特許第6018196号(P6018196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018196流路部材およびこれを用いた熱交換器ならびに半導体製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018196
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】流路部材およびこれを用いた熱交換器ならびに半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20161020BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20161020BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H05K7/20 N
   H01L21/302 101G
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-518745(P2014-518745)
(86)(22)【出願日】2013年5月30日
(86)【国際出願番号】JP2013065118
(87)【国際公開番号】WO2013180250
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2014年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-123287(P2012-123287)
(32)【優先日】2012年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関口 敬一
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 和彦
(72)【発明者】
【氏名】石峯 裕作
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−123547(JP,A)
【文献】 特開2004−144460(JP,A)
【文献】 特開平03−142861(JP,A)
【文献】 特開2007−251002(JP,A)
【文献】 特開2007−103748(JP,A)
【文献】 特開2001−118972(JP,A)
【文献】 特開2007−035878(JP,A)
【文献】 特開2009−176881(JP,A)
【文献】 特開2011−216517(JP,A)
【文献】 特開2010−121867(JP,A)
【文献】 特表2008−544207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体である第1壁部と、底板である第2壁部と、前記第1壁部と前記第2壁部との間に設けられた側壁である第3壁部とを備え、前記第1壁部と前記第2壁部と前記第3壁部とで内部に流体が流れる流路を構成してなり、前記第3壁部は、流体が流れる方向に沿って、前記流路に突出する凸部を複数有しており、該凸部の先端面に、他の部位よりも粗い粗部を有することを特徴とする流路部材。
【請求項2】
前記凸部が、前記第1壁部から前記第2壁部へ向かう方向に複数設けられていることを特徴とする請求項に記載の流路部材。
【請求項3】
流体が流れる方向に隣り合う前記凸部が、前記第3壁部の前記第1壁部から前記第2壁部へ向かう方向にずれて設けられていることを特徴とする請求項に記載の流路部材。
【請求項4】
前記凸部の先端の中央部が、前記第3壁部側に向けて湾曲していることをと特徴とする請求項乃至請求項のいずれかに記載の流路部材。
【請求項5】
前記粗部が、前記第1壁部側から前記第2壁部側に延びる溝を有することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の流路部材。
【請求項6】
記第1壁部または前記第2壁部に発熱部材搭載領域を有するとともに、前記溝は、前記発熱部材搭載領域に向けて傾斜していることを特徴とする請求項に記載の流路部材。
【請求項7】
前記溝が、前記発熱部材搭載領域側に向けて傾斜角度が大きくなるように多段に傾斜していることを特徴とする請求項に記載の流路部材。
【請求項8】
前記溝の幅が、前記発熱部材搭載領域側に向けて広くなっていることを特徴とする請求項乃至請求項のいずれかに記載の流路部材。
