特許第6018071号(P6018071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6018071セラミックス部材、半導体製造装置用部材及びセラミックス部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018071
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】セラミックス部材、半導体製造装置用部材及びセラミックス部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/053 20060101AFI20161020BHJP
   C04B 35/58 20060101ALI20161020BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C04B35/04 A
   C04B35/58 301
   H01L21/68 R
【請求項の数】17
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-538550(P2013-538550)
(86)(22)【出願日】2012年10月10日
(86)【国際出願番号】JP2012076176
(87)【国際公開番号】WO2013054806
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年8月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-223851(P2011-223851)
(32)【優先日】2011年10月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 守道
(72)【発明者】
【氏名】神藤 明日美
(72)【発明者】
【氏名】勝田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】磯田 佳範
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 篤
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−099146(JP,A)
【文献】 特開2000−044345(JP,A)
【文献】 特開2007−084367(JP,A)
【文献】 特許第5680644(JP,B2)
【文献】 特許第5683602(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化マグネシウムにAl、N成分が固溶したMg(Al)O(N)を主相とするセラミックス基体と、
前記セラミックス基体の一部に配置され窒化物、炭化物、炭窒化物及び金属のいずれか1以上を電極成分として含む電極と、を備え
前記電極は、前記電極成分と、Mg及びOを含有するフィラー成分と、を含む、
セラミックス部材。
【請求項2】
前記セラミックス基体は、CuKα線を用いたときの前記Mg(Al)O(N)の(111)面、又は(200)面、又は(220)面のXRDピークがそれぞれ酸化マグネシウムの立方晶のピークと窒化アルミニウムの立方晶のピークとの間である2θ=36.9〜39°、42.9〜44.8°、62.3〜65.2°に現れる、請求項1に記載のセラミックス部材。
【請求項3】
前記セラミックス基体は、前記Mg(Al)O(N)の(200)面、又は(220)面のXRDピークがそれぞれ2θ=42.92°以上、62.33°以上に現れる、請求項1又は2に記載のセラミックス部材。
【請求項4】
前記セラミックス基体は、前記Mg(Al)O(N)の(200)面のXRDピークの積分幅が0.50°以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックス部材。
【請求項5】
前記セラミックス基体は、AlN結晶相を含まない、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミックス部材。
【請求項6】
前記セラミックス基体は、CuKα線を用いたときのXRDピークが少なくとも2θ=47〜49°に現れるMg−Al酸窒化物相を副相として含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミックス部材。
【請求項7】
前記セラミックス基体は、前記Mg−Al酸窒化物相の2θ=47〜49°のXRDピーク強度をA、前記Mg(Al)O(N)の(220)面の2θ=62.3〜65.2°のXRDピーク強度をBとしたとき、A/Bが0.03以上である、請求項6に記載のセラミックス部材。
【請求項8】
前記セラミックス基体は、前記A/Bが0.14以下である、請求項7に記載のセラミックス部材。
【請求項9】
前記セラミックス基体は、混合粉末組成で、酸化マグネシウムが49質量%以上99質量%以下、窒化アルミニウムが0.5質量%以上25質量%以下、アルミナが0.5質量%以上30質量%以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のセラミックス部材。
【請求項10】
前記電極は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ru、Ir、Rh、Ptのうち1以上を含む窒化物、炭化物、炭窒化物、金属のいずれか1以上を電極成分として含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のセラミックス部材。
【請求項11】
前記電極は、前記電極成分の熱膨張率が4.0ppm/K以上である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のセラミックス部材。
【請求項12】
前記電極は、比抵抗が10Ωcm以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のセラミックス部材。
【請求項13】
前記電極は、前記セラミックス基体と該電極の原料成分との熱膨張率の差分が絶対値で0.8ppm/K以下である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のセラミックス部材。
【請求項14】
前記電極は、前記セラミックス基体と、金属成分及びフィラー成分を含む電極の原料成分との熱膨張率の差分が絶対値で3.0ppm/K以下である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のセラミックス部材。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のセラミックス部材を備えた、半導体製造装置用部材。
【請求項16】
Mg、O、Al及びN成分を含むセラミックス成形体又は焼結体の一部に、窒化物、炭化物、炭窒化物及び金属のいずれか1以上を含む電極原料を配置したのち、Mg、O、Al及びN成分を含むセラミックス成形体又は焼結体を共焼成することにより、請求項1〜14のいずれか1項に記載のセラミックス部材を作製する、セラミックス部材の製造方法。
【請求項17】
ホットプレスを用いて前記成形体を焼成する、請求項16に記載のセラミックス部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス部材、半導体製造装置用部材及びセラミックス部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造におけるドライプロセスやプラズマコーティングなどに用いられる半導体製造装置には、エッチング用やクリーニング用として、反応性の高いF、Cl等のハロゲン系プラズマが使用される。このため、そのような半導体製造装置に組み付けられる部材には、高い耐食性が要求され、一般的にはアルマイト処理を施したAlやハステロイ等の高耐食金属やセラミックス部材が使用される。特にSiウェハーを支持固定する静電チャック材やヒーター材には高耐食と低発塵性が必要なため、窒化アルミニウム、アルミナ、サファイア等の高耐食セラミックス部材が用いられている。これらの材料では長期間の使用によって徐々に腐食が進行して発塵原因となるため、更なる高耐食材料が求められている。Mgの化合物である酸化マグネシウムやスピネルは、アルミナ等に比べて、ハロゲン系プラズマに対して高い耐食性を有することが知られ、特に酸化マグネシウムの含有量が多いほど耐食性が高いことが示されている(例えば特許文献1)。
