(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018150
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】粒子状物質捕集装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20161020BHJP
B01D 45/08 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
G01N1/02 D
B01D45/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-205128(P2014-205128)
(22)【出願日】2014年10月3日
(65)【公開番号】特開2016-75535(P2016-75535A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】住谷 博之
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
【審査官】
渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭49−044153(JP,A)
【文献】
特開昭52−008894(JP,A)
【文献】
北村憲子ほか,海洋起源の乾性降下物の定量分析,海と台地,日本,1998年12月,Vol.8,第49-54頁,URL,http://portal.dl.saga-u.ac.jp/bitstream/123456789/14049/1/kitamura_199812_2.pdf
【文献】
YOSHIMOTO K et al.,Salt in Sea Atmosphere and its Removal for Gas Turbines,ASME 1976 International Gas Turbine and Fluids Engineering Conference,米国,The American Society of Mechanical Engineers,1976年 3月,Vol.1A, No.76-GT-58,第1-12頁,URL,http://proceedings.asmedigitalcollection.asme.org/proceeding.aspx?articleid=2278830
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 − 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気に含まれる粒子状物質を付着させて捕集する弾性体かつ多孔質体である捕集部と、
前記捕集部を大気中に曝露させる状態で保持する保持部と、
大気中に曝露されている前記捕集部の下方に設けられて前記捕集部から落ちた液体及び固体を貯留する貯留部と、
大気中に曝露されている前記捕集部の上方に設けられる蓋部とを備え、
前記貯留部と前記蓋部は、合体状態と分離状態とを切り替え可能に設けられ、合体状態である場合に前記捕集部を前記貯留部と前記蓋部により形成された筐体内に収納する
粒子状物質捕集装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記捕集部を圧縮した状態で収納する
請求項1に記載の粒子状物質捕集装置。
【請求項3】
屋根と、側方に設けられた通気用の開口部とを有する箱体を有し、
前記捕集部は、前記箱体内で保持される
請求項1又は2に記載の粒子状物質捕集装置。
【請求項4】
前記箱体は、前記側方にルーバーを有する
請求項3に記載の粒子状物質捕集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中に含まれる海塩粒子等の大気浮遊塩分は、金属や合金等(以下、金属等)を含む構造体に付着すると金属等の腐食を引き起こす。このため、大気環境により生じる腐食性を評価するために、構造体に対する大気浮遊塩分の付着度を測定することが行われている。大気浮遊塩分の付着度の測定方法として、通気性を有する円筒状の支持体(ガーゼホルダー)に巻き付けられたガーゼを所定期間大気中に曝露させて大気浮遊塩分を捕集する方法がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/049716号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、所定期間を超える継続調査において、ガーゼを支持体から取り外し、新たなガーゼを支持体に巻き付けるという交換作業を行う必要があった。また、ガーゼを支持体に固定するためには、糸等によりガーゼを支持体に縛り付ける必要があるため、ガーゼの取り外し時に係る糸等を切断する必要があった。このように、特許文献1に記載の方法では、測定の繰り返しに係る作業が煩雑であった。また、大気中に曝露されるガーゼが設置される場所は、一般的なヒトの身長を超える高所であることが多い。このため、係る場所におけるガーゼの交換作業は極めて煩雑であった。
