【実施例】
【0045】
以下の実施例は、説明のみを目的としており、本発明の範囲を制限する意図はない。すべての%は、特に断わらない限り、重量%である。
【0046】
実施例1
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を以下の手順に従って製造した。細かく粉砕した木のセルロースパルプを、ジャケット付きの撹拌式反応器に装填した。反応器を真空にし、窒素パージすることによって酸素を除去した後、再度真空にした。反応は2段階で行なった。第1段階では、50重量%の水酸化ナトリウム水溶液を、セルロース中の無水グルコース単位1モルにつき2.0モルの水酸化ナトリウムの割合で、セルロース上に噴霧し、温度を40℃に調節した。水酸化ナトリウム水溶液とセルロースの混合物を40℃で約20分間撹拌した後、無水グルコース単位1モルにつき1.5モルのジメチルエーテルと、2.5モルの塩化メチルと、0.8モルのプロピレンオキシドを反応器に添加した。次いで、反応器の内容物を60分間かけて80℃に加熱した。80℃に到達した後、第1段階の反応を30分間進行させた。
【0047】
塩化メチルを無水グルコース単位1モルにつき2.8モル当量の割合で添加することによって、反応の第2段階を開始させた。塩化メチルの添加時間は10分間であった。その後、50重量%の水酸化ナトリウム水溶液を、無水グルコース単位1モルにつき2.3モル当量の割合で、90分間の時間をかけて添加した。添加速度は、1分間に、水酸化ナトリウムを無水グルコース単位1モルにつき0.026モルであった。第2段階の添加が完了した後、反応器の内容物を120分間に亘って80℃の温度に維持した。
【0048】
反応後、反応器に通気し、約50℃まで冷却した。反応器の内容物を取り出し、お湯を入れたタンクに移した。次に、粗HPMCをギ酸で中和し、塩化物を含まないお湯(AGNO
3結合力試験によって調べる)で洗浄し、室温まで冷却して、空気掃引乾燥機の中で55℃にて乾燥させた。次に、0.5mmのスクリーンを用いたAlpine UPZミルを使用して、材料を粉砕した。
【0049】
実施例2
反応混合物に添加するプロピレンオキシドの量が、無水グルコース単位1モルにつき0.6モルのプロピレンオキシドである点以外は、実施例1を繰り返した。
【0050】
実施例3
反応混合物に添加するプロピレンオキシドの量が、無水グルコース単位1モルにつき0.4モルのプロピレンオキシドである点以外は、実施例1を繰り返した。
【0051】
比較例A
欧州特許EP第1 171 471号に開示されているようにして製造され、The Dow Chemical社からMethocel SG A16M(商標)として入手できるメチルセルロースを使用した。
【0052】
比較例B
欧州特許EP第1 171 471号に開示されているようにして製造され、The Dow Chemical社からMethocel SG A16M(商標)として入手できるメチルセルロースを使用した。比較例Bのメチルセルロースは、比較例Aのメチルセルロースとは異なるバッチで製造されたものである。
【0053】
比較例C
The Dow Chemical社からMethocel E4M(商標)として入手できるヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用した。
【0054】
比較例D
The Dow Chemical社からMethocel F4M(商標)として入手できるヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用した。
【0055】
比較例E
The Dow Chemical社からMethocel K4M(商標)として入手できるヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用した。
【0056】
比較例F
第1段階の水酸化ナトリウムの量が無水グルコース単位1モルにつき1.2モルであり、第1段階の塩化メチルの量が無水グルコース単位1モルにつき2.0モルであり、第2段階の水酸化ナトリウムの量が無水グルコース単位1モルにつき1.0モルであり、第2段階の塩化メチルの量が無水グルコース単位1モルにつき1.5モルであり、反応混合物に添加するプロピレンオキシドの量が無水グルコース単位1モルにつき0.4モルである点以外は、実施例1を繰り返した。
