(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1種のC2〜C4モノマーを含み、少なくとも1種の親水性単位により変性され、25000g/モル以下の重量平均分子量および75℃超の融点を有する、少なくとも1種の油溶性の低炭素極性変性ポリマーを含み、該少なくとも1種の油溶性の低炭素極性変性ポリマーが、ポリプロピレンおよび無水マレイン酸単位から本質的になる、請求項1に記載のエマルション。
少なくとも1種のC26〜C28モノマーを含み、少なくとも1種の親水性単位により変性され、30000g/モル以下の重量平均分子量および8%から60%の結晶度を有する少なくとも1種の油溶性の高炭素極性変性ポリマーを含む、請求項1に記載のエマルション。
エマルションの重量に基づいて0.01から10重量%、又は0.05から8重量%のポリリジンを用いて作製される、請求項1から5の何れか一項に記載のエマルション。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例または別に示されている以外の、成分の量および/または反応条件を表わすすべての数は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものと理解されるべきである。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「フィルムフォーマー(film former)」または「皮膜形成剤(film forming agent)」または「皮膜形成性樹脂」とは、(例えば、水および有機溶媒などの)少なくとも1種の溶媒に溶解後、例えば、基質上の少なくとも1種の溶媒が、蒸発、吸収および/または消失しても、塗布された基質上の皮膜をそのまま残すポリマーを意味する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「ケラチン基質」には、以下に限定されるものではないが、皮膚、毛、まつげ、唇および爪が含まれる。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「置換」とは、少なくとも1つの置換基を含むことを意味する。置換基の非限定例としては、酸素原子および窒素原子などの原子ならびにヒドロキシル基、エーテル基、アルコキシ基、アシルオキシアルキル基、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、カルボン酸基、アミン基、アシルアミノ基、アミド基、ハロゲン含有基、エステル基、チオール基、スルホナート基、チオスルファート基、シロキサン基およびポリシロキサン基などの官能基が挙げられる。(1つまたは複数の)置換基は、さらに置換されていてもよい。
【0022】
本明細書中で定義されるとおり、安定性は、組成物を25℃の環境制御チャンバーに8週間入れることによって試験される。この試験では、チャンバーに入れられるときに、サンプルの物理的状態が検査される。サンプルは、その後、24時間、3日、1週、2週、4週および8週目の時点で再び検査される。それぞれの検査において、サンプルは、組成物がエマルションの形態の場合は相分離、組成物がスティック状の場合は曲がりもしくは傾き、融解またはシネレシス(もしくは結露)などの組成物の異常な点について調べられる。安定性は、37℃、40℃、45℃、50℃および凍結融解条件において、8週間試験を繰り返すことによってさらに試験される。こうしたあらゆる試験において、組成物の働きを妨げる異常な点が観察された場合には、組成物の安定性が欠如していると見なされる。当業者は、意図した用途に基づいて組成物の働きを妨げる異常な点について容易に認識するであろう。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「実質的に含まない」とは、本明細書に記載されるエマルション組成物が、組成物の約1重量%未満の、例えば、シリコーン樹脂および/または界面活性剤などの特定の化合物を含有することを意味する。本エマルション組成物は、組成物の約0.5重量%未満、より好ましくは組成物の約0.01重量%未満、好ましくは0%のシリコーン樹脂および/または界面活性剤などの特定の化合物を含有する場合もある(これらすべてが、「実質的に含まない」の意味に含まれる)。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「揮発性」とは、約100℃未満の引火点を有することを意味する。本明細書中で使用される場合、「不揮発性」とは、約100℃を超える引火点を有することを意味する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「少なくとも1つ(種)の」という表現は、1つ(種)または複数を意味し、したがって、個々の構成成分ならびに混合物/組み合わせを含む。
【0026】
実施例または別に示されている以外の、成分の量および/または反応条件を表わすすべての数は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものと理解されるべきであり、示される数の10%から15%までを意味する。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「ウォータープルーフ」とは、水をはじく能力および水に対する耐久性を指す。ウォータープルーフ性は、そのような性質を評価するための当該技術分野において既知の任意の方法によって評価されてもよい。例えば、マスカラ組成物がつけまつげにつけられてもよく、これが、その後、例えば、20分間などの特定の時間、水に入れられる場合もある。予め確定された時間の終了時に、つけまつげが水から取り出され、例えば、紙などの材料上に置かれてもよい。その材料に残る残留物の程度が、その後、評価され、例えば、商業的に入手可能な組成物などの他の組成物と比較されてもよい。同様に、例えば、組成物が皮膚に塗布されてもよく、特定の時間、その皮膚が水に沈められる場合もある。予め確定された時間の後に皮膚に残っている組成物の量が、その後、評価および比較されてもよい。例えば、製品の大半が使用者(wearer)に、例えば、まつげ、皮膚などに残っている場合は、その組成物はウォータープルーフであろう。