【0005】
そこで、本発明では、大気浮遊塩分を捕集する部材の交換に係る作業がより簡便な粒子状物質捕集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の粒子状物質捕集装置は、大気に含まれる粒子状物質を付着させて捕集する弾性体かつ多孔質体である捕集部と、前記捕集部を大気中に曝露させる状態で保持する保持部と、を備える。
【0007】
本発明の望ましい態様として、大気中に曝露されている前記捕集部の下方に設けられて前記捕集部から落ちた液体及び固体を貯留する貯留部を備える。
【0008】
本発明の望ましい態様として、大気中に曝露されている前記捕集部の上方に設けられる蓋部を備え、前記貯留部と前記蓋部は、合体状態と分離状態とを切り替え可能に設けられ、合体状態である場合に前記捕集部を前記貯留部と前記蓋部により形成された筐体内に収納する。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記筐体は、前記捕集部を圧縮した状態で収納する。
【0010】
本発明の望ましい態様として、屋根と、側方に設けられた通気用の開口部とを有する箱体を有し、前記捕集部は、前記箱体内で保持される。
【0011】
本発明の望ましい態様として、前記箱体は、前記側方にルーバーを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大気浮遊塩分を捕集する部材の交換に係る作業がより簡便になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る粒子状物質捕集装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る粒子状物質捕集装置の構造の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、箱体内部の構成の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、貯留部と蓋部との合体の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、貯留部と蓋部との合体の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、箱体が取り付けられた柱状の建造物の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態(以下、本実施形態と記載する)を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る粒子状物質捕集装置1の一例を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る粒子状物質捕集装置1の構造の一例を示す図である。本実施形態に係る粒子状物質捕集装置1は、捕集部10と、保持部と、貯留部30と、蓋部40と、箱体50とを備える。
【0015】
図3は、箱体50内部の構成の一例を示す斜視図である。捕集部10は、大気に含まれる粒子状物質を付着させて捕集する。具体的には、捕集部10は、大気に含まれる粒子状物質を付着させて捕集する弾性体かつ多孔質体である。捕集部10は、例えばスポンジからなる。より具体的には、捕集部10を構成するスポンジは、例えばポリウレタン等の合成樹脂が発泡形成された所謂合成スポンジである。スポンジは、多孔質体であり、通気性及び吸湿性を示す。スポンジの目の細かさ(発泡形成時における発泡の度合い)は、捕集の対象となる粒子状物質(例えば、海塩粒子等の大気浮遊塩分)の大きさに応じたものであることが望ましい。捕集部10を構成するスポンジは、弾性体である。このため、捕集部10は、外部から押圧されることで圧縮されて見かけ上の体積を減じ、より小さい空間内に収まるサイズになる。一方、外部からの押圧がなくなることで、圧縮前のサイズに戻る。
【0016】