【0057】
比較例G
The Dow Chemical社からMethocel E10M(商標)として入手できるヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用した。
【0058】
セルロースエーテルの均一溶液の調製
均一な溶液を実現するため、オーバーヘッド式実験室撹拌装置を700rpmで10分間使用し、(セルロースエーテルの含水量を考慮して)3gのセルロースエーテル粉末を、70℃で197gの水に懸濁させた。次に、この溶液を5時間かけて4℃の温度まで冷却し、溶解工程を完了した。その5時間の間、溶液を500〜1000rpmで撹拌し、蒸発によって失われた水を補充した。次に、この溶液を冷蔵庫で一晩保管した。分析の前に、この冷たい溶液を100rpmで15分間撹拌した。
【0059】
円錐・プレート構造(CP−60/2°)を備えるHaake RS600レオメータ内で、20℃、剪断速度2.55s
-1にて、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの粘度を20℃の1.5重量%水溶液中で求めた。
【0060】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースに含まれる%メトキシルと、%ヒドロキシプロポキシルの測定は、アメリカ合衆国薬局方(USP 32)に従って行なった。得られた値は、%メトキシルと%ヒドロキシプロポキシルである。その後、これらの値をメチル置換基に関する置換度(DS)と、ヒドロキシプロピル置換基に関するモル置換度(MS)に変換した。変換では、塩の残留量を考慮した。
【0061】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースのDS(メチル)とMS(ヒドロキシエチル)は、ヨウ化水素を用いたツァイゼル開裂の後にガス・クロマトグラフィによって求めた(G. BartelmusとR. Ketterer、Z. Anal. Chem.、第286巻(1977年)、161〜190頁参照)。
【0062】
s23/s26の決定
セルロースエーテル中のエーテル置換基を求める方法は、一般に知られており、例えばCarbohidrate Research、第176巻(1988年)137〜144頁のBengt Lindberg、Ulf Lindquist、Olle Stenbergによる「o-エチル-o-(2-ヒドロキシエチル)セルロース中の置換基の分布」に記載されている(Elsevier Science Publishers社(アムステルダム))。
【0063】
具体的には、s23/s26は以下のようにして求めた。約90℃で撹拌している4.0mLの分析品質の乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)(Merck社、ダルムシュタット、ドイツ国、0.3nmの分子篩ビーズ上で保管)に10〜12mgのセルロースエーテルを溶かした後、再び室温まで冷却した。この溶液を室温で一晩撹拌し続けて、完全に可溶化させた。スクリュー・キャップ付きの4mLのバイアルの中で、乾燥窒素雰囲気を用いて、セルロースエーテルの可溶化を含めて完全に反応させた。可溶化の後、溶けたセルロースエーテルをスクリュー・キャップ付きの22mLのバイアルに移した。水酸化ナトリウムの粉末(すり潰したばかりのもの、分析品質、Merck社、ダルムシュタット、ドイツ国)とヨウ化エチル(合成用、銀を用いて安定化させてある、Merck-Schuchardt社、ホーヘンブルン、ドイツ国)を添加したが、このとき、無水グルコース単位のヒドロキシル基1つにつき、試薬である水酸化ナトリウムとヨウ化エチルを30倍過剰のモル数にした。得られた溶液を、暗所の窒素雰囲気下、周囲温度にて3日間激しく撹拌した。1回目の試薬の添加と比べて3倍量の水酸化ナトリウムとヨウ化エチルを試薬として添加し、過エチル化を繰り返して、室温にて更に2日間撹拌した。任意に、反応混合物を1.5mLまでのDMSOを用いて希釈し、反応中によく混じり合うようにした。5mLの5%チオ硫酸ナトリウム水溶液を反応混合物に注ぎ、得られた溶液を4mLのジクロロメタンを用いて3回抽出した。1つにまとめた抽出液を2mLの水で3回洗浄した。無水硫酸ナトリウム(約1g)を用いて有機相を乾燥させた。濾過後、穏やかな窒素流の中で溶媒を除去した。サンプルを4℃で保管し、その後のサンプルの調製に備えた。