【請求項9】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の流路部材の前記第1壁部および前記第2壁部のうち少なくとも一方の表面または内部に金属部材が設けられてなることを特徴とする熱交換器。
【請求項10】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の流路部材の前記第1壁部および前記第2壁部のうち少なくとも一方の内部に金属部材が設けられてなる熱交換器を備えるとともに、該
金属部材がウェハを吸着するための電極であることを特徴とする半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路部材およびこれを用いた熱交換器ならびに半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の基板部材であるウェハの保持に流路を有する保持台(以下、流路部材と記載する。)が用いられており、製造や検査の過程において、この流路内に、高温もしくは低温の流体を循環させてウェハの加熱や冷却等の熱交換が行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、それぞれのプレートの表面領域にわたって略蛇行した形状が得られるように流路系としての流体流ガイド流路が内部に形成された複数のプレートから成り、前記流体流ガイド流路の側壁は前記流体流の乱流を導く複数の開口部を有する、プレート熱交換器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−530582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に近年では、ウェハを効率良く加熱または冷却することができる流路部材が求められており、熱交換効率の向上した流路部材が要求されている。
【0006】
それゆえ本発明は、熱交換効率が向上した流路部材およびこれを用いた熱交換器ならびに半導体製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の流路部材は、蓋体である第1壁部と、底板である第2壁部と、前記第1壁部と前記第2壁部との間に設けられた側壁である第3壁部とを備え、前記第1壁部と前記第2壁部と前記第3壁部とで内部に流体が流れる流路を構成してなり、前記第3壁部は、流体が流れる方向に沿って、前記流路に突出する凸部を複数有しており、該凸部の先端面に、他の部位よりも粗い粗部を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の熱交換器は、前記流路部材の前記第1壁部および前記第2壁部のうち少なくとも一方の表面または内部に金属部材が設けられてなることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の半導体製造装置は、前記流路部材の前記第1壁部および前記第2壁部のうち少なくとも一方の内部に金属部材が設けられてなり、該金属部材がウェハを吸着するための電極であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流路部材によれば、第3壁部は、流体が流れる方向に沿って、流路に突出する凸部を複数有しており、凸部の先端面に、他の部位よりも粗い粗部を有することから、流体に乱流が発生し易くなり、熱交換効率を高めることができる。
【0011】
また、本発明の熱交換器によれば、上記流路部材の第1壁部および第2壁部のうち少なくとも一方の表面または内部に金属部材が設けられてなることから、熱交換効率が高い熱交換器とすることができる。
【0012】
また、本発明の半導体製造装置によれば、上記流路部材の第1壁部および第2壁部のうち少なくとも一方の内部に金属部材が設けられてなり、該金属部材がウェハを吸着するための電極であることから、寸法精度の高い半導体素子を製造可能な半導体製造装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の流路部材の一例を示す、(a)は外観斜視図および流体が流れる方向に対して垂直な断面を示す斜視図であり、(b)は(a)の矢印で示した第3壁部を部分拡大した部位における横断面図である。
図2】本実施形態の流路部材の他の例を示す、(a)は外観斜視図および流体が流れる方向に対して垂直な断面を示す斜視図であり、(b)は(a)の矢印で示した第3壁部を部分拡大した部位における横断面図である。
