【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、配線を通す壁の開口に密封閉鎖を施すための配線ダクトであって、一片のエラストマ胴体部材を複数用いて構成された、前記配線に密封接触するエラストマ胴体を備え、このエラストマ胴体を加圧装置で締め付けることで該エラストマ胴体を前記配線に押し付けて密封を形成することが可能であり、前記エラストマ胴体部材は、組み立てられた状態で、前記配線の中心軸線からの径を決定する方向において一連の多数の隣接シェルを形成するように構成されており、前記エラストマ胴体の加圧状態において、前記配線は、前記一連のいずれかの層の前記シェルによって全周を包まれ、前記エラストマ胴体部材の少なくとも1つに、前記径方向において連続した多数のシェルが設けられ、該少なくとも1つのエラストマ胴体部材の前記径方向において隣り合った2つの前記シェルの間に隙間が存在し、当該隙間を形成している前記少なくとも1つのエラストマ胴体部材とは異なるエラストマ胴体部材のシェルが前記隙間に配置され、該隙間には、1つ以上の別の前記エラストマ胴体部材のシェルが、前記径方向において隣り合って複数、配置されている、配線ダクト、によって目的を達成する。
【0009】
櫛のイメージを残すように、櫛状に構成されたエラストマ胴体部材の隣り合った歯の間に、別のエラストマ胴体部材の歯が1つだけではなく、少なくとも2つ存在する。これによると、一方では、エラストマ胴体において配線断面に対する精密交互適合が有効に可能となり、なおかつ他方では、櫛状に構成されたエラストマ胴体部材は、例えばプラスチック材料の射出成形、鋳造、又はプレス成形によって、対応する形状をなすように製造することが可能である。
【0010】
本発明者は、先行技術に係る2つの櫛が互いに噛み合うエラストマ胴体では、薄いシェル厚が実現できないことを確認した。すなわち、相応する隙間の幅もシェル厚と等しく縮小しなければならないので、例えば、シェル厚が0.5mmのエラストマ胴体を製造するためには、この幅の隙間を設けなければならない。つまり、対応する成形型において、これらの隙間に対するネガ像である中間壁の厚みもたったの0.5mmである。その一方で同時に、シェル、従って中間壁も、配線方向の寸法が一般に数センチメートルある。例えば射出成形のような一部のプラスチック成形工程では成形型に高圧が加えられるので、これが、本発明者にとっては、中間壁の変形を危惧する理由となる。また、当該薄い中間壁は影響を受けやすいので、例えば金型からの取り出し時など、常圧の工程でも変形を生じる可能性がある。金型からの取り出しを簡単にするため、中間壁がその自由端に向かってテーパ状になっている場合、中間壁の厚みがさらに減少、例えば上記例の場合わずか0.3mmに減少し得るので、より可能性が高くなる。
【0011】
櫛状に構成されたエラストマ胴体部材の隙間において径方向に互いに隣接する複数のシェルを本発明に従って設けることにより、該隙間及びこれに対応する成形型中の中間壁は、相応してより強度を保つことが可能になる。したがって、成形型で薄いシェルを製造するのに好都合である。
【0012】
本発明の思想において、シェルは、径方向における延びが配線及び周方向より実質的に小さい。本発明は、ケーブル及び円形断面を持つ壁開口に制限されるものではないので、シェルは、必ずしも(円筒状の)湾曲面に倣う必要はない。例えば矩形断面の場合は、平面形状にすることも可能である。選択的に、ケーブルを横切る方向で切断可能な1つのシェルによっても、あるいは、周方向において互いに隣り合わせた複数の、すなわち少なくとも2つの、シェルによっても、層を形成することが可能である。円形断面をもつ配線の場合、シェルは回転胴体を形成可能であるし、あるいは、複数のシェルが一緒になって1つの層を形成する場合には、シェルは、配線方向に沿った共通の回転軸を有する層の分節をなし得る。
【0013】
配線は、シェル、又は層の各シェルによって全周を包まれる。これは、加圧されたエラストマ胴体に対して配線方向に関する場合に部分的に当てはまるものの、緩く組み立てられている場合には必ずしも当てはまらない。この場合、例えばエラストマ胴体の組み立て、すなわち、シェルどうしの押しつけを容易にする隙間がなお必ず存在し得る。
【0014】
本開示全体において、配線ダクト、配線ダクトのセット又はシステム、それらの製造工程、及び本発明の適用態様の各説明は、細かく区別されていない。本開示全体がこれらのカテゴリの全てに関係すると無条件に了解されるべきである。殊に、組み立てに関する工程の特徴に関しては、明瞭性の点から実施形態も参照される。
