【文献】
J. Organometal. Chem.,1968年,11,447−457
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体分野において、シリコン含有薄膜は、多様な蒸着工程により、シリコン膜(silicon)、シリコン酸化膜(silicon oxide)、シリコン窒化膜(silicon nitride)、シリコン炭窒化膜(silicon carbonitride)、及びシリコン酸窒化膜(silicon oxynitride)等の様々な形態の薄膜に製造されており、その応用分野が広範囲である。
【0003】
特に、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜は、非常に優れた段差被覆性及び耐酸化性を有するため、半導体素子の製作時に絶縁膜、拡散防止膜、ハードマスク、エッチング停止層、シード層、スペーサー、トレンチアイソレーション、金属間誘電物質、及び保護膜層として用いられる。
【0004】
近年、多結晶シリコン薄膜が薄膜トランジスタ(TFT)や太陽電池等に用いられており、その応用分野が益々多様になっている。
【0005】
シリコンが含有された薄膜を製造するための代表的な公知技術としては、混合されたガス形態のシリコン前駆体と反応ガスとが反応して基板の表面に膜を形成したり、表面上に直接的に反応して膜を形成したりする有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、ガス形態のシリコン前駆体が基板の表面に物理的または化学的に吸着された後、反応ガスが順に投入されて膜を形成する原子層蒸着法(ALD)が挙げられる。また、これを応用した低圧化学気相蒸着法(LPCVD)、低温で蒸着可能なプラズマを用いた化学気相蒸着法(PECVD)及び原子層蒸着法(PEALD)等、様々な薄膜製造技術が次世代の半導体及びディスプレイ素子の製造工程に適用され、超微細パターンの形成、及びナノ単位の厚さを有し、均一且つ優れた特性を有する極薄膜の蒸着に用いられている。
【0006】
特許文献1に開示されているように、シリコン含有薄膜を形成するために用いられる前駆体は、シラン、シラン塩化物、アミノシラン、及びアルコキシシラン形態の化合物が代表的であり、具体的な例としては、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)及びヘキサクロロジシラン(Cl
3SiSiCl
3)等のシラン塩化物形態の化合物、トリシリルアミン(N(SiH
3)
3)、ビスジエチルアミノシラン(H
2Si(N(CH
2CH
3)
2)
2)、及びジイソプロピルアミノシラン(H
3SiN(i‐C
3H
7)
2)等が挙げられ、半導体及びディスプレイの製造及び量産に使用されている。
【0007】
しかし、素子の超高集積化に起因する素子の微細化、縦横比の増加、及び素子材料の多様化により、所望の低温で均一且つ薄い厚さを有し、電気的特性に優れた超微細薄膜を形成するための技術が要求されているため、従来のシリコン前駆体を用いた600℃以上の高温工程、ステップカバレッジ、エッチング特性、薄膜の物理的及び電気的特性が問題となっている。従って、さらに優れた新規なシリコン前駆体の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、新規なアミノシリルアミン化合物を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、薄膜蒸着用前駆体化合物である新規なアミノシリルアミン化合物を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、アミノシリルアミン化合物の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、本発明のアミノシリルアミン化合物を含有するシリコン含有薄膜蒸着用組成物、シリコン含有薄膜の製造方法、及び本発明のアミノシリルアミン化合物を含有して製造されるシリコン含有薄膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、低温でも優れた凝集力、高い蒸着率、優れた物理的及び電気的特性を有するシリコン薄膜を形成することができる新規なアミノシリルアミン化合物を提供する。
【0014】
本発明の新規なアミノシリルアミン化合物は、下記化学式1で表される。
【0015】
[化学式1]
【化1】
【0016】
(前記化学式1中、
R
1〜R
5は、互いに独立して、水素、ハロゲン、(C1‐C7)アルキル、(C2‐C7)アルケニル、(C2‐C7)アルキニル、(C3‐C7)シクロアルキル、または(C6‐C12)アリールであり、
R
6〜R
