特許第6018069号(P6018069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018069
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】血友病Bを治療する方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161020BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20161020BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20161020BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20161020BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20161020BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20161020BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20161020BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161020BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20161020BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20161020BHJP
   A61K 51/00 20060101ALI20161020BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20161020BHJP
   A61K 33/24 20060101ALI20161020BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20161020BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20161020BHJP
   A61K 31/047 20060101ALI20161020BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20161020BHJP
   A61K 35/407 20150101ALI20161020BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K14/47
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N5/10
   C12N1/21
   A61P7/04
   A61P43/00 111
   A61P43/00 121
   A61K45/00
   A61K48/00
   A61K43/00
   A61K31/7048
   A61K33/24
   A61K31/17
   A61K31/573
   A61K31/047
   A61K35/76
   A61K35/407
   A61K31/7004
【請求項の数】13
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2013-533982(P2013-533982)
(86)(22)【出願日】2011年10月12日
(65)【公表番号】特表2013-544077(P2013-544077A)
(43)【公表日】2013年12月12日
(86)【国際出願番号】US2011056020
(87)【国際公開番号】WO2012051343
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年9月11日
(31)【優先権主張番号】61/392,333
(32)【優先日】2010年10月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】301040958
【氏名又は名称】ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィア
【氏名又は名称原語表記】THE CHILDREN’S HOSPITAL OF PHILADELPHIA
(73)【特許権者】
【識別番号】508241200
【氏名又は名称】サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ディー.グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン エー.ハイ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル シー.ホームズ
(72)【発明者】
【氏名】ホジュン リ
【審査官】 市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−531056(JP,A)
【文献】 特表2008−506359(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/009086(WO,A1)
【文献】 Hematology Am. Soc. Hematol. Educ. Program,2007年,pp.466-472
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPI(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変したジンクフィンガータンパク質DNA結合ドメインを含むタンパク質であって、
そのDNA結合ドメインが、N末端からC末端に向けてF1〜F4またはF1〜F5の順番で並んだ4つまたは5つのジンクフィンガー認識領域を含み、
(i)DNA結合ドメインが、5つのジンクフィンガー認識領域を含んでいるときには、F1〜F5は、以下のアミノ酸配列:
F1:QSGDLTR(配列番号4)
F2:RSDVLSE(配列番号5)
F3:DRSNRIK(配列番号6)
F4:RSDNLSE(配列番号7)
F5:QNATRIN(配列番号8)を含み;
(ii)DNA結合ドメインが、4つのジンクフィンガー認識領域を含んでいるときには、F1〜F4は、以下のアミノ酸配列:
F1:RSDSLSV(配列番号10)
F2:TSGHLSR(配列番号11)
F3:RSDHLSQ(配列番号12)
F4:HASTRHC(配列番号13)を含む、タンパク質。
【請求項2】
野生型もしくは改変された開裂ドメインまたは開裂半ドメインをさらに含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1または2に記載のタンパク質、または請求項3に記載のポリヌクレオチドを含む、単離された細胞。
【請求項5】
対象の血友病Bを治療するための、肝細胞を含む医薬組成物であって、
機能的なIX因子(FIX)タンパク質をコードする配列を有する核酸分子が、少なくとも1つのジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて細胞のゲノムに組み込まれ、該ジンクフィンガーヌクレアーゼは、請求項1又は2に記載のタンパク質であるか、又は請求項3に記載のポリヌクレオチドによってコードされる、医薬組成物。
【請求項6】
前記の機能的なIX因子(FIX)タンパク質をコードする配列を有する核酸分子内在性遺伝子に組み込まれている、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記内在性遺伝子が、FIX遺伝子およびセーフハーバー遺伝子からなる群より選択される、請求項5または6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
医薬組成物が、傷のない動物の肝臓に静脈内投与されることによって、または腹腔内投与されることによって、または肝臓の柔組織に直接注入されることによって、または肝動脈に注入されることによって、または胆管を通じて逆行注入されることによって、少なくとも1つのジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて前記の機能的なIX因子(FIX)タンパク質をコードする配列を有する核酸分子が肝細胞のゲノムに組み込まれた該細胞が、肝臓に送達される、請求項5〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
対象の部分的肝除去が更に実施され、および/またはガンマ線照射、UV照射、トリチウム標識したヌクレオチド、シスプラチン、エトポシド、ヒドロキシ尿素、アフィジコリン、プレドニゾロン、アデノウイルス、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種類の二次剤が対象に更に投与される、請求項5〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
記細胞が単離された細胞である、請求項5〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記対象が、胚、胎児、新生児、幼児、若年者、成人からなる群より選択される、請求項5〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記の機能的なIX因子(FIX)タンパク質をコードする配列を有する核酸分子、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼ、そのジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、これらの組み合わせのいずれかが、前記細胞の表面受容体に特異的に結合するホーミング剤と組み合わされる、請求項5〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記ホーミング剤が、ガラクトースを含むか、AAVコートタンパク質とガラクトースのハイブリッドを含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、遺伝子改変と血友病治療の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
関連する出願の相互参照
本出願は、2010年10月12日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第61/392,333号の恩恵を主張するものであり、その開示内容の全体が参考としてこの明細書に組み込まれている。
【0003】
連邦から資金を提供された研究のもとでなされた発明の権利の宣言
適用されず。
【0004】
背景
血友病Bは血液凝固系の遺伝子異常であり、関節と軟組織への出血と、けがをした部位または実施中の外科手術の部位への過剰な出血を特徴とする。血友病Bは臨床的には血友病Aと区別できないが、血友病AではVIII因子(FVIII)が不足するか存在しておらず、血友病Bの患者ではIX因子(FIXまたはF.IX)が不足するか存在していない。IX因子は凝固系に関与するセリンプロテアーゼの1つをコードしており、野生型IX因子タンパク質の正常な循環レベルの3%を回復するだけで自発的な出血を阻止できることがわかっている。
【0005】
機能するFIXタンパク質をコードするプラスミドその他のベクター(例えばAAV)の導入を含む遺伝子治療(その中には、肝臓を対象とした遺伝子治療プロトコルと、直接的な筋肉内注射が含まれる)が、血友病Bの治療に関して報告されている。例えばアメリカ合衆国特許第6,936,243号;Lee他(2004年)Pharm. Res.、第7巻、1229〜1232ページ;Graham他(2008年)Genet. Vaccines Ther.、第3巻、6〜9ページを参照のこと。しかしこれらのプロトコルでは、抑制性の抗IX因子(抗FIX)抗体と、送達用ビヒクルに対する抗体の形成が、現在でもFIXタンパク質置換に基づく血友病B治療の主要な障害となっている。
【0006】
アメリカ合衆国特許出願第12/798,749号には、機能するFIXタンパク質を単離された幹細胞に標的組み込みすることと、治療を必要とする患者にそのFIX産生幹細胞を導入して血友病Bを治療することが記載されている。
しかし血友病Bの患者を治療する別の組成物と方法が相変わらず必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
この明細書には、血友病Bを治療するため、機能するFIXタンパク質をコードする配列を標的組み込みするための方法と組成物が開示されている。特に、この方法は、この病気を改善するため、機能するFIXタンパク質をコードする配列の標的組み込みを媒介するヌクレアーゼを細胞のゲノムに投与する操作を含んでいる。
【0008】
1つの特徴では、ゲノム中の興味の対象である領域(例えばIX因子遺伝子)内の標的部位に結合するDNA結合ドメイン(例えば、1つ以上の改変されたジンクフィンガー結合ドメインを含むジンクフィンガータンパク質(ZFP)、または1つ以上の改変されたTALE DNA結合ドメインを含むTALEタンパク質)がこの明細書に記載されている。一実施態様では、DNA結合ドメインはヌクレアーゼである(例えばZFPはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)であり、TALEは興味の対象である標的ゲノム領域を開裂させるTALEヌクレアーゼ(TALEN)である)。ただしZFNまたはTALENは、1つ以上の改変されたDNA結合ドメインと、ヌクレアーゼ開裂ドメインまたはヌクレアーゼ開裂半ドメインを含んでいる。開裂ドメインと開裂半ドメインは、例えばさまざまな制限エンドヌクレアーゼおよび/またはホーミングエンドヌクレアーゼから得ることができる。一実施態様では、開裂半ドメインは、IIS型の制限エンドヌクレアーゼ(例えばFok I)に由来する。いくつかの実施態様では、ジンクフィンガードメインは、内在性FIX遺伝子内の標的部位(例えば表1に示したジンクフィンガードメイン(または表1に示したように標的部位に結合するジンクフィンガードメイン))を認識する。
【0009】
別の1つの特徴では、この明細書に記載した1種類以上のZFNおよび/またはTALENをコードするポリヌクレオチドがこの明細書に記載されている。そのポリヌクレオチドとして、例えばmRNAが可能である。
【0010】
別の1つの特徴では、この明細書に記載した1種類以上のZFNおよび/またはTALENをコードするポリヌクレオチドを含んでいてプロモータに機能可能に連結したZFN発現ベクターおよび/またはTALEN発現ベクターがこの明細書に記載されている。一実施態様では、発現ベクターはウイルスベクターである。1つの特徴では、ウイルスベクターは組織特異的親和性を示す。
【0011】
別の1つの特徴では、1種類以上のZFN発現ベクターおよび/またはTALEN発現ベクターを含む宿主細胞がこの明細書に記載されている。その宿主細胞は、1種類以上のZFN発現ベクターおよび/またはTALEN発現ベクターを用いて安定に形質転換すること、または一過性にトランスフェクトすること、またはその宿主細胞に1種類以上のZFP発現ベクターまたはTALEN発現ベクターを組み合わせることが可能である。一実施態様では、宿主細胞は胚性幹細胞である。別の実施態様では、1種類以上のZFN発現ベクターおよび/またはTALEN発現ベクターは、宿主細胞の中で1種類以上のZFNおよび/またはTALENを発現する。別の一実施態様では、宿主細胞は、外来性ポリヌクレオチドドナー配列をさらに含んでいる。この明細書に記載したどの実施態様でも、宿主細胞は、肝細胞、筋肉細胞、幹細胞、胚細胞のいずれかを含むことができる。細胞は、任意の生物(例えばヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌや、他の哺乳動物の細胞)からのものが可能である。
【0012】
別の1つの特徴では、血友病Bを治療する方法として、ヌクレアーゼを用い、FIXタンパク質をコードする配列を、それを必要とする対象の細胞に組み込む方法がこの明細書に記載されている。いくつかの実施態様では、FIXコード配列は、ウイルスベクター、および/または非ウイルスベクター(例えばプラスミド)、および/またはその組み合わせを用いて送達される。いくつかの実施態様では、ベクターは、AAVベクター(例えばAAV8)を含んでいる。いくつかの実施態様では、ヌクレアーゼおよび/またはFIXコード配列は、静脈内(例えば門脈内静脈)投与を通じて傷のない動物の肝臓に送達される。
【0013】
この明細書に記載したどの方法でも、ヌクレアーゼとして、1種類以上のジンクフィンガーヌクレアーゼ、および/または1種類以上のホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)、および/または1種類以上のTALエフェクタドメインヌクレアーゼ(“TALEN”)が可能である。この明細書に記載したヌクレアーゼ(例えばZFNおよび/またはTALEN)は、遺伝子内の、またはその遺伝子に隣接したコード領域、または非コード領域(例えばリーダー配列、トレーラ配列、イントロン)にある興味の対象である領域、またはコード領域の上流または下流の非転写領域内のコード領域または非コード領域にある興味の対象である領域と結合すること、および/またはその興味の対象である領域を開裂させることができる。いくつかの実施態様では、ZFNは内在性IX因子遺伝子(突然変異体または野生型)と結合する、および/またはその遺伝子を開裂させる。別の実施態様ではZFNおよび/またはTALENは、セーフハーバー遺伝子(例えば破壊されることが細胞にとって毒性でも破壊的でもないあらゆる遺伝子)と結合する、および/またはその遺伝子を開裂させる。そのような遺伝子は、例えば、CCR5遺伝子、PPP1R12C(AAV SIとしても知られる)遺伝子、Rosa遺伝子である。例えばアメリカ合衆国特許出願公開第2008/0299580号;第2008/0159996号;第2010/00218264号を参照のこと。
【0014】
さらに、この明細書に記載したどの方法も、追加ステップをさらに含むことができる。それは例えば、肝部分切除するステップや、形質導入の増大および/または肝細胞による細胞周期の実行を誘導する二次剤を用いて治療するステップである。二次剤の例として、ガンマ線照射、UV照射、トリチウム標識したヌクレオチド(例えばチミジン)、シスプラチン、エトポシド、ヒドロキシ尿素、アフィジコリン、プレドニゾロン、四塩化炭素、アデノウイルスなどがある。
【0015】