図3】本実施形態の流路部材のさらに他の例を示す、(a)は外観斜視図および流体が流れる方向に対して垂直な断面を示す斜視図であり、(b)は流体が流れる方向に沿った断面を一部抜粋して示す断面図であり、(c)は(a)の矢印で示した第3壁部の部分拡大図である。
図4】本実施形態の流路部材のさらに他の例を示す、(a)は外観斜視図および流体が流れる方向に対して垂直な断面を示す斜視図であり、(b)は流体が流れる方向に沿った断面を一部抜粋して示す断面図である。
図5】本実施形態の流路部材のさらに他の例を示す、(a)は外観斜視図および流体が流れる方向に対して垂直な断面を示す斜視図であり、(b)は流体が流れる方向に沿った断面を一部抜粋して示す断面図である。
図6】本実施形態の流路部材のさらに他の例を示す、(a)は外観斜視図および流体が流れる方向に対して垂直な断面を示す斜視図であり、(b)は流体が流れる方向に沿った断面を一部抜粋して示す断面図である。
図7】本実施形態の流路部材を備える半導体製造装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の流路部材の実施の形態の例を説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の流路部材の一例を示す、(a)は外観斜視図および流体が流れる方向に対して垂直な断面を示す斜視図であり、(b)は(a)の矢印で示した第3壁部を部分拡大した部位における横断面図である。なお、以降の図において同一の構成は、同一の符号を用いて説明するものとする。
【0016】
図1(a)に示すように、流路部材1は、第1壁部1aと、第3壁部1cと、第2壁部1bとを備え、この第1壁部1aと第3壁部1cと第2壁部1bとで、内部に、後述するウェハを加熱または冷却するための気体または液体等の流体を流すための流路3が構成されている。
【0017】
そして第3壁部1cの流路3側の面の一部には、図1(b)に示すような粗部2を有している。
【0018】
なお、粗部2が第3壁部1cの流路3側の面全体にあると流体の流れを阻害してしまい、熱交換効率が低下しやすくなる。それゆえ、第3壁部1cの流路3側の面の一部に、他の部位13よりも粗い粗部2が設けられていることが重要である。それにより、粗部2が第3壁部1cの流路3側の面全体にある場合に比べて、流体の流れを阻害することを抑制することができる。さらには、第3壁部1cの流路3側の面の一部に、他の部位13よりも粗い粗部2を有すことにより、流体に乱流が発生し易くなる。それにより、流路部材1の熱交換効率を高くすることができる。
【0019】
なお、ここで言う粗部2とは、第3壁部1cの流路3側の面を構成する部位の一部が、流路3側の面を構成する他の部位13より粗い(例えば、第3壁部1cの流路3側の面の表面性状(JIS B0601 1994に記載される、算術平均粗さ:Ra、最大高さ:Ry、十点平均粗さ:Rz等)を見たときに、第3壁部1cの流路3側の面を構成する部分の一部が、流路3側の面を構成する他の部位13より粗いこと)部位のことを言う。
【0020】
また、このような粗部2は、流体の流れを阻害することを抑制しつつも熱交換効率を高くするために、第3壁部1cの流路側の全面の5%以上30%以内であることが好ましい。
【0021】
このような粗部2の確認は、例えば、公知の表面粗さ計や画像解析装置等を用いて確認およびその面積の比率を計算することができる。
【0022】
ここで、流路部材1は、セラミックスで作製することが好ましい。流路部材1をセラミックスで作製することにより、流路3に流す流体として腐食性の高いガスや液体の使用が可能であり、金属に無い耐久性や耐食性を有し、絶縁性に優れた流路部材1とすることができる。なお、セラミックスの材質としては、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素、炭化硼素、コージェライト、ムライトまたはこれらの複合物を用いることができる。
【0023】
また、本実施形態の流路部材1は、炭化珪素を主成分とする炭化珪素質焼結体からなることが望ましい。ここで、主成分とは、流路部材1を構成する成分のうち80質量%以上の割合で占める成分のことをいう。そして、本実施形態の流路部材1が、炭化珪素を主成分とする炭化珪素質焼結体からなるときには、優れた機械的特性や耐食性に加えて熱伝導率が高いことから、熱交換の効率が向上する。また、他のセラミックス、例えばアルミナと比べて比重が小さいことから、大型の流路部材1が必要な場合に軽量化を図ることができる。