7は、互いに独立して、水素、(C1‐C7)アルキル、(C2‐C7)アルケニル、(C2‐C7)アルキニル、(C3‐C10)シクロアルキル、または(C6‐C12)アリールであり;
但し、R
1〜R
7の全てがメチルの場合は除き;
前記R
1〜R
5のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール及びR
6〜R
7のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールは、ハロゲン、(C1‐C7)アルキル、(C1‐C7)アルコキシ、または(C1‐C7)アリールオキシでさらに置換されていてもよい。)
【0017】
本発明のアミノシリルアミン化合物である前記化学式1において、R
1〜R
7の全てがメチルである場合には常温及び常圧下で固体である反面、本発明のアミノシリルアミン化合物は液体状態の化合物であって、優れた揮発性を有するため、薄膜の形成が容易である。
【0018】
さらに、本発明のアミノシリルアミン化合物は、中心窒素原子に3個のシリコン原子が結合されている、三角平面Si
3N分子構造の形態を有するため、高い熱的安定性及び低い活性化エネルギーを有して反応性が高く、非揮発性の副生成物を生成しないため、高い純度のシリコン含有薄膜を容易に形成することができる。
【0019】
本発明の一実施例による前記化学式1で表されるアミノシリルアミン化合物において、高い熱的安定性及び反応性、高い純度の薄膜を形成するという点で、前記化学式1中の前記R
1〜R
5は、互いに独立して、水素、ハロゲン、(C1‐C5)アルキル、(C2‐C5)アルケニル、(C2‐C5)アルキニル、(C3‐C6)シクロアルキル、または(C6‐C10)アリールであり、R
6〜R
7は、互いに独立して、水素、(C1−C5)アルキル、(C2‐C5)アルケニル、(C2‐C5)アルキニル、(C3‐C5)シクロアルキル、または(C6‐C10)アリールであり、但し、R
1〜R
7の全てがメチルの場合は除くことが好ましい。
【0020】
また、本発明の一実施形態によるアミノシリルアミン化合物において、前記化学式1中のR
1〜R
5は、互いに独立して、水素または(C1−C5)アルキルであり、R
6〜R
7は、互いに独立して、水素、(C1−C5)アルキルであり、但し、R
1〜R
7の全てがメチルの場合は除くことがより好ましい。
【0021】
本発明の一実施形態による前記化学式1は、下記化合物から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0023】
本発明に記載の「アルキル」、「アルコキシ」、及びその他の「アルキル」部分を含む置換体は、直鎖または分枝鎖の両方の形態を含む。また、本発明に記載の「アリール」は、1つの水素除去によって芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、各環に、適切には4個〜7個、好ましくは5個または6個の環原子を含有する単一または縮合環系を含み、多数個のアリールが単一結合で連結されている形態も含む。具体的な例として、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、インデニル、フルオレニル等を含むが、これに限定されない。また、本発明のアルケニルは、1つ以上の二重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素であって、一例として、ビニル基、プロプ‐1‐エン(prop‐1‐ene)、ブタ‐1,3‐ジエン等を含むが、これに限定されるものではなく、本発明のアルキニルは、1つ以上の三重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を含む。
【0024】
また、本発明の前記化学式1で表されるアミノシリルアミン化合物は、好ましくは、シリコン含有薄膜蒸着用前駆体化合物であることができる。
【0025】
また、本発明は、前記化学式1で表されるアミノシリルアミン化合物の製造方法を提供する。前記化学式1で表されるアミノシリルアミン化合物の製造方法は、下記化学式2で表される塩基または(C1‐C7)アルキルリチウムの存在下で、下記化学式3で表される化合物と下記化学式4で表される化合物とを反応させることで、前記化学式1で表される化合物を製造する段階を含む。
【0026】
[化学式2]
N(R
8)(R
9)(R
10)
【0027】
[化学式3]
【化11】
【0028】
[化学式4]
【化12】
【0029】
(前記化学式1〜4中、
R
8〜R
10は、互いに独立して、(C1‐C7)アルキルであり;
R
1〜R
5は、互いに独立して、水素、ハロゲン、(C1‐C7)アルキル、(C2‐C7)アルケニル、(C2‐C7)アルキニル、(C3‐C7)シクロアルキル、または(C6‐C12)アリールであり、
R
6〜R