【0015】
念のために言っておくと、例えば配線方向や配線からの距離といった配線に関する詳細は、配線がエラストマ胴体によって実際に案内されていなければならないことを意味してはおらず、例えば配線を通してエラストマ胴体を選択的に加圧したときなどの、形状や特性を表わす。
【0016】
本発明に係る一連の層は、様々な配線断面に適合させるためと、様々な壁開口に関してエラストマ胴体の外周を適合させるための両方のために、設けることが可能である。しかしながら以下では、分かりやすくするため、主として配線断面への適合について説明するものとする。
【0017】
前述の利点−「一方では、金型で製造することが可能なエラストマ胴体部材、他方では、シェル厚の減少」−は、例えば、櫛状に(その断面において)構成された1つのエラストマ胴体部材で、その1つ以上の隙間の中に、例えば、周方向の切断で互いに分離される別のエラストマ胴体部材の2つの従来型形成のシェルを保持させることにより、達成可能である。この手法によれば、相手方のピースも含めて1回の切断で4つまでの薄いシェルを利用可能となり、切断工程が簡単になる。
【0018】
隙間内で径方向において互いに隣り合ったシェル、すなわち、径方向において互いに前後するシェルが、それぞれ別のエラストマ胴体部材に属するのが好ましいが、このことが周方向において連続するシェルに必須とされるわけではない。径方向において一連のそれぞれ隣り合ったシェル全部が、それぞれ異なるエラストマ胴体部材に属するのであれば、例えば周方向に施す切断を一切行わずに済ませることも可能である。この場合、特に、エラストマ胴体部材の最適時間及びコストでの製造が可能になる。
【0019】
例えば、櫛状に構成される(断面において)エラストマ胴体部材は、隙間に対応する分離壁を備えた金型でプラスチック材料から射出成形、鋳造、又はプレス成形することが可能である。ばらばらのシェル、例えば封鎖リングを、このような加工で提供し、それぞれ隙間内に配置することが可能である。
【0020】
好ましくは、一連のシェルの全シェルは、複数個ずつそれぞれ1つのエラストマ胴体部材に属する。この場合は個々のばらばらのシェルは存在しない。これにより、独立部品点数が少なくなるので、エラストマ胴体を組み立てるときにエラストマ胴体部材の取り扱いが簡単になり、作業員によるエラストマ胴体の取り扱いも簡単になる。
【0021】
特に、1つのエラストマ胴体に複数のシェルが設けられた態様−このような態様だけではないが−の場合、エラストマ胴体部材には、機能性添加剤、すなわち、例えばEMC遮蔽、X線吸収、又は防火特性改善のための固体粒子を加えることも可能である。
【0022】
他の態様において、エラストマ胴体部材の異なる隙間に配置されるシェルは、シェルの配線方向の端部に設けられ且つシェルの端面全域には広がっていない材料ブリッジ(以下では簡潔に「ブリッジ」と呼ぶ)によって連結されてエラストマ胴体部材を形成する、すなわち、一つの部品として形成される。配線方向において見ると、こうしたエラストマ胴体部材の場合、シェルを連結するブリッジにもかかわらず、シェル間の隙間が部分的に見える。また、ブリッジの正確な配置により、本発明に係るエラストマ胴体を組み立てる際、この部分的に覆われていない端面に他のエラストマ胴体部材のシェルを「差し入れ」、相応に狭いブリッジを越えて配線方向へ隙間に押し込むことも可能になる。
【0023】
この押し込みに際し、ブリッジは弾性で少し逸らすことも可能である。また、押し込まれるシェルは、隣り合うシェルに比べて周方向に関し少し「短く」なるようにし、少なくとも、補足的に「より長い」シェルと共に、又は、エラストマ胴体の加圧によって、配線全周を包むように構成することも可能である。
【0024】
好ましくは、径方向に関して、各隙間のシェルの1つだけが同じブリッジによって他の隙間のシェルと連結される。さらに好ましくは、各ブリッジによってシェルの全てが連結され、すなわちばらばらのシェルが存在しない。
【0025】
同じ製造工程でシェルと共に形成されるブリッジ、すなわち、シェルに直接くっついているか、又はシェルと共に成形されるブリッジが好ましい。このときにはブリッジに対応するキャビティが成形型に設けられ、これは、エラストマ胴体部材のシェルの全てを連結するので、例えば射出成形工程における射出チャネルのような、シェルつまり対応するキャビティにプラスチック材料を分配するチャネルとして同時に機能することが可能である、という利点をもつ。