【0024】
なお、流路部材1の材質は、流路部材1から所定の大きさの試料を切り出し、X線回折法によって確認することができる。また、含有量については、走査型電子顕微鏡(SEM)によるエネルギー分散型X線(EDS)分析を行なうことによって確認することができる。また、ICP発光分光分析法または蛍光X線分析法によっても含有量を確認することができる。
【0025】
また、流路部材1の流路3は、その形状を蛇行状やスパイラル状に形成することによって、熱交換器の内部に流体を長く留まらせることができる(流路の長さを長くできる)ので、熱交換を効率的に行なうことができる。
【0026】
図2は、本実施形態の流路部材の他の例を示す、(a)は外観斜視図および流体が流れる方向に対して垂直な断面を示す斜視図であり、(b)は(a)の矢印で示した第3壁部を部分拡大した部位における横断面図である。
【0027】
図2(a)に示す本実施形態の流路部材20は、(b)に示すように、第3壁部1cは、流路3側に突出する凸部4を有し、凸部4の先端面に粗部2を有している。
【0028】
このような構成とすることで、凸部4の先端面の粗部2により乱流が発生するとともに、流体が凸部4に接することにより、乱流が大きくなり熱交換効率をさらに高めることができる。
【0029】
また、凸部4を有するとともに、凸部4の先端面に粗部2を有することで、乱流の発生部が流路3の中央側へ近づくことになるので、流体の攪拌がされやすく乱流の発生による熱交換効率をさらに高めることができるので、流路部材20の熱交換効率をより高めることができる。
【0030】
なお、凸部4の高さが高すぎると、流体の流れが大きく阻害されてしまい、熱交換効率が低下してしまうおそれがある。それゆえ流体の流れを阻害しすぎないためにも、その高さは500μm以上3000μm以下であることが好ましい。
【0031】
なお、ここで言う凸部4の高さは、図2の(b)に示すAの部分の寸法ことを言い、その測定方法は、凸部4が入るようにしてカットした断面を公知の測定顕微鏡等を用いて測定することができる。
【0032】
また、凸部4は、流体が流れる方向に沿って複数設けられていることが好ましい。
【0033】
このような構成とすることで、流路3を流れる流体に乱流をより発生させやすくすることができる。それにより、流路部材20の熱交換効率を高めることができるとともに、流路3内で乱流を複数個所に発生させることにより、熱交換に偏りが生じることを抑制でき、流路部材20の全体の温度を一定に近づけることができることから、流路部材20の熱応力に対する破壊を抑制することができる。
【0034】
また、凸部4が第1壁部1aから第2壁部1bへ向かう方向に複数設けられていることが好ましい。
【0035】
このような構成とすることで、流体が、第1壁部1a側または第2壁部1b側に偏ることがなく、流路部材20全体で効率よく熱交換をすることができる。それにより、流路部材20の熱交換効率をさらに高めることができる。
【0036】
また、流体が流れる方向に隣り合う凸部4が、第1壁部1aから第2壁部1bへ向かう方向にずれて設けられていることが好ましい。
【0037】
このような構成とすることで、流体が、凸部4の間を縫うよう流れることから攪拌されやすくなる。それにより、流路部材20全体の熱交換効率をさらに上げることができるとともに、流路部材20の全体の温度を一定に近づけることができることから、流路部材20が熱応力により破壊されることを抑制できる。
【0038】
また、流体の流れを阻害しないように抑制しながら流体の乱流を起こして流路部材20の熱交換効率を上げるためには、凸部4の先端面の面積を広く設けることが好ましいが、その構成として、凸部4の先端面の中央部が、第3壁部1c側に向けて湾曲していることが好ましい。
【0039】
このような構成とすることで、凸部4の表面積を広くすることができるとともに、乱流が第3壁部1c側に向けて回り込んだ際に、さらに粗部2に接触することにより、より多くの乱流が発生するので、流路部材20の熱交換効率をさらに高めることができる。
【0040】
図3は、本実施形態の流路部材のさらに他の例を示す、(a)は外観斜視図および流体が流れる方向に対して垂直な断面を示す斜視図であり、(b)は流体が流れる方向に沿った断面を一部抜粋して示す断面図であり、(c)は(a)の矢印で示した第3壁部の部分拡大図である。
【0041】