7は、互いに独立して、水素、(C1‐C7)アルキル、(C2‐C7)アルケニル、(C2‐C7)アルキニル、(C3‐C10)シクロアルキル、または(C6‐C12)アリールであり;
但し、R
1〜R
7の全てがメチルの場合は除き;
前記R
1〜R
5のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール及びR
6〜R
7のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールは、ハロゲン、(C1‐C7)アルキル、(C1‐C7)アルコキシ、または(C1‐C7)アリールオキシでさらに置換されていてもよく;
X
1はハロゲンである。)
【0030】
本発明の一実施形態による(C1‐C7)アルキルリチウムは、炭素数1〜7のアルキルにリチウムが結合された化合物であり、例えば、メチルリチウム、n‐ブチルリチウム等が挙げられ、好ましくはn‐ブチルリチウムであることができる。
【0031】
本発明の一実施形態による方法は、下記化学式11で表される化合物の存在下で、下記化学式12で表される化合物と下記化学式13で表される化合物とを反応させることで下記化学式14で表される化合物を製造する段階と、下記化学式14で表される化合物と下記化学式15で表される化合物とを反応させることで前記化学式3で表される化合物を製造する段階と、をさらに含むことができる。
【0032】
[化学式11]
MX
11
【0033】
[化学式12]
【化13】
【0034】
[化学式13]
【化14】
【0035】
[化学式14]
【化15】
【0036】
[化学式15]
HN(R
6)(R
7)
【0037】
(前記化学式11〜15中、
Mは、B、Al、またはSnであり;
R
11〜R
13は、互いに独立して、(C1‐C7)アルキルであり;
R
4〜R
5は、互いに独立して、水素、ハロゲン、(C1‐C7)アルキル、(C2‐C7)アルケニル、(C2‐C7)アルキニル、(C3‐C7)シクロアルキル、または(C6‐C12)アリールであり、
R
6〜R
7は、互いに独立して、水素、(C1‐C7)アルキル、(C2‐C7)アルケニル、(C2‐C7)アルキニル、(C3‐C10)シクロアルキル、または(C6‐C12)アリールであり;
X
11及びX
12は、互いに独立して、ハロゲンである。)
【0038】
本発明の一実施形態による化学式11は、ハロゲン化金属であることができる。ここで、金属は、B、Al、またはSnであり、好ましくはAlであることができる。
【0039】
本発明の製造方法で使用される溶媒としては、通常の有機溶媒のうち、出発物質と反応しない溶媒であれば全て使用可能である、例えば、前記溶媒は、ノルマルヘキサン(n‐Hexane)、シクロヘキサン、ノルマルペンタン(n‐Pentane)、ジエチルエーテル、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、卜リクロロメタン(クロロホルム)からなる群から選択される1種以上が選択されることができる。
【0040】
本発明の製造方法における反応温度は、通常の有機合成で利用される温度であればよいが、反応時間、反応物質、及び出発物質の量に応じて変わり得る。また、NMR及びGC等により出発物質が完全に消耗されたことを確認した後に反応を完了させることが好ましい。反応が完了すると、濾過過程を経た後、単蒸留及び減圧下で溶媒を除去させた後、分別蒸溜または減圧蒸溜等の通常の方法で目的物を分離精製してもよい。
【0041】
また、本発明は、本発明のアミノシリルアミン化合物を含有するシリコン含有薄膜用組成物、及びアミノシリルアミン化合物を含有するシリコン含有薄膜の製造方法を提供する。
【0042】
本発明のシリコン含有薄膜用組成物には、本発明のアミノシリルアミン化合物が薄膜蒸着用前駆体として含有される。本発明の組成物中のアミノシリルアミン化合物の含量は、薄膜の成膜条件、薄膜の厚さ、特性等を考慮して、当業者が認識できる範囲内で含有されることができる。
【0043】
また、本発明は、本発明のアミノシリルアミン化合物を含有して製造されたシリコン含有薄膜を提供する。
【0044】
本発明のシリコン含有薄膜は、通常の方法で製造されることができ、例とえば、有機金属化学気相成長法(MOCVD)、原子層蒸着法(ALD)、減圧化学蒸着法(LPCVD)、プラズマ強化気相蒸着法(PECVD)、またはプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)等が挙げられる。
【0045】
本発明のアミノシリルアミン化合物を前駆体として使用して製造されたシリコン含有薄膜は、本発明のアミノシリルアミン化合物が低い活性化エネルギを有するため、反応性が高く、非揮発性の副生成物が殆ど発生しないため、高い純度及び優れた物理的、電気的特性を有する。
【発明の効果】
