特許第6018134号(P6018134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018134
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】注射筒安全シールドおよび自動注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20161020BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   A61M5/20
   A61M5/32 510K
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-148155(P2014-148155)
(22)【出願日】2014年7月18日
(62)【分割の表示】特願2011-525620(P2011-525620)の分割
【原出願日】2009年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-221407(P2014-221407A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】0815923.8
(32)【優先日】2008年9月2日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/093,655
(32)【優先日】2008年9月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/099,731
(32)【優先日】2008年9月24日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501410160
【氏名又は名称】オウエン マンフォード リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】イートン,マーク
【審査官】 鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−528040(JP,A)
【文献】 特表2007−515996(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/111862(WO,A1)
【文献】 特表2004−537376(JP,A)
【文献】 特開2005−177503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取外し可能な注射筒組立体を使用時に受容するようになっている自動注射器であって、前記注射筒組立体は、注射筒胴部(14)と、該注射筒胴部の前方端に位置する注射針(18)と、該注射針を通じて投与分量を放出するプランジャ(12)とを有する注射筒(10)を備えるとともに、注射後に前記注射針を保護するように前方に移動されるシールド(30)をさらに備える、自動注射器において、
前記注射筒組立体を前記注射筒の長手方向に沿って受容するように構成されるハウジング(52)と、
前方に移動するよう使用時に解放可能な駆動部材(56)を備えていて、前記注射筒のプランジャを前方に駆動する駆動機構部と、
前記注射筒を前記ハウジングに対して前方に移動させる、注射筒移動体(60)と、
前記注射筒移動体に対して前記シールドを前方に移動させる、シールド移動体(68)と、
前記駆動部材が解放されるまで、前記注射筒移動体に対して前記シールド移動体が前方に移動するのを制約するよう配列されていて、前記駆動部材と一緒に移動可能な制御要素(66)と、を備える、自動注射器。
【請求項2】
前記注射筒移動体(60)を前記ハウジングに対して前方に付勢する注射筒移動体付勢手段(62)を備える、請求項に記載の自動注射器。
【請求項3】
前記シールド移動体を前記注射筒移動体に対して前方に付勢するシールド移動体付勢手段(76)を備える、請求項1または2に記載の自動注射器。
【請求項4】
前記制御要素(66)は、前記駆動部材が準備位置に在るときに、前記注射筒移動体及び前記シールド移動体の両方をそれぞれの後退位置に保持するとともに、解放されたときには、前記ハウジングに対してこれら両方を移動できるようにするとともに、これら両方を互いに対して移動できるようにする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は注射筒安全シールドに関し、限定されないが、特に自動注射器用の使い捨て注射筒配列体に用いられる安全シールド配列体に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てにする必要のある材料または構成要素の用量の削減および再使用可能な自動注射器に対する需要が増大している。同時に、安全性の要件は、使用後において、使い捨ての構成要素が針刺し損傷の危険を低減する安全な状態であることを要求している。また、自動注射器が利用できない場合に手動で使用可能であるか、自動注射器において使用可能であって、それぞれ注射後における注射針棒の保護作用を提供する、注射筒安全シールド組立体に対するニーズがある。手動による注射がされた後に注射筒の注射針を被覆する多くの配列体が公知である。また、使用後に注射針を被覆する使い捨て自動注射器配列体も多く存在する。しかしながら、自動注射器を含んでいて少数の構成要素から構成される、多数の異なる適用例において用いられうる注射筒安全シールド配列体に対するニーズがある。