【0003】
一方、酸化マグネシウムは大気中で水分や二酸化炭素と反応し水酸化物や炭酸塩を生成するため、酸化マグネシウム表面が徐々に変質していく(耐湿性の問題)。このため、半導体製造装置用部材へ適用した場合、水酸化物や炭酸塩の分解によるガス生成や、それに伴う酸化マグネシウムの粒子化や発塵によって半導体デバイスを汚染する懸念があり、適用が進んでいない。これに対して、耐湿性を改善するために、酸化マグネシウムへNiOやZnO等を固溶させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3559426号公報
【特許文献2】特開2009−292688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献2に記載されたセラミックス基体では、添加するNiOやZnOなどの金属成分が、半導体デバイスの特性に影響を与える汚染物質となるため、添加剤として好ましくない。このため、化学的により安定な材料が求められていた。
【0006】
また、このセラミックス部材では、基体内に電極を埋設したり、基体に電極を配設したりすることがある。例えば、酸化マグネシウムの耐水性、耐湿性を向上した新規な材料では、電極との反応性などが明らかでなく、基体と電極との間にクラックや接合不良が生じる場合があり、それらは半導体製造装置用の部材として使用する場合に絶縁破壊の原因になり得る場合がある。また、基体内に電極を埋設する場合などでは、基体と電極を共焼成することがある。このとき、電極は基体の焼成温度に耐えうる融点を持つ必要があり、クラックを抑制するため、基体と電極の熱膨張率差を小さくする必要がある。一般に電極中にフィラー成分を添加して基体と電極の熱膨張率差を制御する方法が知られているが、フィラー成分の添加量が多すぎると電極の導電性が得られないおそれがある。特に酸化マグネシウムをベースとする新規な材料では熱膨張率が比較的高いと考えられ、電極も基体と同程度の高い熱膨張率に制御する必要がある。例えば、酸化マグネシウムに用いる電極として、一般にPt、Pd、Ir、Auが知られている(特開平10−154834)。しかし、これらの電極の製法は酸化マグネシウム基板にスパッタで成膜するものであり、共焼成した時の問題点については不明である。また、Ptなどは非常に高価であり、製造コストが高くなる問題がある。このように、耐食性、耐湿性を向上した新規な材料に対して、より好適な電極材料が求められる。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、より好適な電極を備え、化学的により安定であるセラミックス部材、半導体製造装置用部材及びセラミックス部材の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した主目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、酸化マグネシウムへAl、N成分を固溶させたセラミックス基体(以下、Mg(Al)O(N)とも表記する)に窒化物、炭化物、炭窒化物及び金属のいずれかを電極成分として含む電極を配置すると、より好適であり、化学的により安定であるセラミックス部材を提供することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明のセラミックス部材は、酸化マグネシウムにAl、N成分が固溶したMg(Al)O(N)を主相とするセラミックス基体と、前記セラミックス基体の一部に配置され窒化物、炭化物、炭窒化物及び金属のいずれかを電極成分として含む電極と、を備えたものである。
【0010】
本発明の半導体製造装置用部材は、上述したセラミックス部材を備えたものである。
【0011】
本発明のセラミックス部材の製造方法は、Mg、O、Al及びN成分を含むセラミックス原料の一部に、窒化物、炭化物、炭窒化物及び金属のいずれかを含む電極原料を配置した成形体を共焼成することにより、上述したセラミックス部材を作製するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセラミックス部材、半導体製造装置用部材及びセラミックス部材の製造方法は、より好適な電極を備え、化学的により安定であるものとすることができる。この理由は、以下のように推察される。例えば、本発明のセラミックス基体は、酸化マグネシウムの結晶構造をベースとして、Mg、Oに加えてAl及びN成分を含むことにより、耐食性については酸化マグネシウムと比べて同等であり、耐湿性、耐水性については酸化マグネシウムよりも優れている。このため、このセラミックス部材からなる半導体製造装置用部材は、半導体製造プロセスにおいて使用される反応性の高いF、Cl等のハロゲン系プラズマに長期間耐えることができ、この部材からの発塵量を低減することができる。その上、耐湿性、耐水性が高いため、通常の酸化マグネシウムよりも変質し難く、湿式の加工にも強い特徴がある。また、本発明の電極は、窒化物、炭化物、炭窒化物及び金属のいずれかを含むものであり、本発明のセラミックス基体に対して化学的に安定で、且つ熱膨張率を制御しやすく、好適である。このため、本発明のセラミックス部材は、例えば、電極の導電性を確保しつつ、電極近傍で生じうるクラックの発生をより抑制することができるものと推察される。なお、金属には、合金も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】半導体製造装置用部材20の一例の構成の概略を示す構成図。
図2】実験例1のXRD解析チャート。
図3】実験例1のXRD解析チャートのMg(Al)O(N)ピーク拡大図。
図4】実験例1、5のEPMA元素マッピング像。
図5】実験例2、5のバルク材耐湿性、耐水性試験の微構造写真。
図6】実験例8、9のバルク材耐湿性、耐水性試験の微構造写真。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である半導体製造装置用部材20の構成の概略を示す構成図の一例である。この半導体製造装置用部材20は、基材部22と、基材部22上に形成されたセラミックス部材30とを備えている。半導体製造装置用部材20の基材部22には、貫通孔24が設けられ、この貫通孔24に棒状の給電部材26が挿入されている。なお、基材部22には、セラミックス部材30を加熱するヒーターが埋設されているものとしてもよい。本発明のセラミックス部材30は、酸化マグネシウムにAl、N成分が固溶したMg(Al)O(N)を主相とするセラミックス基体32と、セラミックス基体32の一部に配置され窒化物、炭化物、炭窒化物及び金属のいずれか1以上を電極成分(導電材成分)として含む電極34とを備えている。セラミックス部材30は、平板状の部材であり、その内部に電極34が埋設されている構造を有する。この電極34には、セラミックス部材30の下側から挿入された給電部材26が接続されており、この給電部材26から電力が供給される。本発明のセラミックス部材について以下、説明する。
【0015】
本発明のセラミックス基体は、Mg、Al、O及びNを主成分とするセラミックス基体であって、酸化マグネシウムにAl、N成分が固溶したMg(Al)O(N)の結晶相を主相とするものである。このMg(Al)O(N)は、耐食性が酸化マグネシウムと同等であり、耐湿性や耐水性は酸化マグネシウムよりも優れている。このため、このMg(Al)O(N)の結晶相を主相とするセラミックス基体も、耐食性、耐湿性、耐水性に優れている。なお、本発明のセラミックス基体は、酸化マグネシウムに窒化アルミニウム、アルミナを加えることにより、Al、N成分の固溶量を著しく増加することができる。このため、このMg(Al)O(N)には、Nの固溶量に対してAlが多く含まれているものとしてもよい。
