【実施例】
【0036】
以下に、本発明の好適な適用例について説明する。まず、セラミックス基体について具体的に検討した結果を、実験例1〜27として説明する。実験例1〜16、23〜27のMgO原料、Al
2O
3原料は、純度99.9質量%以上、平均粒径1μm以下の市販品、AlN原料は純度99質量%、平均1μm以下の市販品を使用し、実験例17〜22ではMgO原料に純度99.4質量%、平均粒径3μmの市販品、Al
2O
3原料に純度99.9質量%、平均粒径0.5μmの市販品、AlN原料に実験例1〜16、23〜27と同じ平均粒径1μm以下の市販品を使用した。なお、実験例1〜4、7〜17、21、23〜27が本発明の実施例に相当し、実験例5〜6、18〜20、22が比較例に相当する。
【0037】
[実験例1〜16、25]
・調合
MgO原料、Al
2O
3原料及びAlN原料を、表1に示す質量%となるように秤量し、イソプロピルアルコールを溶媒とし、ナイロン製のポット、直径5mmのアルミナ玉石を用いて4時間湿式混合した。混合後スラリーを取り出し、窒素気流中110℃で乾燥した。その後、30メッシュの篩に通し、混合粉末とした。なお、この混合粉末のMg/Alのモル比は2.9である。
・成形
混合粉末を、200kgf/cm
2の圧力で一軸加圧成形し、直径50mm、厚さ20mm程度の円盤状成形体を作製し、焼成用黒鉛モールドに収納した。
・焼成
円盤状成形体をホットプレス焼成することによりセラミックス基体を得た。ホットプレス焼成では、プレス圧力を200kgf/cm
2とし、表1に示す焼成温度(最高温度)で焼成し、焼成終了までAr雰囲気とした。焼成温度での保持時間は4時間とした。
【0038】
[実験例17〜21、23、24、26、27]
MgO原料、Al
2O
3原料及びAlN原料を、表1示す質量%となるように秤量し、混合粉末の成形圧力を100kgf/cm
2、焼成雰囲気をN
2、焼成温度(最高温度)を表1に示す値に設定した以外は実験例1と同様にしてセラミックス基体を得た。
【0039】
[実験例22]
MgO原料、Al
2O
3原料を、表1に示す質量%となるように秤量した以外は、実験例1と同様にして調合工程を行い混合粉末を得た。混合粉末を、100kgf/cm
2の圧力で一軸加圧成形し、直径20mm、厚さ15mm程度の円柱状成形体を作製し、作製された成形体を3000kgf/cm
2でCIP成形する成形工程を行った。蓋付の黒鉛製るつぼに上記の混合原料を充填し、充填した混合原料中に成形体を埋め込んだ。円柱状成形体を常圧焼成する焼成工程を行い、セラミックス基体を得た。焼成工程では、表1に示す焼成温度(最高温度)で焼成し、焼成終了までAr雰囲気とした。焼成温度での保持時間は4時間とした。
【0040】
[評価]
実験例1〜27で得られた各材料を各種評価用に加工し、以下の評価を行った。各評価結果を表1、2に示す。
【0041】
(1)嵩密度・開気孔率
純水を媒体としたアルキメデス法により測定した。
【0042】
(2)結晶相評価
材料を乳鉢で粉砕し、X線回折装置により結晶相を同定した。測定条件はCuKα、40kV、40mA、2θ=5−70°とし、封入管式X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス製 D8 ADVANCE)を使用した。測定のステップ幅は0.02°とし、ピークトップの回折角を特定する場合は内部標準としてNIST製Si標準試料粉末(SRM640C)を10質量%添加し、ピーク位置補正した。酸化マグネシウムのピークトップの回折角は、ICDD78−0430の値とした。Mg(Al)O(N)と酸化マグネシウムとのピーク間隔、積分幅は下記のとおり算出した。
(2)−1 ピーク間隔(ピークシフト)の計算
Mg(Al)O(N)中のAl、N固溶量を相対比較するため、Mg(Al)O(N)の(220)面を対象としてピーク間隔(ピークシフト)を評価した。Mg(Al)O(N)の(220)面のピークトップの回折角と、ICDD78−0430にある酸化マグネシウムの(220)面の回折角(62.3°)の差をピーク間隔とした。