保持部は、捕集部10を大気中に曝露させる状態で保持する。具体的には、保持部は、例えば棒状の部材であるシャフト21と、シャフト21の両端を係止する二つの係止部22,23とを有する。シャフト21は、捕集部10の円筒形状の中心軸とほぼ重なる状態で捕集部10を貫通するよう設けられる。捕集部10の筒の両端には、例えばシャフト21の径に応じた孔が設けられたスポンジ製の端部11があり、シャフト21は、当該端部11の孔に挿通される。捕集部10の筒状のスポンジと端部11のスポンジは一体形成されていてもよいし、粘着性の両面テープ等で接着されていてもよい。二つの係止部22,23は、例えばシャフト21が鉛直に設けられるよう、シャフト21の長さに応じた間隔を有する位置関係で上下方向に設けられる。捕集部10が取り付けられたシャフト21を二つの係止部22,23が係止することで、円筒状の捕集部10は、円筒の中心軸が鉛直になるよう設けられる。二つの係止部22,23は、例えば下方の一方がシャフト21を挿入可能な穴を有する係止部22であり、他方が板状部材23aと、回動部材23bとを有し、板状部材23aに形成された切欠部23cに進入したシャフト21を回動部材23bにより保持する機構を有する係止部23である。切欠部23cは、例えば水平に設けられた板状部材23aの側方から内側に向かうよう設けられ、シャフト21の径に応じた幅を有する。切欠部23cが設けられた板状部材23aは、シャフト21を側方から進入又は取り外し可能になっている。回動部材23bは、板状部材23aの一面側で支点23dを中心に回動可能に支持され、切欠部23cの入り口側の開放と閉鎖とを切り替えるように回動する。係る二つの係止部22,23の具体的な形態はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0017】
貯留部30は、大気中に曝露されている捕集部10の下方に設けられて捕集部10から落ちた液体及び固体を貯留する。具体的には、貯留部30は、例えば上方から落下してきた液体及び固体を貯留可能な、上方が開放された容器状の部材である。より具体的には、貯留部30は、例えば、径が捕集部10の円筒の径よりも大きい円筒状の側壁31と、側壁31が形成する円筒の一端(下端)を閉塞する底部32とを有する。貯留部30は、上方から落下してきた液体、固体又はその両方を底部32で受け止めると共に、側壁31により外部への漏出を防止する。
【0018】
蓋部40は、大気中に曝露されている捕集部10の上方に設けられる。具体的には、蓋部40は、例えば径が捕集部10の円筒の径よりも大きい円筒状の側壁41と、側壁41が形成する円筒の一端(上端)を閉塞する天井部42とを有する。
【0019】
図4及び
図5は、貯留部30と蓋部40との合体の一例を示す模式図である。貯留部30と蓋部40は、合体状態と分離状態とを切り替え可能に設けられ、合体状態である場合に捕集部10を貯留部30と蓋部40により形成された筐体内に収納する。具体的には、貯留部30及び蓋部40の一方(例えば貯留部30)は、側壁31の外周面に螺旋状の突起を有する。係る一方に設けられた外周面の突起は、雄ねじとして機能する。貯留部30及び蓋部40の他方(例えば蓋部40)は、側壁41の内周面に螺旋状の溝を有する。係る他方に設けられた内周面の溝は、一方に設けられた雄ねじに対する雌ねじとして機能する。すなわち、貯留部30と蓋部40とは、互いの側壁31,41が螺合することで合体状態となり、貯留部30及び蓋部40の側壁31,41並びに貯留部30の底部32及び蓋部40の天井部42で覆われた筐体を形成する。捕集部10を挟んだ状態で貯留部30と蓋部40とを合体状態にすることで、貯留部30及び蓋部40により形成される筐体は、捕集部10を収納することができる。なお、本実施形態の貯留部30及び蓋部40により形成される筐体は、捕集部10を圧縮した状態で収納する(
図4,
図5参照)が、貯留部30及び蓋部40により形成される筐体内の空間が捕集部10を圧縮せずに捕集部10を収納可能な大きさを有するようにすることで、捕集部10を圧縮しないようにすることもできる。具体的には、例えば筐体の側壁の底部32に対する立設長が捕集部10の円筒長以上であれば、捕集部10を圧縮しないようにすることもできる。
【0020】
貯留部30及び蓋部40は、側壁31,41が大気中に曝露されている捕集部10の側方を遮蔽しない位置に設けられることが望ましい。また、貯留部30及び蓋部40の形状は任意である。例えば、貯留部30及び蓋部40は球体状の外周面を形成するカプセルを二つに割ったような形状であってもよい。なお、貯留部30は上方から落下してきた液体及び固体を貯留可能な形状であるものとする。具体的には、貯留部30は、上方が開放状態であり、内側が器状又は下方に向かって窪む形状であるものとする。
【0021】
