【課題を解決するための手段】
【0031】
したがって本発明は、連続伝送行列を用いるN送受波器配列を用いて媒体の高解像度超音波画像を取得する方法を提案することで、先行技術のデバイスおよび方法の欠点および制限を軽減することを主目的にする。方法は、以下の
a) 媒体の少なくとも1つの予備画像を取得する段階と;
b) 予備画像における目的領域を画定する段階と;
c) 目的領域および不要領域に対応する送受波器間相関行列を決定する段階と;
d) 目的領域の送受波器間相関行列を、不要領域の送受波器間相関行列の逆数に掛けた積から生じる目的領域の特性行列を決定する段階と;
e) 目的領域の特性行列の固有ベクトルと固有値とを算出する段階であって、それらの対応固有値の関数として分類されるこれらのベクトルは、伝送行列を定義することと;
f) N個の固有ベクトルから、K個までの最も高い固有値に関連するK個の固有ベクトルを選択する段階と;
g) 選択されたK個の固有ベクトルによって重付けられたK個の波を発射する段階であって、それぞれの選択ベクトルは、発射中に送受波器によって送信された信号に重付けし、これらのベクトルは、第1部分において、特性行列のK個までの最も高い固有値に関連する固有ベクトル群のうちのK個の固有ベクトルと、第2部分において、実行されない発射に対応するゼロの列とから構成される短縮伝送行列を定義することと;
h) 媒体によって戻された信号を受信する段階と;
i) 完全データセットを得るべく、実行されない発射に対応するゼロに設定されたデータで完成された取得信号からなる受信行列に、伝送行列の逆数を乗じる段階と;
j) 合成開口超音波検査撮像法におけるように完全データセットから、低解像度画像を抽出する段階と;
k) 完全データセットから抽出された低解像度画像を、合成開口超音波検査撮像法におけるようにコヒーレント加算することで、目的領域に対応する高解像度画像を再構成する段階と
を有することを特徴にする。
【0032】
提案方法では、画像サイズを単に減らすことで非常に高い時間解像度を得ることができる。
所定の特定目的領域に意のままに機敏に適応できるように、本発明は、画像取得率と画質との間の標準トレードオフから画像取得率と画像サイズとの間のトレードオフに変わる。本発明は、得られる画像サイズの縮小を制御するだけで、画像取得率を調整することができる。得られる高解像度画像のサイズは一般に、目的領域のサイズである。
【0033】
本発明の方法は、エネルギを空間的に濃縮できるビームを生成する様々なベクトルを有する可逆伝送行列を伝送することにある。送信されるそれぞれの発射は、この伝送法の抑制が、この領域の画像の損失をもたらすが、復元される他の画像領域の品質を劣化させないように特定領域の再構成に寄与する。
【0034】
画像取得を加速すべく、伝送行列に含まれる法則のうちのいくつかが伝送されない場合には、N
supprベクトルは、短縮伝送行列において抑制され、対応信号は、ゼロであると仮定されるので、画像取得率は、係数N
el/(N
el−N
suppr)増加する。N
elは、送受波器の数である。画像サイズは、対応領域によって減少するが、画質は、最適なままである。
【0035】
重付けは、それぞれの発射に対して、該当発射に対応する固有ベクトルのそれぞれの成分をそれぞれのセンサによって送信された信号に乗じることにある。
段階h)中に発射されたK個の波は、有利なことに集束されない。
【0036】
この特徴は、可逆行列に基づき空間フィルタを導入する本発明の方法の利用にもっぱら適している。それでもここで集束波を用いるデバイスが、画像取得率を増大させる本発明の利益を等しく受け得ることに留意する。本発明は通常、たとえば湾曲送受波器配列の定焦点送受波器配列で用いることができる。
【0037】
一実施形態においてゼロとは有意に異なるI正規化固有値を有する特性行列では、KはIに同じである。
1に近い正規化固有値の数Iは、選択された目的領域の関数である。この実施形態において目的領域が決定されると、数K=Iが確定され、次に画像取得率の増大を画定する発射数の減少が、前記数によって自動的に決定される。この数Kの選択は、本発明を実行するデバイスにおいて提供されるデフォルト選択にすることができる。もしそうなら、数Kが、目的領域と、特性行列の有意に非ゼロ固有値の数との関数としてデバイスによって自動的に修正されることに注意すべきである。その結果、目的領域において得られる画質は、最適画像取得率の増大も得ながら、最適である。