(2)−2 積分幅の計算
Mg(Al)O(N)の結晶性を相対比較するため、積分幅を計算した。積分幅は、MgO-AlN固溶体の(200)ピークのピーク面積をピークトップの強度(Imax)で除して計算した。ピーク面積は、ピークトップの回折角から−1°〜+1°の範囲において、バックグラウンドを差し引いて、強度を積算することで得た。計算式を下記に示す。なお、バックグラウンドはピークトップから−1°の回折角におけるピーク強度とした。上記の手法を用いて計算したNIST製Si標準試料(SRM640C)の(111)面の積分幅は0.15°であった。
(積分幅)=(ΣI(2θ)×(ステップ幅))/Imax
(2)−3 Mg-Al酸窒化物相とMg(Al)O(N)のXRDピーク強度比の計算 副相として含まれるMg-Al酸窒化物相の含有割合を相対比較するため、下記の方法を用いてMg-Al酸窒化物相とMg(Al)O(N)のXRDピーク強度の比を計算した。Mg−Al酸窒化物相の2θ=47〜49°のXRDピーク強度をA、2θ=62.3〜65.2°のMg(Al)O(N)の(220)面のXRDピーク強度をBとしたときのA/B値を求めた。ここでは、XRDピーク強度Aは、2θ=47〜49°のXRDピークのバックグラウンドを除いた積分強度とし、XRDピーク強度Bは、Mg(Al)O(N)の(220)面のXRDピークのバックグラウンドを除いた積分強度とした。なお、算出には、市販のソフトウエアMDI社製JADE5を用いて求めた。
【0043】
(3)エッチングレート
各材料の表面を鏡面に研磨し、ICPプラズマ耐食試験装置を用いて下記条件の耐食試験を行った。段差計により測定したマスク面と暴露面との段差を試験時間で割ることにより各材料のエッチングレートを算出した。
ICP:800W、バイアス:450W、導入ガス:NF
3/O
2/Ar=75/35/100sccm 0.05Torr、暴露時間:10h、試料温度:室温
【0044】
(4)構成元素
EPMAを用いて、構成元素の検出及び同定と、各構成元素の濃度分析を行った。
【0045】
(5)耐湿性
各材料を乳鉢にてメジアン径10μm以下まで粉砕した粉末を作製し、室温で飽和水蒸気圧雰囲気に4日間暴露した。その後、TG−DTA装置にて40〜500℃間の脱水量を測定した。
【0046】
(6)バルク材耐湿性
各材料の表面を鏡面研磨し、40℃、相対湿度90%の雰囲気下に28日間暴露した。その後、走査型電子顕微鏡(フィリップス社製XL30)にて試料表面を観測し、変化のないものを(○)、表面の40%以上に針状や粒状の析出物が生じたものを(×)、その中間を(△)とした。
【0047】
(7)バルク材耐水性
各材料の表面を鏡面研磨し、室温で水中に15日間浸漬した。その後、走査型電子顕微鏡にて試料表面を観測し、変化のないものを(○)、表面の40%以上に溶出した痕跡が見られるものを(×)、その中間を(△)とした。
【0048】
(8)破壊靱性
JIS−R1607にしたがって、SEPB法により破壊靱性を評価した。
【0049】
(9)曲げ強度
JIS−R1601に準拠した曲げ強度試験によって測定した。
【0050】
(10)体積抵抗率測定
JIS−C2141に準じた方法により、大気中、室温にて測定した。試験片形状は直径50mm×(0.5〜1mm)とし、主電極は直径20mm、ガード電極は内径30mm、外径40mm、印加電極は直径40mmとなるよう各電極を銀で形成した。印加電圧は2kV/mmとし、電圧印加後1分時の電流値を読み取り、その電流値から室温体積抵抗率を算出した。また、実験例1、3、5、12について、同様の方法により、真空中(0.01Pa以下)、600℃にて測定した。試験片形状は直径50mm×(0.5〜1mm)とし、主電極は直径20mm、ガード電極は内径30mm、外径40mm、印加電極は直径40mmとなるよう各電極を銀で形成した。印加電圧は500V/mmとし、電圧印加後1時間時の電流値を読み取り、その電流値から体積抵抗率を算出した。なお、表2の体積抵抗率において、「aEb」は、a×10
bを表し、例えば「1E16」は1×10