【0016】
このMg(Al)O(N)は、CuKα線を用いたときの(100)面、又は(200)面、又は(220)面のXRDピークが酸化マグネシウムの立方晶のピークと窒化アルミニウムの立方晶のピークとの間である2θ=36.9〜39°、42.9〜44.8°、62.3〜65.2°に現れるものとしてもよい。これらのXRDピークはいずれも上記範囲に現れるが、他の結晶相のピークとの判別を行いにくい場合があることから、いずれかのXRDピークのみ上記範囲に現れるものとしてもよい。Al、N成分の固溶量が多いほど、耐湿、耐水性が向上する。固溶量の増加に伴って、酸化マグネシウムのXRDピークは高角側にシフトする。したがって、Mg(Al)O(N)の(200)面、(220)面のXRDピークがそれぞれ2θ=42.92°以上、62.33°以上に現れるものが、耐湿性をより高めることができ、好ましい。また、Mg(Al)O(N)の(200)面、(220)面のXRDピークがそれぞれ2θ=42.95°以上、62.35°以上に現れるものが、耐湿性及び耐水性を更に高めることができ、好ましい。また、Mg(Al)O(N)の(200)面、(220)面のXRDピークがそれぞれ2θ=43.04°以上、62.50°以上であると、耐湿性、耐水性をより高めることができ、より好ましい。また、Mg(Al)O(N)の(200)面、(220)面のXRDピークがそれぞれ2θ=43.17°以上、62.72°以上であると、耐湿性はもとより、耐水性をより高めることができ、更に好ましい。また、Mg(Al)O(N)の積分幅が小さいほど耐水性が向上することを見出した。すなわち、Mg(Al)O(N)の(200)面のXRDピークの積分幅は、0.50°以下であることが耐水性を向上する上で好ましく、0.35°以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明のセラミックス基体は、副相としてAlN結晶相を含むと耐食性が低下する傾向があるため、AlN結晶相は少ないことが好ましく、含まないことがより好ましい。
【0018】
本発明のセラミックス基体は、CuKα線を用いたときのXRDピークが少なくとも2θ=47〜49°に現れるMg−Al酸窒化物相を副相として含んでいてもよい。このMg−Al酸窒化物も耐食性が高いため、副相として含まれていても問題ない。このMg−Al酸窒化物相は、含有量が多いほど機械特性を向上することができ、中でも強度、破壊靱性の向上に有効に作用する。但し、本発明のMg(Al)O(N)と比較すると耐食性が低いため、耐食性の点から含有量には限度がある。Mg−Al酸窒化物相の2θ=47〜49°のXRDピーク強度をA、Mg(Al)O(N)の(220)面の2θ=62.3〜65.2°のXRDピーク強度をBとしたとき、A/Bが0.03以上であることが好ましい。こうすれば、機械特性をより高めることができる。このA/Bは、耐食性の観点からは、A/B=0.14以下であることが好ましい。
【0019】
本発明のセラミックス基体は、混合粉末中のMg/Alのモル比が0.5以上であることが好ましい。
【0020】
本発明のセラミックス基体において、開気孔率は5%以下であることが好ましい。ここでは、開気孔率は、純水を媒体としたアルキメデス法により測定した値とする。開気孔率が5%を超えると、強度が低下するおそれや材料自身が脱粒によって発塵し易くなるおそれがあり、更に材料加工時等で気孔内に発塵成分がたまり易くなるため好ましくない。また、開気孔率は、できるだけゼロに近いほど好ましい。このため、特に下限値は存在しない。
【0021】
本発明のセラミックス基体において、熱膨張率は、9ppm/K以上14ppm/K以下の範囲であることが好ましく、10ppm/K以上13ppm/K以下の範囲であることがより好ましい。セラミックス基体の熱膨張率は、含まれるMg、O、Al及びNの配合比率に依存する。例えば、セラミックス基体において、Mgがより多い場合には、耐食性はより高まるが熱膨張率はより大きい傾向を示し、Mgがより少ない場合には、耐食性は若干低下するが熱膨張率はより小さい傾向を示す。所望の特性が得られるMg、O、Al及びN成分の配合としたときに、熱膨張率が9ppm/K以上14ppm/K以下の範囲となることが好ましい。
【0022】
本発明の電極は、窒化物、炭化物、炭窒化物及び金属のいずれか1以上を電極成分として含むものであり、少なくとも4族〜6族の元素を含む窒化物、炭化物、炭窒化物及び金属のいずれか1以上を電極成分として含むものとしてもよい。なお、金属には、合金を含むものとしてもよい。具体的には、この電極は、融点が1650℃以上である、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ru、Ir、Pt、Rhのうち1以上を含む窒化物、炭化物、炭窒化物、金属及び合金のいずれかを電極成分として含むものとしてもよい。このうち、Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ru及びIrが好ましく、セラミックス基体の熱膨張率の観点からはTi、Nb及びCrが好ましい。RuやIrなどの貴金属は高価ではあるが、電極の導電性を確保しつつ、電極近傍で生じうるクラックの発生をより抑制する観点からは好ましい。窒化物としては、例えば、NbN、TiN及びZrNなどが挙げられる。この窒化物には、例えば、Ti2AlNのような複合窒化物も含むものとする。炭化物としては、例えば、WC、TaC、ZrC、TiC、NbC及びMo2Cなどが挙げられる。この炭化物には、Ti2AlC、Ti2InC、Ti2SnC、V2AlC、Zr2SnCなどの複合炭化物も含むものとする。炭窒化物には、CとNとが任意の比率で含まれる組成、例えば、NbCx1-x(0<x<1、以下同じ)、TiCx1-xのようなものを含む。金属としては、例えば、Nb、Cr、Mo及びWなどが挙げられる。この金属にはNb3Al、Mo3Alなどの金属間化合物も含むものとする。これらのうち、NbN、TiN、ZrN、TaC、ZrC、TiC、NbC、WC、Mo2C、Nb、Cr、Mo、W、Ru及びIrなどが好適である。なお、電極成分としては、例えば、Ti2AlN、Nb3Alのように4族〜6族以外の元素を含むものとしてもよい。
【0023】
本発明の電極に含まれる電極成分は、セラミックス基体と同等の熱膨張率を有するものであることが好ましく、9〜14ppm/Kであることが更に好ましい。
【0024】
本発明の電極は、板状、網状、線状、コイル状等であってもよいし、電極成分と、Mg及びOを含有するフィラー成分と、を含むものとしてもよい。Mg及びOを含有するフィラー成分は、少量の添加で電極の熱膨張率を上げることができ、好ましい。このフィラー成分は、電極成分の熱膨張率に比してより大きな熱膨張率を有する物質を用いることが好ましい。こうすれば、フィラー成分によりセラミックス基体の熱膨張率との調整ができ、またフィラー成分とセラミックス基体の焼結により、基体と電極の密着強度を高めることができる。このフィラー成分は、Mg及びOを含有するものとすれば、特に限定されないが、酸化マグネシウムやMg(Al)O(N)などを用いることができる。フィラー成分の添加量を制御することで、電極熱膨張率が4ppm/K以上の電極成分も利用できる。但し、電極の抵抗の上昇をより低減するため、このフィラー成分の添加量は、できるだけ少ない方が望ましく、例えば、電極成分とフィラー成分との全体に対して、60体積%以下とすることが望ましく、50体積%以下とすることがより好ましい。このため、フィラー成分の添加量を下げる点では、電極成分の熱膨張率は6ppm/K以上であることがより好ましく、8ppm/K以上であることが更に好ましい。
【0025】