図3(b)および(c)に示すように、本実施形態の流路部材30は、粗部2が、第1壁部1a側から第2壁部1b側に延びる溝5を有している。
【0042】
このような構成とすることで、溝5によって流路3を流れる流体に乱流をより発生させやすくすることができる。それにより、流路部材30の熱交換効率を高めることができるとともに、流路3内で乱流を複数個所に発生させることにより、熱交換に偏りが生じることを抑制でき、流路部材30の全体の温度を一定に近づけることができることから、流路部材30の熱応力に対する破壊を抑制することができる。
【0043】
ここで、溝5の幅は50μm以上1000μm以下、深さは20μm以上500μm以下であれば良く、この範囲であれば、流体の流れが淀むことなく、乱流をより発生させやすくすることができる。なお、ここで言う溝2の幅は、図3の(c)に示すBの部分の寸法のことを言い、深さは、Cの部分の寸法のことを言う。
【0044】
図4は、本実施形態の流路部材のさらに他の例を示す、(a)は外観斜視図および流体が流れる方向に対して垂直な断面を示す斜視図であり、(b)は流体が流れる方向に沿った断面を一部抜粋して示す断面図である。なお、第3壁部にある溝の断面図は図3と同様となるため割愛しており、また流路部材の第1壁部上に発熱部材が配置されている。
【0045】
図4に示す流路部材40は、第1壁部1aが蓋体であり、第2壁部1bが底板であり、第3壁部1cが側壁とされている。なお流路部材40の蓋体である第1壁部1aには図示しない発熱部材搭載領域を有しており、該発熱部材搭載領域に発熱部材6が配置されている例を示している。なお発熱部材搭載領域は、対象とする発熱部材6に合わせて適宜設定することができ、例えば第1壁部1aまたは第2壁部1bの表面の全面とすることもできる
図4(a)および(b)に示すように、本実施形態の流路部材40は、第1壁部1a(蓋体)の表面に発熱部材6が配置されているとともに、溝5は、流体が発熱部材搭載領域(言い換えれば発熱部材6)に向けて流れるように傾斜している。なお、第2壁部1b(底板)に発熱部材6が配置される場合もある。
【0046】
このような構成とすることで、流体の一部が、第1壁部1aまたは第2壁部1bの発熱部材搭載領域に向けて流れやすくなる。それにより、流体と第1壁部1aまたは第2壁部1bとの熱交換、言い換えれば流体と発熱部材搭載領域との熱交換が容易となり、より効率的に熱交換をすることができる。
【0047】
特に第1壁部1aまたは第2壁部1bの表面に発熱部材6が配置されている場合において、流路3を流れる流体と発熱部材6との熱交換効率を高くするためには、第1壁部1aまたは第2壁部1bの厚みを、強度に問題がない程度でできるだけ薄くすればよい。
【0048】
なお、発熱部材6とは、後述するウェハだけでなく、LED素子やパワー半導体などの発熱を有する電子部品のことを言う。
【0049】
図5は、本実施形態の流路部材のさらに他の例を示す、(a)は外観斜視図および流体が流れる方向に対して垂直な断面を示す斜視図であり、(b)は流体が流れる方向に沿った断面を一部抜粋して示す断面図である。なお、第3壁部1cにある溝5の断面図は図3と同様となるため割愛してある。
【0050】
図5に示す流路部材50においても、第1壁部1aが蓋体であり、第2壁部1bが底板であり、第3壁部1cが側壁とされている。なお流路部材50の蓋体である第1壁部1aには図示しない発熱部材搭載領域を有しており、該発熱部材搭載領域に発熱部材6が配置されている。
【0051】
図5(a)および(b)に示すように、本実施形態の流路部材50は、溝5が、発熱部材搭載側領域側に向けて、傾斜角度が大きくなるように、多段に傾斜している。
【0052】
このような構成とすることで、流体の一部が、第1壁部1aまたは第2壁部1bの発熱部材搭載領域側(言い換えれば発熱部材6)に向けてスムーズに流れやすくなる。それにより、流体と第1壁部1aまたは第2壁部1bとの熱交換、言い換えれば流体と発熱部材搭載領域との熱交換が容易となり、より効率的に熱交換をすることができる。
【0053】
図6は、本実施形態の流路部材のさらに他の例を示す、(a)は外観斜視図および流体が流れる方向に対して垂直な断面を示す斜視図であり、(b)は流体が流れる方向に沿った断面を一部抜粋して示す断面図である。なお、第3壁部1cにある溝5の断面図は図3と同様となるため割愛してある。
【0054】
