(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の発電手段の発電可能量を記憶する第1の記憶部と、前記複数の発電手段の単位発電量あたりの発電費用を記憶する第2の記憶部と、前記単位発電量あたりの発電費用が低い発電手段が優先的に稼働するように設定された、前記複数の発電手段に対する稼働優先度を記憶する第4の記憶部と、電力取引の対象とする期間における単位発電量あたりの取引価格を記憶する第5の記憶部と、前記発電手段の電力脱落の確率分布データを記憶する第6の記憶部と、過去の気温の実測値を測定日時を示す情報と対応付けて記憶する第7の記憶部と、過去の電力需要量の実測値を測定日時を示す情報と対応付けて記憶する第8の記憶部と、を備えて構成される予測システムによる、前記電力取引における利益値を最大化する取引量を予測する予測方法であって、
前記予測システムが、複数の発電手段の発電可能量と、前記複数の発電手段の単位発電量あたりの発電費用と、前記複数の発電手段に対する稼働優先度とに基づいて、電力需要量と発電費用の対応関係を示す限界費用線に関するデータを算出する発電予定算出工程と、
前記予測システムが、前記気温の実測値と前記電力需要量の実測値と、に基づいて、気温と17℃〜19℃である所定の標準気温との差と、前記差の二乗と、を説明変数として含む、気温と電力需要量との関係を表す回帰式を算出する工程と、
前記予測システムが、前記気温の実測値に基づいて、前記電力取引の対象期間における気温の確率分布データを求める工程と、
前記予測システムが、前記回帰式と前記気温の実測値の確率分布データとに基づいて、前記電力取引の対象期間における電力需要量の確率分布データを求める工程と、
前記予測システムが、前記限界費用線に関するデータ及び電力需要量の確率分布データに基づいて算出される所定量の電力取引により生ずる発電費用の変化費用と、前記取引価格に関するデータに基づいて算出される所定量の電力取引により生ずる取引収支との差が、最大となる前記所定量を算出する最適取引量算出工程と、
を有することを特徴とする予測方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
<第1実施形態>
===予測システムについて===
本実施形態は、各発電手段について、単位発電量あたりの発電費用等に関する特性を把握して、それらの特性と電力取引の取引情報に基づいて、電力取引における利益値を最大にする取引量を予測するものである。
【0012】
発電費用は、マストラン電源であるか否か、その発電手段の稼働率、そのときの発電に要する燃料費用等に応じて種々変動する。したがって、本実施形態は、電力取引において利益値を最大化するためには、それらの特性の把握は不可欠であるという理解に基づくものである。尚、以下、単位発電量(例えば1MWh/h)あたりに必要となる発電費用を「限界費用」と言う。また、電力取引における利益値を最大にする取引量を「最適取引量」と言う。
【0013】
図1に、本実施形態における、電力取引の際の最適取引量の予測を実現する予測システムの一例を示す。本実施形態に係る予測システムは、予測装置100と取引情報提供装置200等から構成される。両装置は、LAN接続等による通信網300を利用して、データの送受信を行う。
【0014】
予測装置100は、使用者が操作を行うコンピュータである。また、取引情報提供装置200は、予測装置100からのリクエストに応じてデータを送信するコンピュータである。本実施形態に係る予測装置100は、取引情報提供装置200から、取引価格等に関する取引情報を取得することで、利益値を予測する構成としている。
【0015】
図2Aに、本実施形態の予測装置100のハードウェア構成を示す。
【0016】
予測装置100は、制御手段100A、記憶手段100B、通信手段100C、入力手段100D、表示手段100Eを有している。
【0017】
制御手段100Aは、CPU等であり、バス等を介して、記憶手段100B、通信手段100C、入力手段100D、表示手段100Eと接続されている。そして、制御手段100Aは、記憶手段100Bに記憶されたコンピュータプログラムに基づいて、記憶手段100B、通信手段100C、入力手段100D、表示手段100Eとデータ通信を行うとともに、それらの動作を制御する。
【0018】
記憶手段100Bは、揮発性メモリー(RAM)、不揮発性メモリー(フラッシュメモリー)等からなる。そして、記憶手段100Bには、予測装置100を制御するためのコンピュータプログラム、後述する発電手段に関するデータM1、予測電力需要量に関するデータM2等が記憶されている。尚、記憶手段100Bは、後述する回帰モデル、各機能部で計算された中間データ、最終データ、取得した分析対象データ等を記憶する記憶部も有している(図示せず)。
【0019】
通信手段100Cは、通信コントローラ等であり、有線や無線によるLAN接続による通信網300等を利用して、取引情報提供装置200とデータの送受信を行う。
【0020】
入力手段100Dは、スイッチ、タッチパネル等であり、予測装置100に対する使用者の操作指示を受付ける。
【0021】