16を表す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
[評価結果]
表1、2に示すように、実験例1〜3、7〜17、21、23〜27のセラミックス基体は、結晶相評価の結果、(111)面、(200)面、(220)面のXRDピークが酸化マグネシウムの立方晶のピークと窒化アルミニウムの立方晶のピークとの間である2θ=36.9〜39°、42.9〜44.8°、62.3〜65.2°に現れるMg(Al)O(N)を主相として含み、少なくとも2θ=47〜49°にXRDのピークを有するMg−Al酸窒化物(Mg−Al−O−N)やスピネル(MgAl
2O
4)を副相として含んでいたが、AlNは含まれていなかった。代表例として
図2に実験例1のXRD解析チャート、
図3に実験例1のMg(Al)O(N)のXRDピーク拡大図、表1に実験例1〜22のMg(Al)O(N)の(111)、(200)、(220)面ピークトップ、Mg(Al)O(N)の(220)面のXRDピークトップと酸化マグネシウムピークトップとの間隔(ピークシフト)、及びMg(Al)O(N)の(200)面のXRDピークの積分幅を示す。なお、実験例6〜11、13、16、17、19〜27では、スピネルピークとMg(Al)O(N)の(111)面のピークとの重なりが著しく、(111)面のピークトップが判別できなかったため、これらの(111)面のピークトップの値は、表1に記載していない。ピークシフトが大きいほど固溶量が多く、積分幅が小さいほど固溶状態が均質と考えられる。なお、実験例2、3、7〜17、20、21〜27のXRD解析チャートは、実験例1に含まれるMg(Al)O(N)、Mg-Al酸窒化物、スピネルの含有量が変化したものであり、図示を省略する。ここで、主相とは、体積割合において50%以上を有する成分をいい、副相とは、主相以外でXRDピークが同定された相をいう。断面観察における面積比は体積割合を反映すると考えられるため、主相はEPMA元素マッピング像で50%以上の面積を有する領域とし、副相は主相以外の領域とする。実験例20は、実験例1などと同様にMg(Al)O(N)、Mg−Al酸窒化物及びスピネルの三成分を含んでいたが、各成分の量に偏りがなく、どの成分も主相とならない複合材であった。このため、表1の主相、副相の欄には上記三成分を記載した。
図4に実験例1のEPMA元素マッピング像を示す。
図4より、実験例1の主相部は主としてMgとOで構成されるが、Al、Nも同時に検出されるため
図2、3に示したMg(Al)O(N)であることが示される。また、副相としてスピネル部と少量のMg−Al酸窒化物部が認められる。
図4より、実験例1中のMg(Al)O(N)の面積比は約86%であり、Mg(Al)O(N)が主相であることがわかった。その他の実験例についても同様の解析を行い、例えば実験例7、15のMg(Al)O(N)の面積比はそれぞれ約59%、約75%であり、Mg(Al)O(N)が主相であることがわかった。なお、ここでは、一例として、主相と副相との判定をEPMA元素マッピングにて行うものとしたが、各相の体積割合を識別できる方法であれば、他の方法を採用してもよい。
【0054】
なお、EPMA元素マッピング像は、濃度に応じて、赤・橙・黄・黄緑・緑・青・藍に色分けされており、赤が最も高濃度、藍が最も低濃度、黒はゼロを表す。しかし、
図4はモノクロで表示されているため、以下に
図4の本来の色について説明する。実験例1(低倍)では、Mgは地色が橙で点部分が青、Alは地色が青で点部分が橙、Nは地色が青で点部分が藍、Oは地色が橙で点部分が赤だった。実験例1(高倍)では、Mgは地色(Mg(Al)O(N))が橙で島部分(MgAl
2O
4)が青で線状部分(Mg−Al−O−N:マグネシウムアルミニウム酸窒化物)が緑、Alは地色が青で島部分と線状部分が橙、Nは地色が青で島部分が藍で線状部分が緑、Oは地色が橙で島部分が赤で線状部分が緑だった。実験例5(低倍)はMg及びOは赤、Al及びNは黒だった。
【0055】