【0003】
注射が完了すると注射針を保護する閉塞式注射針シールドを付与する自動注射器は公知であるが、かかるデバイスは、結果的に環境影響を伴う一回きりの使い捨て自動注射器として、或いは注射針を保護することなく使用済み注射筒が取り外されて自動注射器の再使用が可能である、複数回使用される注射器として設計されたものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、一態様において、本発明は、注射筒胴部と、前方端に位置する注射針と、プランジャと、を有する注射筒を備えた使い捨て注射筒組立体を受容するハウジングを有する自動注射デバイスを安全シールド配列体とともに備える、自動注射システムであって、
前記注射筒胴部を受容するとともに前記注射筒胴部に対する長手方向の移動が制約される注射筒ハウジングと、
後退位置と延伸位置との間において、前記注射筒ハウジングに対して概ね入れ子状に移動するよう取り付けられたシールド部とを備え、該シールド部は、使用時に前記延伸位置において前記注射筒の注射針を保護し、
さらに、
前記シールド部が延伸位置に向かって移動するのに従って、該延伸位置からの後退動作を妨げるのに有効な閉塞配列体を備え、
前記自動注射デバイスは、前記注射筒を注射位置まで前進させ、前記プランジャを駆動して投与分量を排出するとともに、閉塞される延伸位置まで前記シールド部を移動させる、駆動機構部を備えており、
注射動作が完了すると、前記使い捨て注射筒組立体が、後に廃棄される際に前記自動注射デバイスから保護された状態で除去されうるようになる、自動注射システムを提供する。
【0005】
したがって、注射動作が完了すると安全に廃棄できるように注射筒が保護されるとともに、捨てられる構成要素の数が少なくなり、それにより環境影響を低減するようになる。この安全シールド配列体は、手動で用いられる注射筒を保護するために用いてもよい。
【0006】
したがって、他の態様において、注射筒胴部と、該注射筒胴部の前方端に位置する注射針と、プランジャとを有する注射筒とともに用いられる安全シールド配列体であって、
使用時に前記注射筒胴部に連結されるとともに前記注射筒胴部に対する長手方向の移動が制約される注射筒ハウジングと、
後退位置と延伸保護位置との間において、前記注射筒ハウジングに対して概ね入れ子状に移動するよう取り付けられたシールド部とを備え、該シールド部は、使用時に前記延伸保護位置において前記注射筒の注射針を保護し、
さらに、
前記シールド部が延伸保護位置に向かって移動するのに従って、該延伸保護位置からの後退動作を妨げるのに有効な閉塞配列体を備える、安全シールド配列体が提供される。
【0007】
容易に組み立てられるように、前記注射筒ハウジングは、前記注射筒を前記注射筒ハウジング内部に弾性的に保持する係合手段、例えばスナップ嵌合部を付与する表面を有するのが好ましい。
前記閉塞配列体が、前記注射筒ハウジングと前記シールド部とのうちの一方において弾性変形可能な係止部を備えるとともに、該係止部が、前記注射筒ハウジングと前記シールド部とのうちの他方における係止面にスナップ係合してもよい。前記注射筒ハウジングに対する前記シールド部の前方への延伸移動の範囲は、協働停止面によって制限されうる。前記シールド部が前方に延伸する前に前記シールド部を後退位置において解放可能に保持する、係止部を付与してもよい。
自動注射器が、後に廃棄される安全シールド部を備えたシリンジとともに用いられ、注射針シールド部が自動注射器の恒久的な構成要素ではない場合、自動注射器の操作順序は重要な点である。
【0008】
したがって、他の態様において、取外し可能な注射筒組立体を使用時に受容するようになっている自動注射器であって、前記注射筒組立体は、胴部と、該胴部の前方端に位置する注射針と、該注射針を通じて投与分量を放出するプランジャとを有する注射筒を備えるとともに、注射後に前記注射針を保護するように前方に移動されるシールドをさらに備える、自動注射器において、
ハウジングと、
前方に移動するよう解放可能な駆動部材を備えていて、使用時に前記注射筒のプランジャを前方に駆動する駆動機構部と、
前記注射筒胴部を前記ハウジングに対して前方に移動させる、注射筒移動体と、