図6に示す流路部材60においても、第1壁部1aが蓋体であり、第2壁部1bが底板であり、第3壁部1cが側壁とされている。なお流路部材60の蓋体である第1壁部1aには図示しない発熱部材搭載領域を有しており、該発熱部材搭載領域に発熱部材6が配置されている。
【0055】
図6(a)および(b)に示すように、本実施形態の流路部材60は、第1壁部1aに発熱部材6が配置されるとともに、溝2の幅Bが、発熱部搭載側領域側に向けて広くなっている。
【0056】
このような構成とすることで、多くの量の流体が、第1壁部1aまたは第2壁部1bの発熱部材搭載領域側(言い換えれば発熱部材6)に向けてスムーズに流れやすくなる。それにより、流体と第1壁部1aまたは第2壁部1bとの熱交換、言い換えれば流体と発熱部材搭載領域との熱交換が容易となり、より効率的に熱交換をすることができる。
【0057】
そして図示していないが、本実施形態の熱交換器は、本実施形態の流路部材1,20,30,40,50,60の第1壁部1aおよび第2壁部1bのうち少なくとも一方の表面または内部に金属部材が設けられている。
【0058】
このような熱交換器の第1壁部1aおよび第2壁部1bのうち少なくとも一方に発熱部材を配置することにより、発熱部材により生じた熱は、金属部材に効率よく伝熱され、その伝熱された熱がさらに各壁部に伝熱されることで、流路3を流れる流体と効率よく熱交換することができる。なお、本実施形態の熱交換器においては、発熱部材としてLED素子やパワー半導体などの発熱を有する電子部品を配置する場合に、特に有効である。
【0059】
図7は、本実施形態の流路部材を備える半導体製造装置の一例を示す概略図である。この半導体製造装置200は、ウェハWのプラズマ処理装置であり、ウェハWは、本実施形態の流路部材1,20,30,40,50,60の第1壁部1aの内部に金属部材11が設けられてなる熱交換器100に載置されている。流路部材1,20,30,40,50,60は、流入口7に供給チューブ9、流出口8に排出チューブ10が接続され、高温もしくは低温の流体を流路部材1,20,30,40,50,60の内部に有する流路を循環させることによってウェハWの加熱や冷却を行なうものである。
【0060】
また、ウェハWの上方にはプラズマを発生させるための上部電極12を備えるとともに、流路部材1,20,30,40,50,60の第1壁部1aの内部にある金属部材11を、プラズマを発生させるための下部電極として利用したもので、この下部電極である金属部材11と上部電極12との間に電圧を印加することで、電極11、12間にプラズマを発生させることができ、第1壁部1a上に載置したウェハWに対してプラズマを当てることができるようになっている。また、プラズマ処理する際に高温となる下部電極としての金属部材11を冷却し、安定した温度に維持できる。このことにより、ウェハWの温度も制御されることから、寸法精度の高い加工ができる。また、半導体製造装置200の金属部材11を複数に分割し、一方の電極と他方の電極からなる双極型の電極としても構わない。
【0061】
また、図7では金属部材11をプラズマ発生用の下部電極として用いた例を示したが、金属部材11に電流を流すことによって加熱し、流体の温度を調整するのに用いることができる。
【0062】
さらに、第1壁部1aを誘電体材料により形成するとともに、金属部材11を静電吸着用の電極として用い、金属部材11に電圧を印加して、ウェハWと誘電体層との間にクーロン力やジョンソン・ラーベック力などの静電吸着力を発生させることで、ウェハWを吸着・保持できるようにすることもできる。
【0063】
このように、本実施形態の熱交換器100は、本実施形態の流路部材1,20,30,40,50,60の第1壁部1aおよび第2壁部1bのうち少なくとも一方の内部に金属部材11を設けるようにしてあることから、熱交換効率が高く、長期間の使用に耐え得る熱交換器100とすることができる。
【0064】
そして、本実施形態の流路部材1,20,30,40,50,60は、上述したように、耐久性や耐食性に優れ、熱交換効率の高いものであることから、これを備える本実施形態の半導体製造装置200は、半導体素子の製造や検査に支障をきたすことの少ない好適な半導体製造装置とすることができる。また、本実施形態の半導体製造装置200としては、その一例を示す図7のプラズマ処理装置の他に、スパッタ装置、レジスト塗布装置、CVD装置やエッチング処理装置等があり、これらの装置においても本実施形態の流路部材1,20,30,40,50,60を備えることにより、上述した効果を得ることができる。