筐体を形成する貯留部30及び蓋部40の少なくとも一方は、シャフト21に沿って移動可能に設けられている。本実施形態では、貯留部30及び蓋部40は、シャフト21から取り外し可能に設けられている。すなわち、貯留部30及び蓋部40は、シャフト21と摺接する孔を有する。この場合において大気中に曝露されていた捕集部10を回収するとき、例えば、シャフト21ごと捕集部10、貯留部30及び蓋部40を二つの係止部22,23から取り外した後、内容物を漏出させない袋にシャフト21ごと捕集部10、貯留部30及び蓋部40を入れ、袋内でシャフト21を取り外してシャフト21を袋外に取り出した後、袋内で貯留部30と蓋部40とを合体状態にし、袋を密閉する。このようにすることで、回収後の捕集部10を貯留部30と蓋部40とにより形成された筐体のサイズに縮めて回収することができる。なお、袋を用いた密閉に代えて、シャフト21が取り外された後の孔をテーピング等により塞ぐようにしてもよい。また、貯留部30が明らかに液体状の落下物を貯留している場合等、シャフト21への液体の付着による捕集対象の一部の散在が予想される場合には、シャフト21ごと袋内に密閉するようにしてもよい。
【0022】
箱体50は、捕集部10を内側に収納する。具体的には、箱体50は、例えば、屋根部51と、底部52と、四つの側面部53とを有する直方体状の形状を有する。箱体50は、内部が空洞であり、内部に捕集部10を収納可能に設けられている。本実施形態では、二つの係止部22,23のうちシャフト21の上方を係止する一方は、箱体50内の屋根部51側に固定されている。また、二つの係止部22,23のうちシャフト21の下方を係止する他方は、箱体50内の底部52側に固定されている。
【0023】
箱体50は、側方に通気用の開口部が設けられている。具体的には、箱体50は、例えば、側方にルーバーを有する。より具体的には、箱体50の四つの側面部53はそれぞれ、複数の羽板53aが上下方向に間隔をあけて互いに平行になるように設けられている。羽板53a同士の間の隙間が開口部として機能することで、箱体50は、その内部に箱体50外の大気(風)を通過させることができるように設けられている。
【0024】
羽板53aは、箱体50の内側から外側に向かって下方に傾斜するよう設けられている。これにより、雨等の降下物が開口部から箱体50の内側に入り込むことを抑制することができる。また、屋根部51は、箱体50の側面部53よりも外側に張り出すように設けられている。これにより、雨等の降下物が捕集部10に降り注ぐことをより確実に抑制することができる。箱体50は、所謂百葉箱である。
【0025】
図6は、箱体50が取り付けられた柱状の建造物60の一例を示す図である。箱体50は、外側から内側に捕集部10を導入することができるとともに、内側で保持されていた捕集部10を取り出すことができるよう設けられていることが望ましい。本実施形態では、箱体50の四つの側面部53のうち一つが鎧戸となっていて開閉可能に設けられている。鎧戸は、太陽の日周運動において地平線より上側で子午線を通る方角(例えば北半球の場合、南側)の逆側(例えば北半球の場合、北側)に設けられることが望ましい。また、
図6に示す例において、鎧戸を柱状の建造物60(例えば、電柱等)側にすることで、柱状の建造物60を登って捕集部10の設置及び回収を行う作業者がより作業をしやすくなる。
【0026】
以上、本実施形態によれば、捕集部10が弾性体かつ多孔質体である。このため、捕集のために用いられるガーゼと異なり、大気浮遊塩分の捕集に適した形状(例えば、円筒状の形状)を維持するために別の部材(支持体)に巻き付ける必要がない。よって、より簡便に捕集部10の設置及び交換を行うことができる。このように、本実施形態によれば、大気浮遊塩分を捕集する部材の交換に係る作業がより簡便になる。
【0027】
また、大気中に曝露されている捕集部10の下方に設けられて捕集部10から落ちた液体及び固体を貯留する貯留部30を備える。このため、捕集部10に付着後、捕集部10から落下した大気浮遊塩分を貯留することができる。よって、捕集部10の回収時に貯留部30に貯留された液体及び固体を回収することで、捕集部10により捕集された大気浮遊塩分の総量をより高い精度で把握することができるようになる。
【0028】
また、貯留部30と蓋部40は、合体状態である場合に捕集部10を貯留部30と蓋部40により形成された筐体内に収納する。このため、捕集部10の回収時に捕集部10を当該筐体により保護することができる。よって、捕集部10により捕集された大気浮遊塩分の取りこぼしをより抑制することができる。また、回収後の捕集部10の取り扱いがより容易になる。