この明細書に記載した方法は、試験管内、生体外、生体内で実施することができる。いくつかの実施態様では、組成物は、傷のない生きた哺乳動物に導入される。哺乳動物は、送達時に成長のどの段階であってよく、例えば胚、胎児、新生児、幼児、青年期、成体が可能である。それに加え、標的とする細胞は、健康でも病気でもよい。いくつかの実施態様では、組成物(例えばヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドおよび/またはFIXコード配列)は、生きた動物の肝臓に例えば門脈内注射を通じて送達される。別の実施態様では、1種類以上の組成物を、静脈内に(門脈内静脈以外で、例えば尾の静脈に注射)、動脈内に、腹腔内に、肝臓の柔組織に(例えば注射で)、肝動脈に(例えば注射で)、胆管を通じて(例えば注射で)送達する。
【0016】
組成物を特定のタイプの細胞(例えば肝細胞)に向けるため、投与する組成物の1つ以上に、細胞の表面受容体と特異的に結合するホーミング剤を会合させる。例えばベクターは、ある種の肝臓系細胞が受容体を有するリガンド(例えばガラクトース)と共役させることができる。共役は、共有結合(例えばグルタルアルデヒドなどの架橋剤)でも、非共有結合(例えばアビジン化されたリガンドをビオチニル化されたベクターに結合させる)でもよい。別の形態の共有共役は、ベクターのストックを準備するのに用いるAAVヘルパープラスミドを改変し、1種類以上のコードされたコートタンパク質が、元のAAVコートタンパク質とペプチドリガンドまたはタンパク質リガンドのハイブリッドとなるようにすることによって提供される。するとそのリガンドがウイルス粒子の表面に露出する。
【0017】
標的細胞として、ヒト細胞、または他の哺乳動物(家畜動物を含む)の細胞、特に非ヒト霊長類と、齧歯目の哺乳動物(マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ目の哺乳動物(ウサギ)、食肉目の哺乳動物(ネコ、イヌ)、偶蹄類の哺乳動物(ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ)が可能である。いくつかの特徴では、標的細胞は組織(例えば肝臓)を含んでいる。いくつかの特徴では、標的細胞は、この明細書に記載した任意の方法による幹細胞(例えば胚性幹細胞、誘導性多能性幹細胞、肝幹細胞など)または動物の胚であり、次いでその胚が移植されて生きた動物が生まれる。その後その動物は性的に成熟するまで育てられ、子孫を作ることが可能になる。するとその子孫のうちの少なくとも数匹は、改変されたゲノムを含んでいる。
【0018】
これらの特徴と他の特徴は、開示内容全体に照らすことによって当業者には容易に明らかになろう。例えば開示内容には以下の実施態様が含まれる。
【0019】
1.改変されたジンクフィンガータンパク質DNA結合ドメインを含むタンパク質であって、そのDNA結合ドメインが、N末端からC末端に向けてF1〜F4またはF1〜F5の順番で並んだ4つまたは5つのジンクフィンガー認識領域を含み、
(i)DNA結合ドメインが、5つのジンクフィンガー認識領域を含んでいるときには、F1〜F5は、以下のアミノ酸配列、すなわち
F1:QSGDLTR(配列ID番号4)
F2:RSDVLSE(配列ID番号5)
F3:DRSNRIK(配列ID番号6)
F4:RSDNLSE(配列ID番号7)
F5:QNATRIN(配列ID番号8)を含み;
(ii)DNA結合ドメインが、4つのジンクフィンガー認識領域を含んでいるときには、F1〜F4は、以下のアミノ酸配列、すなわち
Fl:RSDSLSV(配列ID番号10)
F2:TSGHLSR(配列ID番号11)
F3:RSDHLSQ(配列ID番号12)
F4:HASTRHC(配列ID番号13)を含むタンパク質。
【0020】
2.開裂ドメインまたは開裂半ドメインをさらに含む、1に記載のタンパク質。
【0021】
3.前記開裂半ドメインが、野生型の、または改変されたFok I開裂半ドメインである、2に記載のタンパク質。
【0022】
4.1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0023】
5.4に記載のポリヌクレオチドを含む遺伝子送達ベクター。
【0024】
6.1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質を含むか、4のポリヌクレオチドを含む単離された細胞。
【0025】
7.1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質を含むか、4のポリヌクレオチドを含む単離された細胞。
【0026】
8.対象の血友病Bを治療する方法であって、この方法が、少なくとも1つのヌクレアーゼを用いて機能するIX因子(FIX)タンパク質をコードする配列をその対象の細胞のゲノムに(例えば標的組み込みを通じて)挿入する操作を含む方法。
【0027】
9.前記配列を内在性遺伝子に組み込む、8に記載の方法。
【0028】
10.前記内在性遺伝子の選択を、FIX遺伝子とセーフハーバー遺伝子からなるグループの中から行なう、9に記載の方法。
【0029】
11.ウイルスベクター、非ウイルスベクター、ならびにこれらの組み合わせからなるグループの中から選択したベクターを用い、前記配列および/または前記ヌクレアーゼを前記細胞に送達する、8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【0030】
12.前記細胞が肝細胞であり、前記配列を傷のない動物の(例えば肝臓内への)静脈内投与によって前記細胞に送達する、8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【0031】
13.前記少なくとも1つのヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、ホーミングエンドヌクレアーゼのいずれかである、8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【0032】
14.対象の肝部分切除を実行するステップをさらに含む、8〜13のいずれか1項に記載の方法。
【0033】
15.少なくとも1種類の二次剤で対象を治療するステップをさらに含む、8〜14のいずれか1項に記載の方法。
【0034】
16.前記二次剤の選択を、ガンマ線照射、UV照射、トリチウム標識したヌクレオチド、シスプラチン、プレドニゾロン、四塩化炭素、エトポシド、ヒドロキシ尿素、アフィジコリン、アデノウイルス、ならびにこれらの組み合わせからなるグループの中から行なう、15に記載の方法。
【0035】
17.8〜16のいずれか1項に記載の方法において、前記細胞が単離された細胞であり、この方法が、その単離された細胞を対象に投与する操作をさらに含む方法。
【0036】
18.前記対象の選択を、胚、胎児、新生児、幼児、若年者、成人からなるグループの中から行なう、8〜17のいずれか1項に記載の方法。
【0037】
19.前記配列を、前記細胞の表面受容体に特異的に結合するホーミング剤と組み合わせる操作をさらに含む、8〜18のいずれか1項に記載の方法。
【0038】
20.前記ホーミング剤が、ガラクトースを含むか、AAVコートタンパク質とガラクトースのハイブリッドを含む、19に記載の方法。
【0039】
21.前記少なくとも1つのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを、前記細胞の表面受容体に特異的に結合するホーミング剤と組み合わせる操作をさらに含む、8〜20のいずれか1項に記載の方法。
【0040】
22.前記ホーミング剤が、ガラクトースを含むか、AAVコートタンパク質とガラクトースのハイブリッドを含む、21に記載の方法。
【0041】
23.前記細胞の選択を、ヒト細胞、非ヒト霊長類細胞、齧歯目細胞、ウサギ目細胞、食肉目細胞、偶蹄類細胞からなるグループの中から行なう、8〜22のいずれか1項に記載の方法。
【0042】
24.標的細胞が幹細胞である、8〜22のいずれか1項に記載の方法。
【0043】
25.前記幹細胞が、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞、肝細胞、肝幹細胞のいずれかである、24に記載の方法。
【0044】
26.前記ヌクレアーゼが、1〜3のいずれか1項に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ、4に記載のポリヌクレアーゼ、5に記載の遺伝子送達ビヒクルのいずれかを含む、8〜25のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1のパネルa〜eは、N2 ZFNがIX因子(F9)イントロン1をコードしている遺伝子を効率的に開裂させ、ヒト細胞において相同組み換えを誘導することを示している。図1aは、ヒトF9遺伝子イントロン1の中のN2 ZFNペアの標的を示す模式図である。図1bは、2シストロンFLAGタグ付きZFN発現プラスミドを示している。図1cは、N2 ZFN発現プラスミドをK562細胞にトランスフェクトした後にSurveyor(登録商標)ミスマッチ・アッセイ(Transgenomics社、“Cel-I”)を行なった結果であるゲルを示している。このアッセイは、トランスフェクションの3日後にhF9遺伝子のイントロン1においてN2 ZFNによって誘導されたDSBのNHEJ修復の結果を示している。ZFNの発現をα-FLAGイムノブロッティングによって確認し、タンパク質の負荷をα-NFkB p65抗体を用いて評価した。図1dは、標的組み込み(TI)アッセイの図であり、ZFNを媒介としてNheI制限部位タグをhF9遺伝子に入れる時間経過を詳細に示している。図1eは、増加する量のNheIタグドナープラスミド(0〜4μg)とZFN発現プラスミドを同時にトランスフェクトした後のRFLPアッセイの結果を表わすゲルを示している。このデータは、トランスフェクションの3日後と10日後に遺伝子標的のレベルが増加しているのに対し、NheIタグドナー単独(4μg、“(-)ZFN”)では検出可能な遺伝子ターゲティングにならないことを示している。黒い矢印は、3日目と10日目の両方にTIから生じたNheI感受性開裂産物を示している。32Pで標識したヌクレオチドを用いてPCRとTI PCRを実施し、バンドの強度をホスフォイメージャによって定量した。ZFNの発現をα-FLAGイムノブロッティングによって確認し、タンパク質負荷をα-NFkB p65抗体を用いて評価した。
図2図2のパネルa〜eは、N2“着陸パッド”(Landing Pad、LP)を含むマウスにAAVを媒介としてN2 ZFNを送達することで、着陸パッド(LP)のイントロン1が効率的に開裂することを示している。図2aは、N2 ZFNが、ヒトF9ミニ遺伝子(LP)のイントロン1をどのようにして標的とするかを示す図であり、HBを引き起こすことが報告された突然変異(Thompson他、(1994年)Hum. Genet.、第94巻:299〜302ページ)をまねたものである。図2bはPCR分析からのゲルであり、LPコンストラクトがマウスのROSA26遺伝子座にノックインされたことを示している。図2cは、循環している血漿hFIXを検出するためのELISAの結果を示している。このデータは、LPマウスにhFIXを発現するウイルスベクターを注射(尾の静脈を通じて1e10ウイルスゲノム(v.g.)AAV-hFIXを注射)しない限り、hFIX特異的ELISAで測定したとき、このマウスが循環する血漿hFIXを持たないことを示している。図2dは、発現がApoEエンハンサとヒトα1-アンチトリプシンプロモータによって制御される2シストロンAAV8-N2 ZFN発現ベクターを示している。図2eは、1e11 v.g. AAV-N2発現ベクターを尾の静脈からLPマウスに注射した後に実施したCe1-Iアッセイの結果を示しており、注射してから7日後に肝臓DNAでLPイントロン1が開裂している。Ce1-Iアッセイを32Pで標識したヌクレオチドを用いてPCRアンプリコンで実施し、バンドの強度をホスフォイメージャによって定量した。肝臓ライッセート全体のα-FLAGイムノブロッティングによってZFNの発現を確認し、タンパク質負荷をα-NFkB p65抗体を用いて評価した。
図3図3のパネルaとbは、N2 ZFNにより、生体内でAAVを媒介として野生型F9のエキソン2〜8が着陸パッドのイントロン1に向かうことが促進されることを示している。図3aは、イントロン1へのhF9のエキソン2〜8のTIによってLP遺伝子の突然変異をいかに回避できるかを示している。標的となるLP対立遺伝子と標的とならないLP対立遺伝子は、プライマーP1、P2、P3を用いたPCRを通じて区別することができる。図3bは、プライマーP1/P2のペアとプライマーP1/P3のペアを用いたPCR分析のゲルであり、生後2日目のLP/HBマウスに5e10 v.g. AAV8-N2と2.5e11 v.g. AAV8-ドナーを同時に腹腔内投与すると遺伝子ターゲティングがうまくいくが、5e10 v.g. AAV8-N2だけを注射する場合、または5e10 v.g. AAV8-Mockと2.5e11 v.g. AAV8-ドナーを同時に注射する場合にはうまくいかないことを示している。32Pで標識したヌクレオチドを用いてPCRを実施し、産物のバンド強度をホスフォイメージャによって定量してターゲティングの頻度を評価した。標的となるサンプルでは、プライマーP1とP2が、標的となる野生型F9のエキソン2〜8の増幅がうまくいったことを示すより小さな産物を生成させるであろう。それに対してプライマーP1とP3は、標的とならない対立遺伝子よりも大きな産物を生成させるであろう。
図4図4のパネルa〜fは、生体内での肝臓遺伝子の補正によって循環するFIXが治療レベルになることを示している。図4aは、生後2日目に、5e10 v.g. AAV-N2だけ(n=7、肝部分切除(PHx)の前と後)、または5e10 v.g. AAV-N2と2.5e11 v.g. AAV-ドナー(n=7、PHxの前と後)、または5e10 v.g. AAV-Mockと2.5e11 v.g. AAV-ドナー(n=6、PHxの前と後)を腹腔内注射した後のLPマウスにおける血漿hFIXのレベルを示すグラフである。PHxのタイミングは矢印で示されている。誤差棒は標準誤差を示す。図4bは、尾の静脈に1e12 v.g. AAV-hFIX(大半がエピソーム)を注射し、その後にPHxを行なった後の野生型マウス(n=5)における血漿hFIXのレベルを示すグラフである。誤差棒は標準誤差を示す。図4cは、生後2日目に、5e10 v.g. AAV-N2だけ(n=8、PHx前;n=4、PHx後)、または5e10 v.g. AAV-N2と2.5e11 v.g. AAV-ドナー(n=9、PHx前;n=5、PHx後)、または5e10 v.g. AAV-Mockと2.5e11 v.g. AAV-ドナー(n=6、PHx前;n=5、PHx後)を腹腔内注射した後のLPマウスにおける血漿hFIXのレベルを示すグラフである。誤差棒は標準誤差を示す。図4dは、生後2日目に、5e10 v.g. AAV-N2だけ(n=10、PHx前;n=1、PHx後)、または5e10 v.g. AAV-N2と2.5e11 v.g. AAV-ドナー(n=9、PHx前;n=5、PHx後)、または5e10 v.g. AAV-Mockと2.5e11 v.g. AAV-ドナー(n=9、PHx前;n=3、PHx後)を腹腔内(I.P.)注射した後のLP/HBマウスにおける血漿hFIXのレベルを示すグラフである。誤差棒は標準誤差を示す。図4eは、生後2日目に5e10 v.g. AAV-N2と2.5e11 v.g. AAV-ドナーを腹腔内注射したLP/HBマウスで生後20週目にRT-PCRによって検出したhFIX RNAの肝臓特異的発現を示すゲルである。図4fは、生後2日目に、5e10 v.g. AAV-N2と2.5e11 v.g. AAV-ドナー(n=5)、または5e10 v.g. AAV-Mockと2.5e11 v.g. AAV-ドナー(n=3)を腹腔内注射したマウスで、生後14週目に活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)によって調べた血栓形成時間を示すグラフである(スチューデントの両側t検定からのp値)。野生型(WT)マウスと血友病BのマウスのaPTTを比較のために示してある。
図5図5のパネルAとBは、生体内での肝臓遺伝子の補正によって循環するFIXが治療レベルで発現することを示している。図5Aは、生後6週目に、1e11 v.g./マウスAAV-N2だけ(“ZFNだけ”)、または1e11 v.g./マウスAAV-N2と5.5e11 v.g./マウスAAV-ドナー(“ZFN+ドナー”)、または1e11 v.g./マウスAAV-Mockと5.5e11 v.g. AAV-ドナー(“Mock+ドナー”)を静脈内注射した後の成体LPマウスにおける血漿hFIXのレベルを示すグラフである。示したデータは、1つの群内のマウスを約20匹にして行なった3回の実験を表わしている。これらの実験では、野生型hF.IXのレベルは約1000ng/mlであった。図5Bは、生後6週目に、1e11 v.g./マウスAAV-N2だけ(“ZFNだけ”)、または1e11 v.g./マウスAAV-N2と5.5e11 v.g./マウスAAV-ドナー(“ZFN+ドナー”)、または1e11 v.g./マウスAAV-Mockと5.5e11 v.g. AAV-ドナー(“Mock+ドナー”)を静脈内注射した後の成体LPマウスにおける血漿hFIXのレベルを示すグラフである。注射の2日後、図5Bの2つの群に肝部分切除を行なった。示したデータは、1つの群内のマウスを約20匹にして行なった3回の実験を表わしている。これらの実験では、野生型hF.IXのレベルは約1000ng/mlであった。このデータは、成体マウスに肝部分切除を行なった場合または行なわない場合にhF.IXの発現が安定であることと、成体の動物でゲノム編集を実行できることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0046】
この明細書には、血友病Bの患者を治療する組成物と方法が開示されている。特に、ヌクレアーゼを媒介とした標的組み込みを利用してFIXをコードする配列を(生体内または生体外で)対象の1つ以上の細胞のゲノムに挿入することで、細胞が生体内でFIXを産生する。いくつかの実施態様では、この方法は、例えば肝部分切除によって、および/または肝細胞に細胞周期を実行させる1種類以上の化合物の投与によって、対象の細胞(特に肝細胞)の増殖を誘導する操作をさらに含んでいる。対象には、ヒト、非ヒト霊長類、動物(例えばネコ、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、モルモット、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