表示手段100Eは、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ等であり、後述する予測気温の確率分布等を表示する。
【0022】
図2Bに、本実施形態の取引情報提供装置200のハードウェア構成を示す。
【0023】
取引情報提供装置200は、制御手段200A、記憶手段200B、通信手段200Cを有している。
【0024】
制御手段200Aは、CPU等であり、バス等を介して、記憶手段200B、通信手段200Cと接続されている。そして、制御手段200Aは、記憶手段200Bに記憶されたコンピュータプログラムに基づいて、通信手段200C、記憶手段200Bとデータ通信を行うとともに、それらの動作を制御する。
【0025】
記憶手段200Bは、揮発性メモリー(RAM)、不揮発性メモリー(フラッシュメモリー)等からなる。そして、記憶手段200Bには、取引情報提供装置200を制御するためのコンピュータプログラム、後述する取引情報に関するデータ等が記憶されている。
【0026】
通信手段200Cは、通信コントローラ等であり、有線や無線によるLAN接続による通信網300等を利用して、予測装置100とデータの送受信を行う。
【0027】
図3Aに、本実施形態の予測装置100の記憶手段100Bに記憶された発電手段に関するデータテーブルM1の一例を示す。
【0028】
発電手段に関するデータは、電力供給者が有する複数の発電手段についての最低発電量、発電可能量、限界費用から構成される。
【0029】
電力供給者は、水力発電、太陽光発電、原子力発電、火力発電等、複数の発電手段を有している。そして、それらの限界費用、発電可能量等は、発電手段の種類、又、発電効率等の性能により異なっている。例えば、原子力発電は、稼働の停止が困難であるため、常に稼働させる発電手段として予定されることになる。一方、火力発電は、燃料価格等に応じて、限界費用が高騰する場合もある。その他、水力発電は、他の発電手段に比して、限界費用が安価である等の特徴もある。
【0030】
図3Aに示す、発電手段A、B、C・・・は、それらの発電手段の一つを表す。また、最低発電量(例えば1MWh/h)は、マストラン電源(上記した原子力発電のように、発電費用等の観点から、運用上稼働の停止が困難であり、常に稼働させる必要のある発電手段)による発電量である。また、発電可能量(例えば1MWh/h)は、それらの各発電手段の発電能力の限界値である。また、限界費用は、その発電手段を稼働させるとき、単位発電量(例えば1MWh)あたりに必要となる発電費用を表す。
【0031】
ここで、限界費用は、その稼働率、すなわち当該発電手段の発電能力の限界値のうち、発揮させている発電能力に応じても異なっている。具体的には、発電手段の限界費用は、稼働率が高くなるほど上昇する。したがって、利益を最大化するためには、当該データテーブルM1に当該稼働率の変化に応じた限界費用についても記憶しておく方がよい。
図3Aのデータテーブルで、発電手段A、B、C・・の限界費用について、A(x1)、B(x2)、C(x3)・・・と記載しているのは、各発電手段の稼働率x1、x2、x3・・・に応じた限界費用関数を表す。尚、その記憶形式は、テーブル形式等であってもよい。
【0032】
図3Bに、本実施形態の予測装置100の記憶手段100Bに記憶された予測電力需要に関するデータテーブルM2の一例を示す。
【0033】
予測需要に関するデータは、本予測装置100の使用者である電力供給者が、所定の時間帯に供給する必要がある電力需要量の予測値(例えば100MWh)に関するデータである。当該電力需要量は、時間帯に応じて異なっている。例えば、昼は工場設備が稼働しているため、多くの電力需要が予測されるが、夜は工場設備の稼働が少ないため、電力需要が減ると予測される。このデータは、例えば、過去の同様の条件の日において、必要とされた電力需要量に基づいて算出されたデータが用いられる。過去の同様の条件とは、時刻、季節、曜日、天気等に関する条件である。
【0034】
尚、データテーブルM2には、1時間ごとに予測される電力需要量を記憶されている。
【0035】
図3Cに、本実施形態の取引情報提供装置200の記憶手段200Bに記憶された取引情報に関するデータテーブルM3の一例を示す。
【0036】
取引情報に関するデータは、取引の対象となっている所定時間帯(例えば11時〜12時)の単位発電量(例えば1MWh/h)あたりの取引価格に関するデータ、及び取引可能量に関するデータである。ここで、取引情報に関するデータは、確定値であっても予測値であってもよい。電力取引は、当該取引価格に基づいて行われる。具体的には、電力供給者が、所定量の電力の売りを行った場合、当該取引価格に基づいて、電力供給者は、その売り分を余分に電力供給する代わりに、その売り分を収益として得ることができる。同様に、電力供給者が、所定量の電力の買いを行った場合、当該取引価格に基づいて、電力供給者は、その買い分の電力供給を取引対象者から受ける代わりに、その買い分の金額を支払うという態様である。また、取引可能量は、電力供給者が電力取引において取引が可能な上限値を表す。
【0037】
尚、データテーブルM3には、1時間ごとの取引価格及び取引可能量が記憶されている。