本発明の好ましい実施形態において、組成物は、使用者からほとんどまたはまったく移行しない。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「長期耐摩耗性」組成物とは、肉眼で見た場合、長い期間の後に塗布時と同じか、または実質的に同じ状態に色が残っている組成物を指す。長期摩耗性は、そのような性質を評価するための当該技術分野において既知の任意の方法によって評価されてもよい。例えば、長期摩耗性は、組成物をヒトの毛、皮膚または唇に塗布し、長い期間の後に組成物の色を評価すること含む試験によって評価されてもよい。例えば、組成物の色は、毛、皮膚または唇への塗布の直後に評価されてもよく、こうした特性は、その後、特定の時間の後に再び評価および比較されてもよい。さらに、こうした特性は、商業的に入手可能な組成物などの他の組成物に関して評価されてもよい。
【0029】
「油中水型エマルションを含むエマルション」には、例えば、油中水型エマルション、水中油中水型エマルションなどのエマルションが含まれる。
【0030】
油溶性の極性変性ポリマー
本発明によると、少なくとも1種の油溶性の極性変性ポリマーを含むエマルションが提供される。本明細書中で使用される場合、「油溶性の極性変性ポリマー」とは、「油溶性の低炭素極性変性ポリマー(low carbon polar modified polymer)」および/または「油溶性の高炭素極性変性ポリマー(high carbon polar modified polymer)」を指す。
【0031】
油溶性の低炭素極性変性ポリマー
本発明によると、少なくとも1種の油溶性の低炭素極性変性ポリマーを含む組成物が提供される。本明細書中で使用される場合、「低炭素極性変性ポリマー」とは、(1種または複数の)親水性単位により変性された疎水性ホモポリマーまたはコポリマーを指す。本明細書中で使用される場合、「油溶性の」とは、極性変性ポリマーが、油に溶解することを意味する。
【0032】
疎水性ホモポリマーおよび/またはコポリマーに対する適したモノマーとしては、以下に限定されるものではないが、環式、直鎖または分岐の、置換または非置換、C2〜C20化合物、例えば、スチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、イソペンテン、イソプレン、ヘキセン、イソヘキセン、デカン、イソデカンおよびオクタデカンが挙げられ、全範囲およびその間の部分範囲を含む。好ましくは、モノマーは、C2〜C8化合物、より好ましくはC2〜C6化合物、最も好ましくはエチレン、プロピレンおよびブチレンなどのC2〜C4化合物である。
【0033】
適した(1種または複数の)親水性単位としては、以下に限定されるものではないが、無水マレイン酸、アクリレート、アルキルアクリレート、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレートおよびブチルアクリレートならびにポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。
【0034】
本発明によると、低炭素極性変性ポリマーは油溶性であり、すなわち、ポリマーは、ポリマー全体を水溶性または油不溶性にするのに十分な量の(1種または複数の)親水性単位を含有しない。好ましい実施形態によると、低炭素極性変性ポリマーは、親水性単位と同じ量(1:1比率)の疎水性モノマーを含有するか、または親水性単位よりも多くの疎水性モノマーを含有する。特に好ましい実施形態によると、低炭素極性変性ポリマーは、(ポリマーの重量に基づいて)50%以下の(1種または複数の)親水性単位、40%以下の(1種または複数の)親水性単位、30%以下の(1種または複数の)親水性単位、20%以下の(1種または複数の)親水性単位、10%以下の(1種または複数の)親水性単位、5%以下の(1種または複数の)親水性単位、4%以下の(1種または複数の)親水性単位または3%以下の(1種または複数の)親水性単位を含有する。
【0035】
好ましくは、低炭素極性変性ポリマーは、ポリマーの重量に対して、約0.5重量%から約10重量%の親水性単位、より好ましくは約1重量%から約8重量%の親水性単位を有し、全範囲およびその間の部分範囲を含む。特に好ましい親水性に変性されたポリマーは、無水マレイン酸単位により変性されたエチレンおよび/またはプロピレンホモポリマーならびにコポリマーである。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によると、低炭素極性変性ポリマーはワックスである。特に好ましい実施形態によると、低炭素極性変性ワックスは、メタロセン触媒反応により作製され、極性基または単位ならびに疎水性主鎖を含む。適した変性ワックスとしては、米国特許出願公開第2007/0031361号に開示されているものが挙げられ、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に好ましい極性変性ワックスは、C2〜C3極性変性ワックスである。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によると、低炭素極性変性ワックスは、メタロセン触媒反応によって得られた疎水性モノマーのホモポリマーおよび/またはコポリマーワックスベースのものであり、25000g/モル以下、好ましくは1000から22000g/モル、特に好ましくは4000から20,000g/モルの重量平均分子量Mw、15000g/モル以下、好ましくは500から12000g/モル、特に好ましくは1000から5000g/モルの数平均分子量Mn、1.5から10、好ましくは1.5から5、特に好ましくは1.5から3、とりわけ好ましくは2から2.5の範囲のモル質量分布Mw/Mnを有する。また、低炭素極性変性ワックスは、好ましくは75℃を超える融点、より好ましくは、例えば、90℃から160℃の間の融点、好ましくは100℃から150℃の間の融点などの90℃を超える融点を有し、全範囲およびその間の部分範囲を含む。
【0038】