【0029】
また、筐体は、捕集部10を圧縮した状態で収納する。このため、回収後の捕集部10を収納する筐体のサイズがより小さくなるので、筐体の取り扱いがより容易になる。
【0030】
また、捕集部10は、箱体50内で保持される。このため、雨等の降下物が捕集部10に降り注ぐことを抑制することができる。
【0031】
また、箱体50は、側方にルーバーを有する。このため、箱体50内への通気性の確保と、雨等の降下物が箱体50内の捕集部10に降り注ぐことの抑制とをより確実に両立することができる。
【0032】
また、捕集部10が円筒状の形状を有することで、円筒の中心軸に交差するより多くの方向から風等に乗って飛来する大気浮遊塩分をよりむらなく捕集することができる。また、特許文献1に記載の構成では支持体が専用の部品であるため、3Dプリンタの使用等、専用の製造作業が必要であり、製造コストが高かった。これに対し、本実施形態によれば、安価なスポンジを用いれば足りるので、より低コストで粒子状物質を捕集することができる。また、回収後の捕集部10を洗浄することで、捕集部10を再利用することができる。
【0033】
以上、実施形態について説明したが、これらの実施形態の内容により本発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0034】
例えば、上記の実施形態では、保持部はシャフト21と二つの係止部22,23により捕集部10を保持しているが、これは保持部の具体的な形態の一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。例えば、捕集部10の円筒の両端から延出するよう設けられた繊維、紐又は布状の延出部を設け、延出部の両端を箱体50内の天井側(例えば、屋根部51の下面側等)及び底部52側(例えば、底部52の上面側等)に留めるようにしてもよい。また、係る延出部を貯留部30の上面側及び蓋部40の下面側に固定して、貯留部30を箱体50の底部52側に留め、蓋部40を箱体50の天井側に留めるようにしてもよい。この場合、貯留部30及び蓋部40により形成される筐体が延出部ごと捕集部10を収納することができるうえ、貯留部30及び蓋部40にシャフト21が貫通するための孔が必要ないので、より密閉された筐体内に捕集部10等を収納することができる。
【0035】
貯留部30と蓋部40との係合は、ねじ形状を介したものでなくてもよい。例えば、貯留部30又は蓋部40のうちいずれか一方の円筒状の側壁(例えば側壁31)の外周面側に設けられた突起と、他方の円筒状の側壁(例えば側壁41)の内周面側に設けられた窪みとが噛み合う形状であってもよいし、その他、互いに当接して筐体を形成することができる形態であれば特にその具体的形状は限定されない。また、蓋部40は必須でない。例えば、シャフト21ごと円筒状の捕集部10及び貯留部30を回収するようにしてもよい。
【0036】
捕集部10が形成する筒の断面形状は、円形でなくてもよい。例えば、多角形であってもよい。また、捕集部10の形状は、筒状に限られるものでなく、適宜変更可能である。捕集部10は、例えば、円柱状の弾性体かつ多孔質体であってもよいし、その他の形状の弾性体かつ多孔質体であってもよい。また、円柱状である場合に、その中心軸に沿ってシャフト21を貫通させるための孔が設けられていてもよい。
【0037】
また、捕集部10には、大気中に曝露される期間中における方角を示す指標が付されていてもよい。例えば、捕集部10の外周面のうち、箱体50の鎧戸側に向いているべき面の中心又は中心線(例えば、筒の延設方向に沿う線)等の指標が付されていてもよい。この場合、作業者は捕集部10の設置において当該指標が正面に来るように設置することで、捕集部10の回収後にどの部分がどの方角を向いていたのかを容易に把握することができる。また、鎧戸は必須でない。例えば、箱体50の他の部分(屋根部51等)が開閉可能に設けられていてもよい。
【0038】
また、捕集部10は、海塩粒子等の大気浮遊塩分に限らず、大気中に存する他の粒子状物質を捕集することもできる。
【0039】
また、粒子状物質捕集装置1が設けられるのは、柱状の建造物60に限らない。粒子状物質捕集装置1は、例えば鉄塔等、通気性のある空間に面することができるあらゆる構造物に設けることができる。また、粒子状物質捕集装置1は、地上に設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 粒子状物質捕集装置
10 捕集部
21 シャフト(保持部)
22,23 係止部(保持部)
30 貯留部
40 蓋部
50 箱体
51 屋根部
53 側面部
53a 羽板