【0038】
また、取引可能量に関するデータは、電力供給者の発電手段の運用上の都合で設定するものであってもよい。例えば、上述したとおり、マストラン電源は、常時稼働させておくことが前提となっているため、当該マストラン電源の稼働による電力分は取引不能として設定しておいてもよい。また、取引可能量に関するデータは、必ずしも設定されていなくともよい。
【0039】
図4に、本実施形態の予測装置100の機能構成の一例を示す。
【0040】
予測装置100は、記憶手段100Bに記憶されたコンピュータプログラム、及び上述したハードウェア構成(100A〜100E)により、以下に説明する取得部101、発電予定算出部102、最適取引量算出部103、提示部104の機能を実現する。
【0041】
取得部101は、他の装置とデータ通信を行って、データを取得する。本実施形態では、取引情報提供装置200から取引情報に関するデータを取得する。
【0042】
発電予定算出部102は、発電手段に関するデータM1(発電手段の発電可能量に関するデータ、発電手段の限界費用に関するデータ)と、設定された複数の発電手段に対する稼働優先度とに基づいて、限界費用線に関するデータを算出する。限界費用線に関するデータとは、必要とする発電量(電力需要量)と対応させて、当該発電量を補うためにどのように発電手段を稼働させるかについて特定したデータであり、後述する限界費用線F(W)に対応するデータである。
【0043】
最適取引量算出部103は、算出した限界費用線に関するデータ、電力需要量の予測値に基づいて算出される所定量の電力取引を行った場合の発電費用の変化費用と、取引情報に関するデータに基づいて算出される所定量の電力取引を行った場合の取引収支との差が最大となるときの取引量を最適取引量として算出する。
===予測システムの動作について===
次に、予測システムの動作の一例について説明する。
【0044】
図5に、本実施形態のフローチャートを示す。
【0045】
(S1)は、予測装置100の使用者が、予測対象の期間(例えば、2013/2/1の7時〜8時等)を入力する工程である。このとき、予測装置100の使用者は、各発電手段の状況等を考慮して、発電手段の稼働優先度を設定する。
【0046】
図6に、本実施形態における、マストラン電源に関する優先度、限界費用に関する優先度に関するデータテーブルM4を示す。発電予定算出部102は、当該稼働優先度の高い発電手段から順に稼働するように限界費用線に関するデータを算出する。尚、マストラン電源に関する優先度は、限界費用に関する優先度よりも高い優先度が設定されている。
【0047】
ここで、各発電手段に設定する限界費用に関する優先度は、当該発電手段の稼働率に応じて変動するように設定してもよい。これは、発電手段は稼働率に応じて発電効率が変動し、それに応じて限界費用も変動するという理解に基づくものである。
図7に、各発電手段の稼働率に応じた限界費用の一例を示す。
図7に示すとおり、多くの発電手段は稼働率に応じて発電効率が低下し、限界費用が上昇する。これより、各発電手段の稼働率と限界費用の関係線の交点で、優先度を変更するものとしてもよい。
【0048】
(S2)は、予測装置100が、取引情報提供装置200から、取得情報を取得する工程である。具体的には、予測装置100の取得部101は、取引情報提供装置200に対して、予測対象の期間に関する取得価格、及び取引可能量をリクエストする。そして、取引情報提供装置200は、当該リクエストを受けて、取引情報に関するデータテーブルM3より予測対象の期間に関する取得価格及び取引可能量を、予測装置100に送信する。
【0049】
(S3)は、発電予定算出部102が、発電手段に関するデータM1、稼働優先度に関するデータM4に基づいて、電力取引の対象となる期間において、複数の発電手段をどのように稼働させるか、すなわち限界費用線に関するデータを算出する工程である。限界費用線に関するデータとは、必要とする発電量(電力需要量)と対応させて、当該発電量を補うためにどのように発電手段を稼働させるについて特定したデータであり、後述する限界費用線F(W)に対応するデータである。尚、限界費用線に関するデータは、発電量と発電費用を対応付けるデータであればよく、関数式で表されるものに限らず、発電量と発電費用を対応させてテーブル形式で記憶されたデータ等であってもよい。
【0050】
以下に、(S3)で算出する限界費用線に関するデータをグラフ化した
図8A〜
図8Cにより説明する。
【0051】
図8Aは、発電手段に関するデータM1、及び発電手段の稼働優先度に関するデータM2より算出された限界費用線である。横軸は必要とする発電量(電力需要量)を表し、縦軸はそれぞれの発電手段の限界費用を表している。右方向にいくほど発電量(電力需要量)が大きいことを表し、上方向にいくほど限界費用が大きいことを表す。また、限界費用線下の区画は、稼働させる発電手段の違いを表している(
図8B、
図8Cも同様)。ここで、マストラン電源に関する優先度を限界費用に関する優先度よりも高い優先度として設定しているため、限界費用線は、マストラン電源優先領域Aと、限界費用優先領域Bの2領域から構成されている。すなわち、発電手段A、B、Cの限界費用を一番低い発電手段Dよりも先に稼働させることを表している。