コポリマーワックスの場合においては、コポリマー主鎖の総重量に基づいて、0.1から30重量%の一方のモノマー由来の構造単位および70.0から99.9重量%のもう一方のモノマー由来の構造単位を有することが好ましい。そのようなホモポリマーおよびコポリマーワックスは、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれるEP571882に記載のプロセスによって、そこに明記されているメタロセン触媒を使用して作製されてもよい。適した調製プロセスとしては、例えば、メタロセン触媒の存在下におけるオレフィンの懸濁重合、溶液重合および気相重合が挙げられ、モノマー中における重合も可能である。
【0039】
低炭素極性変性ワックスは、酸素含有気体、例えば、空気による酸化によって、あるいは極性モノマー、例えば、マレイン酸もしくはアクリル酸またはこれらの酸の誘導体によるグラフト反応によって上記のホモポリマーおよびコポリマーから既知の手法で生成されてもよい。空気を用いた酸化によるメタロセンポリオレフィンワックスの極性の変性については、例えば、EP0890583A1に記載されており、グラフトによる変性については、例えば、米国特許第5,998,547号に記載されており、これら両文献の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
許容される低炭素極性変性ワックスとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水マレイン酸、アクリレート、メタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)などの親水性単位により変性されたエチレンおよび/もしくはプロピレン基のホモポリマーならびに/またはコポリマーが挙げられる。好ましくは、C2〜C3ワックスは、ワックスの重量に対して約0.5重量%から約10重量%の親水性単位、より好ましくは約1重量%から約8重量%の親水性単位を有し、全範囲およびその間の部分範囲を含む。特に好ましい親水性に変性されたワックスは、無水マレイン酸単位により変性されたエチレンおよび/またはプロピレンホモポリマーならびにコポリマーである。
【0041】
本発明に使用するための特に好ましいC2〜C3極性変性ワックスは、Clariantから商標名LICOCAREまたはLICOCENEとして商業的に入手可能なポリプロピレンおよび/またはポリエチレン−無水マレイン酸変性ワックス(「PEMA」、「PPMA」、「PEPPMA」)である。そのようなワックスの特定の例としては、PP207などの記号を有するLicoCare名称でClariantによって販売されている製品が挙げられる。
【0042】
その他の適した極性変性ポリマーとしては、以下に限定されるものではないが、HoneywellのA−C 573 A(エチレン−無水マレイン酸コポリマー;滴点、Mettler:106℃)、HoneywellのA−C 596 A(プロピレン−無水マレイン酸コポリマー;滴点、Mettler:143℃)、HoneywellのA−C 597(プロピレン−無水マレイン酸コポリマー;滴点、Mettler:141℃)、エチレンと無水マレイン酸の1:1のコポリマーである(VERTELLUSからの)ZeMac(登録商標)コポリマー、(Kurarayから)商標名ISOBAMとして販売されているポリイソブチレン−無水マレイン酸、Sigma Aldrichによって販売されているポリイソプレン−グラフト−無水マレイン酸、Chevron Philips Chemcial Co.によって販売されているポリ(無水マレイン酸−オクタデセン)、ArkemaによってLotader(例えば、2210、3210、4210および3410グレード)の商標名で販売されているポリ(エチレン−コ−ブチルアクリレート−コ−無水マレイン酸)、ArkemaによってLotaderの名称で販売されている、ブチルアクリレートが他のアルキルアクリレート(メチルアクリレート[グレード3430、4404および4503]およびエチルアクリレート[グレード6200、8200、3300、TX 8030、7500、5500、4700および4720など)によって置換されているコポリマーならびにISPによって名称ACO−5013として販売されているイソブチレン無水マレイン酸コポリマーが挙げられる。
【0043】
本発明の他の実施形態によると、低炭素極性変性ポリマーはワックスではない。本発明のこれらの実施形態によると、低炭素極性変性ポリマーは、(1種または複数の)疎水性モノマーのホモポリマーおよび/またはコポリマーベースのものであり、1,000,000g/モル以下、好ましくは1000から250,000g/モル、特に好ましくは5,000から50,000g/モルの重量平均分子量Mwを有し、全範囲およびその間の部分範囲を含む。
【0044】
これらの実施形態によると、低炭素極性変性ポリマーは、典型的には、例えば、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーまたは交互コポリマーなどのポリマーと関連する任意の形態であってもよい。例えば、低炭素極性変性ポリマーは、(無水マレイン酸などの)親水性基が、例えば、グラフトなどの任意の手段によって結合された疎水性主鎖(ポリプロピレンおよび/またはポリエチレンなど)を含有していてもよい。結合される基は、いかなる配向であってもよい(例えば、主鎖に沿ってアタクチック、アイソタクチックまたはシンジオタクチック)。
【0045】
好ましくは、(1種または複数の)油溶性の低炭素極性変性ポリマーは、組成物の総重量の約0.5%から約30%、より好ましくは、組成物の総重量の約1%から約20%、最も好ましくは約2%から約10%に相当し、全範囲およびその間の部分範囲を含み、例えば、約3%から約9%および約4%から約8%である。
【0046】
油溶性の高炭素極性変性ポリマー
本発明によると、少なくとも1種の油溶性の高炭素極性変性ポリマーを含む組成物が提供される。本明細書中で使用される場合、「極性変性ポリマー」とは、(1種または複数の)親水性単位により変性された疎水性ホモポリマーまたはコポリマーを指す。本明細書中で使用される場合、「油溶性の」とは、極性変性ポリマーが油に溶解することを意味する。「高炭素」とは、20個を超える炭素原子を意味する。
【0047】