【0046】
本発明のアミノシリルアミン化合物が優れた熱的安定性及び高い反応性を有するため、これを前駆体として製造されたシリコン含有薄膜は、高い純度及び非常に優れた物理的、電気的特性を有する。
【0047】
また、本発明のアミノシリルアミン化合物は、シリコン含量が高く、常温及び常圧で液体状態で存在するため、保管及び取り扱いが容易であり、揮発性が高くて蒸着速度が速く且つ容易であるだけでなく、優れた凝集力及びステップカバレッジを有する薄膜の蒸着が可能である。
【0048】
また、本発明のアミノシリルアミン化合物を前駆体として使用して製造されたシリコン含有薄膜は、高い純度及び非常に優れた物理的、電気的特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明を下記の実施例に基づいてより詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものにすぎず、本発明を限定するものではない。
【0051】
以下の全ての化合物に係る実施例は、グローブボックスまたはシュレンクフラスコを用いて、無水及び不活性雰囲気下で行った。また、その生成物は、プロトン核磁気共鳴分光法(NMR)、熱重量分析法(TGA)、及びガスクロマトグラフィー(GC)により分析し、蒸着した薄膜の厚さは、エリプソメータ(Ellipsometer)及び透過型電子顕微鏡(TEM)で測定した。また、赤外線分光器及びオージェ電子分光器(AES)を用いて、蒸着された薄膜の組成を分析した。
【0052】
[実施例1]ジエチルアミノジメチルジシラザンの合成
無水及び不活性雰囲気下で火炎乾燥された2000mLのシュレンクフラスコにヘキサメチルジシラザン(((CH
3)
3Si)
2NH)250g(1.55mol)及びアルミニウムクロライド(AlCl
3)10g(0.075mol)を入れて撹拌しながら、ジクロロジメチルシラン((CH
3)
2SiCl
2)499.80g(3.87mol)を25℃に維持しながら徐々に添加した後、反応溶液を徐々に40℃に昇温させた。この混合反応溶液を3時間撹拌し、生成されたクロロトリメチルシラン((CH
3)
3SiCl)及び過量添加されたジクロロジメチルシラン((CH
3)
2SiCl
2)を単蒸留または減圧蒸溜により除去した。回収されたクロロジメチルジシラザン(((CH
3)
2SiCl)
2NH))溶液を撹拌しながら、ジエチルアミン((CH
3CH
2)
2NH)475.45g(6.5mol)を−15℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、常温で6時間撹拌した。濾過して生成された白色固体を除去した後、濾過液を得た。この濾過液から溶媒を減圧下で除去し、減圧蒸溜によりジエチルアミノジメチルジシラザン((CH
3)
2SiN(CH
2CH
3)
2)
2NH)319.90g(1.16mol)を得た(収率75%)。
【0053】
1H NMR(inC
6D
6)δ 0.14(s, 12H, HNSi(CH
3)
2N), 0.97(t, 12H, Si(NCH
2CH
3)
2), 3.42(q, 8H, Si(NCH
2CH
3)
2),沸点238℃
【0054】
[実施例2]ジメチルアミノジメチルジシラザンの合成
無水及び不活性雰囲気下で火炎乾燥された2000mLのシュレンクフラスコにヘキサメチルジシラザン(((CH
3)
3Si)
2NH)250g(1.55mol)及びアルミニウムクロライド(AlCl
3)10g(0.075mol)を入れて撹拌しながら、ジクロロジメチルシラン((CH
3)
2SiCl
2)499.80g(3.87mol)を25℃に維持しながら徐々に添加した後、反応溶液を徐々に40℃に昇温させた。この混合反応溶液を3時間撹拌し、生成されたクロロトリメチルシラン((CH
3)
3SiCl)及び過量添加されたジクロロジメチルシラン((CH
3)
2SiCl
2)を単蒸留または減圧蒸溜により除去した。回収されたクロロジメチルジシラザン(((CH
3)
2SiCl)
2NH))溶液を撹拌しながら、ジメチルアミン((CH
3)
2NH)168.52g(4.2mol)を−15℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、常温で6時間撹拌した。濾過して生成された白色固体を除去した後、濾過液を得た。この濾過液から溶媒を減圧下で除去し、減圧蒸溜によりジメチルアミノジメチルジシラザン((CH
3SiHN(CH
3)
2)
2NH)146.51g(0.74mol)を得た(収率75%)。
【0055】
1H-NMR(inC
6D
6)δ 0.09(s, 12H, (((CH
3)
2)
2N(CH
3)
2Si)
2NH), 2.45(s, 12H, (((CH
3)
2)
2N(CH
3)
2Si)
2NH).