また、実験例4のセラミックス基体は、結晶相評価の結果、共に前出のMg(Al)O(N)を主相として含むものであったが、スピネルやAlNを副相として含んでいた。表1に実験例4のMg(Al)O(N)のXRDピークと酸化マグネシウムのXRDピークとの間隔(ピークシフト)を示す。実験例4のように、焼成温度が1650℃では反応が十分起こらず、固溶量が少ないと推察された。焼成温度1600℃では反応がほとんど起こらないため、実験例18、19のセラミックス基体では、Mg(Al)O(N)は生成されなかった。
【0056】
更に、実験例5のセラミックス基体は、MgOを主相として含むものであり、実験例6のセラミックス基体は、スピネルを主相として含み、MgOを副相として含むものであった。また、実験例22のセラミックス基体は、MgOを主相、スピネルを副相として含むものであった。したがって、原料中にAlN成分が含まれていないとホットプレス、常圧焼成のいずれでもMgOへAl成分が固溶しないことがわかった。
【0057】
そして、実験例1〜3、7〜13、17、20、21、23〜26のセラミックス基体は、水分減少率(TG−DTAによる40〜500℃の質量減少率)が2%以下、実験例4、6、14〜16、27のセラミックス基体は、水分減少率が3%以下であり、MgOセラミックス、つまり実験例5のセラミックス基体に比べて格段に高い耐湿性を有していた。バルク材耐湿性、耐水性試験の代表例として実験例2、5の微構造写真を
図5に示し、実験例8、9の微構造写真を
図6に示す。バルク材の耐湿性は固溶量が多い方がよく、Mg(Al)O(N)の(220)面の、酸化マグネシウムからのピークシフトが0.2°以上である実験例1〜3、7〜14、17、20、21、27は、バルク材の耐湿試験(40℃、90RH%雰囲気下で28日間暴露)で表面状態に変化がなく、良好であった。また、実験例4、15、16、27は、バルク材の耐湿試験で表面状態が変化したが、表面の40%以上にわたって針状、粒状の析出物が形成される実験例5、6、18、19、22と比べて変化が小さかった。この結果から、バルク材の耐湿性は、MgOへのAl、N成分固溶量に依存することがわかった。すなわち、Mg(Al)O(N)の(220)面の酸化マグネシウムからのピークシフトが0.03°未満のものは表面の40%以上で変化が生じ耐湿性が低く、ピークシフトが0.03°以上0.2°未満では耐湿性がよく、ピークシフトが0.2°以上あると耐湿性が更によかった。即ち、Mg(Al)O(N)の(220)面のXRDピークが、酸化マグネシウムの立方晶のピークと窒化アルミニウムの立方晶のピークとの間である、62.33°以上62.50°未満(2θ)に現れると耐湿性がよく、62.50°以上に現れると耐湿性が更によかった。また、Mg(Al)O(N)の(200)面のXRDピークが、酸化マグネシウムの立方晶のピークと窒化アルミニウムの立方晶のピークとの間である42.92°以上43.04°未満に現れると耐湿性がよく、43.04°以上に現れると耐湿性が更によかった。
【0058】
またバルク材の耐水性は、ピークシフトが大きく、積分幅が小さい材料ほど、良好であることがわかった。すなわち、(220)面のXRDピークシフトが0.42°以上であり、積分幅が0.35°以下である、実験例1、2、7、8、10〜13、17、20はバルク材耐水性試験で表面状態に変化がなかった。実験例3、9、14、15はバルク材の耐水試験で溶出による穴部が少数認められたが、実験例4〜6、16、18、19、22、27や積分幅が0.50°より大きい実験例21、26では表面の40%以上で溶出した様子が認められた。この結果から、バルク材の耐水性は、MgOへのAl、N成分の固溶量が多く、且つ均質なものがよいことがわかった。すなわち、Mg(Al)O(N)の(220)面の酸化マグネシウムからのピークシフトが0.05°以下の材料は表面の40%以上が溶出し耐水性が低く、ピークシフトが0.05°以上0.42°未満の材料、又はピークシフトが0.42°以上であるがMg(Al)O(N)の(200)面の積分幅が0.35°を超える材料は、耐水性がよく、ピークシフトが0.42°以上、且つ積分幅が0.35°以下の材料は耐水性が更によかった。