本発明の電極は、セラミックス基体と電極の原料成分との熱膨張率の差分(熱膨張率差)が、金属を用いた電極では絶対値で3.0ppm/K以下であることが好ましい。また、窒化物、炭化物、炭窒化物の電極では絶対値で2.0ppm/K以下であることが好ましく、絶対値で0.8ppm/K以下であることが更に好ましい。この熱膨張率差が、0.8ppm/K以下では、電極近傍で生じうるクラックの発生をより抑制しやすい。この熱膨張率差は、0.6ppm/K以下であることがより好ましく、0.4ppm/K以下であることが更に好ましい。ここで、「電極の原料成分」の熱膨張率とは、例えば、電極の原料成分が電極成分のみである場合は、この電極成分の熱膨張率とし、電極の原料成分が電極成分とフィラー成分とを含む場合には、体積割合に応じて電極成分の熱膨張率とフィラー成分の熱膨張率とを平均した値とする。具体的には、電極の原料成分において、電極成分として熱膨張率10.1ppm/KであるNbNが50体積%、フィラー成分として熱膨張率13.9ppm/KであるMgOが50体積%含まれている場合では、平均熱膨張率は、10.1×0.5+13.9×0.5=12.0ppm/Kと計算することができる。フィラー成分を含有した電極では、この平均熱膨張率を用いて熱膨張率差を求めるものとする。
【0026】
本発明の電極は、比抵抗がより小さいことが好ましく、比抵抗が10Ωcm以下であることが好ましい。こうすることで静電チャックなどの電極として機能することができる。比抵抗は1×10-1Ωcm以下であることがより好ましく、1×10-3Ωcm以下であることが更に好ましい。こうすることでヒータなどの電極として機能することができる。
【0027】
次に、本発明のセラミックス部材の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、Mg、O、Al及びN成分を含むセラミックス原料の一部に、窒化物、炭化物、炭窒化物及び金属のいずれかを含む電極原料を配置した成形体を共焼成することにより、上述したいずれかの態様のセラミックス部材を作製する工程を含む。本発明のセラミックス部材の製造方法において、電極原料は、セラミックス基体の原料であるセラミックス原料に埋設して形成してもよい。こうすれば、セラミックス基体に電極が埋設されたセラミックス部材を作製することができる。あるいは、電極原料は、セラミックス原料の外面に形成してもよい。こうすれば、セラミックス基体の外面に電極が形成されたセラミックス部材を作製することができる。この電極原料は、例えば、未焼成のセラミックス原料を成形した成形体の表面に形成されてもよいし、セラミックス原料を成形し焼結した焼結体の表面に形成されてもよい。また、電極をセラミックス基体に埋設したセラミックス部材を作製する際には、セラミックス基体の一部である焼結体の表面に電極原料を形成し、更にセラミックス原料の成形体、あるいはセラミックス焼結体を電極原料の上に形成した積層体を作製し、この積層体を焼成するものとしてもよい。こうすれば、より確実に電極をセラミックス基体に埋設したセラミックス部材を作製することができる。あるいは、セラミックス基体の一部である未焼成の成形体の表面に電極原料を形成し、更にセラミックス原料を電極原料の上に形成した積層体を作製し、この積層体を焼成するものとしてもよい。
【0028】
本発明のセラミックス基体は、例えば、酸化マグネシウムと窒化アルミニウムとアルミナとの混合粉末を、成形後焼成することにより製造することができる。セラミックス基体の原料の混合粉末としては、49質量%以上の酸化マグネシウムと、窒化アルミニウムとアルミナとを含むものが好ましく、耐食性の観点からは、混合粉末組成において、酸化マグネシウムが70質量%以上99質量%以下、窒化アルミニウムが0.5質量%以上25質量%以下、アルミナが0.5質量%以上25質量%以下となるように混合したものがより好ましく、酸化マグネシウムが70質量%以上90質量%以下、窒化アルミニウムが5質量%以上25質量%以下、アルミナが5質量%以上25質量%以下となるように混合したものが更に好ましい。また、機械特性と耐食性とを同時に発現する観点からは、混合粉末組成において、酸化マグネシウムが49質量%以上99質量%以下、窒化アルミニウムが0.5質量%以上25質量%以下、アルミナが0.5質量%以上30質量%以下となるように混合したものが好ましく、酸化マグネシウムが50質量%以上75質量%以下、窒化アルミニウムが5質量%以上20質量%以下、アルミナが15質量%以上30質量%以下となるように混合したものが更に好ましい。
【0029】
本発明の電極は、例えば、電極成分に対して、必要に応じてフィラー成分を混合した電極原料粉体を、溶媒に混合したスラリー又はペースト(以下単にペーストと称する)を調製し、このペーストを用いて形成することができる。電極成分は、上述した窒化物、炭化物、炭窒化物及び金属のいずれか1以上を用いることができる。また、電極成分は、例えばTiNとTaCとの混合物やNbNとNbCとの混合物のように、窒化物粒子と炭化物粒子との混合物を用いるものとしてもよい。溶媒としては、そのあとの工程でセラミックス部材の機能低下を生じないものが好ましく、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの有機溶媒が好ましい。電極ペーストには、例えば、溶媒のほか、バインダを加えるものとしてもよい。バインダとしては、例えば、ポリビニルブチラールなどの有機バインダを用いることがより好ましい。電極の形成は、例えば、スクリーン印刷などにより行うことができる。
【0030】
本発明のセラミックス部材の製造方法において、焼成温度は1650℃以上とすることが好ましく、1700℃以上とすることがより好ましい。焼成温度が1650℃未満では、セラミックス基体において目的とするMg(Al)O(N)が得られないおそれやクラック、あるいは接合不良のおそれがあるため好ましくない。また、焼成温度が1700℃未満では、セラミックス基体において、副相としてAlNが含まれるおそれがあり、高耐食を得るためには1700℃以上で焼成する方がよい。上下とも1700℃以上の温度で作製した焼結体を用いる場合では、1650℃以上の温度であれば、焼結体同士が接合される。なお、焼成温度の上限は、特に限定するものではないが、例えば1850℃としてもよい。また、焼成はホットプレス焼成を採用することが好ましく、ホットプレス焼成時のプレス圧力は、50〜300kgf/cm2で設定することが好ましい。焼成時の雰囲気は、酸化物原料の焼成に影響を及ぼさない雰囲気であることが好ましく、例えば、窒素雰囲気やAr雰囲気、He雰囲気などの不活性雰囲気であることが好ましい。成形時の圧力は、特に制限するものではなく、形状を保持することのできる圧力に適宜設定すればよい。
【0031】
このような製造工程を経て本発明のセラミックス部材を作製することができる。本発明のセラミックス部材を備えた半導体製造装置用部材としては、例えば、半導体製造装置に用いられる静電チャックやサセプター、ヒーターなどが挙げられる。これらは、ハロゲン元素を含む腐食性ガスのプラズマに対する優れた耐腐食性が必要とされるため、本発明のセラミックス部材を用いるのが好適といえる。
【0032】
以上説明した実施形態のセラミックス部材によれば、セラミックス基体は酸化マグネシウムにAl及びNが固溶したMg(Al)O(N)を主相とするため、耐食性については酸化マグネシウムと比べて同等であり、耐湿性、耐水性については酸化マグネシウムよりも優れ、化学的により安定であるものとすることができる。また、電極はセラミックス基体との反応性が低く、熱膨張率差をより小さくすることが可能であり、電極の導電性を確保しつつ、電極近傍で生じうるクラックの発生をより抑制することができ、好適である。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0034】
例えば、上述した実施形態では、半導体製造装置用部材20としたが、セラミックス基体32及び電極34を備えたセラミックス部材30としてもよい。こうしても、セラミックス部材30において、より好適な電極を備え、化学的により安定であるものとすることができる。
【0035】
