(または中間圧コンプレッサ)は、コンプレッサ105に入る空気の圧力を上昇させ、コンプレッサ105によってより高い圧力比を発生するのを促進する。
図4に示す例示の実施形態では、ファンおよびブースタは、低圧タービン157によって駆動され、高圧コンプレッサは、高圧タービン155によって駆動される。
【0058】
気化器60は、
図4に概略的に示され、エンジン101上に、またはその近くに搭載される。気化器60の機能の1つは、液化天然ガス(LNG)燃料などの極低温燃料に熱エネルギーを加えて、その温度を上昇させることである。この文脈では、気化器は、熱交換器として機能する。気化器60の別の機能は、液化天然ガス(LNG)燃料などの極低温燃料を容積的に膨張させて、その後で燃焼させるために気体の形態にすることである。気化器60中で使用するための熱(熱エネルギー)は、推進システム100および航空機システム5中の多くの源の1つまたは複数からもたらすことができる。これらは、ただし、これらに限定されないが、:(i)ガスタービン排気、(ii)コンプレッサ中間冷却、(iii)高圧および/または低圧タービンのクリアランス制御空気、(iv)LPTパイプ冷却寄生空気(cooling parasitic air)、(v)高圧および/または低圧のタービン中で使用される冷却空気、(vi)潤滑油、および(vii)機上のアビオニックス、航空機システム5中のエレクトロニックスを含む。また、気化器のための熱は、コンプレッサ105、ブースタ104、中間圧コンプレッサ(図示せず)および/またはファンバイパス空気流107(
図4参照)から供給することができる。
図5に、コンプレッサ105からの排出空気の一部分を使用する例示の実施形態を示す。コンプレッサ排出空気2の一部分は、
図5のアイテム3によって示すように、抽気されて気化器60に送られる。たとえばLNGなどの極低温の液体燃料21は、気化器60に入り、空気流3からの熱が、極低温の液体燃料21に伝達される。1つの例示の実施形態では、加熱された極低温燃料は、さらに膨張して、ここに既に述べたように、気化器60中で気体燃料13を生成する。次いで、気体燃料13は、燃料ノズル80を使用して燃焼器90中に導入される(
図5参照)。気化器から出た冷却された空気流は、燃焼器90の構造および/または高圧タービン155の構造など、他のエンジン構成要素を冷却するために使用することができる。気化器60中の熱交換器部分は、たとえばシェルおよびチューブ設計、二重パイプ設計、および/またはフィンプレート設計など、知られる設計のものとすることができる。気化器60中の燃料112の流れ方向および加熱流体96の方向は(
図4参照)、並流の方向、逆流の方向とすることができ、またはそれらは、極低温燃料と加熱流体の間の効率的な熱交換を促進するために、横流の形態で流れることができる。
【0059】
気化器60中の熱交換は、極低温燃料と加熱流体の間で金属製壁を介して直接行うことができる。
図5に、気化器60中の直接熱交換器を概略的に示す。
図6aに、ガスタービンエンジン101の排気気体99の一部分97を使用して極低温の液体燃料112を加熱する例示の直接熱交換器63を概略的に示す。あるいは、気化器60中の熱交換は、極低温燃料と上記で挙げた加熱源の間で、中間の加熱流体の使用を介して間接的に行うことができる。
図6bに、中継の加熱流体68を使用して極低温の液体燃料112を加熱する間接熱交換器64を使用する例示の気化器60を示す。
図6bに示す、そのような間接熱交換器では、中継の加熱流体68は、ガスタービンエンジン101からの排気気体99の一部分97によって加熱される。次いで、中継の加熱流体68からの熱は、極低温の液体燃料112に伝達される。
図6cに、気化器60中で使用される間接交換器の別の実施形態を示す。この代替実施形態では、中継の加熱流体68は、ガスタービンエンジン101のファンバイパス流107の一部分によって、さらにその上エンジン排気気体99の一部分97によって加熱される。次いで、中継の加熱流体68は、極低温の液体燃料112を加熱する。制御バルブ38が、流れの間での相互的な熱交換を制御するために使用される。
【0060】
(V)二系統燃料の航空機システムを動作させる方法
二系統燃料の推進システム100を使用する航空機システム5の動作の例示の方法は、
図7に概略的に示す例示の飛行ミッションのプロファイルに関連して、次のように述べる。