【0056】
[実施例3]ビスジエチルアミノジメチルシリルトリメチルシリルアミンの合成
無水及び不活性雰囲気下で火炎乾燥された2000mLのフラスコに実施例1で合成されたジエチルアミノジメチルジシラザン((CH
3)
2SiN(CH
2CH
3)
2)
2NH)180g(0.65mol)及び有機溶媒n‐ヘキサン200mlを入れて撹拌しながら、2.29M濃度のノルマルブチルリチウム(n‐C
4H
9Li)ヘキサン(C
6H
14)溶液202.16g(0.65mol)を−15℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した反応溶液を徐々に常温に昇温し、12時間撹拌した後、テトラヒドロフラン(O(C
2H
2)
2)200mlを添加した。この反応溶液にクロロトリメチルシラン70.94g(0.65mol)を−20℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した反応溶液を徐々に昇温し、65℃に維持しながら12時間撹拌した。反応が終わった反応混合物を濾過して生成された白色固体を除去した後、濾過液を得た。この濾過液から溶媒を減圧下で除去し、減圧蒸溜によりビスジエチルアミノジメチルシリルトリメチルシリルアミン((CH
3)
3SiN(Si(CH
3)
2N(CH
2CH
3)
2)
2)159g(0.46mol)を得た(収率70%)。
【0057】
1H-NMR(inC
6D
6)δ 0.30(s, 12H, NSi(CH
3)
2N), 0.32(s, 9H, Si(CH
3)
3), 0.99(t, 12H, Si(NCH
2CH
3)
2), 2.82(q, 8H, Si(NCH
2CH
3)
2); 沸点279℃; GC分析結果>99.85%.
【0058】
[実施例4]ビスジメチルアミノジメチルシリルジメチルシリルアミンの合成
無水及び不活性雰囲気下で火炎乾燥された2000mLのフラスコに実施例2で合成されたジメチルアミノジメチルジシラザン((CH
3)
2SiN(CH
3)
2)
2NH)140g(0.64mol)及び有機溶媒n‐ヘキサン200mlを入れて撹拌しながら、2.29M濃度のノルマルブチルリチウム(n‐C
4H
9Li)ヘキサン(C
6H
14)溶液185.74g(0.64mol)を−15℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した反応溶液を徐々に常温に昇温し、12時間撹拌した後、テトラヒドロフラン(O(C
2H
2)
2)200mlを添加した。この反応溶液にクロロジメチルシラン60.36g(0.64mol)を−20℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した反応溶液を徐々に昇温し、65℃に維持しながら12時間撹拌した。濾過して生成された白色固体を除去した後、濾過液を得た。この濾過液から溶媒を減圧下で除去し、減圧蒸溜によりビスジメチルアミノジメチルシリルジメチルシリルアミン(((CH
3)
2)
2N(CH
3)
2Si)
2NSiH(CH
3)
2)123.96g(0.45mol)を得た(収率65%)。
【0059】
1H-NMR(inC
6D
6)δ 0.21(s, 12H, ((CH
3)
2)
2N(CH
3)
2Si)
2N), 0.30(d, 6H, NSiH(CH
3)
2), 2.41(t, 12H, ((CH
3)
2)
2N(CH
3)
2Si)
2N), 4.61(m, 1H, NSiH(CH
3)
2);沸点229℃;GC分析結果>99.39%.