【0064】
スクリュー・キャップ付きの2mLのバイアルの中で、約5mgの過エチル化したサンプルを、100℃で撹拌しながら、1mLの90%ギ酸水溶液を用いて窒素雰囲気下で1時間に亘って加水分解させた。酸を35〜40℃の窒素流の中で除去し、不活性な窒素雰囲気下にて120℃で撹拌しながら、1mLの2Mトリフルオロ酢酸水溶液を用いて3時間に亘って加水分解を繰り返した。完了後、共蒸留のための約1mLのトルエンを用いて酸を除去し、周囲温度の窒素流の中で乾燥させた。
【0065】
(調製したばかりの)2Nのアンモニア水溶液中の0.5Mホウ重水素化ナトリウムを0.5mL使用し、室温で撹拌しながら加水分解の残留物を3時間に亘って還元した。約200μLの濃酢酸を一滴ずつ添加することによって、過剰な試薬を分解した。得られた溶液を約35〜40℃の窒素流の中で蒸発させて乾燥させた後、室温の真空中にて15分間乾燥させた。粘性残留物をメタノール中の15%酢酸の0.5mLに溶かし、室温で蒸発させて乾燥させた。この操作を5回実施した後、純粋なメタノールを用いてこの操作を4回繰り返した。最終的な蒸発の後、サンプルを室温の真空中にて一晩乾燥させた。
【0066】
600μLの無水酢酸と150μLのピリジンを用いて、90℃にて還元残留物を3時間に亘ってアセチル化した。冷却後、サンプルが入ったバイアルにトルエンを満たし、室温の窒素流の中で蒸発させて乾燥させた。前記残留物を4mLのジクロロメタンに溶かした後、2mLの水の中に注ぎ、2mLのジクロロメタンを用いて抽出した。抽出は3回繰り返した。1つにまとめた抽出液を4mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、乾燥したジクロロメタン抽出液をGCで分析した。GCシステムの感度によっては、抽出液を更に希釈せねばならない可能性がある。
【0067】
J&Wキャピラリー・カラムDB5(30m、ID 0.25mm、相層の厚さ0.25μm)を備えるHewlett Packard 5890Aと5890AシリーズIIタイプのガス・クロマトグラフを、1.5バールのヘリウムキャリアガスで作動させて気体-液体クロマトグラフィ(GLC)分析を実施した。このガス・クロマトグラフは、そのプログラムによれば、1分間に亘って60℃を維持した後、20℃/分の速度で200℃まで加熱し、4℃/分の速度で更に加熱して250℃にし、20℃/分の速度で更に310℃まで加熱し、その温度を更に10分間維持するという温度プロファイルにて、プログラムされていた。注入器の温度は280℃に設定し、水素炎イオン化検出器(FID)の温度は300℃に設定した。弁の時間を0.5分にして、無分割モードで1μLのサンプルを注入した。データを取得し、LabSystems Atlasワークステーションで処理した。
【0068】
FIDによる検出を伴うGLCによって測定したピーク面積から、モノマー組成物の定量的データが得られた。モノマーのモル応答(molar responses)は、有効炭素数(ECN)という考え方に則って計算されるが、以下の表に記載したように修正した。有効炭素数(ECN)という考え方は、Ackman(R.G. Ackman、J. Gas Chromatogr.、第2巻(1964年)173〜179頁;R.F. Addison、R.G. Ackman、J. Gas Chromatogr.、第6巻(1968年)135〜138頁参照)に記載されており、Sweetら(D.P. Sweet、R.H. Shapiro、P.Albersheim、Carbohyd. Res.、第40巻(1975年)217〜225頁参照)により、一部がアルキル化された酢酸アルジトールの定量的分析に適用されている。
【0069】
ECNの計算に用いるECN増分
【0070】
【表1】
【0071】
モノマーの様々なモル応答を補正するため、ピーク面積にモル応答因子であるMRFモノマーを掛ける。この因子は、2,3,6-Meモノマーに対する応答として定義される。2,3,6-Meモノマーを基準として選択するのは、これが、s23/s26を求める際に分析するすべてのサンプルに存在しているからである。
MRFモノマー = ECN2,3,6-Me/ECNモノマー
【0072】
