特許第6018112号(P6018112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018112
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】マンホール用手摺り
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/12 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   E02D29/12 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-82790(P2014-82790)
(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公開番号】特開2015-203224(P2015-203224A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】領野 昌治
(72)【発明者】
【氏名】石谷 直樹
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−095960(JP,A)
【文献】 特開2002−317456(JP,A)
【文献】 実開平04−041537(JP,U)
【文献】 実開昭51−147958(JP,U)
【文献】 実開平04−119839(JP,U)
【文献】 実開平06−082147(JP,U)
【文献】 実開昭58−189246(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12
E03F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホール本体の内壁面に水平方向に延びるステップが設けられ、前記ホール本体の上部にマンホール蓋を固定するためのボルト穴が設けられたマンホールに、出入りするためのマンホール用手摺りであって、
前記ステップに係合する複数の係合部と、
前記複数の係合部が前記ステップにそれぞれ係合した状態で、前記ホール本体の内壁面に当接する当接部と、
前記複数の係合部が前記ステップに係合して前記当接部が前記ホール本体の内壁面に当接した状態で、上方に延びる手摺り部と、
一端部が前記手摺り部に接続され他端部が前記ボルト穴に螺合した状態で、前記手摺り部を引き寄せることで前記当接部を前記ホール本体の内壁面に押圧させて、前記手摺り部の直立状態を保持する保持手段と、
を備えることを特徴とするマンホール用手摺り。
【請求項2】
前記手摺り部に、人が装着する安全昇降具の一端部を係止する被係止部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のマンホール用手摺り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地下へのマンホールに出入りするためのマンホール用手摺りに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地中配電線路を保守・点検する場合、保守員がマンホールから地中に出入りしている。このマンホールの内壁面には、水平方向に延びるステップ(足掛け)が複数配設されているが、地上側には手摺りがないため、最上位のステップに足を掛ける際に不安定となり、体勢を崩したり足を掛け外したりするおそれがある。このため、マンホールに取り付けられるマンホール用手摺りが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このマンホール用手摺りは、マンホールの内壁に手摺取付金具が取り付けられ、手摺本体に、手摺取付金具に挿入される差込部と、差込部より延設された水平部と、水平部より上方に延設された手摺部と、を備えるものである。
【0003】
また、電話・通信関係の工事においては、マンホールの地上側の全周を囲う柵状の昇降具が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−002481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の技術では、すべてのマンホールの内壁に手摺取付金具を取り付けなければならず、多大な費用と労力とを要する。また、電話・通信関係の工事で使用される昇降具は重量物であり、搬送や設置などに多くの労力・人員を要する。しかしながら、地中配電線路の保守・点検は、2名の保守員で行うのが通例であり、2名の保守員で昇降具の搬送や設置などを行うのは困難である。あるいは、昇降具の搬送や設置などを行うには、保守員を増員する必要がある。
【0006】
そこでこの発明は、マンホールの改造が不要で、しかも、取り扱いが容易なマンホール用手摺りを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、ホール本体の内壁面に水平方向に延びるステップが設けられ、前記ホール本体の上部にマンホール蓋を固定するためのボルト穴が設けられたマンホールに、出入りするためのマンホール用手摺りであって、前記ステップに係合する複数の係合部と、前記複数の係合部が前記ステップにそれぞれ係合した状態で、前記ホール本体の内壁面に当接する当接部と、前記複数の係合部が前記ステップに係合して前記当接部が前記ホール本体の内壁面に当接した状態で、上方に延びる手摺り部と、一端部が前記手摺り部に接続され他端部が前記ボルト穴に螺合した状態で、前記手摺り部を引き寄せることで前記当接部を前記ホール本体の内壁面に押圧させて、前記手摺り部の直立状態を保持する保持手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、複数の係合部をステップに係合して当接部をホール本体の内壁面に当接させると、手摺り部が上方に延びる。