【0052】
(S4)は、最適取引量算出部103が、所定量Cの電力取引を行った場合の発電費用の変化費用を算出する工程である。
【0053】
ここで、
図8B、
図8Cにより、所定量Cの電力取引を行った場合の発電費用の変化費用について説明する。
図8Bは、電力需要量がN0である場合に必要となる発電費用を表している。予測される電力需要量がN0である場合、
図8Bの斜線で示す領域の面積の合計値が、必要となる発電費用となる。このとき発電費用は、式(1)より表すことができる。
【0054】
【数1】
ここで、F(W)は、発電量と対応した限界費用を示す限界費用線に関するデータを表す。上述したとおり、F(W)は、各発電手段の稼働率と限界費用に関するデータA(x1)、B(x2)、C(x3)・・、稼働優先度、発電可能量等に基づいて算出される(x1、x2・・・は、稼働率を表す)。
【0055】
図8Cに、電力取引の対象となる期間に取引量Cの取引(電力買い)を行った場合の発電費用の変化費用(減少)の一例を示す。
図8Cより、取引量Cの電力買いを行った場合の発電費用の変化費用は、F(W)がW軸について需要予測値N0と取引後N0−Cで囲まれる領域である。具体的には、発電費用の変化費用は、式(2)より表すことができる。
【0056】
【数2】
(S5)は、最適取引量算出部103が、取引情報に関するデータM3に基づいて、電力取引の対象となる期間に所定量の取引を行った場合の取引収支を算出する工程である。具体的には、電力取引の対象となる期間の取引価格が一定値Rである場合、所定量Cの取引(電力買い)を行った場合の取引収支(支払額)は、式(3)より表すことができる。
【0057】
【数3】
(S6)は、最適取引量算出部103が、(S4)において算出した所定量の取引を行った場合の発電費用の変化費用と、(S5)において算出した所定量の取引を行った場合の取引収支の差に基づいて、最適取引量を算出する工程である。具体的には、電力買いの場合、発電費用の変化費用(減少)から取引収支(支払額)を減じた差分が大きくなるほど、電力供給者にとって最大利益となる。
【0058】
すなわち、電力供給者の利益額Yは、式(2)、式(3)より、電力買いの場合は式(4)と表せる。
【0059】
【数4】
ここで、Yが最大となるC’が最適取引量となる。例えば、最適取引量C’は、Cに係る微分方程式により算出することができる。尚、(S4)、(S5)の工程は、実質的に(S6)の工程に集約されるから省略してもよい。
【0060】
尚、最適取引量算出部103は、発電費用の変化費用(減少)から取引収支(支払額)を減じた差分Yが、電力供給者にとって、プラス額となる方向で、最大となるC’を最適取引量として選択する。
【0061】
また、取引情報として、取引可能量が設定されている場合、当該取引可能量を上限値として、最適取引量を算出する。
【0062】
これより、最適取引量算出部103は、電力取引の電力買いに関して、電力供給者が最大利益を得ることができるように、最適取引量を算出することになる。
【0063】
(S7)は、提示部104が、(S5)において算出された電力取引における最適取引量を予測装置100の使用者が認識できるように所定の画像処理を施して提示する工程である。例えば、提示部104は、取引対象の時間帯における発電手段と稼働率、及び最適取引量をテキストデータとして出力する。
【0064】
このように、本実施形態によれば、発電費用を考慮して、利益値を最大にする電力取引の最適取引量の算出することができる。
【0065】
尚、上記実施形態では、電力買いの場合について説明したが、電力売りの場合についても同様である。すなわち、電力売りの場合、取引収支(収入額)から発電費用の変化費用(増額)を減じた差分が最大となるとき、電力供給者にとって最大利益となる。このとき、利益額Yは、式(5)と表せる。そして、Yが最大となるC’を最適取引量として算出できる。
【0066】
【数5】
尚、本実施形態では、電力買い、電力売りの一方のみ可能な場合について説明したが、電力買い、電力売りのいずれも可能である場合には、電力買い、電力売りのいずれについてもYを算出し、Yが最大となるときのC’を最適取引量とすればよい。
【0067】
また、上記実施形態では、各発電手段の優先度に関するデータは、予測装置100の使用者が各々の発電手段の状況等を考慮して設定するものとしたが、これらのデータは、最適取引量を算出するときに都度、発電予定算出部102が設定するものであっても、予めデータテーブルM4に記憶されたものであってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、優先度に関するデータとして、マストラン電源に関する優先度、限界費用に関する優先度を記載したが、限界費用に関する優先度のみが設定される態様であってもよい。また、それらの優先度以外にも他の優先度に関するデータを設定してもよい。例えば、原子力発電による電力供給量を減少させる要請があった場合は、原子力発電に係る発電手段は、最も優先度を下げるように別項目として、使用控え度に関するデータを設定する。
【0069】