この明細書に記載する方法により、血友病Bの治療がなされる。メガヌクレアーゼを用いたヌクレアーゼ媒介遺伝子補正の生体内モデルにおいて以前に報告されている方法(Gouble他(2006年)J Gene Med. 5月;第8巻(5):616〜622ページ)とは異なり、動物モデルでヌクレアーゼを媒介としてFIX遺伝子を組み込んだ後に、毒性がほとんど、またはまったく観察されない。それに加え、本発明の方法と組成物は、新生児と成熟した動物でも機能するため、挿入されたIX因子導入遺伝子の機能的活性につながる。
【0048】
概略
本明細書で開示する方法の実践、ならびに組成物の調製及び使用は、別段示さない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組み換えDNA、および関連分野における従来の技術を、当該分野の技術範囲内であるものとして使用する。これらの技術は、文献に詳細に説明されている。例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989および第3版,2001、Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley&Sons,New York,1987および定期改訂版、METHODS IN ENZYMOLOGYシリーズ,Academic Press,San Diego、Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,第3版,Academic Press,San Diego,1998、METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,「Chromatin」(P.M.WassarmanおよびA.P.Wolffe,編集),Academic Press,San Diego,1999、ならびにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,「Chromatin Protocols」(P.B.Becker,編集)Humana Press,Totowa,1999を参照のこと。
【0049】
定義
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は、互換的に使用され、線状または環状の高次構造で、一本鎖または二本鎖形態の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的に関しては、これらの用語をポリマーの長さに関する限定と解釈すべきではない。この用語は、天然ヌクレオチドの公知のアナログ、ならびに塩基、糖、および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート主鎖)内で改変されるヌクレオチドを包含し得る。一般に、特定ヌクレオチドのアナログは、同一の塩基対形成特異性を有し、すなわち、Aのアナログは、Tと塩基対を形成する。
【0050】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指して互換可能に用いられる。この用語はまた、1つ以上のアミノ酸が、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログまたは改変誘導体である、アミノ酸ポリマーにも適用される。
【0051】
「結合」とは、高分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的で、非共有結合的な相互作用を指す。結合相互作用が全体として配列特異的であるかぎり、結合相互作用の全ての構成要素が配列特異的である必要はない(例えば、DNA骨格中のリン酸残基との接触)。そのような相互作用は、一般に、10-6-1以下の解離定数(Kd)によって特徴付けられる。「親和性」とは、結合強度を指し:結合親和性の増加は、Kdの低下と相関する。
【0052】
「結合タンパク質」とは、別の分子に非共有結合的に結合することが可能なタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)、および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合することができる。タンパク質結合タンパク質の場合においては、それは、それ自体に結合する(その結果、ホモ二量体、ホモ三量体などを形成する)ことが可能であり、および/または異なるタンパク質(複数可)の1つ以上の分子に結合することが可能である。結合タンパク質は、2種類以上の結合活性を有することができる。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合、およびタンパク質結合活性を有する。
【0053】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)とは、1つ以上のジンクフィンガー(それは、亜鉛イオンの配位によって安定化される構造を有する結合ドメイン内のアミノ配列の領域である)によって配列特異的な形でDNAを結合するタンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語は、しばしば、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略称される。
【0054】
“TALE DNA結合ドメイン”または“TALE”は、1つ以上のTALE反復ドメイン/ユニットを含むポリペプチドである。この反復ドメインは、TALEを対応するコグネイト標的DNA配列に結合させるのに関与する。単一の“反復ユニット”(“反復”とも呼ばれる)は、典型的には長さがアミノ酸33〜35個であり、天然のTALEタンパク質に含まれる他のTALE反復配列と少なくともいくらかの配列相同性を示す。
【0055】
ジンクフィンガー結合ドメインとTALE結合ドメインを“改変し”(例えば天然のジンクフィンガータンパク質またはTALEタンパク質の認識螺旋領域の改変(1個以上のアミノ酸の変更)を通じ)、所定のヌクレオチド配列に結合させることができる。したがって改変されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、非天然タンパク質である。DNA結合タンパク質を操作するための方法の非限定的な例は、設計および選択である。設計されたジンクフィンガータンパク質は、天然に存在しないタンパク質であり、その設計/組成は、主として合理的な基準からもたらされる。設計のための合理的基準としては、置換規則の適用、ならびに既存のZFP設計および結合データの情報を格納したデータベース中の情報を処理するためのコンピュータアルゴリズムの適用が挙げられる。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号、および同第6,534,261号を参照のこと;また国際公開第98/53058号、同第98/53059号、同第98/53060号、同第02/016536号、および同第03/016496号、および米国特許出願第13/068,735号を参照のこと。
【0056】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質またはTALEは、天然には見出されないタンパク質であり、その産生は、主に、ファージディスプレイ、相互作用トラップ、またはハイブリッド選択などの実験的プロセスによってもたらされる。例えば、米国特許第5,789,538号、米国特許第5,925,523号、米国特許第6,007,988号、米国特許第6,013,453号、米国特許第6,200,759号、国際公開第95/19431号、国際公開第96/06166号、国際公開第98/53057号、国際公開第98/54311号、国際公開第00/27878号、国際公開第01/60970号、国際公開第01/88197号、および国際公開第02/099084号を参照のこと。
【0057】
“組み換え”は、2つのポリヌクレオチドの間で遺伝情報を交換するプロセスを意味し、非相同末端接合(NHEJ)によるドナー捕獲や相同組み換えが含まれるが、これらに限定されない。本開示の目的では、“相同組み換え(HR)”は、例えば細胞における二本鎖切断を相同部指定修復メカニズムを通じて修復している間に起こるそのような交換の特別な形態を意味する。このプロセスは、ヌクレオチド配列の相同性を必要とし、“標的”分子(すなわち二本鎖切断を経験した分子)を修復する鋳型として“ドナー”分子を利用する。このプロセスは、“非交差遺伝子変換”または“短管遺伝子変換”といったさまざまな呼び方で知られている。なぜならこのプロセスによってドナーから標的への遺伝情報の移動が起こるからである。いかなる特定の理論にも囚われることを望まないため、そのような移動には、切断された標的とドナーの間に形成されるヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ補正、および/または標的の一部になるであろう遺伝情報の再合成にドナーが用いられる“合成に依存する鎖アニーリング”、および/または関連プロセスが含まれる可能性がある。このような特別なHRによって標的分子の配列が変化し、ドナーとなるポリヌクレオチドの配列の一部または全部が標的ポリヌクレオチドに組み込まれることがしばしばある。
【0058】
本発明の方法では、この明細書に記載した1つ以上の標的ヌクレアーゼが所定の部位において標的配列(例えば細胞クロマチン)に二本鎖切断を作り出し、切断領域においてヌクレオチド配列と相同な“ドナー”ポリヌクレオチドを細胞の中に導入することができる。二本鎖切断の存在によってドナー配列の組み込みが容易になることがわかっている。ドナー配列は、物理的に組み込んでもよいし、相同組み換えを通じた切断修復のための鋳型としてドナーポリヌクレオチドを用い、ドナーにおけるようにヌクレオチド配列のすべてまたは一部を細胞クロマチンに導入してもよい。したがって細胞クロマチンの中の第1の配列を変更することができ、いくつかの実施態様では、その第1の配列をドナーポリヌクレオチドに存在する配列へと変換することができる。したがって“置換する”または“置換”という用語の使用は、1つのヌクレオチドを別のヌクレオチドで置換すること(すなわち情報的な意味でのある配列の置換)を表わすと理解でき、必ずしも1つのヌクレオチドを別のヌクレオチドで物理的または化学的に置換することを必要としない。
【0059】
この明細書に記載したどの方法でも、ジンクフィンガータンパク質またはTALENの別のペアを用いて細胞内で追加標的部位の別の二本鎖開裂を実現することができる。
【0060】
細胞クロマチンにおける興味の対象となる領域の配列を標的とした組み換え、および/または置換、および/または変更に関する方法のいくつかの実施態様では、外来性“ドナー”ヌクレオチド配列を用いて染色体配列を相同組み換えによって変化させる。そのような相同組み換えは、細胞クロマチンに二本鎖切断が存在していて、その切断領域に相同な配列が存在している場合に促進される。
【0061】
この明細書に記載したどの方法でも、第1のヌクレオチド配列(“ドナー配列”)は、興味の対象となる領域においてゲノム配列と相同だが同じではない配列を含むことができるため、相同組み換えを促進して同じではない配列を興味の対象となる領域に組み込むことができる。例えばいくつかの実施態様では、ドナー配列で興味の対象となる領域にある配列と相同な部分は、約80〜99%(またはこの間の任意の整数値)が、置換されるゲノム配列と一致する。別の実施態様では、例えば100個を超える連続した塩基対からなるドナー配列とゲノム配列の間でヌクレオチドが1個だけ異なる場合には、ドナー配列とゲノム配列の間の相同性は、99%超である。いくつかのケースでは、ドナー配列の非相同部が、興味の対象である領域に存在しない配列を含んでいる可能性があるため、新しい配列が興味の対象である領域に導入される。その場合には、非相同配列には、一般に、興味の対象である領域に含まれる配列と相同または同じである50〜1,000塩基対(またはその間の任意の整数値)、または1,000を超える任意の数の塩基対からなる配列が隣接する。別の実施態様では、ドナー配列は第1の配列と相同ではなく、非相同組み換えメカニズムによってゲノムに挿入される。
【0062】
この明細書に記載したどの方法を利用しても、興味の対象である遺伝子を発現させないドナー配列の標的組み込みにより、細胞内の1つ以上の標的配列の部分的不活化または完全な不活化が可能である。部分的不活化または完全な不活化がなされた遺伝子を有する細胞系も提供される。
【0063】
さらに、この明細書に記載した標的組み込みの方法は、1つ以上の外来性配列を組み込むのにも利用できる。外来性核酸配列は、例えば1つ以上の遺伝子またはcDNA分子、または任意のタイプのコード配列または非コード配列のほか、1つ以上の制御エレメント(例えばプロモータ)を含むことができる。それに加え、外来性核酸配列は、1つ以上のRNA分子(例えば小さなヘアピンRNA(shRNA)、抑制性RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)など)を生成させることができる。
【0064】
「開裂」とは、DNA分子の共有結合骨格の破壊を指す。開裂は、リン酸ジエステル結合の酵素的または化学的加水分解が挙げられるが、これらに限定されない、種々の方法によって開始することができる。一本鎖開裂および二本鎖開裂の両方とも可能であり、二本鎖開裂は、2つの異なる一本鎖切断事象の結果として生じ得る。DNA開裂は、平滑末端または互い違いの(staggered)末端のいずれかの産生を生じ得る。特定の実施形態においては、融合ポリペプチドが、標的化二本鎖DNA開裂に用いられる。
【0065】
「開裂ハーフドメイン」は、第二のポリペプチド(同一または異なるいずれか)と併せて、開裂活性(好ましくは、二本鎖開裂活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。“第1と第2の開裂半ドメイン”、“+と-の開裂半ドメイン”、“右と左の開裂半ドメイン”という用語は、どれも同じ意味で用いられ、二量体になる開裂半ドメインのペアを意味する。
【0066】
“改変された開裂半ドメイン”は、別の開裂半ドメイン(例えば別の改変された開裂半ドメイン)とで必須のヘテロ二量体を形成するように改変された開裂半ドメインである。アメリカ合衆国特許出願公開第2005/0064474号、第20070218528号、第2008/0131962号も参照のこと(その内容は全体が参考としてこの明細書に組み込まれている)。
【0067】
用語「配列」は、任意の長さのヌクレオチド配列を指し、それは、DNAまたはRNAであってもよく、線状、環状または分岐状であってもよく、一本鎖または二本鎖のいずれかであってもよい。「ドナー配列」という用語は、ゲノム内に挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば、2〜10,000長(またはそれらの間もしくはそれ以上の任意の整数)のヌクレオチド、好ましくは、約100〜1,000長(またはそれらの間の任意の整数値)のヌクレオチド、より好ましくは、約200〜500長のヌクレオチドであってもよい。
【0068】
「クロマチン」とは、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびに、ヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含めてタンパク質を含む。真核細胞クロマチンの大半は、ヌクレオソームの形態で存在し、そこでは、ヌクレオソームコアが、2つのヒストンH2A、H2B、H3およびH4のうちそれぞれ2つを含む八量体と会合した約150塩基対のDNAを含み;そしてリンカーDNA(生物に依存して長さはさまざま)がヌクレオソームコアの間に延在する。1分子のヒストンH1は、一般にリンカーDNAと会合する。本開示の目的に関して、「クロマチン」という用語は、原核性および真核性の両方のあらゆる種類の細胞核タンパク質を包含することを意味する。細胞クロマチンは、染色体およびエピソームクロマチンの両方を含む。
【0069】
「染色体」とは、細胞のゲノムの全てまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、しばしば、その細胞のゲノムを含む全染色体の集合である、その核型によって特徴付けられる。細胞のゲノムは、1つ以上の染色体を含んでもよい。
【0070】
「エピソーム」とは、細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む、複製する核酸、核タンパク質複合体、または他の構造である。エピソームの例としては、プラスミドおよび一定のウイルスゲノムが挙げられる。
【0071】
「標的部位」または「標的配列」とは、結合にとって十分な条件が存在する条件下で結合分子が結合するであろう核酸の一部を規定する、核酸配列である。例えば、配列5’−GAATTC−3’は、EcoRI制限エンドヌクレアーゼの標的部位である。
【0072】
「外因性」分子とは、通常は細胞内に存在しないが、1つ以上の遺伝学的、生化学的、または他の方法によって細胞内に導入することができる分子である。「通常は細胞内に存在」とは、細胞の特定の発生段階および環境条件に関して決定される。従って、例えば、筋の胚発生中のみに存在する分子は、成体筋細胞については外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非熱ショック細胞については外因性分子である。外因性分子は、例えば、任意のポリペプチドまたはそのフラグメントのコード配列、機能不全型内因性分子の機能性バージョンまたは正常機能性の内因性分子の機能不全バージョンを含み得る。外因性分子はまた、内因性分子と同じ種類の分子であってもよいが、その内因性分子が由来する種とは異なる種に由来してもよい。例えば、ヒト核酸配列を、ハムスターまたはマウスに由来する細胞株中に導入してもよい。
【0073】
外因性分子は、とりわけ、低分子、例えば、コンビナトリアルケミストリープロセスによって生成される低分子、または、高分子、例えば、タンパク質、核酸、糖質、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記分子の任意の改変誘導体、または1つ以上の上記分子を含む任意の複合体であってもよい。核酸としては、DNAおよびRNAが挙げられ、それは一本または二本鎖であってもよく、線状、分岐状または環状であってもよく、任意の長さであってもよい。核酸としては、二重鎖を形成できる核酸、ならびに三重鎖形成核酸が挙げられる。例えば、米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号を参照のこと。ゲノムへの挿入のために標的化され得る外因性の核酸分子はまた、「ドナー」ポリヌクレオチドとも呼ばれる。タンパク質としては、限定するものではないが、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが挙げられる。