【0038】
別の実施形態において方法は、画像取得率と目的領域の画質との間のトレードオフを調整する段階を有する。数Kは、画像取得率と目的領域の画質との間のトレードオフ調整の関数である。
【0039】
この実施形態において数Kは、非常に高い画像取得率が要求される場合か、調整段階中に確定された画質があまり十分ではない場合には、数I未満にすることができる。
調整段階は、数Iとは無関係に決定された数Kを調整することにあるとし得る。もしそうなら画像取得率の増大が強いられるとともに、所定の画質を強いる。また調整は、画質の必要条件であるとすることができる。それは本発明の動作外のパラメータの関数としての自動調整、または直接オペレータに提供される調整に関する問題にすることができる。
【0040】
好適実施形態において伝送行列は、扁長(扁平な)回転楕円ベクトルからなる。
これは円錐状に放射されるエネルギを最適化する高性能な方法である。その結果、伝送行列は、パラメータN
elおよびBの扁長回転楕円ベクトル(非特許文献3すなわちスレピアン,デー(Slepian,D.)(1978),「扁長回転楕円波動関数、フーリ
エ解析、および不確実性−V(Fourier Analysis,and Uncertainty−V:The Discrete Case)」、ベル・システム・テクニカル・ジャーナル(The Bell System Technical Journal))からなる。N
elはプローブ素子の数であり、B=(dy
0)/(λx
0)である。dはセンサ間の距離であり、λは、送信される音響パルスの波長である。x
0とy
0は、目的の錐体を画定する。
【0041】
一特定特徴にしたがって完全画像であると画定された目的領域では、伝送行列は、扁長回転楕円ベクトルに対応する伝送法を有し、パラメータBは、完全画像を含めるのに十分大きい。
【0042】
この特徴は、有意に1よりも少ない固有値を有するベクトルに対応する発射を除外することで、発射数を減らすことを正当化する。扁長回転楕円ベクトルのベースは、平均二乗誤差の観点から最適である。すなわちベースの短縮に起因するエネルギの損失を最小限にする。このエネルギの損失は、抑制された固有ベクトルに対応する固有値の合計にぴったり対応する。保持される固有ベクトルは、最も高い固有値に対応する固有ベクトルであり、他のベクトルの抑制が、完全画像の取得を損なわないのは、この理由による。
【0043】
本発明の一特定特徴にしたがって高解像度画像は、高画像取得率と高画質とで取得された領域を画定する目的領域の完全データセットから再構成され、残りの画像は、異なる伝送法により低画像取得率で得られたデータセットから再構成されたいわゆる背景領域である。
【0044】
次に撮像領域は、高画像取得率領域と背景領域と呼ばれる2領域に分割される。次に2つの伝送法が選ばれる。前記伝送法は、それぞれの領域の撮像に具体的に適合させる。
高画像取得率領域に割当てられる伝送法は、本発明の伝送法である。高画像取得率領域は、背景領域よりも少ない数の発射を要求するので、背景よりも高い画像取得率で撮像される。
【0045】
目的領域(D1)に対応する合成開口撮像の原理に基づき高解像度画像を再構成する段階は、コヒーレンス測定による低解像度画像の空間重付けを有利に用いる。
用語「空間重付け」は、それぞれのコヒーレンス測定に対してここで生成された、それぞれの画素に対する異なる重付けを意味する。そのような特徴によって、得られる画像は、音波発生領域と無響領域との間でより優れたコントラストを有する。
【0046】
一特定特徴にしたがって方法は、予備画像(ZI)と送受波器(T1〜TN)とのうちの少なくとも一方の移動を測定する予備段階を有し、実行される発射数、したがって選択される固有ベクトル数は、測定された移動の関数として修正されるので、画像取得率を修正する。
【0047】
これらの移動は、様々な公知の方法、たとえば連続的に取得された信号を関連付けることで、プローブ移動の加速度計とジャイロ測定のうちの少なくとも一方によって、あるいは連続再構成画像の輝度を関連付けることで、検出および測定することができる。