また、上記実施形態では、取引価格Rは、取引量Cによらず一定である場合について説明した。しかし、取引価格Rが、取引量Cに応じて変動するものであってもよい。その場合、式(4)のRは、Cの関数R(C)として表せる。そして、最適取引量算出部103は、式(4)を当該関数R(C)と置き換えた態様で、Yが最大となる最適取引量C’を算出する。
【0070】
尚、上記実施形態では、予測システムは、利益額Yを算出するものとしたが、利益値に関するデータであれば、利益額に限らず、所定のポイント等であってもよい。
【0071】
尚、雷等の影響により、所定の発電手段が停止し、電力を供給することができなくなる場合がある。この場合、発電予定算出部102により算出した限界費用線が変動することになる。したがって、(S3)では、このような変動要因を考慮して、限界費用線におけるそれぞれの発電可能量を、脱落する可能性を考慮した期待値として算出してもよい。この場合、データテーブルM1の当該所定の発電手段に脱落に関する確率分布に関するデータを記憶しておく。そして、当該所定の発電手段の脱落に関する確率分布に関するデータと、当該発電手段の発電可能量に基づいて、当該発電手段の発電可能量の期待値を算出する。そして、発電予定算出部102は、当該発電手段の発電可能量の期待値に基づいて、限界費用線に関するデータを算出することによって、電力脱落のリスクを反映させることができる。また、限界費用線を変更する代わりに、仮想的に需要予測値Nが上昇したものとして、需要予測値Nに各発電手段の脱落による期待値を加算して、その後の処理を実行してもよい。
<第2実施形態>
本実施形態では、電力需要量の予測値が確率分布として算出されている場合に、最適取引量とともに利益額の確率分布に関するデータを算出する点で、第1実施形態と異なっている。第1実施形態では、電力需要量が一定の予測値である場合について説明したが、現実には、電力需要量の予測値はある程度の幅で変動する確率分布を有する。例えば、工場施設等で使用される電力需要量は、事前に予測することができるが、気温の変動による冷暖房需要に起因する電力需要量は事前に予測することは困難である。
【0072】
したがって、本実施形態では、電力需要量の確率分布に関するデータに基づいて、最適取引量とともに利益額の確率分布に関するデータを算出する。
【0073】
以下、本実施形態の態様について説明する。尚、本実施形態では、最適取引量算出部103’の構成のみ第1実施形態と異なっているため、その他の構成については説明を省略する。
【0074】
本実施形態では、最適取引量算出部103’が、電力需要量の確率分布に基づいて、最適取引量を算出するとともに、利益額の確率分布に関するデータを算出する。
【0075】
尚、本実施形態における確率分布に関するデータ(以下、「確率分布データ」という)とは、実現し得る値の予測値からのばらつきを示すものであり、例えば、未来の所定時間帯(例えば、2013/2/1の7時)に95%の確率で実現し得る電力需要量、利益額の幅(信頼区間)を意味する。また、確率分布は、予測値に関する確率密度関数を表すデータや、実現し得る確率と予測値の幅の対応関係を示すデータ、分散係数等であってもよい。
【0076】
最適取引量算出部103’は、一例として、電力需要量の確率分布に基づいて、電力需要量の期待値N1を算出する工程と、当該期待値N1を電力需要量の予測値として、最適取引量を算出する工程と、当該最適取引量に対する利益値に対して、電力需要量の確率分布を反映させる工程とによって、最適取引量を算出するとともに、利益額の確率分布データを算出する。
【0077】
具体的には、電力需要量の確率分布に基づいて、電力需要量の期待値N1を算出する工程は、電力需要量の期待値N1は、電力需要量の確率分布が、確率密度関数f(N)である場合、式(6)より算出できる。
【0078】
【数6】
当該期待値N1を電力需要量の予測値として、最適取引量を算出する工程は、
図5の(S4)〜(S6)に示すとおりである。すなわち、最適取引量算出部103’は、電力需要量の予測値を期待値N1として、限界費用線に関するデータに基づいて、所定の取引量Cの電力取引を行った場合の発電費用の変化費用を算出する(S4)。そして、最適取引量算出部103’は、取引情報に関するデータM3に基づいて、電力取引の対象となる期間に所定量の取引を行った場合の取引収支を算出する(S5)。そして、最適取引量算出部103’は、(S4)において算出した所定量の取引を行った場合の発電費用の変化費用と、(S5)において算出した所定量の取引を行った場合の取引収支の差が最大となるように、最適取引量C’を算出する(S6)。
【0079】
当該最適取引量に対する利益値に対して、電力需要量の確率分布を反映させる工程は、例えば、電力需要量の信頼区間に基づいて、利益額の信頼区間を算出する。利益額の信頼区間は、式(4)に電力需要量Nの信頼区間の上限値N2、下限値N3をそれぞれ代入することによって算出することができる(利益額Yの関数式(4)は、Cが一定のとき電力需要量Nに関して単調増加関数である)。その他、電力需要量の信頼区間に含まれるNを5点選択して、それぞれに対応する利益額Yを算出することで、利益額の信頼区間の上限値、下限値と擬制する方法であってもよい。