即ち、Mg(Al)O(N)の(220)面のXRDピークが、酸化マグネシウムの立方晶のピークと窒化アルミニウムの立方晶のピークとの間である、62.35°以上62.72°未満(2θ)に現れる材料、又は(220)面のXRDピークが62.72°以上であるが(200)面の積分幅が0.35°を超える材料は、耐水性がよく、(220)面のXRDピークが62.72°以上、且つ積分幅が0.35°以下の材料は耐水性が更によかった。また、Mg(Al)O(N)の(200)面のXRDピークが酸化マグネシウムの立方晶のピークと窒化アルミニウムの立方晶のピークとの間である42.95°以上43.17°未満に現れると耐水性がよく、2θ=43.17°以上の材料は、耐水性が更によかった。
【0059】
また、実験例1〜3、12、14〜16のセラミックス基体は、表2に示すエッチングレートの結果から、実験例5のMgOセラミックスと匹敵する高い耐食性を有していることがわかった。実験例4、7〜11、13、21、23〜26のセラミックス基体は、エッチングレートの結果から、耐食性は実験例5のMgOと比べてやや劣るものの、実験例6のセラミックス基体、つまりスピネルを主相とする材料や表に示さなかったイットリア(エッチングレート約240nm/h)よりも高い耐食性を有していることがわかった。実験例1〜3、7〜15、23〜26は、副相としてMg-Al酸窒化物(Mg−Al−O−N)相を含むが、Mg−Al酸窒化物相の含有量が多いほど機械特性が向上していた。Mg−Al酸窒化物相の2θ=47〜49°のXRDピーク強度をA、2θ=62.3〜65.2°のMg(Al)O(N)の(220)面のXRDピーク強度をBとしたときのA/B値を表2に示す。A/Bが大きいほどMg−Al酸窒化物の量が多いことを意味し、A/Bが増加するにつれて破壊靱性、曲げ強度ともに向上した。A/Bが0.03以上である実験例7〜11、13、15、17、20、21、24〜26は、破壊靱性2.5以上であり、曲げ強度180MPa以上の高い曲げ強度を有することがわかった。また、実験例7〜10、13、15、17、20、21は、曲げ強度200MPa以上の高い曲げ強度を有することがわかった。例えば、実験例8のAは4317カウント、Bは83731カウントであり、A/B値は0.039となり、破壊靱性は2.5、強度は222MPaであった。また、実験例15のAは13566カウント、Bは108508カウントであり、A/B値は0.125となり、破壊靱性は4.4、強度は350MPaであった。しかし、Mg−Al酸窒化物の量の増加に伴って高耐食なMg(Al)O(N)の含有量が低下するため、耐食性は低下した。例えば、A/Bが0.3以上の実験例17ではエッチングレートが181nm/hに達し、A/Bが0.4を超える実験例20ではスピネルと同レベルの耐食性となった。この結果から、A/B値が0.03以上0.14以下とすることで耐食性と機械強度を同時に発現することがわかった。
【0060】
実験例2、3、8、10、15、24、25の室温での体積抵抗率は全て1×10
17Ωcm以上と実験例5のMgOと同等であり、高抵抗が必要となる静電チャックやヒーターなどの半導体製造装置用に好適であることがわかった。
【0061】
また、実験例5と実験例12の600℃での体積抵抗率はそれぞれ2×10
12Ωcm、2×10
10Ωcmであり、実験例12のセラミックス基体はMgO(実験例5)に比べて低い電気抵抗を有することがわかった。このほか、実験例1、3のセラミックス基体についても実験例12と同様に、実験例5に比べて低い電気抵抗を有することがわかった。
【0062】
次に、セラミックス基体と電極とを備えるセラミックス部材(電極埋設体)を作製した例を実施例として説明する。実施例1〜112及び比較例1〜22では、MgO原料に純度99.4質量%、平均粒径3μmの市販品、Al
2O
3原料に純度99.9質量%、平均粒径0.5μmの市販品、AlN原料に純度99質量%、平均粒径1μm以下の市販品を使用した。
【0063】
