特許第6018083号(P6018083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018083
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】棒状化粧料保持体
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/00 20060101AFI20161020BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   A45D40/00 L
   B65D83/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-550260(P2013-550260)
(86)(22)【出願日】2012年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2012082513
(87)【国際公開番号】WO2013094536
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年8月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-279504(P2011-279504)
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津原 一寛
(72)【発明者】
【氏名】尾上 秀之
(72)【発明者】
【氏名】荒井 啓
(72)【発明者】
【氏名】柴 秀人
【審査官】 栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−150018(JP,A)
【文献】 特開平9−131218(JP,A)
【文献】 特開2007−260164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下端が開口した筒状に形成され、その内周面には、上部開口より下方へ内径を漸次縮径して上部テーパー面を設けるとともに、下部開口より上方へ内径を漸次縮径して下部テーパー面を設け、該上部テーパー面と該下部テーパー面との境には下部テーパー面側が上部テーパー面側に対して高くなるような段差を形成する1つの段部を環状に設け、該段部は側面視で軸心に対し傾斜して形成され、さらに、前記上部および下部テーパー面のテーパー角度が1°〜10°に形成されている棒状化粧料保持体。
【請求項2】
前記段部の高さが0.1〜2.0mmに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の棒状化粧料保持体。
【請求項3】
前記段部の高さが0.3mmに形成され、前記上部テーパー面のテーパー角度が3°〜8°に形成され、且つ、前記下部テーパー面のテーパー角度が2°〜5°に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の棒状化粧料保持体。
【請求項4】
前記段部の高さが0.3〜2.0mmに形成され、前記上部テーパー面のテーパー角度が3°に形成され、且つ、前記下部テーパー面のテーパー角度が2°〜5°に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の棒状化粧料保持体。
【請求項5】
前記棒状化粧料保持体の軸心に対する、前記段部の傾斜角度が45°〜60°に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の棒状化粧料保持体。
【請求項6】
先端の開口縁に沿って複数の切り欠き部を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の棒状化粧料保持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状化粧料の容器内において繰り上げ/繰り下げ自在に形成された、棒状化粧料保持用の保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、市場では柔らかい感触を有し、ツヤ感の高い口紅が求められている。かかる要求品質を具現化するために、バック充填方式、即ち、容器を倒立させてその底部の充填孔より容器内に加熱溶融した化粧料を直接充填し、冷却固化することにより棒状化粧料を成型する製造方法が有利であり、一般的に行われている。この方法では、一般的に容器の一部である筒部(スリーブ)内に、その中を上下動可能な筒状の化粧料用保持体を装着し、これら筒状部材の内部に加熱溶融した化粧料(バルク)を直接充填してそのまま冷却固化する。(特許文献1、2)。
【0003】
このようなバック充填方式で成型された化粧料はスリーブおよび保持体に直接充填したものであることから、固化した後に化粧料が容器のスリーブ内壁面に一部固着している場合があり、使用開始時、保持体に装着した化粧料を繰り上げる際に、かかる固着が原因で化粧料に下方向(底方向)の強い応力がはたらくことがあった。また、通常使用の際にも、化粧料の先端は被塗布部に押圧されるため、化粧料に対する下方向への応力が発生する。かかる下方向への応力は、化粧料を筒状の保持体から下方向へ抜き出す力としてはたらくので、これを阻止するために保持体に化粧料を保持し固定するための手段を講じる必要がある。その一般的な方法として、保持体の内壁に1個または複数の爪部など突起物(リブ)を設けておき、溶融した化粧料を充填、固化させて、リブで化粧料を係合保持させることが行なわれている(特許文献3)。