【0080】
尚、信頼区間とは、一定確率の範囲内で現実に起こり得る数値範囲を意味する。
図9は、電力需要量の確率密度関数f(Nf)が、N(N1、σ)の正規分布である場合に68.3%の範囲内となる信頼区間を表す。
【0081】
このように、本実施形態によって、電力需要量Nの確率分布を利用することによって、利益額の確率分布を算出することができ、リスクを考慮しながら、電力取引を行うことができる。
【0082】
尚、上記実施形態では、電力需要量Nの信頼区間のうち所定点をサンプリングして、利益額Yの信頼区間に変換したが、利益額Yの確率分布は、f(Nf)の確率密度関数を変数変換して、利益額Yの確率密度関数として表してもよい。
【0083】
図10は、確率密度関数の変数変換のイメージ図である。電力需要量Nの確率密度関数f(N)を、利益額Yの確率密度関数g(Y)に変換する場合、Yの確率密度関数g(Y)は、式(7)を変形して式(8)のように表せる。
【0085】
【数8】
これによって、最適取引量算出部103’は、電力需要量Nの確率密度関数f(N)を、利益額の確率密度関数g(Y)に変数変換することができる。
【0086】
このように、本実施形態によれば、電力需要量の確率分布を考慮して、利益値を最大にする電力取引の最適取引量の算出することができる。
【0087】
尚、上記実施形態では、電力需要量の確率分布の期待値N1に基づいて、最適取引量を算出する方法を説明したが、期待値に代えて平均値に基づいて、最適取引量を算出する方法であってもよい。
【0088】
また、電力需要量Nの確率密度関数f(N)を、利益額の確率密度関数g(Y)に変数変換する方法に代えて、電力需要量Nの分散係数を、利益額の分散係数に変数変換する方法であってもよい。
【0089】
また、上記実施形態は、電力需要量Nの確率密度関数f(N)が正規分布である場合に限らず、t分布、χ
2分布、F分布等、任意の分布関数に適用することができる。
【0090】
尚、上記実施形態では、電力需要量が確率分布として算出されている場合について説明した。しかし、取引価格が確率分布として算出されている場合についても、上記と同様に変数変換することで、利益額の確率分布を算出することができる。また、電力需要量、取引価格がともに確率分布として算出されている場合、周知の二次元変数変換を行えばよい。
<第3実施形態>
本実施形態では、予測装置100が、更に電力需要量の確率分布を算出する、需要予測部105(図示せず)を有している点で、上記実施形態と異なっている。以下、本実施形態の態様について説明する。尚、第1実施形態と共通する構成については省略する。
【0091】
本実施形態では、現実の電力需要量が、電力需要量の予測値から変動する要因の一つに、気温変動に起因する冷暖房需要の変動があるという理解に基づいて、電力需要量の予測を行う。すなわち、周知の方法で算出された予測気温の確率分布より、電力需要量の確率分布を算出する。尚、本実施形態では、需要予測部105は、過去の気温の実測値と電力需要量の実測値に基づいて、気温と電力需要量の関係式を算出し、当該関係式から予測気温の確率分布を電力需要量の確率分布に反映させる。
【0092】
図11に、本実施形態のフローチャートの一例を示す。
【0093】
本実施形態では、予測装置100が、需要情報提供装置400、気象情報提供装置500、とLAN接続等による通信網300を利用して(
図1には図示せず)、気温の実測値、及びそのときの電力需要量に関する過去のデータ等の送受信を行うことで、電力需要量の予測を行う。尚、需要情報提供装置400、気象情報提供装置500は、予測装置100からのリクエストに応じてデータを送信するコンピュータである。また、需要情報提供装置400、気象情報提供装置500は、
図2Bに示す取引情報提供装置200と同様のハードウェア構成となっている。
【0094】
図12Aに、需要情報提供装置400の記憶手段に記憶された、過去に実測された電力需要量に関するデータテーブルM5の一例を示す。このデータテーブルM5には、所定時間帯の電力需要量(W)が日時と対応づけられて、1時間単位で記憶されている。
【0095】
図12Bに、気象情報提供装置500の記憶手段に記憶された、過去に実測された気温に関するデータテーブルM6の一例を示す。このデータテーブルM6には、所定時間帯の気温の実測値が日時と対応づけられて、1時間単位で記憶されている。
【0096】
図11の(S41)は、予測装置100の取得部101が、需要情報提供装置400に対して、未来の所定時間帯Pに関する、過去の電力需要量を要求する工程である。
【0097】
(S42)は、需要情報提供装置400が、当該要求を受けて、過去の電力需要量に係るデータテーブルM5から、電力需要量を取得し、予測装置100に対して、当該データを送信する工程である。
【0098】
一例として、未来の所定時間帯Pが7時である場合、取得部101は、過去(昨年度の同月)の電力需要量に関するデータM5の7時〜8時のデータを取得する。
【0099】
(S43)は、予測装置100の取得部101が、気象情報提供装置500に対して、(S42)で取得した電力需要量の時刻に関する、過去の気温の実測値を要求する工程である。
【0100】