前記注射筒移動体に対して前記シールドを前方に移動させる、シールド移動体と、
前記駆動部材が解放されるまで、前記シールド移動体が前方に移動するのを妨げるよう配列された前記駆動部材に関連付けられた制御要素とを備える、自動注射器が提供される。
【0009】
自動注射器は、好ましくは前記注射筒移動体を前記ハウジングに対して前方に付勢する注射筒移動体付勢手段を備えるとともに、前記シールド移動体を前記注射筒移動体に対して前方に付勢するシールド移動体付勢手段を備える。この態様において、注射段階に際して注射筒およびシールド部の移動が各付勢手段によって助勢される。前記制御要素が、前記駆動部材と、前記注射筒移動体および前記シールド移動体のうちの少なくとも一方とに協働し、前記駆動部材が準備位置に在るときに、前記注射筒移動体および前記シールド移動体の両方を後退位置に保持するとともに、解放されたときには、前記駆動部材に対してこれら両方を移動できるようにするとともに、それぞれ独立して移動できるようにこれら両方を互いに移動できるようにするのが有利である。
【0010】
以上、本発明について述べたが、本発明は、前掲の特徴または後述する詳細な説明若しくは特許請求の範囲に係る特徴の任意の発明的組合せに及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従って、自動注射器においてまたは手動で用いられる安全シールドが嵌め合わされた注射筒の概略斜視図である。
図2図1の配列体の分解図である。
図3】シールドが完全に延伸された状態において、注射筒を除去して示す図1に類似する図である。
図4(a)】注射筒ハウジングの端部において、ハウジングのみを示す詳細図である。
図4(b)】注射筒ハウジングの端部において、ハウジング、注射筒およびシールドを示す詳細図である。
図4(c)】注射筒ハウジングの端部において、シールドのみを示す詳細図である。
図5(a)】シールドを注射筒ハウジングの保持位置において解放可能に係止する係止配列体を示す詳細図である。
図5(b)】シールドを注射筒ハウジングの保持位置において解放可能に係止する係止配列体を示す詳細図である。
図6(a)】閉塞特徴部を説明するために注射筒ハウジングの下面を示す図である。
図6(b)】閉塞特徴部を説明するためにシールドの下面を示す図である。
図7(a)】後退位置において解放可能に係止されたシールドを示す詳細断面図である。
図7(b)】延伸位置において閉塞されたシールドを示す詳細断面図である。
図8図1の注射筒安全シールド配列体を受容する自動注射器において、自動注射器の上方ハウジングを除去して示す頂部側斜視図である。
図9】上方ハウジングが所定位置に在る図8の自動注射器を前方かつ上方から見た斜視図である。
図10】自動注射器ハウジングから取り外されていて90度にわたって回転された、図8および図9の自動注射器の主たる駆動部構成要素を示す図である。
【0012】
図11】注射筒移動体を上方から見た斜視図である。
図12】注射筒移動体を下方から見た斜視図である。
図13(a)】装填位置における注射筒移動体およびシールド駆動部を下方から見た図である。
図13(b)】装填位置における注射筒移動体およびシールド駆動部を上方から見た図である。
図14(a)】注射開始位置における注射筒移動体およびシールド駆動部を上方から見た図である。
図14(b)】注射開始位置における注射筒移動体およびシールド駆動部を下方から見た図である。
図15(a)】シールド移動体とシールドとの係合状態を示す詳細図である。
図15(b)】シールド移動体を示す詳細図である。
図16(a)】装填位置において、注射筒プランジャ、注射筒胴部およびシールドに駆動作用を付与する構成要素を一側から見た側方斜視図である。
図16(b)】装填位置において、注射筒プランジャ、注射筒胴部およびシールドに駆動作用を付与する構成要素を下方から見た背面斜視図である。
図17(a)】注射開始位置における構成要素を示す、図16(a)に類似する図である。
図17(b)】注射開始位置における構成要素を示す、図16(b)に類似する図である。
図18(a)】自動注射器のトリガ組立体の詳細図である。
図18(b)】自動注射器のトリガ組立体の詳細図である。
図18(c)】自動注射器のトリガ組立体の詳細図である。
図19(a)】図9図18(c)の自動注射器の動作サイクルを示す図である。
図19(b)】図9図18(c)の自動注射器の動作サイクルを示す図である。
図19(c)】図9図18(c)の自動注射器の動作サイクルを示す図である。
図19(d)】図9図18(c)の自動注射器の動作サイクルを示す図である。
図19(e)】図9図18(c)の自動注射器の動作サイクルを示す図である。
図19(f)】図9図18(c)の自動注射器の動作サイクルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は種々の態様において実施されうる。ここで、添付図面を参照して本発明の実施形態について例示のみのために説明する。