【0004】
しかしながら、化粧料をリブで係合保持する方法には、以下のような問題があった。すなわち、バック充填方式で成型された化粧料は、前述のように繰り上げ動作時に容器のスリーブ内壁面と化粧料の固着に起因する応力を生じるが、かかる応力によるストレスは、結果的に化粧料と保持体との係合保持部分、すなわちリブ部分へ集中することになる。
【0005】
リブによる化粧料の係合保持は、固化した化粧料自体の固さによりその保持力が確保されるものであるため、例えば柔らかい化粧料の場合にはリブによる保持体への保持力が低下し、上述のようなストレスが加わった場合に、十分保持することができない場合がある。特に、口紅等の棒状化粧料の使用感をより柔らかくするために、例えば骨格を形成する固形油の配合量を低減したような場合には化粧料自体も脆弱になるため、従来のリブで保持するタイプの保持体では、上記のようにストレスがリブとの係合部分に集中するとその部分の化粧料が崩れ、化粧料が保持体に十分に保持されないという問題があった。
【0006】
そのための対策として、例えばリブの大きさや長さ、高さなど、寸法を大きくすることにより係合保持力を向上させる方法が考えられるが、リブがもともと有する特性として、保持体内に加熱溶融した化粧料を充填する際、保持体の内部にリブのような突起物があるとその周辺で溶融化粧料の流動に乱れが生じ、充填完了時にその周辺部分に気泡が残る場合がある。そして、溶融状態の化粧料は充填されるとすぐに冷却が始まり、溶融状態の化粧料の流動性ももともと高くないことも相俟って、結果的にリブ付近で気泡が残ったまま冷却固化され、空洞を形成する。このリブ周辺の空洞は、リブによる化粧料の係合保持力を低下させ、成型不良の原因となる。リブの寸法を大きくすることはこのような気泡をより発生し易くするものであり、成型不良の発生率を増大させるものであるため、特に柔らかい感触を有する機械的強度の低い棒状化粧料に対しては、保持力向上の方法としては十分なものではなかった。
【0007】
以上のように、リブ部分における化粧料の破損や成型不良は棒状化粧料、とりわけ機械的強度の低い、柔らかいタイプの棒状化粧料に対する保持体の係合保持力低下のさらなる原因となり、その結果、保持体の動きと化粧料の動きが連動しなかったり、使用時に化粧料が押し下げられるなどという問題が生じていた。また、通常の使用時のみならず、容器をうっかり落として外部から強い衝撃を受けた場合などは、化粧料が保持体から飛び出してしまい、化粧料表面を傷つける場合もあった。
【0008】
特許文献4には、バック充填方式の化粧料用ではないが、リブを突条としてらせん方向に形成することにより、中皿(保持体)との嵌合強度を高めて化粧料を抜けにくくしたものが開示されている。
【0009】
しかしながら、このものは、リブがらせん状に連続して形成されているため、バック充填方式のものに適用するとリブ付近に気泡がより発生しやすくなり、成型不良のおそれがあった。また、リブ部分に集中的にストレスが加わることになるため、特に柔らかいタイプの棒状化粧料の場合、かかるリブ部分から破断する可能性があった。さらに、もともと棒状化粧料をねじ込むものであるため、化粧料の回転方向の動きを阻止するリブの抵抗力も十分なものではなかった。
【0010】
そこで、本出願人は、上記課題を解決するべく、上下端が開口した筒状に形成され、その内周面には上部開口側より略中央部にかけて内径が漸次縮径するテーパーを設けるとともに、該テーパーを設けた内周面には上部開口側より略中央部側が高くなるよう形成された複数の段部を環状に設け、該段部が側面視で筒状の軸心に対し傾斜して形成された棒状化粧料保持体を発明した(特許文献5)。すなわち、この棒状化粧料保持体は、保持する棒状化粧料にかかる上下方向のストレスを、保持体の内径を漸次縮径することによりテーパーを形成した内周面(以下、テーパー面と記す)で受け止め、さらに、保持体中で棒状化粧料を回転させる方向のストレスを、複数の段部の段差面で受け止めることにより、棒状化粧料を確実に保持することができるというものである。
【0011】
ところで、かかる棒状化粧料保持体は、上述のような柔らかい化粧料の場合には特段の問題はないが、化粧料を通常の硬さのものにした場合、以下のような問題が考えられる。すなわち、化粧料を一般的な硬さにするためには、その成分中、ワックスの配合を増やす必要が生じるが、かかるワックスの配合割合が増えるに従い、化粧料成型時の冷却固化による化粧料の収縮率も高くなることが知られている。そして、出願人発明による棒状化粧料保持体の場合、複数の段部による保持力が強いため、収縮時に化粧料保持体内で化粧料が適度に収縮することができず、その結果、化粧料が部分的にクラックなどの破損を生ずる可能性があった。
【0012】
【特許文献1】特開2001−87033
【特許文献2】特開2002−349
【特許文献3】特開2009−226004
【特許文献4】特開2001−186920