電極埋設体は、焼結体を作製してから、その焼結体に電極ペーストを印刷し、成形体、もしくは焼結体で電極を挟み込み焼結して作製した。
【0064】
[セラミックス部材の作製]
第1焼結体の作製を行った。調合処理として、MgO原料、Al
2O
3原料及びAlN原料を、表3〜8に示す質量%となるように秤量し、イソプロピルアルコールを溶媒とし、ナイロン製のポット、直径20mmの鉄心入ナイロンボールを用いて4時間湿式混合した。混合後スラリーを取り出し、窒素気流中、110℃で乾燥した。その後、30メッシュの篩に通し、混合粉末とした。次に、第1成形処理として、混合粉末を、100kgf/cm
2の圧力で一軸加圧成形し、直径50mm、厚さ20mm程度の円盤状成形体を作製し、焼成用黒鉛モールドに収納した。続いて、第1焼成処理として、上記円盤状成形体をホットプレス焼成し、第1焼結体を得た。ホットプレス焼成では、プレス圧力を200kgf/cm
2とし、表3〜8に示す第1焼成温度(最高温度)で焼成し、焼成終了まで窒素又はAr雰囲気とした。焼成温度での保持時間は4時間とした。続いて、加工処理として、第1焼結体を直径約50mm、厚さ3.5mmの円板に加工した。このとき、一方の面を#800仕上げとし、電極ペーストの印刷面とした。
【0065】
次に、電極形成処理として、第1焼結体の表面に電極ペーストを塗布し、電極パターンを形成した。電極原料としての電極成分には、NbN、TiN、ZrN、WC、TaC、ZrC、TiC、NbC、Mo
2C、Mo、W、Nb、Cr、、Ru、Ir、Pt、Rh、TiB
2、ZrB
2、MoSi
2、WSi
2の市販品を用いた。また、電極原料としてのフィラー成分は、MgO(純度99.4質量%、平均粒径3μm)、Mg(Al)O(N)のいずれかとした。Mg(Al)O(N)は、セラミックス基体と同じ焼結体を粉砕して平均粒径1μm程度としたものを用いた。電極ペーストは、表3〜8の電極原料と有機溶媒とバインダとを混合、混練して調製した。バインダ/有機溶媒には、ポリビニルブチラール/ジエチレングリコールモノブチルエーテルを混合したものを使用した。この電極ペーストを用いて、スクリーン印刷法にて幅5mm×長さ15mmの電極を焼結体の表面に印刷した。このとき、電極の厚さは50〜100μmとした。印刷後、大気中で乾燥させた。
【0066】
次に、セラミックス基体と電極とを共焼成する処理を行った。まず、第2成形処理として、第1焼結体の原料と同じ混合粉末を100kgf/cm
2の圧力で一軸加圧成形し、直径50mm、厚さ20mm程度の円盤状の第2成形体を作製した。次に第1焼結体のうち電極パターンが形成された面の上に、第2成形体を積層した。これにより、第1焼結体/電極パターン/第2成形体という3層構造の積層体が得られた。あるいは、第1焼結体と同様の方法で作製した第2焼結体を用いて、第1焼結体のうち電極パターンが形成された面の上に、第2焼結体を積層した。これにより、第1焼結体/電極パターン/第2焼結体という3層構造の積層体が得られた。続いて、ホットプレス用のカーボン焼成治具内部にこの積層体を載置し、第2焼成処理としてホットプレス焼成した。第2焼成処理では、プレス圧力を200kgf/cm
2とし、表3〜8に示す第2焼成温度(最高温度)で焼成し、焼成終了まで窒素又はAr雰囲気とした。焼成温度での保持時間は4時間とした。このようにして、成形体及び電極パターンがそれぞれ焼結して第2焼結体及び電極となると共に、第1焼結体と電極と第2焼結体とが固着して電極内蔵の一体型セラミックス部材となった。この一体型セラミックス部材から小片を切り出し、後述する評価試験に用いた。なお、第1焼結体の代わりに、第1の部分を成形体とし、この成形体の一方の面に電極パターンを形成したものを準備し、第2成形体と積層の後、ホットプレス焼成してセラミックス部材(電極埋設体)を作製してもよい。
【0067】
[実施例1〜112]
表3〜7に示す条件にて、実施例1〜112の電極埋設体を作製した。実施例22〜24、32〜34、41〜43、50〜52、61〜63、78〜80、91〜93、110〜112については、第1焼結体と第2焼結体の両者焼結体の組み合わせで、電極埋設体を作製した。また、第2焼結体は、第1焼結体と同様のものを用いた。それ以外の実施例では、第1焼結体と第2成形体の組み合わせで電極埋設体を作製した。