【0026】
さらに他の態様において、ブリッジの1以上の分節が、該ブリッジにより連結されるシェルの配線方向の端面に対し引っ込んでシェル間をジャンプするように配置され、当該ブリッジは、端面上に「位置」しない。このブリッジの分節に対応する凹所が隣のシェルの端面に設けられ、当該分節がその凹所中へ収容される。例えばシェル間にだけブリッジが設けられていれば、該ブリッジは、組み立て後のエラストマ胴体の容積内に収まり、したがって、最適には、エラストマ胴体の端面と面一になる。
【0027】
ブリッジが、自身の連結するシェルの端面に配置されるか、あるいは、少なくとも部分的にシェル間に配設されるか、いずれの場合でも、エラストマ胴体の組み立て中、2つの別のエラストマ胴体部材に設けられたシェルを配線方向で互いに押し込むときに、ブリッジがストッパの働きをするという利点がある。
【0028】
さらに他の態様において、ブリッジの端面にはマーク、好ましくはノッチが設けられる。こうしたマークによって、例えば、径方向における特定の位置、すなわち、例えば特定の直径を識別することもできるし、あるいは、ブリッジを切断すべき分離線を指定することも可能になる。
【0029】
通常は、工具無しで引き裂くことができるようにブリッジを設計することも可能であるし、あるいは、切断に工具を要するようにブリッジを構成することも可能である。
【0030】
一態様において、一連の各層において少なくとも2つのシェルが層毎に少なくとも2つの境界面にあって互いに対向し、各層のこれら2つの境界面は、他の層のそれぞれ2つの境界面と共に、一連の層を及び好ましくはエラストマ胴体全体を分割し、配線を通す分割面を形成する。したがって分割面は、一連の層を一緒に持ち上げることを可能にする個々の境界面から生成される。ただし、境界面は必ずしも平面内に位置する必要はなく、例えば周方向において互いにオフセットした境界面であれば、分割面は、境界面を連結する境界面部分−隣り合った層がその側面で互いに隣接する−を含めて形成することが可能である。
【0031】
正確にこのような分割面がエラストマ胴体に設けられる場合、エラストマ胴体は、2つの(対称である必要はない)分割部分に分割されるのが好ましい。対応ダクトのはめ込みに際し、各分割部分において、通す配線の断面に応じ、それぞれの分割面から数えて特定数のシェルを取り除く。そして、当該2つの分割部分を配線に対し配置して、残りのシェルで配線を取り巻く。
【0032】
この態様は、また、複数の配線ダクトが共に挿入される広径の壁開口の密封に特に適している。しかしながら、以下の説明は、これとは関係なく広く、本発明に係る複数のダクトに当てはまる。
【0033】
上記個々の配線ダクトは、配線方向に垂直な断面積を有しており、壁開口の断面積に対して、当該ダクトを一緒に用いて、又は少なくとも1つの加圧装置も共に用いて、密封することができる。前者の場合、例えばダクト自身の各加圧装置によって、エラストマ胴体を例えば配線方向において締め付けることが可能である。エラストマ胴体と共に壁開口に挿入される加圧装置の場合、エラストマ胴体は、例えば配線方向を横切る方向に加圧することが可能であり、典型的には、少なくとも2つのエラストマ胴体用に加圧装置が設けられる。
【0034】
本発明に係るエラストマ胴体は、実際に通す配線よりも多く設けることが可能である。配線を通さないエラストマ胴体は、一連のシェルの中心に位置する目隠しプラグによって閉鎖することが可能である。目隠しプラグは、シェルを備えるエラストマ胴体部材と一体成形もできる。このようなエラストマ胴体は、大きい壁開口の場合において考えられるだけではなく、本発明の他の態様でも採用可能である。
【0035】
エラストマ胴体を全体的に分割する分割面の場合、エラストマ胴体のシェルを互いにつなぐブリッジは、配線方向を横切る方向に、ブリッジで連結される全シェルの幅にわたって延びているのが好ましい。このようにしてブリッジが分割面に隣接し、シェルは、その角でブリッジによって保持される。この結果、シェルが安定し、エラストマ胴体を簡単に互いに押し込める(図参照)。シェルは、いずれの場合も、ブリッジによって周方向への回転、場合によっては配線方向を横切る方向へ扇形に広がることに対しても安定化する。
【0036】
分割面の存在は、原則的にさらなる分割面を除外するものではなく、例えば、2つの分割面によってエラストマ胴体を4つのエラストマ胴体部材に細分することも可能である。このことに関わらず、単純化のため、主としてエラストマ胴体の二分割に言及する。さらに言えば、エラストマ胴体の分割部分は、同じサイズである必要もない。