【特許文献5】特願2010−171984
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明は、従来の棒状化粧料保持体のかかる欠点を克服し、棒状化粧料に対する上下方向および回転方向に対する係合保持力を高めるとともに、従来リブに集中していたストレスを面に分散して化粧料の破損を防ぎ、さらに気泡による化粧料の成型不良を防いで、棒状化粧料を確実に係合保持することができる棒状化粧料保持体であって、通常の硬さの化粧料にも使用した場合でもクラック発生による成型不良を防ぐことができる棒状化粧料保持体の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するものであり、上下端が開口した筒状に形成され、その内周面には、上部開口より下方へ内径を漸次縮径して上部テーパー面を設けるとともに、下部開口より上方へ内径を漸次縮径して下部テーパー面を設け、該上部テーパー面と該下部テーパー面との境には下部テーパー面側が上部テーパー面側に対して高くなるような段差を形成する1つの段部を環状に設け、該段部は側面視で軸心に対し傾斜して形成され、さらに、前記上部および下部テーパー面のテーパー角度が1°〜10°に形成されている棒状化粧料保持体である。また、本発明は、さらに前記段部の高さが0.1〜2.0mmに形成されている前記の棒状化粧料保持体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の棒状化粧料保持体は、保持する棒状化粧料にかかる上下方向のストレスを、保持体の内径を漸次縮径することによりテーパーを形成した内周面(以下、テーパー面と記す)で受け止め、さらに、保持体中で棒状化粧料を回転させる方向のストレスを、保持体の軸心に対して傾斜して設けた段部の段差面で受け止めることにより、棒状化粧料を確実に保持することができる。また、従来はリブ等の突起物で形成された係合保持部分に局所的に集中していたストレスが、面に分散するため、係合保持部分付近で化粧料が破損しにくくなり、さらに成型時に突起物に起因する気泡等が発生しにくいため、成型不良を効果的に防ぐことができる。従って、本発明の棒状化粧料保持体は、通常の硬さの棒状化粧料はもとより、柔らかい感触を有し、機械的強度が低いためリブ等の突起物では保持が難しいタイプの棒状化粧料に対しても、優れた係合保持性を有する。
【0016】
さらに本発明の棒状化粧料保持体は、保持体内周面に設けた段部を1つにし、且つ、前記テーパー面のテーパー角度、またはさらに前記段部の高さを所定の範囲内に設定することにより、成型時の冷却固化による化粧料の適度な収縮を妨げることなく、特にクラックの発生しやすい通常の硬さの棒状化粧料において、クラック発生による成型不良を効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の棒状化粧料保持体の正面図。
図2】本発明の棒状化粧料保持体の側面図。
図3】本発明の棒状化粧料保持体の正面断面図。
図4】本発明の棒状化粧料保持体の側面断面図。
図5】本発明の棒状化粧料保持体を組み付けた棒状化粧料容器の断面図。
図6】本発明の棒状化粧料保持体の斜視図。
図7】本発明の棒状化粧料保持体の段部の高さを一定にし、テーパー面のテーパー角度を変えた場合の実施態様
図8】本発明の棒状化粧料保持体の上部テーパー面のテーパー角度を一定にし、段部の高さと下部テーパー面のテーパー角度を変えた場合の実施態様
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の棒状化粧料保持体の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0019】
図1は本発明の棒状化粧料保持体の正面図、図2は同側面図、図3は同正面断面図、図4は同側面断面図、図5は本発明の棒状化粧料保持体を組み付けた棒状化粧料容器の側面断面図、図6は棒状化粧料保持体の斜視図である。図中、1は棒状化粧料保持体、2はスリーブ、3は回転筒、4は容器外筒、11は周壁、12は段部、13は上部テーパー面、14は下部テーパー面、15は上部開口、16は下部開口、17は突起部、21はガイド溝、31は螺旋溝、41は容器底部充填孔、151は開口縁、152は切り欠き部、Aは軸心、θ1は軸心に対する段部の傾斜角度をそれぞれ示す。
【0020】
図1図5に示すように、本発明の棒状化粧料保持体1は、上下両端に開口15、16を有する円筒状であり、上部開口15の開口縁151は側面視で斜めになるよう形成されている。周壁11の外周面の下部には突起部17が設けられており、かかる突起部17が回転筒3の回転に伴い回転筒3内の螺旋溝31およびスリーブ2のガイド溝21に沿って上下することにより、棒状化粧料保持体1がスリーブ2内を上下動する。棒状化粧料保持体1に化粧料を充填する際は、スリーブ2の先端をキャップ状の部材(図示せず)で封止し、容器を倒立させ、容器底部充填孔41および棒状化粧料保持体1の下部開口16よりスリーブ2内および保持体1内に加熱溶融した化粧料を注入し、その後、冷却固化の工程を経て使用可能な状態となる。
【0021】