【0068】
[比較例1〜22]
表3、8に示す条件にて、比較例1〜22の電極埋設体を作製した。比較例9、10、13、14、17、18、21、22については、第1焼結体と第2焼結体の両者焼結体の組み合わせで、電極埋設体を作製した。また、第2焼結体は、第1焼結体と同様のものを用いた。それ以外の比較例では、第1焼結体と第2成形体の組み合わせで電極埋設体を作製した。実施例1〜112、比較例1〜22のセラミックス基体の原料配合量、焼成温度、焼成雰囲気、電極原料の配合量、熱膨張率などをまとめて表3〜8に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
(電気抵抗率)
得られた電極内蔵の一体型セラミックス部材から、幅9mm×長さ9mm×厚さ約6mmの直方体形状に切り出して試験片とした。この試験片に内蔵された電極は、幅5mm×長さ9mm×厚さ約30〜50μmである。この実施例1〜112、比較例1〜22の試験片は、電極の幅方向の中心と、試験片の幅方向の中心とが一致しており、長さ方向の両端には電極を露出させた。電気抵抗率の測定は、試験片の長さ方向の両端(電極露出面)に導電性ペーストを使用してリード線を接続し、回路とした。測定条件は、大気中、室温(20℃)で微小電流を100mA〜10mAの範囲で印加し、その際の微小電圧値を測定して電極抵抗Rを求めた。そして、比抵抗ρ(Ωcm)を、抵抗R(Ω)、電極露出面の面積S(cm
2)、電極の長さL(cm)を用い、ρ=R×S/Lの式から算出した。
【0076】
(電極埋設後の微構造評価)
得られた電極内蔵の一体型セラミックス部材から、電極が露出するよう切断し、切断面を鏡面研磨したのち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、電極周辺のセラミックス基体にクラックが発生しているか否かを評価した。また、電極成分とセラミックス基体の反応性を評価するため、EPMA解析を行った。
【0077】
(電極のXRD解析)
得られた電極内蔵の一体型セラミックス部材から、電極が露出するよう切断し、切断面を研磨したのち、X線回折装置により電極の結晶相を同定した。測定条件はCuKα、40kV、40mA、2θ=5−70°、測定のステップ幅は0.02°とし、封入管式X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス製 D8 ADVANCE)を使用した。
【0078】
(セラミックス基体の熱膨張率測定)
第1焼結体と同じ方法で作製した焼結体に対して、JIS−R1618に準じた方法により40〜1000℃の熱膨張率を測定し、セラミックス基体の熱膨張率とした。
【0079】
(クラック評価)
得られた電極内蔵の一体型セラミックス部材の電極を含む部分を切断し、切断面を鏡面研磨した。その鏡面を電子顕微鏡(SEM、フィリップス社製、XL30)により観察し、SEM像によりクラックの有無を判定した。クラックが確認されない場合は「なし」、クラックが確認された場合は「あり」とした。
【0080】
(接合不良)
得られた電極内蔵の一体型セラミックス部材の電極を含む部分を切断し、切断面を鏡面研磨した。その鏡面を電子顕微鏡(SEM、フィリップス社製、XL30)により観察し、SEM像により接合の良、不良を判定した。基材と基材との間に5μm以上の長さの隙間がない場合は「○」(5μm以下の隙間は研磨時の脱粒とみなした)、基材と基材との間に5μm以上の隙間がみられた場合は「×」として評価した。
【0081】
(反応性評価)
得られた電極内蔵の一体型セラミックス部材の電極成分と基材との反応性について検討した。断面を電子顕微鏡(SEM、フィリップス社製XL30)により観察し、電極と基材との界面近傍において、基材に電極の元素が含まれているか否かをEPMA(日本電子社製JXA−8800RL)にて元素分析することにより評価した。電極成分が基材に確認されない場合は「○」、電極成分が基材に100μm以下の範囲で拡散している場合は「△」、電極成分が基材に100μm以上の範囲で拡散している場合は「×」として評価した。