上述した実施形態では、セラミックス部材30を半導体製造装置に用いるものとしたが、特にこれに限定されず、半導体製造装置以外の用途、例えばセラミックスヒーターなどに用いるものとしてもよい。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の好適な適用例について説明する。まず、セラミックス基体について具体的に検討した結果を、実験例1〜27として説明する。実験例1〜16、23〜27のMgO原料、Al23原料は、純度99.9質量%以上、平均粒径1μm以下の市販品、AlN原料は純度99質量%、平均1μm以下の市販品を使用し、実験例17〜22ではMgO原料に純度99.4質量%、平均粒径3μmの市販品、Al23原料に純度99.9質量%、平均粒径0.5μmの市販品、AlN原料に実験例1〜16、23〜27と同じ平均粒径1μm以下の市販品を使用した。なお、実験例1〜4、7〜17、21、23〜27が本発明の実施例に相当し、実験例5〜6、18〜20、22が比較例に相当する。
【0037】
[実験例1〜16、25]
・調合
MgO原料、Al23原料及びAlN原料を、表1に示す質量%となるように秤量し、イソプロピルアルコールを溶媒とし、ナイロン製のポット、直径5mmのアルミナ玉石を用いて4時間湿式混合した。混合後スラリーを取り出し、窒素気流中110℃で乾燥した。その後、30メッシュの篩に通し、混合粉末とした。なお、この混合粉末のMg/Alのモル比は2.9である。
・成形
混合粉末を、200kgf/cm2の圧力で一軸加圧成形し、直径50mm、厚さ20mm程度の円盤状成形体を作製し、焼成用黒鉛モールドに収納した。
・焼成
円盤状成形体をホットプレス焼成することによりセラミックス基体を得た。ホットプレス焼成では、プレス圧力を200kgf/cm2とし、表1に示す焼成温度(最高温度)で焼成し、焼成終了までAr雰囲気とした。焼成温度での保持時間は4時間とした。
【0038】
[実験例17〜21、23、24、26、27]
MgO原料、Al23原料及びAlN原料を、表1示す質量%となるように秤量し、混合粉末の成形圧力を100kgf/cm2、焼成雰囲気をN2、焼成温度(最高温度)を表1に示す値に設定した以外は実験例1と同様にしてセラミックス基体を得た。
【0039】
[実験例22]
MgO原料、Al23原料を、表1に示す質量%となるように秤量した以外は、実験例1と同様にして調合工程を行い混合粉末を得た。混合粉末を、100kgf/cm2の圧力で一軸加圧成形し、直径20mm、厚さ15mm程度の円柱状成形体を作製し、作製された成形体を3000kgf/cm2でCIP成形する成形工程を行った。蓋付の黒鉛製るつぼに上記の混合原料を充填し、充填した混合原料中に成形体を埋め込んだ。円柱状成形体を常圧焼成する焼成工程を行い、セラミックス基体を得た。焼成工程では、表1に示す焼成温度(最高温度)で焼成し、焼成終了までAr雰囲気とした。焼成温度での保持時間は4時間とした。
【0040】
[評価]
実験例1〜27で得られた各材料を各種評価用に加工し、以下の評価を行った。各評価結果を表1、2に示す。
【0041】
(1)嵩密度・開気孔率
純水を媒体としたアルキメデス法により測定した。
【0042】
(2)結晶相評価
材料を乳鉢で粉砕し、X線回折装置により結晶相を同定した。測定条件はCuKα、40kV、40mA、2θ=5−70°とし、封入管式X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス製 D8 ADVANCE)を使用した。測定のステップ幅は0.02°とし、ピークトップの回折角を特定する場合は内部標準としてNIST製Si標準試料粉末(SRM640C)を10質量%添加し、ピーク位置補正した。酸化マグネシウムのピークトップの回折角は、ICDD78−0430の値とした。Mg(Al)O(N)と酸化マグネシウムとのピーク間隔、積分幅は下記のとおり算出した。
(2)−1 ピーク間隔(ピークシフト)の計算
Mg(Al)O(N)中のAl、N固溶量を相対比較するため、Mg(Al)O(N)の(220)面を対象としてピーク間隔(ピークシフト)を評価した。Mg(Al)O(N)の(220)面のピークトップの回折角と、ICDD78−0430にある酸化マグネシウムの(220)面の回折角(62.3°)の差をピーク間隔とした。
(2)−2 積分幅の計算
Mg(Al)O(N)の結晶性を相対比較するため、積分幅を計算した。積分幅は、MgO-AlN固溶体の(200)ピークのピーク面積をピークトップの強度(Imax)で除して計算した。ピーク面積は、ピークトップの回折角から−1°〜+1°の範囲において、バックグラウンドを差し引いて、強度を積算することで得た。計算式を下記に示す。なお、バックグラウンドはピークトップから−1°の回折角におけるピーク強度とした。上記の手法を用いて計算したNIST製Si標準試料(SRM640C)の(111)面の積分幅は0.15°であった。
(積分幅)=(ΣI(2θ)×(ステップ幅))/Imax
(2)−3 Mg-Al酸窒化物相とMg(Al)O(N)のXRDピーク強度比の計算 副相として含まれるMg-Al酸窒化物相の含有割合を相対比較するため、下記の方法を用いてMg-Al酸窒化物相とMg(Al)O(N)のXRDピーク強度の比を計算した。Mg−Al酸窒化物相の2θ=47〜49°のXRDピーク強度をA、2θ=62.3〜65.2°のMg(Al)O(N)の(220)面のXRDピーク強度をBとしたときのA/B値を求めた。ここでは、XRDピーク強度Aは、2θ=47〜49°のXRDピークのバックグラウンドを除いた積分強度とし、XRDピーク強度Bは、Mg(Al)O(N)の(220)面のXRDピークのバックグラウンドを除いた積分強度とした。なお、算出には、市販のソフトウエアMDI社製JADE5を用いて求めた。
【0043】
(3)エッチングレート
各材料の表面を鏡面に研磨し、ICPプラズマ耐食試験装置を用いて下記条件の耐食試験を行った。段差計により測定したマスク面と暴露面との段差を試験時間で割ることにより各材料のエッチングレートを算出した。
ICP:800W、バイアス:450W、導入ガス:NF3/O2/Ar=75/35/100sccm 0.05Torr、暴露時間:10h、試料温度:室温
【0044】
(4)構成元素
EPMAを用いて、構成元素の検出及び同定と、各構成元素の濃度分析を行った。
【0045】
(5)耐湿性
各材料を乳鉢にてメジアン径10μm以下まで粉砕した粉末を作製し、室温で飽和水蒸気圧雰囲気に4日間暴露した。その後、TG−DTA装置にて40〜500℃間の脱水量を測定した。
【0046】
(6)バルク材耐湿性
各材料の表面を鏡面研磨し、40℃、相対湿度90%の雰囲気下に28日間暴露した。その後、走査型電子顕微鏡(フィリップス社製XL30)にて試料表面を観測し、変化のないものを(○)、表面の40%以上に針状や粒状の析出物が生じたものを(×)、その中間を(△)とした。
【0047】
(7)バルク材耐水性
各材料の表面を鏡面研磨し、室温で水中に15日間浸漬した。その後、走査型電子顕微鏡にて試料表面を観測し、変化のないものを(○)、表面の40%以上に溶出した痕跡が見られるものを(×)、その中間を(△)とした。
【0048】
(8)破壊靱性
JIS−R1607にしたがって、SEPB法により破壊靱性を評価した。
【0049】
(9)曲げ強度
JIS−R1601に準拠した曲げ強度試験によって測定した。
【0050】
(10)体積抵抗率測定
JIS−C2141に準じた方法により、大気中、室温にて測定した。試験片形状は直径50mm×(0.5〜1mm)とし、主電極は直径20mm、ガード電極は内径30mm、外径40mm、印加電極は直径40mmとなるよう各電極を銀で形成した。印加電圧は2kV/mmとし、電圧印加後1分時の電流値を読み取り、その電流値から室温体積抵抗率を算出した。また、実験例1、3、5、12について、同様の方法により、真空中(0.01Pa以下)、600℃にて測定した。試験片形状は直径50mm×(0.5〜1mm)とし、主電極は直径20mm、ガード電極は内径30mm、外径40mm、印加電極は直径40mmとなるよう各電極を銀で形成した。印加電圧は500V/mmとし、電圧印加後1時間時の電流値を読み取り、その電流値から体積抵抗率を算出した。なお、表2の体積抵抗率において、「aEb」は、a×10bを表し、例えば「1E16」は1×1016を表す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
[評価結果]