モノマーのモル分率は、以下の式に従い、補正したピーク面積を、補正した全ピーク面積で割ることによって計算される。
s23=[(23-Me+23-Me-6-HAMe+23-Me-6-HA+23-Me-6-HAHAMe+23-Me-6-HAHA)]、及び
s26=[(26-Me+26-Me-3-HAMe+26-Me-3-HA+26-Me-3-HAHAMe+26-Me-3-HAHA)]。
式中、s23は、以下の条件を満たす無水グルコース単位のモル分率の和である。
a)無水グルコース単位の2位と3位の位置にある2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、6位は置換されていない(=23-Me);
b)無水グルコース単位の2位と3位の位置にある2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、6位は、メチル化ヒドロキシアルキルで置換されているか(=23-Me-6-HAMe)、又は2つのヒドロキシアルキル基を含むメチル化された側鎖で置換されている(23-Me-6-HAHAMe);
c)無水グルコース単位の2位と3位の位置にある2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、6位は、ヒドロキシアルキルで置換されているか(=23-Me-6-HA)、又は2つのヒドロキシアルキル基を含む側鎖で置換されている(=23-Me-6-HAHA)。
s26は、以下の条件を満たす無水グルコース単位のモル分率の和である。
a)無水グルコース単位の2位と6位の位置にある2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、3位は置換されていない(=26-Me);
b)無水グルコース単位の2位と6位の位置にある2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、3位は、メチル化ヒドロキシアルキルで置換されているか(=26-Me-3-HAMe)、又は2つのヒドロキシアルキル基を含むメチル化された側鎖で置換されている(26-Me-3-HAHAMe);
c)無水グルコース単位の2位と6位の位置にある2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、3位は、ヒドロキシアルキルで置換されているか(=26-Me-3-HA)、又は2つのヒドロキシアルキル基を含む側鎖で置換されている(=26-Me-3-HAHA)。
【0073】
HAMCにおける置換基の算出結果を以下の表2に示す。HPMCのヒドロキシアルキル(HA)がヒドロキシプロピル(HP)である場合は、メチル化ヒドロキシアルキル(HAMe)は、メチル化ヒドロキシプロピル(HPMe)である。
【0074】
貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”の測定
【0075】
1.5重量%セルロースエーテル水溶液の沈殿又はゲル化の温度依存性を評価するため、Cup & Bob装置(CC-27)とペルチエ温度制御システムを備えたAnton Paar Physica MCR 501レオメータ(オストフィルデルン、ドイツ国)を振動剪断流で使用した。これらの溶液は、粘度測定で説明したのと同じ溶解手順に従って調製した。測定は、2Hzの一定周波数と0.5%の一定の歪み(変形振幅)を加え、10℃から85℃まで1℃/分の加熱速度で、データ回収速度を4点/分にして実施した。この振動測定から得られる貯蔵弾性率G’は、溶液の弾性特性を表し、損失弾性率G”は、溶液の粘性特性を表している。低温では、損失弾性率G”の値が貯蔵弾性率G’よりも大きく、どちらの値も温度が上昇すると僅かに減少する。高温で沈殿が起こる場合は、貯蔵弾性率が増大するため、貯蔵弾性率と損失弾性率が交差する。G’とG”が交差する温度がゲル化温度となる。
【0076】
実施例1〜3のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の特性と、比較例A、Bのメチルセルロースの特性と、比較例C〜GのHPMCの特性を以下の表2と3に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
大豆パティの調製