本実施態様の棒状化粧料保持体1は、図3図4に示すように、上部開口15から下方へ内径が漸次縮径して上部テーパー面13が形成され、また、下部開口16からは上方へ内径が漸次縮径して下部テーパー面14が形成されている。上部テーパー面13と下部テーパー面14との境には、下部テーパー面14側が上部テーパー面13側に対して高くなるような段差を形成する段部12が設けられている。かかる段部12は上部開口15から略3分の1の部位において形成されており、その段差の高さは、テーパー面13、14のテーパー角度との関係で種々想定されるが、0.1〜2mmが好ましく、特に、0.3〜0.5mmが望ましい。また、かかるテーパー面13、14のテーパー角度は、段部12の高さとの関係で種々想定されるが、1°〜10°の範囲に形成することが好ましい。
【0022】
本実施態様における段部12は、棒状化粧料保持体1の周壁11の内周面に環状に形成されているが、図4に示すとおり、かかる環状は棒状化粧料保持体1の軸心Aに対して垂直ではなく、傾斜して設けられている。本実施態様における傾斜角度θ1は、開口縁151の側面視の傾斜角度とほぼ同一になるように形成されているが、これに限らず、好ましくは5°〜85°の範囲内で適宜に設定でき、化粧料との摩擦力とテーパー面内で形成可能な範囲を考慮すると45°〜60°が特に好ましい。
【0023】
このように、本実施態様における棒状化粧料保持体1は、段部12にかけて上部開口15および下部開口16から内径が漸次縮径することで内周面にテーパー面13、14を形成するため、棒状化粧料保持体1全体では、上下端部の内径がもっとも大きく、段部12に向かって徐々に狭まり、段部12においてもっとも小さくなっている。なお、本実施態様では、棒状化粧料保持体1の周壁11の厚みを上部開口15および下部開口16から段部12にかけて次第に厚くすることによりテーパー面13、14を形成しているが、テーパー面の形成の方法はこれに限らず、たとえば周壁11の厚みは一定にして、内径とともに棒状化粧料保持体1の外径も縮径し、段部12が形成されている位置に相当する外周壁部分がくびれるように形成してもよい。
【0024】
上記の通り、本発明の棒状化粧料保持体1は、段部12を境としてその上方および下方の内周面に上部テーパー面13および下部テーパー面14を設けることで、使用時に化粧料にかかるストレスを分散することが可能となる。具体的には、使用開始時や通常の使用時に化粧料に対して働く下方向への応力は、上部テーパー面13の面全体で受け止めることによりストレスが分散されて、棒状化粧料の下方向への移動を防ぐことができる。また、容器の落下時などに発生しうる上方向への応力は、下部テーパー面14の面全体で受け止めることによりストレスが分散され、化粧料の上方向への移動を防ぐことができる。
【0025】
また、棒状化粧料保持体1内で、保持された棒状化粧料を回転させる方向のストレスに対しては、段部12により受け止めることができ、化粧料の回転方向のズレを防ぐことができる。すなわち、段部12は棒状化粧料保持体1の内周面に環状に形成されており、且つ、その環状面は棒状化粧料保持体1の軸心Aに対して傾斜しているため、円筒形状である棒状化粧料保持体1を平面に展開すると、段部12は1サイクルの波形状を形成している。従って、この段部12による回転方向の動きの規制は、棒状化粧料保持体1の段部12の段差面と棒状化粧料がそれぞれ形成する、波の山と谷を互いに係合させることによる動きの規制効果であり、しかも、上下方向の動きは前述のように上部テーパー面13、下部テーパー面14により規制されているため、両者が協働的にはたらき、その結果、回転方向のズレを効果的に防ぐことができる。
【0026】
そして、本発明の棒状化粧料保持体1には化粧料保持のためのリブ等の突起物を保持体の内部に有していないため、化粧料成型の際に係合保持部分の気泡が発生しにくく、しかも係合保持部分に集中する局所的なストレスがないため、係合保持部分付近で化粧料の一部が破損することもない。従って、本発明の棒状化粧料保持体1は、通常の硬さの棒状化粧料はもとより、機械的強度が低いため、従来のリブ等の突起物では保持が難しかった柔らかいタイプの棒状化粧料も、確実に保持することができる。
【0027】
図7(a)〜(c)は、段部12の高さを一定にし、上部テーパー面13のテーパー角度と下部テーパー面14のテーパー角度を変えた場合の実施態様である。具体的には、段部12の高さは0.3mmに形成され、上部テーパー面13のテーパー角度θ2が3°、5°、8°に形成されるとともに、下部テーパー面14のテーパー角度θ3が2°、3°、5°に形成されている。ここで「テーパー角度」とは、棒状化粧料保持体1の外周壁と軸心Aが平行の場合、かかる外周壁との関係における傾斜角度をいうものとする。図に示すように、段部12を一定の高さの0.3mmに設定した場合、上部テーパー面13および下部テーパー面14のテーパー角度を調整することにより、化粧料の硬さに応じた保持力を設定することが可能となる。通常の硬さの棒状化粧料の場合は、図7(a)〜(c)のように、上部開口15から前段部12にかけてテーパー角度θ2を3°〜8°に形成するとともに、下部開口16から段部12にかけてテーパー角度θ3を2°〜5°に形成することが好ましい。
【0028】