疎水性ホモポリマーおよび/またはコポリマーに対する適したモノマーとしては、以下に限定されるものではないが、環式、直鎖または分岐の、置換または非置換、C22〜C40化合物、例えば、C22〜C28化合物、C24〜C26化合物、C26〜C28化合物およびC30〜C38化合物が挙げられ、全範囲およびその間の部分範囲を含む。好ましくは、モノマーは、C24〜26化合物、C26〜C28化合物またはC30〜C38化合物である。
【0048】
適した(1種または複数の)親水性単位としては、以下に限定されるものではないが、無水マレイン酸、アクリレート、アルキルアクリレート、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレートおよびブチルアクリレートならびにポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。
【0049】
好ましい実施形態によると、油溶性の高炭素極性変性ポリマーはワックスである。また、好ましくは、油溶性の高炭素極性変性ポリマーワックスは、1つまたは複数の以下の性質を有する。
重量平均分子量Mwが30000g/モル以下、好ましくは500から10000g/モル、特に好ましくは1000から5,000g/モルであり、全範囲およびその間の部分範囲を含み、
数平均分子量Mnが15000g/モル以下、好ましくは500から12000g/モル、特に好ましくは1000から5000g/モルであり、全範囲およびその間の部分範囲を含み、
モル質量分布Mw/Mnが1.5から10、好ましくは1.5から5、特に好ましくは1.5から3、とりわけ好ましくは2から2.5の範囲であり、全範囲およびその間の部分範囲を含み、かつ/または
示差走査熱量測定によって測定される場合、結晶度が8%から60%、好ましくは9%から40%、より好ましくは10%から30%であり、全範囲およびその間の部分範囲を含む。
【0050】
コポリマーワックスに関する好ましい実施形態によると、コポリマー主鎖の総重量に基づいて、0.1から30重量%の一方のモノマー由来の構造単位および70.0から99.9重量%のもう一方のモノマー由来の構造単位を有することが好ましい。
【0051】
本発明のワックスは、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれるEP571882に記載のプロセスによって作製されたホモポリマーまたはコポリマーベースであってもよい。適した調製プロセスとしては、例えば、触媒の存在下におけるオレフィンの懸濁重合、溶液重合および気相重合が挙げられ、モノマー中における重合も可能である。
【0052】
油溶性の高炭素極性変性ポリマーワックスは、酸素含有気体、例えば、空気による酸化によって、あるいは極性モノマー、例えば、マレイン酸もしくはアクリル酸またはこれらの酸の誘導体によるグラフト反応によって上記のホモポリマーおよびコポリマーから既知の手法で生成されてもよい。空気を用いた酸化によるポリオレフィンワックスの極性の変性については、例えば、EP0890583A1に記載されており、グラフトによる変性については、例えば、米国特許第5,998,547号に記載されており、これら両文献の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
許容される油溶性の高炭素極性変性ポリマーワックスとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水マレイン酸、アクリレート、メタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)などの親水性単位により変性されたC24、C25および/もしくはC26基のホモポリマーならびに/またはコポリマー、C26、C27および/もしくはC28基のコポリマーあるいはC30〜C38基のコポリマーが挙げられる。好ましくは、油溶性の高炭素極性変性ポリマーワックスは、ワックスの重量に対して約5重量%から約30重量%の親水性単位、より好ましくは約10重量%から約25重量%の親水性単位を有し、全範囲およびその間の部分範囲を含む。特に好ましい親水性に変性されたワックスは、無水マレイン酸単位により変性されたC26、C27および/またはC28ホモポリマーならびにコポリマーである。
【0054】
本発明に使用するための特に好ましい油溶性の高炭素極性変性ポリマーワックスは、商標名LicoCareまたはLICOCENEとしてClariantから商業的に入手可能なC26〜C28アルファオレフィンマレイン酸無水物コポリマーワックスである。そのようなワックスの特定の例としては、2025のMwおよび11%の結晶度を有する無水マレイン酸変性ワックスであるCM401などの記号を有するLicoCareの名称でClariantによって販売されている製品、名称Performa(登録商標)V1608としてBaker Hughesによって販売されているC30〜C38オレフィン/イソプロピルマレアート/無水マレイン酸コポリマーならびに商標名LicoCare CA301 LP3346としてClariantから商業的に入手可能な、エステルおよびカルボン酸基が交互のC24〜26側鎖を有する極性主鎖ベースのC24〜C26アルファオレフィンアクリレートコポリマーワックスが挙げられる。
【0055】
本発明の他の実施形態によると、極性変性ポリマーはワックスではない。本発明のこれらの実施形態によると、極性変性ポリマーは、(1種または複数の)疎水性モノマーのホモポリマーおよび/またはコポリマーベースであり、1,000,000g/モル以下、好ましくは1000から250,000g/モル、特に好ましくは5,000から50,000g/モルの重量平均分子量Mwを有し、全範囲およびその間の部分範囲を含む。
【0056】
これらの実施形態によると、極性変性ポリマーは、典型的には、例えば、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーまたは交互コポリマーなどのポリマーと関連する任意の形態であってもよい。例えば、極性変性ポリマーは、(無水マレイン酸などの)親水性基が、例えば、グラフトなどの任意の手段によって結合された疎水性主鎖(ポリプロピレンおよび/またはポリエチレンなど)を含有していてもよい。結合される基は、いかなる配向であってもよい(例えば、主鎖に沿ってアタクチック、アイソタクチックまたはシンジオタクチック)。