次の諸成分:293.0gの水、125.0gのIP Solus Natural Mince(テクスチャーのある大豆・タンパク質濃縮物)、50.0gの植物油(ヒマワリ)、9.0gのテンサイのシロップ、5.0gの塩、5.0g(1%に対応)の実施例1〜3又は比較例A〜Gのセルロースエーテル、4.0gの自己分解した酵母、3.4gのグリル風味剤、3.0gの刻んだタマネギ、0.2gのナツメグ、0.2gのコリアンダー、0.2gの粉末黒コショウから、大豆パティを製造した。
【0080】
大豆パティを以下の手順に従って製造した。
第1段階では、大豆・タンパク質と、以下の表4に示す温度(4℃又は20℃)の80.00gの水を、最低速度に設定したHobartミキサーの中で、付属のケーク・パドルを用いて3分間混合した。混合物をちょうど3分間放置した。
【0081】
第2段階では、セルロースエーテル結合剤と香料を乾燥状態で混合した。その乾燥混合物と、以下の表4に示す温度(4℃又は20℃)の213gの水を、第1段階で得られた混合物に添加し、最低速度で3分間混合した。この混合物を7分間放置した。油を添加し、混合を更に2分間継続した。
【0082】
食品組成物から、それぞれが高さ約12mmで重量80gの大豆パティを室温で調製した。そのパティを冷凍し、包装した。
【0083】
その後、大豆パティをフライにし、フライ中に目視検査した。大豆パティを再現可能なフライにするため、大豆パティの温度を30秒ごとに測定した。付着しないように10gの油を入れた直径20cmのフライパンを約50℃に加熱し、冷凍した大豆パティを入れた。大豆パティが凍っている間、その表面の温度を測定した。大豆パティが解凍されると、大豆パティの中間部の温度を測定した。フライ工程の最初は、冷凍した大豆パティの表面の温度が約5℃であった。フライパンの温度は約107℃まで上昇し、大豆パティの温度は、フライ開始から3分以内に約7.5℃まで上昇した。フライを開始してから3分30秒後、大豆パティが解凍し、温度は約8℃になった。4分後、4分30秒後、5分後には、大豆パティの温度は、それぞれ11℃、15℃、17℃まで上昇した。フライを開始してから5分15秒後、フライパンの温度は約140℃となり、大豆パティをひっくり返した。フライを開始してから6〜7分後、大豆パティは温度が42〜43℃まで上昇し、7分30秒後には44℃、8分後には47℃になった。8分後に大豆パティのフライ作業を停止した。
【0084】
硬さ、結合力、水分の放出量(多汁性の指標)を以下のようにして測定した。フライにした大豆パティは、テクスチャー分析装置によって室温で評価した。最大圧縮率は65%であり、この値は、食べているときの口の中での圧縮のシミュレーションになっている。
【0085】
テクスチャー分析装置:TA.XTプラス、Stable Micro Systems社(ゴダルミング、イギリス国)
以下の条件をした。
圧縮率:65%
圧縮速度:1mm/秒
測定センサー:P/50T;直径50mmテフロン(登録商標)
測定セル:50kg
【0086】
分析装置は、大豆パティを、圧縮率が65%になるまで1mm/秒の速度で圧縮し、その加えた力を測定した。前記分析装置により、圧縮力を受けた後にその力が解放されたときの大豆パティの変位を測定した。以下の表4に、テクスチャー分析装置で測定した主な特性を示してある。パティの硬さは、圧縮率が65%のときに測定した力である。パティの結合力は、力と時間の関係を示す曲線の下の面積である。さらに、テクスチャー分析装置の力によって放出された水分を測定した。水分は、大豆パティの下に敷いた吸い取り紙(Whatman-Scleicher & Schuell社、0980/1、直径110mm)に吸収させた。
【0087】
【表4】
【0088】
実施例1〜3と比較例A、Bの比較から、本発明の食品組成物は、固形食品組成物を4℃又は20℃の水を用いて調製したとき、欧州特許EP第1 171 471号に開示されているエチルメチルセルロースを含む、比較可能な食品組成物と比べて、硬さ及び/又は結合力が同等であり、いくつかのケースではより優れていることがわかった。
【0089】