まず図1図7(b)を参照して、注射筒安全シールド配列体について最初に説明する。この配列体は、図8図19(f)を参照して後述する自動注射器に嵌め合わされるように形成されるが、手動で用いられる注射筒を保護するために用いてもよい。
図1において、プランジャ12と、外方に湾曲したフランジ16を備えた胴部14とを有する注射筒10(図2参照)が、注射前において注射筒の注射針がキャップ18により覆われた状態で示される。注射筒は被覆組立体内に嵌め合わされており、該被覆組立体は、後方端において注射筒胴部のフランジ16に係合する嵌合部24と、注射筒キャリアのスリット28により形成される薄型の可撓性ストリップに接続された外方に向いた返し部26とを有する、開放トラフ形態の注射筒キャリア22を備えている。シールド30は、注射筒キャリア22に被さって入れ子状に嵌り合う直径を有する下方円筒部と、注射筒胴部14に被さって入れ子状に摺動するよう形成されていて下方円筒部の直径よりわずかに小さい直径を有する上方円筒部とを備えている。シールドには2つのスロット32が形成されており、これらスロット32は、注射筒キャリア22がシールド30内部を摺動するときに返し部26と協働して、シールド30の延伸移動を制限する。注射筒キャリアにおけるスリット28によって、返し部26は内方に撓むことができて組付け可能であるが、注射筒10がいったん挿入されると、返し部の内方への撓み動作は注射筒胴部14によって妨げられる。
【0014】
図4(a)、図4(b)および図4(c)は端部の詳細図であり、注射筒のフランジが如何にして嵌合部24にスナップ係合されうるかについて示している。また、図4(c)において、シールド30を注射筒キャリア22に対して後退位置に緩くクリップ留めする保持係止部34を視認できる。このことは、図5(a)、図5(b)、図6(a)および図6(b)においてより詳細に分かる。保持係止部34が可撓性指部36の端部に在り、十分な引張作用がシールド30に付与されたときにこの係止状態を解除できることが分かるであろう。保持係止部は、注射筒キャリア22の端部側嵌合部の一部を形成する窪み36に係合する。
【0015】
ここで図6(a)、図6(b)、図7(a)および図7(b)をより詳細に参照すると、指部36の半径方向内面には、注射筒キャリアに形成されたスロット40内に延びる閉塞係止部38が付与されている。スロット40は、その前方端の傾斜面において終端しており、傾斜面の前方には閉塞窪み43が形成されている。自動注射器において用いられる駆動突起部(drive lug)42は、可撓性指部36の前方であって、シールド30のうちの比較的可撓性を呈しない部分に位置していて、注射が完了するとシールドを前方に駆動する。
したがって、前述した注射筒安全シールド配列体は、注射筒を注射筒キャリア22にスナップ嵌めできるようにするとともに、注射後においては、閉塞窪み43において閉塞係止部38の係合作用によって閉塞されるまで、シールド30を前方に引っ張れるようにしている。
【0016】
ここで図8図17(b)に示される自動注射器50を参照すると、この自動注射器50は、後方端において閉止しているが、開放されたアクセス用の前方端を付与する外方ケーシング52を備えており、前述した安全シールド内に嵌め合わされた注射筒を備えたモジュールが、注射動作のために前方端に嵌め合わされうる。自動注射器は、プランジャ56を引くためにカバー部54を後方に摺動させることによって準備され、次いでデバイスの後方端において略同一平面をなすボタン58を押すことによって、この配列体において注射開始がされる。
【0017】
図8および図10を参照すると、1対の注射筒移動体バネ62によって前方に付勢された注射筒移動体60がケーシング内部に取り付けられている。プランジャ56は定力バネ64によって前方に付勢されており、定力バネ64の前方端はハウジング52の内部に固定されている。スロットが形成されたリセットアーム66は、プランジャに固定されていて、プランジャと一緒に長手方向に移動するとともに、後述するように注射筒および種々の構成要素の移動を制御する。シールド移動体68は注射筒移動体の底面に摺動可能に配置されるとともに、解放可能なスナップ嵌合作用によりシールド30の駆動突起部42を使用時に受容するように形成された駆動接触面70を有している。シールド移動体は、1対の側方リブ72を有しており、これら側方リブ72は、リセットアーム66の前方端に位置するT字形の構造部74と協働する。シールド移動体68は、1対のシールド移動体バネ76によって前方に付勢されている。注射筒キャリア22における端部側嵌合部24を受容するように形成された弓形の窪み78が注射筒移動体60の内面に形成されている。ハウジング内部に係合する1対の可撓性アーム80がこの弓形の窪み78から後方に延在している。側方に延在する固定用突起部82が注射筒移動体の底面に付与されており、シールド移動体バネ76の前方端が固定用突起部82に固定される。2つの下方に延在する固定用突起部84が側方の固定用突起部82の後部に位置しており、注射筒移動体バネの後方端が固定用突起部84に固定される。スロットが形成されたリセットアーム66におけるスロット88内を摺動するペグ86は、環状窪み78を形成する構造部の底面に位置している。