そして、保持手段の他端部をボルト穴に螺合させ、手摺り部を引き寄せると、当接部がホール本体の内壁面に押圧されて、手摺り部の直立状態が保持される。このようにしてマンホール用手摺りを取り付けた状態で、手摺り部を持ってマンホールに出入りする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のマンホール用手摺りにおいて、前記手摺り部に、人が装着する安全昇降具の一端部を係止する被係止部が設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、直立状態が保持された手摺り部を持って、安全かつ容易にマンホールに出入りすることができる。また、複数の係合部をステップに係合して当接部をホール本体の内壁面に当接させ、保持手段で手摺り部を引き寄せるだけでよいため、取り付けや取り外しを一人で行うことが可能である。しかも、ステップに係合する複数の係合部と、ホール本体の内壁面に当接する当接部と、上方に延びる手摺り部と、手摺り部を引き寄せる保持手段とを備えるだけであり、マンホールの全周を囲う大掛かりなものではないため、小型化および軽量化が可能で、搬送や保管が容易となる。このようにして、取り扱いが容易であり、しかも、既存のステップやボルト穴を利用するため、マンホールの改造が不要である。
【0011】
請求項2の発明によれば、被係止部が手摺り部に設けられているため、保守員などが安全昇降具を装着してその一端部を被係止部に係止することで、マンホール用手摺りと保守員などが接続され、保守員などの墜落を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施の形態に係るマンホール用手摺りの取付状態を示す斜視図である。
図2図1のマンホール用手摺りの手摺り本体を示す、正面図(a)と側面図(b)と背面図(c)と平面図(d)である。
図3】この発明の実施の形態に係るマンホールを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態に係るマンホール用手摺り1の取付状態を示す斜視図である。このマンホール用手摺り1は、地下へのマンホール100に出入りするための手摺りであり、1体の手摺り本体2と2つのチェーンレバーホイスト(保持手段)3とを備えている。
【0015】
ここで、この実施の形態では、マンホール100は、図3に示すように、円穴状のホール本体101の内壁面101aに水平方向に延びるステップ(足掛け)102が設けられ、ホール本体101の上部にマンホール蓋を固定するためのボルト穴103が設けられている。すなわち、地表面よりも下がった段差部101bがホール本体101の上部に設けられ、この段差部101bの上面に2つのボルト穴103が対向して(対照に)形成されている。また、2つのボルト穴103の中間に位置して、ホール本体101の内壁面101aから突出するようにステップ102が設置されている。つまり、2つのボルト穴103を結ぶ線(中心線)に対向してステップ102が設置されている。
【0016】
手摺り本体2は、図2に示すように、全体が梯子状で、主として、手摺り部21と、係合部22と、当接部23と、被係止部24と、を備えている。
【0017】
手摺り部21は、略梯子型で、垂直に延びる2つの垂直部211の間に、複数の(4つの)水平部212が設けられ、各水平部212には滑り止めが施されている。この手摺り部21は、人がマンホール100に出入りする際に、手摺りとして使用されるものであり、後述するように、係合部22がステップ102に係合して当接部23がホール本体101の内壁面101aに当接した状態で、垂直上方に延びるようになっている。また、各垂直部211の中央部には、半円状の半リング25が取り付けられ、この半リング25に、後述するチェーンレバーホイスト3の第1のフック(一端部)31が接続可能となっている。
【0018】
ここで、手摺り部21の高さ、つまり手摺り本体2の高さは、後述するようにしてマンホール用手摺り1を設置した状態で、人が立ったままの状態で手摺り部21に手を掛けて、容易にマンホール100に出入りできるように設定されている。また、手摺り部21の幅、つまり2つの垂直部211の間隔は、複数径のマンホール100に対応できるように設定されている。
【0019】
係合部22は、ステップ102に係合するフックであり、手摺り部21の下端部に配設されている。すなわち、図2(b)に示すように、下方が開放されたカギ状(逆さのL字状)で、各垂直部211の下端部の正面側に固定され、後述する連結部26とでステップ102を挟んだ状態でステップ102に係合するようになっている。
【0020】
当接部23は、係合部22がステップ102に係合した状態で、ホール本体101の内壁面101aに当接する部材である。すなわち、各垂直部211の下端部の背面側に、斜め下方に延びる連結部26が配設され、この連結部26の下端部に、垂直に延びる棒状の当接部23が配設されている。ここで、係合部22がステップ102に係合すると、当接部23の背面全体がホール本体101の内壁面101aに当接するように、当接部23が配設されている。そして、このようにして係合部22がステップ102に係合して、当接部23がホール本体101の内壁面101aに当接すると、手摺り部21がマンホール100から地上に向って垂直に延びるものである。
【0021】