表1、2に示すように、実験例1〜3、7〜17、21、23〜27のセラミックス基体は、結晶相評価の結果、(111)面、(200)面、(220)面のXRDピークが酸化マグネシウムの立方晶のピークと窒化アルミニウムの立方晶のピークとの間である2θ=36.9〜39°、42.9〜44.8°、62.3〜65.2°に現れるMg(Al)O(N)を主相として含み、少なくとも2θ=47〜49°にXRDのピークを有するMg−Al酸窒化物(Mg−Al−O−N)やスピネル(MgAl24)を副相として含んでいたが、AlNは含まれていなかった。代表例として図2に実験例1のXRD解析チャート、図3に実験例1のMg(Al)O(N)のXRDピーク拡大図、表1に実験例1〜22のMg(Al)O(N)の(111)、(200)、(220)面ピークトップ、Mg(Al)O(N)の(220)面のXRDピークトップと酸化マグネシウムピークトップとの間隔(ピークシフト)、及びMg(Al)O(N)の(200)面のXRDピークの積分幅を示す。なお、実験例6〜11、13、16、17、19〜27では、スピネルピークとMg(Al)O(N)の(111)面のピークとの重なりが著しく、(111)面のピークトップが判別できなかったため、これらの(111)面のピークトップの値は、表1に記載していない。ピークシフトが大きいほど固溶量が多く、積分幅が小さいほど固溶状態が均質と考えられる。なお、実験例2、3、7〜17、20、21〜27のXRD解析チャートは、実験例1に含まれるMg(Al)O(N)、Mg-Al酸窒化物、スピネルの含有量が変化したものであり、図示を省略する。ここで、主相とは、体積割合において50%以上を有する成分をいい、副相とは、主相以外でXRDピークが同定された相をいう。断面観察における面積比は体積割合を反映すると考えられるため、主相はEPMA元素マッピング像で50%以上の面積を有する領域とし、副相は主相以外の領域とする。実験例20は、実験例1などと同様にMg(Al)O(N)、Mg−Al酸窒化物及びスピネルの三成分を含んでいたが、各成分の量に偏りがなく、どの成分も主相とならない複合材であった。このため、表1の主相、副相の欄には上記三成分を記載した。図4に実験例1のEPMA元素マッピング像を示す。図4より、実験例1の主相部は主としてMgとOで構成されるが、Al、Nも同時に検出されるため図2、3に示したMg(Al)O(N)であることが示される。また、副相としてスピネル部と少量のMg−Al酸窒化物部が認められる。図4より、実験例1中のMg(Al)O(N)の面積比は約86%であり、Mg(Al)O(N)が主相であることがわかった。その他の実験例についても同様の解析を行い、例えば実験例7、15のMg(Al)O(N)の面積比はそれぞれ約59%、約75%であり、Mg(Al)O(N)が主相であることがわかった。なお、ここでは、一例として、主相と副相との判定をEPMA元素マッピングにて行うものとしたが、各相の体積割合を識別できる方法であれば、他の方法を採用してもよい。
【0054】
なお、EPMA元素マッピング像は、濃度に応じて、赤・橙・黄・黄緑・緑・青・藍に色分けされており、赤が最も高濃度、藍が最も低濃度、黒はゼロを表す。しかし、図4はモノクロで表示されているため、以下に図4の本来の色について説明する。実験例1(低倍)では、Mgは地色が橙で点部分が青、Alは地色が青で点部分が橙、Nは地色が青で点部分が藍、Oは地色が橙で点部分が赤だった。実験例1(高倍)では、Mgは地色(Mg(Al)O(N))が橙で島部分(MgAl24)が青で線状部分(Mg−Al−O−N:マグネシウムアルミニウム酸窒化物)が緑、Alは地色が青で島部分と線状部分が橙、Nは地色が青で島部分が藍で線状部分が緑、Oは地色が橙で島部分が赤で線状部分が緑だった。実験例5(低倍)はMg及びOは赤、Al及びNは黒だった。
【0055】
また、実験例4のセラミックス基体は、結晶相評価の結果、共に前出のMg(Al)O(N)を主相として含むものであったが、スピネルやAlNを副相として含んでいた。表1に実験例4のMg(Al)O(N)のXRDピークと酸化マグネシウムのXRDピークとの間隔(ピークシフト)を示す。実験例4のように、焼成温度が1650℃では反応が十分起こらず、固溶量が少ないと推察された。焼成温度1600℃では反応がほとんど起こらないため、実験例18、19のセラミックス基体では、Mg(Al)O(N)は生成されなかった。
【0056】
更に、実験例5のセラミックス基体は、MgOを主相として含むものであり、実験例6のセラミックス基体は、スピネルを主相として含み、MgOを副相として含むものであった。また、実験例22のセラミックス基体は、MgOを主相、スピネルを副相として含むものであった。したがって、原料中にAlN成分が含まれていないとホットプレス、常圧焼成のいずれでもMgOへAl成分が固溶しないことがわかった。
【0057】
そして、実験例1〜3、7〜13、17、20、21、23〜26のセラミックス基体は、水分減少率(TG−DTAによる40〜500℃の質量減少率)が2%以下、実験例4、6、14〜16、27のセラミックス基体は、水分減少率が3%以下であり、MgOセラミックス、つまり実験例5のセラミックス基体に比べて格段に高い耐湿性を有していた。バルク材耐湿性、耐水性試験の代表例として実験例2、5の微構造写真を図5に示し、実験例8、9の微構造写真を図6に示す。バルク材の耐湿性は固溶量が多い方がよく、Mg(Al)O(N)の(220)面の、酸化マグネシウムからのピークシフトが0.2°以上である実験例1〜3、7〜14、17、20、21、27は、バルク材の耐湿試験(40℃、90RH%雰囲気下で28日間暴露)で表面状態に変化がなく、良好であった。また、実験例4、15、16、27は、バルク材の耐湿試験で表面状態が変化したが、表面の40%以上にわたって針状、粒状の析出物が形成される実験例5、6、18、19、22と比べて変化が小さかった。この結果から、バルク材の耐湿性は、MgOへのAl、N成分固溶量に依存することがわかった。すなわち、Mg(Al)O(N)の(220)面の酸化マグネシウムからのピークシフトが0.03°未満のものは表面の40%以上で変化が生じ耐湿性が低く、ピークシフトが0.03°以上0.2°未満では耐湿性がよく、ピークシフトが0.2°以上あると耐湿性が更によかった。即ち、Mg(Al)O(N)の(220)面のXRDピークが、酸化マグネシウムの立方晶のピークと窒化アルミニウムの立方晶のピークとの間である、62.33°以上62.50°未満(2θ)に現れると耐湿性がよく、62.50°以上に現れると耐湿性が更によかった。また、Mg(Al)O(N)の(200)面のXRDピークが、酸化マグネシウムの立方晶のピークと窒化アルミニウムの立方晶のピークとの間である42.92°以上43.04°未満に現れると耐湿性がよく、43.04°以上に現れると耐湿性が更によかった。
【0058】
またバルク材の耐水性は、ピークシフトが大きく、積分幅が小さい材料ほど、良好であることがわかった。すなわち、(220)面のXRDピークシフトが0.42°以上であり、積分幅が0.35°以下である、実験例1、2、7、8、10〜13、17、20はバルク材耐水性試験で表面状態に変化がなかった。実験例3、9、14、15はバルク材の耐水試験で溶出による穴部が少数認められたが、実験例4〜6、16、18、19、22、27や積分幅が0.50°より大きい実験例21、26では表面の40%以上で溶出した様子が認められた。この結果から、バルク材の耐水性は、MgOへのAl、N成分の固溶量が多く、且つ均質なものがよいことがわかった。すなわち、Mg(Al)O(N)の(220)面の酸化マグネシウムからのピークシフトが0.05°以下の材料は表面の40%以上が溶出し耐水性が低く、ピークシフトが0.05°以上0.42°未満の材料、又はピークシフトが0.42°以上であるがMg(Al)O(N)の(200)面の積分幅が0.35°を超える材料は、耐水性がよく、ピークシフトが0.42°以上、且つ積分幅が0.35°以下の材料は耐水性が更によかった。即ち、Mg(Al)O(N)の(220)面のXRDピークが、酸化マグネシウムの立方晶のピークと窒化アルミニウムの立方晶のピークとの間である、62.35°以上62.72°未満(2θ)に現れる材料、又は(220)面のXRDピークが62.72°以上であるが(200)面の積分幅が0.35°を超える材料は、耐水性がよく、(220)面のXRDピークが62.72°以上、且つ積分幅が0.35°以下の材料は耐水性が更によかった。また、Mg(Al)O(N)の(200)面のXRDピークが酸化マグネシウムの立方晶のピークと窒化アルミニウムの立方晶のピークとの間である42.95°以上43.17°未満に現れると耐水性がよく、2θ=43.17°以上の材料は、耐水性が更によかった。