図8(a)〜(d)は、上部テーパー面13のテーパー角度を一定にし、段部12の高さと下部テーパー面14のテーパー角度を変えた場合の実施態様である。具体的には、段部12の高さが0.3、0.5、1.0、2.0mmに形成され、上部テーパー面13のテーパー角度θ2が3°に形成され、且つ、下部テーパー面14のテーパー角度θ3が2°、2.5°、3°、5°にそれぞれ形成されている。図に示すように、上部テーパー面13のテーパー角度θ2を一定の角度の3°に設定した場合、段部12の高さおよび下部テーパー面14のテーパー角度θ3を調整することにより、化粧料の硬さに応じた保持力を設定することが可能となる。通常の硬さの棒状化粧料の場合は、図8(a)〜(d)のように、段部12の高さを0.3〜2.0mmに形成し、下部開口16から段部12にかけてテーパー角度を2°〜5°に形成することが好ましい。
【0029】
また、段部12の高さは棒状化粧料保持体1の内径との比率で決定しても良い。すなわち、棒状化粧料が通常の硬さの場合、段部12の高さと棒状化粧料保持体1の内径の比は、棒状化粧料保持体1の内径が8〜20mmφとして、棒状化粧料保持体1の内径寸法に対する段部12の高さの寸法の比を0.01〜0.2の範囲で設定することができ、0.02〜0.1が好ましく、0.025〜0.05が特に好ましい。なお、ここで「棒状化粧料保持体1の内径」とは、棒状化粧料保持体1の下部開口16側の端部の内径を基準とする。
【0030】
また、ここでいう「通常の硬さ」の棒状化粧料とは、下記測定方法による針入荷重値S(g)が120〜240(g)の範囲にある程度の硬さを示す固形の化粧料により形成される棒状化粧料をいう。とりわけ、150〜210(g)の範囲にある硬さのものは、本発明の効果をより享受することができ、保持体への係合保持性においても、また感触においても、特に優れた品質の棒状化粧料製品を提供することができる。このような棒状化粧料は、針入荷重値S(g)が上記範囲内のものであればその組成は限定されないが、例えば、化粧料を棒状に保つ骨格となる固形油と、塗布時の感触や塗布量等を調整する非固形油とを主成分とする基剤において、該固形油の基剤中の含有量を5〜15質量%、好ましくは8〜12質量%とし、この基剤に、色素・顔料、美容成分、保存剤・酸化防止剤等を、好ましくは基剤100質量部に対し0.0001〜20質量部程度添加したものを挙げることができる。
【0031】
<針入荷重値Sの測定方法>
溶融した化粧料を金属製の皿に流し込んで冷却固化し、試料とする。試料を測定温度35℃に1時間静置した後、針入荷重測定装置(例えば、レオメーター(不動工業社製)等)にて、先端面が直径3mmの円形であるプランジャーを速度6cm/1分の条件で、試料表面から垂直に深さ2mmとなるまで押入させ、この間にプランジャーにかかる応力(g)を測定する。この時の最大応力(g)を針入荷重値S(g)とする。
【0032】
上記棒状化粧料の組成において、固形油としては、常温で固形状であり、棒状化粧料の骨格となる油性成分であれば限定されないが、好ましいものとして(エチレン・プロピレン)コポリマー、ポリエチレンワックス、オゾケライトワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス等の炭化水素ワックスや、カルナウバワックス、キャンデリラワックス等のエステル系ワックス等を挙げることができる。この中でも、形状保持性や塗布膜の均一性の点で(エチレン・プロピレン)コポリマーが特に好ましい。
【0033】
上記非固形油としては、液状油、ペースト状油、油ゲル化剤、油溶性樹脂類等が挙げられ、具体的には、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、ポリイソブチレン、ポリブテン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類;オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油等の植物油類;2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ロジン酸ペンタエリトリット等のエステル類;トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、デカイソステアリン酸ポリグリセリル等のグリセリド類;N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)等のアミノ酸誘導体;ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類;高重合ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン等のシリコーン類;パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤;パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、ステアリン酸イヌリン等の多糖脂肪酸エステル類等を挙げることができる。
【0034】