【0057】
好ましくは、(1種または複数の)油溶性の高炭素極性変性ポリマーは、組成物の総重量の約0.5%から約30%、より好ましくは、組成物の総重量の約1%から約20%、最も好ましくは約2%から約10%に相当し、全範囲およびその間の部分範囲を含み、例えば、約3%から約9%および約4%から約8%である。
【0058】
ポリリジン
本発明によると、ポリリジンをさらに含むエマルションが提供される。ポリリジンは、周知のものである。ポリリジンは、細菌発酵によって生成され得るL−リジンの天然のホモポリマーであってもよい。例えば、ポリリジンは、一般に食品への天然保存料として使用されるε−ポリ−L−リジンであってもよい。ポリリジンは、水、プロピレングリコールおよびグリセロールなどの極性溶媒に可溶な高分子電解質である。ポリリジンは、ポリD−リジンおよびポリL−リジンなどのさまざまな形態で商業的に入手可能である。ポリリジンは、塩および/または溶液の形態であってもよい。
【0059】
好ましくは、ポリリジンは、エマルション組成物の総重量の0.05から8重量%および0.1から5重量%などの0.01から10重量%の量で存在し、全範囲およびその間の部分範囲を含む。
【0060】
反応生成物
本発明の好ましい実施形態によると、油溶性の極性変性ポリマーは、ポリリジンを可溶化して反応生成物を形成するのに十分な最低限の量の水の存在下においてポリリジン化合物と反応させられる。好ましい実施形態によると、反応生成物は不水溶性である。
【0061】
いかなる特定の理論によっても縛られることを望まないが、100℃未満の温度における、油溶性の極性変性ポリマーとポリリジンとの反応は、無水環を開環して半酸(half acid)および半アミド(half amide)架橋生成物を形成すると考えられる。しかしながら、100℃を超える温度における、油溶性の極性変性ポリマーとポリリジンとの反応は、無水環を開環してイミド架橋生成物を形成する。前者の生成物は、後者の生成物よりも好ましい。必ずしも、すべてのアミン基とすべての親水性基が互いに反応して反応生成物を形成する必要はない。むしろ、本組成物は、反応生成物に加えて遊離ポリリジンおよび/または遊離型の油溶性の極性変性ポリマーを含有することが可能である。
【0062】
いかなる特定の理論によっても縛られることを望まないが、(1種または複数の)ポリリジンは、ポリリジンのアミン基と油溶性の極性変性ポリマーの親水性基(例えば、無水マレイン酸基と関連するカルボン酸基)の間の静電気相互作用によって(1種または複数の)極性変性ポリマーと非共有結合的に会合して超分子を形成することがあるとも考えられる。例えば、特に無水マレイン酸基に関連して、こうした基は、水の存在下で開環してジカルボン酸基を形成し、これが、イオン相互作用によってポリリジンのプロトン化第一級アミンと相互作用して、親水性コアクロスリンカー(hydrophilic core crosslinker)および超分子カプセルの役割をする疎水性ネットワークを有するポリマー−ポリマー錯体を形成することができる。無水マレイン酸基が大量に存在する場合、さらなるポリリジンの第一級アミン基もまた、プロトン化し、アルキルカルボキシラートと相互作用する。
【0063】
好ましい実施形態によると、油溶性の極性変性ポリマーは、油担体中にあり、ポリリジン化合物は、水性担体中にあり、反応は、油担体と水性担体を合わせることによって起こる。油溶性の極性変性ポリマーは、室温で一般に固体であるため、ポリマーを液化するために、水性担体と混合される前に、油担体が加熱されることが好ましい。好ましくは、油担体は、油溶性の極性変性ポリマーの融点を超える、一般に約80℃、90℃または100℃にまで加熱される。
【0064】
いかなる特定の理論にも縛られることを意図するものではなく、油溶性の極性変性ポリマーをポリリジンと合わせると起こる化学的および物理的反応が理由で、生成される結果として形成される反応生成物が、驚くべきことに、予想外にも疎水性マトリックス内に大量の水分子を閉じ込めることができると考えられる。得られた生成物は、顕著に皮膜を形成することができ、自己乳化性であり、ウォータープルーフである。さらに、この生成物は、安定で、さまざまな種類の成分を保持することができる。
【0065】
水
本発明のエマルションは水も含む。水は、約3重量%から約90重量%、好ましくは5重量%から約80重量%、好ましくは約10重量%から約75重量%の量で存在してよく、全範囲およびその間の部分範囲を含み、例えば、45%〜90%であり、すべての重量は組成物の総重量に基づく。
【0066】
界面活性剤
本発明によると、任意にさらに少なくとも1種の界面活性剤を含むエマルションが提供される。本発明のそのような実施形態によると、油中水型エマルションに使用するためのあらゆる適した界面活性剤が使用できる。そのような界面活性剤は、当該分野において周知である。
【0067】
好ましい実施形態によると、本エマルション中には、HLB値が10以上の少なくとも1種の界面活性剤が存在する。好ましくは、少なくとも1種の界面活性剤は、HLB値が10〜17、好ましくは11〜17であり、全範囲およびその間の部分範囲を含む。適した界面活性剤の例としては、以下に限定されるものではないが、PEG−40−ステアラートおよびPEG−8−ステアラートが挙げられる。水中油中水型エマルションなどのエマルションを形成するための任意の適した界面活性剤が本発明に従って使用されてもよい。PEG/脂肪酸界面活性剤(以下に限定されるものではないが、1から約100、3から約75および8から約40に及ぶPEGの量が含まれるであろう、全範囲およびその間の部分範囲を含み、以下に限定されるものではないが、8から約32個の炭素、10から約24個の炭素および12から約18個の炭素を有する脂肪酸構成成分も含まれるであろう、全範囲およびその間の部分範囲を含み、例えば、ステアラート、オレアート、ミリスタート、パルミタートなどである)などの上述のアルコキシル化/脂肪酸界面活性剤に加えて。
【0068】