【0059】
また、実験例1〜3、12、14〜16のセラミックス基体は、表2に示すエッチングレートの結果から、実験例5のMgOセラミックスと匹敵する高い耐食性を有していることがわかった。実験例4、7〜11、13、21、23〜26のセラミックス基体は、エッチングレートの結果から、耐食性は実験例5のMgOと比べてやや劣るものの、実験例6のセラミックス基体、つまりスピネルを主相とする材料や表に示さなかったイットリア(エッチングレート約240nm/h)よりも高い耐食性を有していることがわかった。実験例1〜3、7〜15、23〜26は、副相としてMg-Al酸窒化物(Mg−Al−O−N)相を含むが、Mg−Al酸窒化物相の含有量が多いほど機械特性が向上していた。Mg−Al酸窒化物相の2θ=47〜49°のXRDピーク強度をA、2θ=62.3〜65.2°のMg(Al)O(N)の(220)面のXRDピーク強度をBとしたときのA/B値を表2に示す。A/Bが大きいほどMg−Al酸窒化物の量が多いことを意味し、A/Bが増加するにつれて破壊靱性、曲げ強度ともに向上した。A/Bが0.03以上である実験例7〜11、13、15、17、20、21、24〜26は、破壊靱性2.5以上であり、曲げ強度180MPa以上の高い曲げ強度を有することがわかった。また、実験例7〜10、13、15、17、20、21は、曲げ強度200MPa以上の高い曲げ強度を有することがわかった。例えば、実験例8のAは4317カウント、Bは83731カウントであり、A/B値は0.039となり、破壊靱性は2.5、強度は222MPaであった。また、実験例15のAは13566カウント、Bは108508カウントであり、A/B値は0.125となり、破壊靱性は4.4、強度は350MPaであった。しかし、Mg−Al酸窒化物の量の増加に伴って高耐食なMg(Al)O(N)の含有量が低下するため、耐食性は低下した。例えば、A/Bが0.3以上の実験例17ではエッチングレートが181nm/hに達し、A/Bが0.4を超える実験例20ではスピネルと同レベルの耐食性となった。この結果から、A/B値が0.03以上0.14以下とすることで耐食性と機械強度を同時に発現することがわかった。
【0060】
実験例2、3、8、10、15、24、25の室温での体積抵抗率は全て1×1017Ωcm以上と実験例5のMgOと同等であり、高抵抗が必要となる静電チャックやヒーターなどの半導体製造装置用に好適であることがわかった。
【0061】
また、実験例5と実験例12の600℃での体積抵抗率はそれぞれ2×1012Ωcm、2×1010Ωcmであり、実験例12のセラミックス基体はMgO(実験例5)に比べて低い電気抵抗を有することがわかった。このほか、実験例1、3のセラミックス基体についても実験例12と同様に、実験例5に比べて低い電気抵抗を有することがわかった。
【0062】
次に、セラミックス基体と電極とを備えるセラミックス部材(電極埋設体)を作製した例を実施例として説明する。実施例1〜112及び比較例1〜22では、MgO原料に純度99.4質量%、平均粒径3μmの市販品、Al23原料に純度99.9質量%、平均粒径0.5μmの市販品、AlN原料に純度99質量%、平均粒径1μm以下の市販品を使用した。
【0063】
電極埋設体は、焼結体を作製してから、その焼結体に電極ペーストを印刷し、成形体、もしくは焼結体で電極を挟み込み焼結して作製した。
【0064】
[セラミックス部材の作製]
第1焼結体の作製を行った。調合処理として、MgO原料、Al23原料及びAlN原料を、表3〜8に示す質量%となるように秤量し、イソプロピルアルコールを溶媒とし、ナイロン製のポット、直径20mmの鉄心入ナイロンボールを用いて4時間湿式混合した。混合後スラリーを取り出し、窒素気流中、110℃で乾燥した。その後、30メッシュの篩に通し、混合粉末とした。次に、第1成形処理として、混合粉末を、100kgf/cm2の圧力で一軸加圧成形し、直径50mm、厚さ20mm程度の円盤状成形体を作製し、焼成用黒鉛モールドに収納した。続いて、第1焼成処理として、上記円盤状成形体をホットプレス焼成し、第1焼結体を得た。ホットプレス焼成では、プレス圧力を200kgf/cm2とし、表3〜8に示す第1焼成温度(最高温度)で焼成し、焼成終了まで窒素又はAr雰囲気とした。焼成温度での保持時間は4時間とした。続いて、加工処理として、第1焼結体を直径約50mm、厚さ3.5mmの円板に加工した。このとき、一方の面を#800仕上げとし、電極ペーストの印刷面とした。
【0065】
次に、電極形成処理として、第1焼結体の表面に電極ペーストを塗布し、電極パターンを形成した。電極原料としての電極成分には、NbN、TiN、ZrN、WC、TaC、ZrC、TiC、NbC、Mo2C、Mo、W、Nb、Cr、、Ru、Ir、Pt、Rh、TiB2、ZrB2、MoSi2、WSi2の市販品を用いた。また、電極原料としてのフィラー成分は、MgO(純度99.4質量%、平均粒径3μm)、Mg(Al)O(N)のいずれかとした。Mg(Al)O(N)は、セラミックス基体と同じ焼結体を粉砕して平均粒径1μm程度としたものを用いた。電極ペーストは、表3〜8の電極原料と有機溶媒とバインダとを混合、混練して調製した。バインダ/有機溶媒には、ポリビニルブチラール/ジエチレングリコールモノブチルエーテルを混合したものを使用した。この電極ペーストを用いて、スクリーン印刷法にて幅5mm×長さ15mmの電極を焼結体の表面に印刷した。このとき、電極の厚さは50〜100μmとした。印刷後、大気中で乾燥させた。
【0066】
次に、セラミックス基体と電極とを共焼成する処理を行った。まず、第2成形処理として、第1焼結体の原料と同じ混合粉末を100kgf/cm2の圧力で一軸加圧成形し、直径50mm、厚さ20mm程度の円盤状の第2成形体を作製した。次に第1焼結体のうち電極パターンが形成された面の上に、第2成形体を積層した。これにより、第1焼結体/電極パターン/第2成形体という3層構造の積層体が得られた。あるいは、第1焼結体と同様の方法で作製した第2焼結体を用いて、第1焼結体のうち電極パターンが形成された面の上に、第2焼結体を積層した。これにより、第1焼結体/電極パターン/第2焼結体という3層構造の積層体が得られた。続いて、ホットプレス用のカーボン焼成治具内部にこの積層体を載置し、第2焼成処理としてホットプレス焼成した。第2焼成処理では、プレス圧力を200kgf/cm2とし、表3〜8に示す第2焼成温度(最高温度)で焼成し、焼成終了まで窒素又はAr雰囲気とした。焼成温度での保持時間は4時間とした。このようにして、成形体及び電極パターンがそれぞれ焼結して第2焼結体及び電極となると共に、第1焼結体と電極と第2焼結体とが固着して電極内蔵の一体型セラミックス部材となった。この一体型セラミックス部材から小片を切り出し、後述する評価試験に用いた。なお、第1焼結体の代わりに、第1の部分を成形体とし、この成形体の一方の面に電極パターンを形成したものを準備し、第2成形体と積層の後、ホットプレス焼成してセラミックス部材(電極埋設体)を作製してもよい。
【0067】
[実施例1〜112]
表3〜7に示す条件にて、実施例1〜112の電極埋設体を作製した。実施例22〜24、32〜34、41〜43、50〜52、61〜63、78〜80、91〜93、110〜112については、第1焼結体と第2焼結体の両者焼結体の組み合わせで、電極埋設体を作製した。また、第2焼結体は、第1焼結体と同様のものを用いた。それ以外の実施例では、第1焼結体と第2成形体の組み合わせで電極埋設体を作製した。
【0068】
[比較例1〜22]