【0074】
外因性分子は、内因性分子と同じの種類の分子、例えば、外因性タンパク質または核酸であってもよい。例えば、外因性核酸は、感染ウイルスゲノム、細胞中に導入されたプラスミドもしくはエピソーム、または細胞内に通常は存在しない染色体を含んでもよい。細胞中に外因性分子を導入するための方法は、当業者には公知であり、これには限定するものではないが、脂質媒介導入(すなわち、中性およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介導入およびウイルスベクター媒介性の移入が挙げられる。外因性分子は、内因性分子と同じ種類の分子でもよいが、細胞が由来する異なった種から得られるものものでもよい。例えば、ヒト核酸配列は、マウスまたはハムスターからもともと得られる細胞株に導入することができる。
【0075】
対照的に、「内因性」分子とは、特定の環境条件下で特定の発生段階にある特定の細胞内に通常存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリア、クロロプラストもしくは他の細胞小器官のゲノム、または天然に存在するエピソーム核酸を含んでもよい。さらなる内因性分子は、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含んでもよい。
【0076】
「融合」分子は、2つ以上のサブユニット分子が、好ましくは共有結合的に連結されている分子である。サブユニット分子は、同一の化学種の分子であってもよいし、または異なる化学種の分子であってもよい。第一の種類の融合分子の例としては、限定するものではないが、融合タンパク質(例えば、ZFP DNA結合ドメインと切断ドメインとの間の融合物)、および融合核酸(例えば、上記の融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられるが、これらに限定されない。第二の種類の融合分子の例としては限定するものではないが、三重鎖形成核酸とポリペプチドとの間の融合物、およびマイナーグルーブバインダー(minor groove binder)と核酸との間の融合物が挙げられる。
【0077】
細胞における融合タンパク質の発現は、細胞に融合タンパク質を送達することによって、または細胞に融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを送達し、そこで、ポリヌクレオチドが転写され、転写物が翻訳されて融合タンパク質を生成することによって、生じてもよい。トランススプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチド連結はまた、細胞におけるタンパク質の発現に関与することができる。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの送達の方法を、本開示の他所に提示する。
【0078】
本開示の目的に関して、「遺伝子」とは、遺伝子産物(以下参照のこと)をコードするDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域を含み、そのような調節配列がコード配列および/または転写配列に隣接しているか否かは問わない。従って、遺伝子としては、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えば、リボソーム結合部位および内部リボソーム侵入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位および遺伝子座制御領域が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0079】
「遺伝子発現」とは、遺伝子産物への遺伝子に含まれる情報の変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNAまたは他のあらゆる種類のRNA)、またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であってもよい。遺伝子産物としてはまた、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、および編集等のプロセスによって改変(修飾)されたRNA、ならびに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリスチリル化、およびグリコシル化によって改変(修飾)されたタンパク質が挙げられる。
【0080】
遺伝子発現の「調節」とは、遺伝子の活性の変化を指す。発現の調節には、遺伝子活性化および遺伝子抑制を挙げることができるが、これらに限定されない。ゲノム編集(例えば開裂、変更、不活化、ランダム突然変異)を利用して発現を変化させることができる。遺伝子不活化は、この明細書に記載してあるように、ZFPを含まない細胞と比べて遺伝子の発現が低下していることを意味する。したがって遺伝子不活化は、一部または全体が可能である。
【0081】
“興味の対象となる領域”は、細胞クロマチンの中にあって外来性分子と結合することが望ましい任意の領域(例えばある遺伝子、またはある遺伝子の中の非コード配列、ある遺伝子に隣接する非コード配列)である。結合は、DNAの標的開裂および/または標的組み換えを目的とすることができる。興味の対象となる領域は、例えば、染色体、エピソーム、細胞小器官(例えばミトコンドリア、葉緑体)のゲノム、感染するウイルスのゲノムに存在することができる。興味の対象となる領域は、ある遺伝子のコード配列の中、転写された非コード領域(例えばリーダー配列、トレーラ配列、イントロン)の中、コード領域の上流または下流の非転写領域の中にあってもよい。興味の対象となる領域は、長さが1つだけのヌクレオチド対という小さなものから2,000ヌクレオチド対まで、すなわち任意の整数値のヌクレオチド対が可能である。
【0082】
“真核” 細胞には、真菌細胞(例えば酵母)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞(例えばT細胞)が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
“機能する連結”と“機能するように連結した”(または“機能可能に連結した”)という用語は、2つ以上の要素(例えば配列エレメント)の併置に関して同じ意味で用いられ、それら要素の両方が正常に機能するとともに、それら要素のうちの少なくとも1つが、それ以外の少なくとも1つの要素に対して及ぼす機能を媒介できるように配置されていることを意味する。例えば転写調節配列(例えばプロモータ)は、その転写調節配列が1つ以上の転写調節因子の存在または不在に応答してコード配列の転写レベルを制御する場合には、コード配列に機能するように連結している。転写調節配列は、一般に、コード配列に対してシスで機能するように連結しているが、コード配列に直接隣接している必要はない。例えばエンハンサは、コード配列と連続していない場合でさえ、そのコード配列に機能するように連結した転写調節配列である。
【0084】
融合ポリペプチドに関する“機能するように連結した”という用語は、それぞれの要素が、他の要素と連結した状態で、そのように連結していなければ実行したであろうのと同じ機能を実行するという事実を意味する。例えばZFP DNA結合ドメインが活性化ドメインに融合している融合ポリペプチドに関し、ZFP DNA結合ドメインと活性化ドメインは、その融合ポリペプチドにおいてZFP DNA結合ドメイン部が標的部位および/または結合部位に結合できる一方で、活性化ドメインが遺伝子発現を上方調節できる場合に、機能性連結である。ZFP DNA結合ドメインが開裂ドメインに融合している融合ポリペプチドでは、ZFP DNA結合ドメインと開裂ドメインは、その融合ポリペプチドにおいてZFP DNA結合ドメイン部が標的部位および/または結合部位に結合できる一方で、開裂ドメインが標的部位の近傍でDNAを開裂させることができる場合に、機能性連結である。
【0085】
タンパク質、ポリペプチド、核酸の“機能性断片”は、完全長のタンパク質、ポリペプチド、核酸と配列が同じではないが、完全長のタンパク質、ポリペプチド、核酸と同じ機能を保持しているタンパク質、ポリペプチド、核酸である。機能性断片は、対応する元の分子と比べて多数の、または少数の、または同数の残基を持つこと、および/または1個以上のアミノ酸置換またはヌクレオチド置換を含むことができる。核酸の機能(例えばコード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を明らかにする方法は、従来技術において周知である。同様に、タンパク質の機能を明らかにする方法も周知である。例えばポリペプチドのDNA結合機能は、例えばフィルタ結合、電気泳動易動度シフト、免疫沈降アッセイによって明らかにすることができる。DNAの開裂は、ゲル電気泳動によって調べることができる。Ausbel他、上記文献参照。あるタンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば同時免疫沈降、または2ハイブリッドアッセイ、または相補性(遺伝的相補性と生化学的相補性の両方)によって明らかにすることができる。例えばFields他(1989年)Nature、第340巻:245〜246ページ;アメリカ合衆国特許第5,585,245号、PCT WO 98/44350を参照のこと。
【0086】
“ベクター”は、遺伝子配列を標的細胞に運ぶことができる。典型的には、“ベクターコンストラクト”、“発現ベクター”、“遺伝子導入ベクター”は、興味の対象となる遺伝子を発現させることができて遺伝子配列を標的細胞に運ぶことのできるあらゆる核酸コンストラクトを意味する。したがってこの用語には、クローニング、発現ビヒクルのほか、組み込みベクターが含まれる。
【0087】
“レポータ遺伝子”または“レポータ配列”は、定型的なアッセイにおいて容易に測定される(そうであることが好ましいが、必ずしもそうでなくてもよい)タンパク質産物を産生させるあらゆる配列を意味する。適切なレポータ遺伝子として、抗生剤抵抗性(例えばアンピリシン抵抗性、ネオマイシン抵抗性、G418抵抗性、ピューロマイシン抵抗性)を媒介するタンパク質をコードする配列、着色タンパク質、蛍光タンパク質、発光タンパク質(例えば緑色蛍光タンパク質、増大した緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、増大した細胞増殖および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ)などがあるが、これらに限定されない。エピトープタグとして、例えばFLAG、His、myc、Tap、HAの1つ以上のコピーや、検出可能なあらゆるアミノ酸配列がある。“発現タグ”には、興味の対象である遺伝子の発現をモニタするためその望む遺伝子の配列に機能可能に連結できるレポータをコードする配列が含まれる。
【0088】
“セーフハーバー”遺伝子座は、ゲノム内にあって、宿主に何ら悪影響を与えることなく遺伝子を挿入することのできる遺伝子座である。最も有利なのは、挿入された遺伝子配列の発現が隣にある遺伝子群からのいかなるリードスルー発現によっても乱されないセーフハーバー遺伝子座である。哺乳動物細胞におけるセーフハーバー遺伝子座の非限定的な例は、AAVS1遺伝子(アメリカ合衆国特許出願公開第2008/0299580号参照)、CCR5遺伝子(アメリカ合衆国特許出願公開第2008/0159996号参照)、Rosa遺伝子座(WO 2010/065123参照)である。
【0089】
ヌクレアーゼ
この明細書には、血友病Bの患者からの細胞のゲノムに機能するFIXタンパク質をコードする配列を組み込む上で有用な組成物、特にヌクレアーゼが記載されている。いくつかの実施態様では、ヌクレアーゼは天然のものである。別の実施態様では、ヌクレアーゼは天然のものでない。すなわち、DNA結合ドメインおよび/または開裂ドメインが改変されている。例えば天然のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位に結合するように改変することができる(例えばコグネイト結合部位以外の部位に結合するように改変されたメガヌクレアーゼ)。別の実施態様では、ヌクレアーゼは、異種性のDNA結合ドメインと開裂ドメインを含んでいる(例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ;TAL-エフェクタドメインDNA結合タンパク質;異種性開裂ドメインを有するメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)。
【0090】
A.DNA結合ドメイン
いくつかの実施態様では、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)である。天然のメガヌクレアーゼは、15〜40個の塩基対開裂部位を認識し、一般に4つのファミリーにまとめられる。すなわちLAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-Cystボックスファミリー、HNHファミリーである。ホーミングエンドヌクレアーゼの例として、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I- CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevII、I-TevIIIなどがある。これらの認識配列は公知である。アメリカ合衆国特許第5,420,032号;アメリカ合衆国特許第6,833,252号;Belfort他(1997年)Nucleic Acids Res.、第25巻:3379〜3388ページ;Dujon他(1989年)Gene、第82巻:115〜118ページ;Perler他(1994年)Nucleic Acids Res.、第22巻、1125〜1127ページ;Jasin(1996年)Trends Genet.、第12巻:224〜228ページ;Gimble他(1996年)J. Mol. Biol.、第263巻:163〜180ページ;Argast他(1998年)J. Mol. Biol.、第280巻:345〜353ページ;the New England Biolabsカタログも参照のこと。
【0091】
いくつかの実施態様では、ヌクレアーゼは、改変された(天然ではない)ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)を含んでいる。ホーミングエンドヌクレアーゼとメガヌクレアーゼの認識配列であるI-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevII、I-TevIIIは公知である。アメリカ合衆国特許第5,420,032号;アメリカ合衆国特許第6,833,252号;Belfort他(1997年)Nucleic Acids Res.、第25巻:3379〜3388ページ;Dujon他(1989年)Gene、第82巻:115〜118ページ;Perler他(1994年)Nucleic Acids Res.、第22巻、1125〜1127ページ;Jasin(1996年)Trends Genet.、第12巻:224〜228ページ;Gimble他(1996年)J. Mol. Biol.、第263巻:163〜180ページ;Argast他(1998年)J. Mol. Biol.、第280巻:345〜353ページ;the New England Biolabsカタログも参照のこと。それに加え、ホーミングヌクレアーゼとメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、天然でない標的部位に結合するように改変することができる。例えばChevalier他(2002年)Molec. Cell、第10巻:895〜905ページ;Epinat他(2003年)Nucleic Acids Res.、第31巻:2952〜2962ページ;Ashworth他(2006年)Nature、第 441巻:656〜659ページ;Paques他(2007年)Current Gene Therapy、第7巻:49〜66ページ;アメリカ合衆国特許出願公開第2007/0117128号を参照のこと。ホーミングエンドヌクレアーゼとメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、ヌクレアーゼ全体の文脈で(すなわちヌクレアーゼがコグネイト開裂ドメインを含むように)改変すること、または異種性開裂ドメインに融合させることができる。
【0092】
別の実施態様では、DNA結合ドメインは、天然の、または改変された(非天然の)TALエフェクタDNA結合ドメインを含んでいる。例えばアメリカ合衆国特許出願第13/068,735号を参照のこと(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれている)。ザントモナス属の植物病原性細菌は、重要な作物で多くの病気を引き起こすことが知られている。ザントモナスの病原性は保存されたタイプIII分泌(T3S)系に依存していて、その分泌系が、異なる25種類超のエフェクタタンパク質を植物細胞に注入する。注入されるこれらタンパク質の中に、植物の転写アクチベータをまねていて植物のトランスクリプトームを操作する転写アクチベータ様(TAL)エフェクタがある(Kay他(2007年)Science、第318巻:648〜651ページを参照のこと)。このタンパク質は、DNA結合ドメインと転写活性化ドメインを含んでいる。最もよく特徴がわかっているTALエフェクタの1つは、ザントモナス・カンペストグリスpv.ヴェシカトリアからのAvrBs3である(Bonas他(1989年)Mol Gen Genet、第218巻:127〜136ページ、WO2010/079430を参照のこと)。TALエフェクタは、タンデム反復が集中したドメインを含んでおり、それぞれの反復は約34個のアミノ酸を含んでいて、それがこのタンパク質へのDNA結合特異性のカギとなっている。それに加え、TALエフェクタは、核局在化配列と酸性転写活性化ドメインを含んでいる(概説に関しては、Schornack S.他(2006年)J Plant Physiol、第163巻(3):256〜272ページを参照のこと)。それに加え、植物病原性細菌ラルストニア・ソラナセアルムにおいて、2つの遺伝子(brg11とhpx17と表記される)が、R. ソラナセアルム次亜種1株GMI1000と次亜種4株RS1000ではザントモナスのAvrBs3ファミリーと相同であることが見いだされた(Heuer他(2007年)Appl and Envir Micro、第73巻(13):4379〜4384ページを参照のこと)。これらの遺伝子は互いにヌクレオチド配列が98.9%一致しているが、hpx17の反復ドメインにおいて1,575塩基対が欠失している点が異なっている。しかし両方の遺伝子産物は、ザントモナスのAvrBs3ファミリーのタンパク質との配列の一致が40%未満である。例えばアメリカ合衆国特許出願第13/068,735号を参照のこと(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれている)。