存在する場合、少なくとも1種の界面活性剤は、組成物の総重量の0から20%、好ましくは0.05から10%、好ましくは0.1から5%の量で存在してもよく、全範囲およびその間の部分範囲を含む。
【0069】
揮発性油
本発明の特に好ましい実施形態によると、任意に少なくとも1種の揮発性油をさらに含む組成物が提供される。好ましくは、少なくとも1種の揮発性油は、シリコーン揮発性油、炭化水素揮発性油またはそれらの混合物である。
【0070】
好ましい実施形態によると、本組成物は、1種または複数の揮発性シリコーン油を含有していてもよい。そのような揮発性シリコーン油の例としては、室温において6cSt以下の粘度を有し、2から7個のケイ素原子を有する直鎖または環式シリコーン油が挙げられ、こうしたシリコーンは、1から10個の炭素原子のアルキルまたはアルコキシ基により任意に置換されている。本発明に使用してもよい特定の油としては、オクタメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサンおよびそれらの混合物が挙げられる。使用可能なその他の揮発性油としては、粘度が6cStの、94℃の引火点を有するShin Etsuの市販の製品であるKF 96Aが挙げられる。好ましくは、揮発性シリコーン油は、引火点が少なくとも40℃である。
【0071】
揮発性シリコーン油の非限定例を下記表1に挙げる。
【0073】
さらに、揮発性直鎖シリコーン油は本発明の組成物に利用されてもよい。適した揮発性直鎖シリコーン油としては、米国特許第6,338,839号およびWO03/042221に記載されているものが挙げられ、これらの内容を参照によって本明細書に組み込む。一実施形態において、揮発性直鎖シリコーン油は、デカメチルテトラシロキサンである。別の実施形態において、デカメチルテトラシロキサンは、デカメチルテトラシロキサンよりもさらに揮発性の別の溶媒とさらに組み合わされる。
【0074】
その他の好ましい実施形態によると、本組成物は、1種または複数の非シリコーン揮発性油を含有していてもよく、揮発性炭化水素油、揮発性エステルおよび揮発性エーテルから選択されてもよい。そのような揮発性非シリコーン油の例としては、以下に限定されるものではないが、8から16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素油およびそれらの混合物、特に、C
8〜C
16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られる)、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカンおよび例えば、IsoparもしくはPermethylの商標名で販売されている油などの分岐C
8〜C
16アルカン、イソヘキシルもしくはイソデシルネオペンタノアートなどのC
8〜C
16分岐エステルならびにそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、揮発性非シリコーン油は、引火点が少なくとも40℃である。
【0075】
揮発性非シリコーン揮発性油の非限定例を下記表2に示す。
【0077】
溶媒/油の揮発性は、米国特許第6,338,839号に記載の蒸発速度を用いて測定することができる。
【0078】
好ましくは、存在する場合、(1種または複数の)揮発性油は、組成物の総重量の約5%から約90%、より好ましくは組成物の総重量の約10%から約80%、最も好ましくは約20%から約75%に相当し、全範囲およびその間の部分範囲を含む。
【0079】
着色剤
本発明の特に好ましい実施形態によると、任意に少なくとも1種の着色剤をさらに含む組成物が提供される。好ましくは、そのような有色組成物は、例えば、リップ組成物(例えば、リップスティックもしくは液体リップカラー)、マスカラ、マニキュアまたはファンデーションなどの化粧用組成物である。
【0080】
この実施形態によると、少なくとも1種の着色剤は、好ましくは、脂溶性色素、真珠光沢顔料およびパール剤などの顔料、色素から選択される。
【0081】
本発明に従って使用されてもよい代表的な脂溶性色素としては、スーダンレッド、DCレッド17、DCグリーン6、β−カロチン、大豆油、スダンブラウン、DCイエロー11、DCバイオレット2、DCオレンジ5、アナトーおよびキノリンイエローが挙げられる。存在する場合、脂溶性色素は、一般に0.0001%から6%などの組成物の総重量に対して最大20重量%に及ぶ濃度である。
【0082】
本発明に従って使用されてもよい真珠光沢顔料は、チタンまたはオキシ塩化ビスマスが被覆された雲母などの白色真珠光沢顔料、鉄酸化物が被覆された雲母チタン、フェリックブルー(ferric blue)または酸化クロムが被覆された雲母チタン、上記のものから選択される有機顔料が被覆された雲母チタンなどの有色真珠光沢顔料およびオキシ塩化ビスマスベースの真珠光沢顔料から選択されてもよい。存在する場合、真珠光沢顔料は、0.1重量%から20重量%、好ましくは0.1重量%から15重量%などの組成物の総重量に対して最大50重量%に及ぶ濃度で組成物に存在し、全範囲およびその間の部分範囲を含む。
【0083】
本発明に従って使用されてもよい顔料は、白色、有色、無機、有機、高分子、非高分子、被覆されたおよび被覆されていない顔料から選択されてもよい。鉱物顔料の代表的な例としては、二酸化チタン、任意に表面処理された酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、鉄酸化物、クロム酸化物、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物(chromium hydrate)およびフェリックブルーが挙げられる。有機顔料の代表的な例としては、カーボンブラック、D&C種の顔料ならびにコチニールカルミン、バリウム、ストロンチウム、カルシウムおよびアルミニウムベースのレーキが挙げられる。
【0084】
存在する場合、顔料は、組成物の総重量に対して0.5重量%から40重量%、さらに2重量%から30重量%などの最大50重量%に及ぶ濃度で組成物中に存在してもよく、全範囲およびその間の部分範囲を含む。特定の製品の場合には、真珠光沢顔料を含む顔料は、例えば、組成物の最大50重量%に相当してもよい。