表3、8に示す条件にて、比較例1〜22の電極埋設体を作製した。比較例9、10、13、14、17、18、21、22については、第1焼結体と第2焼結体の両者焼結体の組み合わせで、電極埋設体を作製した。また、第2焼結体は、第1焼結体と同様のものを用いた。それ以外の比較例では、第1焼結体と第2成形体の組み合わせで電極埋設体を作製した。実施例1〜112、比較例1〜22のセラミックス基体の原料配合量、焼成温度、焼成雰囲気、電極原料の配合量、熱膨張率などをまとめて表3〜8に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
(電気抵抗率)
得られた電極内蔵の一体型セラミックス部材から、幅9mm×長さ9mm×厚さ約6mmの直方体形状に切り出して試験片とした。この試験片に内蔵された電極は、幅5mm×長さ9mm×厚さ約30〜50μmである。この実施例1〜112、比較例1〜22の試験片は、電極の幅方向の中心と、試験片の幅方向の中心とが一致しており、長さ方向の両端には電極を露出させた。電気抵抗率の測定は、試験片の長さ方向の両端(電極露出面)に導電性ペーストを使用してリード線を接続し、回路とした。測定条件は、大気中、室温(20℃)で微小電流を100mA〜10mAの範囲で印加し、その際の微小電圧値を測定して電極抵抗Rを求めた。そして、比抵抗ρ(Ωcm)を、抵抗R(Ω)、電極露出面の面積S(cm2)、電極の長さL(cm)を用い、ρ=R×S/Lの式から算出した。
【0076】
(電極埋設後の微構造評価)
得られた電極内蔵の一体型セラミックス部材から、電極が露出するよう切断し、切断面を鏡面研磨したのち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、電極周辺のセラミックス基体にクラックが発生しているか否かを評価した。また、電極成分とセラミックス基体の反応性を評価するため、EPMA解析を行った。
【0077】
(電極のXRD解析)
得られた電極内蔵の一体型セラミックス部材から、電極が露出するよう切断し、切断面を研磨したのち、X線回折装置により電極の結晶相を同定した。測定条件はCuKα、40kV、40mA、2θ=5−70°、測定のステップ幅は0.02°とし、封入管式X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス製 D8 ADVANCE)を使用した。
【0078】
(セラミックス基体の熱膨張率測定)
第1焼結体と同じ方法で作製した焼結体に対して、JIS−R1618に準じた方法により40〜1000℃の熱膨張率を測定し、セラミックス基体の熱膨張率とした。
【0079】
(クラック評価)
得られた電極内蔵の一体型セラミックス部材の電極を含む部分を切断し、切断面を鏡面研磨した。その鏡面を電子顕微鏡(SEM、フィリップス社製、XL30)により観察し、SEM像によりクラックの有無を判定した。クラックが確認されない場合は「なし」、クラックが確認された場合は「あり」とした。
【0080】
(接合不良)
得られた電極内蔵の一体型セラミックス部材の電極を含む部分を切断し、切断面を鏡面研磨した。その鏡面を電子顕微鏡(SEM、フィリップス社製、XL30)により観察し、SEM像により接合の良、不良を判定した。基材と基材との間に5μm以上の長さの隙間がない場合は「○」(5μm以下の隙間は研磨時の脱粒とみなした)、基材と基材との間に5μm以上の隙間がみられた場合は「×」として評価した。
【0081】
(反応性評価)
得られた電極内蔵の一体型セラミックス部材の電極成分と基材との反応性について検討した。断面を電子顕微鏡(SEM、フィリップス社製XL30)により観察し、電極と基材との界面近傍において、基材に電極の元素が含まれているか否かをEPMA(日本電子社製JXA−8800RL)にて元素分析することにより評価した。電極成分が基材に確認されない場合は「○」、電極成分が基材に100μm以下の範囲で拡散している場合は「△」、電極成分が基材に100μm以上の範囲で拡散している場合は「×」として評価した。
【0082】
(評価結果と考察)
実施例1〜112、比較例1〜22のセラミックス基体の熱膨張率C(ppm/K)、電極成分とフィラー成分との配合量に応じて計算した平均熱膨張率D(ppm/K)、セラミック基体と電極の熱膨張率の差分の絶対値(C−D)(ppm/K)、一体型セラミックス部材の電極の比抵抗(Ωcm)、クラックの有無、接合不良、電極成分と基材との反応の有無などの評価結果をまとめて表9〜14に示す。表9〜13の実施例1〜112に示すように、実施例での窒化物、炭化物、金属では、セラミックス基体にクラックは発生せず、1×10-2Ωcm以下の低抵抗が得られた。また、一体型セラミックス部材のEPMA解析より、セラミックス基体への電極成分の拡散は軽微であった。また、一体型セラミックス部材の電極のXRD解析より、埋設後の電極成分の結晶相は原料と同じであることがわかった。これらの結果から、これら窒化物、炭化物、金属はMg(Al)O(N)との反応性が低いと考えられた。また、これらの実施例ではセラミックス基体の熱膨張率Cと、金属にフィラー成分を含む電極の平均熱膨張率Dとの差の絶対値|C−D|は3.0ppm/K以下であり、セラミックス基体の熱膨張率Cと、窒化物、炭化物、炭窒化物にフィラー成分を含む電極の平均熱膨張率Dとの差の絶対値|C−D|は0.8ppm/K以下であり、フィラー成分の混合比を上記のように制御することでクラックの発生を抑制することができることがわかった。金属は、窒化物、炭化物、炭窒化物のようなセラミックスより、変形し易いため、より大きな熱膨張率の差が許容できる。なお、実施例5、7では第1、第2焼結体に組成の異なる原料を用いたが、熱膨張率はほぼ同じであるため、焼結後に熱膨張差に由来するクラックは発生しなかった。このように、第1焼結体と第2焼結体の組成が異なっていても、熱膨張率差が小さい場合は一体型セラミックス部材とすることができる。一方、表9、14に示すように、電極成分の原料を珪化物(WSi2、MoSi2、NbSi2など)、硼化物(TiB2、ZrB2、NbB2、TaB2など)とした比較例1〜4では、電極周辺のセラミックス基体にクラックが発生した。これらの一体型セラミックス部材のEPMA解析より、Si又はB成分がセラミックス基体中に100μm以上拡散することが確認され、XRD解析より電極成分に含まれない異相が検出された。例えば、電極成分がMoSi2の場合、窒化珪素やSi3Al739等、TiB2の場合はBN等が検出された。これらの結果から、珪化物や硼化物では、セラミックス基体のMg(Al)O(N)とSiやBとが反応し、低熱膨張な結晶相を生成したためクラックが生じたと推察された。加えて、これら成分の拡散は、体積抵抗率や耐食性に影響を与えるおそれがあり、珪化物や硼化物は電極成分として不適と考えられた。また、セラミックス基体の熱膨張率Cとフィラー成分を含む電極の平均熱膨張率Dの差の絶対値|C−D|が0.9ppm/Kとなる比較例5では、セラミックス基体にクラックが生じた。また、電極原料中のフィラー成分の混合比が85体積%の比較例6においては電極の導電性が得られなかった。また、焼成温度を1650℃、あるいは1900℃とした比較例7〜22では、基材同士の接合不良、あるいはクラックが生じた。この他、Al23等の一般的な電極として使用されるNiやCoなどを検討したが、焼成温度と比べて融点が低いため、焼成中に融解して焼結体外部に流出し、不適であった。
【0083】
【表9】
【0084】
【表10】
【0085】
【表11】
【0086】
【表12】
【0087】
【表13】
【0088】
【表14】
【0089】
本出願は、2011年10月11日に出願された日本国特許出願第2011−223851号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のセラミックス部材は、例えば、静電チャックやサセプター、ヒーター、プレート、内壁材、監視窓、マイクロ波導入窓、マイクロ波結合用アンテナなどの半導体製造装置用部材に用いられる。
【符号の説明】
【0091】
20 半導体製造装置用部材、22 基材部、24 貫通孔、26 給電部材、30 セラミックス部材、32 セラミックス基体、34 電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6