【0093】
TALエフェクタの特異性は、タンデム反復の中に見いだされる配列に依存する。その反復配列は約102塩基対を含んでおり、反復は、典型的には互いに91〜100%相同である(Bonas他、上記文献)。反復の多型は通常は12位と13位に位置していて、12位と13位にあるそれら超可変性二残基のアイデンティティとTALエフェクタの標的配列に含まれる連続したヌクレオチドのアイデンティティの間には一対一対応が存在しているように見える(MoscouとBogdanove(2009年)Science、第326巻:1501ページ;Boch他(2009年)Science、第326巻:1509〜1512ページを参照のこと)。実験的には、TALエフェクタのDNA認識のための天然のコードは、12位と13位のHD配列がシトシン(C)に結合し、NGがTに結合し、NIがA、C、G、Tのいずれかに結合し、NNがAまたはGに結合し、INGがTに結合するように決定された。新たな配列と相互作用できて、植物細胞に含まれる非内在性レポータ遺伝子の発現を活性化することのできる人工的な転写因子を作るため、これらDNA結合反復がまとめられて、新しい組み合わせと反復数を持つタンパク質にされた(Boch他、上記文献)。改変されたTALタンパク質はFok I開裂半ドメインに連結され、酵母レポータアッセイにおいて活性を示すTALエフェクタドメインヌクレアーゼ融合体(TALEN)を生成させる。例えばアメリカ合衆国特許出願第13/068,735号;Christian他((2010年)<Genetics電子出版10.1534/genetics.110.120717)を参照のこと。
【0094】
いくつかの実施態様では、DNA結合ドメインはジンクフィンガータンパク質を含んでいる。そのジンクフィンガータンパク質は天然のものであり、それが改変されて選択した標的部位に結合することが好ましい。例えばBeerli他(2002年)Nature Biotechnol.、第20巻:135〜141ページ;Pabo他(2001年)Ann. Rev. Biochem.、第70巻:313〜340ページ;Isalan他(2001年)Nature Biotechnol.、第19巻:656〜660ページ;Segal他(2001年)Curr. Opin. Biotechnol.、第12巻:632〜637ページ;Choo他(2000年)Curr. Opin. Struct. Biol.、第10巻:411〜416ページ;アメリカ合衆国特許第6,453,242号;第6,534,261号;第6,599,692号;第6,503,717号;第6,689,558号;第7,030,215号;第6,794,136号;第7,067,317号;第7,262,054号;第7,070,934号;第7,361,635号;第7,253,273号;アメリカ合衆国特許出願公開第2005/0064474; 2007/0218528号;第2005/0267061号を参照のこと(これらはすべて、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれている)。
【0095】
改変されたジンクフィンガードメインは、天然のジンクフィンガータンパク質と比べて新たな結合特異性を持つことができる。改変法には、合理的な設計と、さまざまな種類の選択が含まれるが、それだけに限られない。合理的な設計には、例えば三連(または四連)ヌクレオチド配列と個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを利用することが含まれる。それぞれの三連または四連のヌクレオチド配列には、特定の三連または四連の配列と結合するジンクフィンガーの1つ以上のアミノ酸配列が関係している。例えば共有のアメリカ合衆国特許第6,453,242号、第6,534,261号を参照のこと(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれている)。
【0096】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含む例示的選択法は、米国特許第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,410,248号;同第6,140,466号;第同6,200,759号;および同第6,242,568号;ならびに国際公開第98/37186号;国際公開第98/53057号;国際公開第00/27878号;国際公開第01/88197号、および英国特許第2,338,237号に開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば共同所有の国際公開第02/077227号に記載されている。それに加え、ジンクフィンガー結合ドメインの結合特異性を増大させることが、例えば共有の国際公開第02/077227号に記載されている。
【0097】
それに加え、これらの参考文献と他の参考文献に開示されているように、ジンクフィンガードメインおよび/またはフィンガーが複数あるジンクフィンガータンパク質は、適切な任意のリンカー配列(例えば長さが5個以上のアミノ酸からなるリンカー)を用いて互いに連結することができる。長さが6個以上のアミノ酸からなるリンカー配列の例に関しては、アメリカ合衆国特許第6,479,626号;第6,903,185号;第7,153,949号も参照のこと。この明細書に記載したタンパク質は、そのタンパク質の個々のジンクフィンガーの間に適切なリンカーの任意の組み合わせを含むことができる。
【0098】
標的部位の選択;融合タンパク質(とそれをコードするポリヌクレオチド)の設計と構成のためのZFPと方法は当業者には公知であり、アメリカ合衆国特許第6,140,0815号;第789,538号;第6,453,242号;第6,534,261号;第5,925,523; 号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,200,759号;WO 95/19431;WO 96/06166;WO 98/53057;WO 98/54311;WO 00/27878;WO 01/60970;WO 01/88197;WO 02/099084;WO 98/53058;WO 98/53059;WO 98/53060;WO 02/016536;WO 03/016496に詳細に記載されている。
【0099】
それに加え、これらの参考文献と他の参考文献に開示されているように、ジンクフィンガードメインおよび/またはフィンガーが複数あるジンクフィンガータンパク質は、適切な任意のリンカー配列(例えば長さが5個以上のアミノ酸からなるリンカー)を用いて互いに連結することができる。長さが6個以上のアミノ酸からなるリンカー配列の例に関しては、アメリカ合衆国特許第6,479,626号;第6,903,185号;第7,153,949号も参照のこと。この明細書に記載したタンパク質は、そのタンパク質の個々のジンクフィンガーの間に適切なリンカーの任意の組み合わせを含むことができる。
【0100】
したがってヌクレアーゼは、FIXタンパク質をコードする配列を挿入することを望む任意の遺伝子の標的部位に特異的に結合するDNA結合ドメインを含んでいる。
【0101】
B.開裂ドメイン
【0102】
適切な任意の開裂ドメインをDNA結合ドメインに機能するように連結してヌクレアーゼを形成することができる。例えばZFP DNA結合ドメインをヌクレアーゼドメインに融合させてZFN(改変された(ZFP)DNA結合ドメインを通じて目的とする核酸標的を認識することができ、ヌクレアーゼ活性を通じてZFP結合部位の近くでDNAを切断する機能体)が作り出されている。例えばKim他(1996年)Proc Natl Acad Sci USA、第93巻(3):1156〜1160ページを参照のこと。より最近になり、さまざまな生物でZFNを用いたゲノム改変が実施されている。例えばアメリカ合衆国特許出願公開第2003/0232410号;第2005/0208489号;第2005/0026157号;第2005/0064474号;第2006/0188987号;第2006/0063231号;国際公開 WO 07/014275を参照のこと。同様に、TALE DNA結合ドメインをヌクレアーゼドメインに融合させてTALENが作り出されている。例えばアメリカ合衆国特許出願第13/068,735号を参照のこと。
【0103】
上に指摘したように、開裂ドメインは、DNA結合ドメインにとって異種であってもよい(例えばジンクフィンガーDNA結合ドメインとヌクレアーゼからの開裂ドメイン、またはTALEN DNA結合ドメインと開裂ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインと異なるヌクレアーゼからの開裂ドメイン)。異種性開裂ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。開裂ドメインの出所となることのできるエンドヌクレアーゼの例として、制限エンドヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼなどがあるが、これらに限定されない。例えば2002-2003 Catalogue(New England Biolabs(ビヴァリー、マサチューセッツ州));Belfort他(1997年)Nucleic Acids Res.、第25巻:3379〜3388ページを参照のこと。DNAを開裂させる別の酵素が知られている(例えばS1ヌクレアーゼ;緑豆のヌクレアーゼ;膵臓DNアーゼI;球菌のヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linn他(編)、『ヌクレアーゼ』、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版、1993年も参照のこと)。これら酵素(またはその機能性断片)のうちの1つ以上を開裂ドメインおよび開裂半ドメインの供給源として用いることができる。
【0104】
同様に、上述のように開裂活性のために二量体化を必要とする開裂半ドメインは、任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来するものが可能である。一般に、融合タンパク質が開裂半ドメインを含んでいる場合には、開裂に2つの融合タンパク質が必要とされる。あるいは、2つの開裂半ドメインを含む単一のタンパク質を使用することができる。2つの開裂半ドメインは、同じエンドヌクレアーゼ(またはその機能性断片)に由来するものが可能である。あるいは各開裂半ドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能性断片)に由来するものが可能である。それに加え、2つの融合タンパク質のための標的部位は、2つの融合タンパク質がそれぞれの標的部位に結合したとき、開裂半ドメインの空間的方向が、例えば二量体化によって開裂半ドメインが機能する開裂ドメインを形成できるような相互配置になることが好ましい。例えばいくつかの実施態様では、標的部位の近縁部は、5〜8個のヌクレオチドまたは15〜18個のヌクレオチドによって分離されている。しかし任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対(例えば2〜50個以上のヌクレオチド対)が2つの標的部位の間に介在していてもよい。一般に、開裂の部位は標的部位の間に存在する。
【0105】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)が多くの種に存在しており、(認識部位において)DNAに配列特異的に結合し、その結合部位またはその近傍でDNAを開裂させることができる。いくつかの制限酵素(例えばタイプIIS)は、認識部位から離れた部位においてDNAを開裂させ、分離可能な結合ドメインと開裂ドメインを有する。例えばタイプIISの酵素Fok Iは、DNAの二本鎖を、一方の鎖では認識部位からヌクレオチド9個の位置で、他方の鎖では認識部位からヌクレオチド13個の位置で開裂させる触媒となる。例えばアメリカ合衆国特許第5,356,802号;第5,436,150号;第5,487,994号のほか;Li他(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第89巻:4275〜4279ページ;Li他(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第90巻:2764〜2768ページ;Kim他(1994年a)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第91巻:883〜887ページ;Kim他(1994年b)J. Biol. Chem.、第269巻:31,978〜31,982ページを参照のこと。例えば一実施態様では、融合タンパク質は、少なくとも1つのタイプIISの制限酵素からの開裂ドメイン(または開裂半ドメイン)と、1つ以上のジンクフィンガー結合ドメイン(改変されていてもいなくてもよい)を有する。
【0106】
開裂ドメインを結合ドメインから分離できるタイプIISの制限酵素の一例はFok Iである。この特別な酵素は二量体として活性を持つ。Bitinaite他(1998年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第95巻:10,570〜10,575ページ。したがって本開示の目的では、Fok I酵素のうちで開示されている融合タンパク質で用いられる部分は開裂半ドメインであると見なされる。したがってジンクフィンガー-Fok I融合体を用いた二本鎖標的開裂および/または細胞配列の標的置換のためには、それぞれがFok I開裂半ドメインを有する2つの融合タンパク質を用い、触媒で活性化する開裂ドメインを再構成することができる。あるいはジンクフィンガー結合ドメインと2つのFok I開裂半ドメインを有する単一のポリペプチド分子を用いることもできる。ジンクフィンガー-Fok I融合体を用いた標的開裂と標的配列改変のためのパラメータは、この明細書の別の箇所に提示されている。
【0107】
切断ドメインまたは切断ハーフドメインは、切断活性を保持している、または多量体化(例えば、二量体化)して機能性切断ドメインを形成する能力を保持しているタンパク質の任意の部分であってもよい。
【0108】
例示的IIS型制限酵素は、参照によってその全体が本明細書に援用されている、共同所有の国際公開第2007/014275号に記載されている。別の制限酵素も分離可能な結合ドメインと開裂ドメインを持ち、それらがこの明細書で考慮される。例えばRoberts他(2003年)Nucleic Acids Res.、第31巻:418〜420ページを参照のこと。
【0109】
いくつかの実施態様では、開裂ドメインは、ホモ二量体化を最少にするか阻止する1つ以上の改変された開裂半ドメイン(二量体化ドメイン突然変異体とも呼ばれる)を含んでいる。それは、例えばアメリカ合衆国特許出願公開第2005/0064474号;第2006/0188987号;第2007/0305346号; 第2008/0131962号に記載されている(これらはすべて、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれている)。Fok I の446位、447位、479位、483位、484位、486位、487位、490位、491位、496位、498位、499位、500位、531位、534位、537位、538位のアミノ酸残基はすべて、Fok I開裂半ドメインの二量体化に影響を与える標的である。
【0110】
必須のヘテロ二量体を形成するFok I の改変された開裂半ドメインの例として、第1の開裂半ドメインがFok I の490位と538位のアミノ酸残基に突然変異を含み、第2の開裂半ドメインが486位と499位のアミノ酸残基に突然変異を含むペアが挙げられる。
【0111】
例えば一実施態様では、490位の突然変異によってGlu(E)がLys(K)で置換され;538位の突然変異によってIso(I)がLys(K)で置換され;486位の突然変異によってGln(Q)がGlu(E)で置換され;499位の突然変異によってIso(I)がLys(K)で置換される。この明細書に記載の改変された開裂半ドメインを作った。具体的には、1つの開裂半ドメインにおいて490位(E→K)、538位(I→L)を突然変異させることによって“E490K:I538K”と名付ける改変された開裂半ドメインを作り、別の開裂半ドメインにおいて486位(Q→E)と499位(I→L)I→L)を突然変異させることによって“Q486E:I499L” と名付ける改変された開裂半ドメインを作った。この明細書に記載の改変された開裂半ドメインは、異常な開裂が最少であるかなくなった必須のヘテロ二量体突然変異体である。例えばアメリカ合衆国特許出願公開2008/0131962号を参照のこと(その開示内容の全体があらゆる目的でこの明細書に組み込まれている)。いくつかの実施態様では、改変された開裂半ドメインは、486位、499位、496位(野生型Fok Iに対する位置)に突然変異を含んでいて、例えば486位では野生型Gln(Q)残基がGlu(E)残基で置換され、499位では野生型Iso(I)残基がLeu(L)残基で置換され、496位では野生型Asn(N)残基がAsp(D)残基またはGlu(E)残基で置換される(それぞれ“ELD” ドメイン、“ELE”ドメインとも呼ばれる)。別の実施態様では、改変された開裂半ドメインは、490位、538位、537位(野生型Fok Iに対する位置)に突然変異を含んでいて、例えば490位では野生型Glu(E)残基がLys(K)残基で置換され、538位では野生型Iso(I)残基がLys(K)残基で置換され、537位では野生型His(H)残基がLys(K)残基またはArg(R)残基で置換される(それぞれ“KKK” ドメイン、“KKR”ドメインとも呼ばれる)。別の実施態様では、改変された開裂半ドメインは、490位と537位(野生型Fok Iに対する位置)に突然変異を含んでいて、例えば490位では野生型Glu(E)残基がLys(K)残基で置換され、537位では野生型His(H)残基がLys(K)残基またはArg(R)残基で置換される(それぞれ“KIK” ドメイン、“KIR”ドメインとも呼ばれる)。(アメリカ合衆国特許出願公開第2011/0201055号を参照のこと)。別の実施態様では、改変された開裂半ドメインは、“Sharkey”および/または“Sharkey”突然変異を含んでいる(Guo他(2010年)J. Mol. Biol.、第400巻(1):96〜107ページ参照)。