【0037】
さらに他の態様において、第1のブリッジを備えるエラストマ胴体部材以外のエラストマ胴体部材に、その第1のブリッジに隣接するブリッジが設けられている。当該第2のブリッジは、この場合、第1のエラストマ胴体部材のシェルの端面にある対応する凹部を通って延在するのが好ましい。この態様の場合、シェルの全てを直接的に角で保持できるわけではなく、少なくとも角のできるだけ近くで(他のブリッジの寸法に応じて角から少し間隔をあけて)保持することが可能である。
【0038】
さらに他の態様において、径方向に複数のシェルをそれぞれ備えた少なくとも2つのエラストマ胴体部材において、その一連のシェルの外側にエラストマ胴体部材区域が設けられる。エラストマ胴体部材区域は、エラストマ胴体の外周に位置して配線方向に関し連続する密封面を形成する。このエラストマ胴体部材区域は、一連のシェルと共に、同じ成形型で、1ステップで製造されるのが好ましい。これにより、一つのエラストマ胴体部材によって、配線に向いた密封面と外側密封面の両方が得られる。
【0039】
例えば、エラストマ胴体が分割面によって二分割される前述の態様の場合、外側密封面は、周方向と配線方向の両方でそれぞれ2つのエラストマ胴体部材によって、すなわち、全体として4つのエラストマ胴体部材によって、形成される。
【0040】
この場合、エラストマ胴体部材区域の1つに、配線方向に突き出し、シェルと平行に形成される突出部を設けるのが良い。突出部は、他のエラストマ胴体部材区域とこれと一体形成のシェルとの間の隙間に達し、当隙間を全体的に埋める。この隙間の幅は、複数のシェルによって埋められる他の隙間に対応させることが可能であり、この場合、突出部の厚さも、複数のシェル厚に対応する。エラストマ胴体部材区域は、配線方向への押し込みで、当該プラグ係合によって連結される。
【0041】
さらに他の態様において、エラストマ胴体部材区域は、2つのうちの一方において配線方向を横切る方向に(垂直である必要はない)突き出した突出部と、他方におけるこれに対応した凹部によって、さらにスナップ留めされる、すなわち、配線方向に離れる予期せぬ滑動に対抗して固定される。
【0042】
上述の、配線方向に延びる突出部と配線方向を横切る方向に延びる突出部の両方、さらには凹部もまた、例えば、成形型の相応するキャビティ又は相応する金型によって、対応するエラストマ胴体部材に直接成形することが可能であり、したがって、その製造について追加製造ステップを必要としないのが好都合である。
【0043】
これは、分割面によって分割されるエラストマ胴体に関連し、主請求項の特徴とは別の発明を構成し、本形式で開示するのが望ましい別の態様にも当てはまる。分割面によって互いに分割されるエラストマ胴体分割部分は、この場合、2つのエラストマ胴体分割部分間のプラグ係合によって互いに連結することが可能である。
【0044】
本発明に係るエラストマ胴体分割部分間のプラグ係合は、例えば、一方のエラストマ胴体分割部分における突部と、該突部を収容する他方のエラストマ胴体分割部分における受容部、好ましくは突出部と相応の受容部とによって、設けることが可能であり、突部と受容部のアンダーカット無しでも、配線方向における分割部分相互のずれが防止される。このプラグ係合は、突出部と受容部を、それぞれ、傾斜した側部(例えば、分割面に対して、あるいは、互いに対する側部の延伸)をもつように構成し、アンダーカットによって径方向に関してエラストマ胴体分割部分を保持可能とすると、好ましい。例えば、自由端に向かって分岐するピン、あるいは、これに相応するように、例えば球状アタッチメントのように形成された自由端を備えるピンが、対応する受容部に入り込む。
【0045】
係合要素は、組み立てられたエラストマ胴体内に収まるように構成することもできるし、また、エラストマ胴体の端面に設けられるように構成することも可能である。エラストマ胴体分割部分において径方向に分割面の上に延びる突部は、配線方向に関して例えばストッパを構成する。例えば、突部の先端が配線方向の他のエラストマ胴体分割部分内に入る場合も、径方向に関して2つの分割部分を保持する。こうしたプラグ係合は、本開示全般にわたり、必要に応じ、対応する力を加えることによって再び分割できると理解すべきである。
【0046】