【0060】
[実施例5]トリスジエチルアミノジメチルシリルアミンの合成
無水及び不活性雰囲気下で火炎乾燥された2000mLのフラスコに実施例1で合成されたジエチルアミノジメチルジシラザン((CH
3)
2SiN(CH
2CH
3)
2)
2NH)180g(0.65mol)及び有機溶媒n‐ヘキサン200mlを入れて撹拌しながら、2.29M濃度のノルマルブチルリチウム(n‐C
4H
9Li)ヘキサン(C
6H
14)溶液202.16g(0.65mol)を−15℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した反応溶液を徐々に常温に昇温し、12時間撹拌した後、テトラヒドロフラン(O(C
2H
2)
2)200mlを添加した。この反応溶液に、ジクロロジメチルシラン(Cl
2Si(CH
3)
2)と2当量のジエチルアミンとを定量的に反応させて合成したクロロジメチルジエチルアミノシラン((CH
3CH
2)
2NSiCl(CH
3)
2)108.25g(0.65mol)を−20℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した反応溶液を徐々に昇温し、65℃に維持しながら12時間撹拌した。反応が完了した反応混合物を濾過して生成された白色固体を除去した後、濾過液を得た。この濾過液から溶媒を減圧下で除去し、減圧蒸溜によりトリスジエチルアミノシリルアミン(N(Si(CH
3)
2N(CH
2CH
3)
2)
3)119.00g(0.29mol)を得た(収率45%)。
【0061】
1H NMR(inC
6D
6)δ 0.37(s, 18H, NSi(CH
3)
2N), 1.02(t, 18H, Si(NCH
2CH
3)
2), 2.86(q, 12H, Si(NCH
2CH
3)
2);沸点311℃;GC分析結果>99.27%.
【0062】
[実施例6]トリスジエチルアミノジメチルシリルアミンの合成
無水及び不活性雰囲気下で火炎乾燥された2000mLのフラスコに実施例1で合成されたジエチルアミノジメチルジシラザン((CH
3)
2SiN(CH
2CH
3)
2)
2NH)180g(0.65mol)及び有機溶媒n‐ヘキサン200mlを入れて撹拌しながら、2.29M濃度のノルマルブチルリチウム(n‐C
4H
9Li)ヘキサン(C
6H
14)溶液202.16g(0.65mol)を−15℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した反応溶液を徐々に常温に昇温し、12時間撹拌した後、テトラヒドロフラン(O(C
2H
2)
2)200mlを添加した。この反応溶液にジクロロジメチルシラン84.30g(0.65mol)を−20℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した反応溶液を徐々に昇温し、65℃に維持しながら12時間撹拌した。反応混合物を濾過して生成された白色固体を除去した後、濾過液を得た。この濾過液を撹拌しながら、ジエチルアミン(HN(C
2H
5)
2)と2.29M濃度のノルマルブチルリチウム(n‐C
4H
9Li)ヘキサン(C
6H
14)溶液とを定量的に反応させて得たリチウムジエチルアミン塩(LiN(C
2H
5)
2)51.65g(0.65mol)を−20℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した反応溶液を徐々に昇温し、65℃に維持しながら12時間撹拌した。反応混合物を濾過して生成された白色固体を除去した後、濾過液を得た。この濾過液から溶媒を減圧下で除去し、減圧蒸溜によりトリスジエチルアミノシリルアミン(N(Si(CH
3)
2N(CH
2CH
3)
2)
3)171.88g(0.42mol)を得た(収率65%)。
【0063】
1H NMR(inC
6D
6)δ 0.37(s, 18H, NSi(CH
3)
2N), 1.02(t, 18H, Si(NCH
2CH
3)
2), 2.86(q, 12H, Si(NCH
2CH
3)
2);沸点311℃;GC分析結果>99.27%.