図7に概略的に示す例示の飛行ミッションのプロファイルは、文字記号A−B−C−D−E−…−X−Yなどによって識別される飛行ミッションの様々な部分中のエンジンパワー設定を示す。たとえば、A−Bは、スタートを表し、B−Cは、地上のアイドルを示し、G−Hは、テイクオフを示し、T−LおよびO−Pは、クルーズを示すなどである。航空機システム5の動作の間(
図7の例示の飛行プロファイル120参照)、推進システム100中のガスタービンエンジン101は、たとえば、推進システムの動作の第1の選択される部分の間、たとえばテイクオフの間など、第1の燃料11を使用することができる。推進システム100は、クルーズ中などの推進システムの動作の第2の選択される部分の間、たとえばLNGなどの第2の燃料12を使用することができる。あるいは、航空機システム5の動作の選択される部分の間、ガスタービンエンジン101は、第1の燃料11と第2の燃料12の両方を同時に使用して推進力を発生することが可能である。第1の燃料と第2の燃料の割合は、二系統燃料の推進システム100の動作の様々なステージの間、必要に応じて0%と100%の間で変化させることができる。
【0061】
二系統燃料のガスタービンエンジン101を使用して二系統燃料の推進システム100を動作させる例示の方法は:エンジン101中でガスタービンを駆動する熱ガスを発生する燃焼器90中で第1の燃料11を燃焼させることによって、航空機エンジン101(
図7のA−B参照)をスタートさせるステップを含む。第1の燃料11は、ケロシンベースのジェット燃料など、知られるタイプの液体燃料とすることができる。エンジン101は、スタートされたとき、たとえば極低温燃料などの第2の燃料を気化させるために使用することができるのに十分な熱ガスを生成することができる。次いで、第2の燃料12は、気化器60中の熱を使用して気化されて、気体燃料13を形成する。第2の燃料は、たとえばLNGなどの極低温の液体燃料112とすることができる。例示の気化器60の動作は、ここに既に述べられている。次いで、気体燃料13は、燃料ノズル80を使用してエンジン101の燃焼器90中に導入され、そして気体燃料13は、燃焼器90中で燃焼して、燃焼器90は、エンジン中のガスタービンを駆動する熱ガスを発生する。燃焼器中に導入される第2の燃料の量は、流れ絞りバルブ65を使用して制御することができる。例示の方法は、航空機エンジンをスタートさせた後、必要に応じて、第1の燃料11の供給を停止するステップをさらに含む。
【0062】
二系統燃料の航空機ガスタービンエンジン101を動作させる例示の方法では、第2の燃料12を気化させるステップは、エンジン101中の熱源から抽出される熱ガスからの熱を使用して実施することができる。既に述べたように、本方法の一実施形態では、熱ガスは、エンジン中のコンプレッサ155からの圧縮空気とすることができる(たとえば、
図5に示すように)。本方法の別の実施形態では、熱ガスは、排気ノズル98またはエンジンの排気流99から供給される(たとえば、
図6aに示すように)。
【0063】
二系統燃料の航空機エンジン101を動作させる例示の方法は、たとえば
図7に示すようなものなど、飛行プロファイル120の選択される部分の間、第1の燃料11と第2の燃料12の選択される割合を使用して、ガスタービンエンジン101を駆動する熱ガスを発生するステップを、適宜、含む。第2の燃料12は、たとえば液化天然ガス(LNG)など、極低温の液体燃料112とすることができる。上記の方法では、飛行プロファイル120(
図7参照)の異なる部分の間、第1の燃料12と第2の燃料13の割合を変化させるステップを、経済的および効率的な形で航空機システムを動作させる上で役立たせるために使用することができる。たとえば、これは、第2の燃料12のコストが第1の燃料11のコストより低い状況では、可能である。この事例は、たとえば、第2の燃料12としてLNGを、第1の燃料11としてJet−A燃料などのケロシンベースの液体燃料を使用する間のことである。二系統燃料の航空機エンジン101を動作させる例示の方法では、使用される第2の燃料12の量の使用される第1の燃料の量に対する割合(比)は、飛行ミッションの部分に依存して約0%と100%の間で変化させることができる。たとえば、1つの例示の方法では、使用されるより安価な第2の燃料(LNGなど)の使用されるケロシンベースの燃料に対する割合は、飛行プロファイルのクルーズ部の間、燃料のコストを最小にするために、約100%である。別の例示の動作させる方法では、第2の燃料の割合は、非常により高い推力レベルが必要である飛行プロファイルであるテイクオフ部の間、約50%である。