【0085】
皮膜形成剤
本発明の特に好ましい実施形態によると、任意に少なくとも1種の皮膜形成剤(フィルムフォーマー)をさらに含む組成物が提供される。許容される皮膜形成剤は、当該技術分野において知られており、以下に限定されるものではないが、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0170586号に開示されているものが含まれる。そのような皮膜形成剤の代表的な非限定例としては、例えば、MQ樹脂(例えば、トリメチルシロキシシリケート)、T−プロピルシルセスキオキサンおよびMK樹脂(例えば、ポリメチルシルセスキオキサン)などのシリコーン樹脂、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,045,782号、同第5,334,737号および同第4,725,658号に開示されているものなどのシリコーンエステル、ビニルポリマー、メタクリル系ポリマーおよびアクリル系ポリマーから選択される主鎖ならびにその開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,209,924号、同第4,693,935号、同第4,981,903号、同第4,981,902号および同第4,972,037号ならびにWO01/32737に開示されるものなどのペンダントシロキサン基およびペンダントフルオロ化学基から選択される少なくとも1つの鎖を含むポリマー、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,468,477号に記載されているものなどのポリマー(そのようなポリマーの非限定例は、ポリ(ジメチルシロキサン)−g−ポリ(イソブチルメタクリレート)であり、これは、商標名VS 70 IBMとして3M Companyから商業的に入手可能である)が挙げられる。
【0086】
好ましい実施形態によると、フィルムフォーマーは、存在する場合、組成物の総重量に対して0.1重量%から30重量%に及ぶ量で組成物中に存在する。好ましくは、フィルムフォーマーは、組成物の総重量に対して0.5重量%から20重量%、より好ましくは2重量%から15重量%に及ぶ量で存在し、全範囲およびその間の部分範囲を含む。当業者は、本発明のフィルムフォーマーが商業的に入手可能である場合もあり、供給業者から希薄溶液の形態で供給される場合もあることを認識するであろう。本明細書中で開示されるフィルムフォーマーの量は、したがって、活性物質の重量パーセントを示す。
【0087】
特に好ましい実施形態によると、皮膜形成剤が存在する場合、油溶性の極性変性ポリマーおよび皮膜形成剤の量を合わせた量は、組成物の全重量の30〜50重量%である。
【0088】
しかしながら、本発明のその他の好ましい実施形態において、本エマルション組成物は、シリコーン樹脂を実質的に含まない(すなわち、1%未満のシリコーン樹脂)か、またはシリコーン樹脂を本質的に含まない(すなわち、0.5%未満のシリコーン樹脂)。特に好ましい実施形態によると、本エマルションは、シリコーン樹脂をまったく含まない。
【0089】
本発明の別の特に好ましい実施形態は、ケラチン物質(毛またはまつげ)に塗布するための組成物であり、これは、エマルションであるが、トリエタノールアミン/ステアラート(TEA−ステアラート)を実質的に含まない(すなわち、1%未満のTEA−ステアラート)か、またはTEAステアラートを含まない(すなわち、0.05%未満のTEA−ステアラート)。
【0090】
追加の添加剤
本発明の組成物は、対象の分野において通常使用される任意の添加剤も含んでよい。例えば、ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)などの分散剤、酸化防止剤、エッセンシャルオイル、サンスクリーン、保存料、香料、増量剤、中和剤、化粧用および皮膚科学的活性剤、例えば、エモリエント剤、保湿剤、ビタミン、必須脂肪酸、界面活性剤、ペースト状化合物ならびにそれらの混合物が添加されてもよい。そのような成分の非網羅的な一覧は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0170586号に見出すことができる。適した追加の構成成分のさらなる例は、本出願に参照により組み込んだその他の参考文献に見出すことができる。そのような追加の成分のさらに別の例は、the International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(第9版、2002年)に見出すことができる。
【0091】
当業者は、任意の追加の添加剤および/またはそれらの量を、本発明による組成物の有利な性質が、想定される添加によって悪影響を及ぼされないか、または実質的に悪影響を及ぼされないよう注意深く選択することになる。
【0092】
こうした物質は、所望の性質、例えば、粘度または質感を有する組成物を調製するために当業者によってさまざまに選択されてもよい。
【0093】
こうした添加剤は、(存在する場合)組成物の総重量に対して0%から99%(0.01%から90%など)、さらに0.1%から50%などの割合で組成物中に存在してもよく、全範囲およびその間の部分範囲を含む。
【0094】
言うまでもないが、本発明の組成物は、化粧用または皮膚科学的に許容されるものでなければならず、すなわち、非毒性で生理学的に許容される媒体を含有するべきであり、ヒトのまつげに塗布できなければならない。
【0095】
そのような追加の構成成分の非限定例としては、シリコーン油(例えば、ジメチコン、フェニルトリメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサンなど)などの不揮発性油または炭化水素油(例えば、エステル)が挙げられる。本発明の一実施形態では、本発明の組成物は、シリコーン油を実質的に含まない(すなわち約1%未満のシリコーン油を含有する)。別の実施形態において、本組成物は、非シリコーン油を実質的に含まない(すなわち、約1%未満の非シリコーン油を含有する)。別の実施形態において、本組成物は、不揮発性油を実質的に含まない(すなわち、約1%未満の不揮発性油を含有する)。
【0096】