取付工は、例えば貫通孔の寸法を適合させた後、配線に被せて2つの分割部分を連結し、これらを一つにして配線を密封することが可能である。選択的に後で追加することが可能な加圧装置とは関係なく、プラグ係合によって分割部分が連結され、エラストマ胴体は、既に壁開口又はフレーム内に全体として案内可能なので、取り扱う必要のある個別部品が少なくなる。これにより、1本の配線を密封する操作が容易になるが、複数の配線がある場合に、各配線にそれぞれエラストマ胴体を割り当てて分割部分を連結するのに特に有効であり、エラストマ胴体分割部分はその後交換する必要がない。さらに、連結済みのエラストマ胴体分割部分は、フレームへ挿入すれば、加圧する前に滑り落ちたり、抜け落ちたりすることなくしっかりと固定される。
【0047】
また既述したように、係合要素は、好ましくは成形工程でエラストマ胴体部材に直接成形することが可能なので、とりわけ製造が容易である。
【0048】
このことは、ほぼ他の態様にも当てはまり、これが、エラストマ胴体部材としては射出成形部品、プレス成形部品、又はトランスファプレス成形部品が適する理由である。すなわち製造にあたり、流動性のプラスチック材料がキャビティに分配されるか又は塑性変形可能な材料が金型でプレス加工され、あるいは、金型においてプラスチック材料が発泡成形、押し出し成形、又はブロー成形される。
【0049】
こうして製造されるエラストマ胴体部材は、厚さが好ましくは1、(0.5)、(0.25)mm以下(の昇順)である2つのシェルと、径方向の幅が少なくとも(0.5)、1、2mm(の昇順)である隙間と、を有しているのが好ましい。
【0050】
さらに他の態様は、分割面によって分割されるエラストマ胴体分割部分の相互保持に関するものであり、具体的に、第1の層の2つのシェルを周方向において互いに分割している境界面の構成に関し、径方向において内側に位置する隣の第2の層の分割面において隣に続く境界面に対する構成に関する。これら2つの境界面は、周方向において互いにオフセットしていて、境界面によって互いに分離された第1の層の少なくとも2つのシェルのうちの1つが、その内側面で、第2の層の少なくとも2つのシェルの外側面に対して押し付けられるようになっている(そして、境界面によって互いに分離された第2の層の少なくとも2つのシェルのうちの1つが、その外側面で、第1の層の少なくとも2つのシェルの内側面に対して押し付けられる)。したがって、シェルは、それぞれ、一つのエラストマ胴体分割部分の隣り合ったシェルの側面に押し付けられるだけではなく、他のエラストマ胴体分割部分のシェルの側面にも部分的に押し付けられる。このように互い違いに噛み合うシェルによって、2つのエラストマ胴体分割部分が径方向に連係して連結される。これは、例えば側面間に静摩擦が生じる場合など、分割面に対し垂直な方向における特定の状況下で適用される。
【0051】
分割面において相前後する隣り合った層の境界面は、周方向において、その厚さの少なくとも0.25倍、好ましくは、少なくとも(0.5)、1、又は、2倍ほど互いに対しオフセットしているのが良い。
【0052】
本発明は、本発明に係る配線ダクトを複数備えたセットにも関連する。これら配線ダクトは互いに異なってはいるが、セット内の他の配線ダクトのエラストマ胴体と同じエラストマ胴体をいずれも備える。また、本発明に係るエラストマ胴体を複数備えたセットであって、互いに異なるが、セット内の他のエラストマ胴体のエラストマ胴体部材と同じエラストマ胴体部材をいずれも備えたセットも考えられる。
【0053】
本発明は、また、配線を通す壁の開口に密封閉鎖を施すためのエラストマ胴体及び配線ダクトの少なくともいずれかの製造工程に関する。組み立てられると一連の多数の隣接シェルを形成するエラストマ胴体は、後に加圧装置で締め付けられて配線に押し付けられる。以下のステップで製造が実施される。
径方向に相前後する複数のシェルを備え、その隣り合った2つのシェル間に隙間を有する、一片のエラストマ胴体部材を形成する。径方向におけるその隙間の幅は、径方向で測定される2つ以上のシェルの厚さの合計に少なくとも相当する。
前記隙間に、1つ以上の別のエラストマ胴体部材に設けられた2つ以上のシェルを入れ、組み立て後のエラストマ胴体が、径方向に互いに隣接した一連の多数のシェルを備えるようにする。
【0054】
本発明は、また、ビルの壁、船舶の壁、又は住宅の壁における電力、ガス、水、熱、通信、信号、その他の種類のデータの配線を密封するために対応する配線ダクトの用途にも関連する。
【0055】
以下において、実施形態によって本発明を詳述する。個々の特徴を本発明に従って様々に組み合わせることも可能であり、本発明のカテゴリの全てに当然結びつく。