【0112】
この明細書に記載の改変された開裂半ドメインは、適切な任意の方法を利用して(例えば野生型開裂半ドメイン(Fok I)の位置指定突然変異誘発によって)調製することができる。それは例えば、アメリカ合衆国特許出願公開第2005/0064474号;第2008/0131962号;第2011/0201055号に記載されている。
【0113】
あるいはヌクレアーゼは、いわゆる“分割酵素”技術(例えばアメリカ合衆国特許出願公開第2009/0068164号を参照のこと)を利用して生体内の核酸標的部位において組み立てることができる。そのような分割酵素の要素は、別々の発現コンストラクト上で発現させること、または個々の要素が例えば自己開裂2AペプチドすなわちIRES配列によって分離されている1つのオープンリーディングフレームの中で連結させることができる。要素として、個々のジンクフィンガー結合ドメイン、または1つのメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインの複数のドメインが可能である。
【0114】
ヌクレアーゼは、例えばWO 2009/042163とWO 2009/0068164に記載されているような酵母をベースとした染色体系の中で、使用前に活性をスクリーニングすることができる。ヌクレアーゼ発現コンストラクトは、従来技術で知られている方法を利用して容易に設計することができる。例えばアメリカ合衆国特許出願公開第2003/0232410号;第2005/0208489号;第2005/0026157号;第2005/0064474号;第2006/0188987号;第2006/0063231号;国際公開 WO 07/014275を参照のこと。ヌクレアーゼの発現は、構成的プロモータまたは誘導的プロモータ(例えばラフィノースおよび/またはガラクトースの存在下で活性化(脱抑制)され、グルコースの存在下で抑制されるガラクトキナーゼプロモータ)の制御下に置くことができる。
【0115】
標的部位
上に詳しく記載したように、DNAドメインを改変し、例えば内在性FIX遺伝子の中、または内在性セーフハーバー遺伝子の中、または挿入されたセーフハーバー遺伝子の中で、選択した任意の配列と結合させることができる。改変されたDNA結合ドメインは、天然のDNA結合ドメインと比べて新たな結合特異性を持つことができる。改変法には合理的な設計とさまざまな種類の選択が含まれるが、それだけに限られない。合理的な設計には、例えば三連(または四連)ヌクレオチド配列と個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを利用することが含まれる。それぞれの三連または四連のヌクレオチド配列には、特定の三連または四連の配列と結合する、ジンクフィンガーの1つ以上のアミノ酸配列が付随している。例えば共有のアメリカ合衆国特許第6,453,242 号と第6,534,261号を参照のこと(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれている)。TAL-エフェクタドメインを合理的に設計することもできる。例えば2010年5月17日と2010年8月21日にそれぞれ出願されたアメリカ合衆国仮出願第61/395,836号と第61/401,429号を参照のこと。
【0116】
(ファージ提示と2ハイブリッド系を含めて)DNA結合ドメインに適用できる選択法の例が、アメリカ合衆国特許第5,789,538号;第5,925,523号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,410,248号;第6,140,466; 号;第6,200,759号;第6,242,568号のほか;WO 98/37186;WO 98/53057;WO 00/27878;WO 01/88197;イギリス国特許第2,338,237号に記載されている。それに加え、ジンクフィンガー結合ドメインに対する特異性の増大が、例えば共有のWO 02/077227に記載されている。
【0117】
標的部位の選択;ヌクレアーゼと、融合タンパク質(と、それをコードするポリヌクレオチド)の設計法と構造は、当業者には公知であり、アメリカ合衆国特許出願公開第2005/0064474号と第2006/0188987号に詳細に記載されている(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれている)。
【0118】
それに加え、これらの参考文献と他の参考文献に開示されているように、DNA結合ドメイン(ジンクフィンガードメインおよび/またはフィンガーが複数あるジンクフィンガータンパク質)は、適切な任意のリンカー配列(例えば長さが5個以上のアミノ酸からなるリンカー)を用いて互いに連結することができる。長さが6個以上のアミノ酸からなるリンカー配列の例に関しては、アメリカ合衆国特許第6,479,626号;第6,903,185号;第7,153,949号を参照のこと。この明細書に記載したタンパク質は、そのタンパク質の個々のジンクフィンガーの間に適切なリンカーの任意の組み合わせを含むことができる。アメリカ合衆国特許出願第13/066,735号も参照のこと。
【0119】
機能するFIXタンパク質をコードする配列の標的挿入によって血友病Bを治療するため、対象のゲノム中の望む任意の挿入部位をヌクレアーゼで開裂させる。するとFIXコード配列を有するドナーポリヌクレオチドの標的挿入が促進される。ヌクレアーゼのDNA結合ドメインの標的は、ゲノム中の望む任意の部位にすることができる。
【0120】
いくつかの実施態様では、例えばアメリカ合衆国特許出願第12/798,749号に記載されているように、ヌクレアーゼのDNA結合ドメインの標的を内在性FIX(F9)遺伝子にする。標的部位は、コード配列中の任意の場所でよく、コード配列の上流でも下流でもよい。いくつかの実施態様では、標的部位は、コード配列の3’末端の近くである。
【0121】
別の実施態様では、ヌクレアーゼ(DNA結合ドメイン要素)の標的は“セーフハーバー”遺伝子座であり、その中には、単なる例示だが、AAVSl遺伝子(アメリカ合衆国特許出願公開第2008/0299580号を参照のこと)、CCR5遺伝子(アメリカ合衆国特許出願公開第2008/0159996号を参照のこと)、Rosa遺伝子座(WO 2010/065123を参照のこと)が含まれる。
【0122】
ドナー配列
血友病を治療するため、ドナー配列は、機能するFIXタンパク質をコードする配列またはその一部を含んでいるため、ドナーの組み込み後に、機能するFIXタンパク質をコードしていてそのタンパク質を発現する配列になる。ドナー分子を内在性遺伝子に挿入して、その内在性遺伝子のすべて、またはいくらかが発現するか、まったく発現しないようにすることができる。例えばこの明細書に記載した機能するFIX配列を含む導入遺伝子を内在性FIX遺伝子座に挿入し、そのFIX導入遺伝子を用いてその内在性FIXのいくらかを発現させること、またはその内在性FIXをまったく発現させないことができる(例えばドナーは突然変異を補正して野生型内在性配列を発現させることができる)。別の実施態様では、FIX導入遺伝子を任意の内在性遺伝子座(例えば(内在性の、または挿入された)セーフハーバー遺伝子座)に組み込む。例えばアメリカ合衆国特許出願公開第2008/0299580号;第2008/0159996号;第2010/00218264号を参照のこと。
【0123】
FIXドナー配列は、融合タンパク質の発現の前に、または発現と同時に、または発現の後に細胞に導入することができる。FIXドナーポリヌクレオチドは、一般にゲノム配列と十分な相同性を持っているため、それと相同なゲノム配列との間の相同組み換え(または相同部指定修復)をサポートする。例えばアメリカ合衆国特許出願公開第2005/0064474号;第2007/0134796号;第2009/0263900号を参照のこと。ドナー配列は、置換されるゲノム配列と一般には同じでないことが容易にわかるであろう。例えばドナーポリヌクレオチドの配列は、染色体配列と十分な相同性が存在している限り、ゲノム配列に対して1つ以上の一塩基変化、挿入、欠失、逆位、再配列を含んでいる可能性がある。あるいはドナー配列は、相同性のある2つの領域に隣接した非相同配列を含んでいる可能性がある。それに加え、ドナー配列は、細胞クロマチン内の興味の対象となる領域とは相同でない配列を含むベクター分子を含んでいる可能性がある。ドナー分子は、細胞クロマチンと相同ないくつかの不連続な領域を含んでいる可能性がある。例えば興味の対象となる領域に通常は存在しない配列の標的挿入のため、その配列をドナー核酸分子の中に存在させ、興味の対象となる領域の中の配列と相同な領域に隣接させることができる。
【0124】
FIXドナーポリヌクレオチドとしてDNAまたはRNA、一本鎖または二本鎖が可能であり、直線または円の形態で細胞の中に導入することができる。直線形態で導入された場合には、ドナー配列の両端を当業者に知られている方法で(例えばエキソヌクレアーゼによる分解から)保護することができる。例えば1つ以上のジデオキシヌクレオチド残基を直線分子の3’末端に付加する、および/または自己相補的オリゴヌクレオチドを一端または両端に連結する。例えばChang 他(1987年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第84巻:4959〜4963ページ;Nehls他(1996年)Science、第272巻:886〜889ページを参照のこと。外来性ポリヌクレオチドを分解から保護する別の方法として、末端アミノ基の付加、改変されたヌクレオチド間連結の利用(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロアミダイト、O-メチルリボース残基、ジオキシリボース残基)などがあるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドは、追加配列(例えば複製起点、プロモータ、抗生剤抵抗性をコードする遺伝子)を有するベクター分子の一部として細胞に導入することができる。さらに、ドナーポリヌクレオチドは、裸の核酸として導入すること、またはリポソームやポロキサマーなどの物質との複合体にした核酸として導入すること、またはウイルス(例えばアデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス)によって送達することができる。
【0125】
FIXドナーは一般に、その発現が組み込み部位にある内在性プロモータ(ドナーが患者の欠陥のあるFIX(F9)遺伝子座に組み込まれるときには例えば内在性FIXプロモータ)によって作動するように挿入される。しかしドナーが、プロモータおよび/またはエンハンサ(例えば組み込まれたときにFIXタンパク質の機能の発現を駆動する構成的プロモータか、誘導的または組織特異的(例えば肝臓特異的)プロモータ)を含んでいてもよいことは明らかであろう。
【0126】
FIXドナー配列は、選択した任意の標的部位に特異的に組み込むことにより、従来の遺伝子治療におけるランダムな組み込みに付随する問題をなくすことができる。いくつかの実施態様では、ドナー配列が内在性FIX遺伝子座に組み込まれることで血友病Bの患者の欠陥が補正される。別の実施態様では、FIXドナー配列はセーフハーバー遺伝子座(例えばCCR5遺伝子座、AAVSI遺伝子座など)に組み込まれる。
【0127】
さらに、発現には必要ないが、内在性配列は、転写調節配列または翻訳調節配列(例えばプロモータ、エンハンサ、インシュレータ、内部リボソームエントリー部位、2Aペプチドコード配列、ポリアデニル化シグナル)も含んでいてよい。
【0128】
送達
ヌクレアーゼ、そのヌクレアーゼをコードしているポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチド、この明細書に記載したタンパク質および/またはポリヌクレオチドを含む組成物は、適切な任意の手段で生体内または生体外の送達ができる。
【0129】
本明細書に記載のヌクレアーゼを送達する方法は、例えば、米国特許第6,453,242号;同第6,503,717号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,607,882号;同第6,689,558号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号に説明されており、それらの全ての開示は、参照によってその全体が本明細書に援用される。
【0130】
この明細書に記載したヌクレアーゼおよび/またはドナーコンストラクトは、1つ以上のジンクフィンガータンパク質をコードする配列を含むベクターを用いて送達することもできる。任意のベクター系を用いることができる。ベクター系として、例えばプラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどがあるが、これらに限定されない。アメリカ合衆国特許第6,534,261号;第6,607,882号;第6,824,978号;第6,933,113号;第6,979,539号;第7,013,219号;第7,163,824号も参照のこと(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれている)。さらに、これらベクターのどれもが治療に必要な1つ以上の配列を含むことができることは明らかであろう。したがって1つ以上のヌクレアーゼと1つのドナーコンストラクトを細胞に導入するとき、そのヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、同じベクターまたは異なるベクターに載せて運ぶことができる。複数のベクターを用いるとき、それぞれのベクターは、1つまたは複数のヌクレアーゼおよび/またはドナーコンストラクトをコードする配列を含むことができる。
【0131】
ウイルスをベースにした、またはウイルスをベースにしない従来の遺伝子導入法を利用し、ヌクレアーゼとドナーコンストラクトをコードする核酸を細胞(例えば哺乳動物の細胞)と標的組織に導入することができる。非ウイルスベクター送達系には、DNAプラスミド、裸の核酸、送達用ビヒクル(例えばリポソームやポロキサマー)との複合体となった核酸が含まれる。ウイルスベクター送達系には、DNAウイルスとRNAウイルスが含まれていて、そのウイルスは、これらは、細胞に送達された後にエピソーム状ゲノムまたは組み込まれたゲノムを有する。改変されたDNA結合タンパク質と、これら結合タンパク質を含む融合タンパク質の生体内送達の概説に関しては、例えばRebar(2004年)Expert Opinion Invest. Drugs、第13巻(7):829〜839ページ;Rossi他(2007年)Nature Biotech.、第25巻(12):1444〜1454ページのほか、一般的な遺伝子送達に関する参考文献、例えばAnderson、Science、第256巻:808〜813ページ(1992年);NabelとFeigner、TIBTECH、第11巻:211〜217ページ(1993年);MitaniとCaskey、TIBTECH、第11巻:162〜166ページ(1993年);Dillon、TIBTECH、第11巻:167〜175ページ(1993年);Miller、Nature、第357巻:455〜460ページ(1992年);Van Brunt、Biotechnology、第6巻(10):1149〜1154ページ(1988年);Vigne、Restorative Neurology and Neuroscience、第8巻:35〜36ページ(1995年);KremerとPerricaudet、British Medical Bulletin、第51巻(l):31〜44ページ(1995年);DoerfierとBohm(編)のCurrent Topics in Microbiology and Immunologyの中のHaddada 他(1995年);Yu他、Gene Therapy、第1巻:13〜26ページ(1994年)を参照のこと。
【0132】
ウイルスによらない核酸の送達法として、電気穿孔、リポフェクション、微量注入、微粒子銃、ウイロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリ化、脂質:核酸共役体、裸のDNA、人工ビリオン、薬剤によるDNAの取り込み増強などがある。例えばSonitron 2000システム(Rich-Mar社)を用いた超音波遺伝子導入を利用して核酸を送達することもできる。
【0133】
核酸送達系の別の例として、Amaxa Biosystems社(ケルン、ドイツ国)、Maxcyte社(ロックヴィル、メリーランド州)、BTX Molecular Delivery Systems社(ホリストン、マサチューセッツ州)、Copernicus Therapeutics社(例えばアメリカ合衆国特許第6,008,336号を参照のこと)によって提供されるものがある。リポフェクションは、例えばアメリカ合衆国特許第5,049,386号;第4,946,787号;第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えばTransfectam(登録商標)、Lipofectin(登録商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性脂質および中性脂質として、FeignerのWO 91/17424、WO 91/16024に記載されているものなどがある。
【0134】
脂質:核酸複合体(免疫脂質複合体などの標的リポソームが含まれる)の調製は当業者には周知である(例えばCrystal, Science、第 270巻:404〜410ページ(1995年);Blaese他、Cancer Gene Ther.、第2巻:291〜297ページ(1995);Behr他、Bioconjugate Chem.、第5巻:382〜389ページ(1994年);Remy他、Bioconjugate Chem.、第5巻:647〜654ページ(1994年);Gao 他、Gene Therapy、第2巻:710〜722ページ(1995年);Ahmad他、Cancer Res.、第52巻:4817〜4820ページ(1992年);アメリカ合衆国特許第4,186,183号;第4,217,344号;第4,235,871号;第4,261,975号;第4,485,054号;第4,501,728号;第4,774,085号;第4,837,028号;第4,946,787を参照のこと)。