(S44)は、気象情報提供装置500が、当該要求を受けて、過去の測定気温に係るデータテーブルM6から、実測値を取得し、予測装置100に対して、当該データを送信する工程である。
【0101】
一例として、(S42)で取得した電力需要量の時間帯が、7時〜8時である場合、取得部101は、測定気温に関するデータM6の7時、又は8時のデータを取得する。
【0102】
(S45)は、予測装置100の需要予測部105が、取得した過去のデータに基づいて、需要予測式を算出する工程である。具体的には、予測装置100は、(S44)で取得した所定時間帯の気温の実測値T1、及び電力需要量N1に基づいて、電力需要量と気温の関係式を算出するための回帰分析を行う。
【0103】
回帰分析は、例えば、電力需要量Nを目的変数、標準気温18℃と実測値の差、及び標準気温18℃と実測値の差の二乗を説明変数とする、式(9)の回帰モデルについて、最小二乗法により行う。
【0104】
【数9】
(γ
0、δ
0は母切片、γ
1、γ
2、δ
1、δ
2は母回帰係数、E
iは誤差項を表す。また、各変数の末尾のiは、各観測点iを表し、サンプルとして取得した過去のデータの各実測値T1、電力需要量N1を表す。)
ここで、標準気温18℃と実測値の差を説明変数としているのは、冷暖房需要による電力需要量の変動量は、標準気温18℃のときには、冷暖房需要は実質的に0であるとみなせるためである。また、標準気温18℃と実測値の差の二乗を説明変数とすることによって、冷暖房の需要は、気温が標準気温18℃から離れるにつれて、急激に増加するという一般的社会現象をより正確に反映させることができる。
【0105】
また、式(9)は、18℃以上か18℃以下かによって式を2分し、冷房需要と暖房需要とを別としている。なお、式(9)では省略しているが、天気情報、曜日情報等の説明変数を追加して回帰分析を行ってもよい。
【0106】
これより、当該回帰モデルのγ
0、γ
1、γ
2、δ
0、δ
1、δ
2を決定し、需要予測式として回帰式(10)を算出する。
【0107】
【数10】
(S46)は、予測装置100の需要予測部105が、上記回帰式(10)と、予測気温の確率分布データに基づいて、電力需要量の確率分布を算出する工程である。
【0108】
一例として、予測気温の確率分布データが、予測気温の期待値T2と、68.2%の信頼区間として気温T2±Sで表されている場合、電力需要量の確率分布(信頼区間)は、次のようになる。
【0109】
すなわち、電力需要量の期待値は、式(10)の気温Tに対して、予測気温の確率分布の期待値T2を代入することによって算出できる。そして、電力需要量の予測値の信頼区間の上限値と下限値は、式(10)にT2+S、T2−Sそれぞれを代入することによって算出することができる。(式(10)は、気温Tについて単調増加関数とみなせる)
このように、本実施形態によって、予測気温の確率分布を電力需要量の確率分布に反映させることができ、電力需要量の確率分布を高い精度で算出することができる。
【0110】
尚、上記実施形態では、標準気温18℃と実測値の差、及び標準気温18℃と実測値の差の二乗を説明変数とする、回帰モデルを用いた。しかしながら、予測気温の確率分布から電力需要量の確率分布をある程度の精度で算出することができれば、回帰モデルは、上記に限る必要はない。例えば、標準気温18℃と実測値の差の二乗については、説明変数を省略してもよいし、標準気温18℃と実測値の差に代えて、通常の実測値を説明変数としてもよい。また、標準気温についても18℃に代えて、17℃や19℃と設定してもよい。また、説明変数として予測最高気温、予測最低気温、天気情報、地域情報等を追加してもよい。また、サンプルの分散を安定化させるため、分散安定化変換を行って、回帰モデルを適応してもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、予測対象の日時が設定されるに応じて、需要予測式を算出する工程を行うとしたが、需要予測式を予め生成しておき、予測対象の日時が設定されるに応じて、対応する日時の電力需要量の予測値を算出してもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、現実の電力需要量が電力需要量の予測値から変動する要因として、気温変動に起因する冷暖房需要の変動が最も大きいとみなして、電力需要量のばらつきを算出する際、式(9)の誤差項に関しては、考慮しない態様とした。しかしながら、式(9)の誤差項に関しても、誤差項の標準偏差を算出し、電力需要量の確率分布を算出する際に考慮に入れる態様としてもよい。その場合、周知の誤差伝搬の法則により、標準偏差を統合すればよい。
【0113】
以上、上記各実施形態によれば、発電費用を考慮して、利益値を最大にする電力取引の最適取引量の算出することができる。
【0114】
尚、上記各実施形態では、予測装置100が、発電予定算出部102、最適取引量算出部103を機能部として有する構成とした。しかし、これらの機能部、又はその一部は、他の装置に分散されていてもよい。同様に、各記憶手段に記憶されたデータの記憶領域は、任意の場所でよい。例えば、予測装置100に集約されていてもよいし、複数のコンピュータから構成されるクラウドシステム上に分散して記憶される構成であってもよい。