本発明の好ましい実施形態によると、皮膚、唇、毛および粘膜などのケラチン物質を処置する、手入れするかつ/またはそれに化粧をするのに十分な量で本発明の組成物をケラチン物質に塗布することによって、ケラチン物質を処置する、手入れするかつ/またはそれに化粧をする方法が提供される。好ましくは、ケラチン物質に「化粧をすること」には、ケラチン物質に色をつけるのに十分な量で少なくとも1種の着色剤をケラチン物質に塗布することが含まれる。
【0097】
その他の好ましい実施形態によると、欠点もしくはしみなどのケラチン物質に関連する欠陥を覆うまたは隠すのに十分な量で本発明の組成物をケラチン物質に塗布することによって、そのような欠陥を覆うまたは隠す方法が提供される。
【0098】
さらに他の好ましい実施形態によると、ケラチン物質の外観を向上させるのに十分な量で本発明の組成物をケラチン物質に塗布することによって、ケラチン物質の外観を向上させる方法が提供される。
【0099】
上記の3つの好ましい実施形態によると、少なくとも1種の油溶性の極性変性ポリマーと、少なくとも1種のポリリジンとを含む本発明の組成物は、ケラチン物質を処置する、手入れするかつ/またはそれに化粧をする、ケラチン物質に関連する欠陥、皮膚の欠点もしくはしみを覆うまたは隠す、あるいはケラチン物質の外観を向上させるのに十分な量でケラチン物質の所望の領域に局所的に塗布される。本組成物は、必要に応じて、好ましくは1日に1回または2回、より好ましくは1日に1回、所望の領域に塗布されてもよく、その後、好ましくは、衣服または他の物(例えば、ガラスまたはトップコート)などと接触する前に乾燥させられる。好ましくは、本組成物は、約3分間以下、より好ましくは約2分間以下乾燥させられる。本組成物は、好ましくは、乾燥している、もしくは塗布の前に乾燥させられた、またはベースコートが予め塗布された所望の領域に塗布される。
【0100】
本発明の好ましい実施形態によると、改善された化粧性、例えば、改善された安定性、塗布時の改善された感触(例えば、質感、抵抗または厚さの低減)、向上した汚れ防止性、および/または向上した長期摩耗性などを有する組成物が提供される。
【0101】
本発明の他の実施形態によると、少なくとも1種の油溶性の極性変性ポリマーと、少なくとも1種のポリリジンとを組成物に添加することを含む、組成物の汚れ防止性、耐移行性および/または長期耐摩耗性を改善する方法が提供される。この実施形態によると、少なくとも1種の油溶性の極性変性ポリマーおよび少なくとも1種のポリリジンは、所望の結果を達成するのに十分な量で存在する。
【0102】
本発明のさらに他の実施形態によると、少なくとも1種のポリリジンおよび少なくとも1種の油溶性の極性変性ポリマーを一緒に混合して組成物を形成することを含む、組成物を作製する方法が提供される。
【0103】
好適な実施形態によると、W/Oエマルションは、反応性エマルション技術を含むプロセスにおいて調製される。この技術は、W/Oエマルションの生成を可能にする点において用途が広い。そのような反応性エマルション技術を用いると、少なくとも1種の油溶性の極性変性ポリマーと少なくとも1種のポリリジンの化学的架橋がエマルションの水油界面で起こり、これによりさまざまな範囲の特性(例えば、レオロジーおよび水分含有量)をもつエマルションを実現することが可能になると考えられる。さらに、そのような技術は、(1つまたは複数の)分散相のサイズならびに水相の水分含有量の調整を容易にすると考えられる。
【0104】
好ましい実施形態によると、ポリリジンが少なくとも1種の油溶性の極性変性ポリマーと反応して反応生成物を形成するように、少なくとも1種の油溶性の極性変性ポリマー(例えば、エチレン/無水マレイン酸/プロピレンコポリマー)を含有する油相および少なくとも1種のポリリジンを含有する水相が合わされてW/Oエマルションが形成される。この反応生成物は、上述の物理的および/または化学的架橋によって促進され、処理条件に応じて生じると考えられる。少なくともそのような架橋の部分的な結果として、架橋された油溶性の極性変性ポリマー/ポリリジン反応生成物中に水が封入され、これが、油相によって取り囲まれると考えられる。
【0105】
別に示されないかぎり、本明細書および請求項において使用される、成分の量、反応条件およびその他を表わすすべての数は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものと理解されるべきである。したがって、反対のことが示されないかぎり、以下の明細書および添付の請求項に記載される数量的パラメータは、本発明によって得られる求められる所望の性質により変化する場合もある近似値である。
【0106】
本発明の広い範囲を明記する数量的範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の例に記載される数値は、可能なかぎり正確に報告されている。しかしながら、いかなる数値も本質的に必然的にそのそれぞれの測定において見出される標準偏差から得られる特定の誤差を含む。以下の実施例は、本発明を説明することを意図し、結果として範囲を限定するものではない。割合は、重量に基づいて示す。
【実施例1】
【0107】
W/Oエマルション
【0108】
【0109】
相A〜Cのそれぞれを別々に調製する。
【0110】
相AおよびBを合わせ、混合してW/Oエマルションを形成する。
【0111】
このW/Oエマルションを相Cと合わせ、80℃で30分間混合してW/Oエマルションを形成する。ここで、油溶性の極性変性ポリマーとポリリジンが水油界面において架橋する。
【実施例2】
【0112】
W/Oエマルション
【0113】
【0114】
相A−B−Cのそれぞれを別々に調製する。
【0115】
相AおよびBを、80℃で10分間撹拌しながらビーカー中で安定なエマルションが得られるまで混合し、続いて、80℃で30分間撹拌下において相Cを添加する。
【実施例3】
【0116】
リキッドファンデーション
【0117】
【0118】
相Aおよび相Bのそれぞれを別々に調製し、撹拌しながらビーカー中において80℃で10分間混合し、続いて、80℃で10分間撹拌しながら相Cを添加した後、相Dを添加し、80℃で30分間混合する。室温でエタノールを撹拌下において添加する。