【0135】
別の送達法として、送達する核酸をEnGeneIC送達用ビヒクル(EDV)の中にパッケージングする方法がある。EDVは、二重特異的抗体を用いて標的組織に特異的に送達される。この二重特異的抗体は、抗体の1本のアームが標的組織に対する特異性を持ち、他方のアームがEDVに対する特異性を持つ。この抗体はEDVを標的細胞の表面に運ぶため、EDVはその後エンドサイトーシスによって細胞の中に運ばれる。EDVが一旦細胞の中に入ると、内容物が放出される(例えばMacDiarmid他(2009年)Nature Biotechnology、第27巻(7):643ページを参照のこと)。
【0136】
改変されたZFPをコードする核酸の送達にRNAウイルスまたはDNAウイルに基づく系を用いるというのは、ウイルスを体内の特定の細胞に向かわせてウイルスのペイロードを核に届けるための高度に進化した方法の利点を生かしている。ウイルスベクターは、患者に直接投与すること(生体内)、またはウイルスベクターを用いて試験管内で細胞を処理し、改変されたその細胞を患者に投与することができる(生体外)。ウイルスをベースとした従来のZFP送達系として、遺伝子導入のためのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターなどがあるが、これらに限定されない。宿主のゲノムへの組み込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルスを用いた遺伝子導入法によって可能であり、その結果として挿入された導入遺伝子の長期にわたる発現がしばしば見られる。それに加え、異なる多くの種類の細胞と標的組織で大きな形質導入効率が観察されている。
【0137】
レトロウイルスの親和性は、外来エンベロープタンパク質を組み込み、標的細胞の潜在的な標的集団を大きくすることによって変えることができる。レンチウイルスベクターは、分裂しない細胞に形質導入するか分裂しない細胞に感染して、一般に大きなウイルス力価を生じさせるレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入系の選択は標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、シス作動性の長い末端反復配列を含んでいて、外来配列を6〜10kbまでパッケージングする能力を持つ。ベクターの複製とパッケージングには最小のシス作動性LTRで十分であり、それを用いて治療用遺伝子を標的細胞に組み込み、導入遺伝子を永続的に発現させる。広く用いられているレトロウイルスベクターとして、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)や、これらの組み合わせをベースとしたベクターがある(例えばBuchscher 他、J. Virol.、第66巻:2731〜2739ページ(1992年);Johann 他、J. Virol.、第66巻:1635〜1640ページ(1992年);Sommerfelt他、Virol.、第176巻:58〜59ページ(1990年);Wilson 他、J. Virol.、第63巻:2374〜2378ページ(1989年);Miller 他、J. Virol.、第65巻:2220〜2224ページ(1991年);PCT/US94/05700を参照のこと)。
【0138】
一過性発現が好ましい用途では、アデノウイルスをベースとした系を利用できる。アデノウイルスをベースとしたベクターは、多くのタイプの細胞で非常に大きな形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターを用いて大きな力価と高レベルの発現が得られている。このベクターは、比較的単純な系の中で大量に作ることができる。例えば核酸とポリペプチドの試験管内産生や、生体内および生体外の遺伝子治療手続きにおいて細胞に標的核酸を用いて形質導入するのにアデノ随伴ウイルス(“AAV”)ベクターも用いられる(例えばWest他、Virology、第160巻:38〜47ページ(1987年);アメリカ合衆国特許第4,797,368号;WO 93/24641;Kotin、Human Gene Therapy、第5巻:793〜801ページ(1994年);Muzyczka、J. Clin. Invest.、第94巻:1351ページ(1994年)。組み換えAAVベクターの構成は、多数の刊行物に記載されており、例えばアメリカ合衆国特許第5,173,414号;Tratschin他、Mol Cell. Biol.、第5巻:3251〜3260ページ(1985年);Tratschin他、Mol. Cell. Biol.、第4巻:2072〜2081ページ(1984年);HermonatとMuzyczka、PNAS、第81巻:6466〜6470ページ(1984年);Samulski他、J. Virol.、第63巻:3822〜3828ページ(1989年)を参照のこと)。
【0139】
臨床試験で遺伝子の導入に少なくとも6種類のウイルスベクター法を現在利用でき、これらの方法では、形質導入剤を生成させるため、ヘルパー細胞系に挿入した遺伝子によって欠陥のあるベクターを補足する操作を含む方法が利用されている。
【0140】
pLASNとMFG-Sは、臨床試験で用いられてきたレトロウイルスベクターの例である(Dunbar他、Blood、第85巻:3048〜3050ページ(1995年);Kohn他、Nat. Med.、第 1巻:1017〜102ページ(1995年);Malech他、PNAS、第94巻:22 12133〜12138ページ(1997年))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験で最初に用いられた治療用ベクターである(Blaese他、Science、第270巻:475〜480ページ(1995年))。MFG-S でパッケージされたベクターで50%以上という形質導入効率が観察されている(Ellem他、Immunol. Immunothez.、第44巻(l):10〜20ページ(1997年);Dranoff他、Hum. Gene Ther.、第1巻:111〜112ページ(1997年))。
【0141】
組み換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠損があって非病原性のパーボウイルスアデノ随伴型2ウイルスに基づく有望な別の遺伝子送達系である。どのベクターも、導入遺伝子発現カセットに隣接したAAV145bp逆方向末端反復配列だけを保持するプラスミドに由来する。形質導入された細胞のゲノムに組み込まれることによる効率的な遺伝子導入と安定な導入遺伝子送達が、このベクター系のカギとなる特徴である(Wagner他、Lancet、第351巻:9117 1702〜1703ページ(1998年)、Kearns他、Gene Ther.、第9巻:748〜755ページ(1996年))。他のAAV血清型(AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.10など)と新規なあらゆるAAV血清型も本発明で使用できる。
【0142】
複製欠損性組み換えアデノウイルスベクター(Ad)は大きな力価のものを作ることができ、異なる多くの種類の細胞に容易に感染させることができる。たいていのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子が、AdE1a遺伝子および/またはAdE1b遺伝子および/またはAdE3遺伝子と置換されるように改変され;その後、その複製欠損性ベクターは、失われた遺伝子機能をトランスで提供するヒト293細胞の中で増殖する。Adベクターは生体内で多くの種類の組織に形質導入することができる。そのような組織として、肝臓、腎臓、筋肉などに見られる分裂しない分化した細胞がある。従来のAdベクターは、大きな運搬能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の一例として、筋肉内注射を用いた抗腫瘍免疫化のためのポリヌクレオチド療法がある(Sterman他、Hum. Gene Ther.、第7巻:1083〜1089ページ(1998年))。臨床試験における遺伝子導入のためのアデノウイルスベクターの別の例として、Rosenecker他、Infection、第24巻:1 5〜10ページ(1996年);Sterman他、Hum. Gene Ther.、第9巻:7 1083〜1089ページ(1998年);Welsh他、Hum. Gene Ther.、第2巻:205〜218ページ(1995年);Alvarez他、Hum. Gene Ther.、第5巻:597〜613ページ(1997年);Topf他、Gene Ther.、第5巻:507〜513ページ(1998年);Sterman他、Hum. Gene Ther.、第7巻:1083〜1089ページ(1998年)などがある。
【0143】
パッケージング細胞を用い、宿主細胞に感染させることのできるウイルス粒子を形成する。そのような細胞として、アデノウイルスをパッケージする293細胞と、レトロウイルスをパッケージするψ2細胞またはPA317細胞がある。遺伝子治療で用いるウイルスベクターは、通常は、核酸ベクターをウイルス粒子の中にパッケージするプロデューサ細胞系によって生成される。ベクターは、一般に、パッケージングと(可能ならば)宿主への組み込みに必要な最小ウイルス配列を含んでいて、他のウイルス配列が、発現させるタンパク質をコードする発現カセットで置換される。欠けているウイルス機能は、パッケージング細胞系によってトランスで供給される。例えば遺伝子治療で用いるAAVベクターは、一般に、パッケージングと宿主のゲノムへの組み込みに必要なAAVゲノムからの逆方向末端反復配列(ITR)だけを備えている。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわちrepとcapをコードするがITR配列を欠いているヘルパープラスミドを含む細胞系の中にパッケージされる。この細胞系にもアデノウイルスがヘルパーとして感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製と、ヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列を欠いているために大量にはパッケージされない。アデノウイルスによる汚染は、例えば熱処理によって減らすことができる。なぜならアデノウイルスのほうがAAVよりも熱処理に対する感受性が大きいからである。
【0144】
多くの遺伝子療法の用途では、遺伝子療法用ベクターが特定のタイプの組織に大きな特異性で送達されることが望ましい。したがってウイルスベクターは、ウイルスのコートタンパク質との融合タンパク質としてのリガンドをウイルスの外面に発現させることにより、所定のタイプの細胞に対する特異性を持つように改変することができる。リガンドは、興味の対象であるタイプの細胞の表面に存在することが知られている受容体に対する親和性を持つように選択する。例えばHanら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第92巻:9747〜9751ページ(1995年))の報告によれば、モロニーマウス白血病ウイルスを改変してヒトgp70に融合したヒトヒレグリンを発現させることができ、その組み換えウイルスが、ヒト上皮増殖因子受容体を発現するある種のヒト乳がん細胞に感染する。この原理を他のウイルス-標的細胞のペア(そのペアでは、標的細胞がある受容体を発現し、ウイルスが、その細胞表面受容体のためのリガンドを含む融合タンパク質を発現する)に拡張することができる。例えば糸状ファージを改変し、選択したほぼすべての細胞受容体に対する特異的結合親和性を有する抗体断片(例えばFABまたはFv)を提示させることができる。上の説明は主にウイルスベクターに適用されるとはいえ、同じ原理を非ウイルスベクターにも適用することができる。そのようなベクターは、特定の標的細胞による取り込みを促進する特定の取り込み配列を含むように改変することができる。
【0145】
遺伝子治療用ベクターは、典型的には、以下に説明するように全身投与(例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、頭蓋内の輸液)または局所的塗布によって個々の患者に投与することで生体内に送達できる。あるいはベクターを生体外で細胞(例えば、個々の患者から分離して培養した細胞(例えばリンパ球、骨髄吸引物、組織バイオプシー)、または万能ドナー造血幹細胞)に送達した後、通常はそのベクターを組み込んだ細胞を選択してからその細胞を患者に再び移植することができる。
【0146】
ヌクレアーゼおよび/またはドナーコンストラクトを含むベクター(例えばレトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)は、生物に直接投与して生体内で細胞に形質導入することもできる。あるいは裸のDNAを投与することができる。投与は、分子を血液または組織細胞と最終的に接触させるのに通常用いられる任意の経路でなされ、例えば注射、輸液、局所的塗布、電気穿孔などの経路があるが、これらに限定されない。そのような核酸を投与するのに適切な方法を利用できる。そのような方法は当業者によく知られている。2つ以上の経路を利用して特定の組成物を投与することができるが、ある特定の経路では、別の経路よりも即時的かつより効果的な反応が得られることがしばしばある。
【0147】
この明細書に記載した(例えばヌクレアーゼをコードする、および/またはFIXをコードする)ポリヌクレオチドの導入に適したベクターとして、非組み込みレンチウイルスベクター(IDLV)がある。例えばOry他(1996年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第93巻:11382〜11388ページ;Dull他(1998年)J. Virol.、第72巻:8463〜8471ページ;Zuffery他(1998年)J. Virol.、第72巻:9873〜9880ページ;Follenzi他(2000年)Nature Genetics、第 25巻:217〜222ページ;アメリカ合衆国特許出願公開第2009/054985号を参照のこと。
【0148】
医薬として許容可能な担体は、投与する具体的な組成物と、その組成物の投与に用いる具体的な方法によって一部が決まる。したがって以下に記載するように、医薬組成物に関して利用可能なさまざまな製剤が存在している(例えば『レミントンの医薬科学』、第17版、1989年参照)。
【0149】
同じ系または異なる系を用いてヌクレアーゼをコードする配列とドナーコンストラクトを送達できることは明らかであろう。例えばドナーポリヌクレオチドをプラスミドで運び、1つ以上のヌクレアーゼをAAVベクターによって運ぶことができる。さらに、異なるベクターを同じ経路または異なる経路で投与することができる(筋肉内注射、尾の静脈への注射、他の静脈内注射、腹腔内投与)。ベクターは、同時に投与すること、または任意の順番で投与することができる。
【0150】
そこで本明細書には、ヌクレアーゼを媒介としたFIXコード配列の組み込みによる血友病Bの生体内または生体外での治療が含まれる。組成物は、治療用FIXポリペプチドが血清中で、または肝臓内で、または標的細胞内で望む濃度になる有効量でヒト患者に投与される。投与は、ポリヌクレオチドが望む標的細胞に送達される任意の手段で行なうことができる。例えば生体内と生体外の両方の方法が考えられる。門脈静脈への静脈内注射が好ましい1つの投与法である。他の生体内投与法として、例えば肝臓の葉または胆管への直接的な注入、肝臓の遠位からの静脈内注射(肝動脈を通じた注入を含む)、肝臓の柔組織への直接的な注入、肝動脈を通じた注入、胆管を通じた逆行注入などがある。生体外の投与法として、切除された肝細胞や肝臓の他の細胞に試験管内で形質導入した後、切除されて形質導入されたその肝細胞をヒト患者の門脈血管、肝臓柔組織、胆管に輸液する方法がある。例えばGrossman他(1994年)Nature Genetics、第6巻:335〜341ページを参照のこと。
【0151】
投与するヌクレアーゼとFIXドナーの有効量は、患者ごとに異なるであろうし、興味の対象である治療用ポリペプチドが何であるかによっても異なるであろう。したがって有効量は、組成物を投与する医師が最もうまく決定することができ、適切な用量は、当業者が容易に決定することができる。組み込みと発現に十分な時間(典型的には例えば4〜15日)が経過した後、治療用ポリペプチドの血清レベルまたは他の組織でのレベルを分析して投与前の初期レベルと比較すると、投与した量が少なすぎたか、適切な範囲内であったか、多すぎたかを判断できよう。初期投与とその後の投与のための適切な計画もさまざまだが、初期投与の後、必要な場合には投与を続けて行なうのが典型的である。あとからの投与はさまざまな間隔で行なうことができ、毎日から毎年、さらには数年ごとの範囲にわたる。当業者であれば、送達ベクターの免疫抑制による形質導入の抑制または阻止を回避するため、適切な免疫抑制法が勧められることを理解できよう。例えばVilquin他(l995年)Human Gene Ther.、第6巻:1391〜1401ページを参照のこと。
【0152】
生体外投与と生体内投与両方のための製剤として、液体または乳化液体中の懸濁液がある。活性成分は、医薬として許容できてその活性剤と適合性のある賦形剤と混合されることがしばしばある。適切な賦形剤として、例えば水、生理食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなどと、これらの組み合わせがある。それに加え、組成物は、少量の補助物質を含んでいてもよい。それは例えば、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、安定剤や、医薬組成物の有効性を増大させる他の試薬である。
【0153】
以下の実施例は、ヌクレアーゼがジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む本発明の実施態様に関するものである。これは例示だけを目的としており、他のヌクレアーゼを使用できることがわかるであろう。それは例えば、改変されたDNA結合ドメインを有するホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)、および/または天然または改変ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)のDNA結合ドメインと異種開裂ドメインまたはTALENSの融合体である。
【実施例】
【0154】
実施例1:FIX特異的ZFNと、それを使用した標的組み込み