【0064】
上記に述べた二系統燃料の航空機エンジン101を動作させる例示の方法は、制御システム130を使用して、燃焼器90中に導入される第1の燃料11および第2の燃料12の量を制御するステップをさらに含むことができる。例示の制御システム130は、
図4に概略的に示されている。制御システム130は、燃焼器90に導入される第1の燃料11の量を制御するために、制御信号131(S1)を制御バルブ135に送る。また、制御システム130は、燃焼器90に導入される第2の燃料12の量を制御するために、別の制御信号132(S2)を制御バルブ65に送る。使用される第1の燃料11と第2の燃料12の割合は、制御器134によって0%と100%の間で変化させることができ、制御器134は、飛行プロファイル120の異なる飛行セグメントの間、必要に応じて、割合を変化させるようにプログラムされる。また、制御システム130は、たとえばファン速度またはコンプレッサ速度または他の適切なエンジン動作パラメータに基づくフィードバック信号133を受け取ることができる。1つの例示の方法では、制御システムは、たとえばFADEC(Full Authority Digital Electronic Control)357など、エンジン制御システムの一部分とすることができる。別の例示の方法では、機械的な、または油圧機械式のエンジン制御システムが、制御システムの一部分またはそのすべてを形成することができる。
【0065】
制御システム130、357のアーキテクチャおよび戦略は、航空機システム5の経済的な動作を達成するために、適切に設計される。ブーストポンプ52および高圧ポンプ(複数可)58への制御システムのフィードバックは、エンジンのFADEC357を介して、あるいは、様々な利用できるデータバスを通じてエンジンのFADECと、および航空機システム5の制御システムと適宜通信することができる別個の制御システムを備える分散コンピューティングによって実現することができる。
【0066】
たとえば
図4に示すアイテム130などの制御システムは、安全のためにポンプ52、58の速度および出力を変化させて、翼7を横切る規定された圧力を(たとえば、約30〜40psiで)保ち、高圧ポンプ58の下流の差圧を(たとえば、約100〜1500psiで)保ち、それによってLNGの臨界点より高くシステム圧力を保ち、そして二相流を防止し、さらに高い圧力および燃料密度での動作によるLNG燃料供給システムの容積および重量を減少させる。
【0067】
例示の制御システム130、357では、制御システムのソフトウェアは、次のロジックのいずれか、またはすべてを含むことができる:(A)テイクオフ時および/または高いコンプレッサ排気温度(T3)および/またはタービン入口温度(T41)でのエンベロープ中の他の点で、たとえばLNGなどの極低温燃料の使用を最大にする制御システムの戦略;(B)燃料コストを最小にするために、ミッション時、たとえばLNGなどの極低温燃料の使用を最大にする制御システムの戦略;(C)高い高度での再点火のためだけに、たとえばJet−Aなどの第1の燃料に再点火する制御システム130、357;(D)既定設定としてだけで従来のJet−Aに基づきグランドスタートを実施する制御システム130、357;(E)いずれもの通常のマニューバーでない間だけ、Jet−Aを既定状態とする制御システム130、357;(F)いずれもの割合にでも、従来の燃料(Jet−Aのような)、またはたとえばLNGなどの極低温燃料を手動(パイロット指示)によって選択することを可能にする制御システム130、357;(G)すべての迅速な加速および減速のために、従来の燃料(Jet−Aのような)を100%利用する制御システム130、357。
【0068】
この書面による記述は、本発明を開示するために、また、いずれもの当業者が本発明を実施し使用することを可能にするために、最良の形態を含む実施例を使用している。本発明の特許性がある範囲は、当業者に思い浮かぶ他の実施例を含むことができる。そのような他の実施例は、それらが請求項の文字通りの意味と違わない構造上の要素を有する場合、または請求項の文字通りの意味と差が実質的でない同等の構造上の要素を含む場合、請求項の範囲内に含まれるものと意図される。