【0018】
リセットアーム66は順序付け機能を提供し、プランジャ56が解放されて定力バネ64の作用を受けて前方に移動するようになるまで、注射筒移動体60およびシールド移動体68を前方の移動に対して制約する。したがって、図10に示される準備状態において、プランジャは後方位置に在り、スロット88の前方端における注射筒移動体のペグ86の係合作用により、注射筒移動体バネ62の作用を受ける注射筒移動体の移動が制約される。さらに、シールド移動体のリブ72とT字形の構造部74との係合作用は、シールド移動体が注射筒移動体に対して前方に移動するのを妨げることを意味する。したがって、この位置におけるリセットアームは、注射筒移動体およびシールド移動体の両方を完全に後退させた位置に保持する。しかしながら、いったんプランジャが解放されて定力バネ64によって前方に駆動されると、リセットアーム66が前方に移動し、従って注射筒移動体およびシールド移動体を各移動体バネの作用のもと前方に移動できるようになる。自由にされたとき、注射筒移動体およびシールド移動体は、互いに相対的に自由に移動できるとともに、ハウジングに対して前方に自由に移動できる。注射筒移動体が最も前方の位置にいったん到達したら、注射筒移動体は停止して、プランジャ56が次いで注射筒プランジャに係合して投与分量を放出する。自動注射器を注射箇所から取り除くと、シールド移動体バネ76に残存する付勢作用がシールドを前方に引っ張って注射針を保護して閉塞する。図17(a)および図17(b)は、この状態の構成要素を注射筒が除去された状態で示している。ここで、プランジャ56が延伸されていて、駆動接触面70がその行程の前方端側の限界点に在ることが分かるであろう。
【0019】
図18(a)〜図18(c)はこの実施形態におけるトリガ配列体を示している。駆動プランジャ56は2つの可撓性返し部90を有しており、これら可撓性返し部90は、ハウジングの内壁における相補形状の返し部92を越えて摺動可能であるとともにこれら相補形状の返し部92によって捕捉可能であり、定力バネ64のバネ付勢作用に抗して引き戻されたときにプランジャを付勢された位置に保持する。注射開始ボタン58が内方スリーブ94に接続されており、この内方スリーブ94は、板バネ96の付勢作用に抗して注射開始ボタン58が押圧されたときに、返し部90を内方に押し込んで、それにより、返し部90がハウジングの返し部92から係合解除され、したがってプランジャが定力バネ64の作用を受けて前方に移動できるようになる。
【0020】
ここで図19(a)〜図19(f)を参照して、自動注射器の動作について説明する。図19(a)において、前述したように安全シールド配列体を備えた注射筒が、カバー54を後方に摺動させることにより事前に準備されていた自動注射器に嵌め合わされる。注射筒は、注射筒を注射筒移動体に挿入することにより配置され、この際、嵌合部24が窪み78に受容されるとともにシールドの駆動突起部42が駆動接触面70に受容される。注射デバイスは注射箇所まで供給され(図19(b))、トリガ部が押し下げられる。プランジャ56は前方に発射されて、注射筒移動体およびシールド移動体が注射筒およびシールドの組立体を前方に移動させられる。注射筒移動体が最も前方の位置に到達すると、注射筒移動体が拘束され、プランジャ56が次いで注射筒から投与分量を放出する(図19(c))。次いで自動注射器が注射箇所から取り除かれると、注射針シールドが完全に延伸されるとともに、閉塞窪み43に係入する閉塞係止部38によって閉塞されるまで、注射針シールドが、注射筒移動体に対して前方に移動するシールド移動体によって前方に移動される(図19(d))。安全シールドが延伸されるとともに閉塞された注射筒は、次いで取り外されて(図19(e))、安全に廃棄されうる。自動注射器は、次いでカバー54を後方に摺動させることによって再準備されうる(図19(f))。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図7(a)】
図7(b)】
図8
図9
図10
図11
図12
図13(a)】
図13(b)】
図14(a)】
図14(b)】
図15(a)】
図15(b)】
図16(a)】
図16(b)】
図17(a)】
図17(b)】
図18(a)】
図18(b)】
図18(c)】
図19(a)】
図19(b)】
図19(c)】
図19(d)】
図19(e)】
図19(f)】