【0082】
(評価結果と考察)
実施例1〜112、比較例1〜22のセラミックス基体の熱膨張率C(ppm/K)、電極成分とフィラー成分との配合量に応じて計算した平均熱膨張率D(ppm/K)、セラミック基体と電極の熱膨張率の差分の絶対値(C−D)(ppm/K)、一体型セラミックス部材の電極の比抵抗(Ωcm)、クラックの有無、接合不良、電極成分と基材との反応の有無などの評価結果をまとめて表9〜14に示す。表9〜13の実施例1〜112に示すように、実施例での窒化物、炭化物、金属では、セラミックス基体にクラックは発生せず、1×10
-2Ωcm以下の低抵抗が得られた。また、一体型セラミックス部材のEPMA解析より、セラミックス基体への電極成分の拡散は軽微であった。また、一体型セラミックス部材の電極のXRD解析より、埋設後の電極成分の結晶相は原料と同じであることがわかった。これらの結果から、これら窒化物、炭化物、金属はMg(Al)O(N)との反応性が低いと考えられた。また、これらの実施例ではセラミックス基体の熱膨張率Cと、金属にフィラー成分を含む電極の平均熱膨張率Dとの差の絶対値|C−D|は3.0ppm/K以下であり、セラミックス基体の熱膨張率Cと、窒化物、炭化物、炭窒化物にフィラー成分を含む電極の平均熱膨張率Dとの差の絶対値|C−D|は0.8ppm/K以下であり、フィラー成分の混合比を上記のように制御することでクラックの発生を抑制することができることがわかった。金属は、窒化物、炭化物、炭窒化物のようなセラミックスより、変形し易いため、より大きな熱膨張率の差が許容できる。なお、実施例5、7では第1、第2焼結体に組成の異なる原料を用いたが、熱膨張率はほぼ同じであるため、焼結後に熱膨張差に由来するクラックは発生しなかった。このように、第1焼結体と第2焼結体の組成が異なっていても、熱膨張率差が小さい場合は一体型セラミックス部材とすることができる。一方、表9、14に示すように、電極成分の原料を珪化物(WSi
2、MoSi
2、NbSi
2など)、硼化物(TiB
2、ZrB
2、NbB
2、TaB
2など)とした比較例1〜4では、電極周辺のセラミックス基体にクラックが発生した。これらの一体型セラミックス部材のEPMA解析より、Si又はB成分がセラミックス基体中に100μm以上拡散することが確認され、XRD解析より電極成分に含まれない異相が検出された。例えば、電極成分がMoSi
2の場合、窒化珪素やSi
3Al
7O
3N
9等、TiB
2の場合はBN等が検出された。これらの結果から、珪化物や硼化物では、セラミックス基体のMg(Al)O(N)とSiやBとが反応し、低熱膨張な結晶相を生成したためクラックが生じたと推察された。加えて、これら成分の拡散は、体積抵抗率や耐食性に影響を与えるおそれがあり、珪化物や硼化物は電極成分として不適と考えられた。また、セラミックス基体の熱膨張率Cとフィラー成分を含む電極の平均熱膨張率Dの差の絶対値|C−D|が0.9ppm/Kとなる比較例5では、セラミックス基体にクラックが生じた。また、電極原料中のフィラー成分の混合比が85体積%の比較例6においては電極の導電性が得られなかった。また、焼成温度を1650℃、あるいは1900℃とした比較例7〜22では、基材同士の接合不良、あるいはクラックが生じた。この他、Al
2O
3等の一般的な電極として使用されるNiやCoなどを検討したが、焼成温度と比べて融点が低いため、焼成中に融解して焼結体外部に流出し、不適であった。
【0083】
【表9】
【0084】
【表10】
【0085】
【表11】
【0086】
【表12】
【0087】
【表13】
【0088】
【表14】
【0089】
本出願は、2011年10月11日に出願された日本国特許出願第2011−223851号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。