【0064】
[実施例7]ジメチルアミノメチルジシラザンの合成
無水及び不活性雰囲気下で火炎乾燥された2000mLのシュレンクフラスコにヘキサメチルジシラザン(((CH
3)
3Si)
2NH)250g(1.55mol)及びアルミニウムクロライド(AlCl
3)10g(0.075mol)を入れて撹拌しながら、ジクロロメチルシラン(CH
3SiHCl
2)713.19g(6.20mol)を25℃に維持しながら徐々に添加した後、反応溶液を徐々に40℃に昇温させた。この混合反応溶液を3時間撹拌し、生成されたクロロトリメチルシラン((CH
3)
3SiCl)及び過量添加されたジクロロメチルシラン(CH
3SiHCl
2)を単蒸留または減圧蒸溜により除去した。回収されたクロロメチルジシラザン((CH
3SiHCl)
2NH))溶液を撹拌しながら、ジメチルアミン((CH
3)
2NH)293.47g(4.2mol)を−15℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、常温で6時間撹拌した。濾過して生成された白色固体を除去した後、濾過液を得た。この濾過液から溶媒を減圧下で除去し、減圧蒸溜によりジメチルアミノメチルジシラザン((CH
3SiHN(CH
3)
2)
2NH)222.54g(1.16mol)を得た(収率75%)。
【0065】
1H-NMR(inC
6D
6):δ 0.12(s, 6H, ((CH
3)SHiN),
2.47(s, 12H, (((CH
3)
2)
2NSi), 4.43(m, 2H, ((CH
3)HSiNH).
【0066】
[実施例8]ビスジメチルアミノメチルシリルトリメチルシリルアミンの合成
無水及び不活性雰囲気下で火炎乾燥された2000mLのフラスコに実施例7で合成されたジメチルアミノメチルジシラザン((CH
3SiHN(CH
3)
2)
2NH)191.43g(1.00mol)及び有機溶媒n‐ヘキサン200mlを入れて撹拌しながら、2.29M濃度のノルマルブチルリチウム(n‐C
4H
9Li)ヘキサン(C
6H
14)溶液303.32g(1.00mol)を−15℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した反応溶液を徐々に常温に昇温し、12時間撹拌した後、テトラヒドロフラン(O(C
2H
2)
2)300mlを添加した。この反応溶液に、クロロトリメチルシラン108.64g(1.00mol)を−20℃に維持しながら徐々に添加した。添加が完了した反応溶液を徐々に昇温し、65℃に維持しながら12時間撹拌した。反応が終わった反応混合物を濾過して生成された白色固体を除去した後、濾過液を得た。この濾過液から溶媒を減圧下で除去し、減圧蒸溜によりビスジメチルアミノメチルシリルトリメチルシリルアミン((CH
3)
3SiN(SiH(CH
3)N(CH
3)
2)
2)184.53g(0.70mol)を得た(収率70%)。
【0067】
1H-NMR(inC
6D
6)δ 0.29(m, 15H, NSiH(CH
3)N(CH
3)
2, NSi(CH
3 )
3) 2.46(m, 12H, NSiH(CH
3)N(CH
3)
2), 4.76(m, 2H, NSiH(CH
3)N(CH
3)
2);沸点237℃;GC分析結果>99.5%。
【0068】
[実施例9]プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)によるアミノシリルアミン化合物のシリコン酸化膜の蒸着
本発明の実施例3〜実施例6及び実施例8のアミノシリルアミン化合物がそれぞれ含有されたシリコン含有薄膜蒸着用組成物を使用して、公知のプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いるプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)装置で下記表1に記載の条件でシリコン酸化薄膜を製造し、その膜の特性を評価した。反応ガスとして酸素を使用し、不活性気体のアルゴンをパージガスとして使用した。以下、
図8及び表1に具体的なシリコン酸化薄膜の蒸着方法を示した。
【0070】
蒸着した薄膜の厚さをエリプソメータ(Ellipsometer)で測定し、赤外線分光器を用いてシリコン酸化膜の形成を観察した。
図9はエリプソメータで観察した薄膜の厚さを示したものである。薄膜の厚さは、99〜112.5A(オングストローム)の範囲で、置換基の種類及び個数に応じて異なっていた。このことから、高い蒸着率が要求されるシリコン酸化薄膜を応用する全分野で有用に用いられると判断される。
図10は、蒸着された薄膜を赤外線分光器で分析した結果である。全ての薄膜がシリコン酸化膜を形成したことが確認され、C‐H、Si‐OH等の不純物ピークは観察されなかった。