被係止部24は、手摺り部21に設けられ、人が装着する巻き取り式墜落防止器具(安全昇降具)200の一端部を係止するものである。すなわち、板状で、中央部に係止孔24aが形成され、手摺り部21の各垂直部211の上部の正面側に固定されている。そして、図1に示すように、巻き取り式墜落防止器具200のドラム201側のフック(一端部)202を係止孔24aに掛けられるものである。ここで、巻き取り式墜落防止器具200は、引き出し巻き取り自在にベルト203がドラム201に巻かれ、ベルト203の自由端部側のフック204を人に接続(装着)し、ベルト203に急激な負荷が加わった場合にベルト203の動きが止まることで、人の墜落などを防止するものである。
【0022】
チェーンレバーホイスト3は、第1のフック31が手摺り部21の半リング25に接続され、第2のフック32に接続されたアイボルト(他端部)33がボルト穴103に螺合した状態で、手摺り部21を引き寄せることで当接部23をホール本体101の内壁面101aに押圧させて、手摺り部21の直立状態を保持するものである。
【0023】
すなわち、市販・既製のチェーンレバーホイストで構成され、第2のフック32に、シャックル34を介してアイボルト33が接続されている。また、第1のフック31と第2のフック32との間にチェーン35が配設され、レバー36を操作することでチェーン35(フック31、32間)が伸縮するようになっている。そして、第1のフック31を半リング25に接続し、アイボルト33をボルト穴103に螺合した状態で、レバー36を操作してチェーン35を縮め、チェーン35に張力を与える。これにより、手摺り部21がボルト穴103側に引き寄せられ、当接部23がホール本体101の内壁面101aに押されて、手摺り部21の直立状態が保持される。つまり、チェーン35の張力と当接部23の押圧力とによって、手摺り本体2がボルト穴103側に倒れたり半ボルト穴103に反り返ったりせず、手摺り本体2の直立状態が維持されるものである。
【0024】
次に、このような構成のマンホール用手摺り1の作用および使用方法などについて説明する。ここで、地中配電線路を保守・点検するために、保守員がマンホール100から地中に出入りする場合について説明する。
【0025】
マンホール用手摺り1を設置するには、まず、手摺り本体2の係合部22をステップ102に係合させて、当接部23をホール本体101の内壁面101aに当接させると、手摺り部21が上方に延びた状態となる。次に、チェーンレバーホイスト3の第1のフック31を手摺り部21の半リング25に接続し、第2のフック32側のアイボルト33をボルト穴103に螺合する。続いて、レバー36を操作してチェーン35に張力を与え、手摺り部21をボルト穴103側に引き寄せる。これにより、当接部23がホール本体101の内壁面101aに押圧されて、手摺り部21の直立状態が保持される。
【0026】
このようにしてマンホール用手摺り1を取り付けた状態で、手摺り部21を持って保守員がマンホール100に出入りする。その後、保守・点検などが終了した場合には、チェーンレバーホイスト3のレバー36を操作してチェーン35の張力を緩め、アイボルト33をボルト穴103から外し、第1のフック31を半リング25から外す。そして、手摺り本体2を持ち上げることで係合部22の係合を解除して、手摺り本体2を取り外すものである。
【0027】
以上のように、本マンホール用手摺り1によれば、直立状態が保持された手摺り部21を持って、安全かつ容易にマンホール100に出入りすることができる。また、係合部22をステップ102に係合して当接部23をホール本体101の内壁面101aに当接させ、チェーンレバーホイスト3で手摺り部21を引き寄せるだけでよいため、取り付けや取り外しを一人で行うことが可能である。
【0028】
しかも、全体が梯子状の手摺り本体2と、市販・既製のチェーンレバーホイスト3とを備えるだけであり、マンホール100の全周を囲う大掛かりなものではないため、小型化および軽量化が可能で、搬送や保管が容易となる。このようにして、取り扱いが容易であり、しかも、既存のステップ102やボルト穴103を利用するため、マンホール100の改造が不要である。
【0029】
また、被係止部24が手摺り部21に設けられているため、保守員が巻き取り式墜落防止器具200を装着してそのフック202を被係止部24に係止することで、マンホール用手摺り1と保守員が接続・連結され、保守員の墜落を確実に防止することができる。
【0030】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、手摺り本体2が梯子状であるが、プールサイドの手摺りのような形状などであってもよい。また、ホール本体101の内壁面101aに1つのステップ102が設けられている場合について説明したが、複数のステップ102が設けられている場合には、最上位のステップ102に係合部22を係合させればよい。
【0031】
一方、保持手段をチェーンレバーホイスト3で構成しているが、手摺り部21を引き寄せられるものであれば、他の器具で構成してもよい。同様に、安全昇降具が巻き取り式墜落防止器具200の場合について説明したが、その他の器具であってもよい。また、手摺り本体2と保持手段とが別体となっているが、一体的に構成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 マンホール用手摺り
2 手摺り本体
21 手摺り部
22 係合部
23 当接部
24 被係止部
3 チェーンレバーホイスト(保持手段)
31 第1のフック(一端部)
33 アイボルト(他端部)
35 チェーン
36 レバー
100 マンホール
101 ホール本体
101a 内壁面
102 ステップ
103 ボルト穴
200 巻き取り式墜落防止器具(安全昇降具)
202 フック(一端部)
図1
図2
図3