色素・顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料;酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料;タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、煙霧状無水ケイ酸、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の無機体質顔料;二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性顔料;ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリルコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機ポリマー粉末顔料;N−アシルリジン、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の有機体質顔料;赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号あるいはこれらのジルコニウム、バリウムまたはアルミニウムレーキ等の有機色素;アルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体等を挙げることができる。これら色素・顔料はその1種または2種以上を併せて用いることができ、さらに複合化したものを用いても良い。なお、色素・顔料において、粉体状のものは、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等の1種または2種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0035】
上記美容成分としては、ベンゾフェノン系、パラアミノ安息香酸エステル系、メトキシケイ皮酸エステル系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等の紫外線吸収剤を始め、消炎剤、植物抽出物、ビタミン類、タンパク質、ペプチド類、ムコ多糖類、多価アルコール等として公知の成分を例示することができ、保存剤・酸化防止剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、α−トコフェロール等を挙げることができる。
【0036】
上記の通常の硬さの棒状化粧料の組成について、好適なもののひとつとして、下記組成の化粧料を具体的に例示することができる。このものは、常法により調製が可能である。
(組成)
1.下記(1)および(2)を含有する基剤:100質量部
(1)(エチレン・プロピレン)コポリマー 10〜11質量%
(2)デカイソステアリン酸ポリグリセリル−10 89〜90質量%
2.色素・顔料:0.0001〜10質量部
【0037】
さらに、本実施態様の棒状化粧料保持体1は、開口縁151に計6箇所の切り欠き部152が形成されている。このように複数の切り欠き部152が形成されることにより、保持体の上端縁と化粧料外周面との接触長さが増加するため、冷却固化時の収縮で発生する応力や使用時のストレスをより効果的に分散することが可能となり、収縮時の応力や使用時のストレスが特に高い化粧料については、化粧料の折れやクラックなどの不具合をさらに高い確率で防ぐことができる。
【0038】
本発明の棒状化粧料保持体1の材質としては、棒状化粧料の保持が可能で、溶融した化粧料の熱に耐え得るものであれば特に限定されず、各種の金属や合成樹脂材料の1種または2種以上を併用して利用することができるが、保持体自体の成型のし易さ、棒状化粧料の離型のし易さ等の観点から、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアクリロニトリル・スチレン樹脂、ポリアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂等の樹脂材料を好適に使用することができる。
【0039】
なお、本発明の棒状化粧料保持体は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、その内壁にリブを設けることを排除するものではない。
【0040】
本発明の棒状化粧料保持体は、これを装着可能な棒状化粧料の容器であれば、いかなる容器においても使用可能であり、口紅、リップクリーム、スティックタイプコンシーラー、皮膚美白用スティック、日焼け止めスティック等の棒状化粧料の容器において、極めて有利に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 … … 棒状化粧料保持体
2 … … スリーブ
3 … … 回転筒
4 … … 容器外筒
11 … … 周壁
12 … … 段部
13 … … 上部テーパー面
14 … … 下部テーパー面
15 … … 上部開口
16 … … 下部開口
17 … … 突起部
21 … … 保持体用ガイド溝
31 … … 螺旋溝
41 … … 容器底部充填孔
151 … … 開口縁
152 … … 切り欠き部
A … … 軸心
θ1 … … 軸心と段部の傾斜角度
θ2 … … 上部テーパー面のテーパー角度
θ3 … … 下部テーパー面のテーパー角度
図1
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図8