実施例1〜3と比較例C、D、Gの比較から、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、[s23/s26−0.2*MS]の値が0.35以下であると、その値が0.35よりも大きいものよりも、DS(メチル)とMS(ヒドロキシアルキル)が類似した食品組成物に対して、より優れた硬さと結合力をもたらすことがわかった。食品組成物の製造において冷たい(例えば、温度が4℃の)水を使用するときに、硬さと結合力のより大きいことが特に重要であるが、いくつかの場合において冷たくない(例えば20℃の)水を使用しても、硬さ及び/又は結合力をより大きくすることができる。食品製造者にとって、冷たくない水を用いるときにも、より硬くできることは、非常に望ましく、かつ好都合である。
【0090】
実施例1〜3と比較例E、Fの比較から、固形食品組成物を調製するときに優れた硬さ及び/又は結合力をもたらすためには、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のDS(メチル)が1.65〜2.20であることが重要であるということがわかった。
本開示は以下も包含する。
[1] セルロースエーテルを含む食品組成物であって、
前記セルロースエーテル中のエーテル置換基が、複数のメチル基、複数のヒドロキシアルキル基、及び任意に、メチルとは異なる複数のアルキル基であり、
前記セルロースエーテルは、1.65〜2.20のDS(メチル)、0.10〜1.00のMS(ヒドロキシアルキル)を有し、さらに、
無水グルコース単位のヒドロキシ基は、[s23/s26−0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が0.35以下となるようにメチル基で置換されており、
ここで、式中のs23は、無水グルコース単位の2位と3位の位置にある2つのヒドロキシ基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率であり、
s26は、無水グルコース単位の2位と6位の位置にある2つのヒドロキシ基のみがメチル基で置換された無水グルコース単位のモル分率である、前記食品組成物。
[2] 前記セルロースエーテルが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、上記態様1に記載の食品組成物。
[3] 前記[s23/s26−0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が、0.27以下である、上記態様1又は2に記載の食品組成物。
[4] 前記セルロースエーテルが、1.70〜2.10のDS(メチル)を有する、上記態様1〜3のいずれかに記載の食品組成物。
[5] 前記セルロースエーテルが、1.70〜2.10のDS(メチル)及び0.15〜0.80のMS(ヒドロキシアルキル)を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである、上記態様1〜4のいずれかに記載の食品組成物。
[6] 前記セルロースエーテルが、20℃で2.55s-1の剪断速度にて、1.5重量%水溶液として測定したときに、150mPa・sを超える粘度を有する、上記態様1〜5のいずれかに記載の食品組成物。
[7] 前記セルロースエーテルが、食品組成物の重量を基準にして0.2〜5%の量で存在する、上記態様1〜6のいずれかに記載の食品組成物。
[8] 固形食品組成物である、上記態様1〜7のいずれかに記載の食品組成物。
[9] 熱処理することが想定されている、上記態様8に記載の食品組成物。
[10] タンパク質性の食品組成物である、上記態様1〜9のいずれかに記載の食品組成物。
[11] 大豆パティである、上記態様1〜10のいずれかに記載の食品組成物。
[12] 結合力、硬さ、多汁性、冷凍解凍安定性、テクスチャー、調理中の収縮に対する耐性、又は沸騰制御性の中から選択される食品組成物の特性の1つ又は複数を改善するための、上記態様1〜6のいずれかに記載のセルロースエーテルの使用。
[13] 食品組成物の結合力及び硬さの中から選択される特性の1つ又は複数を改善するための、上記態様12に記載の使用。
[14] 結合力、硬さ、多汁性、冷凍解凍安定性、テクスチャー、調理中の収縮に対する耐性、又は沸騰制御性の中から選択される食品組成物の特性の1つ又は複数を改善するための方法であって、上記態様1〜6のいずれかに記載のセルロースエーテルを食品組成物に組み込む工程を含む、前記方法。
[15] 食品組成物の結合力及び硬さの中から選択される特性の1つ又は複数を改善するための、上記態様14に記載の方法。