【0065】
以下、本実施形態の流路部材1,20,30,40,50、60の製造方法の一例について示す。
【0066】
まず、流路部材1,20,30の作製にあたって、第1壁部1aとなる成形体と、第2壁部1bと第3壁部1cとが一体となって凹部を有する基体の成形体を得た後、接合剤を用いて第1壁部1aと基体とを接合することによって流路部材1,20,30の成形体を得る工程について説明する。
【0067】
純度が90%以上であり平均粒径が1μm程度のセラミック原料を用意し、これに焼結助剤、バインダ、溶媒および分散剤等を所定量添加して混合したスラリーを噴霧造粒法(スプレードライ法)により噴霧乾燥して造粒し、2次原料とする。次に、噴霧乾燥して造粒した2次原料を所定形状のゴム型内へ投入し、静水圧プレス成形法(ラバープレス法)により成形し、その後、成形体をゴム型から取り外し、切削加工を施す。
【0068】
なお、この切削加工において、第2壁部1bと第3壁部1cとが一体となった基体となる成形体については、所望の外形を形成するとともに、流路部材1,20,30の第2壁部1bとなる場所に流入口7および流出口8を形成する。また、基体となる成形体については、所望の外形を形成するとともに、凹部を形成する。そして、凹部の第3壁部1cにおいて、粗部2を形成する。
【0069】
ここで、粗部2を形成する方法としては、公知のマイクロドリルを用いたマシニング加工,ブラスト加工またはレーザ加工などによって、焼成後に粗部2となるように第3壁部1cに形成すればよい。
【0070】
また、凸部4を形成する方法としては、公知のマイクロドリルを用いたマシニング加工,ブラスト加工またはレーザ加工などによって、焼成後に凸部4の高さAが500μm以上3000μm以下となるように第3壁部1cに形成すればよい。また凸部4の先端面に粗部2を形成する場合には、凸部4の先端面を公知のマイクロドリルを用いたマシニング加工,ブラスト加工またはレーザ加工すればよい。
【0071】
さらに、溝5を形成する方法としては、公知のマイクロドリルを用いたマシニング加工,ブラスト加工またはレーザ加工などによって、焼成後に溝2の幅Bが50μm以上1000μm以下、深さCが20μm以上500μm以下となるように第3壁部1cに形成すればよい。なお凸部4の先端面に溝5を形成する場合には、上記に示した方法により凸部4を形成して、その先端面に、公知のマイクロドリルを用いたマシニング加工,ブラスト加工またはレーザ加工などによって溝5を形成すればよい。
【0072】
また、別の方法として、公知のプレス法、押出法、射出成形法で作製したセラミック成形体を、焼成後に先端面に粗部2または溝5を有するように形成した凸部を、接合剤を用いてその成形体を接合して一体化させて第3壁部1cとしてもよい。
【0073】
ここで、接合に用いる接合剤としては、基体となる成形体の作製に用いたセラミック原料、焼結助剤、バインダ、分散剤および溶媒を所定量秤量して混合したスラリーからなる接合剤を用いる。
【0074】
次に、第1壁部1aとなる成形体および基体となる成形体を接合する工程について説明する。接合に用いる接合剤としては、第1壁部1aとなる成形体および基体となる成形体の作製に用いたセラミック原料、焼結助剤、バインダ、分散剤および溶媒を所定量秤量して混合したスラリーからなる接合剤を用いる。そして、第1壁部1aとなる成形体および基体となる成形体の少なくとも一方の接合部にこの接合剤を塗布し、第1壁部1aとなる成形体と基体となる成形体とが一体化した接合成形体を得る。そして、この接合成形体をセラミック原料に応じた雰囲気中において焼成することにより、本実施形態の流路部材1,20,30を得ることができる。
【0075】
また、製造方法の他の例としては、第1壁部1aとなる成形体および基体となる成形体をセラミック原料に応じた雰囲気中において焼成して、第1壁部1aおよび基体の焼結体を得る。
【0076】
そして、基体の第3壁部1cに対し、公知のマイクロドリルを用いたマシニング加工,ブラスト加工またはレーザ加工などによって、目的とする粗部2を形成すればよい。
【0077】
その後、ガラスからなる接合剤を用いて、第1壁部1aおよび基体の焼結体の少なくとも一方の接合部にこの接合剤を塗布して一体化させ、熱処理することにより本実施形態の流路部材1,20,30を得ることができる。
【0078】