【0048】
これは自動適応画像取得率による画像取得方法を得る。移動測定段階はまた、それらの移動が位置する領域も決定することができるので、目的領域を自動的に画定することができる。
【0049】
別の特定特徴にしたがって方法は、オペレータが目的領域を選択する段階を有する。
この方法は、高い時間解像度が小型サイズの領域にわたって要求される超音波心臓撮像
システムのようなシステムにとって特に有益である。
【0050】
本発明はまた、媒体の高解像度超音波画像を取得するデバイスも提供する。デバイスは、N送受波器配列と、連続伝送行列を用いて送受波器を制御するモジュールとを備え、前記デバイスはさらに、
・先に取得した画像において目的領域を画定する手段と;
・目的領域および不要領域に対応する送受波器間相関行列を決定する手段と;
・目的領域に特徴的な行列であって、目的領域の送受波器間相関行列を、不要領域の送受波器間相関行列の逆数に掛けた積から生じる行列を決定する手段と;
・目的領域の特性行列の固有ベクトルおよび固有値を算出する手段であって、それらの対応固有値の関数として分類されるこれらの固有ベクトルは、伝送行列を定義することと;
・K個までの最も高い固有値に関連する、K個の固有ベクトルを選択する手段と;
・選択されたK個の固有ベクトルによって重付けられたK個の波を発射するように構成される制御モジュールであって、それぞれの選択された固有ベクトルは、発射中に送受波器によって送信された信号に重付けし、これら固有ベクトルは、第1部分において、特性行列のK個までの最も高い固有値に関連する固有ベクトル群のうちのK個の固有ベクトルと、第2部分において、実行されない発射に対応するゼロ列とからなる短縮伝送行列を定義することと;
・媒体によって戻された信号を受信する手段と;
・受信行列を構成すべく、ゼロに設定された実行されない発射に対応するデータとともに取得信号を受取り、さらに完全データセットを得るべく伝送行列の逆数を乗じる手段と;
・合成開口超音波検査撮像法におけるように完全データセットから、低解像度画像を抽出する手段と;
・完全データセットから抽出された低解像度画像を、合成開口超音波検査撮像法におけるようにコヒーレント加算することで、目的領域(D1)に対応する高解像度画像を再構成する手段と
を有することを特徴にする。
【0051】
好適実施形態において本発明の方法の様々な段階は、コンピュータプログラム命令によって決定される。
結果的に本発明は、情報媒体でコンピュータプログラムも提供する。プログラムは、コンピュータで実行されるように構成され、本発明の方法の段階を実行するように構成された命令を有する。
【0052】
プログラムは、任意のプログラミング言語を使用できるとともに、ソースコード、オブジェクトコード、またはたとえば部分コンパイル型などのソースコードとオブジェクトコードの中間的なコード型、あるいは任意の他の所望型をとることができる。
【0053】
本発明はまた、上記で言及されるようなコンピュータプログラムの命令を含有するコンピュータ可読情報媒体を提供する。
情報媒体は、プログラムを保存できる任意の構成要素またはデバイスにすることができる。たとえば媒体は、例としてCD−ROMまたは超小型電子回路ROMの読取専用メモリ(ROM)などの記憶手段、あるいは例としてフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)キーなどの磁気記憶手段を有することができる。
【0054】
対照的に情報媒体は、無線によって、あるいは他の手段によって電気または光ケーブルを介して転送され得る電気または光信号などの伝達性媒体にすることができる。本発明の
プログラムは、特にインターネット型ネットワークを介してダウンロードすることができる。
【0055】
また情報媒体は、プログラムが組み込まれた集積回路にすることができ、回路は、問題になっている方法を実行するように構成されるか、その実行において用いられるように構成される。
【0056】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の一非限定実施形態を示す添付図面を参照して以下に示される説明から浮かび上がる。