遺伝子病を治療する戦略としての遺伝子導入は、疾患のさまざまなモデル動物で実施されて成功していて、最近ではヒトに応用されている(例えばAiuti他(2009年)N. Engl. J. Med.、第360巻:447〜458ページ;Maguire他(2009年)N. Engl. J. Med.、第358巻:2240〜2248ページ;Carrier他(2009年)Science、第326巻:818〜823ページを参照のこと)。生体外で培養されたES様誘導万能幹細胞の補正に遺伝子ターゲティングが利用されている(Hanna他(2007年)Science、第318巻:1920〜1923ページ)が、大半の遺伝子病は、現在は生体外操作が実現できない臓器系を冒している。そのような1つの臓器が、血漿タンパク質(血液凝固因子を含む)が合成される主要な部位である肝臓である。肝臓遺伝子治療のためのモデルとなる遺伝子病は、F9遺伝子がコードする血液凝固IX因子(FIX)の不足によって起こる血友病Bである。F9イントロン1への野生型エキソン2〜8の標的組み込み(TI)によってエキソン1を有する野生型コード配列(図1a)のスプライシングが可能になり、野生型FIXの発現と、たいていのF9突然変異によって起こる欠陥の救済につながると考えられる。そこでわれわれは、野生型F9のエキソン2〜8を載せた標的ベクターと組み合わせたZFNが生体内で遺伝子ターゲティングを誘導し、肝細胞のゲノム内において、突然変異したF9遺伝子をその場で補正できるかどうかを調べることを目指した。
【0155】
ヒトF9イントロン1を標的とするZFNペアを用い、それらZFNが特定の標的部位においてDSBを誘導する能力を調べた。Cel-Iアッセイ(Surveyor(登録商標)、Transgenomics社。Perez他(2008年)Nat. Biotechnol.、第26巻:808〜816ページ;Guschin他(2010年)Methods Mol Biol.、第649巻:247〜256ページ)を利用して標的部位のPCR増幅がどこで起こるかを調べた後、ミスマッチ検出酵素Cel-I(Yang他(2000年)Biochemistry、第39巻、3533〜3541ページ)を用いて挿入と欠失(indel)を定量した。それが、DSBの頻度の下限の評価値を与える。ZFN発現ベクターをトランスフェクトした3日後、DNイージーキット(Qiagen社)を用いてゲノムDNAをK562細胞から単離した。hF9イントロン1をCel-I分析するためのプライマーは、N2 For(TCGGTGAGTGATTTGCTGAG、 配列ID番号1)とN2 Rev(AACCTCTCACCTGGCCTCAT、配列ID番号2)であった。hF9遺伝子のイントロン1を標的とする活性が最大のZFNペア(N2と名付ける)を以下の表に示す(アメリカ合衆国特許出願公開第2011/0027235号も参照のこと)。
【0156】
【表1】
【0157】
細胞培養トランスフェクションのためのN2 ZEN発現プラスミドは、ゾセア・アシグナウイルスからの2Aリンカーを両方のZFNのコード配列の間に挿入し、このカセットをCMVプロモータの下流に挿入することによって構成した。N2 ZFNペアをヒトK562細胞にトランスフェクトすると、N2標的部位対立遺伝子の30%が開裂したことがわかった(図1c)。N2 ZFNがDSBを誘導することによって相同組み換えを促進する能力を調べるため、K562細胞の中にN2 ZFNを、NheI制限部位を挿入する標的ベクターと同時にトランスフェクトした(図1d)。NheIドナープラスミドは、K562ゲノムDNAからの相同部の左右のアームをPCRで増幅することによって構成した。その後、NheI制限部位を含む短い配列を相同部の左右のアームの間に導入した。トランスフェクションの3日後と10日後、対立遺伝子のそれぞれ14%と12%がNheIによる消化に感受性を持っていた(図1e)。これは、相同組み換えを通じた標的組み込み(TI)が効率的な割合であることを示している。
【0158】
実施例2:ヒト血友病の生体内マウスモデル
N2標的部位はhF9イントロン1に存在しているが、マウスF9遺伝子には欠けている。したがってN2 ZFNを生体内でテストするため、血友病B(HB)のヒト化マウスモデルを作った。肝臓特異的プロモータの制御下にあるhF9ミニ遺伝子(図2a)を構成した(Shen他(1989年)DNA、第8巻:101〜108ページ; Miao他(2000年)Mol. Ther. 第1巻:522〜532ページ)。hF9のTIのためのプライマーは、N2 TI For(GGCCTTATTTACACAAAAAGTCTG、配列ID番号14)とN2 TI Rev(TTTGCTCTAACTCCTGTTATCCATC、配列ID番号15)であった。
【0159】
このコンストラクトのイントロン1はヒトN2標的部位を含んでいる(着陸パッド、LP)。LPコンストラクトの中のF9配列の残部は以前に同定されたナンセンス突然変異(Y155停止)(Thompson他(1989年)Hum. Genet.、第94巻:299〜302ページ)をまねており、その中にはFIX触媒ドメインをコードするエキソンよりも前に早すぎる停止コドンがあるため、循環するFIXタンパク質が存在しなくなる。LPコンストラクトは遺伝子合成によって構成し(Genscript)、pUC57プラスミドに連結した。次にLPコンストラクトをSwaIで消化させて切除し、適切なプラスミドのSwaI部位の中にあってリコンビナーゼを媒介としたカセット交換(RCME)(Taconic-Artemis社)に適合したFLPリコンビナーゼ部位の間に連結してLP KIプラスミドを作り出した。そのLP KIプラスミドとFLPリコンビナーゼ発現プラスミド(Taconic-Artemis社)を、RCME に適合したFLPリコンビナーゼ部位を含むB6S6F1杯性幹(ES)細胞のROSA26遺伝子座にトランスフェクトした(Zambrowicz他(1997年)Proc Natl Acad Sci、第94巻:3789〜3794ページ)。標的組み込みが正しくなされたB6S6F1-LP ES細胞クローンをサザンブロットによって同定し、B6D2F1胚盤胞に注入した。B6S6F1-LPマウス(GO)に由来する純粋なES細胞は自然な誕生によって供給され、キメラの子どもと野生型C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories社)の戻し交雑を5世代(生体内開裂実験)または7〜10世代(生体内TI実験)にわたって行なった。
【0160】
プライマーとしてLP Oligo 1(ACTGTCCTCTCATGCGTTGG、配列ID番号16)、LP Oligo 2(GATGTTGGAGGTGGCATGG、配列ID番号17)、wtROSA Oligo 1(CATGTCTTTAATCTACCTCGATGG、配列 ID 番号18)、wtROSA Oligo 2(CTCCCTCGTGATCTGCAACTCC、配列 ID 番号19)を用い、LPマウスの遺伝子型を明らかにした(図2b)。LPマウスを、マウスF9遺伝子が欠失している既存のマウスモデル(Lin他(1997年)Blood、第90巻、3962〜3966ページ)と交雑させ、生体内でN2 ZFNの活性をテストできると考えられるLP/HBマウスを作り出した。
【0161】
HBマウスを10世代超にわたってC57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories社)と戻し交雑した。C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories社)を使用してLP-ネガティブTI実験を行なった。予想通り、LPマウスでは循環するhFIXを検出できなかった(図2c)。hFIX ELISAキット(Affinity Biologicals社)を用いて血漿hFDの定量を実施し、プールした正常なヒト血漿(Trinity Biotech社)からの標準曲線と比較した。標準曲線(15ng/ml)の最終値よりも低いすべての値に、検出限界である15ng/mlという値を与えた。hFIX ELISAのための血漿は、後眼窩から出血させてヘパリン処理した毛細管に入れることによって取得した。
【0162】
実施例3:FIX特異的ZFNの生体内標的送達
N2 ZFNをFIX産生の正常部位である肝臓に送達するため、肝臓特異的なエンハンサとプロモータからのN2 ZFNを発現する肝臓親和性アデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8-N2)を作った(Shen他、上記文献と、Miao他、上記文献)(図2d)。
【0163】
生体内におけるN2 ZENの開裂活性をテストするため、le11 v.g. AAV8-N2発現ベクターを用いてLPマウスの尾の静脈に注射を行ない、注射後7日目に肝臓DNAを単離した。LPのPCR増幅とCel-Iアッセイから、34〜47%のLP対立遺伝子が開裂したことがわかった(図2e)。LPコンストラクトのCel-Iのためのプライマーは、LP N2 For(CTAGTAGCTGACAGTACC、配列ID番号20)とLP N2 Rev (GAAGAACAGAAGCCTAATTATG、配列ID番号21)であった。
【0164】
実施例4:ドナー核酸とFIX特異的ZFNの生体内同時送達
スプライスアクセプタ(SA)が前にある野生型エキソン2〜8をLPコンストラクトのイントロン1に挿入すると、エキソン1を有する野生型コード配列のスプライシングが可能になる(図3a)。LPマウスの体内において、突然変異したF9遺伝子をその場で補正するため、遺伝子ターゲティングを目的として、相同部の両アームが“SA-野生型hF9エキソン2〜8”カセットに隣接したAAVドナー鋳型ベクター(AAV-ドナー)を作った(図3a)。ドナーベクター産生プラスミドは、LPマウスのゲノムDNAからの相同部の左右のアームをPCRで増幅することによって構成した。pAAV-hFIX16プラスミド(Manno他(2006年)Nat. Med.、第12巻:342〜347ページ)からのPCR増幅によって“スプライスアクセプタ-エキソン2〜8コード配列-ウシ成長ホルモンポリAシグナル”カセットを取得し、相同部の左右のアームの間に連結した。HR(相同組み換え)は細胞周期のS/G2期の間が好ましいため、N2ベクターとドナーベクターを新生マウスに送達した。そのマウスでは肝細胞が迅速に増殖し、細胞周期が進行してS/G2期に入った。
【0165】
生後2日目のLP/HBマウスに、AAV-N2(5el0 v.g)だけ(n=l)、またはAAV-N2(5el0 v.g)+AAV-ドナー (2.5el1 v.g) (n=5)、またはAAV-Mock(5el0 v.g)+AAV-ドナー(2.5e11 v.g)(n=5)を注射した。Mockベクターでは、N2 ZFNをウミシイタケのルシフェラーゼで置き換えた。
【0166】
生後10週間の時点でマウスを安楽死させて肝臓DNAを単離し、独立な2通りのPCR戦略を利用してドナーのTIを調べた。第1の戦略では、標的とするLP対立遺伝子のためのより小さなアンプリコンと、標的としないLP対立遺伝子のためのより大きなアンプリコンを生成させるプライマーを使用する(図3a、プライマーP1、P2)。第2の戦略は、標的とするLP対立遺伝子のためのより大きなアンプリコンと、標的としないLP対立遺伝子のためのより小さなアンプリコンを生成させるプライマーを使用する(図3a、プライマーP1/P3)。LPコンストラクトのTIのためのプライマーは、P1 (ACGGTATCGATAAGCTTGATATCGAATTCTAG、配列ID番号22)、P2(CACTGATCTCCATCAACATACTGC、配列ID番号23)、P3 (GAATAATTCTTTAGTTTTAGCAA、配列ID番号24)であった。
【0167】
両方のPCR分析を行なったとき、N2+ドナーを受け取ったマウスでだけTIの証拠が見られた(図3b)。バンド強度の定量結果は、TIの頻度が1〜7%であることを示唆していた(図3b)。
【0168】
循環するhFIXがゲノム補正によって産生されているかどうかを確認するため、生後2日目のLP/HBマウスに、AAV-N2だけ(n=7)、またはAAV-Mock+AAV-ドナー(n=6)、またはAAV-N2+AAV-ドナー(n=7)を注射した(上と同じベクター投与量)。N2だけ、またはMock+ドナーを受け取ったマウスの血漿hFIXのレベルは平均で15ng/ml(アッセイの検出の下限)未満であったのに対し、N2+ドナーを受け取ったマウスは平均が11〜121ng/mlであり(正常値の2〜3%に対応)(図4a)、N2だけを受け取ったマウスおよびMock+ドナーを受け取ったマウスよりも有意に大きかった(あらゆる時点でp<0.006、両側t検定)。
【0169】
安定なゲノム補正であることを確認するため、肝部分切除(PHx)を行なった。すると肝臓の再生中に肝細胞が増殖するにつれて余分な染色体エピソームが希釈されて失われた(Nakai et al, (2001), J. Virol. 75: 6969-6976)(図4a図4b)。肝部分切除は、以前に報告されているようにして実施した((MitchellとWillenbring(2008年)Nat. Prot.、第3巻:1167〜1170ページ)。動物のあらゆる処理手続きは、フィラデルフィアIACUCの小児病院によって承認された。N2+ドナーで処理したマウスのhFIXのレベルの測定値は、肝部分切除後に肝臓が再生した後も変わらなかった。これは、安定な補正であったことを示している。N2だけ、またはMock+ドナーを受け取った対照マウスは、肝部分切除後に平均値が15ng/ml未満の状態が続いた(図4a)。これは、N2+ドナーを受け取ったマウスよりも有意に低い(あらゆる時点でp<0.004、両側t検定)。hFIXの発現がLP特異的であってゲノムへのランダムなドナー組み込みの結果ではないことを確認するため、LP導入遺伝子を欠いた生後2日目の野生型マウスにAAV-N2だけ(n=8)、またはAAV-Mock+AAV-ドナー(n=6)、またはAAV-N2+AAV-ドナー(n=9)を注射した(上と同じベクター用量)。N2だけ、Mock+ドナー、N2+ドナーを受け取ったマウスの血漿hFIXのレベルは、平均でそれぞれ15ng/ml未満、19ng/ml未満、27ng/ml未満であった。これは、LPマウスにおけるhFIX発現の大半がLP特異的補正に由来することを示している(図4c)。
【0170】
hFIXのレベルがHB表現型を補正するのに十分であったことを確認するため、生後2日目のLP/HBマウスに、AAV-N2だけ(n=10)、またはAAV-Mock+AAV-ドナー(n=9)、またはAAV-N2 + AAV-ドナー(n=9)を注射した(上と同じベクター投与量)。N2だけを注射したマウスの血漿hFIXのレベルはやはり平均で15ng/ml未満であった。Mock+ドナーを受け取ったマウスは平均で25ng/ml未満であり、N2+ドナーを受け取ったマウスはhFIXのレベルが有意に高く(Mock+ドナーと比べてあらゆる時点でp<0.04)、平均で166〜354ng/mlであった(正常な循環レベルの3〜7%)(図4d)。hFIX mRNAのRT-PCRによって肝臓特異的hFIXの発現が確認された(図4e)。凍結させたマウス組織からのRAをRNイージーキット(Qiagen社)と無RNアーゼDNアーゼキット(Qiagen社)を用いて単離した。iSCRIPTキット(Bio-Rad社)を用いてcDNAを合成した。プライマーとしてhFIX Gen1 For(ACCAGCAGTGCCATTTCCA、配列ID番号25)とhFIX Gen1 Rev(GAATTGACCTGGTTTGGCATCT、配列ID番号26)を用い、hFIX転写産物のRT-PCRを実施した。
【0171】
HB表現型が補正されたかどうかを調べるため、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を測定した。これはフィブリン血栓形成のキネティックスの1つの指標であり、血友病において顕著に長くなる。血栓の形成は、25mMの塩化カルシウムの添加によって開始させた。aPTTのための血漿は、尾から出血させ、9:1の割合にしてクエン酸ナトリウムの中に入れることによって取得した。野生型マウス(n=5)とHBマウス(n=12)に関するaPTTの平均値は、それぞれ36秒と67秒であった(図4f)。Mock+ドナーを受け取ったマウス(n=3)は平均値が60秒であったのに対してN2+ドナーを受け取ったマウス(n=5)はaPTTが有意に短く、平均で44秒であった(Mock+ドナーと比較してp=0.0014、両側t検定)(図4f)。
【0172】
実施例5:成体の動物への改変したヌクレアーゼとドナーの生体内同時送達
次に、新生児に関して上に記載したようにして、成体の動物に対してヒトF.IX LPのゲノム編集を行なった。6週目の成体LPマウスに1e11 v.g./マウスAAV-N2だけ(“ZFNだけ”)、または1e11 v.g./マウスAAV-N2と5.5e11 v.g./マウスAAV-ドナー(“ZFN+ドナー”)、または1e11 v.g./マウスAAV-Mockと5.5e11 v.g. AAV=ドナー(“Mock+ドナー”)を静脈内注射した。図5Aに示したデータは、1つの群内のマウスを約20匹にして行なった3回の実験を表わしている。これらの実験では、野生型hF.IXのレベルは約1000ng/mlであった。同様に、図5Bは、生後6週目に、1e11 v.g./マウスAAV-N2だけ(“ZFNだけ”)、または1e11 v.g./マウスAAV-N2と5.5e11 v.g./マウスAAV-ドナー(“ZFN+ドナー”)、または1e11 v.g./マウスAAV-Mockと5.5e11 v.g. AAV-ドナー(“Mock+ドナー”)を静脈内注射した後の成体LPマウスにおける血漿hFIXのレベルを示すグラフである。注射の2日後、図5Bの2つの群に肝部分切除を行なった。示したデータは、1つの群内のマウスを約20匹にして行なった3回の実験を表わしている。これらの実験では、野生型hF.IXのレベルは約1000ng/mlであった。このデータは、成体マウスに肝部分切除を行なった場合または行なわない場合にhF.IXの発現が安定であることと、成体の動物でゲノム編集を実行できることを示している。
【0173】
この明細書で言及したあらゆる特許、特許出願、刊行物は、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれている。
【0174】
明確に理解できるようにするため図と実施例によって開示内容をいくらか詳細に説明してきたが、当業者には、開示内容の精神または範囲を逸脱することなく、さまざまな変更や改変が可能であることが明らかであろう。したがって本発明が上記の説明と実施例に限定されると考えてはならない。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]