また、成形体を得る工程の他の例としては、スラリーを用いてセラミックスの一般的な成形法であるドクターブレード法やロールコンパクション法によりグリーンシートを形成し、金型により所望形状に打ち抜いた成形体を用いて積層するものであってもよい。
【0079】
例えばその一例として、スラリーの作製方法としては、まず平均粒径が0.5μm以上2μm以下である炭化珪素粉末と、焼結助剤として、炭化硼素およびカルボン酸塩の粉末とを準備する。そして、各粉末を、例えば、炭化珪素粉末100質量%に対して、炭化硼素に粉末を0.12質量%以上1.4質量%以下、カルボン酸塩の粉末を1質量%以上3.4質量%以下となるように秤量して混合する。
【0080】
次に、この混合粉末とともに、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アクリル樹脂またはブチラール樹脂等のバインダと、水と、分散剤とを、ボールミル、回転ミル、振動ミルまたはビーズミル等に入れて混合する。ここで、バインダの添加量としては、成形体の強度や可撓性が良好で、また、焼成時に成形用バインダの脱脂が不十分とならないようにすればよく、このようにして作製されたスラリーを用いればよい。
【0081】
そして、粗部2を形成する方法としては、粗部2の形が形成された金型によって所望形状に打ち抜くか、流路3の形状に打ち抜いた後に、公知のマイクロドリルを用いたマシニング加工,ブラスト加工またはレーザ加工などによって、粗部2を形成すればよい。
【0082】
その後、このようにして作製した複数のグリーンシートを所望の流路3となるように積層するが、それぞれのグリーンシートの接合面には、グリーンシートを作製するときに用いたものと同様のスラリーを接合剤として塗布し、グリーンシートを積層したあとに、平板状の加圧具を介して約0.5MPa程度の加圧を加え、そのあとに、約50〜70℃の室温で約10〜15時間乾燥させる。
【0083】
次に、流路部材1,20,30となる積層したグリーンシートを、例えば公知のプッシャー方式やローラー方式の連続トンネル炉で焼成する。それぞれの材質により焼成温度は異なるが、例えば、炭化珪素が主成分の材料であれば、不活性ガスの雰囲気中または真空雰囲気中、1800〜2200℃の温度範囲で10分〜10時間保持した後、2200〜2350℃の温度範囲で10分〜20時間にて焼成すればよい。
【0084】
ここで、例えば第1壁部1aに金属部材11を形成するためには、アルミニウムや銅を公知の印刷法で形成するか、蒸着法で形成するか、アルミニウム板や銅板を活性金属法やロウ付け法を用いて接合するか、第1壁部1aに孔を形成して該孔部にアルミニウムや銅を充填すればよい。このように形成することによって、熱交換器100を得ることができる。
【0085】
以上のようにして得られる本実施形態の流路部材1,20,30は、第3壁部1cの流路3側の面の一部に、他の部位13よりも粗い粗部2を有することにより、流体に乱流が発生し易くなり、熱交換効率が向上した流路部材1,20,30とすることができる。また、特に、半導体製造装置200が本実施形態の流路部材1,20,30を有する熱交換器100を備えることにより、支障をきたすことなく半導体素子の製造や検査を行なうことができる。
【0086】
なお、図4または図5に示す様な形状の溝5を形成した流路部材40または50を得るためには、例えば、第3壁部1cの流路3側からマシニング加工の場合ではマイクロドリルを保持したヘッドを、ブラスト加工の場合では噴射口を保持したヘッドを、またレーザ加工の場合では発射口を保持したヘッドを傾斜、もしくは旋回することによって、図4または図5に示した形状の溝5を有する流路部材40または50を得ることができる。
【0087】
また、図6に示す様な形状の溝5を形成した流路部材60を得るためには、例えば、第3壁部1cの流路3側を蓋体部側1a側からマシニング加工の場合では先端面の直径を小さくしたマイクロドリルを使用することによって、ブラスト加工およびレーザ加工の場合では噴射の速度やレーザの出力を調整することによって、図6に示した形状の溝5を有する流路部材60を得ることができる。
【符号の説明】
【0088】
1,20,30,40,50,60:流路部材
1a:蓋体部
1b:底板部
1c:側壁部
2:粗部
3:流路
4:凸部
5:溝
6:発熱部材
7:流入口
8:流出口
9:供給チューブ
10:排出チューブ
11:金属部材
13:他の部位
100:熱交換器
200:半導体製造装置
W:ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7