===結言===
以上より、上記各実施形態は、次のように記載できる。
【0115】
上記各実施形態は、電力取引における利益値(Y)を最大化する最適取引量を予測する予測システムであって、複数の発電手段の発電可能量を記憶する第1の記憶部(上記実施形態では、データテーブルM1に対応)と、複数の発電手段の単位発電量あたりの発電費用を記憶する第2の記憶部(上記実施形態では、データテーブルM1に対応)と、電力取引の対象とする期間における電力需要量の予測値(N)を記憶する第3の記憶部(上記実施形態では、データテーブルM2に対応)と、単位発電量あたりの発電費用が低い発電手段が優先的に稼働するように設定された、複数の発電手段に対する稼働優先度を記憶する第4の記憶部(上記実施形態では、データテーブルM4に対応)と、電力取引の対象とする期間における単位発電量あたりの取引価格を記憶する第5の記憶部(上記実施形態では、データテーブルM3に対応)と、発電手段の発電可能量と、発電手段の単位発電量あたりの発電費用と、発電手段に対する稼働優先度に基づいて、電力需要量と発電費用の対応関係を示す限界費用線に関するデータを算出する発電予定算出部(102)と、限界費用線に関するデータ及び電力需要量の予測値とに基づいて算出される所定量の電力取引(C)により生ずる発電費用の変化費用と、取引価格に関するデータに基づいて算出される所定量の電力取引により生ずる取引収支との差が、最大となる所定量を算出する最適取引量算出部(103、103’)とを有することを特徴とする予測システムを開示するものである。
【0116】
これによって、電力供給者は、発電費用を考慮して、利益値を最大にする電力取引の最適取引量の算出することができる。
【0117】
ここで、複数の発電手段の単位発電量あたりの発電費用は、複数の発電手段それぞれの稼働率と単位発電量あたりの発電費用が対応づけられて記憶されたデータであってもよい。
【0118】
これによって、発電費用を詳細に把握すること可能となり、より正確に利益値を最大にする電力取引の最適取引量の算出することができる。
【0119】
ここで、電力需要量の予測値は、電力取引の対象とする期間における電力需要量の確率分布データであり、最適取引量算出部は、電力需要量の確率分布データに基づいて、電力取引における最適取引量、及び利益値の確率分布データを算出するものであってもよい。このとき、最適取引量算出部は、電力需要量の確率分布の期待値に基づいて、電力取引における最適取引量を算出するものであってもよい。
【0120】
これによって、最適取引量に加えて、電力取引における利益のぶれ幅(リスク)を算出することができる。
【0121】
ここで、予測システムは、所定の発電手段の電力脱落の確率分布データを記憶する第6の記憶部(上記実施形態では、データテーブルM1に対応)を更に備え、発電予定算出部は、所定の発電手段の電力脱落の確率分布データと、所定の発電手段の発電可能量に基づいて、所定の発電手段の発電可能量の期待値を算出し、所定の発電手段の発電可能量の期待値に基づいて、限界費用線に関するデータを算出するものであってもよい。
【0122】
これによって、電力脱落のリスクを踏まえた、利益値を最大にする電力取引の最適取引量の算出することができる。
【0123】
ここで、取引価格は、電力取引の対象とする期間における、取引価格の確率分布データであり、最適取引量算出部は、取引価格の確率分布データに基づいて、電力取引における最適取引量、及び利益値の確率分布データを算出するものであってもよい。
【0124】
これによって、最適取引量に加えて、電力取引における利益のぶれ幅(リスク)を算出することができる。
【0125】
ここで、第4の記憶部は、更にマストラン電源に係る優先度を有し、複数の発電手段に対する稼働優先度は、単位発電量あたりの発電費用が低い発電手段よりも、マストラン電源に係る優先度が設定された発電手段が優先的に稼働するように設定されたデータであってもよい。
【0126】
これによって、発電費用を詳細に把握すること可能となり、より正確に利益値を最大にする電力取引の最適取引量の算出することができる。
【0127】
また、上記各実施形態は、電力取引における利益値を最大化する取引量を予測する予測方法であって、複数の発電手段の発電可能量と、複数の発電手段の単位発電量あたりの発電費用と、複数の発電手段に対する稼働優先度に基づいて、電力需要量と発電費用の対応関係を示す限界費用線に関するデータを算出する発電予定算出工程と、限界費用線に関するデータ及び電力需要量の予測値に基づいて算出される所定量の電力取引により生ずる発電費用の変化費用と、取引価格に関するデータに基づいて算出される所定量の電力取引により生ずる取引収支との差が、最大となる所定量を算出する最適取引量算出工程と、を有することを特徴とする予測方法を開示するものである。
【0128】
これによって、電力供給者は、発電費用を考慮して、利益値を最大にする電力取引の最適取引量の算出することができる。
【0129】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。