【0071】
すなわち、本発明により製造された新規なアミノシリルアミン化合物は、プラズマ原子層蒸着工程(PEALD)を用いて高い蒸着率及び高純度のシリコン酸化薄膜を形成するにおいて、その活用度が高いと確認された。
【0072】
[比較例]プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)による公知のアミノシリルアミン化合物のシリコン酸化膜の蒸着
下記表2に記載のように、公知のアミノシリルアミン化合物を使用したことを除き、実施例9で行った蒸着条件と同一の条件で、公知のプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いてシリコン酸化膜を形成し、膜の特性評価を行った。また、蒸着した薄膜の分析は、実施例9で行った分析方法と同一の条件で行って分析結果を得た。以下、
図8及び表2に具体的なシリコン酸化薄膜の蒸着方法を示した。
【0073】
薄膜の厚さは21〜35.5A(オングストローム)の範囲で、実施例3〜実施例6及び実施例8のアミノシリルアミンより低い蒸着率であった。また、全ての薄膜がシリコン酸化膜を形成したと確認された。
【0075】
[実施例10]プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)によるアミノシリルアミン化合物のシリコン窒化膜及びシリコン炭窒化膜の蒸着
本発明の実施例3〜実施例6及び実施例8のアミノシリルアミン化合物を含有するシリコン含有薄膜蒸着用組成物を使用して、公知のプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いる通常のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)装置でシリコン窒化膜及びシリコン炭窒化膜を形成し、その膜の特性評価を行った。反応ガスとして窒素(N
2)、アンモニア(NH
3)、及びアルゴン(Ar)を単独または混合して使用し、不活性気体のアルゴンをパージガスとして使用した。以下、
図8及び表3に具体的なシリコン窒化膜及びシリコン炭窒化膜の蒸着方法を示した。
【0077】
蒸着した薄膜の厚さはエリプソメータ(Ellipsometer)及び透過型電子顕微鏡(TEM)で測定し、赤外線分光器(IR)及びオージェ電子分光器(AES)を用いてシリコン窒化膜及びシリコン炭窒化膜の形成を観察した。
図11は、エリプソメータ及び透過型電子顕微鏡を用いて観察した薄膜の蒸着率を示したものである。
図11に示すように、薄膜の蒸着率は0.43〜4.25A(オングストローム)の範囲で、置換基の種類、個数、及び反応ガスに応じて異なっていた。
図12は、形成された薄膜の厚さを透過型電子顕微鏡で観察した結果であって、これに基づいて薄膜の蒸着率を検証した。
図13は赤外線分光器を、
図14はオージェ電子分光器を用いて、蒸着された薄膜の組成を分析した結果である。
図13及び
図14から分かるように、窒素(N
2)とアンモニア(NH
3)とを混合して使用した場合にはシリコン窒化物薄膜が形成され、窒素またはアルゴンを単独で使用した場合及び窒素とアルゴンとを混合して使用した場合には、炭素が1.79〜11.72%含有されたシリコン炭質化薄膜が形成された。
図15は、本発明の実施例10で形成されたシリコン窒化薄膜及びシリコン炭質化薄膜と、既存の高温で化学気相蒸着法(MOCVD)、減圧化学蒸着法(LPCVD)、及びプラズマを用いた化学気相蒸着法(PECVD)により形成されたシリコン酸化薄膜またはシリコン窒化薄膜とを比較するために、フッ化水素(300:1 BOE 溶液)に対する耐性を比較分析した結果である。
図15に示したように、本発明の実施例10で製造されたシリコン窒化薄膜及びシリコン炭質化薄膜が、TOX(高温で化学気相蒸着法(MOCVD)により形成されたシリコン酸化薄膜)に比べ0.25〜2.53倍、LP SiN(減圧化学蒸着法(LPCVD)により形成されたシリコン窒化薄膜)に比べ5.17〜28.11倍、PE SiN(プラズマを用いた化学気相蒸着法(PECVD)により形成されたシリコン窒化薄膜)に比べ0.23〜4.92倍のエッチング速度を有することが確認された。このことから、既存に公知のプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)により蒸着したシリコン窒化薄膜に比べ、フッ化水素に対する耐性が高いということが分かった。
【0078】
すなわち、本発明により製造された新規なアミノシリルアミン化合物は、プラズマ原子層蒸着工程により低温で蒸着可能な高純度のシリコン窒化薄膜及びシリコン炭質化薄膜を形成するにおいて、その活用度が高いと確認され、シリコン窒化薄膜を応用する全分野で有用に用いられると判断される。